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産廃溶融スラグの建設材料としての品質 C4-5
第18回廃棄物学会研究発表会講演論文集 2007 C4-5 産廃溶融スラグの建設材料としての品質 ○ (正 )北 辻政 文 1) 、 上埜 秀明 2) 1)宮 城大 学、 2) 溶 融スラ グ 石材 研究 会 1.は じめ に 平 成 18 年 7 月 に 一 般廃 棄 物お よび 下 水汚 泥溶 融 ス ラ グ は コ ン ク リ ー ト 用 溶 融 ス ラ グ 骨 材 ( JIS A 5031)、 道 路 用 溶 融 ス ラ グ ( JIS A 5032) と し て 、 そ れ ぞれ 日本 工 業規 格に 制 定さ れた 。JIS の 制 定 によ り溶融スラグは廃棄物から資源として認知されたこ と に なり 、循 環 型社 会の 構 築の 観点 か ら、今後 、積極 的 な 利用 が期 待 され る。 し か し 、 産 業 廃 棄 物 を 原 料 と し た 溶 融 ス ラ グ (以 下 産 廃 ス ラ グ )に つ い て は デ ー タ の 蓄 積 が 少 な か っ た こ と か ら、 今回 の JIS で は そ の対 象と は なら なか っ た。 廃 棄 物の 溶融 化 は産 業廃 棄 物へ も波 及 して おり 、今後 大量の産廃スラグが発生すると考えられることから、 産廃スラグについても建設材料としての検討が必要 で あ る。そこ で 、本 研究 で は本 学で 入 手し た 7 種 類の 産 廃 スラ グの 品 質試 験結 果 につ いて 報 告す る。 写 真 -1 スラグ細骨材 T 2.溶 融ス ラグ の 製造 およ び 品質 産 廃 スラ グに 関 する 研究 は、堺らの 研究 1) を 除 く と 本 格 的な もの は 見当 たら な い。その 研 究の 対象 は 香川 県 豊 島に 不法 投 棄さ れた 産 廃で ある 。この ため 、廃棄 写 真 -2 ス ラ グ 粗 骨 材 C 物 の 種類 が特 定 でき ない こ とか ら、も っと も扱 い が困 難な廃棄物である。このような材料であっても溶融スラグの環境安全性、品質は安定しており、 溶 融 化技 術は 、 高度 な処 理 方法 であ る とい える 。 不 法 投棄 産廃 を 除く と、産廃 は分別・収 集され る ため に品 質 が安 定し て おり、一 般 に取 り扱 い が 容 易 で あ る 。 溶 融 さ れ る 産 廃 の 種 類 は 、 シ ュ レ ッ ダ ー ダ ス ト 、 建 設 廃 材 、 廃 プ ラ ス チ ィ ク (医 療 系 も含 む )、紙 、有 機泥 、廃油 、廃 ゴ ム、廃ガ ラ スな どで あ る。これ ら の廃 棄物 を 組み 合わ せ、 溶 融 化に 適す る 熱量 や塩 基 度( Ca O /SiO 2 ) が 調 整 され る。 溶 融 炉形 式は 、基 本的に は 一般 廃棄 物 を溶 融す る 炉と 変わ り はな いが 、ガ ス化溶 融 炉で は、シ ャ フ ト炉 、サ ー モセ レク ト、ロ ータ リ ーキ ルン が 多く 、焼 却 灰溶 融で は 表面 溶融 炉、電 気抵 抗式、 シ ャ フト 炉、アー ク 方式 が 稼動 して い る。また 、灰 溶 融炉 で は、一廃 焼 却灰 との 混 合溶 融が多い。 冷 却 方法 は、水冷 および 空 冷で ある 。水 冷では ス ラグ 砂が 、空 冷では 粗 骨材 ある い は石 材が 製 造 さ れる。ま た 特異 な例 と して、石 炭 ガス 化溶 融 スラ グが あ る。これ は 高効 率の 石 炭火 力発 電 所 か ら 発生 する も ので 、今 後 大量 に発 生 する と考 え られ る。 写 真 1、 2 に 産 廃ス ラグ の 外観 を示 す 。ス ラグ 細 骨材 は、 ガ ラス 質で 光 沢が あり 、 主に コンク リ ー トお よび ア スフ ァル ト 用骨 材と し て利 用さ れ てい る。空 冷さ れた ス ラグ は結 晶 化が 進み光沢 は な い。 スラ グ 粗骨 材は 主 に下 層路 盤 材と して 利 用さ れて い る。 