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パワーポイント資料 - 有機・高分子物質専攻
物理2 液晶の物性定数とその測定法 石川 謙 東工大・有機・高分子物質 ※このパワーポイントをpdf化したものを、そのうちどこか(液晶学会か東工 大の有機・高分子)のHPのどこかに掲載します。多分、今年度のサマース クールのHPからリンクが張られるだろうと思います。 液晶の物性 • ネマチック液晶 – 誘電・屈折率異方性、磁気異方性、密度、温度範 囲、弾性定数、粘性係数、吸収係数、毒性… • コレステリック液晶 – ラセンの掌性、ラセンピッチ・特性反射波長、ラセ ンピッチの温度依存性… • スメクチック – 層間隔、層内秩序、層圧縮弾性率、傾き角、層内 秩序、自発分極… 今回はネマチック相の物性の一部に限定 1 ネマチック液晶相 • 分子の平均的な向きに異方性を持った流体 – 異方性の存在 • 誘電率・屈折率の異方性 →電場による応答、複屈折 • 分子長軸の平均配向方向の存在 →配向方向の空間分布による弾性 – 流体 • 低駆動電圧 • 自己修復性 • 保持体の必要性 全体の概要 • 配向秩序度 – 分子の異方性と巨視的な異方性をつなぐもの • 物性各論 – 磁気・誘電・屈折率・弾性・粘性 • 測定手法 – セル作製手法・配向秩序度測定・誘電率・屈折 率・屈折異方性・弾性率 2 配向秩序度 • • • • • • 分子の異方性と巨視的な異方性 液晶状態の対称性 配向ベクトル 配向の程度 オーダーパラメータ テンソルオーダーパラメータ 分子の異方性と巨視的な異方性 P≠0 極性・完全配向 P=0 P=0 非極性・完全配向 P=0 液晶分子の対称性 は低く、多くの場合 永久双極子を持つ 液体状態(ランダム) 非極性・不完全配向 3 ネマチック液晶の対称性 αz εz αy εy α ε x αz≠αy≠αx≠αz x εz≠εy =εx 実際のネマチック液晶は円筒対称性を示す 円筒対称性が成立する条件 • 頭が上の分子と、頭が下の分子が同数いる • 分子長軸回りに特定の配向は存在しない 左に図は長軸回りに4つの方向 しか描いていないけれど、実際 のネマチックではアボガドロ数 の分子が連続して分布している 余談的な注:これらの2つは、実際のネマチック液晶に関する実 験結果から結論された物であり、第1原理から要請されたもの ではない 4 基本 通常のネマチック液晶 n=-nなので、頭に矢印(→) を付けない n 偏光顕微鏡で暗くなるところは nが偏光子か検光子に平行 n:配向ベクトル ディレクターと発音する人とダ イレクターと発音する人がいる。 あとの話に関連する注:配向の程度は完全からはかなり遠い 余談 通常ではないネマチック液晶相 • 極性ネマチック液晶 n≠-n 配向ベクトルに平行な極性が存在 • 二軸性ネマチック液晶 通常のn配向ベクトルに加えて、それ と垂直な第2の配向ベクトルが存在 → n nl nt 欄外注:二軸極性ネマチックは今のところ見つかっていない 5 余談 ネマチック相の局所秩序 ネマチック液晶の中には局所的な2軸性秩序が見られるものもある。 この場合X線サイズの2軸性ドメインがあることになる。光の波長レベル の秩序はなく、1軸性にしか見えない 分子配向を決める因子 • 配向軸からθ傾いた時にどれだけエネルギーが不利になる かで配向分布が決まる Δ ε (θ) 2 π sinθ e kT P( θ)= - 2 π ⌠ sinθe ⌡ Δ ε (θ) kT dθ `sinθ f(θ ) 0 exp (-ΔE kT)/ π 2/ θ 6 液晶相を安定化する要因 斥力(排除体積) 異方的な引力 U=F(R, θ) 8LD2 2D(L+D)2 異方的なポテンシャルがあるから、液晶状態が存在する。 ポテンシャルの形状が分かれば、配向分布を計算できる。 しかし、第1原理からポテンシャルを計算することはできていない。 θ Absorbance(arb.units) 実験による配向分布の測定 ∑ nicos2θi 0 90 180 270 360 θ 分子の長軸方向に偏光した光のみ吸収されるとする。 