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報告書はこちらです。 - 国立職業リハビリテーションセンター

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報告書はこちらです。 - 国立職業リハビリテーションセンター
平成23年度 受入れ準備講座
報
告
書
平成24年1月25日(水)
国立職業リハビリテーションセンター
目
次
開催挨拶
国立職業リハビリテーションセンター所長 三上 明道
講座1.「障害とその配慮事項、職業訓練の成果とその職業能力について」
1-1.視覚障害について ··············································································
2
1-2.肢体(車イス)の障害について····························································
5
1-3.高次脳機能障害者について·································································· 10
1-4.発達障害について ·············································································· 16
講座2.「障がい者雇用への取り組み」 ······················································ 20
●TOHOシネマズ株式会社
人事労政部 土屋 大太 氏
講座3.「発達障がい者の受け入れについて」
~雇用現場からの実践実例~ ························································ 30
●日本ゴア株式会社
QUALITY MANAGEMENT 坂中 正樹 氏
まとめ ········································································································ 43
国立職業リハビリテーションセンター次長 塚田
滋
参加者内訳 ································································································· 45
アンケート結果 ·························································································· 46
平成23年度受入れ準備講座
平成24年1月25日
(水)
司会 それでは、ただいまから平成23年度受入れ準備
ら障リハには病院もございます。医療リハビリテーション
講座を始めます。本日は皆様、大変お忙しい中、当講座に
から職業リハビリテーションまで2つのセンターが一貫し
ご参加いただきましたことを心より感謝申し上げます。私
た身体障害者の社会復帰へのサービスを展開してまいりま
は本日の総合司会を担当いたします国立職業リハビリテー
した。その後、幾度かの対象者の拡充というものがござい
ションセンター職業指導課の小田祐子と申します。どうぞ
まして、現在、当センターでは身体障害者に限らず、知的、
よろしくお願いいたします。
精神、そして発達障害者といった、より幅の広い層をサー
ビスの対象というふうにさせていただいております。さら
に身体障害者に関しましても、高次脳機能障害者について
も全国の障害者訓練校で最も多くの訓練生を指導してきて
いるという状況にございます。
<小田上席カウンセラー>
それでは開催にあたりまして当センターの所長、三上よ
り皆様にご挨拶を申し上げます。
<三上所長>
<開会挨拶>
三上所長 皆さん、こんにちは。国立職業リハビリテー
さて来年度厚生労働省の予算案では大きな施策の1つと
ションセンター所長の三上明道でございます。本日は業務
して、
「総合的な障害者の施策の充実」というのが掲げら
多端の折、受入れ準備講座にご出席いただきましてありが
れております。雇用の分野のキーワードでは「全員参加型
とうございました。また本日、講師の方々には発表につい
社会」というのを目指していくということですが、その中
てのご快諾をいただきましたこと、この席を借りて厚く御
で障害を持っておられる方が誇りと生きがいを持って働け
礼申し上げたいと思います。尚、昨年度からここ国立障害
る社会の実現を図るというのをその中で目標に立てており
者リハビリテーションのご協力をいただきまして、この講
ます。中でも職業能力開発支援の推進というのは就労支援
堂をお借りしております。合わせて関係者各位に御礼を申
の中でも非常に大きな柱でございまして、その実施機関の
し上げたいと思います。
1つとして当センターが位置づけられておるところでござ
さて、本日の受入れ準備講座では、講座の1として当セ
います。また昨年末においては厚生労働省で、この全員参
ンターで学ぶ訓練生のほうから障害に関しての配慮事項、
加型社会の理念にも立脚しながら障害者雇用の施策につい
それから職業訓練の成果等について、また講座2、3とい
て「障害者の範囲」など、それから「障害者権利条約への
たしましては、企業の方から受入れの事例などについて発
対応」、それから「地域の就労支援」、こういった3つのあ
表を予定させていただいております。既に障害者を雇用さ
り方の研究会が発足するなど障害者雇用については新たな
れている企業、またこれからお考えになっている企業の皆
検討段階にも入ってきているという状況にございます。
様に障害者雇用の理解を深めていただくと共に、障害者の
こういった背景の中、幸いなことに事業主の方々のご理
方々の職業能力の活用の一助になれば幸いというふうに考
解とご尽力も得ながら、昨年度ではこの当職リハセンター
えているところでございます。
の修了者の8割以上の方が企業の一員として就職を果たす
ここで少し時間をいただきまして当センターのPRを少
ことができました。しかしながら今年、雇用情勢が若干持
しいたしますと、当センターは32年前にお隣の国立障害
ち直しということもありますけれども、昨年の東日本大震
者リハビリテーションセンター、障リハというふうに呼ば
災の影響が非常に大きく、依然として厳しい状況にあると
せていただいておりますけれども、と共に設立されまし
言われております。現在、当センターでは約160名の訓
た。この会場も障リハの学院の講堂でございます。それか
練生が自分の障害を理解して、職場の一員として受け入れ
- 1 -
ていただける企業が必ずあるはずだという熱い思いを持ち
も十分整ってきているようでございます。これより受入れ
ながら、機械、電気などの製造業から第一種情報処理から
講座を始めさせていただきたいと思います。本日はどうぞ
OA事務などに至るまでさまざまな分野で日々の訓練に真
よろしくお願いいたします。
剣に取り組んでいるという状況にございます。後でご覧い
ただければと思いますが、封入されております資料の「求
職者情報一覧」にもありますように、本年の1月15日現
在、一定の訓練期間を終えて当センターの修了予定者、求
講座1.
「障害とその配慮事項、職業訓練の
職者自らのプロフィールを掲げて企業のリクエストを待っ
成果とその職業能力について」
ている訓練生が66名、就職を心から望み、厳しい状況の
中、活動を始めているという状況にございます。
司会 それでは講座の1から進めてまいります。講座1で
さて皆様方の企業の行動に目を向けますと、障害者雇用
は「障害とその配慮事項、職業訓練の成果と職業能力につ
率達成に関します真摯な対応、これはもちろんのこと、近
いての発表」と題しまして、当センターの訓練生よりご説
年では改正障害者雇用促進法の施行による中小企業での障
明を申し上げます。では初めに視覚障害についてです。発
害者雇用、短時間労働者の就職促進など、企業に対する法
表者はOAシステム科視覚障害者情報アクセスコースの平
制度の拡充もございまして、23年の6月1日の民間企業
野泰代さんです。平野さんの発表の中では視覚障害者に必
における障害者雇用者数は約36万6000人ということ
要なパソコン環境について実際に見ていただくことができ
になっております。また22年度の安定所経由の就職者数
ます。では平野さん、よろしくお願いします。
も5万人を超えまして、いずれも過去最高の数となってお
ります。このこともひとえに企業の皆様方の採用や雇用維
1-1.視覚障害について
持の努力の賜物と心から敬意を表する次第でございます。
こうしたことから、本日ご参加の企業の皆様方におかれ
ては企業の社会的な立場というのも踏まえ、自分の職場の
仲間として業務に勤しんでくれる障害者がいるはずだとい
視覚障害について
う気持ちも強く持ちながら、この場に臨んでおられるので
はないかとご推察申し上げる次第でございます。このよう
国立職業リハビリテーションセンター
に私どもの訓練生と、真摯に採用をお考えになっておられ
OAシステム科 視覚障害者情報アクセスコース
る企業の皆様方の双方の思いというのが通じ合って、就職
平野 泰代
という形で実現されます。その実現に本日の受入れ準備講
座がお役に立てるものではないかというふうに考えている
ところでございます。
尚、当センターは今日のようなこういう受入れ準備講座
平野 皆様、こんにちは。ただいまご紹介いただきまし
の他、会社説明会のセンター内での開催要望など、障害者
た、私はOAシステム科視覚障害者情報アクセスコースに
雇用のためのさまざまなご相談をさせていただいておりま
在籍しております平野泰代と申します。
す。また訓練手法にも工夫を加えてきたところでございま
すが、1つだけ紹介いたしますと、
「企業連携訓練」とい
ういわゆるセミオーダー型の訓練がございます。本年度、
延べ30社の企業の方々に利用いただいておりまして、訓
練生に対して企業現場での仕事の内容に則した訓練をこの
センターの施設内で行って、その後3~6週間の企業内訓
練を実施し、実際の職場への適応性を高めていただいてお
ります。この企業連携訓練によって訓練生の障害特性に応
じた、本当にきめの細かい管理や指導上の配慮など、こう
いったアドバイス、支援が可能となっております。これは
当該企業への就職にも非常に大きな力を発揮しているとい
う状況にございます。こうしたさまざまな取り組みを含め
<平野訓練生>
て、障害者雇用というものについてお考えをいただいた際
本日は多くの方々にお集まりいただきまして本当にあり
には是非とも当センターにご相談いただければまたありが
がとうございます。それではこれから「視覚障害について」
たいと考えております。
という題材でプレゼンテーションをさせていただきます。
いろいろ申し述べましたけれども、そろそろ準備のほう
どうぞよろしくお願いいたします。
- 2 -
<外出や通勤>
<経歴>
外出や通勤も不安なし
経歴
 幼少時より通学経験が長かったため、交通機関の利用と、
慣れた経路の単独移動は全く問題ありません。
 H23年1月 国立職業リハビリテーションセンター入所
 周囲にある物などの気配を感じることのできる
 H24年3月 同センター修了予定
「空間認知力」があります。
現在、OA機器を用いた
点字ブロックだけでなく、壁や周囲の気配等を頼りに、
事務職での就職を目指しています。
初めての場所も、練習によりスムーズに移動できます。
過去に、パソコン指導・点字出版物の校正の
仕事に従事した経験があります。
続きまして、現在の歩行や外出をする際の対策、工夫し
それではまず本格的なお話に入ります前に、私の経歴に
ていることについてご説明いたします。尚、これからの内
ついて簡単に紹介させていただきます。私はいまから約5
容は私自身の経験に基づき、私と同等の視覚の状況におけ
