...

第 4 章 欧州の湿地復元事例例からの事例収集作業 本研究では,欧州で

by user

on
Category: Documents
1

views

Report

Comments

Transcript

第 4 章 欧州の湿地復元事例例からの事例収集作業 本研究では,欧州で
第4章
欧州の湿地復元事例例からの事例収集作業
本研究では,欧州で行われている(行われた)湿地復元事業を選定する母集団として,
欧州連合(以下,
「EU」)の下部機関である LIFE の助成によって行われた自然・環境保護事
業を選んだ.本章ではまず,LIFE とその自然保護事業について解説する.次に湿地復元事
業の選定作業の方法とその結果について,最後に,欧州の湿地復元事業から事例を収集す
るために行ったアンケート調査の概要と回答結果について述べる.
4-1 調査対象 1),3),4),5)
LIFE は環境の保護や改善を目的とした事業に助成を行う EU の機関である.LIFE プロ
グラムは EU の環境政策の中で最も先進的な事例である.設立された 1992 年から 2002 年
の間に 2060 件の環境保護事業(湿地復元事業を含む)に対して助成を行っている.
本研究では,アンケート調査の対象となる湿地復元事例を LIFE の助成のもとで行われて
いる(行われた)事業から選定することにした.
4-2-1
LIFE について 2), 3), 4) ,5)
LIFE のプログラムは LIFE-Nature と LIFE-Environment, LIFE-Third countries とい
う 3 つの分野に分かれている.それぞれに助成対象事業と対象国(地域)が異なる.それ
ぞれの分野ごとの事業データベースがインターネット上で公開されており,LIFE-Nature
の 623 件, LIFE-Environment の 1046 件,LIFE-Third countries の 116 件の事業概要を
LIFE のホームページ上で閲覧することができる.事業概要には,事業名や連絡先,LIFE
からの助成額,事業内容の概要について書かれており,そのほとんどが英文である.
LIFE 各分野の助成対象事業を表 4-1 に示す.
表 4-1
LIFE-Nature と LIFE-Environment,LIFE-Third countries の助成対象事業
LIFE Nature
LIFE Environment
主に EU での野生生物,植物の保護,自然生息地の保護を目的と
した事業
主に EU での地球温暖化に対する技術やリサイクル技術の開発
などを目的としたパイロット的事業
環境行政機構設立のための技術的支援や自然保護活動,持続可能
LIFE Third countries な開発を促進するためのデモンストレーション活動を目的とし
た事業
14
4-2-2
LIFE 助成対象国(地域)6)
LIFE Nature と LIFE Environment は EU に加盟している 15 ヶ国,
(a) ポルトガル,
(b)スペイン,(c)フランス,(d) イタリア,(e)オーストリア, (f) ルクセンブルク,(g) ベル
ギー,(h) デンマーク,(i) オランダ,(j) ドイツ,(k) ギリシャ,(l) イギリス,(m) アイ
ルランド,(n)スェーデン,(o) フィンランドと中央・東ヨーロッパの 6 カ国,(p)エストニ
ア,(q)ハンガリー,(r)ラトビア,(s)ルーマニア,(t)スロベニア,(u)チェコスロバキアで行
なわれる事業を対象に助成を行っている.
LIFE Nature と LIFE Environment の助成対象国を図 4-2 に示す.
LIFE Third countries では,アルバニア,アルジェリア,ボスニア・ヘルツェゴビナ,
クロアチア,ギブロス,エジプト,イスラエル,ヨルダン,レバノン,マルタ,モロッコ,
ヨルダン川西岸地区およびガザ,シリア,チュニジア,トルコ,ロシアのバルト海海岸線
地域の 16 の国と地域で行われる事業が助成対象である.
EU 加盟国
その他の六カ国
a) ポルトガル
b) スペイン
f) ルクセンブルク
g) ベルギー
k) ギリシャ
l) イギリス
p) エストニア
q) ハンガリー
u) チェコスロバキア共和国
c) フランス
h) デンマーク
m) アイルランド
r) ラトビア
d) イタリア
i) オランダ
n) スェーデン
s) ルーマニア
e) オーストリア
j) ドイツ
o) フィンランド
t) スロベニア
図 4-1 LIFE Nature と LIFE Environment の助成対象国
15
4-3 事業選定作業について
欧州における湿地復元事業の選定作業では,LIFE データベース上の LIFE-Nature と
LIFE-Environment,LIFE-Third Countries を合わせた 1785 件の事業を対象として,後
述するキーワード検索によって 169 件の事業を選定した.1785 事業のデータはホームペー
ジ収集ソフト“波乗野郎”によって 2002 年 5 月 21 日に収集した.
次に,上記 169 件から,連絡先の記載のない 24 件を除いた 145 件にアンケートを送信し
た.しかし,そのうち 49 件は連絡先の変更などにより送信できなかった.
アンケートが送信できた 96 件のうち 23 件から何らかの回答を得た.そのうち有効回答
は 14 件であった.有効回答は,その事業が農地に干拓した湿地を再び湿地に復元した欧州
の事例という条件を満たすものである.
本研究の事業選定作業の流れを図 4-3 に示す.
LIFE Database
1785 件
検索結果
キーワード検索
169 件
145 件
24 件
80 件
23 件
有効回答
14 件
回答なし
連絡先なし
キーワード選定
回答
96 件
送信
49 件
送信不能
9件
73 件
無効回答
図 4-2 事業選定作業のプロセス
4-3-1 キーワードの選定作業
本研究では,LIFE データベース上の事業から湿地復元事例を選定するため,キーワード
検索を用いた.検索対象は,LIFE Database の 1785 件である.
キーワード選定のために,LIFE データベース上の事業概要 80 件を無作為に選出,それ
