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スイッチング電源のリップル改善 其の一

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スイッチング電源のリップル改善 其の一
The Intelligent Technology Company
スイッチング電源のリップル改善 其の一
文書管理番号:ELS100-00006
アナログ技術者への道
( アナログ超初心者からの挑戦 )
ELS100-00006
スイッチング電源のリップル改善 其の一
目次
1.
はじめに .............................................................................................................. 3
2.
題材は? ............................................................................................................. 3
3.
前回までのおさらい............................................................................................... 3
4.
フィルタ ................................................................................................................ 4
5.
例えば ADP1613 のリップルを除去する場合.......................................................... 10
6.
この課題で学んだこと.......................................................................................... 12
改版履歴 .................................................................................................................... 13
参考文献 .................................................................................................................... 13
ver. 1.0 2015 年 3 月
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ELS100-00005
1.
はじめに
この資料はアナログ初心者の私が、先輩社員の指導を受けアナログ製品を学んでいく様子を示したもので
す。本資料では、私が分からない点や疑問に思った点を中心に記載しておりますので、これからアナログ製品
に携わっていく方のご参考になれば幸いです。
2.
題材は?
今回はスイッチング電源のリップルを下げる方法を学びます。今までご紹介してきたようにスイッチング電源
は回路の構成上、リップルが発生します。電源の供給先(特にアナログ系の IC 等)によっては数十 mV のリップ
ルであっても特性を悪くする原因となりますので、供給先の要求仕様に合うようにリップルを抑える必要があり
ます。リップルを小さくするには、後段にリニアレギュレータを使用する方法やロー・パス・フィルタ(LPF)を追加
する方法が考えられますが、今回はアナログ回路を学ぶということで、LPF を使用した回路にチャレンジしてみ
ます。
3.
前回までのおさらい
ここでスイッチング電源の設計でリップルを小さくする方法と問題点を改めて記載します。
リップルの計算式(データシートより抜粋)
降圧型のリップル計算式
反転型のリップル計算式
昇圧型のリップル計算式
リップルを小さくする対策は下記の対応が考えられますが、デメリットもあります。
●インダクタサイズを大きくする ⇒面積が大きくなる。コスト UP。
●出力キャパシタを大きくする
⇒負荷応答が悪くなる。面積が大きくなる。コスト UP。
●スイッチング周波数を高くする ⇒効率が悪くなる。EMI ノイズが増す。
※変更範囲には制約があります
その他にもリップルが大きくなる要因として、以下の点に注意する必要があります。
●降圧型で低負荷時動作のパルススキップモードを使用するとリップルが大きくなる。
●反転型、昇圧型レギュレータは負荷電流によってリップルが変動する。
※パルススキップモードで動作している場合、リップルは負荷により周波数が変化するため、
フィルタではリップルをと取り除けない場合があります。
電源供給先の要求仕様が満たせない場合、
スイッチングレギュレータの後段に回路を追加しリップルを小さくします。
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4.
フィルタ
では早速、フィルタについて学んだことを記載していきます。
一口にフィルタと書きましたが調べてみると様々な分類がある様です。
◆ パッシブ・フィルタ
抵抗、コイル、コンデンサなどの受動素子で構成されたフィルタです。パッシブ・フィルタの代表例として
は RC フィルタと LC フィルタがありますが、通常 RC フィルタとして使用されているのは、簡単な1次のフィ
ルタくらいで RC を多段接続したフィルタはあまり使用されていません。
○ 抵抗とコンデンサを使用した RC フィルタ
← 多段使用することは通常ありません。
○ コイルとコンデンサを使用した LC フィルタ ← 一般的に使用される構成です。
LC パッシブ・フィルタはアクティブ・フィルタに比べ以下のような特徴があります。
○ コストが安い
○ 電源が必要ない
○ 大電力が扱える
○ 高周波まで扱える
○ 低周波の場合は LC のサイズが大きくなる
○ LC は標準的な定数が少ないので場合によっては特注部品が必要になります
◆ アクティブ・フィルタ
オペ・アンプやトランジスタなどの能動素子を使ったフィルタです。オペ・アンプやトランジスタなどの能動
素子を使ったフィルタですのでそれを動かすための電源が必要になりますが、アクティブ・フィルタは R(と
C)を使用するため入手可能な抵抗値が豊富にあり(E96 系列等)、定数設計が比較的に楽にできます。
ただし、周波数が高くなるとそれに対応したオペ・アンプが必要になりますので、比較的低周波のフィルタで
使用されます。
以下の表に LC パッシブ・フィルタとアクティブ・フィルタの比較をまとめます。
LC パッシブ・フィルタ
アクティブ・フィルタ
回路構成の容易さ
○
△
フィルタ特性
△
◎
高周波数
◎
△
低周波数
△
◎
消費電力
○
△
今回のフィルタは LC パッシブ・フィルタを使用します。
※フィルタの特性によって、チェビシェフ特性、バタワース特性、ベッセル特性などの名称がついています。
※通過帯域によって LPF,HPF,BPF などがあります。
