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鉄道車両用台虹 五旦K操 舵系ダイナミクスの制御の動向

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鉄道車両用台虹 五旦K操 舵系ダイナミクスの制御の動向
46巻 4号
研 究 解
生
(1994.4)
産
研
究
UDC 629.4.05ノ
説
鉄道車両用台虹
/.06
五旦K操 舵系 ダイナ ミクスの制御 の動向
Dynamics and Control of Steering Mechanics on Railway Trucks
須 田
義
大
*
Yoshihiro SUDA
省 エネルギー性 ,安 全性に優 れた高速大量輸送 システムである鉄道システムの技術革新 は重要である.
車両の走行 とい う基本機能 をつかさどる台車のダイナ ミクスの制御が近年注 目されている。その うち,
高速走行安定性 と曲線での操舵性能の両立を目指 した台車の操舵系の改善について,研 究開発の動向
を概説する。さらに,筆 者 の提案するセ ミアクティブ制御 の考 えを取 り入れた前後非対称方式操舵台
車の コンセプ ト,お よび操舵性能 について,計 算結果 と実際に試作 された台車の走行試験 と基に紹介
する。
1.は
じ
め
に
鉄道車両 にお いて も,運 動 や姿勢 の制御 にア クテ イブ コ
ン トロ ールやセ ミアクテ イブ コ ン トロー ルが 実用化 して き
た。車両 の運動 は,大 き く分 けて次 の 3つ に分類 で きる。
ひ とつ は,車 両 の前後方 向 の運 動 で あ り,駆 動,制 動力 の
市1御が 問題 になる もので あ る.2番 目は,路 面 や軌道 の不
整 に よって引 き起 こ され る強制振動 を主体 と した運動 であ
る。主 と して上下方 向 の運動力り寸象 で あ るが ,車 体 が 台車
の上 にサ スペ ンシ ョンを介 して支 え られて い る構 造 を持 つ
ー
通常 の鉄道車両 で は,左 右運動 や ヨ イ ング運動 もこれ ら
に含 まれ る.最 後 が ,車 両 の操舵 に関す る運動 で あ る.直
線運動 だ けで はな く,平 面 上 を走行 す るため には,左 右 と
ヨー イ ングを伴 う運動 が必要で あ る.
この よ うに分類 す る と,鉄 道車両 の分野 で は,制 御技術
は この順番 で 開発 され,実 用化 が進 んで きた よ うに考 え ら
れ る。鉄道車両 の前後方 向運動制御 ,す なわち,列 車 の 自
動停 止装置 ,自 動制御装置,さ らに 自動運転 は,か な り以
前 か ら実用化 されて い る。 自動車 で 実用化 して い るア ンチ
ロ ックブ レーキ もこの範疇 にはい る。
2番 目の運動 に対 す る制御 は,い わゆ るア クテ イブサ ス
.ら
ペ ンシ ョンカジロ当 し,鉄 道車両 にお いて は,早 くか 開発
が進 め られ,最 近実用化 の 目処 が た って きた とい えよう.
本論 で 言及す るの は,最 後 の操舵系 の制御 につ い てであ
る.