年ほど前に視覚障害者に対するパソコン指導、数々の点字
る移動やパソコン操作などについて順に説明させていただ
出版物の校正という、2つの異なった分野の仕事に従事し
きます。皆様の中には視覚障害者は地面に点字ブロックが
ておりました。
そして職務の技能とスキルアップを目的に、
敷きつめられていなければ外出することは困難というイ
昨年1月、
国立職業リハビリテーションセンターに入所し、
メージを持たれている方もいらっしゃると思いますが、決
OA機器を用いた事務職の就職に向けた職業訓練に励み、
してそんなことはございません。屋外などでは周囲の音や
現在に至っております。
雰囲気、風向きといった視覚以外の感覚を多用し、自分の
<障害状況>
現在地を把握して目的の場所まで移動するといったことも
できますし、屋内では周囲にあるものの気配を頼りに壁づ
たいに白い杖で伝いながら歩いていくということも可能で
障害状況
す。私は幼少時より長い間、電車通学をしていましたので
 視力障害(網膜色素変性症)1種1級
交通機関の利用と慣れた経路の単独移動に関しましては全
 両眼とも光の明暗が識別できる程度です。
く不安を感じておりません。現在でも当センターへは、自
宅より毎日交通機関を利用して通所しています。
視覚障害者それぞれに見え方が異なるため、
<外出時の工夫>
障害の状況もさまざまです。
外出時、こんな工夫も
 点字ブロックが整備されていない場合にも、以下の
ポイントを把握することにより、単独移動できます。
続きまして,現在の私の障害状況についてご説明いたし
光の明暗
(夜間は街灯やバス停の照明がとても役立ちます)
ます。まず視覚障害者と一言に申しましても、視力が残さ
周囲の気配・段差や傾斜等
れている、いわゆる弱視と呼ばれている方々や、色彩や明
 初めて訪問する場所でも、上記のポイント把握により、
初めは周囲の支援を必要としますが、
その後は、単独移動が可能になります。
暗などの判別が困難な、いわゆる全盲と呼ばれている方々
などさまざまです。このように大きく2つに分けて紹介し
ましたが、この中でも個々に応じて見え方や状況も異なっ
てきますので、一概に弱視、全盲と区分けするには少々難
しい部分があることも事実です。
点字ブロックが整備されていない場合でも、特に夜間は
私は生後まもなくして網膜色素変性症を発症しました。
街灯やバス停などの照明、それ以外でも段差や傾斜などを
文字はもちろんのこと、色彩や風景などは判別することが
頼りに移動しています。初めて訪問する場所に関しまして
できません。しかしながら光の明暗を感じることはできま
も、初めのうちは歩行訓練などを初めとする周囲の方々の
す。このことは自分自身の日常生活においても、外出する
支援をお願いすることもありますが、その後は単独で移動
際にも大きなメリットとなっています。これにつきまして
することが可能になります。ちなみに私の場合ですが、1
は後ほど改めて詳細をご説明いたします。
回から2回のみの支援により単独で移動することができま
す。私と同程度の視覚状況であれば、ほとんどの方が歩行
訓練を受けて単独で移動するための技術を身につけていま
- 3 -
すので、上記のような支援により単独移動することが可能
<メモ取り>
になります。
<パソコン利用>
メモ取りについて
 個々の状況に応じて、以下の方法から
パソコン利用について
選択しています。
 画面読み上げソフトを市販のパソコンにインストールする
ことで、以下の内容が実施可能です。
点字の活用(点字ディスプレイの利用も含む)
聞いた内容などをパソコンで直接入力
ワード
一般的なビジネス文書の作成
必要に応じて録音機器も使用
エクセル
関数を用いたデータ処理、表の加工、グラフ作成等
パワーポイント
今回のようなプレゼンテーション資料の作成
メール・インターネットの活用
続きまして、視覚障害者が普段どのようにしてメモを
取っているかということについてご説明しようと思いま
続きまして、視覚障害者が普段どのようにしてパソコン
す。視覚障害者の中にはペンなどを使用したり工夫次第で
を使用しているかということについてご説明いたします。
は紙にメモを取るということも可能なのですが、いわゆる
私たち視覚障害者の中でも全盲と呼ばれている方はパソコ
全盲と呼ばれている方々は紙などにペンを使ってメモを取
ンの画面を見て確認することができません。それを補って
るということができません。ですので個々の状況に応じた
くれるソフトとして自分で操作した内容や画面に表示され
方法でメモを取るようにしています。私は日頃より点字を
ている情報などを音声で案内してくれる画面読み上げソフ
使用しています。以前までは紙に直接点字を打刻できる筆
トと呼ばれるソフトを市販のウインドウズパソコンにイン
記具を使用していました。現在では点字ディスプレイとい
ストールすることによりパソコンを使用することが可能に
う機器の普及により容易にメモを取ることが可能になりま
なります。こうすることで、私たちは目に頼ることなく、
した。まさにいまも実際に点字ディスプレイを使って原稿
耳から聞こえてくる音を頼りにパソコンを操作し、さまざ
を読みながらこの発表を進めさせていただいております。
まな作業をこなすことができるようになります。ワード、
これを使用することで、特に電話応対などでの相手の話し
エクセル、パワーポイントといったオフィスソフトも音声
た内容を瞬時にメモに起こしたり、会議や会合での発言や
で読み上げてくれる部分が多く、一般的なビジネス文書、
記録も簡単にメモを取ることができるようになります。ち
今回のプレゼンテーションで使用させていただいておりま
なみにこの点字ディスプレイはパソコンに接続し、先ほど
すパワーポイントの資料、エクセルでの表の加工、グラフ
紹介いたしました画面読み上げソフトで音声化された画面
なども作成することができます。さらにメールを活用した
の文字情報を点字でも表示させることができます。パソコ
り、インターネットを使って日々のニュースをチェックし
ン操作において音声で聞き取りにくかった内容も点字で確
たり、さまざまな調べ物をするといったこともできます。
認することが可能ですので、作業がより円滑に行えるよう
このように文字だけで漠然と説明していてもなかなかイ
になります。しかしながら、このように自由自在に点字を
メージがしづらいと思います。
使って読み書きできる視覚障害者というのは、正確なデー
それではここで視覚障害者がどのようにしてパソコンを
タではないのですが、約3割ほどと言われております。こ
使用しているか、実際の映像をご覧いただきたいと思いま
のような場合の方法として、パソコンに直接打ち込んでメ
す。これからご覧いただきますのは、就職活動用の資料作
モを取るという方法、またはICレコーダーなどの録音機
成時におけるパワーポイントの操作風景です。
器を利用してメモを取るという方法が挙げられます。それ
~ビデオ上映~
ではここで実際に点字ディスプレイを使って電話応対の際
いま聞こえておりますように、音声を確認していきなが
にメモを取っている映像をご覧いただきたいと思います。
らデザインを変更したり、レイアウトを整えていきます。
~ビデオ上映~
当然、毎日のようにパソコンを使用することになりますの
ただいまは点字ディスプレイを利用してメモを取ってい
で音声を聞く速度も格段に速くなっていきます。これをこ
る姿をご覧いただきました。
のまま聞き続けていますと苦痛と思いますので、これから
は音声を絞らせていただきます。
ただいまご覧いただきましたのはパワーポイントを用い
た資料の作成映像でした。映像の最後にお聞きいただきま
したようにスライドショーの部分もこのように音声で確認
することができるようになります。
- 4 -
<対応が困難なこと>
清聴ありがとうございました。
司会 平野さん、ありがとうございました。発表を通し
て画面読み上げソフトや点字ディスプレイといった支援機
対応が困難なことについて
器を活用して平野さんが日頃からパソコンを使いこなして
 紙をベースにした作業
いる様子をご覧いただけたのではないかと思います。具体
メモや資料などは電子データでいただけると
的な職務として平野さんにどんなお仕事を任せることがで
助かります。
きるのかといったことにつきましては、私どもも企業様を
簡単な内容であれば、口頭でも対応可能です。
訪問してご相談を承りますので、お気軽にお問い合わせく
 初めての場所や慣れていない場所への移動
ださい。
移動サポートをしていただけると助かります
(周囲に迷惑がかかることもあるため)。
1-2.肢体(車イス)の障害について
続きまして、視覚障害者が企業で働く際、どうしても困
難なことについてご説明いたします。先ほどより紹介して
きましたが、視覚障害者というのは訓練を積んだり、さま
ざまな工夫次第で多くのことができるようになります。し
かしながら、その中でもどうしても対応が困難なこととい
うのも何点かあります。これは全盲の視覚障害者に特に言
えることなのですが、紙などに印刷された文字を確認する
ことができませんので、紙をベースにした作業というのは
どうしても苦手なことがあります。そのような理由から、
私たち視覚障害者に渡す資料やメモなどはメールなどの電
子データにしていただけますと大変助かります。また簡単
な内容であれば、点字ディスプレイなどを用いてメモを取
司会 それでは引き続き、車椅子の障害についてです。
ることもできますので口頭でも問題ありません。もう1つ
車椅子を利用している障害の方はさまざまな原因をお持ち
対応が難しい点といたしましては、あまり行ったことのな
ですが、本日は脊髄損傷を受けたことによって車椅子を利
い場所、初めて行く場所への移動ということも挙げられま
用している訓練生からです。説明をしてくれるのは工業デ
す。そのような場所を動き回ってしまうことで周囲に迷惑
ザイン科インテリアデザインコースの千葉裕明さんです。
がかかってしまうこともあるかもしれません。その際には
では千葉さん、よろしくお願いいたします。
申し訳ないのですが、周囲の方々の移動のサポートをお願
いしたいと考えております。
<終わりに>
終わりに
 多くの視覚障害者は、仕事の意欲に
あふれています。
 この発表を通じて、1人でも多くの視覚障害者の
就職につながればと思います。
<千葉訓練生>
千葉 皆様、こんにちは。工業デザイン科インテリアデ
ザインコースの千葉です。本日は肢体不自由者、特に脊髄
最後になりますが、私を初めとする多くの視覚障害者は
損傷者が社会で就労していくにあたり、皆様に理解してい
仕事をする意欲に溢れています。今回のこの発表を通じて
ただきたいことをお話しさせていただきます。多少わかり
企業の方々には少しでも視覚障害について理解していただ
づらい点もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いい
き、1人でも多くの視覚障害者の就職につながることがで
たします。
きればと心より思っております。
以上で私の発表を終わらせていただきます。長い間、ご
- 5 -
<はじめに>
次に脊髄損傷者の特徴についてお話しいたします。脊髄
皆さんは車椅子を利用する方というと、どのような方を
損傷者と一言で言うと、みんな同じように感じてしまいま
イメージするでしょうか。高齢のため、一時的なケガのた
すが、状態はさまざまです。それは初めにお話しした損傷
め、障害のためなど、社会にはさまざまな理由から車椅子
した部位の違い、完全麻痺か不完全麻痺かということによ
を利用する方がいます。障害によって車椅子を利用してい
り差が生じてきます。完全麻痺は脊髄の神経伝達機能が完
る方の中にも脊髄損傷、脳性麻痺、半身麻痺などさまざま
全に絶たれた状態で、麻痺した部分の感覚は全くなく、動
です。今日はその中でも比較的割合の多い脊髄損傷、そし
かすことができませんが、不完全麻痺の場合は脊髄の一部
て私自身の障害でもある頸髄損傷のことを交え、お話しし
が損傷、圧迫などを受けて一部機能が残存する状態で、多
たいと思います。
