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ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポジトリ)
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茨城県バスケットボールスクールの成果と課題
加藤, 敏弘
茨城大学教育学部紀要. 教育科学, 63: 457-476
2014
http://hdl.handle.net/10109/8821
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お問合せ先
茨城大学学術企画部学術情報課(図書館) 情報支援係
http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html
茨城大学教育学部紀要(教育科学)63 号(2014)457 - 476
茨城県バスケットボールスクールの成果と課題
加藤敏弘 *
(2013 年 11 月 26 日受理)
Achievement and Issues of Ibaraki Basketball School
Toshihiro KATO *
(Received November 26, 2013)
はじめに
平成 24 年 11 月から平成 25 年2月にかけて茨城県内7会場で隔週全8回(1回2時間)のバ
スケットボールスクールを実施した。平成 31 年茨城国体に向けた茨城県バスケットボール協会
主催の事業の1つである。2年間の検討を経て平成 24 年度は中学1年生を対象に実施したとこ
ろ,263 名の参加者を得た。スクールの目的や指導方針は,茨城県バスケットボール協会育成部
で議論し,筆者がまとめた。また,指導内容については,筆者が海外の子どもたちの活動を参考
にして茨城大学バスケットボール部の活動に取り入れた練習メニューをもとに中学1年生向けに
考案し,大学生をモデルに映像を撮影・編集し,DVD に収録した。指導者には事前に3時間の
研修会を実施し,1時間 26 分の DVD を自宅研修用に配布した。また,受講者にはこの練習内
容を 46 分に抜粋した DVD を補助教材として配布した。本研究ではこのスクールの準備段階か
らの資料をもとにその内容を示し,スクールを体験した中学1年生とその保護者を対象に最終回
に行ったアンケート調査の結果を分析して,茨城県バスケットボールスクールの成果と課題を明
らかにする。
1 茨城県バスケットボールスクールの準備
(1)茨城国体に向けて
茨城県バスケットボール協会では,平成 31 年度に開催される茨城国体に向け,平成 22 年度から
茨城国体強化事業検討会議を設けて競技力の向上を図るためのさまざまな方策を検討してきた。筆
者はその会議の座長として意見のとりまとめや資料の作成をおこなった。短期・中期・長期の事業
*茨城大学教育学部知識経営講座(〒 310-8512 水戸市文京 2-1-1; Laboratory of Knowledge Manegement,
College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan)
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について検討した結果,茨城国体が終了
した後にも継続されるような事業を長期
事業として開催することにした。
会議では,茨城県バスケットボール協
会の現状,他競技の躍進,日本のバスケッ
トボール競技の問題点について議論を重
ね,その上で茨城県の問題点を次のよう
にまとめた。
①ミニ・中学の競技成績は比較的高い
が,やり過ぎによるバーンアウトや
戦術に走る指導によって選手の自主
性が育たないなどの問題もある。
②全国のトップレベルで活躍する高校
がなく,優秀な選手が県外へ流出す
るケースがある。
③競技会の運営が他競技に比べて形骸化し,子どもたちや父兄の拘束時間が長く,敬遠される要
因にもなっている。
④マナーと称して形式的な儀礼を強要することによって,子どもたち同士の人間関係づくりに悪
影響を与えているケースがある。
こうした諸問題を解決するためには,指導者の意識改革が必要である。茨城県では筆者を中心に
平成 14 年度から日本バスケットボール協会公認コーチ養成講習会を開催し,これまで 800 名を越