2.操 舵 系 の制御 の 問題点
車両 の操舵系 にお け るア クテ イブ市1御の適用 は,自 動車
*東
京大学生産技術研究所 第 2部
一
にお いて も,鉄 道 にお いて も 番立 ち遅 れて きた よ うに見
受 け られ る。 そ の理 由 は,自 動車 にお い て は,人 間が操舵
をす るため,勝 手 に機械任せ の制御 を行 う訳 には行 か ない
こ とであ ろ う。鉄道 にお い て は,人 間が操縦 しない代 わ り
に,軌 道 に拘 束 されて走行す るため,車 輪 の 自己操舵機 能
が重要 な役害Jを果 た して きた.す なわち,元 来 メカニ カル
な 自動市1御が行 われて きた こ とに よる と,考 え られ る。
ー
操 舵 系 の 制 御 で は,列 車 の運 転 制 御 の ような シ ケ ン
ー
シ ャル制御 で はな くリアル タイ ムの フ イ ドバ ック制律pが
本来要求 され る.さ らに制御 の 目標 が防振 の よ うに単純 で
はない。 人間や軌道 に よって与 え られ る望 みの運動 を実現
し,元 か らあ る制御機 能 と うま く協調 しなけれ ばな らない。
鉄道車両 につ いて は,作 用す る力が大 きい こ と,運 動 す
る構 成要素 の質量 が大 きい こ とも障害 にな って きた。 アク
チ ュエ ー タにパ ワー が 嚇 要 とな り,制 御 に要 す るエ ネ ル
一
ギ ー消費 も大 き くな るか らであ る.さ らに,万 が 制御 が
フェイル した ときには,脱 線 に結 び付 くこ とか ら,市1御の
信頼性 ,安 全性 の 問題 を解決 しなけれ ばな らない点 も見過
ごせ ない。
3.鉄 道車両 の車輪 レール 系 の ダイナ ミクス
・ ー
鉄道車両 の操舵系 の制御 を考 える とき,車 輪 レ ル系
のメカニズム,ダ イナ ミクス を理解 す る必要が あ る.通 常
の鉄道車両 で は,輪 軸 と呼 ばれ る左右 の車輪 力綱1に結合 し
た もの を用 い る (図 1).こ れ は,メ カ ニ カル に 自己操舵
ー
(セル フステ ア リ ン グ)す る機 能 を持 って い る。 レ ル と
車輪 が接触す る部分 ,踏 面 とよばれて い る所 は円錐状 (厳
密 には複雑 な曲面 で あ るが)に な ってい る.そ のため ,曲
線 区間で は,輪 軸 カウト側 にシフ トして,内 側 の車輪 の 回転
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産
研
究
g
︲
[= ︲
b
0
改
“
車輪 ・レール の
按触機構
(a)輪軸 の 自己操舵機能
│l
truCkfrome
図 1 従 来 の鉄道車両台車
(b)'輸
軸 のアクテ ィブ操舵
半径 は小 さ く,外 側 の 曲線半径 は大 き くなる。 この ため輪
軸 は レール に沿 って 自動 的 に旋 回す る.
この機械 的 自動 制御 システム をブ ロ ック線 図で示す と,
図 2(a)の よ うに な る.車 輪 の変位 と相対滑 りに応 じて 車
輪 とレール 間 には, ク リー プカ と呼 ばれ る接触 力が進行 方
向お よび左 右方 向 に作用 す る。 この力 は,車 輪 が輪軸 を構
成す るこ とに よ り,輪 軸 を レール 中心線上 に絶 えず保 つ よ
うに作 用 す る.す な わ ち,輪 軸位 置 を検 出 し,フ ィー ド
バ ック制御 を して い るこ とに相 当す る。
台車の
ナスペ ンション
(c)操舵:リンクによる誘導操舵
電 磁 ク ラ ッチ
ところが ,こ の システ ム は速度が高 くなる と不安定 にな
る.こ れが蛇行 動 と呼 ばれ る自励振動現 象 で あ る。 ク リー
プカ による減衰力 は速 度 の 向上 とともに減少 して しま う.
これ を防 ぐため に,輪 軸 だ けで な く,台 車 と言 う 2つ の輪
軸 をサ スペ ンシ ョンで結合 した装置 を用 い て車体 に結合 す
る.輪 軸 と台車枠 間 の前後 ・左 右方 向 のサ スペ ンシ ョンは,
システム を安 定化 す る働 きがあ る.