この時、偏光面と分子の長軸の角度をθとすると、吸光度Absは Abs∝cos2θ となる。N個の分子からなる系での吸収の角度依存性は、個々の分子の 吸収の和なので ∑ nicos2θi となる。但しniは角度θiの分子の個数であ る。 つまり、吸収異方性では分布ni(θ)にcos2θで重みがついた分布平均 <cos2θ>しか分からない 7 <cos2θ>に依存する物性 • • • • • 屈折率異方性 誘電異方性 磁気感受率異方性 吸収異方性 (弾性定数) 実用上重要な物性は、液晶の配向分布ではなく、<cos2θ> に依存している。 それ故に、配向分布が分かっていなくても、<cos2θ>分かっ ていれば大丈夫なことが多い。 基本 2次の配向秩序度 • <cos2θ>の有り難くない点 完全配向 → 1 完全無配向 → 1/3 軸に垂直面内で配向 → -1 完全配向時の1はよいが、無配向では0になって欲しい し、垂直配向の-1も望ましいものではない。 完全配向で1 完全無配向で0 になるように、 1 P2= <3cos2θ-1> 2 オーダーパラメータはSで表記されることが多い 8 配向状態のイメージ n P2=-1/2 P2=1 n方向に完全に整列 nに垂直な面内にのみ長軸方向が分布 かなり基本 ネマチック液晶の配向程度 1 等方液体相 配向秩序度 N液晶相 0.5 * β P 2 =a(T -T) 0 * T N-IS O T 温度 T/K ネマチック相のP2は等方相転移付近で0.4程度、温度が低 くなると0.7程度まで上昇する。 9 マジックアングル 1 P2= <3cos2θ-1> 2 より、 cos2θ= 1 3 54.7 の時に 3cos2θ-1=0 である。つまり、θ~54.7度の 時にP2は0になる。この角度を マジックアングルという。 マジックアングルに分子が分布していると、ランダムな状態ではないにもかか わらず、光学的には等方に見える状況が出現する 余談 2次元系のマジックアングル 2次元の場合は45度がマジックアングル ・一部の反強誘電性液晶 ・フタロシアニンβ型結晶(非液晶) 10 少し余談 2次以外の配向秩序度 1 P4= <35cos4θ-30cos2θ+3> 8 P4はP2が0になるマジックアングルでも0にならない。 P4は偏光ラマン測定により評価できる。 P4は実用上重要な物性とは直接結びつかないので、学問的興味以外ではあ まり測定されない。 奇数次のオーダーパラメータは、通常のネマチック相では対称性から0になる。 もし、極性ネマチックだとP1,P3も有限の値となる。 P1=<cosθ> 1 P3= <5cos3θ-3cosθ> 2 P3は非線型分光測定で計測できる(と思う)。 液晶の配向方向と配向秩序度の表記 • n配向ベクトル → 主軸方向 • オーダーパラメータ(P2)→ 配向秩序 液晶の方向と配向秩序を示すのにはnとSの両方が必要 オーダーパラメータは配向主軸に対する<cos2θ>をとっているが 直交する3軸に対する<cos2θ>の投影をとれば、配向主軸と配向秩序 の両方に対する情報を記述出来る → テンソルオーダーパラメータ テンソルオーダーパラメータを使うと、局所的な配向変化を気にせずに 自由エネルギーをオーダーパラメータで展開できるので、相転移の理論 などではテンソルオーダーパラメータが用いられる。 11 テンソルオーダーパラメータ 3 Q= 2 1 <cos θx- > 3 2 <cosθxcosθy> <cosθxcosθz> <cosθycosθx> 1 <cos θy- > 3 2 <cosθzcosθx> <cosθzcosθy> たとえば、Z軸に完全配向だと Q= 1 2 0 0 0 1 2 0 注:係数が異な る表記法あり <cosθycosθz> 1 <cos θz- > 3 2 たとえば、XY面内で第1象限45度完全配向だと 0 0 1 Q= たとえば、XY面内で第2象 限135度完全配向だと 対角化によりnの方向が 自動的に求まるので、動 力学シミュレーションの結 果を評価するのには便利 1 4 1 Q= 2 0 1 2 1 4 - 0 1 4 1 2 1 2 1 4 0 0 0 0 - 1 2 0 0 - 1 2 