少の感覚があり、麻痺した部位をわずかながら動かすこと
<脊髄損傷とは>
ができるので、リハビリによっては最終的に歩けるように
なる人もいます。私自身、この不完全麻痺なので多少鈍い
ですが感覚があり、両側につかまるものがあれば数メート
ルの歩行も可能になりました。完全麻痺の場合、感覚がな
いために自分でも気付かないうちにケガややけどをしてし
まうこともあるので注意が必要です。脊髄損傷において感
覚があるのとないのとの差は大きな違いとなります。
<日ごろ大切なこと>
まずは脊髄損傷という障害について少しご説明いたしま
す。一般的に背骨と呼ばれている頭蓋骨から骨盤までの約
30個から成る骨を脊椎と言い、その脊椎の中を脊髄とい
う神経が通っています。脊椎、脊髄はご覧のように4つの
部位に分類されます。脊椎を骨折すると多くの場合、脊髄
を傷つけてしまい、重度の障害が残ってしまいます。頸髄
を損傷すれば頸髄損傷、胸髄を損傷すれば胸髄損傷という
ように呼ばれます。総称として脊髄損傷と一言で呼ばれる
続いて、私たち脊髄損傷者が日頃の生活の中で気をつけ
ことが多いですが、損傷した箇所により障害の程度が大き
ている点からお話しします。脊髄損傷者が常に注意してい
く変わってきます。基本的に損傷箇所より下の体に障害が
ることが褥瘡です。一般に言う床ずれのことですが、体の
残ると考えていただければわかりやすいかと思います。例
同じ部分が長時間圧迫されて、その部分の血流が悪くなり、
えば胸髄損傷であれば胸のあたりから下に障害が残ります
皮膚が腐ってしまい傷ができることです。普段、長時間座っ
が、頸髄損傷なら首から下に障害が残ります。頸髄損傷の
ているとお尻が痛くなってきて無意識にお尻を動かしたり
場合、脊髄損傷の中でも重い障害と言えます。
しますが、脊髄損傷者は感覚がないので褥瘡をつくりやす
いのです。褥瘡をつくってしまうと最低でも1ヶ月の入院
治療が必要となるので日頃からの注意が必要です。対処と
しては定期的に除圧を行うことが一番で、プッシュアップ
- 6 -
という車椅子上でお尻を持ち上げる動作をしたり、体を反
らせることでお尻の位置を変えたりします。
次は体温調節についてお話しいたします。脊髄を損傷す
ると発汗作用がなくなる場合が多く、汗をかくことができ
日常生活の中で脊髄損傷者にとって排泄は重要です。尿
ないので体温調節が難しくなります。暑いときは体の熱を
意や便意の感覚や、排泄する筋肉が麻痺してしまうので自
汗によって下げることができないため、熱がこもりやすく、
力で排泄することができません。そのため、障害の程度に
夏場などはすぐに体温が40度近くになってしまいます。
もよりますが、排尿は大抵自己導尿法で行います。自己導
そのため霧吹きを持ち歩き、肌に水をかけたりアイスノン
尿法は自分で尿道からカテーテルを膀胱まで入れて強制的
を使ったりなどして体温を下げます。寒い環境ではやはり
に尿を出す方法のことです。菌が入り炎症を起こしたりし
普通の人より体温の低下は早いように感じます。このよう
ますので、常に清潔な状態で行うことが大切です。尿意が
な体調の変化は健康上良くないのはもちろんですが、仕事
ないので大体3時間ごとに一度自己導尿を行います。その
などの作業効率も低下させるため、冷暖房の設備は必要不
ためいつもカテーテルは持ち歩き、また普段から水分を取
可欠だと言えます。
りすぎたりしないようにコントロールする必要もありま
<車椅子での外出>
す。
続いて外出についてです。車椅子で生活する上でもコン
排便に関しては週1回の人もいれば、毎日する人もいま
ビニやスーパーに買い物に行ったり、友人と外食に出かけ
す。しかし前日に下剤を飲んだり、排便誘導剤を使用した
たりなど外出することが多々あります。普段、皆さんが何
りしますので、おおよそのトイレの日は決めて行います。
気なく歩いている道路や歩道には段差や溝など、私たちに
個人差もありますが、大体1回に1~2時間程度かかりま
とっては障害となるものが多数あります。そのため外出す
す。排尿、排便ともに自分のリズムをつかみ、自己管理す
るために大半の人は車椅子操作の訓練を受けます。段差を
ることが大切です。ですが、私たちも人間であり、どれだ
超えるためにはキャスター上げという操作が必要で、これ
け日頃から注意していても稀に失敗してしまうこともない
ができると大体4センチぐらいまでなら上り下りできるよ
とは言えません。もし失敗してしまった場合、周りに不快
うになります。しかしそれ以上の段差は転倒する危険性が
感を与えてしまうかもしれませんが、一番つらく申し訳な
高くなってしまいます。
く思っているのは本人であり、時間を多めにいただければ
自分でも対処できます。私たちが生活する上で排泄という
ものは最も気にしているところであり、自己管理を常に心
がけていることを理解していただきたいと思っています。
- 7 -
<車椅子での車の運転>
また坂道やスロープなどは大体5度ぐらい、高さに対し
て12倍程度の距離までの勾配であれば何とか自力で上る
では脊髄損傷者がどうやって車を運転するのかという
ことができます。例えばスロープで1メートルの高さを上
と、足の操作は行えないので手動運転装置というものを使
がるときには最低でも12倍の12メートルが必要であ
い、片手でアクセル、ブレーキの操作を行います。そして
り、16倍の16メートルあれば楽にこぐことができます。
反対の手でハンドルを回します。握力のない人は手を旋回
装置というものに固定しハンドルを回します。
しかし10倍の10メートルでは距離が短い分、勾配が
駐車場については車椅子で乗り降りするため、ドアを全開
きつく、自力で上ることが難しくなります。
にできるようおおよそ1.5台分のスペースが必要となり
ます。障害者用駐車スペースが広く取られているのはこの
ためです。もしこのスペースが確保されていない場合、普
通の駐車場の一番端など、隣に車が駐車しないような場所
に駐車したりします。また屋根やそれに準ずる設備がある
と、雨の日の乗り降りのときに濡れずに済むので最良の環
境と言えます。
そして車椅子での外出に関して一番の天敵と言っていい
のが雨です。雨の状況で外を走るとタイヤの持ち手の部分
が濡れ、止まらなくなるなど大変危険です。特に握力の効
かない頸髄損傷者は手のひらの摩擦によって車椅子を操作
しているため、操作する部分が濡れると摩擦がなくなり、
車椅子を動かすことが困難になります。外では段差があっ
たり、坂道があったり、雨の日には外出ができなくなるな
ど、不便なことが多いので車椅子利用者の長距離の移動は
では運転までの準備ですが、介助者がいない場合は自分
車がメインとなります。
で車椅子を車の中に積み込む必要があります。ではどう
- 8 -
やって積み込むかというと、まず車に乗り移り、車椅子を
折り畳んで持ち上げ、お腹の上を通して後部座席に収納し
ます。下りるときも同様です。これだけの動作が必要なの
でやはり時間が多少かかってしまいます。個人差もありま
すが、おおよそ10分前後というのが平均ではないでしょ
うか。
<設備環境について>
キーボード操作は指の代わりに棒を手に固定して打ち、
マウス操作はトラックボールというボールを転がすことで
マウスポインターが動くものがあり、これを使います。車
椅子操作は手のひらにゴムが縫いつけられたグローブを履
いて摩擦でこぎます。書字はキーボード操作同様、ペンを
手に固定する人もいますし、多少握力がある人はクリップ
や洗濯ばさみなどをつけて持ちやすくして使ってる人もい
次は車椅子利用者を雇用するにあたり整えていただきた
ます。私の場合は左手には棒を固定し、右手は多少動きま
い設備面についてお話しいたします。
まずは出入口ですが、
すので指でキーボードを打ち、マウス操作も普通のマウス
広さでは車椅子の幅が大体60センチで、これに操作する
で操作できます。ペンを握り、字を書くことも可能ですが、
ときの幅がプラス30センチ程度必要なので最低90セン
車椅子のハンドリムを握るほどの握力はないので、車椅子
チ以上の開口は必要です。扉は引き戸であることが望まし
操作に関しては先ほど紹介したグローブを使っています。
いと思います。開き戸では扉を押しながら車椅子の操作を
することは難しいですし、またドアノブは握力のない人に
とっては開けにくくなってしまいます。
これまでにご紹介してきましたバリアフリー環境は、そ
れでなくては絶対にダメということではありません。これ
らの環境はあったほうがより望ましいという事柄です。脊
トイレは方向を変えることができる広さ、可動式の手す
髄損傷の車椅子利用者は困難な事柄が数多くありますが、
り、カテーテルを洗うことのできる背の高い蛇口があれば
訓練を受けることや日々の生活の中で工夫することで大抵
十分ではないでしょうか。現在、多くの場所で見られる障
その状況に応じた対処をすることができます。ですから紹
害者用トイレにはおおよそこのような機能が備えられてい
介した内容から車椅子利用者の雇用は難しいという意識は
ると思います。
持たないでほしいと思っています。
脊髄損傷者の中でも頸髄損傷者は大抵の場合、手や指に
も麻痺が残るので、ものをつかむことや握ることが困難と
なります。しかしいろいろな道具、また口なども使い、作
業や身の回りのことを行うことができます。
- 9 -
<車椅子での活動>
をし、少しでも早く慣れて、会社、社会に貢献していきた
いと思っています。
以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございまし
た。
司会 千葉さん、どうもありがとうございました。千葉
さんの説明を通して脊髄損傷の方が健康管理に細心の注意
を払いながら過ごされていることがご理解いただけたので
はないかと思います。千葉さんも日々の努力を積み重ね、
それを認めていただいた企業から採用内定をいただきまし
た。今後の千葉さんの活躍がノーマライゼーションを進め
る力の一つになっていくのではないかと思います。
これまでの話の上で脊髄損傷者はできないことが多く、
我慢を強いて生活していると思われたかもしれませんが、
1-3.高次脳機能障害について
そんなことはありません。動きの制限を補助する道具や車
椅子、また周りの人の助けを借りることでいろいろなこと
ができます。専用の車椅子に乗り、バスケ、あまり知られ
ていませんが、車椅子のラグビーというのもあります。も
ちろんおいしいものを食べに行ったり、お酒を飲みに行っ
たりもします。
国立職業リハビリテーションセンター
職域開発科
菅野 潤
脊髄損傷、また肢体不自由に関わらず、障害者はみな社
会復帰や就労するために日々努力し続けています。しかし
就労するためハードルとなるのが肢体不自由者の場合、毎
日の通勤と排泄、設備などの問題です。それらをクリアす
る1つの手段として在宅就労というのもあります。
司会 それでは引き続きまして、高次脳機能障害につい
<就労とノーマライゼーション>
てです。発表者は職域開発科物流ワークコースの菅野潤さ
んです。パソコン操作で職域開発科のカウンセラーの中山
秀之がご一緒しております。尚、今回の発表に際しまして、
菅野さんが発表スライドの補足資料を作成しております。
発表の中で少し専門的な用語が出てくるところがあります
が、補足資料を参考にしていただきながら発表をお聞きく
ださい。それではよろしくお願いいたします。
説明を聞く中で障害者の苦労を感じられたかもしれませ
んが、それは高齢者や小さい子供にも言えることではない
でしょうか。障害者は何かと不便なこともありますが、決
して不幸ではありません。高齢者や障害者などが健常者と
一緒に助け合いながら暮らしていくのが正常な社会のあり
方であるとする考え方、
それがノーマライゼーションです。
私はそのノーマライゼーションが当たり前だと思えること
が環境整備の第一歩ではないかと思っています。私も都内
<菅野訓練生と中山上席カウンセラー>
の設計会社に内定をいただき、4月からCADオペレー
菅野 ではどうぞよろしくお願いいたします。私は職域