(d)クリー プ制御 輪軸
4.制 御 の 考 え 方
前述 の よ うに,台 車 は,元 来持 つ メカニ カルな 自動制御
機 能,す なわち曲線軌 道 に沿 ってセル フス テ ア リング し,
かつ ,輪 軸 や台車 に外 乱が作用 して も, レ ール 中心位置 に
復 元 させ る機 能 を持 って い る.ク リー プカ は,制 御機 能 を
つ か さどるが ,台 車 のサ スペ ンシ ョンは,シ ス テ ムの安定
化 のため に作用 し,操 舵機 能 は妨 げて しま う。そのため,
(e)セミアクティブサスペ ンシ ョン
図 2 鉄 道車両の操舵系制御の考え方 (各種制御方法のブロ ック
線図による比較)
この機械式制御 システ ムで は,サ スペ ンシ ョンのため に必
ず しもス テ ア リング性 能 は良好 で はない。 そ のため,制 御
シ ョン を改 善 し,輪 軸 の運 動 を制 御 す る手 法 で あ る (ブ
ロ ック線 図 は 図 2(b),概 要 は 図 3).輪 軸 の 運 動, レ ー
性 能 向上 を 目指 した制御 システ ム の改善 が望 まれ るので あ
ル と車輪 の相対変位 を渦電流 式 セ ンサ ーで検 出 し,油 圧 ア
クチ ュエ ー タで輪軸 の運動 を直接 コ ン トロ ールす るフ ィー
ドバ ック方式 が フ ラ ンスで 試作 されて い る1).セ ンサ ー と
レー ル 間 の 距 離 は 30± 10mmに 保 て ば よ く,曲 線 半 径
る。
今 まで に検討 され開発 されて きた各種 制御 方法 をま とめ
る と表 1 の よ うになる.
5.鉄 道車両 の操舵系の制御
5。1 輸 軸 のア クテ ィブ操舵
最 も直感 的 な方法 は,操 舵性 能悪化 に寄与す るサ スペ ン
10
2 3 m と い う急 曲線 も問題 な く通過で きる性能 を持 って い
るとい う。高速運転や信頼性が問題であると考 えられる.
走行試験 は行 われたが, い まだ実用化 されてい ない ようで
ある.
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表 1 操 舵系 の各種制御手法
手法
制御 目的
制御対象
検 出量
具体的手法
制御手法
輪軸のアクテ イブ操lt
操舵
輸軸の運動
輪軸の位置
油圧 ア クチ ュエー タな ど
アクテ ィブ
輸軸の誘導操舵
操舵
ード
ィ
輪軸の運動 (フ
・
ート制御)
フォ
ワ
曲線状況
草体 ・台車枠結合操舵 リンク
メカ ニ カル
4
クリープ制御輪軸
安定化
速度
左右車輪間の電磁 クラッチ
セ ミアクテイブ
5
進行 方 向
齢 箱 す持 岡ll性の切 り替 え
セ ミアクテ イブ
6
前後非対称化台車
操舵
ク リー プカ
サスペ ンシ ヨン
図
この台車 で は小 さい踏面勾配 にお い て, 台 車 の運動 が不安
定 とな りうる.
このボギ ー角連動方式 は詳細 にみ る と二 つ の方式 に分 け
られ る. 輪 軸 の操 舵 に よって軸 箱 支持 の ため の サ ス ペ ン
シ ョンが 変形す るか ど うかであ る. 通 常 の台車 に操舵 リ ン
クを組 み込 んだ場合 は, 操 舵 に よ リサ スペ ンシ ョンは変形
図 3 輪 軸 のアクテ イブ操舵方式
2 操 舵 リンクによ る輪軸 の 誘導操舵
5。
セ ンサ ー とア クチ ュエ ー タに よる制御が理想 的 な姿 で は
あ ろ うが,こ れ と同等 な こ とをメカニ カル に行 う方式 も提
・
案 され,実 用化 されて い る.カ ナ ダ等 で 開発 され た車体
台 車 ・輪 軸 を結 合 す る操 舵 リ ン ク を用 い た誘 導 操 舵 方
の'ので あ る (図 4).輪 軸 の位 置 を検 出す る変 わ りに,
式
ー
ー
図 2(c)の よ うに,曲 線 を検 出す るフ イ ドフ ォワ ド方
ー
・
式 で ある.曲 線 の存在 は,車 体 台車 間 のボギ 角 で検 出
し, リ ンクで輪軸 を操舵 させ る.確 実 な制御効果 と信頼性
ー
か ら実用化 が なされ,1986年 に 開業 したバ ンク バ の リニ
アモ ー タ推進車両 に本格 的 に採用 され てい る.
