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鳥取地方気象台講演 「宇宙からの降雨観測」

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鳥取地方気象台講演 「宇宙からの降雨観測」
鳥取地方気象台講演 2010年3月5日
宇宙からの降雨観測
鳥取環境大学
環境マネジメント学科
岡本謙一
講演内容
• 降雨観測の重要性
– 水不足と洪水
• 人工衛星によるリモートセンシング技術を用いた
降雨観測
• 熱帯降雨観測衛星(TRMM)
– TRMMで観測した降雨災害
• 全球降水観測衛星計画(GPM)
• 衛星による高精度高分解能全球降水マップの作成
(GSMaP)
降雨観測の重要性
•
•
•
•
•
•
大気中の水の量
世界の水不足
仮想水と日本
風水害と日本
世界の風水害
地上降雨観測網
全球の水分布
体積
( 1000Km3 )
全水に占める割
合(%)
淡水に占める割
合(%)
1,338,000
96.5
-
24,064
1.74
68.7
23,400
1.7
-
淡水
(10,530)
(0.76)
30.1
塩水
(12,870)
(0.94)
-
土壌水分
16.5
0.001
0.05
地下氷及び永久源土
300
0.022
0.86
176.4
0.013
-
淡水
(91.0)
(0.007)
0.26
塩水
(85.4)
(0.06)
-
大気
12.9
0.001
0.04
湿地帯
11.47
0.0008
0.03
川
2.12
0.0002
0.006
生物学的水
1.12
0.0001
0.003
1,385,984
100.0
100.0
海洋・海・湾
極氷冠、氷河、及び万年雪
地下水
湖
合計
Source:Gleick, P.H., 1996:Water resources. In Encyclopedia of Climate and Water,
ed. By S.H.Schneider, Oxford University Press, New York, vol. 2, pp.817-823
大気中の水(水蒸気)
• 海洋、湖、河川の水が90%を供給
• 植物からの蒸散が10%を供給
– 1m2のトウモロコシ畑から毎日約3.8リットルの水が
蒸発
• 全球の水の0.001%の12,900(km)3(一辺23.5 km 立方
体)の体積を占める
– 全部が雨として降ると全地表面は25 mmの深さの
水で覆われる
• 全地表面が平均970 mmの深さの水で覆われる
• 大気中の水は年間約40回入れ替わる
• 蒸発した水蒸気は大気中に約9日間留まる
降雨と私達の生活
• 降雨は我々の生活に重要な影響を及ぼす。
・ 飲水、食糧生産、工業活動
・ 洪水、旱魃などの災害
JAXA提供
世界の水不足:Global Water Scarcity
less than 1,000
- Water Stress Index (WSI) -
安全
地帯:
50
WSI: recyclable water (m^3/year/person)
 慢性的な水不足: 25
(WRI et al., 1998)
年間人口一人当たりの最大利用可能水資源量:1, 000 m3以下の場合は、「水不足」、
1,700 m3以下の場合は、「水ストレス下にある」。
世界水不足:Global Water Scarcity
- 人口増加:population increase 水不足に直面する人口:Population under water scarcity
1996
132 M
2025
653M
–
904M
2050
1,060M
–
2,430M
(世界人口の約1/4)
Water Stress Index
Countries with WSI<1000
(WRI et al., 1998)
水の輸入: Water Import
主要穀物の水消費原単位
Water Consumption per Unit Weight (ton) of the Major Crops
(m3/t)
米
rice
とうもろこし
corn
小
麦
wheat
大豆
soybean
8000
7000
水
消
費
原
単
位
6000
精米後
精米前
小麦粉
7800 5100
4500
5000
4000
粒のみ
3000
2000
2000
1000
飼料用
精製前
3600 3200
3400
皮芯付
