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一人ひとりがいきいきと輝く学校生活を送る

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一人ひとりがいきいきと輝く学校生活を送る
小学校
一人ひとりがいきいきと輝く
学校生活を送る
∼自分,友だち,そして今を大切に∼
No.1
たつの市立香島小学校
や
主幹教諭
1
はじめに
本校は,山や川の豊かな自然に恵まれ,ま
た,地域の方々との交流がさかんで,校内の
学習だけでは体験できない学びの機会がたく
さんある。全学年1学級の小規模校であり,
児童は,たいへん素直で,誰にでも気持ちの
よい挨拶ができる。
「縦割り班」など,学年を
超えての活動がさかんで,人に優しく接する
ことのできる児童が多い。しかし,人前に
立って話すことや積極的に感想や意見を発表
することを苦手とする児童もいる。
そこで,「Do your best ! (今,最善をつく
せ)」を合い言葉に,自分の思いをはっきり伝
え,学級・学校・地域の中で自尊感情をもつ
とともに,自分を支えてくれているいろいろ
な方々への感謝の気持ちを表せるよう取り組
んできた。これから紹介する実践は,児童が
「ああ,香島小学校の,この学級でよかった」
と満足感や達成感を感じられるよう,少しず
つ自分なりの工夫をしながら取り組んだ,昨
年度の6年生中心の実践である。
2
ぎ
八木
み
さ よ
三佐代
教育実践
(1)個の力を高める
∼毎日の積み重ねを大切に∼
① 1分間スピーチ
朝の会で,毎日2人ずつ日番が行う1分間
スピーチでは,次のような実践をし,内容の
充実を図った。
・時期にあったテーマを事前に知らせ,
「限りなく
1分間に近いスピーチ」を目指して,構想を練
らせておく。(月に1∼2回)
《テーマの一例》
4月…自己紹介・家族の紹介
5月…修学旅行(見所・お土産Best3など)
6・7月…「もしも,…」シリーズ
9・10月…運動会・音楽会
11・12月…行ってみたい国・時代,
「○○vs○○」シリーズなど
1月…今年の抱負・冬休みの思い出
2月…小学校での思い出の品物・場所
3月…「何が出るかな?」シリーズ
・
「みんなの方を向いて」
「大きな声で」
「自分の思
いが入っているか」などの観点を示し,お互い
に評価し合う。
・友だちのスピーチを聞いた後すぐに,数名が感
想を述べる。(その場でアトランダムに指名)
▲ 合い言葉は,「Do your best!」
8
学年当初は,スピーチが30秒も続かず終
わってしまったり,感想も言えなかったりし
た児童が,こうした取組を進める中で,次第
に,メモに頼ることなく人を引きつける内容
のスピーチができ,感想を述べる際にも,よ
は,よくやられているが,個人差があり,時
かった点や共感できる点などがすぐに言える
間もかかるので,20問にした。20問なら答え
ようになってきた。学年末には,某テレビ番
合わせを含めても3分程度で終わるので,毎
組のようにサイコロをふり,出たテーマのス
時間取り組めた。
ピーチを即興で行うことにもチャレンジし
また,児童の意欲を持続させるために,
「1
た。テーマは,
「6年間で一番うれしかった
桁の足し算・かけ算」だけでなく,
「2桁以上
こと」「超はずかしかった話」
「給食Best3」
,
の引き算」や,
「2桁÷1桁の割り算(割り切
おまけの「ダジャレ」などで,1つ目のテー
れなければ×印を記入する)」
,
「小数のかけ
マを話し終えてまだ時間があるときは,もう
算・割り算」など問題のバリエーションを増
一度サイコロをふってもよいこととした。す
やしたり,タイムを計って,自己の記録に挑
ると,文字通り「何が出るかな?」と,言う
戦させたりした。すると,計算力アップとと
方も聞く方もワクワクしながら,毎日楽しく
もに,その後の授業にも,集中して取り組む
スピーチに取り組むことができた。同じテー
ことができた。
マが,続けて出ることもあったが,しっかり
と対応できていた。この毎朝のスピーチが, ④ 季節の俳句作り
国語の「短歌と俳句」や「修学旅行の思い
全校生の前で会を進行したり,代表で意見を
