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「性に関する教育」と - 山形県ホームページ
第Ⅲ章 1 「性に関する教育」と「心の健康づくり」の具体的連携 「性に関する教育」の連携 (1)地域専門家との連携 ◇展開例 1 ~町の保健師さんとの『いのちの学習』【小学校】~ 【連携図】 地域の赤ちゃん とお母さん 保健師 子ども 担 保護者 任 【ねらい】 ○ 生命誕生の仕組みを理解する。 ○ お母さんのおなかの中で大切に育ててもらったことを知る。 ○ 赤ちゃんとふれ合う体験により、いのちの尊さを実感する。 ○ 家族からの手紙や赤ちゃんとのふれ合いを通して、これまで家族の愛情につ つまれて成長したことや、自分が大切な存在であることを実感する。 【実 践】 ① 赤ちゃんふれ合い体験事業 町の健康福祉課の母子保健計画『すこやか親子21』の事業として、 『赤ちゃ んふれ合い体験事業』がある。町内の小学5年生を対象に、保健師と地域在住 の赤ちゃん(学区内に住む生後3~6ケ月くらいの赤ちゃん)とその母親が来 校して、授業を行う。 ② 事前 ◇学校 町の健康福祉課からの『赤ちゃんふれ合い体験事業』の実施案内→実施申し込み→ 日程調整→実施内容の詳細打ち合わせ→子どもへのメッセージ用紙を保護者へ配布 し回収→児童への事前指導(授業のねらいや大まかな流れの説明・グループ分け・ 衛生面での配慮事項の指導など) ◇家庭 保護者は、わが子へのメッセージカードに、生まれた時の様子と気持ち を記入して提出する。同時に、生まれた時のことや小さかった頃のことを 家庭で子どもに伝える機会をつくる。 34 ③ 当日(主な学習内容:45 分授業×2) 1 開講オリエンテーション 2 いのちの始まり、おなかの中の赤ちゃんの様子、誕生についての学習 (妊婦シミュレーター、胎児心音と血流音のテープ、胎児の成長モデル、胎盤モデル、 黒画用紙、クイズ用番号札 などを活用) 3 赤ちゃんの抱き方、お世話の仕方の練習(ベビー人形を使用) 4 赤ちゃんふれ合い体験 (赤ちゃんとお母さん2組が協力) 5 まとめ(感想用紙) 6 閉講 ④ 事後 ○ 福祉課の保健師が、授業の様子と、おうちの方のメッセージや子どもの感 想を載せたお便りを作成。保護者へ配布して家庭との連携を図る。 ○ 学級だよりや学校だよりにより様子を伝え、学校からも情報発信をする。 ○ 授業の様子の写真を校内の廊下に掲示して、「赤ちゃんふれ合い体験事業」 について他の学年の児童にも伝え、いのちについて考えるきっかけづくり にする。 【連携を振り返って】 ○ 町の健康福祉課の事業と連携を図ることで、保健師からの専門的でわかりや すい話を聞いたり、地域に住む赤ちゃんとその母親とふれ合ったりすること ができて、いのちの大切さを実感できると同時に、自己肯定感を高める授業 につなげることができる。 ○ 保健師が授業を行うことで、様々な教材(妊婦シミュレーターや模型モデル やビデオなど)を効果的に活用した授業になり、児童が楽しく主体的に知識 を習得することができる。 ○ 家族からのメッセージを事前に書いてもらったり、家庭で誕生した時の様子 を話題にしてもらったりすることで、自分は大切な存在として育ったことを 感じとるこができる。さらに、赤ちゃんとのふれ合い体験によって、自分の 小さい頃と重ね合わせて、愛情に包まれて成長してきたことが実感できると ともに、いのちの重みについて実感できる。 ○ 学校における、性に関する教育の目標にある“生命誕生について知らせる” “生 命尊厳の精神を養う”“自己を大切にする心情を育む”などにつなげられる。 ○ 5年生までの性に関する教育の積み重ねと、保健学習や理科の学習内容など とも関連を図ることができる。 ○ 思春期を迎えて心が揺れる時期に、自己肯定感を高めたいという教師の願い をかなえられる。 ○ 5年生になると赤ちゃんとふれ合うことができることを楽しみにしている子 どもたちの期待感に応えられる。 35 【総括】 ◎性といのちの学習を実施する際に、児童の実態や発達段階に沿って、 “こんな力を育てたい” “こんな心を育みたい” 、という願いに、より一層近づき効果 的にアプローチしていくには、地域の事業を積極的に活用して連携を図っていくこ とが有効である。 ◇5年生の性といのちの学習 第5次山形県教育振興計画 「生命誕生」 いのちの教育 ◇5年生の理科 「新しい生命・人の誕生」 ◇5年生の保健学習 学校における 「心の発達」 「性といのちの教育」の目標の中の 《自己肯定感》 《いのちの尊さ》 この目標に迫るには? これらの学習をさらに深めるには? 保健師との連携 町の保健福祉課の『赤ちゃんふれ合い体験事業』 自分が好きで大切に思える心、自己肯 定感を育てるには? 期待感に応えるには? 発達段階の特徴として、思春期の入 昨年も実施した赤ちゃんふれ合い体験 り口、第二次性徴、心と体のアンバ 事業。5年生になったら自分達も体験 ランスなど。 したい。 『人のいのちは地球より重い』って言うけれど、地球を持ったことなんてないから、 よくわからない。 今日、学校に赤ちゃんがやって来た!おそるおそる赤ちゃんを抱っこしてみる。腕 の中で動く。すくむくすくむく。意外とずっしり。そして温かい。 「私を頼り切っている赤ちゃん。この子を絶対に落としちゃいけない。 」 思わず 腕にぎゅっと力が入る。 【遊佐町立稲川小学校 36 津田富明先生 作】 ◇展開例 2 ~看護学生と共に学ぶ『心と命の学習』【中学校】~ -ショートピアカウンセリング+講話- 【連携図】 看護学生 看護学校教官 子ども 養護教諭 【ねらい】 ○「生命を尊重する」精神に基づき、 「自分を大切に思う気持ち」を育て、命を つなぐ「性=生命」と、たくましく生き抜く力としての「生=生き方」につ いて考える。 【実 践】 ○ テーマ:「一緒に考えてみませんか。