800
0
東京大学 生産技術研究所 沖大幹教授提供
Miyake and Oki (2001)
水の輸入: Water Import
50
350
40
20
単位:億m3/年
Unit: 1010m3/year
460億m3/年=1m3 /人/日
460 1010m3/year= 1010 m3/person/day
Miyake and Oki (2001)
>生活用水原単位:0.3 ~0.4m3 /人/日
Average water consumption
except agriculture and industry
東京大学 生産技術研究所 沖大幹教授提供
風水害の被害
1988~1997の10年間における世界の自然災害
被害の3分の2は風水害(洪水と豪雨災害)
その他 8%
その他 10%
地震 28%
地震26%
経済的損失
7,000億ドル
死者数
390,000人
洪水・豪雨
64%
洪水・豪雨
洪水・豪雨
62%
(WWAP, 2003)
風水害の被害
•
•
•
世界的に自然災害の3分の2が洪水被害
日本でも死者数は減少しているものの、被害総額は
減少していない。東海豪雨の被害額は約8500億円。
全国水害被害額年間合計は1兆円を超える
10年間の世界の風水害による経済損失4340億ドル
とされる (国土交通省水害統計より)
Year
地名
死者数
1991
バングラディシュ
13,900
1991
フィリピン
6,000
1991
中国 准河
2,900
1998
中国 長江
3,000
1998
インド,バングラディシュ
2,425
アジアにおける大規模な風水害による被害
日本の国土利用状況
100%
90%
80%
67%
70%
60%
50%
3%
40%
30%
20%
75%
20%
50%
10%
10%
0%
人口
面積
資産
河川局防災課
さまざまな降雨システム
TRMM衛星降雨レーダで観測した東海豪雨(2000年9月11日)
米国の気象災害での平均死者数
1972-1991年
146
80
69
17
洪水
雷
トルネード
ハリケーン
モザンビーク大洪水
時期:2000年2~4月、原因:南部アフリカに相次ぐサイクロンと豪雨が発生
被害:死者630名、避難者49万人、被災者200万人、 農地の22%が浸水
モザンビーク《なぜ2000年の大洪水は発生したのか?》 2003 12/12魚津友貴子 より
2002年 ヨーロッパの洪水
• 2002年8月、チェコ、ドイツを中心として
ヨーロッパは記録的洪水が発生。ヨーロッパ
中央部を流れるエルベ川が増水。
• チェコの首都プラハで、3~4m浸水、5万
人が避難し、チェコ全土では約22万人が避
難、死者15名、約30億ユーロ(約3800億
円)の被害が発生。
• ドイツでは被災者約34万人、被害総額92億
ユーロ(約1兆1000億円)の被害であった。
平成15年度河川局関係予算概要 (参考)2002年世界の洪水より
地上の雨量計の1゚格子点あたりの個数
(2006年3月,Global Precipitation Climatology Center提供)
人工衛星によるリモートセンシング技術を
用いた降雨観測?
・レーダの降雨観測原理
・マイクロ波放射計の降雨観測原理
・可視赤外放射計の降雨観測原理
・レーダ、マイクロ波放射計の
降雨観測の特徴
・マイクロ波放射計を
搭載した衛星群
・衛星搭載降雨レーダの
開発上の問題点
衛星による降水観測
衛星搭載マイクロ波放射計
衛星搭載赤外放射計
雲水粒
雪、氷
雨滴からの放射(吸収)
雪、氷による散乱
雲頂温度
散乱
放射
衛星搭載降雨レーダ
雨滴からの散乱
雪、氷の
集合体
融解層
雨
海上風ベクトル
0℃高度
降雨レーダによる降雨観測
r1
D:雨滴の直径
r2
r : レーダと雨滴までの距離
t: レーダより発射した電波が雨滴に
よって散乱されて戻ってくる時間
r = (c・t)/2 , c : 光の速さ
注意:降雨による電波の減衰の影響
を考慮する必要がある。
Z:雨滴からの散乱の強さ
R:降雨強度
V(D): 直径 D の雨滴の落下速度
Z=ΣD**6
R∝ΣD**3・V(D)
V(D)∝D**(0.67)
R∝ΣD**(3.67), Z=BR**β
衛星搭載各種観測装置による降雨観測の特徴
(九州南海上の大雨 by TRMM)
(a)
(b)
(c)
(d)
(a) 衛星搭載レーダ:
降水粒子からのマイクロ波
後方散乱,精度が高い,走査幅
が狭く観測機会が限られる.