える有資格者を輩出してきた1)。転出による移籍もあり,平成 25 年 10 月時点で 641 人の登録があ
る。しかし,一度資格を得てしまうとその後の研修会だけではなかなか指導者の意識改革が難しい。
そこで,子どもたちへの指導を通して,少しずつ指導者同士の縦の連携を深め,指導内容や指導方
法をスパイラル的に改善しつづけるような機会を設けることをデザインした。
この茨城県バスケットボールスクールはその中核を担う事業である。もちろん,具体的な強化に
も繋げなければならないため,図1に示すようなロードマップも作成された。平成 25 年度からは
小学生を対象にした茨城県バスケットボールアカデミーも平行して実施し,平成 28 年度からは日
本バスケットボール協会が主催しているエンデバー事業とリンクしながら子どもたちの強化を図っ
ていく予定である。
(2)茨城県バスケットボールスクール開校の趣旨
平成 23 年の計画の段階では,中学3年生を対象に実施することを検討していたが,中学校の事
情などを考慮し,平成 24 年度は,新人戦が終わった後の 11 月から中学1年生を対象に実施するこ
とにした。茨城県バスケットボールスクールの開校にあたり,茨城県教育委員会,茨城県体育協会
の後援を得て,メディアにその趣旨を説明するため,次の文章(表1)を作成し提出した。
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その結果,茨城県教育委員会と茨城県体育協会の後援を得て,IBS 茨城放送の取材を受け平成
24 年 10 月 10 日に同局のラジオ番組(ホットボイス)で放送された。
(3)実施要項
後援を得ると同時に表2の実施要項を作成し,中学バスケットボール連盟等を通じて中学校の指
導者へ通知してもらうと同時に,茨城県バスケットボール協会のホームページでも告知し,さらに
640 余名の茨城県公認スポーツ指導者に直接メールで参加者の募集に協力してもらうように呼びか
けた。さらに図2のようなポスター(チラシ)を作成し配布した。
(4)応募状況
募集に際し,ホームページで各会場定員 40 名と告知し,定員オーバーの場合は抽選により決定
することにした。また,県北地区は立地条件などを考慮し,男女で会場を分けるのではなく,1会
場2コートを男女で分けて2会場で実施することにした。中学校の関係者からは,人数が集まらな
いのではないかと懸念されていたが,10 日間で 217 人の応募があった。ただし,会場により人数
のばらつきがあり。県南男子が十数名であったのに対し,水戸地区女子は 70 名を越えてしまった。
抽選で 30 名以上をふるい落とすことに対して慎重な意見が出たため,急遽1会場増設した。また,
定員を満たさない会場については,第2次募集を行うことにし,定員になり次第ホームページのボ
タンを削除して応募できないようにした。その結果,新たに 51 名の応募があったが,送迎などの
関係で5名の辞退者が出て,最終的な参加者は表3のようになった。
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2 茨城県バスケットボールスクールの基本構想
(1)バスケットボールスクールのモデル
「バスケットボールスクール」のモデルは,リトアニアとセルビアにある。筆者は,平成 24 年 2
月に子どもたちへのバスケットボール指導現場を調査するために,それぞれ 10 日間現地に滞在し,
各地の活動を取材した。ヨーロッパはプロのクラブチームを中心に子どもたちの育成が図られてい
るが,旧ソ連の影響が強い東ヨーロッパ諸国では,「スクール」という制度が定着している。リト
アニアもセルビアもいわゆる普通の各教科を教える義務教育の学校は半日しかない。そのため残り
の半日を子どもたちは,スポーツや音楽やダンスなどの「スクール」で過ごすことになるのである。
ソ連時代は,このスクールも義務教育と同様に無料であったが現在は有料である。日本のピアノ,
そろばん,習字,水泳などの習い事と同じ感覚である。
バスケットボールスクールの場合,1回の練習時間は 90 分で各学年週2~3回。公立の体育館
を使用している場合は月謝 3,500 円ほどだが,元 NBA 選手が私財を投じて体育館を設立したスクー
ルの場合は,月謝が 8,000 円ほどであった。注目すべきことは,いずれのスクールも 14 才までは