一方,´この方式 の弱 点 と して ,ボ ギ ー角 で は検 出 の遅 れ
が あ るこ と,台 車 が複雑 にな るこ と,新 たな不安定現 象 が
あ る こ とな どの 問題 点 も抱 えて い る。 この不 安 定現 象 は
の
Weinstock効果 と呼 ばれて お り 1通 常 の台車 で は車輪 の
2昨 向上す の に対 し,
踏面勾配 が小 さいほ ど台車 の安 定 !ま
る
し, 抵 抗 力が発 生す る。 この よ うな タイプは強市1 操舵方式
と呼 ぶ こ ともあ る. 一 方, 図 4 の よ うな タイプで は, サ ス
ペ ンシ ョンの変形 は生 じない よ うな構造 にな って い る。 こ
の よ うな タイプを誘導操舵方式 と区別す る. 我 が 国 にお い
て も, 近 年, この よ うなボギ ー角 を連動 させ る方式 の台車
が試作 されて い るが , 上 記 の定義 で は強制操舵方式 で あ る.
なお , リ ンク装置 を用 い た台車 として二 つ の輪 軸 をク ロ
スア ンカ 。リ ンクで結合 したシェ ッフェル台車 が有名 で あ
一
るが , こ の台車 で は輪軸 の運動 モ ー ドを 部拘束 した にす
ぎず, 制 御 の考 え方 は入 って い ない.
5 . 3 ク リー プカ制御輪軸
ー
サ スペ ンシ ョンはい じらず に, ク リ プカ を制御す る考
ー
え方 もあ る ( 図 5 ) . こ の手 法 で は, 操 舵機 能 は ク リ プ
カ で維持 し, 超 高速 にお け るシステ ムの安 定性 を向上 させ
るこ とをね らった もので, ド イ ツの新 幹 線 I C E 開 発 に伴
い試作 された゛.左 右 の車輪 を岡1に結合せず,電 磁 クラッ
チを用 いて結合す る.左 右 の車輪 の相対回転 自由度 は適度
ー
に与 える ことにより,車 輪 に作用するクリ プカが制御 で
croop
fom
cnol
whoolset
lqt€|olsflttness
図 4 操 舵 リンク方式
図 5 ク リープ制御輸軸方式
228
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きる.図 2(d)の ように速度に応 じてクラッチ を動作 させ
性 を得 る方式 が考 え られ る。後者 の方が,ダ ンピング作用
を得 られ るメ リ ッ トが あ るが ,前 者 の方が フェイルセ イフ
れば安定性 は向上 し,そ のため台上 試験で は,500km/h
を超す走行が可能であったが,実 用化 はされてい ない.輪
軸 に制御力 を新たに加 えるのではな く,輪 軸 に作用す る力
―
の伝遣を市1御するの で勧
弩 「 こも 方式は セ ー
―
性が 良 い 。そのため,前 者 の方式 を用 い た試作 台車が我が
1の ,15),実
国 で試作 され '1°
用化 日前 で あ る。 そ こで ,次 節
でそ の原 理硼
ブ制 御 と考 え られ る.
罰―
田て 解説す る :
6 . 前 後非対称式操舵台車
5。
4 サ スベ ンシ ョンのセ ミアクテ ィブ制御
このセ ミア クテ ィブ制御 は,エ ネル ギ ー の消 費が少 ない
とい う長所 のため に,サ スペ ンシ ョンに適用 す る こ とも当
然考 え られ る。 ク リー プカ に よる操舵機 能 を最大 限引 き出
し,サ スペ ンシ ョンに よる操舵性 能 阻害 をで きるだけ打 ち
消す よ うに,サ スペ ンシ ョンの力 の伝達 を制御 す る考 えで
6。
1 前 後非対称 台車 の考 え方
従 来 の鉄道車 両で は, 一 部 の例外 を除 いて前後両方 向 に
同等 の走行性 能が要求 され るため, 車 両 は前後対称 に設計
されてい る. セ ミアクテ ィブ制御 の考 え方 を取 り入 れ, 状
況 に応 じてサ スペ ンシ ョンの切 り替 えを前提 とすれ ば, 何
も前後対称 に定 数 を設定す る必要 はない。 す なわち, 最 適
あ る。 図 2(e)の よ うに,検 出 の 困難 な輪軸変位 で はな く,
な剛性 を前 後 の輪軸 にそれぞれ与 えるこ とがで きる。支持
検 出の容易 な速度 に よってサ スペ ンシ ョンの定数 を制御 す
岡1 性の選択 の幅 は広 が り, そ れだけ性 能向上 の可能性 が出
るのが現 実 的であ る.