(b)赤外放射計:
雲頂温度(降水と相関小)
(c)マイクロ波放射計(19GHz):
(d)マイクロ波放射計(85GHz):
海上では雨からの放射の積算+
雪・氷の散乱の積算
陸上では雪・氷の散乱の積算
Copy Right JAXA 気候変動の解明に向けて(2005)
マイクロ波放射計を搭載した衛星群
(全球降水マップの作成に於いては観測頻度が多いマイクロ波放射計が中心になる)
主衛星
二周波降水レーダ
(DPR)
マイクロ波放射計
TRMM
TMI
副衛星群(8機)
マイクロ波放射計
Aqua
AMSR-E
降雨レーダ(PR)
ADEOS-II
AMSR
DMSP
SSM/I
GSMaPで用いているマイクロ波
放射計を搭載している.
GPM (Global Precipitation
Measurement: 全球降水観測)
計画の概念
(2010年~)
衛星搭載降雨レーダ開発上の問題点
・・ 衛星搭載上の重量、寸法、消費電力の制限.
衛星搭載上の重量、寸法、消費電力の制限.
短い波長(高い周波数)の電波を用いる必要あり.
短い波長(高い周波数)の電波を用いる必要あり.
降雨減衰の問題が生じる.
降雨減衰の問題が生じる.
・・ 感度:
感度: 衛星からの距離が遠い.
衛星からの距離が遠い.
十分な信号対雑音比が達成できるか?
十分な信号対雑音比が達成できるか?
・・ グラウンドクラッターが降雨エコーを劣化させる.
グラウンドクラッターが降雨エコーを劣化させる.
・・ 衛星搭載上の高信頼性(大電力送信管、電源)
衛星搭載上の高信頼性(大電力送信管、電源)
グラウンドクラッターは降雨エコーを劣化させる.
衛星
衛星
降雨域の直下に地
表面が続く。
h
r0
メインローブ
中の降雨散
乱体積
θ
降雨域
~10Km
メインローブ
雨域の頂
海面
アンテナサイドローブからのグラウ
ンドクラッター混入を計算する幾何
学的な関係。
走査角:θ , 距離 r0.
地球の半径~
6400Km
地球の中心
熱帯降雨観測衛星(TRMM)
Tropical Rainfall Measuring Mission
•
•
•
•
•
熱帯降雨観測の重要性
TRMM衛星の概要
TRMM降雨レーダの概要
データ処理アルゴリズムと観測例(瞬時観測と月平均降雨量)
TRMMで観測した降雨災害例
韓国の豪雨(1998年7月31日)
福井豪雨(平成16年7月18日)
梅雨期の降雨(年7月15日から7月25日)
中国地方から近畿地方にかけて降った大雪の分布と雲画像
(2005年12月22日)
– 平成21年7月中国・九州北部豪雨 (2009年7月26日)
– 平成21年8月台風9号(台風0909号)豪雨災害 (2009年8月10日)
–
–
–
–
熱帯降雨観測衛星(TRMM)
TRMM:Tropical Rainfall Measuring Mission
1997/11/28日打ち上げの日米共同の熱帯降雨観測衛星。現在も順調
に運用中。2016年ごろまでの運用が期待されている。日本が開発した
世界初の降雨レーダが搭載されている。
写真提供:宇宙航空研究開発機構・情報通信研究機構提供
熱帯気象観測の重要性
• 地球を一つの熱機関と見たとき
熱帯は広大なエネルギー補給源
(太陽エネルギー吸収の60 %以上)
• 強大な積雲対流
降水活動(全降水量の60 %以上)
大気中への高層にまで及ぶ大きな僭熱放出
地球全体の大気を動かすエネルギー源
• 熱帯観測の特殊性
広大な海、未開拓地、地上の観測点は僅かである。
→人工衛星によるリモートセンシング技術が不可欠。
→TRMM衛星計画
熱帯降雨観測衛星(TRMM)の特徴
 宇宙から降雨を観測するために初めてレーダを搭載した衛星
 地球全体の大気を動かすエネルギー源であり、エルニーニョ等
の気候変動の主要な原因である熱帯降雨の観測
 全地球的な大気と海洋の相互作用を長期的にモニタする衛星
 地球的規模の気候変動研究のための国際計画に貢献する
日米共同プロジェクト
 国産ロケットで初めて打ち上げる初めての外国の衛星
 国産ロケットのLaunch Window を広げた衛星
熱帯降雨と大気の循環
熱帯降雨と大気の循環
通常年の大気循環
通常年の大気循環
エルニーニョの年の大気循環
エルニーニョの年の大気循環
北
赤道
暖かい 水
冷たい水
大洋州
W
E
北
赤道
暖かい 水
冷たい水
南米
大洋州
W
E
南米
• 熱帯降雨: 地球大気循環の主要な “熱” エンジン.