【 連 絡先 】 〒 982-0215 仙 台 市太 白区 旗立 2-2-1 宮 城大 学食 産 業学 部 北 辻 政文 TEL.022-245-2211( 代 表 )FAX.022-245-1534( 代 表 )E-mail:[email protected] 【 キ ーワ ード 】 産廃 溶融 ス ラグ 、骨 材 、物 性、 コ ンク リー ト -649- 表 -1 溶融炉のタイプ 溶融物の 種類*2 産廃スラグの品質 粗骨材 細骨材 スラグの種類 *1 有姿 JIS 規 格 値( 一 廃 ) T C S C A J1 J2 C,P AS - - - - - 細骨材 A5031 粗骨材 A5031 - - P P,O,C P,O,C P,O,C P,O,C 一廃産廃混合の有無 無 無 無 有 有 有 有 ふ る い 分 け ( F.M) 3.28 2.50 2.84 8.46 4.76 5.21 6.54 - - 54.7 53.9 57.8 - - - - 53.0< 55.0< 表乾 3.04 2.77 2.80 2.85 2.81 2.80 2.79 絶乾 3.03 2.76 2.77 2.84 2.79 2.80 2.75 2.5< 2.5< 0.17 0.38 0.80 0.50 0.60 0.26 1.49 < 3.0 < 3.0 2.30 3.36 - - - - - < 7.0 < 1.0 1.81 1.57 - 1.57 1.83 1.56 1.68 - - 焼却灰 粒 形 判 定 実 積 率 (%) 密度 (g/cm 3 ) 吸 水 率 (%) 微 粒 分 量 (%) 単 位 容 積 質 量 (kg/Ł) 59.6 56.9 55.2 65.2 56.0 61.2 実積率(%) 0.01 0.01 ASR 膨 張 率 (%) -1.4 -0.78 -1.0 モ ル タ ル 膨 張 率 (%) *1; T:サ ー モ セ レ ク ト ,C:コ ー ク ス ベ ッ ド ,S:表 面 溶 融 , A:ア ー ク , J:電 気 抵 抗 *2; AS:シ ュ レ ー ダ ー ダ ス ト ,C:建 設 廃 材 ,P:プ ラ ス チ ッ ク ,G:ガ ラ ス ,O:廃 油 ,S:汚 泥 表 -2 - - < 0.1 < 2.0 < 0.1 重金属の溶出試験結果 粗骨材 環境基準 mg/ Ł T < 0.0005 < 0.005 細骨材 C < 0.0005 < 0.001 S < 0.0005 < 0.005 C < 0.0005 < 0.001 A < 0.0005 < 0.001 J1 < 0.0005 < 0.001 J2 < 0.0005 < 0.005 ≦ 0.0005 ≦ 0.01 mg/ Ł < 0.001 < 0.005 < 0.005 < 0.005 < 0.005 < 0.005 < 0.005 ≦ 0.01 項目 単位 総水銀 mg/ Ł カドミウム 鉛 ひ素 mg/ Ł < 0.002 < 0.005 < 0.001 < 0.005 < 0.005 < 0.005 < 0.005 ≦ 0.01 6 価 クロム セレン mg/ Ł mg/ Ł < 001 0.002 < 004 < 0.002 < 002 < 0.001 < 004 < 0.002 < 004 < 0.002 < 004 < 0.002 < 0.005 < 0.005 ≦ 0.05 ≦ 0.01 ふっ素 mg/ Ł 0.05 < 0.2 0.2 < 0.1 0.2 < 0.2 0.09 ≦ 0.8 ほう素 mg/ Ł 0.14 < 0.2 0.03 < 0.05 0.2 < 0.2 0.02 ≦1 表 -1 に 骨材 の 品質 試験 結 果を 示す 。デ ータは そ れぞ れの ス ラグ につ いて 3~6 回 サ ンプ リン グ し た もの の平 均 値で ある 。参 考して 、コ ンクリ ー ト用 スラ グの JIS 規 格 値も 併記 し た。スラ グ 細 骨 材 はコ ンク リ ート 細骨 材 とし ての 規 格値 をい ず れも 満足 し てい るこ と がわ かる 。粗骨 材は灰溶 融 ス ラグ であ る 。クラッ シ ャラ ンと し て下 層路 盤 に利 用さ れ てい るの で 、やや粒 径 が大 きい もの の 、 これ らの 骨 材は 良品 質 の骨 材で あ ると 判断 で きる 。 表 -2 は 環 境 安 全 性 の 評 価 試 験 結 果 で あ る 。 わ が 国 の 環 境 問 題 は 公 害 と の 戦 い で あ っ た こ と か ら 、産 業廃棄 物 につ いて は 特に 神経 質 にな らざ る をえ ない 。ス ラグか ら の重 金属 の 溶出 量は 環境 基 準 を大 きく 下 回っ て お り 、 こ れ ら の ス ラ グ が 環 境 へ 及 ぼ す 負 荷 は 極 め て 小 さ い こ と が わ か る 。 3.産 廃ス ラグ を 用い たコ ン クリ ート の 性質 産 廃 スラ グ S を 用 いてコ ン クリ ート 二 次製 品工 場 の実 機を 用 い 、流し 込 み法 によ り 鉄筋 コン ク リ ー ト製 品を 作 製し、実 用 の可 能性 に つい て検 討 した。試 作 した コン ク リー ト製 品 は、道路 用 鉄 筋 コ ンク リー ト 側溝 1 種 300A 種( JIS A 5345)で ある 。