ターとして仕事をすることが決まっています。新しい環境
開発科で事務と作業系の訓練を受けています菅野潤と申し
での仕事、初めての一人暮らしに不安もありますが、4月
ます。私は多少発声が苦手で、お聞き苦しい点などもあろ
までまだ時間がありますので、仕事に合わせた勉強や準備
うかと思います。ご了承いただければ幸いです。
- 10 -
<私の障害の経緯>
③ 人間が考えて行動することに関わる
私は11年前の平成13年、自動車事故によって脳挫傷
④ 精神活動的な能力が
を受傷しました。現在も「体幹機能障害」と「高次脳機能
⑤ 低下する障害です。
障害」があります。何年もの間、原因もわからず、体調不
※以下、「高次脳」と省略します。
良に悩まされ、病院を転々とする日々が続きました。当時
はまだ「高次脳機能障害」という病識が社会一般に浸透し
ていませんでした。確定診断までに何年もの時間を要しま
した。また周囲にわかりにくい障害特性もあり、在宅生活
を余儀なくされました。
交通事故による受障
病院を転々としながらの在宅生活
 国立障害者リハビリテーションセンター入所
 国立職業リハビリテーションセンター入所


私の脳の異常は通常のMRIでは見つかりません。多く
の「軽度外傷性脳損傷(通称 MTBI)の場合、統計画像解
析処理をして、初めて脳の血流不足や脳の萎縮が見つかり
ます。写真の丸内の矢印部分が萎縮のある部分です。こ
こは情報処理の中枢にあたり、パソコンで言うならばC
その後、ドクターの勧めもあり、平成23年4月、「国立
PUや Windows などの処理装置にあたります。症状は
障害者リハビリテーションセンター・生活訓練」の利用に
Windows の調子が悪いときを想像するとわかりやすいと
至りました。訓練内容は認知障害に対応するスケジュール
思います。遅い、複数の Window が開けない、などがそ
管理や、代償手段を獲得すること、また対人技能の向上に
れにあたります。私の場合は11年前の交通事故で脳挫傷
対応した訓練などです。参加は良好で、一般就労を目指し
を受傷後、当初5年間ぐらいの記憶が全くありません。そ
た職業訓練に進みたいとの希望がますます強くなりまし
の他に能力低下の例として、感情をコントロールできずに、
た。平成23年10月、
「国立職業リハビリテーションセ
物に当たり散らし、注意散漫で、簡単な記憶の検査もでき
ンター」へ入所、現在に至ります。現在は訓練を受けなが
ず、その途中で疲れ果て眠ってしまうこともありました。
ら、診察のために月に1回程度、通院をしています。
いまでも少し注意障害があり、電話をしながらメモを取る
<障害の理解>
ことが苦手です。また事故で脳下垂体という部分を損傷し
てしまい、体内でホルモンを生産することができなくなっ
てしまいました。現在は注射や服薬でそれを補っています。
それも能力が低下した原因の1つです。ですが、幸い過去
脳の損傷により、
注意力、記憶力、判断力、などが低下し、
人間が「考えて、行動する」ことに関わる、
精神活動的な能力が低下する
障害です。
の記憶や職業経験の記憶は残っていました。訓練をするこ
とにより、それらを少しずつ取り戻している段階です。い
までも短期記憶や新しいことを覚えることは苦手ですが、
代償手段を得て、間違いのない正確な作業をするべく努力
をしています。
「高次脳機能障害」を持つ我々が一般社会で就労するに
あたり、
皆様に理解していただきたいことをお話しします。
まず「高次脳機能障害とは何か?」ということについて簡
単に説明します。
[ 高次脳機能障害とは? ]
① 脳の損傷により
② 注意力、記憶力、判断力などが低下し、その結果と
して
- 11 -
<高次脳機能障害の一般的症状>
1.易疲労性
2.意欲・発動性の低下
3.脱抑制・易怒性
4.注意障害
5.判断力の低下
6.遂行機能障害
<就労に向けての配慮のお願い>
「覚醒・注意機能」の段階においては、
 「過ごしやすい場所」を与えるという意味で環境を作る
ことがポイントです。
「認知機能」の段階においては、
 「代償手段」を与えるという意味で環境を作ります。い
わば物的支援です。
「遂行機能」の段階の障害に対しては、
 「行動支援」を与えるという意味で環境を作ります。人
的支援、すなわち一緒に考え・行動し・指導する「協力
者」を作ります。
7. 失語症
8. 失行
9. 失認
10. 記憶障害・見当識
の障害
11. セットの維持・転換
の障害
詳細については資料後半の参考資料をご覧ください。
詳細については資料後半の参考資料をご覧ください。
次に「高次脳」における一般的な症状について具体例を
次に「高次脳」の訓練生が受入れ先の企業に就職した際
まとめました(文末の参考資料もご覧ください)
。
「高次
に配慮をお願いすることについてお話しします。まず「高
脳」ではご覧のような症状が出ます。現在、職域開発科の
次脳」があると自らを周囲の環境に合わせていくことが困
訓練生すべてにこれらの症状が当てはまるわけではありま
難となります。しかし逆に周囲の環境を調整すれば症状出
せん。これとはまた違った症状もあります。または1つだ
現を最小限にすることもできます。よって企業の皆様には
け、あるいは複数を持ち合わせている場合もあります。一
「周囲の環境調整」をお願いしたいです。また、社会復帰
般的には就労に力不足なレベルの場合もありますが、職域
が進んでいくその過程において、その都度、環境に介入す
開発科の訓練生は一般就労に向けて、それらを克服するべ
る必要があります。いわば、
「症状の原因となる環境を社
く訓練を受けております。それぞれの問題に対しては「補
員ごと、場面ごとに特定し、個別の対処法をつくること」
完行動」を身につけ、また「補助ツール」を使用するなど
が求められます。就労に向けて、
「高次脳」の支援にはリ
して、それらを「対策・実施」することで問題を回避する
ハビリや薬物療法を行う以前に「環境調整」を導入してい
よう注意をしています。
ただきたいです。各レベルにおける「環境調整」の例をま
<私自身の症状と対策>
とめました(参考までに文末の参考資料もご覧ください)
。
<配慮の順位について>
易疲労性
(疲れやすい・精神的疲労)
注意障害
記憶障害
遂行機能障害

対応の順序、(より下位から上位へ!)
①覚醒度
②発動性
③④コントロール(抑制 困難・注意障害)
⑤情報処理(失語・失認を含む)
⑥記憶
⑦遂行機能力(病識 を 含む)
実際に判断することができない以上、
疑わしきは「ある」と見なし対応すべきです。
詳細については資料後半の参考資料をご覧ください。
私の「高次脳」についての対策をまとめてみました(参
考までに文末の参考資料もご覧ください)
。現在、職域開
対応の順序、より下位から上位へ!多くの場合、複数の
発科ではそれぞれの障害や問題点に対して個別に対応し、
障害が同時に存在し、その各々が互いに干渉し合い、症状
訓練を実施しています。
をより複雑なものにします。対応は並存する障害すべてに
対して行わなければなりません。
「高次脳」の機能が前述
のように成り立っていることから、対応を行う順序は、①
覚醒度、②発動性、③・④コントロール(抑制困難・注意
障害)、⑤情報処理(失語・失認を含む)、⑥記憶、⑦遂行
機能力(病識を含む)となります。①から⑦の順に能力を
積み上げていくイメージをすることが大切です。ある障害
の存在を疑うとき、より下位の能力が発揮されていなけれ
ば、本当にその障害があるかわかりません。
- 12 -
<最後に>
⑦遂行機能力(病識を含む)
⑥記憶
上位の高次脳
高次脳機能障害は、
脳の損傷で起こる
原因は、
脳卒中・交通事故など
⑤情報処理(失語・失認を含む)
④注意障害
③抑制困難
下位の高次脳
②発動性
①覚醒度
ピラミッド状の図に当てはめてイメージするとわかりや
すくなるかもしれません
(ニューヨーク大学医療センター・
最後に補足です。
「高次脳」は脳の損傷で起こるので、
Rusk 研究所「神経心理ピラミッド」の簡略版)。対応が
脳の損傷が起こる病気は何でも「高次脳」の原因となりま
見落とされがちな下位の「高次脳」を適切に対応しなけれ
す。人事がご担当の皆様におかれましても、働き盛りの社
ば、より高次の脳機能全体に悪影響をもたらすことに変わ
員がある日突然、「脳卒中」や「交通事故」で倒れ、復職
りありません。その一方、
障害が背景となっていなくても、
がうまくいかない、または、いままでの仕事に馴染めず辞
下位の「高次脳」を対象とした「環境調整」は高位の「高
めてしまったなどの経験をなさったこともあるかと思いま
次脳」へ良い影響を与えます。実際に判断することができ
す。脳の損傷で一番多いのはお年寄りでは「脳卒中」です。
ない以上、
「疑わしきはある」とみなし、対応すべきです。
若者では「脳外傷」、特に「交通事故」です。というわけで、
<具体的対応方法>
少なくともその数だけ「高次脳」は存在し得るわけです。
実際、いろいろな本やネットに数が載っていますが、誰も
把握できていないのが現状です。
-----下位の高次脳機能----①覚醒度の低下(易疲労性・神経疲労)
②発動性の低下
③抑制困難(脱抑制・固執)
④注意障害
高次脳機能障害を持つ人は、
脳内エネルギーを普通の人の何倍も使うため
「脳が疲れやすい」ので・・・
詳細については資料後半の参考資料をご覧ください。
こまめに休憩を取らせていただきたい
具体的な対応方法をまとめておきます。後ほど参考までに
ご覧ください。
話が変わります。健常者の皆様は普通に一服やコーヒー
ブレイクを取られます。ですが、それは休憩の時間内であ
-----上位の高次脳機能----⑤情報処理の障害(失語・失認含む)
⑥記憶障害
⑦遂行機能障害(病識の低下を含む)
り、そんなに頻度は多くないと思います。「高次脳」
の場合、
健常者と全く同じ作業をするときでも脳内エネルギーを何
倍も消費します。つまり脳が疲れます。それが作業の正確
性やスピードを落としてしまいます。それには有効な対策
があります。それは1時間に5分から10分で良いです。
休憩時間を取らせてほしいです。それだけで比較的十分に
回復をすることができます。そのために「怠けている」
「サ
詳細については資料後半の参考資料をご覧ください。
ボっている」などと中傷されることが一番つらいです。当
然そのようなことが続くと、会社そのものに居づらくなっ
てしまい、休職、退職となってしまうこともあります。実
際、それらが「高次脳」に限らず、障害者の職場での定着
率を下げてしまっているのが現状だと思います。
今回、参加された会場の皆様に「高次脳機能障害」とい
- 13 -
う比較的新しいジャンルの障害について知っていただく貴
さっき言ったことを忘れる、時間と場所の感覚がな
重な機会を得ることができ、感謝の念でいっぱいです。私
い、新しいことがなかなか覚えられない、今日の予定
はまだ職域開発科では新人ですが、これを機会に気持ちを
を覚えられない
引き締め、これからも訓練に励みたいと思います。以上で
・当事者は「現実じゃない!ここはどこなんだ!」な
発表を終わります。
本日はご清聴ありがとうございました。
どと言ったりします。
司会 菅野さん、ありがとうございました。
「高次脳機
⑪ セットの維持・転換の障害
能障害」というと、まだまだどんな障害かわかりにくいと
こだわりが強く、切り替えが難しい
思っていらっしゃる方も多いと思います。菅野さんの補足
資料をご覧いただきますと、訓練を通してご自分の障害特
性を踏まえた対策をいろいろ取っていることがご理解いた
4.私自身の症状と対策
①易疲労性 (疲れやすい・精神的疲労)
・訓練開始当初は、疲労過剰となり多くの休憩を必要
だけると思います。ご本人の得意な面に注目して、うまく
適性に合った仕事を与えていただけますと、戦力となって
とした。寝込んでしまうこともあった。
働ける方もたくさんいらっしゃいます。今後、
「高次脳機
・作業に根を詰めすぎ、時間の経過とともに 正確性
能障害」の方の採用についても是非ご検討ください。 を欠いてしまう。(注意障害が起因)
☛ 対策
