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京のお宝 ~京菓子~
京のお宝 ~京菓子~ 石 田 愛 理 藤 岡 美 紀 -1- 吉 田 千 穂 目次 は じ め に 京 菓 子 と は 京 菓 子 づ く り 体 験 イ ン タ ビ ュ ー 京 菓 子 と 職 人 ま と め 感 想 -2- は じ め に 京都のあらゆる所にあり、お茶菓子として、またお土産として求められる京菓子。 今日、数多くの菓子が存在する中で、あえて日持ちのしない京菓子が好まれているの はなぜだろうか。私たちはそのような疑問から、様々な人に好まれる京菓子の魅力に 注目し、そこにお宝性があるのではないかと考えた。 京菓子の魅力を知るため、実際に京菓子作りを体験したことによって、京菓子につ いての新しい知識を深めることができ、お宝性に近づくことができた。 京 菓 子 と は 儀式典礼やお茶会などでお抹茶と共に出される和菓子のひとつである。しかし他の 和菓子とは異なった特別な存在とされている。その京菓子の特殊性は地域と環境によ って培われてきたものである。 京 菓 子 づ く り 体 験 私たちは京菓子を深く知るために、フィールドワークとして京都で最も歴史のある花街、 上七軒にある「老松」さんで京菓子づくり体験をした。「老松」さんは京菓子の歴史と伝 統を現代に受け継いでいる老舗であり、そのことを継承していけるような試みのひとつと して京菓子づくり体験を行っている。京菓子づくり体験は旅行で来られた方々や修学旅行 の学生、海外からの人たちなど誰でも参加することができ、京都の歴史と文化を体験でき る。また地元の人たちも季節ごとに移り変わる京菓子に魅せられて通う人もいる。 「老松」さんでは午前と午後の2回京菓子づくり体験を行っていて、私たちは午後に体験 したが、その時は修学旅行の学生さんと一緒に行った。午前中も多くの体験者が来ていた という話を聞き、「老松」さんの考える京菓子の歴史と伝統の継承がされているなと感じ た。体験内容としては、*「こなし」という京都独特の生地を使い、その季節にあったも のを作った。 *注…「こなし」についての説明は下記にて行う。 -3- イ ン タ ビ ュ ー 京菓子作り体験をさせてもらった「老松」さんの職人さんにインタビューを行った。 ・どんな人が京菓子作り体験されますか? 旅行で京都に来られた方々や、修学旅行の生徒さんたち、それから外国からのお客様 など、さまざまです。 ・なぜ和菓子作り体験をさせてくれるのですか? 京菓子というと敷居が高い、少しとっつきにくいもの、とイメージされる方もいらっ しゃるのですが、実は京菓子とは日本人の身近にあるものなのです。そこで、もっと 気軽に京菓子に親しんでいただきたい、という想いから体験教室を行っています。 ・京菓子作りの魅力とは? 京菓子において欠かせないことは菓子の色で、ただ季節や月ごとの色をつけるだけで はなく、一日一日の山の色合いや天気の変化によって京菓子の色が変わっていきます。 そのことが京菓子の魅力的な部分であり、京菓子作りの魅力でもあると思います。 また京菓子作りの魅力としては、お客様の喜ぶ顔が見られることです。 ・職人さんの 1 日のスケジュールを教えてください 職人は朝一番に山の色を見るという仕事を行います。それは京菓子作りにおいて色は 欠かせないものであり、四季の色それぞれがはっきりとしている京都の土地では季節 というものは山に表れるものなので、この作業を最も重視して行います。 例えば秋は紅葉の時期ですが、同じ秋でも山の色は毎日確実に移り変わってゆきます。 その変化を職人が自分の目できちんと見て、菓子の色を少しずつ変化させるのです。 ・なぜ京菓子は京都でしか作れないのか ~理由~ ・盆地の気候の変化 ・材料(良質)の産地 ・江戸時代、伏見に砂糖が入った ・良質の「水」湿地帯(関東は乾燥している) ・禁裏を中心とした貴族社会 ・神仏各宗教の集中 ・茶道発祥の地 ・生活が豊かである ・資料の蓄積 ・意地悪な都市…*1 ( 「 老松」さんでは京菓子作り体験をすると上記に書いた内容のプリントがもらえる 。 ) -4- *1…世界でお菓子が発展している国は4都市ある。ウィーン、パリ、香港、そして京都 である。いずれの都市も共通点は、意地悪、自分中心であること。