出俳句(短歌)
」の学習を受け,年間を通して,
述べたりする場で大いに役立っていた。
俳句作りに取り組んだ。季語を入れ,たった
② 新聞作り
の17音で季節の感動を表すことは難しいが,
社会の歴史学習のまとめとして,単元ごと
「うれしい」とか「楽しい」などの言葉は使わ
の新聞作りを継続して行った。歴史だけでな
ないことを目標に,
話し合いながら作成した。
く「修学旅行」や「政治」をテーマにした新
作った俳句は,短冊に筆ペンで清書し,イラ
聞も作成し,みんなで鑑賞し合った。新聞に
ストと手作りの落款注)を加えて仕上げ,毎回
は,ただ資料を書き写すだけでなく,必ず自
分の見解(コラムなど)を入れるようにした。 掲示した。新聞同様,当初は標語のようだっ
友だちの新聞を見ることで,レイアウトにも
たが,次第に俳句らしくなり,季節感のある
工夫が見られるようになり,挿絵を効果的に
短冊となっていった。最後の
「思い出の品物」
配置したり,独自のキャラクターや4コマ漫
をテーマに作った作品(季語は入れなくても
画・クイズなどを組み込んだりしながら,人
よい)は,言葉の順序や表記にもこだわって
の目を引き,読み応えのある内容となって
仕上げ,学校生活のしめくくりにふさわしい
いった。いつも,新聞を貼り出すとすぐにみ
思い出の作品となった。
んな駆け寄り,お互いのがんばりを認め合っ
《作品例》
たり,次への意欲を高めたりしていた。この
山たちも 緑濃くなる 衣替え
活動が,給食センターに贈った「感謝の給食
あさがおで カーテンつくり エコの夏
新聞」や,「理科の調べ学習」
,国語の「平和
はだざむい つめたいお茶よりあついお茶
のとりでを築く」学習後の「平和発表会」な
泣いてでも 練習しきった 努力の黒帯
どにもいかされていた。また,一昨年は,
「省
エネ」をテーマにした「エコ新聞コンクール」 ⑤ リコーダー奏
にクラスで応募し,
全国で3校だけ選ばれる,
終わりの会では毎日リコーダー奏にも取り
団体賞を受賞した。
組んだ。リコーダーが苦手な児童もいたが,
③ 20マス計算
みんながよく知っている曲を月毎に変えなが
算数では,計算力をつけるため,授業の最
ら選び,取り組むうちに,楽譜を配るやいな
初に「20マス計算」を行った。
「100マス計算」 や休み時間や家庭でも練習するようになり,
注)書画が完成したとき,作者が署名・押印すること。またはその署名・押印。
9
どんどん上達していった。リコーダーの美し
い音色は,心を落ち着かせる。そして,1つ
のハーモニーをみんなで奏でることで,気持
ちよく1日を終えることができた。最後の参
観日や謝恩会・卒業式でも,自分達を支えて
くださった方への感謝の気持ちを表すため,
リコーダー奏をやりたいと希望し,参加者に
感動を与える演奏となった。
ちなみに,成功が確実になったときから,
一番上の児童は,
「先生,僕,立てるで。立ち
たい」と言っていたので,最後の練習後,
「も
し,立てそうだったら立ってもいい。でも,
絶対無理はしないように」と伝えていた。そ
して,本番前には,下の児童達も「大丈夫や。
立て!」と励ましていたようで,その場で立
つことを決心したらしい。
(2)集団の中で力を伸ばす
∼力を合わせることのすばらしさを感じ取る∼
①
7段ピラミッド
毎年運動会では,4・5・6年生で組立体
操に取り組んでいるが,そのクライマックス
として,一昨年度より7段ピラミッドに挑戦
している。一人ひとりの負担を軽くするた
め,従来のピラミッドではなく,三角錐型の
多人数によるピラミッドにした。しかし,組
立体操を初めて行う4年生を交えてのピラ
ミッドである。6段までは順調に進んだが,
7段となると一番上は高さもかなりあり不安
定で,なかなか成功しなかった。安全を考え,
あきらめかけていたが,児童から「どうして
も7段をやりたい」という強い希望もあり,
チャレンジを重ねた。当初は,
「膝が痛い」と
か「もっとうまく乗ってよ」など不平不満の
連発であったが,
練習を続ける中で
「どうやっ
て乗ったら,下の子が痛くないか」
「上の子が
怖くないか」など,他の児童を思いやる言動
が多く見られるようになっていった。そし
て,ふらつきながらも初めて完成したときに
