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資 料 3 内分泌かく乱作用に関する試験法開発について

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資 料 3 内分泌かく乱作用に関する試験法開発について
 資 料 3
内分泌かく乱作用に関する試験法開発について
内分泌かく乱作用問題への対応のためには、内分泌かく乱作用を有するおそれのある化
学物質を数多くの化学物質から選別し、選別された化学物質に対し内分泌かく乱作用によ
ってもたらされる有害影響を評価していくことが必要である。
このため、内分泌かく乱作用を有するおそれのある化学物質を効率的に選別するための
スクリーニング試験法及び内分泌かく乱作用によってもたらされる有害影響を評価するた
めの確定毒性試験法の確立を早急に図ることが不可欠である。
OECD では、テストガイドラインプログラムの下で、国際共同作業により3つの in vivo
スクリーニング試験法のバリデーションスタディ(実証研究)を行い、その妥当性の検証
を進めている。さらに、内分泌かく乱物質の評価に関する国際的フレームワークとして協
力可能な領域を、①化学物質の分類と優先リスト確立、②プレスクリーニング、③スクリ
ーニング、④確定試験、⑤アセスメントに分類し、それぞれの分野における共同作業の進
め方について現在検討が行われている。
また、米国環境保護庁は、諮問委員会(EDSTAC)を設置し、膨大な化学物質を対象とする
内分泌かく乱作用の評価フロースキームを提案しており、スキームの各段階において必要
となる試験手法等の開発について検討している。
日本においても、OECD のスクリーニング試験法開発バリデーションスタディ等の国際的
共同作業に参画しつつ、必要と考えられる各種試験・評価手法の開発を行ってきている。
このうち、人への健康影響の観点から進められている試験法の開発状況については以下の
とおりである。
1.スクリーニングに利用可能な構造活性相関手法(3D-QSAR)
①概要:ホルモン受容体3次元構造と化学物質の3次元構造をコンピュータ上で比較し、
結合性を予測するシステムであり、数多くの化学物質から内分泌かく乱作用を有するおそ
れのある化学物質を優先的に選定するために利用する。具体的には、ヒトエストロゲン受
容体α(hERα)及びヒトアンドロゲン受容体(hAR)と化学物質との結合性を予測するシ
ステムを構築し、受容体結合試験及びレポーター遺伝子アッセイ結果により精度を高めて
いく。
②現状:基本システムとして化学構造式を 3次元化し、既存の受容体構造に対して自動ド
ッキングを行わせ、その際の自由エネルギー計算を行うプログラムを作成した。これを用
いて ERαの4種類の構造に対する結合の自由エネルギーを計算し、化学物質の受容体に
1
対する親和性の強さをランキングしたところ、文献値に対しては比較的良好な相関関係が
認められた。しかし、500 物質の受容体結合試験の実測結果と自由エネルギー推定値を比
較検討した場合、化合物群によっては、受容体に結合する可能性が示唆されたにも関わら
ず、実際には結合しない物質も存在することが分かった。
③今後の計画:予測値と実測値との相関関係が得られない化合物群について、その原因究
明を行い、ERαに対する結合予測システムの改良を行う。また、AR に対するシステムに
ついても開発を行う。
2.スクリーニングに利用可能な in vitro 試験法
1)受容体結合試験
①概要:ホルモン作用の第一段階である化学物質と受容体との結合の可否を in vitro で検査
する試験である。具体的には、エストロゲン、アンドロゲン及び甲状腺ホルモンの各受
容体に対する化学物質の結合能を放射性同位元素(RI)等で標識されたホルモンとの競
合反応により測定する方法の確立を図る。
②現状:これまでに、RI 標識されたホルモンを用いる方法でヒト、ラット、メダカ、ニジ
マス、マミチョグ、コイの ERα、メダカとコイ ERβの各生物種について評価系を確立し
た。500 物質についてヒト ERαに対する結合能を測定し、構造活性相関システムから得