性と生のこと・・・自分のこと」 ○ 対象学年:3年生 ○ 講師:看護学校教官・看護学生(ピアカウンセリング受講生=ピアっ子) ○ 本実践は、教育課程の年間計画に位置づけられ、前期・後期に分かれた「心 と命の学習」の3学年の学習である。 ◆計画 項目 時期 前 期 後 7月中旬 期 11 月下旬 ・夏季休業を前にして、専門家から学年 ・後期の「心と命の学習」は、教職員が 目的 に応じて「性」と「生」に関する正し 「命の尊さ」や「賢く生きること」な い判断を身につけさせること、問題行 どについて幅広くとらえた指導をす 動の未然防止を目的とする。 ることで、人生の先輩としてアドバイ スしたり、生徒とともに人生や命につ いて考えることを目的とする。 1学年: 「喫煙・飲酒・薬物乱用防止に 内容 ついて」 ぶ・異性との関わりを学ぶ・生き方考 2学年: 「タバコと健康」 えるという4つの大枠のなかで、各教 3学年: 「生と性について」 員のテーマによる内容とする。 学習 ・学年毎、専門家からの講話形式 形態 (3分野を3年間で実施する) 1学年:少年補導専門官 講師 ・生命の尊さを学ぶ・健康な生活を学 ・2日間にわたり、各学年カフェテリア 形式の2講座選択 学年所属教職員 2学年:市立病院看護部の教官 3学年:看護専門学校教官 37 ◆学習内容 1 ピアっ子とともに自己のライフプラン(人生設計)をた ☆ ピアカウンセリング て、 「性=命」について考え、ライフプランに基づいた性の ☆ ピアっ子 自己決定の必要性を学ぶ。 ☆ ライフプラン 2「男女交際」について、ネゴシエート(交渉)のあり方を ☆ ネゴシエート グループ演習する。 3 専門家(看護学校教官)に「性」の知識を学ぶ。 1)ピアカウンセリング 性の正しい知識を学んでいる ピアっ子 ☆ ピアカウンセリング 正しい性の知識を持った若者= ピアっ 子が、身近なコミュニティで、同世代の若 ピアカウンセリング 者と交流しながら、正しい性の知識を伝達 生徒は、性の正しい知識を基 に、自己の性を受容し、具体的 な性の行動がわかる。 したり、サポートすること。 ピアカウンセリングの8つのルール! ☆批判的にならない・決め付けない ☆共感を示す ☆個人的なアドバイスはしない ☆詰問調にならない ☆問題の責任はとらない ☆現状と現時点に視点を据える ☆解釈をしない ☆感情と向き合い、話し合う。 2)ライフプラン ☆ ライフプラン(人生設計) 自 分の将来の人生設計を考えることで人 生の擬似体験ができる。過去を振り返り、 未来を見据えることで、自分自身の「生」 ライフプラン 過去 未来 と向き合うことにつながる。 現在の自分と向き合う。 ☆ ライフプランのポイント! 自分の人生を創造していくことで、「今の自分」 ・ 「こうありたい自分」を意識するこ とができる。 3)ネゴシエート ☆ ネゴシエート(交渉) 自分の気持ちを相手に伝えることの難しさとともに、相手の気持ちを考えた会話をす ることで、相手に流されずに自分の意見を言い、また、相手との関係も気まずくならな い方法を見出していくこと。 38 <男女関係のネゴシエートの演習> どうしよう?好きだけど、家の人に 叱られるのもいやだな・・・ 僕のことが好きなら帰る時間が遅くなってもい いだろう?帰るのなら別れたっていいんだぜ。 このように誘われた時、今の自分がどう考え、どう決定し、どう行動するのかを実際に ピアっ子とネゴシエーションしながら、考えていく。 (グループ演習) 自分の気持ちをしっかり話してく れているんだな。ぼくたちの関係も 大切に思っていてくれてうれしい な。無理を言ってごめんね。 そんな悲しいわ。わたしはあなた のことが大好き。でも、家族も大 切なの。私たちのいい関係を家族 に理解してもらいたいの。だから 家族とのルールも守りたいの。 わかってくれるかな・・・ 男女交際のネゴシエートのポイント! ○ 相手を責めたり、脅したりはしない。 ○ 自分の気持ちを誠実に伝える。 ○ 「ぼくたち、私たち」という言葉で、話をする。 【連携を振り返って】 ○ 中学生は、二次性徴が現れ、身体的に性的成熟が加速し異性への関心や 性 衝動が高まる現象と、自我のめざめや社会的自立のジレンマに陥る時期であ り、不確かな性情報の氾濫と性に対する価値観の多様化により、精神的な動 揺がみられる時期である。この時期に、同世代間で生き生きと「性=生」の 情報交換をすることで(ピアカウンセリング)、素直な心で性に対する態度や 行動について考えることができる。 ○ 男女交際のネゴシエート(交渉)についてグループ演習するなど、学習形態 を様々工夫することで、「性」に関する具体的な行動を学ぶことができる。 ○ ピアっ子を中心に、仲間と語り合うことで、多様な人生観に触れ、視野を広 げたり、思いを共有したりするなど、「生命と生き方」の学びが深まる。 39 (2)学校医・地域専門医との連携 ◇展開例 3 ~産婦人科医による『保健講話』【中学校】~ 【連携図】 産婦人科医 子ども 保護者 学年主任 養護教諭 【ねらい】 ○ 男女の意識の違いなどを理解し、中学生らしい男女交際の仕方を考える。 ○ 性感染症の予防の知識など科学的知識を理解させることで、自分や異性の人 格を尊重する態度や行動を身につけさせる。 【実 践】 ○ テーマ:「男女交際の仕方と性感染症の予防について」 ○ 対象学年:3 年生とその保護者 ○ 講師:産婦人科女医 ① 事前 ○ 保健学習として、1・2年で「からだの発達・心の健康」を学習している。 ○ 1 年生の時、外部講師より「大切なあなたの命~性と生~」の講話を受講し ている。 ○ 学年経営として日頃から男女交際や性について、真面目に考える雰囲気を作 っている。 ○ 保護者にも講話の案内や概要をお知らせする。 ~保護者の皆様へ~ ・ 今回の講話は、とくに思春期の女性の様々な悩みに真剣に向き合い診療を続けて いる素敵な産婦人科の女医さんからのご講話です。 ・ 今回の講話の内容は、保健の教科書「11.性感染症の予防/エイズ」と「3. 性機能の成熟」 「4.