試 験 項目 は、フレ ッ シュ コ ンク リート の 性 状試 験、圧縮 強度 (JIS A 1108)、製 品 の曲 げ試 験( JIS A 5363)お よび 凍 結融 解試 験 (JIS A 1148, 水 中 凍結 -水 中 融解 )であ る 。養 生は す べて 蒸気 養 生と した 。 フ レ ッシ ュコ ン クリ ート の 性状 試験 で は、スラ グ の置 換率 が 増え るの に 伴い 空気 量 が増 加した。 ス ラ グを 50% 置 換し たコ ン クリ ート で は、約 2% の 増加 が認 め られ た。こ れは ,今 回 用い た溶 融 -650- 圧縮強度(N/mm 2) 60 50 40 30 S-0 S-30 S-50 20 10 0 0 10 20 30 材齢(日) 図 -1 圧 縮 強 度 試験 結果 相対動弾性係数(%) 100.0 4.ま とめ ( 1) 産 廃 ス ラ グ の 物 性 は 建 設 材 料 と し て 高 品 質 で ある 。ま た 、環 境安 全 性 も 問 題 な い 。 ( 2) 産 廃 ス ラ グ S を 用 い た コ ン ク リ ー ト は ス ラ グ 置換 率の 増 加に 伴い 、強 度お よび 耐 凍 害 性 がや や低 下 する もの の 、コン クリ ー ト 用 細 骨材 とし て 利用 可能 で ある 。 80.0 60.0 40.0 S-0 S-30 S-50 20.0 0.0 0 60 図 -2 120 180 サイクル数(回) 240 300 凍結融解試験結果 120 ひび割れ荷重 破壊荷重 100 最大荷重(kN) ス ラ グの 微粒 分 がや や多 く,練 混ぜ 時 にエ ント ラ プトエアーが多く巻き込まれたことによると思 わ れ る。 図 -1 に 圧 縮強 度 試験 結果 を 示す 。スラ グ 置換 率 が 増 える のに 伴 い強 度が 低 下し たが 、そ の 低下 率 は 大 きな もの で はな い。 ま た、 材齢 14 日 に お け る 圧 縮強 度は 管 理規 定値 で ある 30( N/mm 2 )を 大 き く 上回 って い た。 凍 結 融解 試験 を 図-2 に示 す 。ス ラグ置 換 率が 増 えるのに伴い相対動弾性係数がやや低下してい る 。これ はブ リ ーデ ィン グ 量が 増加 し て,耐凍 害 性 が 低下 した と 考え られ る 2 )。しか し ,今 回の 試 験 で は, 置換 率 50% にお い て も 300 サ イ ク ル終 了 時 の 相 対 動 弾 性 係 数 は 60% を 上 回 っ て お り 、 いずれのコンクリートも耐凍害性は高いと考え ら れ る。 図 -3 に コ ンク リ ート 製品 の 曲げ 強度 を 示す 。ス ラグ混入の有無による曲げ強度の違いは認めら れなかった。コンクリート側溝の品質評価は、 ひび割れ荷重が用いられており、JIS 規格値 は 44.0kN で あ る。 いずれ のコ ンクリ ート も規格 値 を 満 足 して い る こ とが わ か る 。こ れ ら の こ と か ら ,強 度お よ び耐 凍害 性 能の 面か ら ,今 回用 い た産廃スラグ S はコンリート用細骨材として利 用 可 能で ある と 判断 され る 。 80 60 40 20 5.お わり に 0 S-0 S-30 S-50 産 廃ス ラグ の 品質 は、天然 骨 材よ り も品 質が よ コンクリートの種類 く、建設材料として利用可能である判断できる。 今 後 広く 利用 普 及す るた め には JIS の 制定 が不 可 図 -3 コ ン ク リ ー ト 製 品 の 曲 げ 試 験 結 果 欠 で ある 。そ の ため には 十 分な デー タ の蓄 積を し な け れば なら な い。すな わ ち、コン ク リー トや ア ス フ ァル ト 等 の 試 験 施 工 を 行 う と 共 に 、 環 境 安 全 性 の 評 価 を 数 多 く 積 み 上 げ て い く 必 要 が あ る 。 引用文献 1) 例 え ば 、 松 家 武 樹 ・ 堺 孝司ら:産業廃棄物溶融スラグを用いた鉄筋コンクリート梁の曲げひび割れ 挙 動 、 コ ン ク リ ー ト 工 学 論 文 集 、 Vol.16、 No.3、 2005. 2) 例 え ば 、北 辻 政 文 ・田 中 礼 治 ・遠 藤 孝 夫 ・鳴 海 繁 実 (2002):都 市 ご み ガ ス 化 溶 融 ス ラ グ の コ ン ク リ ー ト 用 細 骨 材 と し て の 利 用 コ ン ク リ ー ト 工 学 論 文 集 , 第 13 巻 2 号 , pp.89-98, 2002.5 -651-