その定量的観測は 気候変動や異常気象の研究に不可欠.
TRMMの形態
• 3年計画の科学ミッション
• 日米共同プロジェクト
米国
NASA
NASA
日本
宇宙開発
宇宙開発
事業団
事業団
・ロケット
打上げ運用
・降雨レーダ
・データ処理・
配布
・衛星バス、
・マイクロ波・可視赤外放射計
通信総合
通信総合
などの受動センサ、
研究所
研究所
・衛星運用、
・降雨レーダ
・データ処理・配布
・アルゴリズム開発
熱帯降雨観測衛星(TRMM)の概要
日米共同ミッション
TMI
TRMM Microwave Imager
日本:PR開発
衛星打上
TRMMマイクロ波観測装置
米国:衛星バス,TMI,
VIRS,CERES,
LISの開発
衛星運用
打ち上げ
1997年11 月28 日(日本時間)
軌道高度
約350km(H13年にミッション延長のた
め、高度変更後は402km)
軌道傾斜角
約35 度 太陽非同期軌道
設計寿命
3年2ヶ月(現在運用中)
観測機器
降雨レーダ(PR)
TRMM マイクロ波観測装置(TMI)
可視赤外観測装置(VIRS)
雷観測装置(LIS)
雲及び地球放射エネルギー観測装置
(CERES)
VIRS
Visible Infrared Scanner
可視赤外観測装置
PR
Precipitation Radar
降雨レーダ
LIS
雷観測装置
Lightning Imaging Sensor
Point
降雨の情報を異なるセンサ
で同時に収集できるため,
それぞれの観測データから
総合的に降雨状況を把握
することができる。
TRMM Lifetime – March 2009 Schatten Update
TRMMの寿命:2009年3月の太陽活動の見積もりによる
PVT Actual Propellant Remaining
No August 2001 Boost
March 2009 PlusEarly
March 2009 MeanNom
600
Initial fuel: 800+ kg
500
Station-keeping fuel sufficient to reach 2013-2014
based on current solar flux forecasts
Propellant Remaining (Kg)
Orbit raised from
350 km. to 402 km.
400
300
Controlled Reentry(01/07/04)
PR anomaly(19/05/09)
200
TRMM fuel currently at 108 kg(05/09/09)
GPM Core Nominal
100
No Boost
Early solar cycle phase, high solar flux
0
Jan-01
Jan-02
Jan-03
Jan-04
Jan-05
Jan-06
Jan-07
Jan-08
Jan-09
Jan-10
Jan-11
Jan-12
Jan-13
Jan-14
Jan-15
Jan-16
Jan-17
Date (Mon-YY)
Aug 2013
横軸は、年・月、縦軸は、軌道制御用の残燃料
Feb 2016
TRMM Data Transfer Flow
TRMM
TDRS
COMETS
×
NASA
×
Experimental
Communication
Line
NASDA
White Sands Complex
Raw data
Network for
science data transfer
PR Level 1-3
processing
On-line
Earth Obs. Center (EOC)
GSFC
LIS
Level 0
CERES
Level 0
On-line
PR Level-1 for
daily monitor
Level 1-3
data
MSFC
LaRC
CRL
USERS
TRMMによる降雨観測の概念
TRMMによる降雨観測の概念
飛行速度:
7.3 km/s
飛行速度: 7.3 km/sec
PR:
降雨レーダ
PR: 降雨レーダ
TMI:
マイクロ波放射計
TMI: TRMMマイクロ波観測装置
VIRS:
可視赤外放射計
VIRS: 可視赤外観測装置
軌道傾斜角:35度
周期:約92分
PR
VIRS
TMI
350 km
250 m
760 km
215 km
720 km
6~50km
4km
2km
TRMM降雨レーダの外観
TRMM降雨レーダの外観
アンテナ給電部 (128 素子)
2m
2m
DIV/COMB
2m
TRMM降雨レーダの構成
送受信系
エレメント #1
電力増幅器
(サーキュレータ含む)
移相器
(8台)
含む
#8
・
・
・
・
・
・
・
#121
低雑音増幅器
(TRスイッチ含む)
#128
分合波器-1(16分岐)
アンテナ系
低雑音増幅器
(TRスイッチ含む)
電力増幅器
(サーキュレータ含む)
信号処理系
分合波
器-2
駆動
増幅器
周波数
変換・
IF部
システム制
御・データ
処理部
分合波
器-2
移相器
(8台)
含む
構造系
電源
熱制御系
計装系
テレメトリ、
コマンド
TRMM降雨レーダ主要諸元
周波数
感度
走査幅
水平分解能
レンジ分解能
アンテナ
ビーム幅
走査角
送受信機
ピーク電力
パルス幅
PRF
独立サンプル数
データレート
質量
電力
13.796,13.802GHz
雨域の頂で0.5mm/hの降雨が観測可.