オーダーパラメータと巨視的な異方性 • 分子の異方性と巨視的な異方性 • 配向秩序度と異方性 • 局所場の影響 12 分子の異方性と巨視的な異方性 θ B ml=μ -1 0 χlBcosθ mt=μ -1 0 χtBsinθ 2 2 m//=μ -1 0 (χlcos θ+χtsin θ)B m⊥ =μ -1 0 (χlcosθsinθ+χtsinθcosθ)B 1 -1 2 2 2 <m//>=μ -1 0 (χl<cos θ>+χt<1-cos θ>)B= 3 μ 0 (χl(2P2+1)+χt(3-cos θ))B= 1 -1 μ (χ (2P +1)+χt(2-2P2))B 3 0 l 2 配向ベクトル方向と垂直方向の平均磁化値は、分子の軸方向の感受率と オーダーパラメータで表記できる。 基本 配向秩序度と異方性 1 Χ//=N<χ//>= [ Χl(2P2+1)+Χt(2-2P2)] 3 1 Χ⊥=N<χ⊥>= [ Χl(1-P2)+Χt(2+P2)] 3 Χ//-Χ⊥=( Χl-Χt) P2=ΔΧP2 完全に並んだときの異方性にオーダーパラメーターを掛けると その状態の異方性となる 13 局所場の影響 1 -1 2 2 2 <m//>=μ -1 0 (χl<cos θ>+χt<1-cos θ>)B= 3 μ 0 (χl(2P2+1)+χt(3-cos θ))B= 1 -1 μ (χ (2P +1)+χt(2-2P2))B 3 0 l 2 分子に実際にかかる外場が、外部からの平均的な場に等しいなら、巨視的な感受率 は分子の感受率に粒子数を掛けたものに等しくなる。 しかし、誘電率や屈折率に関しては局所場の影響のため、単純な可算は成立しない。 物質内の平均的な電場強度は誘電率を用いて求めることができる。しかし、物質内部 の電場強度は均一ではなく、分子の感受率と巨視的な誘電率を結びつけるためには、 分子にかかっている局所的な電場を用いて検討しなければならない。 局所場の直感的な実例 NMRの化学シフト NMRの信号は磁場による原子の核磁気モーメントのエネルギー差に基づく。 磁場が外部磁場Bのみなら、同種の原子はすべて同じ周波数に信号与える。 ΔE B B H 実際のNMR信号は原子団により異なる位置に出現する。このことは、個々の 原子が感じている磁場が、外部磁場とは異なっていることを示している。例えば、 ベンゼン環の水素は、ベンゼン環による影響で外部磁場からのずれが生じる。 ただし、NMRにおける外場からのずれは極めてわずかな物である。 14 誘電率に対する局所場の計算 -------------------------------------++ + + ++ + + + + ++ ++ + 等方性物質の場合は、着目してい る粒子の周囲に球状の領域を考え、 その内部では双極子の和を正確に 計算し、外部では平均して扱うこと で局所場を計算できる。 異方的物質では、局所場を正確に 計算することは一般には困難であ る。 E3 -- - -- - - - - - -- - -- E2 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 局所場の補正値は配向秩序度に依 存するため、磁場のように配向秩序 度に対して線形の関係にならない。 E1 局所場の計算(等方的な場合) 等方的で非極性な系では、局所場を計算する術が与えられている。 -------------------------------------++ +++ + + + + + ++ ++ + ※着目している粒子の近傍は、粒子の分極による誘 起双極子の影響を厳密に考え、離れているところでは 平均として扱う Elocal=E1+E2+E3+E4=E+ E3 -- - -- - -- - - -- - - -- E2 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ E1 ε -1 Nα = ε +2 3ε 0 E1:外部電場 E2:反分極場 E3:空洞場 E4:双極子による場 E=E1+E2:平均的な内部電場 P 3ε 0 分子分極率と巨視的な物性を関連づける式。