性とどう向き合うか」で扱っております。 ・ 今後、保健体育の「保健」の授業で学習内容を深めていきます。 ② 当日 ○主な講話内容 ・性感染症の予防について科学的知識を理解させ、理性により行動を制御する力や、自 分や他者の価値を尊重し、相手に思いやりを持って接することの必要性を学ぶ。 ・近い将来、男女の関わり方や性行動に対して溢れる情報に惑わされず、責任を持って 自己決定できるように性情報や性被害などの現状を知る。 40 ○流れ(14:00 開始~15:20 終了) 1 開会・講師紹介 2 全体講話(50 分) 3 質疑応答(5 分) 4 お礼・閉会(閉会後男女にわかれる。) ・女子生徒対象に産婦人科医よりミニ講話・質疑応答(15 分) ・男子生徒は、教室にて男性教諭より指導・感想記入(15 分) ③ 事後 ○ 生徒の感想を載せた保健だよりを作成し配布。家庭でも話題にしやすいよう にする。 ○ 保護者も対象にしたことで、「性に関する教育」について学校と家庭の連携 が深まる機会となる。 【連携を振り返って】 ○ 不確かな性情報の氾濫と性に対する価値観の多様化のなかで、性に関して適 切な判断をし、自分や相手を守るためには、正確な情報を得ることが必要で ある。正しい知識を学び、将来、性の自己決定への手がかりとする機会とし て、産婦人科医と連携を図り、発達段階に応じた講話を設定することは有効 である。 ○ 産婦人科医と連携することで、将来生徒が何らかの性の悩みを抱えた時に、 産婦人科が地域における相談の窓口の一つであることを知ることができる。 ○ 外部講師とともに性について考えることは、「自立した大人になるために自 分の生き方を考えること」にもつながり、性=生すなわち「いのちの教育」 となる。このことは、下記の生徒の感想からも読み取ることができる。 <生徒の感想> 講話をお聞きして、性について責任を持った行動を しようと思いました。今日は「命と未来を守る 性の 知識」を身につけることできたので、後はそれを使い こなす教養を身につけていこうと思います。いのちと 未来を守るのは自分次第です。 41 ◇展開例 4 ~産婦人科医・地区養護教諭の『事例検討会』【高等学校】~ 【連携図】 地 産婦人科医 区 養護教諭 【ねらい】 ○ 性の問題について事例検討を行い、解決の糸口を見い出す。 ○ 専門医の指導を活かし、対応策について学習する。 ○ 相談を受けた際の連携の取り方について学習する。 【実 践】 ○「産婦人科医との事例検討会」 ○ 対象:地区養護教諭希望者 ○ 助言者:産婦人科女医 ○ 時間:1時間 30 分 ① 事前 ○ 保健室で生徒から相談を受ける内容についてまとめる。 ○ 教員から相談を受ける内容についてまとめる。 ○ 事例検討会のテーマを決め、産婦人科医へ伝える。 ② 当日 ○ 相談内容 ・「ピルの活用について」 ・「高校生の男女交際について」 ○ 進め方 ・事例について提供者が概要をプリントにまとめ、説明する。 ・問題点について検討する。 ・生徒や教員に対応する際のポイントについて、産婦人科医の指導助言して もらう。 ③ 事後 ○ 事例検討会の内容をまとめ、地区養護教諭部会等の機会に学習会を行う。 ○ 相談を受けた際の連携のあり方について作成。 42 相談を受けた際の連携の取り方 ◆学校内から必要に応じ、外部機関につなぐもの (性感染症・身体の発達段階の悩み etc…) 本 養護教諭・教諭 人 ・状況把握 校内関係者 担任・顧問など ・判断 家 学校医 医療機関 庭 ※ 校内組織委員会 は必要に応じて ◆学校外との連携が必要なもの (緊急避妊・性被害 etc….) 本 家 庭 養護教諭その他 ・状況把握 ・判断 人 医療機関 学校医 カウンセラー 警 校内関係者 担任・顧問など 校内組織委員会 察 【連携を振り返って】 ○ 性に関わる問題は、生徒や保護者にとって相談しにくい内容が多く、対応は 慎重に行う必要がある。相談を受けた際の連携の取り方については、相談内 容に応じてスムーズに行うことができるように配慮しなければならない。 ○ 産婦人科医の助言は専門的かつ具体的であるため、問題解決には必要不可欠 である。 43 ◇展開例 5 ~精神科校医との『健康相談会』【特別支援学校】~ 【連携図】 校医 保護者 養 護 教諭 【ねらい】 ○ 保護者が、医学的な側面から子どもの性的な発達段階を正しく理解する。ま た、社会的な側面からの指導助言を得る。 ○ 保護者の日常生活における子育ての悩みや、子どもの性的な発達に関する戸 惑いに対応する。 ○ 学校では、子どもの現在の健康状態と発達段階を正しく理解・把握して、個 別の教育支援計画(短期あるいは長期目標)に反映して支援に生かす。 【実 践】 ○「精神科校医との健康相談会」 ○ 1年に2回、相談希望のある保護者を対象に、学校を会場にして実施する。 (相談内容は、性に関することに限定しない。) ○ 1回の相談は2時間とし、2~3件の相談を受け付ける。 ① 事前 ○ 全保護者に案内し、「希望の有無」「相談者」「内容(簡潔に)」を調査する。 ○ 案内には、相談内容について例を挙げる。 ~お子さんの日頃の生活で困っていること、対応の仕方に迷っていること等~ 「お子さんについて、こんなことはありませんか?」 (例) ・落ち着いて行動できない場面がだんだん多くなった ・夜中、何回も目を覚ます ・寝つき、寝起きが悪い ・食事がすすまない・突然、大きな声を出す ・性的な面で心配事がある ○ 養護教諭が、保護者から面談または電話であらかじめ相談内容を詳しく聞き 取り、問題を焦点化する。その内容をまとめて、事前に校医へ紙面で伝える。 ○ 相談の時間を内容により決定する。(1件、30~45 分) ○ 担任、養護教諭の同席について、保護者より了解を得る。 44 ② 当日 ○ 面談の順序 ⅰ 校医が、保護者から相談内容を聞く。 ⅱ 校医が、該当児童生徒の学習中の様子を教室に入って観察する。 