220km(走査端から走査端まで)
4.3km(直下点)
0.25km
0.71°×0.71°
±17°(進行方向に垂直方向)
708W
1.57μs/1.67μs
2776Hz
64
93.2 kbs
465kg
250W
TRMM 降雨レーダ標準アルゴリズム
アルゴリズム
プロダクト
1B21
降雨レーダの較正
1C21
レーダ反射因子
受信電力,ノイズレベル
レーダ反射因子Zm
(降雨減衰の影響を含む)
2A21
地表面散乱係数
パス積分減衰量,無降雨時の
地表面の散乱係数
2A23
各種降雨情報
ブライトバンドの有無・高度
降雨タイプの分類
2A25
降雨のプロファイル
降雨強度R,レーダ反射因子
Ze(降雨減衰の補正あり)の
レンジプロファイル
TRMM 降雨レーダ標準アルゴリズム
アルゴリズム
3A25
レーダプロダクト
の時空平均値
プロダクト
1C21,2A21,2A23,2A25,
プロダクトの時空平均値
(緯経度5°×5°の領域の
月平均降雨強度等)
3A26
統計的手法による緯経度5°×5°
統計的手法による の領域の月平均降雨強度等
時空平均値
TRMMによる台風の3次元観測例
2000年8月2日 20:49-20:53(日本時間)
高度2kmにおける降雨強度の水平分布
降雨強度の3次元分布
これまでには観測の少なかった、海洋上の降雨の3次元分布の
定量的な観測が、降雨レーダにより可能となった。
PR with VIRS
Typhoon Rusa
TMI
熱帯降雨観測衛星(TRMM)降雨レーダによって
観測されたエルニーニョ年とラニーニャ年の降雨分布
提供:NASDA(宇宙開発事業団)
熱帯降雨観測衛星(TRMM)マイクロ波放射計で
観測されたエルニーニョ年とラニーニャ年の海面水温分布
提供:NASDA(宇宙開発事業団)
4次元同化への応用
ECMWFにおけるTMI可降水量同化による
ハリケーンの経路解析向上
観測
TRMMデータなし
同化-1
同化-2
20 N
°
70°
W
65 W
°
60 W
Marécal and Mahfouf, ECMWF
°
同化-1(降雨のある領域のみを同化した実験)よりも、
同化-2(全領域を同化した実験)の方が、観測に近くなる。
TRMM降雨レーダで観測した韓国の集中豪雨
1998年7月31日の午後10時12分-16分(日本時間) の観測画像。全羅南道の
順天地区で記録した降雨量は1時間当たり128mmに達し、同国気象観測史
上最大の降雨量を記録しました。
GMS 13:00 (UTC) by JWA
宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供
TRMM降雨レーダが観測した平成16年7月18日の福井豪雨
福井県から南東に延びる
梅雨前線の活発化に伴っ
て、福井県嶺北地方を中
心に、1時間降水量87mm、
日降水量283mmという集
中豪雨が発生しました。
この豪雨によって足羽川
(あすわがわ)堤防が決壊
し、死者・行方不明者5名、
建物の全半壊178棟という
深刻な被害がもたらされま
した。
JAXA・NICT 提供
TRMM衛星で観測した梅雨期の降雨(2006年7月18日21時35分)
佐渡島
能登半島
隠岐諸島
気象庁提供
近畿
四国
JAXA 提供
高度4 km における、降雨
レーダ(PR)で観測した降
雨強度と可視赤外観測装
置(VIRS)で観測した雲画
像。山陰地方では、海岸
線に沿って、東西に長い
線上の降雨が見られる。
北側からみた山陰地方の降雨レーダ(PR)の立体画像と
鉛直断面図。 (2006年7月18日21時35分)
九州
高度9 km の強い
対流による激しい
降雨が観測されてい
る。
鳥取市や日野町にお
いて床上浸水9棟、
床下浸水87棟が発生。
隠岐諸島
JAXA提供
15-19日の総雨量、
境港市境:484ミリ、
大山町塩津:437ミリ、
鳥取市吉方:245.5
ミリ、
日南町茶屋:358ミリ