もっ と も単純 で まず思 い付 く方式 として,操 舵性 能 を犠
牲 に して も構 わな い高速直線走行 時 には,軸 箱支持 岡J性を
て くる。
硬 くして安定性 を確保 し,比 較 的低 速で走行 す る急 曲線旋
軸 のみ に独 立 回転車輪 を配置 した前 後非対称輪軸台車,こ
れ ら双方 の非対称性 を持 つ 前後非対称輪軸 ・支持台車 の 3
つ が あ るの。 前述 の実用性 を考 え る と,最 も構 造 が簡単 で
回時 には,軸 箱支持 岡l性を柔 らか くして操舵性 能 を向上 さ
せ るや り方が あ る.こ の考 えを取 り入 れた試作 台車 はす で
に製作 されて い る よ うで あ る①.こ の方式 で は,走 行 時 に
輪軸 が運動 して い る最 中 に軸箱支持 剛性 を切 り替 える必要
が生 じる.ま た,曲 線走行 時 に操舵 と緩衝 す るモ ー タの装
架 を切 り替 える台車 も検討 されて い る.
一 方,図 6に は
,筆 者 の 提 案 す る前 後 非対 称 化 制 御 台
①∼1つを示 .こ
れ は,進 行 方 向 に応 じて前 軸 の 支持 剛
車
す
性 を前 後 で非対 称 とな るよ うに切 り替 える方式 で あ る.支
持 岡1性の切 り替 えは停 止時 に一度行 えば よい 。理 想 的 な操
舵性 能力γ尋られ る最適 な支持 剛性比が ,曲 線半径 には よら
ず , ク リー プカ と台車 パ ラメ ー タの 関数 で定 まるので あ る.
支 持 岡1性 の 切 り替 え 方 式 と して は,(a)の よ うな ア ク
チ ュエ ー タを用 い て 直列 に結 合 した 柔 ばね を殺 す こ とに
よって 高 剛性 を得 る方式,(b)の よ うに,減 衰 力可変 ダ ン
パ を用 い て並 列 に結合 した剛 ばね を殺 す ことに よって柔 岡1
Equlvalent
softstltfness
Equlvalent
hardstlffness
(o)
前後非対称 台車 と して,台 車 内 の支持 岡1性, リ ンク機構
な どの非対称性 のみ を考慮 した前後非対 称支持台車,後 輪
あ る前後非対称支持台車が好 ま しく,さ らにその うち軸箱
支持 剛性 のみ に非対称性 を取 り入 れ,そ の他 の構造 は通常
の台車 と同一 で あ る もの となる.
6.2 非 対称性 パ ラメ ー タとパ ー フェク トステア リング
条件
前後非対称支持 台車 で リ ンク機 構 を考 えない とき,輪 軸
の操舵 (すな わち台車枠 と輪軸 の相対 ヨー イ ング運動 )に
作用す る前後方向 の軸箱 支持 岡1性に着 目 し,前 軸 の剛性 を
41,後
軸 の それ を た
2と 表 す と,サ スペ ンシ ョンの 前後
非対 称 性 を示 す指 標 が 次式 で 定 義 で きる (αは軸 距 の半
分).
