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見違える写真レタッチ

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見違える写真レタッチ
写真レタッチ
見違える
神崎 洋治=トライセック代表
第 2 回 あの空はもっと青かったはず
今回 の
ポイント
●
指定した色だけカラー補正する
●
色温度とホワイトバランスを理解
●
カラーパレットで色かぶりを取る
きれいな青
空を撮った
つもりが白
っぽく写っ
てしまった
われるフレーズだ。小説や映画、楽曲のタ
イトルにもなるほど、澄んだ青い空は人の
記憶に鮮明に残る。青い空にゆっくり流れ
る白い雲、そしてヒマワリがあれば、まさ
くすんだ青空を思い出の色に
Before
「いつか見た青い空」とは、しばしば使
に夏らしい景色としては申し分ない。そこ
After
でデジカメでパチリと一枚。
ところが写真には、記憶とはかなり違う
色の空が写っている。
「あの抜けるような
青い空はこんなにくすんでなかったのに」
とがっかりした経験はないだろうか。
写真家の間では「記憶色」という言葉が
空の色だけ
カラー補正
して記憶色
に近づけた
あたり
使われる。人がイメージとして記憶してい
る色のことだ。例えば、夏の青空は人の記
憶にはサンプル写真の右(After)のような
色合いで残ることが多い。しかし、写真に
桜のピンクもデジカメには難しい
撮ると空気中の水蒸気やホコリによって起
こる乱反射などの影響を受けて、記憶して
いる青よりもずっと薄くなり、白くくすん
でしまう(Before の写真)。これでは本人
はがっかりだし、写真を披露しても、他人
には青空の美しさが伝わらないだろう。
青空のほかにも、桜の花や紅葉、夜景、
人の肌などが、記憶色と実際の写真の色合
いとのギャップが出やすいことで知られて
いる(図 1)。記憶を信じれば、あのとき見
た空はもっと青かったし、桜の花は確かに
ピンクだった。鮮明に記憶に残るあのとき
の色をレタッチで取り戻そう。
青の色相と彩度だけを調整する
図 1 桜の薄いピンクは、デジカメで撮ると白っぽくなることが多い。この場合、
「マゼンタ」
や「レッド」をカラー補正して鮮やかに調整すると記憶色に近づく
今回もレタッチ作業には「P h o t o s h o p
Elements 5.0」
(アドビシステムズ)を使う。
日経パソコン 2007.10.22
113
中
級
アドビシステムズ
Photoshop Elements 5.0
価格 1 万 4490 円(乗り換え・アップグレード版は 1 万 290 円)
連絡先 http://www.adobe.com/jp/
まず青空の写真を開き、前回と同様に表示
青空だけをより青くする
図 2 「 P h o t o s h o p
Elements 5.0」を「ク
イック補正」モードで起
動し、画像ファイルを開く
サイズを調整したら、補正前と補正後の画
像を並べて準備完了(図 2)。
ここで使うテクニックはカラー調整だ。
中でも指定した色だけ、つまり「空の青」
や「桜のピンク色」だけをカラー調整する
少し高度な手法を紹介する。初めに、画像
の中で空以外に同じ青色の物が写っていな
いか確認する。空をカラー調整する際、別
表示サイズを見やす
い大きさにしておく
補正前後の画像を並
べて表示
の青い被写体が影響を受けることがあるか
らだ。もし、影響を受けそうな色合いの物
がある場合は、空の部分だけを範囲指定す
ることで回避しよう(スタンダード編集モ
図 3 「画質調整」メニューの「カ
ラー」→「色相・彩度」を選択
ードに切り替えて範囲指定する)。
指定した色をカラー調整するには「色相・
彩度」機能を使う(図 3)。色相・彩度ダイ
アログボックスの「編集」欄で調整したい
色系を選択し(図 4)、スポイトツールの「サ
」
>
図 4 「編集」欄の「
をクリックし、カラー調
整したい色系を選択する。
空の色を調整するので
「ブルー系」を選んだ
図 5 「サンプルに追加」ボタンをクリック
する。写真上の変更したい色をスポイトツ
ールでクリックして指定する
図 6 彩度を上げて明度を下げる
と、空の青色が濃く、くっきりと
し た。 画 像 の 調 整 が 完 了 し た ら
「OK」をクリックして決定
ンプルに追加」ボタンをクリックする。マ
ウスポインターがスポイトの形状になるの
で、画像の空(青)の部分に合わせてクリ
ックすると、その部分の色がカラー調整の
対象としてセットされる(図 5)。
続けて、
「色相」
「彩度」
「明度」の各スラ
イダーを動かしてカラーを調整する(図 6)。
画面に表示された画像の色合いが変わる様
子を確認しながら少しずつスライダーを動
かすのがコツ。青空を鮮明にするには、主
に彩度を上げて明度を下げると、きれいな
青に調整できる場合が多い。記憶色とほぼ
同じ色が再現できたら完成。これが正真正
銘の「いつか見た青い空」だ。
狙 っ た通りの効果が得ら
れなければ、 メニ ュ ー バ
ーの「編集」→「○○の取
り消し」でやり直せる
スライダ ー を左に動かし
て明度を下げ、 色を濃く
する
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日経パソコン 2007.10.22
ホワイトバランスで色は変わる
スライダーを右に動かして
青の鮮やかさを強調
色は光源によって影響を受けるため、写
真の色合いは全く変わってしまう。例えば、
夕焼けに照らされた海や灯台がきれいなオ
写真レタッチ
見違える
レンジ色に見えたとしよう。このときの海
や灯台の本当の色とは何だろうか? 夕日
に照らされたオレンジ色なのか、それとも
色温度と撮影時の色合いの関係
色温度とホワイトバランス
オレンジ色に見えたとしても「海は青で灯
台は白」が本当の色なのだろうか?