2006年7月15日9時から7月25日9時まで10日間積算雨量分布
(TRMM衛星による全球降水マッププロダクト:3B42RT)
NASA/JAXA提供
平成18年7月豪雨(2006年7.15-7.24):長野県、鹿児島県を中心に九州、山陰、近畿、
北陸地方の広い範囲で大雨。宮崎県えびの市7日間の降水量1281ミリ。この豪雨に
よって大きな被害が発生した南九州にピークが見られる。また、北陸地方から朝鮮半島
にかけて降雨帯が伸びていて、広い範囲で大雨が発生していたことがわかる。
中国地方から近畿地方にかけて降った大雪の分布と雲
画像(2005年12月22日7時33分)
高度3 km における降雨レーダ(PR)で観測した
降雨強度と可視赤外観測装置(VIRS)の雲画像。
南(瀬戸内海)側から見たPRの
立体画像と鉛直断面。
西高東低の冬型の気圧配置となっており、VIRSの雲画像から大陸から吹き出す寒気に伴う筋状の雲
が日本海や東シナ海、そして太平洋まで見られ、寒気の吹き出しが非常に強い。また、朝鮮半島の東
海上から中国地方、近畿地方にかけて、雲の塊が伸びており、それに沿って東西に伸びる降雪の帯が
あることがPRから分かる。これは、『帯状収束雲』と呼ばれるもので、この雲のかかった領域では、しば
しば大雪となる。赤い領域のある兵庫県北部では、このときに1時間に6 cm の雪を観測した。このとき
の降水域の高さは、6 km 程度である。翌2006年の『平成18年豪雪』では、鳥取県でも20年ぶりの大雪
となり、3名の方が亡くなった。 (JAXA提供)
平成21年7月中国・九州北部豪雨
(2009年7月26日15時27分)
TRMM衛星搭載
可視赤外観測装
置(VIRS),
マイクロ波観測装
置(TMI),
降雨レーダ(PR)
が観測した雲,降
雨強度分布。
7/19-26 広島、
山口、福岡、長崎
で死者30名。
山口防府市死者
14名。
梅雨前線の南下
に伴い、暖かく
湿った空気が流
れ込み、前線の
活動が活発にな
り、山口県や九州
北部の雨となった。
平成21年8月台風9号(台風0909号)豪雨災害
(2009年8月10日6時30分) TRMM衛星
搭載可視赤外
観測装置
(VIRS)雲画像
台風9号周辺の
湿った空気が
太平洋高気圧
の縁に沿って
西日本に流れ
込み、大気の
状態が非常に
不安定になった。
兵庫県の佐用
町で、24時間
雨量が326.5ミ
リに達し、佐用
川、幕山川が
氾濫し、18名の
死者が出た。
平成21年8月台風9号(台風0909号)豪雨災害
(2009年8月10日6時30分)
TRMM
衛星搭載
マイクロ波
観測装置
(TMI)
が観測
した降雨強
度分布。
平成21年8月台風9号(台風0909号)豪雨災害
(2009年8月10日6時30分)
TRMM
衛星搭載
降雨レーダ
(PR)
が観測
した降雨
強度分布。
平成21年8月台風9号(台風0909号)豪雨災害
(2009年8月10日6時30分)
TRMM
衛星搭載
可視赤外
観測装置
(VIRS),
マイクロ波
観測装置
(TMI),
降雨レーダ
(PR)
が観測
した
雲,降雨
強度分布。
TRMMの成果
世界初の衛星搭載降水観測用レーダ技術の
デモンストレーション
科学的/応用的 成果
 熱帯・亜熱帯の高精度降水分布の観測
 降水の日変化、年変化、長期変化の把握
 降水の3次元構造の観測(PR)
 海陸を問わない降水の高精度観測(PR)
 4次元データ同化による天気予報精度向上
 土壌水分量の推定(PR)
日米協力の成功ケース
TRMMからGPMへ
提供: NASDA(宇宙開発事業団)
全球降水観測衛星計画(GPM)
•
•
•
•
TRMMからGPMへ
GPMの概要
GPMコア衛星
GPM副衛星
TRMMの後はどうなるか
TRMMの成功
衛星による降水観測技術の実証
熱帯地域から全地球の降水観測へ
長期、継続的な観測へ
高頻度観測
水循環観測の機運の高まり
全球降水観測プロジェクト(GPM)へ
高頻度観測