られた予測値との比較検討を行った。
③今後の計画: ERα以外のヒト由来の各受容体(hERβ、hAR、hTRα、hTRβ)の評価
系を確立する(TR=甲状腺ホルモン受容体)。また、より簡易な試験法として、RI を使用
せず、蛍光物質で標識したホルモンを用いる系を確立する。
2)レポーター遺伝子アッセイ
①概要: エストロゲンなどのホルモンは、細胞内でエストロゲン受容体と結合し、受容体
二量体を形成する。この二量体がエストロゲン受容体標的遺伝子の上流にあるエストロゲ
ン応答配列に結合し、その下流に存在する標的遺伝子を転写活性化することによってホル
モン作用が発現する。本試験法は、ルシフェラーゼ遺伝子(発光タンパク遺伝子)等の指
標となるレポーター遺伝子を用いて、化学物質のホルモン受容体との特異的な結合と、そ
れに伴う遺伝子の転写活性化能を検出する in vitro スクリーニング試験である。具体的
には、エストロゲン、アンドロゲン及び甲状腺ホルモンの各ホルモン受容体遺伝子を介す
2
る転写活性化能の評価系を確立する。安定細胞株の作製を目標とするが、それが困難な受
容体については、試験毎に細胞内にホルモン受容体遺伝子を導入する一過性発現系の開発
を行う。
②現状:ヒトERα遺伝子の安定株を樹立するとともに、一過性発現系としてはヒトERα、
ラットERα、メダカERα、ヒトARの各系が利用可能となっている。本試験法はハイスル
ープット(HTPS:自動処理ロボットを用いて短時間に多検体を試験するシステム)化が
可能となっており、ヒトERαの系において約700物質のデータを取得した。HTPSの開発
に成功しているのは現在のところ我が国のみであり、各国からこれらデータの提供を求め
られている。
③今後の計画:ヒト ERα以外のヒト由来の各受容体(hAR 及び hTRα)を介する転写活性
化能の評価系を確立する。
3. スクリーニングに利用可能な in vivo (生体内)試験法
1)子宮増殖アッセイ
①概要:幼若ラットや卵巣摘出ラットの子宮が女性ホルモンの作用によって肥大すること
を利用 して、(抗)エストロゲン作用をスクリーニングする試験である。OECD における
スクリーニング試験法開発バリデーションスタディに協力しながら、基礎的検討を実施し
国際的に標準化された試験法の確立を図っている。
②現状:
<試験法開発>
主に幼若ラットを用いる試験にかかわる諸条件(使用動物の日齢及び体重制限、被験
物質の投与期間等)について検討した。これらの知見は、OECD バリデーションスタデ
ィに用いられている暫定プロトコールに反映されている。
<OECD バリデーションスタディ>
まず、フェーズ1として、強力なエストロゲン作用物質(17α-エチニルエストラジ
オール)と抗エストロゲン作用を有するとされる物質(ZM189.154)を用いて、幼若又
は卵巣摘出成熟ラットを用いる各プロトコールの信頼性の検証、検出感度及び試験機関
間での再現性確認等を実施した。
続いてフェーズ2として、弱いエストロゲン作用を有するとされる物質(メトキシク
ロル、ビスフェノールA、ゲニスタイン、o,p’-DDT、ノニルフェノールの5物質)とエ
ストロゲン作用を示さないとされる物質(フタル酸ジブチル)を用いて、1用量又は5
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用量で幼若又は卵巣摘出成熟ラットを用いる各プロトコールの信頼性の検証、検出感度
及び試験機関間での再現性等を実施した。
この OECD バリデーションスタディのフェーズ1及びフェーズ2に参加した試験機
関は、日本が6機関、ドイツが3機関、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、韓
国が各2機関、デンマーク、オランダが各1機関、計21機関となっている。
この結果、現在、以下の4種の OECD テストガイドライン(最終案)が作成されてい
る。
・プロトコールA (幼若ラットを用いる3日間経口投与)
・プロトコールB (幼若ラットを用いる3日間皮下投与)
・プロトコールC (卵巣摘出成熟ラットを用いる3日間皮下投与)
