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発生とその仕組み

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発生とその仕組み
発生とその仕組み
1
はじめに
この単元では,胚の発生の過程とその仕組みを扱うが,実験・観察を取り入れた授業を
展開しにくいことやセンター試験の範囲ということもあり,卵割や発生様式の羅列的な扱
いに終始しがちであった。
今年度は実験・観察を取り入れること,また,テストを用いての理解度の評価を行うこ
とで,授業における課題や問題点を考察した。
具体的には,授業および実験観察において以下のような工夫をした。
(1)授業時の発問や問題演習を工夫することによって知識の定着をはかる。
(2)自己評価を行うことで授業のねらいや評価規準を明らかにした。
以下の実践ではウニの発生の観察を扱っているが,授業の中で押さえておきたい項目を
示し,生徒に意識させることで実験・観察のポイントや重要事項の知識・理解を深めさせ
た。また,評価項目は生徒に定着させたい知識や技能を意識したものとしたが,到達度を
はかるうえで教師と生徒側のズレを生まないようにと考え作成した。
2
単元の目標
動物の胚の発生の過程を認識し,その仕組みを理解する。
3
単元の評価規準
関心・意欲・態度
単
元
の
評
価
規
準
発 生と その 仕組 み
に 関す る事 象に 関
心 を持 ち, 意欲 的
に それ らを 探究 し
ようとする。
学
習
活
動
に
お
け
る
具
体
① 卵割 の種 類と 様
式 に関 心を 持ち ,
そ の仕 組み を意 欲
的 に探 究し よう と
する。
【行動観察】
思考・判断
観察・実験の
技能・表現
割 球 分離 や交換 移
植 の 実験 結果や ,
誘 導 によ る器官 形
成 の 例を 通して 発
生 の 仕組 みを考 察
する。
胚発生の過程を顕
微鏡で観察する技
能を習得し,観察
方法や結果を的確
に表現する。
知識・理解
胚の発生の過程と
その仕組みについ
て理解し,知識を
身に付けている。
②卵割の種類と様
式の違いを理解し
ている。
【発問】
【ワークシート】
④ウニの発生の過
程,各時期の特徴
について理解して
いる。
③ ウニ の発 生の 過
程 に関 心を 持ち ,
意 欲的 に探 究し よ
- 101-
の
評
価
うとする。
【行動観察】
【演習問題】
【ワークシート】
⑤ 実験 (ウ ニの 受
精 )に 積極 的に 参
加している。
【机間指導】
【実験レポート】
⑦ ウ ニの 卵割の 様
子 , 各時 期の細 胞
を 観 察し ,その 特
徴を判断する。
【机間指導】
⑥ウニの人工授精
の方法を理解し,
実験を進める。
【机間指導】
【実験レポート】
⑩ カエ ルの 発生 の
過程に関心を持
ち ,意 欲的 に探 究
しようとする。
【行動観察】
⑫ カ エル の胚の 各
時 期 の特 徴を判 断
し , 各胚 葉から の
器 官 形成 につい て
考察する。
【ワークシート】
⑧顕微鏡で発生の
様子を観察できる 。
その際,各時期の
特徴を的確にとら
え ,スケッチする 。
【机間指導】
【実験レポート】
⑭ 調 節卵 ,モザ イ
ク 卵 の特 徴や胚 域
の 予 定運 命につ い
て判断する。
【ワークシート】
⑯ 形 成体 の働き と
誘 導 の仕 組みに つ
いて考察する。
【ワークシート】
⑨ウニの発生の過
程,各時期の特徴
について理解し,
観察を進めること
ができる。
【実験レポート】
【自己評価カード】
⑪カエルの発生の
過程,各時期の特
徴について理解し
ている。
【演習問題】
⑬カエルの胚の各
胚葉からの器官形
成について理解し
ている。
【演習問題】
⑮胚域の予定運命
について,三胚葉
のその後の分化に
ついて理解してい
る。
【演習問題】
⑰動物の発生が形
成体の誘導によっ
て進んでいくこと
が理解できる。
【演習問題】
- 102-
4
指導と評価の計画
単元の評価規準との関連
時 学習内容
間
ねらい
関心
意欲
態度
思考
・
判断
技能
・
表現
知識
・
理解
評価方法等
1 卵割
卵 の 種類と 卵割 の
様式を学ぶ。
○①
◎②
○①行動観察
◎②発問
ワークシート
2 ウニの発
生
ウ ニ の発生 の過 程
を学ぶ。
○③
◎④
○③行動観察
◎④演習問題
ワークシート
3 ウニの発
生の観察
(1)
ウ ニ の卵と 精子 を
光 学 顕微鏡 下で 受
精 さ せ,卵 割の 様
子を観察する。
◎⑤
4 ウニの発
生の観察
(2)
光 学 顕微鏡 下で 発
生 が 進む様 子を 観
察する。
5 カエルの
発生( 1 )
カ エ ルの発 生の 過
程を学ぶ。
6 カエルの
発生( 2 )
カ エ ルの器 官形 成
について理解す
る。
7 発生の仕
組み( 1 )
8 発生の仕
組み( 2 )
○⑥
◎⑦
◎⑨
◎⑦机間指導
○⑧机間指導
実験レポート
◎⑨実験レポート
自己評価カード
◎⑪
○⑩行動観察
◎⑪演習問題
○⑫
◎⑬
○⑫ワークシート
◎⑬演習問題
調 節 卵とモ ザイ ク
卵 , 胚域の 予定 運
命 と その決 定に つ
いて学ぶ。
○⑭
◎⑮
○⑭ワークシート
◎⑮演習問題
形 成 体の働 きと 誘
導の仕組みを学
ぶ。
○⑯
◎⑰
○⑯ワークシート
◎⑰演習問題
○⑩
- 103-
○⑧
◎⑤机間指導
実験レポート