参考資料(各項目の具体的な説明を載せてあります)
・作業のペース配分と適度な休息
3.高次脳機能障害の一般的症状
・一般的に、1時間に5分~10分程度の休憩
①易疲労性
②注意障害
精神的に疲れやすい、あくびをする、ボーッとする、
動作が遅い、会話についていけない、以前より仕事に
・多くのことを同時にすることが苦手である。
☛ 対策
時間がかかり終わらない
・一つずつであれば出来る作業が、複数同時にこなそ
② 意欲・発動性の低下
うとすると混乱するため頻繁に確認を行い、注意を持
ものごとを自分から始められない・自分からは何も
続
しようとしない
・環境刺激の排除
③ 脱抑制・易怒性
例えば、場所を移動、耳栓による音の軽減
キレやすい、感情の起伏が激しい、欲求が抑えられ
・補助ツールを使用
ない、こだわりが強くなった、突然がまんできずに大
例えば、書類を読む場合、定規を当てながら1行ず
きな声を出してしまう、周りの人の感情をくみ取れず
つ読む。
に傷つけてしまう
・スピードよりも作業に間違いを起こさないように正
④注意障害
確性とそのプロセスを重視した取り組み
一つのことに集中できない、気が散りやすい、ケア
③記憶障害
レスミスが多い、一つずつであればできることが、二
つ以上のことを同時にやろうとすると混乱する
・新しいことを覚えることが苦手である。
☛ 対策
⑤判断力の低下
・メモの活用や、作業手順書を作成して、作業を反復・
ものごとを決められない
継続して訓練することで、それらを維持できるよう心
⑥ 遂行機能障害
掛け
ものごとを計画して実行することができない、もの
④遂行機能障害
ごとの優先順位をつけられない、約束の時間に合わせ
られない、約束より異常に早く着いてしまう、遅れて
・物事の整理や優先順序をつけることが苦手である。
☛ 対策
しまう
・メモリーノートや作業手順書を見返す習慣をつけ、
⑦ 失語症
また質問をすることにより問題を回避・解決できるよ
言葉を理解・表現できない、自分は流ちょうに話し
う心掛け
ているつもりだが何を言っているのか周りは理解でき
ない、本が読めない、手紙が書けない
⑧ 失行
5.就労に向けて配慮のお願い
①「覚醒・注意機能」の段階においては、
ある状況のもと正しい行動がとれない
・「過ごしやすい場所」を与える意味で環境を作るこ
⑨ 失認
とがポイントです。
身近なものやからだを認識できない
・例えば、易疲労性にはよく休め負担の少ない場所、
⑩記憶障害・見当識の障害
発動性の低下は促しを絶やさない配慮が得られる場
- 14 -
所、抑制困難は落ち着くストレスが少ない場所、注意
③抑制困難(脱抑制・固執)
障害は気が散りにくい邪魔されない場所などが環境調
対応は、
整の例となります。
(1)
「リセットできるまで 、 興奮が収まるまで 、 待て!」
・高次脳機能障害に理解のある支援者のいる場所は過
(2)「現状を改めて認識できるまで、考える!」
ごし易いので、周囲の理解と協力を進めることが重要
(3)「次に行う行動を選択して、行動!」
であり、それぞれ職場の場面場面で関わる社員へ十分
な教育は必要となります。
です。
④注意障害
②「認知機能」の段階においては、
対応は情報入力にフィルターをかけて、注意を向けさ
・「代償手段」を与える意味で環境を作る、いわば物
せたい対象を「分かり易い」「より少ない」「途中で変
的支援です。
わらない」ものに限定し、余計な刺激を排除して、一
・情報処理の障害には、失語に対する視覚的補助ツー
つずつを一貫してやらせ、注意の対象をできる限り1
ルなど、障害のある特定の情報系と違う情報系を用い
た新たな情報処理の流れを確保する必要があります。
・記憶の障害に対しては、メモリーノートなどが記銘・
か所に絞ることが重要となります。
―上位の高次脳機能―
⑤情報処理の障害(失語・失認含む)
保持の、アラームや Google カレンダーなどのリマイ
その正確さと速度の低下に対し 、 情報量の制限、内容
ンダー機能が想起のサポートになります。思い出すた
の単純化、時間的余裕を与えることです。
めの cue(合図)を与えることが有効です。しかし訓
⑥記憶障害
練しても、身に付かないことも多いです。その際は支
外的手段による代償が有効で、メモが一般的です。
援者も代償手段を習熟し、社会生活上で復習できるよ
ポイントは、過去の出来事と未来の予定で項目を分け
う配慮する必要があります。
るようにします。不必要なことは、極力書かないよう
③「遂行機能」の段階の障害に対しては、
にします。メモは予定を記載し、適時それをチェック
・「行動支援」を与える意味で環境を作ります。人的
し、済んだことは消していくことで、初めて意味をな
支援、すなわち共に考え ・ 行動し ・ 指導する協力者を
します。
作ります。
よって、だだのノートではなく、スケジュール表のよ
・しかし、はっきり問題点を指摘し行動を改善させよ
うなものが望ましく「いつ、どこで、だれが、だれと、
うとすると「逆効果」になることが多いです。遂行機
なにを、どうする」について要点のみ記載します。
能障害は、問題が自覚できない、受け入れられない、
また、想起のサポートとして、cue を与える、アラー
自信を失いやすいなどの問題を伴いやすいため、問題
ムや Google カレンダーなどのリマインダーなども有
点を直接指摘しても、単に怒らせたり、悲しませたり
するだけで、結局は修正に至りません。
効です。
⑦遂行機能障害(病識の低下を含む)
・実際の行動支援は、協力者が先に行動して手本を見
対応は、ある行動を初めから最後まで成し遂げること
せたり、選択肢を提示して選ばせたりして、なるべく
です。順番は・・・
当人から自然と望ましい行動を引き出し、その行動を
(1)目標を明確にし、動機づけを行います。
賞賛して選択的に強化することがよい結果を導きます
(2)現実的な計画を立てます。
(ポジティブな行動支援)
。
(3)計画通り実行します。
ただし、当事者は計画通り物事が進んでいるのかを確
7.
具体的対応方法
認する能力も、同時に障害されているため、計画を頻
―下位の高次脳機能―
繁に確認しながら実行します。計画とずれているとき
①覚醒度の低下(易疲労性・神経疲労)
は信頼できる協力者に確認する癖をつけます。
刺激と覚醒のバランスを整える。
例えば 、 日中の適度な刺激入力と休息を調整し、翌日
に疲労を残さないようにすることです。
睡眠と覚醒のリズムづけが最も重要となります。
②発動性の低下
積極的に促しを行います。
例えば
「休憩を取りましょう」
「トイレに行きましょう」
「始めましょう」など事細かに cue を出します。
最終的には cue の量を減らして自立を促していくこ
とができます。
- 15 -
飛び出したりすることが多く、5年生のときに心配した先
1-4.発達障害について
生の指導によって、時と場所と課題のTPOの重要性を教
えていただきました。そのとき、まだ私にはうすぼんやり
としか理解できず、とりあえずずる休みせず出席し続ける
ぐらいの認識でいました。中学生になると、授業の内容も
発達障害について
飛び抜けて難しくなり、覚えていることと覚えていないこ
との差が激しくなりました。一方、発表の場に積極的に出
て、2市2町の間で賞を取ったこともありました。このこ
ろに空気が読めないという弱点を意識し始めました。高校
生になって部活に入り、活動を続けていたのですが、必要
国 立 職 業 リ ハ ビ リ テ ーシ ョ ン セン タ ー
ビ ジ ネ ス マ ネ ジメ ン ト 科 オ フ ィ ス ワ ーク コ ース
三上大輔
以上に騒いだことが原因となり、部活を数ヶ月で退部しま
した。一方、クラスの代表として図書委員会に所属し、3
年間活動を続けました。大学受験を控えた3年生で予備校
司会 それでは講座1、最後の発表になりますが、発達
にも通いましたが、そこの公開講座でも空気の読めぬ発言
障害についてです。発表者はビジネスマネジメント科、オ
をしていました。このころは自分のことを事あるごとに人
フィスワークコースの三上大輔さんです。それでは三上さ
に迷惑をかけるような人間と思ってしまうようになりまし
ん、よろしくお願いいたします。
た。大学生のときは、また人に迷惑をかけてしまうと思い、
サークル活動はしませんでしたが、何もしないというのは
ダメだと思い直し、大学のパソコンの講座のお手伝いのア
ルバイトをするようになりました。そこでオープンキャン
パスでのパワーポイントを使った講座の紹介、マウスの掃
除、パソコンのメンテナンス、オープンキャンパスでのア
ンケートのデータ集計などの仕事を次々とこなし、大学で
開いている講座をきっかけに情報処理技術者試験のITパ
スポートに合格しました。ここまでの成果を上げられたの
は、私が昔からパソコンに触っていて慣れていたからだと
思っています。
就職活動を始めましたが、筆記試験や面接で不採用が続
<三上訓練生>
き、就職活動への自信も徐々に失っていきました。それを
三上 ご紹介を承りました三上大輔です。私からは発達
見た母が地元の障害者就業支援センターに一緒に相談に行
障害についてお話しさせていただきます。
き、その後、障害者手帳を取得するための診断を受け、国
<生い立ち~診断を受けるまで>
立職業リハビリテーションセンターを紹介されました。私
が障害者手帳を取得し、この職リハセンターの入所を決意
生い立ち ~診断を受けるまで~
した理由は、このような、いまの事情と過去の経験からに
よるものです。学校時代は順風満帆というわけではなく、
 幼年期・・・自閉症の傾向があると診断を受けた
多くの保護者や先生方を困惑させることもありましたが、
 小学生・・・「時」と「場所」と「課題」の重要性を
多大なご支援をいただき、時には誉められることもあり、
先生から教えられた
 中学生・・・空気が読めない⇒弱点と認識しはじめた
決して悪い子供時代ではなかったと思っています。
 高校生・・・様々な人に失礼なことをしたと思うように
なった
 大学生・・・パソコン講座のアルバイトをして情報処理
技術者試験にも合格
就職活動は不調
では私の生い立ちの部分からお話ししたいと思います。
私がとても幼いころ、母と幼稚園の面接に出向いたときに
面接員から専門の病院を受診したほうがいいとアドバイス
を受けたようで、その診断結果が自閉症の傾向があるとい
うものでした。両親は人並みの生活を私に送ってほしいと
願っていました。小学生のころは教室で寝ころがったり、
- 16 -
<私の障害;広汎性発達障害>
<私の苦手なこと>
私の障害
私の苦手な事
注意集中
広汎性発達障害
コミュニケーション
私が広汎性発達障害と診断されたのはつい昨年のことで
私は診断の際に注意力が劣っているため、運転の仕事は
す。小さいころに自閉症の傾向があると言われたこともあ
避けたほうがいいとアドバイスを受けました。ただ車の運
りましたが、障害が学生生活に影響を与えていると知らず
転が全くダメということではなく、近くのスーパーなどに
に学生生活を過ごしてきました。発達障害があることが早
買い物に行くぐらいなら影響はほとんどないとも言われま
くわかって、もしこの障害のことをお世話になっていた皆
した。またケアレスミスが起きやすいというところもあり
さんに伝えていたら、どのように人生が変わったのかと思
ます。確認を怠ったり、集中力を使う配分を間違ったりし
うことがあります。
て、脳が疲れていると起こりやすくなります。さらに集中
<発達障害の定義>
することが苦手なところもあります。集中する配分だけで
なく、場所も間違っていることもあります。それから障害
発達障害の定義
のため、苦手なことの中にコミュニケーションがあります。
面接の場面でうまく受け答えできず、面接が苦手と感じて
 自閉症
います。またうまく人と話せないと感じることもあります。
 高機能自閉症
<ミスを減らす工夫>
 学習障害
 注意欠陥/多動性障害
ミスを減らす工夫(1)
→ このうち、「アスペルガー症候群」及び
高機能自閉症は「広汎性発達障害」と
定義上ではいわれている
指示を覚える→メモを取る
付箋を使うと、もっと便利になった!
