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【第1回】逆光で暗くなった人物だけを明るくする
写真レタッチ 見違える 神崎 洋治=トライセック代表 第 1 回 逆光で暗くなった人物だけを明るくする 今回 の ポイント ● 暗くなった部分(シャドー)だけを明るくする ● 失敗写真の復活に最適な「クイック補正」 ● ヒストグラムで写真の明るさを理解 真もその一つだ。会社のスタッフや担当者 の紹介、店長プロフィールなど、人物写真 は、ビジネスの現場でも増えている。 After 逆光のため被写 体が暗くなった 失敗写真 それでも失敗写真はなくならない。逆光写 をホームページやカタログに掲載する機会 逆光で暗くなった顔を明るく補正 Before デジカメの性能は日々進歩しているが、 ところが、デジカメは気軽に撮れる分だ け、よく考えずに撮影して失敗してしまう ことがある。例えば、屋外なら太陽を背に してパチリ、屋内なら窓や照明を背にして パチリ。後になって「しまった、逆光だっ た」と気付くがもう遅い。左のポートレー あたり 簡単な補正で人 物だけを明るく できる トのように顔が真っ黒になってしまった。 しかし、そんな逆光写真でも諦めないでほ しい。フォトレタッチによって、人物が明 るく見えるように写真を修正できるのだ。 「クイック補正」と「スタンダード編集」 図 1 レタ ッ チにはアドビシステ ムズの「Photoshop Elements 5.0」を使う。起動するとスタート ア ッ プスクリ ー ンが表示される。 明るさや色の補正には「 クイ ッ ク 補正」モードが便利 Photoshop Elementsを起動 使用するフォトレタッチソフトはアドビ システムズの「Photoshop Elements 5.0」。 入門者から中級者までカバーする代表的な フォトレタッチソフトだ。なお、10 月下 旬に「Photoshop Elements 6」が発売予定 だが、ここでは現行バージョンで解説する。 Photoshop Elements を起動すると、ま ず「スタートアップスクリーン」 (図 1、図 2) が表示される。レタッチ用に 2 つのモード が用意されていて、起動時の画面でモード を選択できる。一つは明るさや色の補正な ど、失敗写真のレタッチによく使われる機 図 2 Photoshop Elements の 機能をフルに使うには、 「写真の編 集と補正」をクリックして「スタン ダード編集」モードで起動する 能に絞った「クイック補正」モード(初級 者向け)だ。もう一つは、多彩なレタッチ 機能がすべて利用できる「スタンダード編 日経パソコン 2007.10.8 121 中 級 アドビシステムズ Photoshop Elements 5.0 価格 1 万 4490 円(乗り換え・アップグレード版は 1 万 290 円) 連絡先 http://www.adobe.com/jp/ 集」モード(初中級者向け)。今回はシンプ 画像をクイック補正で開く 画像の明るさを調整 し、 明るく見やすい 写真にする ルなクイック補正モードを使ってみよう。 スタートアップスクリーンで「写真のク イック補正」をクリックして操作画面を表 示したら、レタッチしたい写真のファイル をドラッグ・アンド・ドロップしよう。画 像が開いてレタッチ作業を始められる状態 になる(図 3)。レタッチ作業の前に、画像 を見やすい表示サイズに調整しておこう(図 4)。補正前と補正後の画像を並べて表示す る設定にすると、レタッチの効果を一目で 図 3 Photoshop Elements のウインドウにレタッチし たい画像ファイルをドラッグ・アンド・ドロップして開く。 クイック補正モードは、写真をきれいに補正する機能をま とめている 確認しやすくなる(図 5)。 彩度や色相など、 画 像の色を調整する 表示サイズの調整と並べて表示 逆光が失敗とは限らないが 写真を撮るとき太陽に向かって立ち、正 面から受ける光を「順光」と呼び、スナッ プ写真では好まれている。 図 4 画像の表示サイズ しかし、 「人物撮影の基本は逆光」と言 を変えるには、ズーム欄 に倍率(%)の数値を入 力するか、 「 ▶ 」をクリ う写真家も意外と多い。人物が被写体の場 ックしてスライダーを動 かす 合、順光ではまぶしくて目を細めたり、顔 が引きつってしまったりすることがよくあ ヒント! る。一方、逆光で撮影すると被写体の輪郭 表 示 サ イ ズ を 25、 50、75、100 % の がきれいに光って強調されるという利点が い ず れかで設定する と、 画像は美しく正 ある。にもかかわらず逆光が嫌われている 確に見える のは、一般の人がフラッシュやレフ板を使 わずに撮影すると、例題のポートレートの ように顔が真っ黒な失敗写真になりやすい からだ。 カメラを自動モードに設定して逆光の被 写体を撮影すると、カメラは光の量(露出) を背景や周囲の明るさに合わせてしまい、 図 5 「 表示 」のプルダ ウンメニューから表示方 法を選べる。「 補正前と 補正後 」を選択すると、 補正前と補正後の画像を 並べて表示するため、レ タッチの効果を確認しや すい 122 日経パソコン 2007.10.8 肝心の被写体は露出不足になり、暗くなっ てしまう。例題の写真は、明るい部分と暗 い部分の差が大きいため、肝心の人物が判 別できないほど暗くなってしまった。