○⑥机間指導
実験レポート
5
授業展開案
科目
生物Ⅰ
使用教材
生物Ⅰ(数研出版)
総合図説生物(第一)
指導クラス
2年○組
単元
発生とその仕組み
(動物の発生)
クラス観
・普通科(文系)のクラスである。
・全員が国立大学進学を希望し,来年度のセンター試験を受験する。
・興味,関心は高く,意欲的に学習に取り組む姿勢がある。
単元の目標
動物の胚の発生の過程を認識し,その仕組みを理解する。
時間配当
8時間
本時の主題
ウニの胚(発生)の観察
本時の目標
・ウニの卵割の様子 ,各時期の細胞を観察し ,その特徴を判断できる 。
【思考・判断】
・ 顕微鏡で発生の様子を観察できる。その際,各時期の特徴を的確に
とらえ,スケッチすることができる。
【技能・表現】
・ ウニの発生の過程,各時期の特徴について理解し,観察を進めるこ
とができる。
【知識・理解】
事前指導
前時にウニの受精(実験)を行っている。
本時の位置
4時間目/8時間中
本時の展開
過程
学習項目
教師の働きかけ
学習活動
導入
10
分
本時の目標
提示
ウ ニ の 卵 割 の 様 実 験 の 手順 ,
子 , 各 時 期 の 細 目 標 を 確認 す
胞 を 観 察 し , 特 る。
徴を判断するこ
とが目標である
ことを説明する 。
展開
30
分
ウニの胚の
観察
机間指導をしな
がら,観察方法
や胚の特徴のと
らえ方を指導す
る。
卵 割 の 様子 や
胚 の 特 徴を と
ら え , 顕微 鏡
で観察する。
- 104-
評価の観点
指導の留意点
前 時の 内 容 を
確認する。
卵割の様子,
胚の各時期の
特徴をとら
え,スケッチ
することがで
きる。
机 間指 導 を 行
い ,的 確 に 特
徴 がと ら え ら
れ てい る か 確
認する。
実 験 ノ ート に 【 思考・判断 】
ス ケ ッ チを す 【 技能・表現 】
る。
各時期の特徴
について理解
し,観察を進
めることがで
きる。
【 知識・理解 】
整理
10
分
本時のまと
め
ノートを整理さ
せる
後片付け
実 験 ノ ート の
整理をする。
後片付け
自己評価カード
「発生とその仕組み」 自己評価カード
年
組
番
氏名
今日の授業を振り返ってみましょう。
はい←
【思考・判断】
1 ウニの卵割の様式は判断できましたか?
→ いいえ
4
3
2
1
各時期の特徴を判断できましたか?
①受精膜は観察できましたか?
②卵割腔は観察できましたか?
③繊毛は観察できましたか?
4
4
4
3
3
3
2
2
2
1
1
1
【技能・表現】
3 うまくスケッチできましたか?
①16細胞期の割球の大きさの違い
②原腸胚期の中胚葉(間充織)の様子
4
4
3
3
2
2
1
1
【知識・理解】
4 各時期の特徴を理解できましたか?
①8細胞期までの卵割(等割)について
②原腸胚期の原腸の陥入について
4
4
3
3
2
2
1
1
2
5
この単元(授業,実験)を通しての反省・感想・疑問点などを書いて下さい。
- 105-
6
実践例とその評価
以下の表は自己評価のクラス平均を示したものである。
1
2
3
4
ウニの卵割の様式は判断できましたか?
各時期の特徴を判断できましたか?
①受精膜は観察できましたか?
②卵割腔は観察できましたか?
③繊毛は観察できましたか?
うまくスケッチできましたか?
①16細胞期の割球の大きさの違い
②原腸胚期の中胚葉(間充織)の様子
各時期の特徴を理解できましたか?
①8細胞期までの卵割(等割)
②原腸胚期の原腸の陥入について
4
25
3
8
2
1
1
0
平均
3.7
24
19
8
9
12
7
0
2
10
2
1
9
3.6
3.4
2.4
12
14
10
10
9
9
3
1
2.9
3.1
21
12
1
0
3.6
24
9
1
0
3.7
数字は各点数(4~1)を付けた人数
平均はクラスの平均ポイントを示した
授業で学習した胚の特徴を,実際の観察で確認できるかどうかがこの授業のポイントで
ある。評価からわかるように,卵割腔や繊毛,間充織などの細かい構造は観察しづらかっ
たようである。
また,スケッチについては生徒自身の評価は低いが,かなりしっかりしたものが書けて
いた。生徒には教科書や図表の写真がイメージとしてあるので,自分のスケッチが満足い
くものではなかったと考えられる。
感 想 の な か に は ,「 発 生 の 単 元 は わ か り に く い 」「 目 に 見 え な い の も な の で 興 味 が 持 て
ない 」 な ど と い っ た も の があ っ た 。 し か し , 実験 を 通し て ,「実 際 に観 察 する こ とで 理 解
が深 ま っ た 」「 も っ と 時 間 を か けて 観 察 し て み たい 」 など と 肯定 的 にと ら える 生 徒も 増 え
てきており,改めて実験・観察の重要性を認識できた。
自己評価では発生の各時期の胚の特徴をとらえていない生徒がいることがわかる。クラ
スの大部分の生徒は教師側が設定した到達レベルに達しているとはいえ,理解の不足して
いる生徒も数名おり,机間指導や個別指導を含め今後の授業においての問題点も浮かび上
がった。加えて,実験の目的や観察のポイントなどを授業の導入においてはっきりと生徒
に示しておくことが大切だと感じた。
- 106-
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