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米国民の消費行動の二極化?
Apr 15, 2010 No.2010-46 伊藤忠商事株式会社 調査情報部 調査情報部長 三輪裕範(03-3497-3675) 主任研究員 丸山義正(03-3497-6284) [email protected] Economic Monitor 米国民の消費行動の二極化? 米国民の、クレジットカードへの依存度が急低下している。消費者信用残高はピークの 2008 年から 2010 年 3 月にかけて 5.2%減少、クレジットカードのリボルビング払やローンが主体の回転信用に限ると 12.1%もの急減となり、しかも未だ下げ止まっていない。一方、個人消費は 2 月までで既にボトムから 5% 程度回復、3 月も堅調だった模様である。その結果、金融危機前に 10%台後半だった個人消費(除く耐久 消費財支出)に占める回転信用の割合(=カード依存度)は、足元で 9.2%にまで低下した。こうしたカ ード依存度低下の背景にあるのは、与信枠(カード利用枠や借入枠)の縮小である。与信枠の縮小は、基 本的に、所得環境の悪化に伴う個人の信用状況の劣化によるものだが、資金供給側である金融機関のバラ ンスシート悪化に伴う資産圧縮の動きも影響していると考えられる。米銀決算を見ると、市場部門が収益 を牽引する一方で、個人部門におけるクレジットカード損失に対する引当額が高水準で推移し、業績を圧 迫している。 金融危機前にも、2003 年は 11%を超えていたカード依存度が 2006 年にかけて 10%台前半まで急低下す るなど、カード依存度が変化したことがあった。但し、2006 年にかけての低下は、住宅バブルの発生に 伴い、住宅を担保にした HEL(ホーム・エクイティ・ローン)へのシフトが進んだためだったと考えら れる。住宅価格の頭打ちにより HEL からの資金引き出しが難しくなった 2007~2008 年に、カード依存 度は再び上昇している。 クレジットカードの与信枠縮小は、支出制約を通じて、個人消費に対してマイナスに寄与するはずである。 しかし、足元の個人消費は極めて堅調で、悪影響は見られない。なぜか。一つの仮説は、消費行動の二極 化である。株価上昇による資産効果に支えられ、(与信枠縮小が支出制約とならない)高所得世帯が支出 拡大に転じている一方、低所得世帯は与信枠の縮小もあり、引き続き消費を抑制しているというものであ る。米国における高級百貨店の復調にも、こうした高所得世帯の消費活発化が影響しているのではないか。 回転信用残高の消費支出に占める割合(%) 12 11 10 回転信用残高/名目消費支出(除く耐久消費財支出) 9 8 7 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 (出所)U.S. Department of Commerce,Federal Reserve Borad 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、伊藤忠商事調 査情報部が信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは 予告なく変更されることがあります。記載内容は、伊藤忠商事ないしはその関連会社の投資方針と整合的であるとは限りません。