ⅲ 校医が具体的に保護者にアドバイスし、さらに保護者が校医に質問する などして進める。 ○ 主な相談内容 ・性器をいじっている時の親の声かけの方法 ・性的な体の発達に対する親としての関わり方 ・思春期の異性に対する気になる行動への声かけの方法 ・障がいのある子どもの性的な発達の特徴とこだわりについて ・親の相談相手がいない ・学校(教室)での異性との関わりについて ③ 事後 ○ 保護者に相談後のアンケート用紙を配付する。相談しての感想、相談時間等 について尋ね、次の相談に生かす。 ○ 相談記録を養護教諭がまとめる。学部主任、担任を中心に共通理解して支援 にあたる。 【連携を振り返って】 ○ 子どもの性的な発達は、思春期の心身の発達である反面、子どもと親にとっ て不安や悩みとなることも多い。精神科校医と保護者と学校が連携し合って、 その不安や悩みを軽くすることができた。 ○ 保護者が校医と直接相談できる場を学校で提供できたことが有意義である。 ○ 学校においては、教育と医療との連携という観点から、学校医の指導助言を 得ながら児童生徒の望ましい習慣形成のために対応し、保護者を支援してい くことができる。 <事後アンケートの内容(例)> 1 今回相談をしていかがでしたか? (1) 大変良かった (2) 良かった (3) 今後も継続して相談したい (4) 相談したいことがあるときにはまた相談したい (5) どちらでもない 2 今回の相談時間は 30 分間でしたが、いかがでしたか? (1) ちょうどよい (2) 短い どれくらいの時間がよいですか?( ) (3) 長い どれくらいの時間がよいですか?( ) 3 相談して得たことや感想などをお書きください。 45 (3)関係機関等・学区小学校との連携 ◇展開例 6 ~シンポジウム形式『学校保健委員会』【中学校】~ 【連携図】 学校医 町保健福祉課 学校歯科医 給食センター栄養士 校内組織 学校薬剤師 母親研修部 学区小学校養護教諭 保護者 【ねらい】 ○ 性に関する教育を「人間の生き方を学ぶ場」として位置づけるとすれば、学 校だけではなく、 『家庭とともに』 『地域とともに』進めていくことが重要で ある。そのためには、学校保健委員会を活用して、地域レベルで性に関する 教育を検討しく。 ○ 学校保健委員会において「子どもの性」についてのテーマを取り上げ、シン ポジウム形式で保護者や校医、地域の専門家が参加して性に関する教育へ理 解を深める。 【実 践】 ① 事前 ○ 厚生部(校内組織)で学校保健委員会のテーマと内容を検討する。 ○ 町養護教諭部会で性に関する教育をテーマに研修を深めながら、生徒対象に 性に関する意識調査結果をもとに、「子どもの性」についてのテーマを取り 上げる。 ○ 性に関する教育を地域、家庭、医療、学校で連携しあって進めていくために、 各々の立場から話題提供してもらえるように、シンポジウム形式にする。 ② 当日 ○ テーマ:「性について子どもと話そう ~大人へのスタートをみんなが支えよう~」 ○ コーディネーター:教務主任 医療 ○ パネリスト 地域 ・性感染症について:学校医 ・山形県の保健統計から見た「十代の性」:町保健福祉課係長 ・「性に関するアンケート」調査結果:厚生部長(校内組織) ・家庭における性教育:PTA母親研修部長 家庭 46 学校 ○ プレゼンテーションの要旨 <十代の性> 十代の性感染症感染者(クラミジア)は、山形県全体の感染者の 20%をしめ、 統計的にみると憂うべき状況である。性については行政において難しい分野で あるが、地域学校と一緒になって取り組んでいきたい。 <性感染症> 若者の性感染症の増加の背景には、責任ある性的行動について、家庭や学校 で正しく明快な情報を与える機会が少なかったことが考えられる。家庭や地域 社会で、正しい性の知識を習得できる環境作りが大切である。 <生徒のアンケート結果> 親の教えたいことと子どもの知りたいことにギャップがある。 <家庭における性教育> 母親として、子どもが自分の行動に責任をもち、よりよい判断ができるよう に支援することや、子どもの様子を見て親が気づく、というように頭で考えて 子育てをしたい。 ○ 学校保健委員の保護者・職員に加えて、中学校区内の小学校養護教諭も参加 し、小学校と中学校の連携を図る。 ③ 事後 ○ 学校保健委員会だよりを発行して、学校保健委員会の内容を全保護者に知ら せた。家庭で親が子どもと性について話せるきっかけ作りとなった。 ○ 学校では、「思春期教室」を継続するとともに、小学校と中学校の系統性に 重点を置いて指導をしていくことを職員間で確認する。 【連携を振り返って】 ○ 保護者や各関係者から意見を聞いて話し合うことにより、子どもの実態を知 り、大人として子どもたちに教えていくべきことや心構えを共通理解し合う ことができる。 ○ 中学校の学校保健委員会実施後に、各小学校の学校保健委員会でも「子ども の性」をメインテーマに取り組み、小中の連携が図られる。 ○ 学校保健会養護部会で、町全体の保護者向けに性に関する内容の便りを発行 し、情報の共有化、啓発活動を展開できる。 47 2 「心の健康づくり」の連携 (1)健康支援(一次支援) ◇展開例 1 ~健康観察による校内連携の例【小学校】~ 【連携図】 【ねらい】 ○ 子どもの心身の健康問題の早期発見・早期対応を図る。 ○ 日々の継続的な健康観察の実施によって、子どもに自他の健康に興味・関心 をもたせ、自己管理能力の育成を図る。 【実 践】 ○ 朝の健康観察 〈学級担任〉 ・欠席者・遅刻者の把握・観察 (表情・声・顔色)・確認 (見る・聞く) 〈子ども〉 ・自分自身で体調を見る(自己管理能力の育成) ○ 全教育活動における健康観察 〈教職員〉 ・欠席者の把握 ・保健室より教室復帰後の経過の健康観察 ・教育活動中の観察:体調・対人関係・学習状況・精神状態 ○ 保健室 〈養護教諭〉 ・救急処置:けがの手当て、休養、早退、医療関受診の必要性の有無等 の判断と対応、 ・健康相談と保健指導 ・学級担任等への連絡 ・朝の健康観察結果の集計、分析 <連携のポイント> ◆心の健康問題に気付くうえで、子どもと常に身近に接している教職員による健康観 察の重要性を共通理解する。 ◆学校生活全体における健康観察には、体・行動や態度・対人関係にあらわれるサイ ンについて視点をもつ。 ◆学級担任や養護教諭が中心となり、教職員との連携のもとに行う。 ◆保護者に子どもの健康観察の視点を周知し、理解と協力を得る。 ※教職員のための子どもの健康観察の方法と問題への対応(平成 21 年 3 月:文部科学省)参考 48 ◇展開例 2 ~アンケート調査を活用した学級経営と生徒指導の例【小学校】~ 【連携図】 「楽しい学校生活を送るための アンケート調査」活用のねらい ・客観的で多面的な児童理解を行い、不登 校内研修 共通理解 コンサルテーション 校予防・いじめなど問題の発見と予防 ・現状の学級集団の状態を的確に把握し、 計画的な指導と援助の積極的な実施計画 的な指導や援助を積極的に実施 ・教育実践の効果を評価し、検討 家庭教育講演会・入学児童保護者会 【実 践】 次のような年間計画で実践し、次年度も継続して実施した。 研 修 6月「校内生徒指導研修会」 <第1回> 外部講師 「自立し、仲間と調和して生活 する子どもの育成を目指した 指導・支援のありかた」 アンケート調査で把握した 実態や課題へ対応するために、 集団への指導や個別の対応を どうするか、教師の支援のあり 方を研修した。 12 月「校内生徒指導研修会」 <第2回>外部講師 第1回の研修会、アンケート調 査の結果、コンサルテーション を受けて、実践したことの事例 報告会(教職員間の成功の共 有)を実施した。 教師同士のつながりが深ま り、良好な人間関係をもたらさ れ、校内連携が強化された。 生活指導・学級づくり 6月:第 1 回アンケート調査 6月 外部講師による コンサルテーション 12 月:第 2 回アンケート調査 ・児童の変容の把握 ・集団への指導、個別の対応 の成果と課題をつかむ。 ・1回目に抽出した児童の見 取り。 ・学校全体の傾向と次年度へ の方針を探る。 12 月 家庭との連携 11 月 家庭教育講演会 ~外部講師~ <テーマ> 「自立し、仲間と調和して 生活する子どもの育成」 <対象> 保護者、地域、隣接幼稚園、 保育園、中学校の教職員 2月 新入学児童保護者 説明会における講演 ~外部講師~ <テーマ> 「自立し、仲間と調和して 生活できる子育てとは」 外部講師による コンサルテーション <連携のポイント> ◆学校全体で組織的に取り組む体制を築き、年間計画に位置づけて実施する。 ◆年間を通して外部講師の協力をいただき、PDCAサイクルをとりながら実施する。 ◆校内の教職員間で共通理解のもとに一次支援(すべての児童)にあたる。 ◆アンケート調査結果を活用し、学級における個別対応(二次支援・三次支援)と一斉対応 (一次支援)の両面からの支援により、どの子どもにも居心地がよく、所属感が高まる心 の健康を育むことができる。 ◆校内の共通理解にたった指導と同様に、家庭教育と一貫した方針で対応できるように、学 校での取組について随時報告することで家庭を巻き込んでいく。 49 ◇展開例 3 ~学校保健委員会の協議から PTA 子育て研修会を開催した例【小学校】~ 【連携図】 、 、、 【実 践】 1 学校保健委員会を開催するにあたり、PTA 母親委員会をメンバーにする学 校保健委員会事務局会を開催し、協議内容について検討する。児童の健康や 生活の実態を情報交流する中で、様々な生活環境の変化による子どもの心の 健康についてテーマを決定する。 2 学校保健委員会では、さらに子ども達の実態を話し合い「心の健康づくり」 をどう進めていけばいいか、学校の役割と家庭の役割を確認し合う。 3 学校医から、心の健康づくりには「予防教育」が何よりも大切であるとア ドバイスを受ける。 4 これを受け、PTA 常任委員会では心の健康づくりを推進する家庭の役割に ついてさらに協議を重ね、良好な親子関係が子どもの心の健康を育むという 認識に立ち、保護者の研修のために「子育て研修会」の実施につなげていく。 5 講師の依頼にあたっては校医からのアドバイスをもらいながら進める。 <連携のポイント> ◆学校保健委員会は子育て(保護者)と教育(教員)と医療(校医)の専門家が集い 子どもの健康づくりを協議し合える重要な場であるという認識を持つこと。また、 専門家の指導助言をいただける絶好の機会である。 ◆心の健康づくりを予防的に推進していくためには家庭との連携が必須であるため 「学校保健委員会」の活用が大変有効である。また、PTA 全会員に向けた情報発信 を効率よく実現できるメリットがある。 ◆開催にあたっては代表の保護者と準備会を持つことで、よりニーズに応じた会議内 容を構成することにつなげられる。 ◆学校保健委員会を核として保護者や校医と情報を交流し合うことで、子どもの実態 や保護者のニーズが明確になり、より適切な支援につなげられる。 50 ◇展開例 4 ~中1ギャップ予防の対応例【中学校】~ 【連携図】 相談 専門機関 相談・支援 交流・支援 情報交換・支援体制整備 【ねらい】 ○ 中学1年生の入学後の学校生活への適応を促進し、学校不適応を予防する。 【実 践】 ○ 時期:3学期・中学校入学前 ○ 対象:小学6年生の児童と保護者 ○ 内容 (1)小学 6 年生が、事前に中学校の学校行事や授業へ参加し、中学校の生活 を体験する。 (2)小学校から中学校へ小中連絡票による情報の交換を行う。 (学年担任・生徒指導・養護教諭が必要な情報の交換を行う) (3)新入生一日入学で保護者に対して、養護教諭より心と体の健康について のオリエンテーションを実施する。別紙<参考資料> (4)特別な支援が必要な児童は、事前に中学校訪問を実施し、学級との交流 を図る。また、必要に応じて入学前から保護者や専門機関と連携をとっ ておく。 (5)5月の連休後、不適応が心配される生徒への支援について、小学校から の情報をもとに校内で再確認をし、具体的な支援について計画する。 <連携のポイント> ◆小・中学校で各担当者よる事前の情報交換を大切にする。 ◆保護者に対して、中学生の心身の特徴や不適応の早期発見の理解につながるよう に、オリエンテーションを行うことで家庭との連携が図りやすくなる。 ◆中学校入学後の学校適応がスムーズにいくように、特別な支援や配慮を必要とす る場合は、入学前から保護者や医療機関と相談を実施する等連携をとっておく。 51 参考資料 1 中学1年生という時期は、環境や身体や心が大きく変化する時期です。 ①環境の変化(中一ギャップ) ○見ず知らずの者と新しい友達関係を築く。 ○学級担任制から教科担任制になる。 (小学校のような密接な担任との関係が築きにくいもの) ○学習や生活面での自主性・主体性が重視され、あらゆる場面で必要になる。 ○学期ごとの試験の実施や課題の増加。 ○部活動でも人間関係が複雑になり、先輩(や後輩) 、顧問教師との関係に気を遣 う場面が多くなる。 2 ②からだの変化 ③こころの変化 ○著しい発育 (1年間で10センチ伸びる場合もある) 発育の個人差が大きい ○変化するからだ(第二次性徴) ↓ 発育に関わる不安や不調 「自分だけなのだろうか?」 「自分はおかしいのではないか?」 ○口数が少なくなる ○感情の変動が大きくなる むしゃくしゃしたり、イライラしたり ○自分や他人に対する意識が強まる 他人の目を極端に気にする 他人と比較して悩む。 ○友達との繋がりが強くなる 友達とうまく関われない 友達とのトラブルが増える。 中学生に見られる心身のトラブル ○友達関係の悩み 中学生になると心や体の変化にともない、さまざまな心身の トラブルが出てくることがあります。 ○異性関係の悩み ○学習や部活の悩み ○体の成長のアンバランスから頭痛やめまい・吐きけなど(起立性調節障害) ○食生活・生活の不規則から 貧血・生活習慣病 ○運動量の増加から スポーツ障害 ○心身のストレスから(心身症) ・・・過敏性大腸炎・過呼吸症候群・胃潰瘍・拒食症 3 家庭での中1ギャップ予防のポイント 中学校での生活は不安や緊張の連続です。家庭では十分な休養を取り、子どもの話に耳を傾けて ださい。家庭での子供を見守る姿勢が、子どもの安心感を作り中学校生活への活力を育ていきます。 ○行動や表情などを観察していきましょう。 中学生になると<特に大人へ>言葉で伝えることが少なくなります。言語化されない悩みやス トレスは<行動化><身体化>で表されることがあります。 <行動化>・・・キレる ・ 暴力 ・ 性非行 ・ 自傷 ・ いじめ <身体化>・・・身体症状―頭痛・腹痛・吐きけ・発熱 ○話をゆっくり聞き、気持を受け止めていきましょう。 子どもの話をゆっくりと余裕を持って聞いてほしいものです。子どもが不安や悩みを抱えてい る時、話を聞いてもらうだけで安心や自信につながるものです。 ○学校との情報交換や相談をしてみましょう。 子どものことで気になることや困ったことがあったら、学校と情報交換をしていきましょう。 担任だけではなく養護教諭や教育相談員などへの相談でもかまいません。必要によっては、外部 の専門機関との相談などをおこなうことが出来ます。 52 ◇展開例 5 ~精神科校医による健康相談例【特別支援学校】~ 【連携図】 面談・助言 情報交換・支援 助言・情報交換 【ねらい】 ○ 生徒自身が自分を客観的に見つめ、今後の社会的自立に向けて課題を認識す る機会にする。 ○ 今抱えている不安や問題の緩和を図り、今後、必要な時にスムーズに相談が 受けられるようつながりの機会をつくる。 【実 践】 時 期 1学期 2学期 3学期 対 象 ・中・高等部の新入生(全員) ・必要と判断した児童・生徒 ・保護者の希望者 ・必要と判断した児童・生徒 ・保護者の希望者 時間帯 場 所 放課後 保健室 放課後 保健室 放課後 保健室 <連携のポイント> ◆養護教諭が作成した、対象者に関する情報を記入するシートについて、担任より記入 してもらい、精神科校医へ事前に届けることにより当日の健康相談がスムーズに実施 できるようにする。 ◆校医からの指導・助言を養護教諭が記録し、担任及び関係職員に報告して、校内委員 会でその後の具体的な支援を検討するなど、実践につなげていけるようにする。 53 ◇展開例 6 ~スクールカウンセリングのオリエンテーション例【高等学校】~ 【連携図】 専門機関 紹介 相談 保護者 スクール 支援 カウンセラー 本人 依頼 申し込み 担任 養護教諭 受診報告 公欠届 教科担任 【ねらい】 ○ スクールカウンセリングを生徒に理解させ、生徒自身が活用しやすい環境づ くりをするとともに、自己の心の状態に目を向け、必要に応じて利用するこ とができる。 【実 践】 ○ 時 期:年間のLHR時間内に設定・入学後すぐのLHRの時間(50 分) ○ 対 象 新入生全員 ○ 場 所 体育館 ○ 内 容 (1)養護教諭がスクールカウンセラーを紹介し、カウンセリングを受ける手 続きの説明をする。 (2)スクールカウンセラーが自己紹介をし、カウンセリングの時間帯・場所、 どのような利用法があるか、よりよいコミュニケーションのコツなどに ついて詳しく説明する。スクールカウンセリングを受ける時間の確保に ついては十分配慮する。 (3)必要に応じてクラス単位で友だち付き合いの意識調査、ソーシャルスキ ルトレーニング(SST)の説明も行い、別の時間帯で SST を実施する。 <連携のポイント> ◆スクールカウンセリングを生徒に理解させ、生徒自身が活用しやすい環境づくりを する。 ◆生徒と教職員のスクールカウンセリングについての共通認識をもつことができる。 ◆担任も生徒たちが悩んでいることに気付くことができ、生徒への関わり方について スクールカウンセラーに相談できる。 ◆保護者への対応、子どもへの関わり方等について相談し、必要に応じ専門機関等も 紹介してもらう。 