分子分極率αと巨 視的な比誘電率εは単純な線形関係にない 等方的でなかったり、分子に永久双極子があると(つまり液晶では)こんな簡単な関係式は成り 立たなくなる 15 異方性がある場合の誘電・屈折率 ε //-1 N = { α l. ( 2P2+1) +α t( 2-2P2)} ε av+2 9ε 0 ε ⊥-1 N { α ( 1-P2) +α t( 2+P2)} = ε av+2 9ε 0 l. 誘電率の平均値で空洞場を計算する近似では等方状態と類似の関係が得られる ただし、使うにあたっては慎重さが必要(さらに、分子の永久双極子も考慮されてない) Δn ∼ ρ1/2P2 屈折率異方性は密度が変わらなければ近似的にオーダーパラメータに比例する 誘電率の周波数分散 「カラー液晶ディスプレイ」 堀 浩雄、鈴木 幸治 編、共立出版に引用されている誰かのデータより 光の周波数では//の方が誘電率は高い(屈折率異方性は正) 16 液晶の弾性と粘性 • • • • • 固体の弾性と液体の弾性 ネマチック液晶の弾性 液晶の変形モードと弾性定数 結晶の弾性定数との違い 液晶の粘性 固体の弾性と液体の弾性 拗 固体 り 液体 曲 げ 形状の変化に対しては復元力はない 引 っ 張 り 捻り、曲げ、引っ張り、体積変 化に復元力が働く 体積変化に対しては復元力が働く 17 ネマチック液晶の弾性 外形の変化 復元力無 配向ベクトルの均一な変化 復元力無 配向ベクトルの不均一な変化 復元力有 体積の変化 復元力有 変形モードと弾性定数 スプレイ ツイスト dn x/ d x ベンド dn dn y /d x/ d z x dnx/dx, dny/dx, dnz/dx, ,,,,,,,, dnz/dz と9つの変形パターンがある。これらのうち、dnz/ の3つは、z方向 のnの変化は配向秩序の変化になるので、配向ベクトルの方向変化ではないので、考えない。残る6つの 要素と、力の方向のバリエーションを考えると、すごく沢山の弾性定数(固体の引っ張りとか曲げに対応す るもの)があるけれども、液晶の対称性からそれらは整理されて最終的に…………… 18 基本 ネマチック液晶の弾性定数 1 1 1 Fe= K1( ∇⋅n) 2+ K2[ n⋅( ∇×n) ] 2+ K3[ n×( ∇×n) ] 2 2 2 2 スプレイ ツイスト x dn K1(スプレイ)、K2(ツイスト)、 K3(ベンド)の3つの独立な 弾性定数がある。 /d x ベンド dn dn y /d x/ d z x 液晶の弾性定数(比)は、表示装置の閾特性や配向の安定性を支配する 系がキラルだと自由エネルギーの第2項に有限のツイスト(ラセン)をもた らす項が加わる。 液晶と固体の弾性定数表記 S1 s11 S2 s21 S3 s31 S4 = s41 S5 s51 S6 s61 s12 s22 s32 s42 s52 s62 s13 s23 s33 s43 s53 s63 s14 s24 s34 s44 s54 s64 s15 s25 s35 s45 s55 s65 s16 s26 s36 s46 s56 s66 T1 T2 T3 T4 T5 T6 F=-kx 1 E= kx2 2 固体では応力と歪みを結びつける係数として弾性定数が定義される。 液晶では配向ベクトルの空間変化と自由エネルギーを結びつける係数として弾性 定数が定義される 1 1 1 Fe= K1( ∇⋅n) 2+ K2[ n⋅( ∇×n) ] 2+ K3[ n×( ∇×n) ] 2 2 2 2 両者の違いは、(多分)液晶系においては、配向ベクトル方向が空間 的に変化するために、座標軸固定の議論をやりにくいことによる。(自 由エネルギーで座標系に依存しない表記の方が一般的議論が可能に なる) 19 余談 2軸性ネマチック液晶の弾性 弾性定数が3つしかないのは 1軸性ネマチック液晶相 2軸性ネマチックには12個 の弾性定数がある(らしい) 2軸性ネマチック相 ツイスト変形だけで3種類ある ネマチック液晶の粘性 • 液晶の粘性は表示装置の応答速度に影響を 及ぼす重要な物性定数である • 異方性を反映して5つの独立な粘性係数が ある • 5つの粘性係数の評価は楽ではなく、定常流 動における3つの粘性係数や、表示装置の 応答速度に関連する回転粘性(これらは5つ の粘性係数の線形結合で表記できる)で粘性 を評価することが多い。 