対外試合を行わないことである。ブラジル,オーストラリアの調査でも同様であったが,クラブや
スクール内で同学年や異年齢のチームと試合をすることがあっても,対外的な試合は行わないので
ある。理由は,対外試合を行うと父兄の過熱を招くことや,勝つことにへのこだわりなどから子ど
もたちの育成が十分に図ることができないからである。
一方,日本ではミニバスケットボールでも中学校でも対外的な試合を中心に活動が行われている。
特に首都圏の中学校では,全国大会出場を目指して越境入学によって背の高い子どもを集める学校
もある反面,バスケットボール部がない学校もある。そのためミニバスケットボールを経験した子
どもが他種目へ転向することも多い。茨城県では越境入学させるなどのケースは見られないが,バ
スケットボール部がない中学校は増えている。
こうした現状を鑑み,チームを作って対外試合をすることを目的とするのではなく,子どもたち
一人ひとりの「学び」を中心とした活動を基本として構想されたのが「バスケットボールスクール」
である。
(2)茨城県バスケットボールスクールの目標
バスケットボールスクールで子どもたちのどのような能力を開発し,どのような「学び」を展開
したらよいのかについて,表4のような目標を設定した。
この目標は中学1年生を念頭に考案されたが,前後の学年の成長過程を考慮する必要があること
から,小学校6年生から中学3年生までの4年間で,それぞれどのようなゲームが展開できるよう
にするのか,また,それを実現するためにどのような条件を設定すべきかについて,表5のように
設定した2)。
さらに,参加者と中学校の顧問の先生向けにバスケットボールスクールがどのような方針で実施
されるのか,また,参加するにあたっての心得について図3のようにまとめ,事前に参加者に配布
し,顧問の先生の理解を得るようにした。
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3 指導者の研修
(1)研修会の開催
バスケットボールスクールを開催するにあたり,協力者を募らなければならない。そこで,まず
各連盟(ミニ,中学,高校,クラブ,大学,家庭婦人,実業団)から適任者を推薦してもらい第1
回目の研修会を実施した。その後,JBA 公認コーチを中心に希望者を募り,バスケットボールスクー
ルがどういうものであるのか,また,どのような指導方針でどのような内容を指導するのかについ
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て,事前に2回の研修会(1回3時間)を実施した。研修会には,110 人の指導者が参加し,中に
は複数回参加する者もいた。研修会では表1~6,図1~7の資料を配布するとともに,図4,図
5に示すパワーポイントの内容を提示しながら筆者らが解説した。
実際の研修会では,この他にブラジル,オーストラリア,リトアニア,セルビアの子どもたちの
練習風景を写真で紹介しながら,日本の指導現場との違いを解説した。日本では子どもの時から大
人と同じようにスキルの出来映えを求める傾向が強いが,海外では 14 才ぐらいまでは,完成された
スキルを求めると子どもたちにとってストレスになってしまうことやケガや障害を起こしてしまう
可能性が高いことから,むしろ空間を認識する能力やタイミングを合わせる能力,さらにはうまく
バランスをとる能力などを開発することに重点がおかれている。どうしても目に見える能力に注目
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しがちであるが,子どもたちがどんなことに気づいているのかに着目し,味方との連動性や相手と
の駆け引きのような目に見えにくい能力を開発することに力点を置いている。
こうした能力を開発するための具体的な練習内容として DVD の一部を見せ,表6の説明をした。
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実際の具体的な時間配分については,図6で説明した。このうち,スタビライゼーションの基本
について公認アスレティックトレーナーの和久美紀氏に解説してもらった。その要点は次のとおり。
①フォーム・動作(ムーブメント)
・アライメントを意識して行います(鏡やパートナーによるナビゲー
ションチェックで確認しながら行いましょう)
。
②無理のない程度に呼吸をします(できるだけ呼吸を止めないように)
。