・プロトコールC’(卵巣摘出成熟ラットを用いる7日間皮下投与)
<有害性評価スクリーニング試験>
個別物質評価の対象となっている15物質のうち、11物質について有害性評価のため
のスクリーニング試験を実施した。
③今後の計画:OECD テストガイドライン(最終案)は平成13年度中に提案される予定
である。今後も、内分泌かく乱作用について評価が必要と思われる化学物質については、
引き続き本試験法による有害性評価のためのスクリーニング試験の実施を検討する。
2)ハーシュバーガーアッセイ
①概要:去勢ラットの前立腺等が男性ホルモンの作用によって肥大することを利用して、
(抗)アンドロゲン作用をスクリーニングする試験である。OECD におけるスクリーニン
グ試験法開発バリデーションスタディに協力しながら、国際的に標準化された試験法の確
立を図っている。
②現状:
<試験法開発>
主に去勢ラットを用いる試験にかかわる諸条件(使用動物の週齢及び系統差、被験物質
の投与期間、解剖時期)について検討した。これらの知見は、OECD バリデーションスタ
ディに用いられている暫定プロトコールに反映されている。
<OECD バリデーションスタディ>
フェーズ1として強力なアンドロゲン作用物質(プロピオン酸テストステロン)と 抗
アンドロゲン作用を有するとされる物質(フルタミド)を用いて、プロトコールの信頼性
の検証、検出感度及び試験機関間での再現性確認等を実施した。
この OECD バリデーションスタディに参加した試験機関は、日本が7機関、ドイツ、
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フランス、イギリスが各2機関、アメリカ、韓国、デンマークが各1機関、計16機関と
なっている。
<有害性評価スクリーニング試験>
個別物質評価の対象となっている15物質のうち、7物質について本試験を実施し、
有害性評価を行った。
③今後の計画:
<OECD バリデーションスタディ>
フェーズ2のバリデーションスタディとして、弱いアンドロゲン作用を有するとされる
物質(メチルテストステロン及びトレンボロンの2物質)と弱い抗アンドロゲン作用を有
するとされる物質(ビンクロゾリン、プロシミドン、リニュロン、p,p’-DDE、フィナステリド
の5物質)を用いて、プロトコールの信頼性の検証、検出感度及び試験機関間での再現性
確認等を実施する(平成13年秋以降)。なお、OECD テストガイドライン(最終案)は
平成14年度以降に提案される予定である。
<有害性評価スクリーニング試験>
今後、アンドロゲン作用について評価が必要と思われる化学物質については、本試験法
による有害性評価のためのスクリーニング試験の実施を検討する。
3)改良28日間反復投与毒性試験(改訂 TG407)
①概要 :性ホルモン作用に加えて甲状腺ホルモン作用を検出するために従来のラットを用
いた毒性試験法に内分泌かく乱作用を検出するための諸項目(ホルモン測定、性周期、精
子検査等)を加え、改良した試験である。受容体介在性の内分泌かく乱作用のみではなく、
ホルモン中枢への影響等、受容体非介在性の内分泌かく乱作用も評価が可能と考えられる。
子宮増殖アッセイ、ハーシュバーガーアッセイは、原理的に性ホルモン受容体介在性の内
分泌かく乱物質しかスクリーングできない可能性が高いが、実際には、甲状腺ホルモン受
容体介在性及び受容体非介在性のメカニズムを有する物質もあり、それらをスクリーニン
グする上で、28日間反復投与毒性試験をスクリーニング試験系へ導入することは重要で
あると考えられる。OECD におけるスクリーニング試験法開発バリデーションスタディに
協力しながら、国際的に標準化された試験法の確立を図っている。
②現状:
<OECD バリデーションスタディ>
フェーズ1のバリデーションスタディとして、改訂 TG407 のプロトコールの信頼性検
証を行い。フェーズ2では、フェーズ1実施後に修正されたプロトコールの信頼性検証を
実施した。現在、OECD テストガイドライン(最終案)が作成されている。
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この OECD バリデーションスタディに参加した試験機関は、日本が6機関、ドイツが