20 物性の測定 • セルの作製 – 作成手順 – 代表的な配向 – セル厚の測定 • 各種測定 仕事でやるなら、市販のセルが楽 セルの仕様を定めるのには知識が必要 – オーダーパラメータ – 誘電率・誘電異方性 – 屈折率・屈折率異方性 – 弾性定数 仕事でやるなら、市販の装置が楽 原理が分かっていないと変なデータがでる危険性 試料測定セルの作製 ガラス切断 電極 パターニング 洗浄 ラビング ベーキング 配向膜塗布 セル組み セル厚測定 リード線付け 21 代表的な配向 ホメオトロピック(垂直)配向 ホモジニアス(水平)配向 セル厚の測定 液晶試料を入れない状態で多重干渉を利用して計測 液晶試料を入れない状態で、セルの容量を計測して算出 2r2(1-cos2δ) 4r2sin2δ R= = 1+r4-2r2cos2δ 1+r4-2r2cos2δ r= n-1 n+1 δ= 2π nd λ 干渉構造の周期からδを算出。空気の屈折率は1として先に進める。分母の変化 を無視して分子の周期性のみに着目すると、光の波長に比べてセルが厚く、複数 の干渉極大が見える場合に連続する極大の波長とセル厚の間に次式が成立する 1 λ1λ2 d= 2 λ 2-λ1 22 オーダーパラメータ測定 • 完全に配向した状態の物性値と、ある温度で の物性値の比較から、オーダーパラメータの 値を算出する。 – 完全配向の物性値を求めるのには、ちょっとした 工夫が必要 • 二色色比からオーダーパラメータの値を算出 する。 D= A⊥ A// P2= D-1 D+2 見ている吸収が完全に偏っている必要がある 温度依存性フィットからの計測 1 等方液体相 配向秩序度 N液晶相 Δn(T)=Δnmax(T0-T)α 0.5 * β P 2 =a(T -T) P2= 0 * T N-IS O T 温度 T/K Δn(T) Δnmax 物性値(例えば複屈折)の温度変化を測定する。測定結果を温度依存性 の理論式によりフィッティングする。得られた最大値を元に、その温度での オーダーパラメータ値を算出する。 23 誘電異方性 • 市販インピーダンスアナライザーを用いる – コンデンサに物質を充填し、その時の容量変化 から物質の誘電率を測定する • 配向は、配向処理剤もしくは磁場により行う。磁場によ る配向では同一セルで異方性測定が可能 • 周波数を変化しながら測定するタイプと、パルス場に 対する応答からFFTで広域の誘電率を求める手法が ある • 高周波数(GHz)になると技術が必要 • 低周波時にはイオン性の不純物があると測定がうまく いかない 屈折率測定 • アッベの屈折計 – 全反射を利用した液体の屈折率測定計 • 測定範囲1.3~1.7、1.47~1.87程度 • 配向処理によりneとnoの測定可 • 多波長タイプもある • プリズムを用いた測定 – 頂角の定まったプリズムによる屈折角測定 • 測定範囲に制限なし • 配向処理によりneとnoの測定可 • 多波長可も可能 • 複屈折のみの測定 – 直交ニコル間の着色によりne-noを評価 24 プリズムセルによる屈折率測定 δ θ 垂直入射 n= 最小偏角 sin( δ +θ) sinδ n= sin[( δ +θ) /2] sin(δ /2) 固体の屈折率測定では最小偏角が一般的な手法。液晶業界では垂直入射が多い。 セルの頂角が小さい場合は、どちらでも、あまり影響はない 複屈折量の測定手法 • 干渉色による半定量評価 • 補償による値測定 試料による位相差を相殺するような既知の位 相差量の複屈折物体をはさむ – ベレック型コンペンセータ • 楕円偏光解析(エリプソメトリー) 試料を通過後の楕円偏光の楕円率を直接測 定する。 – 回転偏光子(検光子・位相差板)法 • 透過スペクトル測定 25 半定量的な複屈折測定 干渉色図表→ 複屈折から膜厚、膜厚から複屈折が概算できる 有機物では屈折率分散の影 響で色調は変化する↓ ベレック型コンペンセータ 光軸 複屈折板(方解石)を傾けて複屈折値を連続的に変えられる 偏光顕微鏡を見ながら、試料の複屈折が打ち消されて暗くなる位置を 探し、その時の目盛りから複屈折量を計算する。 