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光とDSLのハイブリッド
特集 1 FTTH ブロードバンド 干渉問題 光とDSLのハイブリッド 「FTTR」が夏にも開始 ブロードバンドの新たな選択肢が登場 ソフトバンクが パラソル部隊を展開 契約者数 60万 ADSL ADSLからFTTHへと切り替わり始めたブロードバンドに, 新たな 選択肢が現れた。途中まで光ファイバ,その先をxDSLで伝送する FTTRだ。ADSL事業者, 総務省はFTTH移行への足がかりとして 期待を込める。ただし,3年前に大問題となった 「干渉問題」 の再燃も 懸念される。 (市嶋 洋平) Yahoo! BB 50万 Bフレッツは2005年12月に 単月で17万超の増に 40万 30万 FTTR 登場へ 20万 FTTH 10万 0 Bフレッツ NTTが 光3000万回線構想を発表 四半期ごとの純増数 2002年 第3四半期 第2四半期 第4四半期 本文中☞の付いた 用語を解説 ADSL=asymmetric digital subscriber line。既設の電 話用銅線ケーブルを使う 高速ディジタル伝送方式 xDSLの中で,最も代表的 な伝送技術。 FTTH=fiber to the home。 光ファイバをユーザーの建 物に引き込んで提供する高 速サービス。 2003年 第2四半期 第1四半期 第3四半期 第4四半期 2004年 第2四半期 第1四半期 第3四半期 第4四半期 2005年 第2四半期 第1四半期 ☞ADSL(asymmetric digital subscriber line) FTTHのようにNTT 局からユーザーの近くまで から☞FTTH(fiber to the home)へ──。こ は光ファイバで伝送し,そこからユーザーまで のような既定路線と思われていたブロードバン の区間は,ADSLと同じく電話線( メタル線 ) ドの世代交代に,待ったをかける動きが浮上し を利用して伝送する(図1) 。 ている。☞FTTR(fiber to the remote terminal) という新たな選択肢がそれだ。 FTTHとADSLの長所をいいとこ取り サービス導入に向けてFTTRの議論が始まっ ユーザーの建物の直近まで光ファイバを利用 たのは2005年後半から。早ければ 2006年夏に するため,ADSLのように局からの距離によっ も,利用できるようになる可能性が出てきた。 て速度が大きく変わることがない(表1) 。品質 FTTRはADSLの簡便さを保ちつつ,光ファ も安定する。さらにFTTHと異なり,建物への イバを利用したFTTHの高速伝送の特徴を実現 引き込み作業が簡便である。このためFTTHと するという“いいとこ取り”を狙ったサービス。 比べて申し込みから短期間でサービスを開通で 44 NIKKEI COMMUNICATIONS 2006.2.1 特集 図1 FTTRをサービス提供する際の回線構 成 NTT局からユーザーの建物の近くまで光フ ァイバで伝送し終端。xDSL伝送機器を設置し, ユーザーの建物までメタル線で引き込む。 NTT 局 き線点や配線分岐点 引き込み用電柱 FTTR のユーザー ユーザーの建物への引き込みに 既存メタル線を利用。 短距離のため信号の減衰が 少なく高速化が可能 xDSL 配線経路の途中にVDSLや ADSLの伝送機器を設置 xDSL 光 xDSL 光 ユーザーの建物の近くまでは 光ファイバで伝送 xDSL 光 :光伝送機器 :xDSL伝送機器 xDSL xDSL:digital subscriber line FTTR:fiber to the remote terminal きる可能性が高い。 ば,こうしたユーザーに高速なブロードバンド・ ADSL が全盛期に月に何十万もユーザーを増 サービスを提供する選択肢が一つ増えることと やすことができたのは,引き込みの簡便さによ なる。 るところが大きい。ADSLの場合,事業者は申 FTTRはユーザー への引き込みに, 高速な し込んできたユーザーの自宅にモデムを送付し, xDSL 技術の☞VDSLあるいは☞高速版のADSL ユーザーはモデムを電話線につなぐだけ。後は を使う。現在,国際電気通信連合で標準化中 NTT 局側で設定作業をすればサービスを開始 の☞VDSL2を使えば,最大速度は上り下りとも できる。FTTRもユーザー からすれば,ADSL 100メガと,FTTHと比べてそん色がなくなる。 と同様の手順で開通できるようになる。 ユー ザーの建物に光ファイバを引き込む工事が必要 導入には大勢が“総論賛成” なFTTHとの大きな違いだ。 FTTRに特に前向きなのは,ソフトバンクBB 速度面ではFTTRはFTTHに近い。ADSLの などのADSL 事業者。既に2005年にはFTTHの 信号は伝送距離が長いと減衰してしまい,これ 純増数がADSLを上回るようになった。FTTH が最大の欠点だった。ユーザーによってはサー に対抗可能な新しいサービスとして位置付けよ ビスが利用できなかったり,思ったような速度 うとしているのだ。 が出ないケースがある。FTTR が実用化されれ 総務省もFTTRには肯定的だ。通信政策を担 F T T R=f i b e r t o t h e remote terminal。 通常 NTT局に置くxDSLの通信 機器 (Terminal) をユーザ ーの近くという通信事業者 にとって遠隔地 (Remote) に置くことから名付けら れた。 海外では光ファイ バを家庭まで引き込むこ とをFTTR(fiber to the room) と呼ぶ場合がある。 VDSL=very high bit rate digital subscriber line。既設の電話用銅線ケ ーブルを使う高速ディジタ ル伝送技術xDSL (digital subscriber line) の一つ。 高速版のADSL=下り最大 40メガ超のADSLが想定さ れている。 標準的な8メガ や12メガADSLの約4倍の 帯域を利用して伝送する。 VDSL2=国際電気通信連 合でG.993.2として標準化 が進められているVDSL技 術。2005年2月に仕様が固 まり,2006年前半にも勧告 化される見通し。30MHz までの帯域を伝送に利用 し,上り下り100Mビット/ 秒といった伝送速度を実現 する。ADSLの帯域を避け た伝送周波数の設定ができ る。 表1 FTTRとADSL,FTTHそれぞれの機能や導入方法の比較 FTTRはADSLの開通工事が手軽な点と,FTTHの伝 送速度が高速かつ安定している点を取り入れたサービスと言える。 下り 最高伝送速度 上り 最高伝送速度 局からの 最大伝送距離 宅内引き込み工事 ADSL 50Mビット/秒 10Mビット/秒 3k∼5km 不要 1430万 FTTH 1Gビット/秒 1Gビット/秒 10k∼20km 必要 397万 FTTR 50M∼100M 50M∼100M 10k∼20km ビット/秒を想定 ビット/秒を想定 不要(ただし電柱な どに通信機器を設置 する必要がある) ユーザー数 (2005年9月末) ̶̶ NIKKEI COMMUNICATIONS 2006.2.1 45