・= α
続
0
ら が , 等 価 曲げ岡1 性 たι
, 車 輪半径 4 車 輪 の等価 踏面勾配
λ, 左 右 車 輪 接 触 点 間 距 離 ( ほぼ ゲ ー ジ) の 半 分 ら, 車
輪 ・レー ル 間 の 接 触 力 特 性 を表 す 定 数 ( 縦ク リー プ係
数) κl l に よって 定 まる次 の 条件 を満 たせ ば, 線 形 理論上 ,
サ スペ ンシ ョンの前後非対称化 に よって, 理 想 的 な操舵性
actuator
trolllng
-----t/vbe€b€t
能が得 られ る. こ の条件 は, 曲 線 の 曲率 には依存 しない。
ら=2κ
′
々ι
l l λι
(2)
図 8 に 提案す る前後非対称 方式操舵台車 の 曲線旋 回時 の
truckfome
図 6
4t\7r,47t7,\>-)=>fitt
概念 図 を示す 。前軸が柔支持 で あ るため, 輪 軸 の持 つ 自己
操舵機 能 に よ リア タ ックア ングルが理 論 上 ゼ ロ となる理想
的な操舵が前後両輪軸 につ い て得 られ る。( 2 ) 式
の条件 は,
生 産 研 究
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輪軸 の持 つ 自己操 舵機 能が最大 限生 か される よ うな条件 で
あ る. 輪 軸 の左 右変位 も減少 しフラ ンジ接触 防止 も期待 で
きる。
-
6■
― 曲線旋 回 シ ミュ レー シ ョン結果 ― ― 一
―
図 7 に , 曲 線 半 径 6 0 0 m の 曲線 半径 を 1 0 0 k m / h で 走行
した と きの シ ミュ レー シ ョン結 果 を示 す 。緩和 曲線 長 は
8 0 m , カ ン トに よ り遠心力 が バ ラ ンスす る条件 で あ る。 車
ー
両 のばね特性 は線形 モ デ ル を仮 定 して い るが , 車 輪 とレ
ル の接 触 幾何 に つ い て は, 実 際 の 非 線 形 形 状 を用 い, ク
リー プカ の 計 算 につ い て は, カ ル カ ー の F A S T S I M ア ル
ゴ リズム を用 いて非線形特性 を考慮 して い る. 車 輪 の踏面
形状 につ い て は, 円 錐 踏面 と円弧踏面 形状 の2 通 りを想 定
して い る。 シ ミュ レー シ ョンで は, 比 較 のため に前軸 の軸
Curys Rsdlus:600m,Spced',27,7rn1.
箱 支 持 岡1性が 後軸 と等 しい と想 定 した対 称 台車 の シ ミュ
レ=シ ョン結果 も合せ て示 して あ る.
両輪軸 の左右変位 とア タ ックア ング ル を示 した のが 図 7
(a),(b)で あ る.対 称 台車 で は,前 軸 の ステ ア リ ン グ ア
り
ングルは小 さ く,十 分 な]米
ガヒが4● を tい 4ξVl. ごり│‐/__
一
ラ ンジ接触 が生 じて い る。 方,提 案 す る前 後非対称方式
操舵台車 で は,ア タ ックア ングル は,緩 和 曲線 区間 を含 め
ー
て ほぼゼ ロ を保 ってお り,予 想通 どお リパ フェク トス テ
ア リ ングの状態が得 られて い るこ とが理解 で きる。 フラ ン
ジ接触 も避 け られ,理 想 的 な操舵性 能 を持 って い るこ とが
わか る。
図 7(c)は 前 後輪 軸 の ス テ ア リ ング ア ング ル (操舵 角)
の変化 を示 す 。後輪軸 の前後方 向軸箱 支持 岡l性が硬 い ため,
, 0 ■,S
官 E︶︶
bE8 “一
後軸 はほ とん どステ ア リ ング しない 。 そ の代 わ り,台 車枠
は後軸 が操舵 す る よ うに ヨー イ ング し,さ らに前軸 は大 き
く操舵す る。 そ の結果 ,図 8に 示 した よ うな状態 で ,理 想
′
的 なス テ ア リ ング特 性が ほt端 られて い るこ とが わか る.
在 来台車 で は,円 弧踏面 を用 い るこ とに よ り,操 舵性能
は若干改善 され る.円 弧踏面 で は,円 錐 踏面 とは異 な り,
一
等価 踏 面勾 配 が輪 軸 の左 右 変位 に対 して 定 で は な く,
一
徐 々 に大 き くな る特性 を持 って い るか らで あ る。 方,提
_
ヽ
229
案す る前 後非対称方式操舵 台車 で は,円 弧踏面 を用 い る と,
ア タ ックア ングルが完全 に零 にはな らな くな る。 その理 由
_ _ _ 1 1 1 ∬
は次 のように説明で きる.式 (2)の
非対称指数 の計算 では,
ー
円錐踏面 に線形クリ プカ を仮定 したが,円 弧踏面 では前
ー
述 の非線形特性 のために,す べ ての状態でパ フェク トス
ー
テアリング条件 を満たせない。 また,実 際 にはクリ プカ
一
にも非線形性が存在す ることが 因であ る。 しか し,そ の
現れ る縦 クリープ定数 の不確定性 を考
差 は小 さく,式 (2)に
えれば,大 きな問題 とはならない と考 えられる.