例えば京都の“ぶぶ 漬”の習慣が挙げられる。 ~材料と京都~ “こなし”という生地を使用するのは京都独特。もともと、「熟(こなす ) 」 という古語 が語源で、穀類を砕いて粉にしたり、土をこねてやわらかくしたりすることの意味。あっ さりとした甘みながら、もっちりとした歯触りは、濃茶と合う。 一方、関東は“ねりきり”と呼ばれる牛皮を使用。湿度の違いが違うため、生地を変えて いる。京都は湿気が多いため、こなしを使用。関東は乾燥しているので、乾燥に強いねり きが使用される。 京 菓 子 と 職 人 京菓子職人は、「おもてなしの心」を一番大切にされている。小さな菓子のひとつひと つにも、考え抜かれたデザインと、いろいろな想いが込められているのである。 京菓子の世界では、五感全てを使っていただくことが大切とされている。 その中でも視覚と聴覚は最重要視され、「目で食べる 」 、 「耳で食べる」といわれる。 「目で食べる」とは、京菓子の見た目の美しさを味わいながらいただくことであり、季節 ごとに変わる京菓子の色の変化を楽しむことである。 一方「耳で食べる」とは、菓子の題名から連想されることを自由に想像して楽しむとい うことである。例えば「カキツバタ」という花をイメージした菓子からは、カキツバタの 花の季節を思い浮かべるだけでなく、伊勢物語に登場する からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ という歌の頭文字と取ったものだということを想像し、その歌に込められた意味や伊勢物 語のお話を思い出して楽しむというものである。 このように京菓子とは、名前を聞く→イメージする→共通の認識で楽しむというものだ。 だから、菓子を見てすぐに題名が分かってしまうものはイメージする楽しみがない分レベ ルが低いとされる。京菓子とは、京都人が好むように、より抽象的なものが良いとされる。 それが、同じ和菓子でも、日本の東に行けば行くほど、より具体的になる。例えば、「あ さがお」という題名の菓子を作るのに、京都の京菓子職人ならばあさがおの花だけで表現 するが、大阪の職人ならば花だけでなく葉もつけて表現したり、東京の人ならば、花と葉 にまだつるも加えて表現したりする。しかし抽象的なものを好む京都人にとっては、「余 計なもの」をつけないとあさがおを表現できない東の菓子は良くないのだ。 -5- 〈京菓子職人について〉 京菓子職人の朝は早い。 1 日の仕事は、山の色を観察することから始まる。山の色は、 同じように見えて、実は毎日、刻一刻と変化していき、京菓子職人が季節の変化を感じ取 るための、一番のバロメーターになるのだ。毎日、その時一番きれいな色で菓子を表現し、 お客様にお出しするのが、最高のおもてなしであると考えられている。 また、職人菓子の素材にも十分気を配っており、得に餡は、京菓子職人の生であるとさ れる。彼らが使用する餡には、数キロ数万円もする備中白小豆という岡山県産の高級白小 豆を使っており、その特徴としては豆臭さがない、雑味がなく、なめらかな食感であるこ とが挙げられる。これは、職人が大切にしている、最高品質の小豆である。 季節の移ろいや素材感を大切にする京菓子職人にとって、昔から守られてきた、保存料 が含まれていない、日持ちのしない京菓子というのにも意味がある。日持ちがしないこと の意味としては、おもてなしの心が大切にされている京菓子において、手作業で作ったこ とにより、その時を楽しませるおもてなしとしての心が表れていることと、また移り変わ ってゆく季節を感じることできる、というのが挙げられる。 ま と め 京都という独特の土地から現れる四季の鮮やかな変化。それは、色を大切にする京菓子 とは切り離せないものである。私たちは土地柄と結びついた京菓子、それを作っていく職 人、また京菓子を楽しむ人々の3点から ★ 京 菓 子 の お 宝 性 ★ 移ろいゆくもの、一瞬一瞬を大切にする京菓子職人と、それを楽しむ人の心 と考える。 保存の効かない京菓子では、ひとつひとつのお菓子作りにより心がこもる。そこにお菓 子職人の心、おもてなしの心が表現される。 また、抽象的なものを好み、見た目から題名を想像し、その題名からよりイメージを膨 らませてお菓子を楽しむというのは、京都人ならではの雅な楽しみ方である。 