京都の日本地科学社で、ニコン・オリンパスに使えるものを売っている 26 目盛りによる干渉色変化 θ=0 θ=+ θ=+++ θ=++ 回転に従いリタデーションが大きくなり、高次の干渉色となる ベレックコンペンセータの補償 上左:ベレックは平行に装着。色調は完全に試料による もの 上中:ベレックを回しはじめる。右下から2次の青が現 れている。 上右:ベレックをさらに回す。見えているのは1次の赤。 左上はくらいが、ここは530nmの鋭敏色になっている。 下:左下から右上に走るのが補償がなされてリタデー ションが0になった黒い領域。これが、十字線の真中に なったときのコンペンセータの目盛りを読む 27 ベレックコンペンセータによる有機物 測定 • 信用できるのは、700nm程度まで • それ以上の値を拾いたい場合には、白色光 を用いた観察と、シミュレーションの比較によ り補償されている概算を定め、その上で、単 色光で値を求める必要がある。 • 原理的には試料と同じ分散を持つベレックが あれば、完全な補償は可能。 スペクトル計測による複屈折測定 • 干渉色からの複屈折評価の定量化 – ある波長での透過光量から計算 • 参照をきちんと測定しないと、値に狂いが生じる • どの象限にいるのかを確認しないと値が狂う – スペクトルからのフィッティング • 複屈折がほどほど大きく、測定範囲内で極大・極小が 出現する場合はそれほど問題なく測定できる。 • 複屈折が小さく、測定範囲で極大・極小が見られない 場合は、他の位相差板を重ねる工夫が必要 複屈折がほどほど大きく、測定範囲内で極大・極小が出現する場合はそれほ ど問題なく測定できる。 28 簡易的な顕微分光の実現 Cマウントアダプター USB接続ファイバー入力分光器とC マウントアダプターの組み合わせ 顕微鏡の写真鏡筒に組み込む。写 真鏡筒へ光を100%分岐出来る写 真鏡筒であることが必要(そうでな いと、分岐プリズムによる干渉構造 が生じてスペクトルがきれいに取れ ないことがある) USB分光器 顕微分光による複屈折測定 CNはクロスニコルでの透 過光量。500nmより短波 長領域と750nmより長波 長領域では光の漏れが生 じている。 STはスコッチテープを入 れた場合の透過量。ピー クと谷の位置や、スペクト ル形状からのフィットが可 能。データは500nm~ 750nmの範囲を使うよう に注意すべき。 29 フィッティング方法 • ピークと谷の間隔から – 簡易的に値を見積もるのには便利 – ピークと谷の位相差がπであることを利用 • 分散を無視したカーブフィッティング – エクセルなどで、グラフを描きながら、フィッティングパラ メータを手で変えて、目で判断するのも一つの方法 • 分散を含んだカーブフィッティング – 分散はコーシーの分散式(など)を用い、分散式の係数も フィッティングパラメータとする いずれにせよ、干渉構造が出ていないと苦しい → 薄い場合はベレックを使うか、工夫をする 微小複屈折測定 試料単体の複屈折が小さいと、 測定領域で、透過光は単調に減 少し、単体スペクトルから複屈折 を見積もることは困難になる。こ のような場合は、他の位相差板 と重ねて、ずれを見ればよい。 きちんと測定すれば1nm程度 のリタデーションは測定できる。 30 弾性定数の測定 • フレデリクス転移による方法 – 初期配向と磁場の方向によりK1、K2、K3が求め られる – 磁場でなく電場でフレデリクス転移をかけることも できる • 光弾性散乱 – 角度依存性により弾性定数比が定まる 磁場による配向変化 B=0 B≦B 0 B=B 0 Δnd↓ B>>>B 0 B>>B 0 B>B 0 水平配向セルに垂直方向に磁場をかけると、ある閾磁場まで、配 向状態は変化しない。閾磁場を越えると中心部から配向変化が 生じる。この現象をフレデリクス転移と呼ぶ 31 Tra n s m itta n c e I/I 0 閾値の決定 B0d=π B=B 0 Δnd↓ B≦B 0 μ 0K1 Δχ B>>>B 0 Magnetic Field B 配向変化が始まると複屈折値が変化しクロスニコル間での透過光量が変化 32