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RC フィルタと LC フィルタの比較
◆ 電流を多く流す場合は LC フィルタを使用します。
RC フィルタを使用した場合、電流が多く流れると電圧が降下します。
RC フィルタ
R=1Ωだとしても 1A 流すと
LC フィルタ
1V の電圧降下が生じます。
※電流値が小さく、電圧降下が要求仕様の範囲内であれば、
RC フィルタを使用する場合もあります。
◆ RC、LC フィルタの周波数特性比較(ADIsimPE を使用しシミュレーションを実施)
LC フィルタでは赤枠に囲った様なピーキング波形が発生します。
RC フィルタ
LC フィルタ
一般的に-3dB 時の周波数が
fc(カットオフ周波数)です。
fc(カットオフ周波数)
下図の様な回路でシミュレーションを実施しました。
R
L
C
C
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◆ LC フィルタでのピーキング
LC フィルタでは前ページで記載したようにピーキングが発生します。抵抗値を大きくすれば、ピーキングは
小さくなります。しかし、抵抗値を大きくすると電圧降下が大きくなってしまいます。このためピーキングを小さ
くするのではなく、スイッチング周波数と重ならない様に定数を決めれば影響は、少なくフィルタとして使える
のではないかと思います。
L 側の DCR を変更
C 側の ESR を変更
DCR=10mΩ
DCR=100mΩ
DCR=1Ω
抵抗値が大きくなると、ピーキングは小さくなりますが、
抵抗値を大きくすることは好ましくありません。
DCR=10Ω
DCR=100Ω
ESR=3mΩ
ESR=30mΩ
ESR=300mΩ
ESR=3Ω
ESR=30Ω
◆ LC フィルタのカットオフ周波数
LC フィルタの値を変更し動作を確認してみます。
C の値を変更
L の値を変更
L=1μH
L=10μH
L=100μH
C=100nF
C=1μF
C=10μF
fc=1/2π√LC なので、値が大きくなると
fc は低い周波数になります。
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<参考>ADIsimPE の機能
値を変更してシミュレーションする場合は「Multi Step Analysis」が便利です。
値を変えてシミュレーションしたい場合、
Multi Step Analysis が便利です。
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◆ 高次フィルタ
フィルタについて調べていると、1 次、2 次という記載がありますが、以下の様な定義になっています。
1 次は周波数が 10 倍で Gain が-20dB
4 次は周波数が 10 倍で Gain が-80dB
2 次は周波数が 10 倍で Gain が-40dB
5 次は周波数が 10 倍で Gain が-100dB
3 次は周波数が 10 倍で Gain が-60dB
6 次は周波数が 10 倍で Gain が-120dB
という様に定義されています。(参考:20dB=10 倍、40dB=100 倍です)
RC フィルタでの高次例
確認に使用した RC フィルタ回路例
周波数特性グラフ
1次
周波数 10 倍で Gain-20dB
2次
周波数 10 倍で Gain-40dB
3次
4次
5次
6次
周波数 10 倍で Gain-120dB
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◆ 2 次の LC フィルタ
コイルとコンデンサを1ずつ使用した回路で周波数特性のシミュレーションを行ったところ、周波数 10 倍で
Gain=-40dB のグラフとなったので 2 次の LC フィルタということになります。
2 次の LC フィルタ
1~3 次の RC フィルタと 2 次の LC フィルタ波形比較
2 次の LC フィルタ(周波数 10 倍で Gain=-40dB)
1 次の RC フィルタ
3 次の RC フィルタ
2 次の RC フィルタ
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5.
例えば ADP1613 のリップルを除去する場合
◆ ADP1613 のリップルを除去
ADP1613 のリップルは前回測定した通り、負荷電流が増えるとリップルも大きくなりますのでフィルタを利用
してリップルを抑えたいところです。
ADP1613 のスイッチング周波数は 1.3MHz
◆ ADP1613 スイッチング周波数は 1.3MHz
ADP1613 のスイッチング周波数は 1.3MHz なので、この周波数付近以上を減衰させることができれば、リッ
プルは小さくなるはずです。
2 次の LC フィルタで L1 値を変更
コイル値変更で以下のように減衰できます
L1= 1μH→-40dB
L1= 10μH→-60dB
L1=100μH→-80dB
1.3MHz
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2 次の LC フィルタで C1 値を変更
コンデンサ値変更で以下のように減衰できます
L1= 1μH→-60dB
L1= 10μH→-80dB
L1=100μH→-90dB
1.3MHz
高次化した場合の例(2 次、4 次、6 次)
2 次= -50dB
4 次=-110dB
6 次=-170dB
1.3MHz
⇒次回、シミュレーション結果を元に実測定を行います。
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6.
この課題で学んだこと
リップルを小さくする場合、レギュレータを使用する方法しか考えていませんでしたが、場合によっては
LPF でも接続先の要求仕様を満たすことが出来そうだということが理解できました。LC フィルタでリップルを
除去できれば、レギュレータに比べ、コストと消費電力が抑えることができますのでメリットも大きいかと思い
ます。
今回のシミュレーション結果では 2 次の LC フィルタ(L=1μH、C=1μF)とした場合でも 40dB 減衰できる
ことから、結果を参考に、次回は実機での検証をおこなってみたいと思います。
次は実機検証と作業に取り掛かろうとしたのですが、先輩社員の手によって既に改造されてしまいました。
先輩、ちゃんと元に戻してくださいよ。
評価ボードは先輩の実験基板に組み込まれてしまいました。
アナログを教えてくれる別の先輩社員は、何やら自作した基板を使って評価中です。
2 人の先輩社員曰く、「自分の目で確認しなくては分からない」だそうです。
シミュレーションで横着をしている私は、アナログ技術者への道は遠そうです。
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改版履歴
Version
改定日
改定内容
1.0
2015 年 3 月
・新規作成
参考文献
 各データシート、アプリケーションノート
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