 貼れる!
 色付き!
 コンパクト!
ここで広汎性発達障害に関する文部科学省の定義を簡単
にご紹介します。発達障害は自閉症、高機能自閉症、学習
障害、
注意欠陥多動性障害に分かれています。
アスペルガー
症候群や高機能自閉症は定義上、広汎性発達障害と位置づ
けられています。これらすべてに共通して言えることは中
枢神経の障害であるということです。言い換えれば、発達
そこでケアレスミスを防ぐために私が工夫していること
障害の人たちは脳に障害を抱えていることをまず理解して
を1つ紹介します。例えば仕事の場面で指示を覚えておく
ください。 ことがあります。大抵は忘れないようにメモ帳にメモを書
き取ることが多いと思います。ただそれだけだとメモ用紙
が散在して、必要なメモを書いた紙を探す手間が増えます。
1つの工夫として付箋を使います。付箋を使ってはどうか
とアドバイスを受けて、私は付箋を色分けしたり、10枚
単位にするなどしてミスを極力減らすように工夫して使っ
ています。付箋はすごく便利です。
- 17 -
ソコンをやっています。データ入力は私にとって他のどん
ミスを減らす工夫(2)
な作業に比べてもやりがいのある作業だと思っています。
他のどの作業よりもこの作業が大好きです。大学生のとき
に取得したITパスポートの資格をセールスポイントにし
私たちは、
て、ここ国立職業リハビリテーションセンターでパソコン
操作に関するスキルアップを図り、事務職につくために必
“補完手段”
を学んでいる!
要な勉強をしていきたいと考えています。
<知っていただきたいこと>
みなさんに知っていただきたいこと
私はこの職リハセンターでTPOに応じたマナーを学び
 障害が見た目ではわからない
つつ、自分の苦手なことを補うための工夫を見つけていま
す。私は導入訓練でさまざまな補完手段というものを学び、
実践するように心がけることを学びました。例えば項目が
 脳が疲れやすい
たくさんある表を小さい紙で隠して、目的の項目を見つけ
やすいようにすることから、先ほど説明した付箋を活用す
ることまで、本当に些細なことから、これをやらないと疲
れて倒れるぞという範囲で確認していきました。
今日この場で皆様に知っていただきたいことは、障害が
ミスを減らす工夫(3)
見た目ではわからないということです。発達障害は見た目
ではわかりにくいため、誤解されたり、苦労したりするこ
休憩をしないと脳が疲れる
 ミスが増える
 集中力が落ちる
 頭がぼうっとする
• ミスを防げる
• 集中力を維持できる
• 頭がスッキリする
とがあることを是非わかってほしいです。見た目ではわか
らない障害であるがゆえに健常者と比べられ、健常者に敵
わない部分を指摘され、そのことを自覚して落ち込みやす
いのです。それから脳が疲れやすいということです。です
休憩
から疲労による仕事の能率の低下を防ぐために適度な休憩
を取ることが大切と思っています。発達障害の人たちは脳
に障害を抱えていることをまず理解してください。
<最後に>
それらも大事なのですが、それよりも増して重要なのが
最後に
休憩の取り方です。休憩を取らないとまず脳が疲れます。
私の場合は脳が疲れるとミスが増えたり、集中力が落ちた
り、頭がボーッとします。そこで1時間に5分から10分
の休憩を取ると頭がすっきりし、ミスを防いだり、集中力
オフィスワークコースで訓練を始めて約1ヶ月
を維持することができるようになります。
<私の得意なこと>
私の訓練はまだ始まったばかりです
私の得意な事
ご清聴ありがとうございました
最後になりましたが、私はまだオフィスワークコースで
データ入力
訓練を始めて、約1ヶ月しか経っていません。パワーポイ
ントも自分でつくりましたが、まだまだスキルが不足して
いて、まだ一部の機能しか使えておりませんので上手につ
くることができないところもあります。より効果的なプレ
訓練でさらなるスキルアップを!!
ゼンテーション資料をつくれるようにスキルアップに努め
たいと思っています。今後はセンター職員の皆様方のアド
私の得意なことはデータ入力です。中学生のころからパ
バイスをいただきながら就職に向けて知識や技術を身につ
- 18 -
けていきたいと思っています。こんな会社につきたい、こ
て、急遽発表を中止させていただきました。大変申し訳ご
んな場所で働きたいなどは私の頭の中にありますが、得意
ざいませんが、ご理解の程、よろしくお願いいたします。
なデータ入力を生かせる仕事につくことができればなと考
本日、私どもの訓練生の中から代表して4名の訓練生に
えている次第です。今回は自分のことを1つの例として紹
発表していただきました。当センターには、この4名以外
介しながら、発達障害とはどんなものかについて理解して
にもさまざまな障害を有する訓練生が在籍し、訓練終了後
いただければと思い、お話しさせていただきました。私以
の就職を目指して日々、訓練に励んでおります。
外にも発達障害を持っている人はたくさんいますし、苦手
私どもとしては、訓練生から直接プレゼンテーションを
なことも得意なことも1人ひとり違います。それだけ覚え
行うことによって、ご参加の企業の皆様が何か感じとって
て帰っていただいても私としては嬉しい限りです。
いただけるのではないかと思っております。これをきっか
ご清聴ありがとうございました。
けにして、ご参加いただいた企業の皆様が、障害について
司会 三上さん、ありがとうございました。発達障害に
の理解が深まり、それによる障害者雇用への不安が軽減し、
ついては新聞やテレビなどマスコミにも取り上げられるよ
一人でも多くの訓練生が採用に結びついていくことを願っ
うになっておりますので、言葉自体はお聞きになったこと
ております。
もあるのではないでしょうか。三上さんのお話でもコミュ
時間の制約もありまして、この場でご質問のほうをお受
ニケーションのことなど、ご自分の苦手なことについて触
けすることはできませんけれども、何かご質問等がござい
れていましたが、反面、とても優れた能力も持っていらっ
ましたら、当センターのほうにお気軽にお問い合わせいた
しゃいます。
だければと思います。
以前、訓練を受けていた発達障害の方の中にも三上さん
司会 以上で講座の1を終了いたします。ではここで休
のようにデータ入力をとても得意とされていた方、英語が
憩に入らせていただきます。
大好きでTOEICが満点だった方、形態知覚が優れてい
て、検品がとても素早くできていた方、そういった方もい
らっしゃいました。ご本人が苦手なことを補う補完手段を
身に付けるということも大切ですが、それと共に受け入れ
ていただく企業様にも幾つかご配慮をいただければ優れた
能力を十分に発揮することができると思います。講座の3
でも発達障害者の雇用管理について日本ゴア様からお話し
していただきますので、是非参考にしていただければと思
います。具体的な配慮事項につきましてはセンターでもご
支援いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ここで4番目に予定しておりました精神障害者の発表につ
いて主任カウンセラーの松本よりお話を申し上げます。
<プログラムの当日変更について>
<松本主任カウンセラー>
松本 職業指導課の松本伸一と申します。事前にお配り
しましたプログラムでは、精神障害について訓練生からプ
レゼンテーションを行う予定でしたが、発表を予定してい
た訓練生が風邪による発熱で体調が良くないため、無理は
させないほうがよいうとこちらのほうで判断いたしまし
- 19 -
(休憩)
講座2.障がい者雇用への取り組み
司会 それでは講座2を開始してまいります。講座2以
降につきましては司会を各講座の担当にバトンタッチいた
します。また各講座の発表後に質疑応答の時間を用意して
おりますので、その際にご意見、ご感想をお願いできれば
と思います。ご発言いただく際には会社名とお名前をよろ
しくお願いいたします。
<土屋様>
土屋 只今刎田先生からもご紹介いただきましたが、国
立職業リハビリテーションセンター様(以下「国立職リ
ハ」という)には、当社が障害者雇用に取り組み始めた当
初から様々なアドバイスやご協力をいただいており、雇用
率0%という所から本日このような場でお話をさせていた
だくまでに至ったのも、国立職リハの上席障害者職業カウ
ンセラーである刎田先生ほか、職員の皆様のお陰だと感謝
しております。また本日はハローワークや障害者職業セン
<刎田上席カウンセラー>
ターの職員の方など、支援機関の方々も多く参加されてい
刎田 講座2、TOHOシネマズ様の障害者雇用への取
るとのことで、日頃から私どもの取り組みにご協力、ご支
り組みについて、司会を担当させていただきます職業指導
援いただきまして、この場を借りて御礼申し上げます。そ
課のカウンセラーをしております刎田文記と申します。よ
してここにお集まりの企業の方々も当初の私どもと同じ
ろしくお願いいたします。
く、これから採用に取り組まれようとしている企業もあれ
TOHOシネマズ様は私どものセンターといろいろと情
ば、既に先進的な取り組みをされている企業もあり、取り
報交換をさせていただきながら障害者雇用にとても熱心に
組みを始めたばかりの当社がこのような場でお話をさせて
取り組んでいただいております。私がTOHOシネマズ様
いただくのは大変恐縮ではございますが、何か少しでも採
と最初にお話しさせていただいたのは確か2008年度
用担当の皆様の不安を解消し、障害者雇用が促進される一
だったと思います。そのころから障害者雇用を始められる
助になればと思いますので、よろしくお願いいたします。
んだということで、取り組み当初から情報を交換させてい
ただいておったんですけれども、皆様、非常に熱心で、か
つ1つの問題としては全国的な劇場経営の中で障害者雇用
を進めなければならない。そういった課題に全力で取り組
むという姿勢をお持ちの企業様でした。研修のお手伝いな
どをさせていただきながら支援をさせていただいておりま
したが、みるみるうちにさまざまな種別の障害の方を全国
で雇用を進められまして、現状のように大きく法定雇用率
を上回る状況を達成しておられます。そういった取り組み
について今日この場でご発表をお願いしたところ、ご快諾
をいただきました。この後、その状況についてご紹介をい
ただきたいと思っております。TOHOシネマズ株式会社
なお最初にお断りさせていただきますが、プログラムで
人事労政部の土屋様、よろしくお願いいたします。
は講演のテーマを「グループ企業での障害者の受入れに向
けた取組みについて」と記載していただいており、確かに
当社は東宝グループの子会社にはなりますが、主に本日の
講演内容としてはグループ全体の取り組みというより当社
自身の取り組みについてご紹介させていただくものとなり
ますので、予めご了承願います。
- 20 -
年から2011年12月までの推移を表していますが、現
<会社概要>
在常用労働者数が1701.5人に対し、障害者の雇用人
数が71人、カウントにして59.5カウント、雇用率は3.