この 写真をどうやってレタッチして復活させる のか、その手順を解説していこう。 写真レタッチ 見違える 暗い部分だけを明るく補正 クイック補正モードでは、よく使うレタ ッチ機能が右に一覧で表示されている。こ 暗い部分だけを自然に明るくする技 図 6 「 シ ャ ドウを明る く 」のスライダ ー を右 ( + )にドラ ッ グして、 暗い部分だけ明るく補正 れらをパレットと呼ぶ。写真の明るさを調 する。右に表示されてい る画像が、補正を適用し た状態 整するには「ライティング」パレットを使 う。画像全体ではなく、暗い部分(シャド ー)と明るい部分(ハイライト)を、個別に 調整できるのが特徴だ。今回のポートレー ト写真の場合、明るい部分はそのままで、 暗い所だけを明るく補正したいので、 「シ ャドウを明るく」のスライダーを右(+)に 動かし、適度な明るさになるまで調整する 図 7 色が薄く感じる場 合は、 「 中間調のコント (図 6)。明るく補正して色が薄くなったと ラスト」のスライダーを 右(+)にドラッグして 調整する 感じたら、 「中間調のコントラスト」を少 し+に調整してみよう(図 7)。 これで顔がはっきり判別できるようにな ったが、色が薄い印象だ。色は光が作り出 すため、暗い部分を明るく調整しても、少 ない色情報を増幅しないと鮮やかな写真に はならず物足りない。そこで、色の鮮やか さ(彩度)と何色を強くするか(色相)をイ メージしながらカラーパレットで調整する (図 8)。色情報が少ない人肌の場合は「彩 ヒント! 度」スライダーを右に、 「色相」を左に調整 「色相」は何色にする か視覚的に選択する すると、うまくいくケースが多い。 ための配色にな っ て いるが、 「 彩度 」は鮮 やかさを青で表現し ているだけで、 青の 強弱を決める機能で はないことに注意 「色温度」のスライダーは右にドラッグ すると暖色(赤が強く)、左にドラッグす ると寒色(青系が強く)になる。画像全体 に大きな影響を及ぼすため、最後の仕上げ の際に、温かみのある写真にしたければ暖 色に、クールで引き締まった写真にしたけ れば寒色に調整するとよい。 ヒストグラムで明るさを数値化 クイック補正モードで明るさを調整する 方法はほかにもある。画像全体の明暗を調 図 8 鮮やかな写真にするため、 「彩度」 (色の純度 や度合い=鮮やかさ)と「色相」 (青、紫、赤、黄、 緑などの色合い)をスライダーで調整 日経パソコン 2007.10.8 123 中 初 級 節する機能「明るさ・コントラスト」と「レ 画像全体を明るくする 図 9 メニューバーから「画質調整」-「ライティング」 -「明るさ・コントラスト」または「レベル補正」を選ぶ 画像全体の明るさやコントラストを調整する ベル補正」だ(図 9)。 「明るさ・コントラス ト」は、画像全体が暗い写真や、明るく白 っぽい写真に効果がある。ただし、この機 能で明るさをアップした場合、暗い部分だ ヒストグラムを確認しながら、 画像全体の明るさを補正できる けでなく明るい部分もさらに明るくなるた 暗い人物が明るくなった め「白飛び」に注意が必要だ(図 10)。 「レベル補正」は明るさをヒストグラム で確認しながら調整できる。ヒストグラム は、最初は戸惑うかもしれないが、仕組み は単純なのでコツを理解すると役に立つ。 図 10 「明るさ・コントラスト」は 画像全体の明暗を調節する機能。 「明 るさ」のスライダーを動かすと明る 背景はさらに明るくな って白飛びしている さが変わる ヒストグラムとは度数分布図のことで、レ タッチの世界では明るさ/暗さの傾向と、 限界点を知るためにプロの写真家も使って ヒストグラムを見ながらレベルを補正 いる。グラフの横軸は明るさを示し(左が 図 11 室内を撮影したら暗くなった。 これをレベル補正で全体に明るくして みよう。レベル補正画面ではヒストグ ラムを見ながら明暗を調節できる 暗く、右が明るい)、縦軸は明るさごとの 画素を積み上げた数だ(図 11)。 デジタル画像は細かな点で表され、明る A さや色は内部で数値化されている。例えば、 B 一般的な JPEG 画像で使われる RGB の 8 ビ D D C A 白飛びしている部分 B 画像の主な情報が集まっている部分。山が左に偏っている場合は暗めの 画素が多く、暗い印象を与える写真であることが多い C 最暗部と最明部の範囲 D ハイライトと中間値のスライダーを左に動かすことで、暗い画素を明る く調整する ットの場合、横軸を 0 〜 255(256 階調)と して、真っ黒は 0、純白は 255、中間はそ の間の数値として横軸の該当する場所に積 み上げると、明るさの分布を表わすグラフ ができる。グラフの山が左に偏っていれば 暗い写真、右に偏っていれば明るい写真、 という傾向が分かる。 また、左端(0)が黒つぶれ、右端(255) が白飛びとなり、色の表現やレタッチによ る修復ができない限界点でもある。左右の 端にかからず、山の偏りがないグラフが、 明暗で見ると理想に近いだろう。レベル補 正はグラフの山の偏りを解消して、数値的 に明暗の度合いを調整できるのが特徴だ。 図 12 ヒストグラムの“偏り”を全体 に引き伸ばすと、室内が明るいイメー ジに変身した。右のヒストグラムはレ ベル補正後の表示 124 日経パソコン 2007.10.8 暗い写真は「レベル補正」を使って、ヒス トグラムの山の偏りを引き伸ばすように補 正してみよう(図 12)。