豪雨・洪水・旱魃の予警報
(3時間毎のデータの準リアルタイム利用)
• 現況の把握(ナウキャスト)
• 天気予報精度向上
– 数値天気予報システムでの利用
– 数時間~1、2日程度
• 洪水予測
– 水文・流出モデル
– 数時間~1週間程度
• 旱魃の警報
– 10日程度~1,2ヶ月
TRMMからGPMへ
TRMM(熱帯降雨観測衛星)観測の高精度、高頻度化
観測範囲の拡張
–
降雨レーダの高精度観測を全球観測に拡張(熱帯・亜熱帯
域のみから温帯・寒帯域まで)
降雨レーダによる高精度観測
–
高緯度観測のための、粒径分布の推定、弱い雨の観測、
降雨/降雪の区分
 2周波降雨レーダの必要性
観測頻度不足の解消
–
8機のコンステレーション衛星群による高頻度観測。3時間
毎の準リアルタイムの全球降水データ。実利用の拡大
全球降水観測計画
(GPM)の構成
主衛星
副衛星群(8機)
二周波降水レーダ
降水の高精度、高感
度観測
マイクロ波放射計衛
星群の校正、検証
既計画のNPOESS等の
衛星と連携
+
マイクロ波放射計衛星
を数機打ち上げ
=
約3時間毎の全球降水
観測を実現
太陽非同期軌道
軌道傾斜角 約68度
高度 約400km
周期 約92分
搭載機器 マイクロ波放射計
二周波降水レーダ
太陽同期軌道
高度 約600km
周期 約100分
搭載機器 マイクロ波放射計他
打上げ: 2013年目標
ミッション: 5年目標
協力機関: JAXA(二周波降水レーダ、ロケット)、
NASA(主衛星バス、副衛星2機程度、マイクロ波放射計)、
NOAA(NPOESS) 等
GPMコア衛星
Solar Array
HGA
Avionics
• 2013年7月H-IIで打ち上げ
• 二周波降雨レーダ(DPR =
13.6 GHz, 35.5): JAXA
• GPM マイクロ波放射計
(GMI):
13.0
m
• 寸法: 13.0m x 6.5m x 5.0m
• 質量: 3850 kg
• 軌道: 高度、407 km;
GMI
軌道傾斜角65 °
• Power ~1950W
6.5 m
• 3 年の設計寿命、 5 年の運
用可能性
• ミッション終了後、制御再突入
KuPR
KaPR
5.0 m
GPM副衛星
NASAは、2機目のGMIも提供し、
パートナーが提供する低傾斜角軌道の
衛星に搭載する(軌道傾斜角40°、軌道
高度600 km:2014年ごろ)予定。
パートナーの衛星群は、JAXA,
DOD,NOAAや他の宇宙機関によって提
供される。
マイクロ波放射計のデータには、(IPO
NPP, DOD DMSP, JAXA GCOM-W1,
Megha-Tropiques など) がある。
注:
IPO: Itegrated Program Office(DOC, DOD, NASA職員からなる合同オ
フィス)
NPP: NPOESS Preparatory Project
DOD:Department of Defence(米:国防総省)
Defense Meteorological Satellite Program (DMSP)
DOC: Department of Commerse(米:商務省)
GCOM-W1: Global Change Observation Mission 1st-Water
Megha-Tropiques: インド、フランス共同の熱帯観測ミッション(軌道傾斜角:
全球降水マップの作成
• 作成方法(マイクロ波放射計+可視赤外放射
計)
• 作成例
– 6時間平均値
– 日平均値
– 1時間平均値
– インド洋のサイクロン事例
• 全球洪水予警報システム(GFAS)
• 世界の雨分布速報(JAXA/EORC)
全地球の降水マップの作成
⇒
TRMM
TMI
Aqua
AMSR-E
ADEOS-II
AMSR
DMSP
SSM/I
衛星
データ
マイクロ波放射計アルゴリズム
各マイクロ波放射計
データによるプロダクト
静止衛星
赤外放射計
雲移動ベクトル
