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市の花「カキツバタ」の水質浄化能に関する研究

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市の花「カキツバタ」の水質浄化能に関する研究
平成24
平成24年度
24年度 知立東高校SPP
知立東高校SPP実施報告
SPP実施報告
『市の花「カキツバタ
カキツバタ」
水質浄化能に
する研究
研究』
」の水質浄化能
に関する
研究
』
1.テーマについて
知立市の市花となっている「カキツバタ」は県花にも指定されているアヤメ科の湿性・抽水植物である。
抽水植物は、茎の下部が水中に伸び、根からは窒素やリン、栄養塩類を吸収し、周辺の動物性プランクトン
の増殖を促し、小魚等の増加につながる。結果として、流水域の水質向上が期待できると考えられる。知立
市に所在する高等学校として、市の花「カキツバタ」を利用し、猿渡川の保全につながらないかと考えた。
本研究は河川にカキツバタの植生浮島を設置することを想定して、水槽による水耕栽培で水質浄化能の分
析・比較・評価し、その有効性を検討していくものである。
2.実施内容
4月 参加生徒募集
6月 エスペックミック株式会社訪問
6月 水耕栽培試験
6月 『知立東のつどい』にてポスター発表
7月 岐阜大学流域圏科学研究センター訪問(水質分析実験・研究内容プレゼンテーション)
8月 アクアトト・ぎふ及び自然共生研究センター訪問
9月 水耕栽培による水質分析開始
10 月 岐阜大学流域圏科学研究センター訪問(水質分析実験・研究経過報告)
12 月 『科学三昧 in あいち 2012』にて研究成果発表(プレゼンテーション・ポスターセッション)
3.実施状況
(1) エスペックミック株式会社訪問 6月2日(土)
エスペックミック株式会社は、水辺の植生復元を目指した事業を展開する企業である。会社概要と環
境保全に関する取組の実例などの講話を聞いた。また、圃場において植物の栽培方法や技能に関する実
習を行った。また、実際に手掛けたビオトープを見学することもできた。
身近なショッピングモールと協力し、植樹活動を行っていることを知り、自分にもできる環境保全を
考えるきっかけとなった。また、植物苗を手に取り、慣れない作業に苦戦しながらも自然とのかかわり
を肌で感じられる体験となった。
会社概要・事業紹介
圃場実習
ビオトープ見学
(2) 水耕栽培試験 6月6日(水)開始
試行錯誤の末に3種類の水槽設置型の浮島を作り、植物の水耕栽培が可能かどうか、またどれが適し
ているかを検証した。栽培水は猿渡川から取ってきたものを使用し、植物はエスペックミック株式会社
から調達した。植物の成長は確認できたが、藻類の増殖による水質悪化とアブラムシの発生が課題とな
った。
水槽の植生浮島作成
植物苗の準備
水耕栽培試験
(3) 知立東高校『知立東のつどい』でのポスター発表 6月18日(月)
『知立東のつどい』という文化発表会で、河川環境に関する調べ
学習をし、ポスター発表を行った。東海4県を流れる主な河川の場
所と特徴をまとめた。河川データとともに、生活・文化・環境との
かかわりを示した。また、環境に配慮した河川工法も調べた。エス
ぺックミックでの体験活動の報告や研究・実験の様子を知ってもら
うよい機会となった。
(4) 岐阜大学水質分析実験用水サンプリング(実験採水場所の選定)7月17日(火)
水耕栽培に使用する水を、猿渡川のどの場所から採取するかを決定するため、4ヶ所からのサンプリ
ングを行い、同時に水温・pH・EC(電気伝導度)・ORP(酸化還元電位)・DO(溶存酸素量)の測定を行っ
た。さらに、簡易水質検査(パックテスト)を用いて、亜硝酸イオン・硝酸イオン・アンモニウムイオ
ン・リン酸イオンの濃度を計測した。
採水場所の様子
実験サンプルのろ過処理
化学機器による測定
パックテストによる比色結果
(5) 岐阜大学流域圏科学研究センター訪問(水質分析実験・研究内容プレゼン) 7月21日(土)
猿渡川4ヶ所からのサンプルを岐阜大学に持参し、イオンクロマトグラフィーによる溶存態栄養塩濃
度の測定、吸光光度法による全リン量および全窒素量の測定実験を行った。講師による実験概要の説明
のあと、留学生の指導を受けながら実験を進めた。初めて扱う実験器具に戸惑いながらも、丁寧な指導
のおかげで順調に操作することができた。研究室や実験室を案内してもらい、貴重な機器や最先端の研
究の説明してもらった。また、研究報告会を行い、講師や留学生からのアドバイスやデータの解析方法
を教授してもらい、本実験に向けて大きく前進することができた。