は,大きな歓声が上がった。本番の運動会で
も見事なピラミッドが完成し,観覧席から大
きな拍手をもらうことができた。
「あきらめ
ずにがんばってよかった」と児童の顔も満足
感でいっぱいだった。昨年度は,児童数がさ
らに減少したが,再度7段ピラミッドに取り
組み,当日には,練習でも挑戦したことのな
い一番上の児童が立つという大技を決め,運
動会の最大の見せ場となった。そのとき,見
ていた教師や保護者に大きな感動を与えた。
10
▲ 力を合わせて作り上げた7段ピラミッド
②
実物大の大仏の顔作り
社会の歴史学習や修学旅行での体験をいか
し,模造紙30枚を使って「実物大の大仏の顔
作り」
を行った。作成手順は次の通りである。
1
30のパーツに分かれた設計図の,自分の担当
の部分を模造紙大に拡大する。
2
上下・左右の模造紙と合わせながら,線を調
整し,つないでいく。
3
全部の模造紙を裏返し,ガムテープでとめ,
周囲なども補強する。
4
表に返して,鉛筆の線をさらに太くし,形を
整える。
5
線を墨で,約10cm幅になぞる。
6
完全に乾かし,金色の絵の具で塗る。
最初は,「顔だけなのに模造紙30枚も使う
の?」
「こんなに大きいのは無理だ」と不安に
思っていたようだが,
みんなで声をかけ合い,
足を墨だらけにしながらも,力を合わせて,
作業を進めた結果,迫力ある大仏の顔を完成
させることができた。児童は,
「一人ではで
きないけれど,みんなで力を合わせると,こ
んなに大きなものが作れるんだ」という満足
感でいっぱいだった。そして,修学旅行で見
た大仏の大きさを改めて実感することができ
た。完成した大仏は,参観日や卒業式にも展
示し,みんなの取組を多くの方に知っていた
だくことができた。
戦隊,香島ックス」を結成し,全校集会でP
R活動を行った。また,
「6年生を送る会」の
お礼として,
「お化け屋敷」を企画し,本物顔
負けの扮装や小道具を準備して,在校生を招
待し,大成功をおさめた。このように,児童
の独創性をいかした楽しいイベントを行い,
最上級生としての存在感を示した。
3
▲ 大仏の大きさと協力のすばらしさを実感!
(3)学校の中で,自分の存在感をしめす
∼一人一役,みんなの前で輝きの場を∼
6年生になると,児童代表として大勢の前
で話す機会も増えてくるが,ともすれば積極
的な児童ばかりが活躍しがちである。そこ
で,全員が活躍できるよう次のような「一人
一役」を決め,取り組んだ。
《
式
》始業式・終業式の作文発表,
卒業式目録贈呈,記念品授与の代表
《運動会》選手宣誓,成績発表,校歌指揮,
おわりに
今にしかできないことに,楽しく全力で取
り組みながら,一人ひとりが輝く充実した小
学校生活が送れるよう学級経営を行ってき
た。結果,人前で話すことが苦手だった児童
が,大勢の前で堂々と挨拶することができた
り,
全員が卒業式で思い出や感謝の気持ちを,
心をこめて発表できたりした。また,家庭と
の連携を大切にするため,毎日学級通信を活
動の写真や児童の日記・作品を取り入れなが
ら発行し,
児童のがんばりを伝えるとともに,
「今」の記念としてずっと残るようにしてき
た。保護者からも意見を寄せてもらい,保護
者の思いをくみ取りながら,学校と家庭が密
につながっていけるように取り組んでいる。
年間約200号を数える学級通信は,年度末に
製本し,児童が輝いた証として,配布してい
る。今後も,さらに努力を重ね,人間力や指
導力を高め,ワクワクする仕掛けで,児童と
ともに大いに輝いていきたい。
ラジオ体操,校旗入場など
《音楽会》挨拶・全校唱の指揮
《その他》交通安全教室や修学旅行・地域的行事
でのお礼や挨拶
など
校内だけでなく,地域の方々の前での挨拶
は,かなりの緊張感であるが,みんなで学校
を支えるという意識も高まり,よい経験と
なった。保護者も児童の活躍を喜んでくだ
さった。その他,学校全体で取り組んでいる
「みそあじ運動」
(みだしなみ そうじ あい
さつ じかんを守る)啓発のため「みそあじ
▲ 学級通信文集「Do your best」
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