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胃静脈瘤に対するバルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術

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胃静脈瘤に対するバルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術
胃静脈瘤に対するバルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術
病態および原因
胃静脈瘤とは胃壁内の静脈が、異常な拡張し内腔に突出した病態です。通常は食道静
脈瘤などと同様に肝硬変などの門脈圧亢進症により二次的に発生します。静脈系の血管
には腸から肝臓へ向かう門脈(図1黄色の血管)と四肢や腎臓などから心臓へ向かう体
静脈(図1青色の血管)の二種類の血管が存在します。肝硬変などで門脈圧が上昇する
ことにより通常は肝臓の方向へ流れる胃静脈が逆向きに流れ、潜在的に存在する(元々
正常でも多少は存在する)吻合を通って体静脈へと流れていきます(門脈体静脈短絡)
。
その際にたまたま、胃壁内を通り内腔に突出した場合に胃静脈瘤を形成します。
図1 胃静脈瘤模式図
症状は出血をしまい限りは通常無症状です。しかし、いったん出血を起こすと、かな
り大量の出血を起こし命にかかわることがあり、かつ食道静脈瘤と異なり内視鏡的に治
療が困難なことが多いとされています。また門脈体静脈短絡が大きい場合には意識障
害などの肝性脳症を起こすこともあります。
治療法
胃静脈瘤に対する治療法としては、大きく分けて1.外科的手術、2.バルーン閉塞下
逆行性経静脈塞栓術、3.内視鏡治療、の3種類の方法があります。外科的手術とは病
変部の流入する血管の遮断や胃切除などにより治療を行います。治療効果は高いとされ
ていますが、他の治療法と比べて侵襲が大きく、もともと肝硬変で予備能が低下してい
る場合には術後肝不全などの危険性があります。内視鏡治療では直接病変部に薬剤を注
入して静脈瘤を閉塞せせる硬化療法と静脈瘤を内視鏡的に縛って閉塞させる方法があ
ります。低侵襲な治療で、出血に対する一時止血効果は高いとされていますが、再出血
の危険性が高く、根本的な治療法としてはいまだ確立はしていません。また、手技の難
易度が高く根治的な治療には比較的高度な技術が要求されます。バルーン閉塞下逆行性
経静脈塞栓術とは血管造影の技術を応用した治療法で、胃静脈瘤を出口側から閉塞させ
る治療法です。胃静脈瘤の出口をバルーン(風船)で閉塞しそこから硬化剤を注入する
ことにより、静脈瘤を閉塞させます(図2)
。
図2 バルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術
治癒率は病変の大きさや、静脈瘤に関与して切る血管の複雑さなどにより異なりますが、
一般的には 85%以上といわれています。病変が大きい場合や血管が複雑な場合には治
療の難易度が高くなることから、動脈・静脈塞栓術(血管造影の手技を用い病変を栄養
する動脈や病変から流出する静脈をプラスチック粒子やコイルなどで閉塞する)や経門
脈塞栓術などを併用または変更する必要があります。
バルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術の目的・役割としては以下のものがあげられます。
1.
静脈瘤を閉塞・縮小させることにより出血(再出血)の危険性を減少・消失さ
せる。
2.
肝性脳症の改善。
バルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術の詳細および合併症
治療は基本的に局所麻酔にて行います。まず足の付け根に局所麻酔をした後に、約 5mm
程度皮膚に切れ目をいれてそこからバルーンカテーテルという約 2-3mm 径の風船付の
細い管を入れて血管の中を通して、胃静脈瘤の出口に挿入します。さらに、その管の中
を通して 0.5-6mm 程度の非常に細いカテーテルを挿入し、胃静脈瘤近傍に導入します
(図2)。続けてバルーンを膨らませて血流を遮断した後に、硬化剤を注入して静脈瘤
を閉塞します。それにより静脈瘤を血栓化して治癒させます(図3)。胃静脈瘤につな
がる経路は屈曲蛇行を起こしている場合が多く、また主流出路以外に複数の流出路を伴
っている場合もしばしば見られ、以下に血流を遮断してかつ静脈瘤に硬化剤を停滞させ
るかが、本治療法の一番のポイントとなります。
図3 胃静脈瘤症例
術前 CT、術中 X 線写真、術後 CT
場合によっては前述のようにコイルにて他の流出路を閉塞したり、両側の足からカテー
テルを挿入して治療を行ったり、動脈からカテーテルを挿入して適時血管造影や動脈遮
断などを併用して治療を行うことが必要な場合があります。硬化剤はエタノールアミン
オエレートという薬剤で、下肢の静脈瘤などの閉塞にも使用される薬剤です。血管閉塞
効果、組織障害ともに硬化剤の中では中等度の強さの薬剤です。注入後約 30-40 分停滞
させた後可能な限り回収して手技を終了します。また、液体塞栓物質シアノアクリレー
ト(アロンアルファーの医療用類似品:保険適応外)を使用する場合もあります。
合併症は一般的に約5%-10%程度と報告されています。合併症の内容としては治療薬の
副作用による腎機能障害、カテーテル(管)挿入の際の血管穿孔による出血、穿刺部の
出血、肝不全などです。自験 80 例中では腎障害 1 例、腹腔内出血 1 例を経験しました
が、いずれも、保存的に軽快しました。その他治療に伴う副作用として発熱、腹水が約
30-50%にみられます。また、食道静脈瘤の増悪が約 30%でみられますので、治療後に
は定期的な内視鏡検査にて確認する必要があります。
以上のごとく、胃静脈瘤に対するバルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術の治療法の病態お
よび治療法について概説しました。
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説明医師名
病院放射線科
患者または代理人氏名
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