50%という状況になっております。ちなみに2010年
12月に常用労働者数が大きく増えていますが、これは
2010年4月に法改正があり、2010年7月から週
20時間以上週30時間未満で働く短時間労働者も0.5
人として、常用労働者の算出の基礎に含まれるようになっ
たからです。
先ほどご説明したようにアルバイト従業員の多い当社に
とっては、この法改正の影響が大きいと思われ、1.8%
の法定雇用率も下回ってしまうのではないか懸念しており
では前置きが長くなりましたが、講演に入らせていただ
ましたが、実際には週20時間未満で働くアルバイト従業
きます。まず当社TOHOシネマズについてご説明いたし
員も多く、3.50%と高い雇用率を維持しています。
ます。社名はローマ字で「TOHO」と書いて、TOHO
シネマズ株式会社と言います。映画をご覧いただくと円く
輝いたマークで漢字の「東宝」と出てくることがあると思
いますが、漢字の東宝株式会社が親会社であり、当社は東
宝株式会社が100%出資した子会社になります。当社自
身は映画の製作などは行っておらず、事業内容は映画館の
運営に特化した会社になります。
事業所は本社部門が東京と大阪にあり、その他はすべて
映画館の劇場部門で2012年1月現在で全国に63カ
所、スクリーンの数でいうと568スクリーンを展開して
います。これは日本全国のスクリーン数約3400スク
リーンのうち、16%ほどを占める数であり、日本では最
続いて採用した方の障害種別の内訳としては、身体
大の映画館を運営する会社になります。
障 害 が 2 6.8 %、 知 的 障 害 が 3 8.0 %、 精 神障 害 が
従業員数は現在約4200名おり、そのうち約3800
35.2%となっており、特定の障害種別に偏ることなく
名がアルバイト従業員になります。つまり社員は400名
採用しています。ちなみに本社で雇用している者は、先ほ
ほどで、従業員のほとんどがアルバイト従業員ということ
どの71名中4名であり、社員として雇用していますが、
になります。ちなみに本社勤務者は従業員全体の2%ほど
その他については劇場でアルバイトとして雇用していま
で、殆どが劇場で働く従業員ということになります。一つ
す。
の映画館で言えば、社員が大体5人~6人に対して、アル
<取組みのプロセス>
バイト従業員が60人~70人という割合で勤務していま
す。
<当社の障害者雇用の状況>
障がい者雇用の状況
※当社では「障害」という表記を固有名詞以外では
使用せず、「障がい」という表記で統一しています。
障がい者雇用の推移
08年12月
09年6月
09年12月
10年6月
10年12月
11年6月
11年12月
常用労働者数
(人)
861
918
953
1043
1736
1676.5
1701.5
障がい者雇用人数
(人)
8
48
55
64
67
70
71
障がい者雇用数
(カウント)
5
26
34
49
54.5
59.5
59.5
雇用率
(%)
0.58
2.83
3.57
4.70
3.14
3.55
3.50
ではなぜ当社がこのように積極的に障害者雇用に取り組
むようになったのか、本日はこちらのプロセスに沿ってご
2
説明したいと思います。
では続きまして、当社の障害者雇用の状況についてご説
まず1つ目に障害者雇用に取り組むに至った経緯・きっ
明いたします。こちらの表は取り組みを開始した2008
かけは何か、2つ目に最初に何から始めたのか、3つ目に
- 21 -
採用計画はどのようにして立てたのか、4つ目に具体的に
ちなみに、障害者雇用に取り組み始めるにあたり、当初
どんなことを行ってきたのか、最後にそのようにして取り
は特例子会社の設立などの方法もあるのではないかと思
組んできた結果や効果はどのようなものが得られたのか、
い、まずはグループ全体の雇用状況についても調べました
この流れに沿ってご紹介いたします。
が、親会社を始めとしたグループ企業各社も同様に障害者
<なぜ障害者雇用に取り組んだのか>
雇用への取り組みは遅れており、障害者雇用はグループ全
体の問題であることも分かりました。とはいえ、特例子会
社の設立は当然親会社が主導する必要がありますし、業務
の切り出しなどグループ企業各社のコンセンサスを得て、
3年という短期間のうちに設立まで漕ぎ着けることは現実
的ではありませんでした。このような状況から親会社や特
例子会社など他に頼るのではなく、自力でなんとかするし
かない、という結論に至りました。また指導期間の3年の
うちに、当時雇用率をクリアするために必要だった15名
以上の新規雇入れを行うのは非常に高いハードルだと考え
ておりましたので、目標の50%程度をクリアして、より
重いステップである適正実施勧告に進まなければいいとい
まずはなぜ当社が障害者雇用に取り組むようになったの
うような小手先の対応でお茶を濁すのではなく、むしろ理
か、そのきっかけについてご説明します。映画館を運営す
想を高く掲げ、真正面から取り組む方が結果的に良い成果
ることを「興行」といいますが、親会社である東宝を始め
につながるのではないかと考えました。
としたグループ企業の中には、当社以外にも興行を行う会
<まず最初に行ったこと>
社が以前は複数ありました。以前から東宝グループとして
は日本最大の興行のシェアを持っていたものの、会社が分
②まず最初に行ったことは
散していることでその優位性が十分に活かせずにいまし
た。そこで複数に分かれていた「興行会社」を一つに統
●イベントや支援施設を見学し、先入観を取り払う
合し、資本や経営ノウハウを集約させようということで、
●ハローワークなど公的機関に協力してもらう
2006年10月、2008年3月と2回に分けて組織の
●障害者職業カウンセラーに職場をみてもらう
統合を行いながら、現在のTOHOシネマズに至っていま
●映画館でお願いできる仕事を判別する
す。
⇒一定の配慮があれば・・・
障がいを持っているからといってできない仕事などない!!
7
①なぜ障がい者雇用に取り組んだのか
●2007年12月 行政指導
●3カ年計画(2008年1月~2010年12月)の提出
では続いて、まず最初にどんなことから取り組み始めた
取り組みが不十分であれば・・・
真正面から取り組むとは言いましたが、正直なところ障
のかについてお話します。
企業名の公表
害者を雇用した経験どころか、障害を持った方と普段接す
という事態も招きかねない!
ることも全くない状況でしたので、何からすればいいのか
⇒短期間のうちに目標をクリアするには・・・
小手先ではなく、理想を高く掲げ真正面から取り組む!!