らから本研究の調査対象の定義により,「湿地」,「復元」,
「農地・農業」に関係する英単語
をすべて抽出した.事業概要のほとんどが英語で書かれているため,英語のキーワードを
用いることにした.
16
上記の作業で抽出したキーワードを表 4-4 に示す.
表 4-4 湿地復元事業選定のためのキーワード一覧
「湿地」
「復元」
「農地・農業」
bog, fen, lagoon, lake,
reclaim, reclamation, reconvert,
agriculture,
marsh, meadow, mire,
recreate, reestablish, rehabilitate,
arable, crop,
pond, river, swamp,
rehumidify, rejuvenate,
farm, field
wetland
renaturalization, restore,
restructure, revitalize
4-3-2 湿地復元事業選定作業
表 4-4 で示したキーワードを用いた検索によって LIFE のデータベースから湿地復元事業
と考えられる事業を選定した.
検索手順を以下に示す(図 4-4 参照).
(1)「湿地」に関するキーワードで検索
湿地に関するキーワードのいずれかを含む事業を選出するため ”or” 検索を行った.他の
キーワードに関しても同様である.
bog or fen or lagoon or lake or ・・・
この結果,727 件がヒットした.
(2)「復元」に関するキーワードで検索(“or”検索)
reclaim or reclamation or reconvert or recreat or ・・・
この結果,557 件がヒットした.
(3)「農地・農業」に関するキーワードで検索(“or”検索)
agricultur or arable or crop or farm or ・・・
”agricultur“とは,”agricultural”と”agriculture” の共通部分である.他の同一単語群に
おいても同様に共通部分を用いた検索を行った.
この結果,662 件がヒットした.
(4)
(1),
(2),
(3)の結果から,それぞれのキーワードを同時に含む事業を「&」条件で
選定した.その結果,169 件の事業概要を得ることができた.
17
LIFE データベース 1785 件
(1)
「湿地」の
検索結果
727 件
(3)
「農地・農業」
の検索結果
625 件
(2)
「復元」の
検索結果
557 件
(4)それぞれキーワードを
同時に含む 169 件の事業
図 4-3 湿地復元事業選定方法
4-4
4-4-1
欧州の事業へのアンケート調査
アンケート送付先の選定と送付
欧州の湿地復元事例から関連情報を入手するため,上述の湿地復元事業選定作業により
得られた 169 件から,連絡先の記載がない事業(電話番号のみの事業を含む)を省いた 145
件に対してアンケートを送付した.しかし,連絡先の変更などにより送信することができ
なかった事業が 49 件あったため,送信できた件数は最終的に 96 件(E-mail 56 件,Fax 40
件)となった.質問内容は,第 4 章で記述したヒアリング調査結果を参考に作成したもの
である.アンケートの送信は,E-mail を用いて 2002 年 10 月 24 日に行った.また,Fax
番号だけの事業に関しては,送付先の事業が湿地復元を行っているかどうかの確認と
E-mail アドレスの入手を目的とした文章を 2002 年 10 月 27 日に Fax で送信した.送信し
た 40 件のうち 7 件から返信があり,それらの事業に対してアンケートを送信した.
18
4-4-2
アンケート回答数
2003 年 1 月 10 日までに 23 件の事業からアンケートに対するなんらかの回答を得ること
ができた.しかし,23 件のうち本研究の調査対象となる,すなわち,農地に干拓した湿地
を再び湿地に復元した欧州の事例という条件を満たす湿地復元事業は 14 件であった.残り
9 件はいずれかの条件を満たしていなかった調査対象外であった(湿地復元ではない事業 8
件,欧州外の国で行われた事業 1 件).14 件を国別に見ると,アイルランド 1 件,イタリア
1 件,オランダ 1 件,スペイン 3 件,スロベニア 1 件,デンマーク 3 件,ドイツ 1 件、ベ
ルギー3 件の計 8 カ国であった(表 4-6 参照).
上記 14 件の事業に対しては,返信内容で不明確な点や不十分な点に関して再度,問い合
わせるとともに,追加のアンケートを作成し,送付している.
表 4-3 国別の有効回答件数
事業国
件数
アイルランド
1件
イタリア
1件
オランダ
1件
スペイン
3件
スロベニア
1件
デンマーク
3件
ドイツ
1件
ベルギー
3件
14 件
計
19
【参考文献】
1) What is LIFE -Third Countries
<http:// /europa.eu.int/comm/life/3countr/pres.htm>2003/1/10
2) LIFE: LIFE Homepage
< http://www.europa.eu.int/comm/environment/life/life/index.htm > 2002/12/04
3) LIFE: LIFE Nature Database
< http://europa.eu.int/comm/life/nature/index.htm>2002/5/20
4) LIFE: LIFE Environment Database
< http://europa.eu.int/comm/life/envir/index.htm>2002/5/20
5) LIFE: LIFE Third countries Database
< http://europa.eu.int/comm/life/3countr/index.htm>2002/5/20
6) LIFE: LIFE Contacts
< http://europa.eu.int/comm/environment/life/contact/index.htm>2002/12/05
20
Fly UP