2機関、フランス、イギリス、アメリカ、韓国、スイスが各1機関、計13機関となって
いる。
強いエストロゲン作用
弱いエストロゲン作用
被 験 物 質
フェーズ1
フェーズ2
エチニルエストラジオール
○
○
メトキシクロル
○
ゲニスタイン
○
ノニルフェノール
○
抗エストロゲン作用
タモキシフェン
○
○
弱いアンドロゲン作用
メチルテストステロン
○
○
抗アンドロゲン作用
p,p-DDE
○
フルタミド
甲状腺ホルモン作用
○
チロキシン
○
プロピルチオウラシル
アロマターゼ阻害
○
○
CGS 18320B
○
○
③今後の計画:OECD テストガイドライン(最終案)は平成13年度中に提案される予定で
ある。しかしながら現在の方法では、受容体非介在性の内分泌かく乱物質の評価を行う上
では感度が低いことが指摘されている。今後、より高感度な スクリーニング試験とする
ために TG407 の更なる改良を検討していく必要があると考えられる。
4)今後開発を検討している試験法
エストロゲン作用及びアンドロゲン作用のスクリーニング法に関しては子宮増殖アッ
セイやハーシュバーガーアッセイが開発されているが、甲状腺に対する影響をスクリーニ
ングする試験についてはさらに検討する必要がある。そこで幼若ラットを用いて甲状腺に
対する影響及び性成熟過程に及ぼす影響をスクリーニング可能な方法であるラット
思春期甲状腺アッセイについて検討する必要があると考えられる。
○ラット思春期甲状腺アッセイ
EDSTACが試験法案を公表している思春期甲状腺アッセイは、離乳から雄は30日、雌
の場合20日間投与し、包皮分離、膣開口等の性成熟に関する検査、ホルモン測定、病理
組織検査等を行うというもので、最終試験法案は今年末にEDSTACから提出される予定で
ある。化学物質の性成熟と甲状腺機能に対する影響について評価が可能と考えられており、
我が国においても本試験法に含まれる各検査項目の検出感度や再現性等を検討する必要
があると考えられる。
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4.確定試験に利用可能な試験
1)2世代繁殖毒性試験
①概要:ラットの親動物に離乳直後から出産後まで化学物質を継続的に投与し、その仔に
も妊娠中から次の世代を出産するまで化学物質を投与し、2世代にわたりそれぞれの世代
への影響を検査する in vivo 試験法である。従来の試験は、生殖系への影響及び次世代の
発生、発達に及ぼす毒性影響を評価する試験であるが、さらに内分泌かく乱作用との関連
を明らかにするためにホルモン測定等を追加し改良を加えている。OECD、EPA において
も、各スクリーニング試験の結果、内分泌かく乱作用が疑われた物質に対し、内分泌かく
乱作用を最終的に確定する試験として位置付けられている。
②現状:内分泌かく乱による影響評価を考慮した改良プロトコールを用いて、内分泌かく
乱作用が懸念される7物質(フタル酸ブチルベンジル、4−ニトロトルエン、フタル酸ジ
エチル、2,4−ジクロロフェノール、n−ブチルベンゼン、ベンゾフェノン、及びフタ
ル酸ジシクロヘキシル)の試験を実施中である。
③今後の計画:引き続き、評価が必要と思われる化学物質については、2世代繁殖毒性試
験の実施を検討する。
また、内分泌かく乱作用によってもたらされる毒性として何をエンドポイント(評価
項目)とするかは重要な問題であり(別添:確定試験のエンドポイントに関する考え方)、
生殖・発生毒性のみならず、神経毒性及び免疫毒性等についても評価ができるよう本試験
の改良を検討するとともに発がん性試験の追加を検討する必要があると考えられる。
さらに、2世代繁殖毒性試験試験は相当の時間・コストを要する試験であるため、内
分泌かく乱作用による毒性を簡易に評価するための一世代繁殖毒性試験の導入やラット
子宮内投与試験の改良について検討する必要があると考えられる。
・ラット子宮内投与試験
胎児期の暴露+離乳時期の暴露の影響を評価する試験である。従来の子宮内投与は病理
検査を実施するものが少なく、器官重量のみを観察しているため、より詳細な検査項目(甲