日本人から見ても、外国人から見ても、京菓子の技術は機械では決して作れない驚くべき 技術である。京菓子には、京の大事な伝統文化を伝え、知ってほしいという、お菓子職人 の想いがいっぱい詰まっており、それは京のお宝であるといえるだろう。 -6- 感 想 ~石田 愛理~ 私は京のお宝として京菓子のことについて調べることに決まった時、特に理由も考え ずに、京菓子なんだから京のお宝に決まっている!と漠然と思っていたのですが、実際 に調べてみたり京菓子職人さんにインタビューしてみて、もっともっと深いことが分か りました。職人さん達は、お客さんのことを本当に考えていて、どうやったら喜んでも らえるのか、またそのためには何をしたら良いのかなどを第一に考えていて、そのため には労力を惜しまずに、精一杯尽くしておられて、「おもてなしの心」が徹底されてい ると思いました。また、京菓子が保存の効かないお菓子であるということは、職人さん が昔からの伝統的な作り方を守っていて、近代的な保存剤などを何も入れていないとい うことです。そこには、お客様に一番おいしい瞬間のお菓子を召し上がっていただきた いという気持ちから、朝早くに作業を始め、その日のうちに販売し、おいしく食べてい ただくという想いが込められています。京菓子職人さんが菓子を作るのは、こういった 京の良い伝統を守り、より多くの人に知ってもらいたいと願っているからです。そして 私たちはこの昔から変わらない伝統と、他人に対するおもてなしの心こそが京菓子にお けるお宝性なのだということに気がつきました。職人さんへのインタビューも、本当に ためになることお話ばかり聞けて知識も広がりましたし、最後には自分自身で京菓子の お宝を発見することができて、本当に良かったと思っています。京菓子は、京都が誇り を持ってお薦めし、これからも守っていかなければならない、大切なお宝です。 ~藤岡 三起~ 京菓子は誰が見ても美しいと思うものであり、京都だけとは言わず、日本のお宝であ る。美しい和菓子、と今まで単にそう思っていたが、見た目だけが京菓子の魅力ではな いことを実体験で感じた。作業に取り掛かる前の毎日の山の色合いを見ることからお客 様にお渡しするまでの全工程に、細やかな注意と技術が詰まっています。 なぜ京都が栄えているのか、その歴史は1つの理由だけではなく、すべてのことがうま く重なったから。それこそ京都のお宝であると思う。 京菓子は京都ならではのおもてなしの心が包まれたものであることがわかった。これを 機に、現代も変わらず手に入るお宝として知識を深めて生きたい。 ~吉田 千穂~ 京のお宝として、私が最初に思い浮かんだのが京都独特の食べ物でした。京都の特徴 的気候や土地を利用した京野菜や豆腐・湯葉、鱧など京料理はとても魅力的で美しく、 京都でしか味わえないものだと思いました。そのような京都でしか味わえないものとし て「京菓子」を取り上げた時に、私は京菓子について色と季節などの簡単な知識しかな かったことに気づきました。しかしフィールドワークを行ったことにより情報を数多く -7- 集めることでそのことを補うことができました。京菓子職人さんのお話を聞いたことに より、職人さんの仕事始めは山の色を見ることだとか五感で食べることなど京都ならで はの美意識的なものが含まれている京菓子について深く知ることができてよかったです。 また職人さんの京菓子に込めている想いも知ることができ、京菓子を楽しむことのひと つとしてこれからも影響していくと思いました。 様々なグループの発表により、いままで知らなかった京都について知識を深めることが できました。また自分のグループでも、自分以外の意見や考えを聞きながら共に作業し ていくことは、自分にとてもいい影響を与えてくれたように思います。 色鮮やかで美しく、京都らしい意味合いのある京菓子について体験やインタビューなど のフィールドワークを通じて知ることができたのは良かったです。特にインタビューに より京菓子についての知識を多く得ることができたことは、とてもよい勉強になりまし た。人と接することにより学ぶことができるということは学校という社会では大切なこ とだと思います。自分が教師になった時は、生徒たちにフィールドワークを通じて多く の地域の人々やグループメンバーと接触できるような活動をさせてあげたいと思いまし た。 -8-