0 にi a n c ●
(m)
(a)輪軸左右変位
Curvo Rndius:000m.Sp00d:277m
咄
0
。
■
¨
m
●
9しくyo■て
^01 V 一
咄
■
卜、
叫
●
“\
二Ⅷ∬
、》
If二′
渕
│
6.4 試 作台車 と曲線走行試験
軸箱支持岡1性の前後非対称化 のアイデアを取 り入れた試
作台車 が,在 来線 の特急用振 り子式 ボル スタ レス台車 を
●31anCO(ml
瞳白
( b ) アタックアングル
剛 ξl朧s
CuⅣo Rndh■ 000m,Sp●Bd:277"8
//
メ
イニ
″
′
′
二
蘇T耐
澁
呵
●●
llno●
(m)
図 7
偏
鵬
― TE n珈
・ょ
(c)ステアリングアングル
シ ミュレーシ ョン結果 (曲線半径 600m)
熙鼎 ss
図 8 提 案する前後非対称方式操舵台車 の概念図
230
46巻
4号 (1994.4)
生 産 研 究
ベ ー ス に東海旅客鉄道 と住 友金属 工 業 にお いて製作 された
(図 9).走 行安定性確保 のため に, ヨ ー ダ ンパ装置 を用 い
て い る.前 後 非対 称 を表 す 指標 ら は, もち ろん線 形 理論
上 パ ー フェク トス テア リ ングを実現す る よ うに,式 (21を
満
野
m
図 10に走行 試験結果 の一例 と して,測 定 され た前 台車 ,
側 車輪 に作用す る横圧 (▲)を 示す 。 曲線 半径
前輪軸,タト
420mの カ ー ブ を速度 を変 えて走行 した場合 で あ る。 前後
対 称 な従 来 の 台車 の測定結 果 もプ ロ ッ トして あ る (■).
―
―
円弧 踏面 で あ り,等 価 踏面勾 配 は約 1/7で あ る.フ ェイ
ルセ イフ を考慮 して,支 持 剛性 の切 り替 え装置 は空気圧 シ
に比 べ て 約 1/3に 減 少 して い る。 この こ とは,曲 線 旋 回
時 に車輪 とレー ル に作用す る力 が大 幅 に減少 で きる こ とに
リンダを用 い た方式 が採用 されて い る。 その詳細 な機構 に
つ い て は,文 献 (14)に詳 しい 。試作 台車 の蛇行動安定性 に
関 して は台上試験 に よ り確認 され,加 振試験 にお いて は,
な り,操 舵性 能が期待通 りに向上 された こ とになる.
臨界速度 は 220km/h(61 lm/s),加 振 を しな い場合 で は,
224km/h(62.2m/s)で あ り,在 来線 用 台車 と して十分 な
安 定性 を もって い る.
本線走行試験 は,中 央線 の名古屋 ・春 日井 間お よび申津
川 。木 曽福 島間で行 われた。最高速度 は 130km/hで あ り,
走行 安 定性 につ い て何 等 問題 はなか った。試験車両 は 381
系電車 を用 い, 1編 成 の うちの1両に前後非対称方式操舵
台車 2セ ットを,前 後台車 とも同一 向 きに装着 した.そ の
他 の車両 の台車 は,従 来の台車 (支持岡1性が両軸 とも硬 い
対称台車)で あ り,試 験結果 の比較 に用 いた。曲線半径 は
最小 300mで あ り,走 行 速度 は通常 の 速度 よ りも最 大
25km/h高 い速度 まで設定 した。
6.5 ま とめ
走行安 定性 を犠牲 とす ることな く,操 舵性能 を大幅 に向
上 させ るこ とを 目標 に,操 舵系 の制御 の考 えを取 り入 れた,
前後非対称 方式 の操舵 台車 を提 案 した。本方式 は,通 常 の
台車 にお いて,台 車 内 の前後方 向軸箱支持 岡l性を進行方 向
に応 じて前後 非対称 に岡J性値 を設定す る もので あ る。 よっ
て, リ ンク装 置 な どの必要 が な く,従 来 の台車 と構成 上大
きな変化 は無 い 。前後非対称性 を適切 に選択す る事 に よっ
て,理 論上,両 輪軸 ともに ラジアル方 向ヘ ス テ ア リ ングす
るパ ー フェク トス テ ア リ ング特性 が得 られ る.