状腺に対する影響として発現する可能性のある行動検査、情緒検査、神経毒性、免疫毒性
検出項目、病理検査等)と新たな観察項目を含めることにより、内分泌かく乱物質の影響
をより詳細に調べることが可能になると考えられる。
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別添
内分泌かく乱作用による毒性影響評価におけるエンドポイント
1996 年 12 月に英国のウェイブリッジで開催された EU/WHO/OECD のワークショップに
おける内分泌かく乱物質の定義によれば、「内分泌かく乱物質とは、生物個体の内分泌系に
変化を起こさせ、その個体またはその子孫に健康障害を誘発する外因性物質である」とさ
れており、内分泌系をかく乱した結果として、発現する「健康障害」を評価し確定するこ
とが重要である。この場合に、内分泌かく乱作用により懸念される毒性として何をエンド
ポイント(評価項目)とするかを明らかにする必要がある。これまで、内分泌かく乱物質
による人、動物におけるリスクとして、生殖能力及び仔世代の発生、発達への影響が特に
重視されてきた。しかしながら、内分泌系のかく乱による悪影響は生殖・発生毒性試験で
は評価できない毒性試験項目(毒性のエンドポイント)に及ぶことが考えられる。例えば、
毒性のエンドポイントとしては、下記のような理由により、(1)生殖・発生毒性以外に、
(2)発がん性、(3)神経毒性及び免疫毒性までの範囲を想定して内分泌かく乱作用によ
る毒性影響も評価すべきと考えられる。
(1) 生殖・発生毒性
強力なエストロゲン作用を有する DES の妊婦による大量服用により、産まれてき
た子供の女性生殖器への影響が報告されている。また、動物実験でも性ホルモン受
容体への結合性を有する物質や性ホルモン関連代謝酵素の阻害剤等の投与により、
生殖器系への影響が報告されている。このようにホルモン作用の変動により、生殖・
発生への毒性影響が懸念されている。従って、スクリーニング試験の結果、内分泌
かく乱作用が疑われると判断された化学物質に関しては、その長期的影響として、
生殖・発生への影響を予測する必要があると考えられる。
(2) 発がん性
人における発がん性と性ホルモンとの関係から、前立腺癌や閉経前に発症する乳
癌は性ホルモン依存性のものが多く、血中性ホルモンレベルが発がんリスク要因と
考えられている。さらに、性ホルモンが乳癌、子宮内膜癌、前立腺癌等の発生に関
与するとの人疫学データや、DES 等の性ホルモン作用物質が実験動物に対して発が
ん性を示すことが報告されている。各内分泌系臓器に関連するホルモンレベルが腫
瘍発生と密接な関係にあることが示唆されている。従って、スクリーニング試験の
結果、内分泌かく乱作用が疑われると判断された化学物質に関しては、その長期的
影響として、生殖器系及び内分泌系諸臓器への発がんの可能性を予測する必要があ
ると考えられる。
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(3) 神経毒性及び免疫毒性
内分泌かく乱作用を有する化学物質の神経系及び免疫系への影響に関しては、十
分な知見がなく、また、それらを評価する試験系も確立されていないのが現状であ
る。しかし、内分泌系は神経系や免疫系とともに、人や他の動物において体全体の
総合的な制御を司る有機的なシステムであることが知られている。このため、ホル
モンの正常な働きが阻害されると、その程度によっては脳神経系障害および行動障
害、発生における生殖器官形成の障害、子宮内膜症、乳癌、その他の生殖器系の癌
等の個体レベルの障害に発展することがある。一方、今回個別物質の評価が実施さ
れた15物質の中で、免疫系及び神経系に対する影響はポリ臭化ビフェニル及び2,
4−ジクロロフェノールにおいてのみ報告されているが、他の物質ではそれらに対
する影響評価そのものが未実施の状態である。こうしたことからも確定試験におけ
るエンドポイント として、神経系や免疫系に対する影響の評価も追加する必要があ
ると考えられる。
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