実験概要の説明
留学生から指導を受ける生徒
実験の様子
最先端研究の説明
研究概要プレゼン(留学生との交流)
実験データの解析
(6) アクアトト・ぎふ及び自然共生研究センター訪問 8月9日(木)
アクアトト・ぎふでは、学芸員から水生生物調査に関するレクチャーを受け、実際に新境川で生物調
査実習を実施した。
「ガサガサ」という方法を教えてもらい、草の茂みや川底を網でかきだしながらた
くさんの生物を捕まえ、その場で種の同定・解説を受けた。自然共生研究センターでは、本校が猿渡川
という氾濫河川に近いことを踏まえ、氾濫原の研究紹介と多自然型川づくりに関する研究についての講
義を受けた。また、研究施設や3本の実験河川を案内してもらい、研究の一端を見ることができた。
水辺環境の調査(水生生物調査:ガサガサの方法)について【講義】
ガサガサ体験
捕獲した水生生物の同定
新境川【実習】
水生生物調査を終えて【講義】
河川の自然環境保全・復元に関する講義
研究施設内の案内
実験河川の見学と研究の解説
(7) 抽水植物の水質浄化実験 9月11日(火)~10月16日(火)
猿渡川から採取した水をどれだけ浄化できるかを検証するため、4種類(カキツバタ・ヨシ・ミソハ
ギ・ハンゲショウ)の抽水植物を水耕栽培し、水質の観察及び分析実験を行った。植物体の重量変化を
知るため、実験前後に生重量・乾燥重量の測定をした。1週間ごとにろ過サンプルを採取して冷凍保存
し、隔週で簡易水質検査(パックテスト)を実施した。
ポット苗の準備
カキツバタ・ミソハギ・ハンゲショウ・ヨシ
生重量の測定
乾燥重量の測定
サンプリング
機器分析
水耕栽培の様子
実験終了時の植物(左からカキツバタ・ミソハギ・ハンゲショウ)
事後観察
(8) 岐阜大学流域圏科学研究センター訪問(研究の中間報告会・水質分析実験) 10月20日(土)
水耕栽培でのサンプル、6回分を岐阜大学に持参して7月と同様の項目で分析実験を行った。
最初に、前半期の進捗状況をスライド発表し、講師や留学生からの質疑応答を受けた。その後、作業
の分担をして実験に取り掛かった。前回の実験で得た経験を生かし、効率よく工程を進めていくことが
できた。最後のデータ処理は自分たちで行い、解析法の指導・助言を受けた。
留学生への自己紹介
マイクロピペットの操作をする生徒
中間研究報告会
教授から吸光光度計の操作説明を受ける
データのまとめ、処理作業
(9) 『科学三昧 in あいち 2012』12月26日(水)岡崎コンファレンスセンター
今年で第4回となるあいち科学技術教育推進協議会発表会『科学三昧 in あいち 2012』でプレゼンテ
ーションを行う機会を得た。県内のSSHおよびSPPの実施校が集い、研究成果を発表し合った。プ
レゼンテーションでは、学術的な質問に戸惑うこともあったが、新たな発見や発想につながるよい刺激
となった。ポスターセッションでは、他校の発表を参考にしながら、その場その場で改善していく様子
が見られた。また、多くの先生方から、今後の研究活動の発展につながる助言をもらった。堂々と発表
する姿に生徒の自信が感じられた。
プレゼンテーション
ポスターセッション
4.生徒の感想
(1) 岐阜大学での水質分析実験に参加して
・一つ一つを細かく教えてくれたので、実験をやりやすかったし、とても楽しかった。昼休みのときに
積極的に話しかけてくださったので、質問をしやすく、聞きたいことを聞けたし、大学の良さを教え
てくださりとても勉強になった。
・留学生や大学院生、先生方の共通語が日本語より英語のが多くてすごいと思った。
・高校ではやったことのない実験や見たことのない実験器具を使うことができ、取り扱い方や注意点も
説明してもらえてよい経験ができた。
・先生や学生さんはスラスラと専門用語や英語を話していて、エクセルの操作もサッと終わらせていた
ので、本当にすごい人たちだと思い、尊敬しました。
・スクリーンを使って受けた水質に関する講義は、聞いていてだんだん興味がわいてきたので、もっと
もっと聞いてたくさんのことが知りたいと思いました。だから、もう少しゆっくりと講義を受けたか
ったです。
・空いた時間に、大学の下宿のよい場所やかかるお金、大学での職探しなどの方法も教えてくださった
ので勉強になりました。
(2) アクアトト・ぎふ
・(ガサガサは)とても楽しかった。思ったより生物を捕まえるのは難しかった。小さい頃に家族で川
に遊びに行って生物を捕まえたことがありますが、その時に捕まえた生物とは違う種類で面白かった
です。場所によって捕まえることができる生物の種類が違うのには少し驚きました。外来種の多さに