7500K 晴天の日陰
晴天に屋外の日陰で撮影
デジカメには白い被写体を白く写すため
6500K 曇天
曇天の屋外で撮影
5500K 晴天
晴天の屋外で撮影。夕焼けを赤く撮影。花火
の撮影
弱めて、海は青、灯台は白で写るように働
4500K 昼白色蛍光灯
昼白色蛍光灯に照らされている被写体の撮影
く。夕景がなかなかきれいなオレンジ色で
4000K 白色蛍光灯
白色蛍光灯に照らされている被写体の撮影
写らないと悩んでいる人がいたら、その要
3700K 朝、夕方の光
朝や夕方の屋外での撮影。電球に照らされて
いる被写体を、電球の雰囲気を出して撮影
3000K 白熱電球
電球に照らされている被写体を撮影
に、自動ホワイトバランス機能が搭載され
ている。先ほどの例で言うと、この機能は
夕日に影響されるオレンジ色はできるだけ
因の一つはカメラの自動ホワイトバランス
機能にある。
ホワイトバランスの理解に必要な要素が
「 色温度 」だ( 図 7、 図 8 )。Photoshop
Elements のクイック補正画面でも出てく
る用語なので理解しておこう。色温度とは
光の色を数値で表したもの(定義は完全黒
体を熱して発する色とそのときの温度)。
2000K ろうそくの炎
図 7 色温度と色合いの関係。色温度が低いと赤く、
高いと青くなる。ホワイトバランスは色温度の影
響を少なくするためにデジカメが搭載する機能。
夕焼けや花火をきれいに撮影するには、色温度や
ホワイトバランスの知識が必要だ
色温度は写真全体のイメージを変える
単位は K(ケルビン:絶対温度)で表し、
図 8 色温度のカラー調整は写真の
イメージをガラリと変える
数値が小さい(色温度が低い)ほど赤く、
大きい(高い)ほど青くなる。さまざまな
物が赤く見える夕景は、光線の色温度が低
い状態ということになる。人間の目には感
知しにくいが、蛍光灯では緑色が強くなり、
曇天の日中や日陰、スキー場などは青色が
強くなる。こうした状況で撮影した写真の
色合いを見て、違和感を覚えた経験がある
撮影時の空に近い色
合いの写真
人もいるだろう。
食材をおいしそうに見せるには?
デジカメのホワイトバランス機能は、オ
ート(自動)にしておくと光の色温度を自
色温度を調整して青
を強調した
動で検知し、適正と思われる色合いに調整
して撮ってくれる。晴天、曇天、蛍光灯な
ど、あらかじめ用意されたホワイトバラン
色温度を調整して温かみを出した
日経パソコン 2007.10.22
115
中
初
級
ス設定を手動で選択できる機種もある。
どちらがおいしそうに見える?
デジカメのホワイトバランスが正しく設
定されていなかったり、自動判別がうまく
動作しない状態で撮影したりした場合、全
体に赤みや青み、緑色がかった画像(色か
ぶりと呼ぶ)になってしまう。最近は料理
の写真を掲載したブログや、レストランな
図 9 色かぶりした写真では、新鮮な牛肉も魅力的に見えない(左)。色かぶりを取ると食欲
をそそる写真になった(右)
どでスタッフが撮影した料理の写真を掲載
したお手製のメニューを見かけることが多
い。それらを見ると、色かぶりした写真が
色温度の調整で色かぶりを取る
図 10 ホワイトバラン
スの設定が不適切な写真。
全体的に温かみのある印
象が強い点と、白いはず
の皿が黄緑色に見えてい
る点に注目。色かぶりは
ウインドウ右の「カラー」
パレットで調整する
いかに多いか気付くだろう。
色かぶりした状態ではコントラストも低
くなりくすんでしまうため、料理がおいし
そうに見えなかったり、素材の新鮮さが伝
わらなかったりすることがある(図 9)。特
に蛍光灯による緑かぶりは、料理写真や人
物写真には大敵。食べ物は傷んでまずそう
に、人物は不健康そうに見える。こうした
色かぶりをレタッチによって補正してやれ
ば、メニューに載せた料理はおいしそうに
見えるわけだ。
では実際に、色かぶりした牛肉の写真と、
図 11 まずは不自然な暖色を
抑えるために「色温度」のスラ
イダ ー を左に動かして青みを
強くしてみると、 実物に近い
リアル感が出た。 皿を見ると
緑 っ ぽく色かぶりしているこ
その補正方法を例題として紹介しよう(図
10 〜図 13)。操作方法は簡単だ。クイック
補正モードで「カラー」パレットにある「色
とが分かる
温度」を調整して温かみを抑え(図 11)、
「色
図 12 緑を抑えるために「色
合い」のスライダーを思い切
って右に調整した。皿が白く
見えるところまでスライドす
ると、牛肉のきれいな赤色が
見えてきた
図 13 さらに「彩度」を上げ
ると鮮やかさが強調され、 新
鮮な色合いにな っ た。 前回解
説した明るさやコントラスト
を上げて、 レタスや皿につや
が出るように写真全体を明る
く調整したら完成だ(図 9 右の
写真)
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日経パソコン 2007.10.22
合い」を調整して緑かぶりを取る(図 12)。
ホワイトバランスの原理を思い出し、皿が
白く見えるように意識して調整するのがコ
ツだ。
色かぶりがなくなったら、
「彩度」のス
ライダーを動かして鮮やかさを強調する(図
13)。さらに「明るさ」や「コントラスト」
(「画質調整」メニューの「ライティング」
→「明るさ・コントラスト」)を上げて、レ
タスや皿につやが出るように補正したら完
成。おいしそうな牛肉の写真になった。
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