合成
TRMM/TMI, Aqua/AMSR-E,
ADEOS-II/AMSR, DMSP/SSMI
(F13, 14, 15)による1時間の
データ
合成プロダクト
0.25度格子
30分
6時間
1日
1か月
赤外・マイクロ波放射計
複合アルゴリズム
プロダクト
0.1度格子・1時間毎
複数個のマイクロ波放射計からのデータを
合成した降水量(GSMaP_MWR, 6時間平均値)
複数個のマイクロ波放射計からのデータを
合成した降水量(GSMaP_MWR, 日平均値)
赤外・マイクロ波放射計 複合アルゴリズムによる
降水量(1時間値・2005年7月9~10日)
赤外・マイクロ波放射計 複合アルゴリズムによる
降水量(1時間値・台風200507号/BANYAN)
インド洋上サイクロン事例
2008年5月3日0UTCの「世界の雨分布速報」
サイクロン「Nargis」
2008年4月28日~5月3日の動画
http://sharaku.eorc.jaxa.jp/GSMaP/
参考) バングラデシュを直撃したサイクロン
「SIDR」(2007年11月11日~16日)
全球洪水予警報システム(GFAS)
GFASは、国土交通省が主導し、JAXA
が協力している、国際洪水ネットワーク
(IFNet)の開発したシステム。GFASは、
GPM計画を念頭に入れ、人工衛星に
よる降水データに基づき洪水が発生
する可能性が高い地域を予想し、被害 生データ
が及ぶ可能性があると思われる世界
各国の登録機関・ユーザーに向けて情
報を提供するシステムである。
オンライン
オンライン
降雨災害の発生する確率
の見積もり
Present
Precipitation
>
Estimated
Precipitation
Probability
人工衛星GPM
(Global Precipitation
Measurement)
上流の降雨情報
地上受信局
(NASA, JAXA)
データ処理(NASA, JAXA)
実時間の3時間ごとの降雨データ
洪水
警報!
メール
各国の災害
予防機関
宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供
世界の雨分布速報(JAXA/EORC)
世界の降雨分布を準リアルタイム(観測から約4時間遅れ)で1時間
ごとに複数の衛星を利用して提供 (2007年11月~)
Distribution
インターネット上で公開
全球降雨マップ
• 画像
• Google Earth用ファイル
• バイナリデータ
Distribution
データのダウンロード
[email protected]
までe-mailでご連絡下さい。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供
http://sharaku.eorc.jaxa.jp/GSMaP/index_j.htm
まとめ
• 降雨は、様々な人間活動に決定的な影響を与える。2050年に
は、世界の約1/4が水不足の影響を受ける可能性がある。
• 降雨災害は、近年の世界の自然災害の2/3を占める。
• 日本でも全国水害被害額年間合計は1兆円を超える。
• 人工衛星からの降雨レーダ、マイクロ波放射計による降雨観
測は世界的規模の降雨観測に有効である。
• 熱帯降雨観測衛星(TRMM)は、降雨レーダ、マイクロ波放射
計を搭載しており、宇宙からの降雨観測の有効性を実証した。
特に、降雨災害をもたらす台風、梅雨期の豪雨の観測に威力
を発揮している。
• TRMMを継承するGPM計画は、2013年に打ち上げられる予定。
• TRMM衛星データ等を用いた全地球の降雨地図作成の研究が全
世界で行われておる。
• 将来的には、衛星データを用いたリアルタイムの洪水の予警
報を行うことも夢ではなく、そのための研究が行われている。
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