③基本ベースは 3 セットで行います。慣れていない場合や体力のない方は 1 種目 1 ~ 2 セットから
始めてみましょう。
④初めて行うスタビライゼーションの動作が簡単で楽にできると思う人は正確に行えていないとい
うことになります。また,バランスを取るだけのトレーニングではありません。アライメントを
意識することによりアイソメトリクスが生じ,意識できるようになればなるほどきつく感じます。
また,当日の危機管理について不慮の事故に備え,担当体制を明確にするために図7の資料をも
とに解説した。傷害保険については,
レクレーション保険(死亡後遺障害 266 万円,
入院保険金額 3,000
円,通院保険金額 2,000 円)に加入することや,ケガが起こった場合の対応やその後の事務的な対応
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についても解説した。この他,子どもたちの学習カード(図8)や当日の実施報告書(図9)など
を提示し,その記入方法などについても解説した。
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(1)スクール直前の指導者へのお願い
以上,周到な準備と指導者の研修を重ね,各会場の責任者や担当体制を整えたが,さらに第1回
目の直前の 10 月 31 日に指導者に対して次のような「お願い」の文書を発送した。
(2)開校式
第1回目は,各会場に茨城県バスケット
ボール協会の役員を派遣して開会式を開催
した。
(3)問題の発生とその対処
順調な滑り出しを見せたスクールであっ
たが,早速さまざま問題が発生し,次々
と対応が迫られた。まとめると次のように
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なる。
①個人情報保護の観点から名簿類については事務局で一元管理し,各会場の責任者にのみ住所等
を除いた出欠管理用の名簿を渡していたが,指導者から子どもたちの顔と名前を一致させるた
めに,顔写真入りの名簿が必要であるとの要望が出されたため,会場責任者に対象となる子ど
もたちの申込書の PDF ファイルを渡した。
②欠席や遅刻の連絡を事務局に連絡してもらい,そこから各会場の責任者に連絡をとっていたが,
タイムラグが発生し,迅速な対応ができなかった。そこで,途中から欠席や遅刻の連絡につい
ては各会場の責任者と直接やりとりしてもらうことにした。
③装具に対して指導者からその危険性を指摘されたが,装着によるケガが発生しても,相手に対
してクレームをつけないという条件で装具の使用を認めることとし,指導者にもその旨通知し
た。
④忘れ物が発生したり,上着を間違えて持ち帰るケースが発生し,その都度事務局を経由して連
絡をしたので,事実確認に手間がかかった。忘れ物や紛失についても会場責任者と直接やりと
りしてもらうこととした。
⑤徐々に慣れて異なる学校の友人とも打ち解け始めたら,一部の会場で練習とは無関係のおしゃ
べりが目立つようになり,何度も注意をしなければならない状態が発生した。
「楽しさ」を大切
にしているのだが,こうしたケースでどこまで注意をしたらよいのかがわからないと指導者から
の相談があった。各会場で子どもたちとの接し方や距離感について戸惑いの声が聞かれたので,
表8のような文章を子どもや保護者に配布し,会場によって異なる対応にならないよう徹底を
図った。
⑥練習内容が多すぎて,トレーニングの時間が十分にとれないとの連絡があった。そこで,ウォー
ミングアップをかねてトレーニング系のメニューを最初に実施するなどの工夫を依頼した。
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5 アンケートの実施とその結果と考察
第7回(2月4日)に子ども向けのアンケートと保護者向けのアンケートを配布し,自宅で記入
してもらって最終日(2月 18 日)に回収した。また,第7回に欠席した子どもについては,最終
回の終了時に記入してもらった。
回収率は,参加者(子ども)79.5%,保護者 77.6% であった。
回答は,「はい」「どちらとも言えない」「いいえ」の3件法で求め,結果を単純集計した。さら
に参加者(子ども)には「スクールに参加して考えたことなど」,保護者には「スクールについて
のご意見・ご要望など」の自由記述欄を設けた。
参加者(子ども)のアンケート結果は,表9のとおり。
1.