54 (2)早期支援(二次支援) ◇展開例 7 ~チーム援助を拡大し、発展させながら支援した例【小学校】~ 【連携図】 <コア援助チーム> 特別支援 コーディネーター <拡大援助チーム>と<ネットワーク型援助チーム> 専門機関 コア援助チーム 特別支援コー ディネーター 医療機関 校外のネットワークとつなぐ 拡大援助チーム ネットワーク型援助チーム ※コア援助チームを内包する援助チームの3タイプ(田村 2001)を改訂 【実 践】 (1)新学期、勝手に立席したり黒板に落書きを書いたりする児童の対応につい て担任から SOS が出される。それと同時に家庭では朝の登校しぶりの症状も (二次的障がいの疑い)あり、早期対応が求められた。 (2)「気づきのためのチェックリスト」(H19.5 県教育庁義務教育課発行)を活 用し、発達障がいの疑いがないかチェックする。 55 (3)家庭での変化が影響していないかどうか心配もあり、コア援助チーム会議 を開催して情報を交流し、児童理解に努める。 (4)チームで援助する必要性を確認し、拡大援助チームを編成し支援会議を開 催する。別紙「参考資料:石隈・田村式チーム援助シート」を活用する。 (5)対象児童の援助目標を達成するためにチーム員それぞれが立場や持ち味を 生かして援助していけることを提案し合う。また、専門機関への受診も勧 める。 (6)保護者の承諾を得て主治医と連携する。養護教諭がつなぎ役となり主治医 の指導と助言を拡大援助会議で伝え、学校での指導に生かせるようによう にする。主治医の勧める教育的援助(ペアレントトレーニング)はチーム による対応が欠かせない。定期的に援助会議を開催し継続的に援助した。 (7)同時に主治医が講師を務める研修会に複数のチーム員で参加して研修を深 め日々の支援に生かした。 <連携のポイント> ◆担任からの早目の SOS が早期発見と良好な校内連携を実現する。何でも相談しあえ る学校風土や日頃からの職員間の良好な人間関係の構築が大切である。 ◆家族をチームの一員にすることで子どもへの理解が促進される。家庭でも同じ目標 で援助が継続されるため24時間体制の援助につなげられる。 ◆チームで援助することで役割が分担され、一部の援助者への負担の偏りが軽減され るため、温かな支援を継続して実施することができる。 ◆主治医と濃密に連携することで、医療を教育の場に効果的に取り入れることができ るので、医療と教育をつなぐ「のりしろ」のような役割が大切である。 ◆主治医が講師を務める研修会に職員が数名で参加することで、援助者が学びを共有 できるため共通理解が図られる。また、主治医との関係も良好になり、日常の困り 感も気軽に相談できるようになった。積極的に学ぶ援助者の姿勢が、自らを育てる とともに、連携をより豊かにする。 56 参考資料 ~拡大援助チームを編成して支援会議を開催するときに使用するシート~ ◆1回目のチーム援助会議に使用するシート 学習面 (学習方法) (学習スタイル) (学力)等 児童生徒氏名 年 情 報 の ま と め (A) いいところ 子どもの自助資源 健康面 (健康状態) (身体面の様子) 等 (B) 気になるところ 援助が必要なところ (C) してみたこと、今まで 行った援助とその結果 (D) この時点での目標と 援助方針 援 (E) これからの援助で何を 行うか 案 進路面 (得意な事や趣味) (将来の夢や計画) (進路希望)等 子どものいいところは、状態を改善していくための重要なリソース(援助資源)になる。いいと ころを生かすことで、問題解決につながる新たな発見がある。 指 導 方 針 助 心理・社会面 (情緒面) (ストレス対処スタイル) (人間関係)等 1 2 3 成果のあったことは継続する 成果のなかったことは方法を変えてみる 以前に成果のあったことはまたやってみる 目標(援助方針)はスモールステップで・・・ 1つか2つにとどめる (主治医の指導助言を教育の場で実現できるように) 主治医の指導助言を受けて、それぞれが自分の立場や特技、持ち味などを生かして提供 できる援助案を提案する。 (F) だれが行うか (G) 援助期間 (H) 次回援助チーム会議 担 特別支援コー ディネーター 任 平成 平成 会場 年 年 月 月 日 日 学年主任 ~ 平成 時間 T.T 教諭 年 時 月 分~ 養護教諭 母 親 日 参照:石隈利紀・田村節子共著「石隈・田村式援助シートによるチーム援助入門―学校心理学・実践編―」図書文化社 石隈利紀著「学校心理学―教師・スクールカウンセラー・保護者のチームによる心理教育的援助サービスー」 誠信書房(c)isikuma&tamura1997-2003 ◆2回目以降のチーム援助会議に使用するシート 評 価 指 導 方 針 援 助 案 評価期日 平成 出席者 年 月 日( ) 前回の援助案を実施してどうだったか、子ど もの成長や変化を評価して記入していく これを主治医に報告して、さらに指導助言を いただく。 援助を行った結 果、児童生徒の 反応・変化 (D) この時点での 目標と援助方針 援助を行った結果を受けて・・・ 目標と援助方針を継続又は修正する (E) これからの援助で 何を行うか (F) 誰が行うか (G) 援助期間 (H) 次回援助チーム 会議予定 担 特別支援コーデ ィネーター 任 平成 年 月 日 平成 会場 年 月 日 学年主任 ~ T.T 教諭 平成 年 月 時間 時 分~ ※ 57 養護教諭 母 親 日 石隈・田村式援助シートをもとに一部変更して作成 ◇展開例 8 ~学習不適応への初期支援が行われた例【中学校】~ 【連携図】 観察・相談・支援 検査・助言 情報交換・支援助言 特別支援教育 コーディネーター 【経 過】 中学校に入学して間もなく、担任はある男子生徒が毎日、朝の健康観察で体調 不調を訴えるようになり気になっていた。しばらくして、その生徒が頭痛や吐き 気を訴えて頻回に保健室に行くようになった。 