この優 れた操舵性能 は,試 作 台車 に よる走行試験 とコ ン
ピュー タに よる走行 シ ミュ レー シ ョンに よって確 認 した.
一
試験結果 とシ ミュ レー シ ョン結果 には よ く 致 し,良 好 な
操舵性 能力V早られ るこ とが わか った。測定 された横圧 は,
在 来 台車 に比 べ て 最 大 1/3程 度 まで減 少 させ る こ とが で
きた。 なお,本 台車 は来 年 度 中 に,「 しなの」用 383系 新
型特 急車両 で 実用化 され る予定であ る.
7.結
鉄道車両台車 の操舵系 の制御 に よ り, 操 舵性 能 の改善 に
つい て, そ の研 究 開発動 向 を解説 した。 いずれ の方式 も,
い まだ本格 的 に実用化 されて い ないが , セ ンシ ング とアク
チュエ ー タによる変位の制御が必要ない とい うメ リットか
ら,セ ミアクテ イブ方式が現在の所 ,最 も有力な方式 と考
えられる。そのうち,サ スペ ンシ ョンを進行方向 に応 じて
図 9 試 作 台車
▲U n s y i n m ect ‖
suspension Truck
■C o n v e n t i o n a l T r u c k
切 り替える前 後非対称方式操舵台車 は,実 用化が間近 く有
望な方式 と考 えられる。 ロバス ト性や応答性 の観点か ら,
アクティブ操舵方式 にもメリットがあ り,今 後 のさらなる
238﹂
0﹂ EO
一
コ
展開を期待 してい る.
なお,筆 者 の提案す る前後非対称方式操舵台車 において,
実際 の台車 の設計製作,試 験 ,解 析 など,多 くの諸氏 のご
協力頂 いた.末 筆 なが ら謝意 を表 します.
1 2月15日受理)
(1993年
参
70
図 10
80
90
Veloolty(km′
h)
1o0
110
走行試験 により測定 された前輪軸外側車輪 に作用する
平均横圧 (曲線半径 420m)
考
文
献
Aknin,P,et aL
Proc of 12th IAVSD Sympo,(1991),
p147
Smith,R E and
Anderson,R」 ,Vehicle System Dyna‐
46巻 4号
(1994.4)
産
生
mics,17(1988),pl
SyStem‐
3) Smith,RE,Vehicle System Dynamics,18(1989),p45
究
231
",DSC‐
1992‐
44(1992),p65
11) Suda,Y,Anderson,R 」
4) Geuenich,W,et al,Railway Gazette lnt,19854,p279
研
"Yamada,K,Proc of 13th
1AVSD Sympo,(1993),p175
5)Hodl,H and Higermoser,A,SGP Verkehrstechnik,
1 2 ) S u d a , Y , V e h i c l e S y s t e m D y n a m i c s , 2 2 ( 1 9 9 3 )載予定
掲
HiOhlichrs
13) Suda、
Y, Anderson、 R J, Proc of Stech'93,(1993),
― ――
一―― ―
-6) Sd可 ―
―
―
2 Ser IH(1990),p176
Vol:2p:389 - 一
Y jJSME Int」 ち33・
7)須 田 ・和 田,機 論,57534,C(1991),p586
14)Yamada K,HinO,K,Proc of Stecr93,(1993),Vo12
8)須 田 ・和 田,機 論,57-540,C(1991),p2633
P407
田 ・山 田 ・日野 ・椎 葉,機 講 論,93081,(1993),
9)Suda,Yっ Anderson,R」 ,CSME Forum'Transport 1992
15)須
十
",IⅡ
(1992),p688
10)Suda,Y,Anderson,R」
p239
,ASME WAM"Transportation
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