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<考察(子ども)>
参加した子どもは,90% が満足し,95.7% がバスケットボールの楽しさを味わうことができたと
回答している。また,75.6% が技能が向上した,86.5% が知識が増えた,73.2% がプレー中の視野
が広がったと思う,73.2% がタイミングを合わせることがうまくなったと回答している。これらの
ことからボールを持たないときの動きについても一定の成果が得られたと考えられる。相手の動き
を予測することがうまくなったと思いますか?という質問では 56.3% が「はい」と回答し,学んだ
ことを友達に伝えましたか?という質問では 62% が「はい」と回答している。半数以上が「はい」
と回答していることから一定の成果が得られたと判断することもできるが,もう少し高めたい課題
でもある。
スクールの練習内容は難しかったですか?という問いに 17.5% が「はい」と回答し,27.2% が「い
いえ」と回答している。スクールのコーチの指導はわかりやすかったですか?という問いに対して
84.6% が「はい」と回答し,1.4% が「いいえ」であることから,子どもたちは指導内容を十分理解
しているものの,実際に実行しようとした段階で簡単にできる子となかなかうまくできない子がい
ることを示している。体力,柔軟性,体幹の強さ,姿勢の向上については,他の項目と比較すると
低い値を示している。これは,時間配分がうまくいかず,時間がとれなかったことが原因と考えら
れる。
1.
2.
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5.
6.
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8.
9.
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<考察(保護者)>
保護者は,参加した子どもについて 85.6% が満足したと思い,94.6% がバスケットボールを楽し
んでいると思うと回答している。また,85.8% が知識が増えたと回答しているが,技能が向上した
と思うは 60.9% と子どもの実感より低い。これは,スクールのねらいが目に見えない能力の開発に
力点が置かれていることから,外側から見ての印象と子どもの実感との間にズレが生じていると考
えられる。体力,柔軟性,姿勢の向上については,20 ~ 30% 代と低い値を示しており,どの会場
も十分に時間がとれなかったことを裏付けるものである。91.2% が友達が増えたと回答し,86.2%
がスクールのことを家族に話したと回答している。スクールによって子どもたちの人間関係や家族
のコミュニケーションにも影響を与えたと考えられる。運営面について尋ねたところ,80.8% が参
加費は安いと回答しており,86.2% が指導方法は適切だと思う,91.1% が指導者は熱心に指導して
いたと回答していることから,子どもの学びの成果に対する投資効果が高いことを実感している様
子がうかがえる。このことは,89.2% がまた子どもをスクールに参加させたい,85.6% が知り合い
のお子さんにスクールを勧めたいと回答していることからも推察することがきる。
まとめ
茨城県バスケットボール協会にとって,バスケットボールスクールという新しいタイプのプロ
ジェクトを始動させることができたことは,それだけで成果と言える。協会役員をはじめ 100 名以
上の指導者の問題意識や熱意によってこのスクールを実現することができた。予想をはるかに上回
る参加者を得ることができ,そのほとんどがスクールの活動に満足しているなど,子どもたちの「学
び」の成果を感じている。
しかし,一方で告知方法や応募方法,各会場との連絡体制など運営面での課題も浮き彫りになっ
た。また,指導内容と設定された時間と回数,コートやリング数と参加者数のバランスについては,
子どもたちの能力(特にボールをもたないときの動きや姿勢を維持する力)を開発するために,さ
らに詳細に検討する必要がある。 現在,県東地区,県西地区から協会に対して同スクールの実施
を求められ,平成 25 年度から規模をさらに拡大することが決定している。今後は,指導者の協力
体制の充実,各地区での運営体制の確立,指導内容と指導方法の精選を進め,さらに充実したバス
ケットボールスクールの実現を図りたい。
注
1)加藤敏弘,岩崎晋,大高敏弘.2005.「茨城県バスケットボール指導者養成の現状と課題」『茨城大学教育
実践研究』24,279-293.
2)加藤敏弘.2010.『ステップアップ中学体育』(大修館書店)110-131.
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