も驚きました。日本にもとからいる生物を食べてしまうかもと思うと、外来種は日本の川には流して
はいけないなと改めて実感しました。
・川に入るときの注意点まで指導していただき、安全に楽しむことができました。生物は住む場所が決
まっているから、岩・砂・草、それぞれそろったところが一番自然に近い川だと分かりました。実習
をすることで教えてもらった一つ一つが理解できて身についたと思います。
・川に入って、自分で網とバケツを持って魚とかを捕まえるなんてやったことなかったし、なかなかで
きることじゃないと思ったからすごく楽しくて充実してました。水族館で魚を見るのも楽しかったけ
ど、川で自分で魚を捕まえてみるほうがおもしろかったです。
・猿渡川にも新境川くらいの多くの種類の魚やエビがいたらいいのにと羨ましく思いました。
・もっと川の探索をしたかったです。河川の流れを感じたり、
「自分が魚だったらどこに住むだろう」
と考えながら魚をとることは楽しかった。こういうことを考えることは、自然共生の第一歩を自分が
踏み出したような気がして嬉しかったです。
(3) 自然共生研究センター
・私がよく見るような川は、周りにゴミが投げ捨ててあったりしてキレイとは言えないので、施設や実
験河川で、生き物とか植物にやさしい、住みやすい環境づくりを研究しているというのがすごく魅力
的でした。環境を改善するために研究や実験をしているのを見てかっこいいと思ったし、自分も生き
物のために何かしたいと改めて思いました。
・自然と共生するために、人間は自然のことを細かく調べていました。どんな土手なら生物が登りやす
いか。水辺に植物があるのとないのとの違い。実際に実験河川で調査して、目に見えるようにするこ
と。こんなにも徹底的にやらなきゃだめなんだということ、川にもたくさんの苦労が施されてやっと
生物の棲みやすい場所になるんだということを思いました。
(4) 『科学三昧 in あいち』に参加して
・事前の準備や実験内容の細部の把握不足など反省することがたくさんありました。他校の生徒たちの
研究をたくさん見て、科学がさらに身近に感じました。
・会場では大勢の高校生がポスター展示をしていたり、大学教授のブースがあり、とてもよい刺激にな
りました。私たちのポスター展示を見てくださった方にアドバイスをもらい、来年度はどのように実
験を行ったらよいかが分かったような気がします。
・校内発表や岐阜大学での報告とは違った緊張感がありました。うまく発表できなかったけれど、いろ
いろな先生からアドバイスをもらうことができたのでよかったです。少しずつ発表に慣れてきている
ような気がします。
・他校の発表の様子を見て、自分がどのように発表すると聞きやすいかということがよく分かりました。
今後の発表に生かしていきたいと思います。
5.指導教員の感想
周囲を見渡せばありふれた自然が、生徒にとっては身近ではないということがわかってきて、こうした
体験活動の重要性を改めて認識することができたように思う。印象的だったのは、エスペックミック株式
会社での圃場実習でたくさんのオタマジャクシを見たときの生徒の反応である。私にとってオタマジャク
シは、近所の池や田んぼにあたりまえのようにいた生物であり特に驚きはなかったが、生徒は苗の植え込
み作業も忘れて、夢中でその姿を追いかけていた。生徒の中にもともと備わっている好奇心を引き出すよ
うな機会が、SPPの活動を通して持てたことがとてもよかった。
実験協力を得て、日頃の授業で扱うことのできない器具・機器・試薬を使い、実験・実習を行うことが
でき、大変貴重な経験ができたと思う。民間企業、大学、研究機関と異なる分野で研究される先進的な内
容を聞くこともでき、大きな刺激になった。今回、興味・関心を持った事柄が、今後の進路目標の設定に
役立つこと、また、思考や技能が生かされることを期待している。
本研究を通して学校でも植物の水耕栽培を行い、実験・観察を実施してきた。最初は教員からの指示を
待ってから行動していたが、回を重ねるごとに、自分から作業を求めてきたり、何をすべきか考え自主的
な行動をとるようになった。活動の中から課題を見つけ、互いに意見を出し合いながら解決方法を模索し、
行動に移す。こうした科学的な姿勢が身についてきたことは大きな成果であるように感じる。
最後に、連携機関であるエスペックミック株式会社、岐阜大学流域圏科学研究センター、アクアトト・
ぎふには、大変丁寧に生徒への指導に当たっていただき、また細部にわたり配慮し準備、説明をしていた
だきました。生徒の成長は、連携機関の方々の熱心な指導のおかげだと思い、大変感謝している。
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