養護教諭は、生徒の来室時間や日常の健康状態などを担任と一緒に観察したと ころ、特定の教科の時間に保健室に来室することが多いことがわかった。その教 科担任から生徒についての情報を得たところ、学習についていけない状態である ことがわかった。 学校内の特別支援教育コーディネーターと支援の方法を検討するとともに、保 護者と相談の上、教育相談機関との連絡を図り、WISC 検査を実施した。検査の結 果から軽度の学習障害があることがわかり、個別の指導計画を作成し学習の支援 を行ったところ、学習への意欲がみられるようになり、体調不良による保健室へ の来室もなくなった。 <連携のポイント> ◆学級担任の気づきと、養護教諭の観察、教科担任との情報交換が、学習不適応の早期発 見に結びつく。 ◆学校内の特別支援教育コーディネーターが、保護者や教育相談機関への連絡役となるこ とで、スムーズな連携ができる。 ◆教育相談機関での検査と助言を受け、早期に学習への個別の指導が行われることで、学 習不適応の改善と体調の回復へとつながる。 58 (3)継続支援(三次支援) ◇展開例 9 ~発達障がいがある生徒への対応例【中学校】~ 【連携図】 児童相談 所など 引継ぎ 情報交換 共通理解 診察・助言 情報交換、相談・助言 【経 過】 発達障がいがあると診断されており、普通学級に在籍している生徒である。入 学前には、小学校の引継ぎを受け、保護者の了承を得て、主治医から今後の対応 について助言を受けた。 入学後、個別の指導計画を作成し、保護者と定期的な面談をしながら受診状況 や服薬等の状況を聞きながら対応をした。個人ファイルは関係者が誰でも手に取 って閲覧できるようになっており、多角的な目で記録するようにしている。 <連携のポイント> ◆校内の連携にあたっては、特別支援教育コーディネーターを中心に、管理職、担任、 学年主任、養護教諭、スクールカウンセラー(SC) ,保護者などで構成する校内委員 会(動きやすい組織)を定期的に開催することで、共通理解を図りながら対応できる。そ こで話し合われたことは、全体の校内委員会などで更なる共通理解を図る。 ◆その生徒についての記録は、担任だけではなく関わった人が記載をし、チーム全員が 見ることができるようにする。プラスの行動も記載するよう心がける。 ◆主治医との連携にあたっては、保護者の了解を得た上で、学校側の情報を提供する。 ◆主治医と連携する際には、担任や特別支援教育コーディネーター、学年主任、養護教 諭などの学校関係者が主治医を訪れて情報交換をしたり、助言を受けて学校に持ち帰 る方法もあるが、主治医から校内委員会に来校してもらう方法もある。 59 ◇展開例 10 ~精神疾患対応の例【高等学校】~ 【連携図】 校内支援チーム 情報交換 スクール カウンセラー 主治医 学年主任 治療 本人 担任 観察・相談・支援 保護者 特別支援教育 コーディネーター 養護教諭 相談 【経 過】 性格は穏やかで協調性はあるが自己主張が少ない生徒である。 進路について考える2年生11月頃から、やる気・意欲がわかない無気力状態 が続き、動作緩慢・不器用さが目立つようになり、表情の乏しさも見られるよう になった。移動教室や体育の時間、他の生徒と同じ行動がとれない状態になって いたため、担任から養護教諭に相談があった。校内の支援チームによる検討をし た結果、特別支援教育コーディネーターが母親に連絡をとったところ、母親も異 変を感じており、近くの病院で受診することになった。 その結果、うつ病と診断され薬も処方され服薬を続けたが、その後さらに状態 が悪化し3カ月の入院となった。退院後、4月から学校復帰しているが、主治医 との情報交換については、スクールカウンセラーが窓口となり、経過観察を行っ ている。 <連携のポイント> ◆学校内での日常の健康観察により、問題の早期発見と早期対応を図る。 ◆支援チーム(担任・学年主任・養護教諭・スクールカウンセラー・特別支援教育コー ディネーター)を組織し、対応について検討する。 (本人、保護者、主治医へ役割を決 めて対応。 ) ◆クラスメイトへの説明(本人・保護者の了解を得て)に際して、担任、養護教諭、ス クールカウンセラーによる、本人やクラスメイトへのフォローアップ体制を確立する。 ◆病気療養中の生徒と保護者に対して、担任またはインターフェイスとなる職員が心理 的サポートを行う。 ◆学校復帰に際しての具体的な配慮・支援の確認等、支援チームで環境づくりをする。 60 ◇展開例 11 ~精神科校医のアドバイスにより学校と主治医の連携が図られた例~【特別支援学校】 【連携図】 相談・助言 相談・助言 情報交換 診察・助言 共通理解 【経 過】 入学後、新入生健康相談にて精神科校医との面談を行った結果、ある生徒に精 神科疾患が疑われる症状があり、それまで本人からは服薬の話がなかったが、現 在服薬中であること判明した。そして、精神科校医から、正確な薬の服用と副作 用のチェックの指導があった。 また、精神科校医から、学校と主治医の連携がきわめて重要であるとの助言を 得たので、その後、主治医と連絡をとり学級担任と養護教諭が主治医訪問を行っ た。 学校側からは、学校での生徒の様子を伝え、主治医からは現在の病状を聞いた。 その後も主治医から、学校生活での配慮事項等の助言を得ており、定期受診の際 は、保護者や本人と現在の症状や服薬の様子等を確認し、必要に応じて、書面で 学校の様子を主治医に伝える方法をとっている。 <連携のポイント> ◆新入生健康相談の有効な活用。 ◆本人・保護者の了解を得た上で、主治医と連絡をとる。 ◆主治医へは、学校での様子を伝えるために、絵・作文・通知票・WISCⅢ結果等を持 参する。 ◆養護教諭は、定期的に本人・保護者・学級担任との面談を行い、服薬や体調を確認し、 常時、主治医へ情報を発信できるように情報を収集する。 ◆精神科校医へは、その後の様子を随時伝えるようにし、主治医とは別の立場で、健康相 談を実施してもらう。 61