というのが本音でした。人事の担当者2名で、取り敢えず
障害者の方々に会いに行ってみようということで、障害者
6
求人の媒体が主催する就職イベントを見学しに行くことか
組織統合以前は事業規模も今の5分の1程度で、納付
ら始めてみました。面接会場に集まった方々を見た第一印
金の支払義務もありませんでしたが、組織が急速に拡大
象としては、どこに障害があるのだろうと思うほど、見た
する中で、行政当局からの注目や社会的責任も大きくな
目に明らかな障害はなく、健常者の就職イベントと全く変
り、障害者の雇用人数が0人だった当社は、2007年
わらないなというのが正直な感想であり、漠然と抱いてい
12月に行政指導を受けることになりました。
これにより、
た障害者への先入観が薄まったのを憶えています。また結
2008年1月~2010年12月までの3年の間に、法
果的に幸いだったのが、行政指導を受けたことで、ハロー
定雇用率を達成しなければならず、最悪のケースとしては
ワークの指導官から様々なご助言をいただくこともできま
企業名の公表という事態も招きかねないところまで追い込
した。本日講演のご依頼をいただいた国立職リハや知的障
まれたというのが、大変恥ずかしながら当社が取り組み始
害の方の就労支援を行っている世田谷区立就労支援セン
めたきっかけになります。
ターすきっぷなどの施設見学に伺い、コミュニケーション
- 22 -
は取れるのだろうか、仕事はどこまでお願いできるのだろ
めの雇用になってしまい、人材の戦力化も図れず、それは
うかといった、やはり当初漠然と感じていた不安を実際に
職場にとっても、ご本人にとっても不幸な結果を招いてし
訓練されている方とお話することで段々と取り払うことが
まうと思います。それでは一時的に雇用できたとしても、
できましたし、公的機関の方は快く協力していただけるの
雇用の継続にはつながらないと考えました。
で、頼るということも非常に大事だなと感じました。
2つ目は、自社だけの問題ではなく、誰もが社会参加で
また東京障害者職業センターの職業カウンセラーの方
きることが当たり前の世の中であるというノーマライゼー
に、実際に映画館を視察していただき、障害を持った方に
ションの社会的理念に貢献しようということです。これは
お願いできそうな仕事、難しそうな仕事を判断していただ
全社的に取り組むにはトップダウンも必要であり、当社も
きました。映画館で実際にお願いしている仕事は後ほどご
社長からメッセージを出してもらったのですが、ただ言わ
紹介させていただきますが、カウンセラーの方の結論とし
れたから仕方なくやるのでは、先ほども申し上げたように
ては、当然一定の配慮は必要ですが、
「障害を持っている
やはり継続性は生まれず、戦力化を図ることも難しいと思
からといってできない仕事などない」ということでした。
います。ですから、単に雇用率だけを意識したメッセージ
全従業員の2%程度しかない本社だけで15名を新規に採
を発信するのではなく、より高い理想を掲げることで、そ
用することは難しく、映画館の劇場部門で受け入れてもら
の思いに社員が共感してくれれば、嫌々やらされるのでは
う必要がありましたが、正直、接客業である映画館で採用
なく、自ら主体的に取り組んでくれるのではないかと考え
するのは難しいのではないかと当初は思っていました。た
ました。
だ、今ご紹介したように実際に障害を持った方とお話して
3つ目は、障害者雇用は当社にとって二の次に考えるよ
みたり、職業カウンセラーの方から「できない仕事などな
うな小さな問題ではなく、経営の最重要課題の1つであり、
い」と言っていただいたことで、採用が進められる自信が
全社員で取り組まなければならないとしました。これは人
つきました。
事だけが採用に積極的で、他の部署は自分たちには関係の
<どのように計画したか>
ない問題とされてしまうと仮に採用がスタートしても次の
雇用の場が広がらず、結局尻つぼみに終わってしまうと考
えました。ですから、全社員に与えられた自分たちの問題
③どのように計画したか~基本方針~
だと認識してもらう必要があると考えました。
● CSRおよびコンプライアンスの観点から、
積極的に取り組むことで、ステークホルダーの
期待と信頼に応え、企業価値の向上を図る
③どのように計画したか~目標数値~
● 「ノーマライゼーション」の理念の実現に向け、
全事業所での雇用へ努力する
● 経営の最重要課題の一つと位置付け、全社員
参画のもとで行う
10名採用
8
20名採用
(2010年12月まで)
雇用率2%以上
(2011年以降)
(2009年
6月まで)
では続いて、具体的に採用を進めるにあたり、どのよう
中間報告
最終報告
指導期間以降
に採用計画をたてたのか、実際に従業員に向けて発信した
9
採用計画の基本方針、目標数値、進め方をご紹介します。
まず障害者雇用に取り組むにあたっての基本方針は、こ
続いて、数値的な目標です。雇用率をあまり意識させな
ちらの3つとしました。1つ目は、単にコンプライアンス
いとはいっても、3カ年の指導対象でしたので、クリアし
だけでなく、CSRという観点からも積極的に取り組むこ
なければならない数値として、まずは中間報告のタイミン
とで、顧客や取引先企業だけでなく、自分たち従業員も含
グである2009年6月までには10名を採用する。そし
めたステークホルダーの期待と信頼に応えるものにしよう
て、3カ年の最終段階の2010年12月までには20名
ということで、あくまで法令を守ることが目的やゴールで
を採用するとしました。ちなみに先ほどもお話しましたが、
はなく、企業価値の向上を図ることこそが目的であると決
当時雇用率をクリアするために必要な採用人数は15名ほ
めました。これは、映画興行を生業とするBtoC企業と
どでしたから、20名を採用するということは、雇用率も
して、企業イメージを悪化させてはならないということが
2%を超える高い目標数値ということになります。
そして、
前提としてあります。映画館は老若男女様々な方々にご利
最終的には3カ年の指導期間を過ぎた2011年以降も雇
用いただいており、障害を持った方もその一人です。そん
用率2%以上を維持していくことを目標としました。
な当社が障害者雇用に後ろ向きであっては、企業イメージ
を大きく損なうことになると考えました。また単に雇用率
を守ればいいということだけでは、カウントを維持するた
- 23 -
<具体的に行ったこと>
③どのように計画したか~進め方~
10
続いていかに進めるかですが、まずは本社部門で複数名
を採用し、採用と受入のノウハウを取得する。続いて劇場
ではこのような採用計画をもとに具体的にどんなことを
に採用を広げ、最終的には全劇場で最低1名以上雇用する
行ってきたのかについてご説明いたします。まずは最初の
という形で、まずは本社から、そして劇場へ広げていくと
ステップである本社での採用に向け、本社社員全員に障害
いう流れで進めました。何事も最初が肝心で、全社的に雇
者に対する意識の壁を取り払うべく、説明会と障害者雇用
用を進めていくには、当然まずは本社からということにな
に関するDVDの視聴会を行いました。続いて本社の各
りますし、我々自身も当初感じていた障害者を雇用するこ
部門長に趣旨を理解してもらったうえで、部門を超えた横
とへの漠然とした不安を払拭するには、最初に採用する方
断的な業務の切り出しを行いました。具体的には各部門に
は、障害を持っていても、全く遜色なく働ける、これだけ
現在の業務で業務過多になっているものや、人がいれば新
戦力になるんだということを社内に証明する存在になる
たにできる業務などを1人分の仕事でなくても構わないの
ので、絶対に良い人材を獲得し、成功事例を作る必要があ
で、洗い出してもらい、それを組み合わせることで、部門
ると考えました。ちなみに先ほどから申し上げているよ
の壁を越えて横断的に業務を構築することを考えました。
うに当社は映画館で働くアルバイト従業員が多く、障害者
また業務の切り出しと同時に採用活動を行いながら、業務
雇用も殆どがアルバイト採用になります。また、当社では
ありきではなく、その人にあった業務を構築することを考
通常アルバイトの採用は、各事業所の担当者が行っていま
えました。
す。当初は障害者雇用については、これまで経験のないイ
レギュラーな採用なので、本社で一括採用できないか模索
しましたが、全国に事業所を持つ当社としては、各地域の
特性や職場の状況に配慮した採用を東京の本社一カ所で行
うのは困難であり、通常のアルバイト採用と同じく各事業
所の採用担当者が、各自で最寄のハローワークや職業セン
ターにお伺いして採用する形を取りました。
ですから、本社の人事だけでなく、各事業所の担当者や
職場のメンバーが障害者雇用に理解を示し、積極的に行っ
てくれるかが成否を分ける鍵になる訳ですが、先ほどの基
本方針でも申し上げましたが、振り返ってみれば目標を高
く掲げたことで、従業員も単なるトップダウンではなく、
そうして採用した方のうち、視覚障害を持った方がいた
その趣旨に共感してくれ自主的に積極的に動いてくれたこ
ので、こちらの左側の写真のように、文字を大きく表示さ
とが非常に大きかったと思います。
せる「拡大読書器」やパソコンの画面に表示されている文
字を音声化する「読み上げソフト」などを助成金を活用し
て購入し、受け入れ準備も行いました。
また本社に続いて、次のステップとして劇場へ採用を展
開していくにあたり、右側の写真ですが、採用担当者を集
めた集合研修を企画・実施しました。この研修を行う際に
は、冒頭にもお話しました国立職リハの刎田先生に全面的
にご協力いただきまして、全国各地の講演者や先進的な取
り組みをされている企業・特例子会社など、見学先までご
手配いただき大変お世話になりました。
- 24 -
研修後には各担当者に全国のハローワークへ求人相談に
行ってもらいました。また講演していただいた各地の障害
者職業カウンセラーの方を通じて求職者をご紹介いただく
こともありましたので、採用は着々と進んでいきました。
またその採用事例を社内のグループウェアを活用し、順次
社内へ情報共有を図っていきました。
ブログのような形で、
採用を始めた各担当者の報告を全劇場で共有することで、
これから採用を始めようとしている他の担当者の知識にも
刺激にもなり、
更に採用が促進されるという好循環を生み、
当初の不安をかき消す勢いで採用は急速に進みました。
ではここで、こうして採用した方にどのような仕事をお
願いしているのか映画館での具体的な業務内容についてご
続いて、左側の写真は入場ゲートで、お客様のチケット
紹介させていただきます。
を拝見し、作品名や上映開始時間など確認したうえで、劇
<映画館での業務内容>
場の番号をご案内しているところです。また子供向け作品
など入場者プレゼントがある場合はこちらで配布します。
右側の写真は売店で販売しているところです。これは彼女
が担当するフロアの業務には本来含まれないのですが、混
雑してきた時などはこのように売店に入ってレジ打ちや商
品提供も柔軟に行っています。これらはお客様との接点が
かなり多い仕事になりますが、一人でも十分対応ができま
す。
実際に働いている方は様々な障害の方がおりますので、
その障害の特性によって、担当していただく業務は異なり
ますが、ここでは昨年の4月に入社した知的障害4度(軽
度)の女性についてご紹介させていただきます。映画館に
は大きく分けてチケットの販売、
飲食物の製造や販売、キャ
ラクターグッズやパンフレットの販売、場内清掃やお客様
のご案内といった仕事があります。その中でも彼女は、
「フ
ロア」といって清掃やお客様のご案内を主に担当していま
仮に分からない場合は、左側の無線機を常に着用してお
す。まず左側の写真ですが、映画と映画の合間の時間帯に
り、他の従業員に無線で自分から確認することもできてい
劇場内に落ちているポップコーンなどを清掃しているとこ
ます。ですから、誰かが常についていなければならないと
ろです。またこの際に落し物などが発見されることもあり
いうようなことはありませんし、これまでお客様から苦情
ますので、拾得物処理なども行っています。右側の写真は
やお叱りを頂戴するようなこともありません。ちなみに計
他の業務の合間など、定期的にお客様が利用されるトイレ
算はやや苦手のようで、当初は売店での販売が一人ででき
に入り、手洗い周りの水滴を拭き取っているところです。
るのか不安もありましたが、右の写真のように販売レジも
この際にトイレットペーパーが切れていないかなども併せ
タッチパネル式になっており、釣銭も自動で計算してくれ
て確認しています。これらの仕事は比較的お客様との直接
るので、現在では一人で十分対応できるようになっていま
的な接点は少ない仕事と言えます。
す。
これらを見ていただいてもお分かりのように、障害を
持っているからといって腫れ物に触るような特別扱いをす
るのではなく、この方の場合には他のアルバイトと同様に
勤務に取り組んでもらっています。過去には「10分前に
来て」と指示しても時間の逆算がうまくできず、間違えて
しまうというようなこともありましたが、きちんと説明す
れば理解し、同じミスを繰り返さないよう学習してくれて
- 25 -
います。
る当社の強みが出たのではないかと思います。また最近で
<取組みの結果>
は、当社の取り組みが社外の方にも認知され始め、それが
好循環となり、特別支援学校から実習の依頼なども多く
なってきています。当社の障害者雇用はアルバイト採用が
主体となっていますので、職業経験のない知的障害の学生
さんなどが、当社で職業経験を積んで、他社へ正社員とし
てステップアップしていくという事例も最近では出てきて
おり、その意味では職業体験の場という一定の役割も果た
していると思います。
では続いて、このようにして取り組んできた結果につい
てご説明いたします。
まず初めに本社で採用したのが2008年の10月でし
たが、翌年の2009年2月には雇用率1.8%をクリア
していましたので、スタートから半年足らずで雇用率を達
成することができました。これにはハローワークの指導官
からも「驚異的なスピードであり、前例がない」とお褒め
の言葉を頂戴することができました。また冒頭にもご説明
簡単な図に示すとこういうことかと思います。障害者雇
したとおり、2010年の法改正で、常用労働者数の算出
用において、アルバイトでの採用が主という会社は少ない
方法が変わりましたので、2010年12月時点では、雇
のではないかと思いますので、当社が人材の受け皿となる
用率が一旦下がっていますが、雇用人数は増え続け、現在
と同時に人材の供給源となることで、地域全体の障害者雇
の雇用人数は71名、雇用率も3.50%と当初の目標値
用が促進されることに繋がっていくのではないかと考えて
よりも高いレベルを維持しています。
います。
続いて内訳ですが、こちらも冒頭にご説明したとおり、
続いて、今お話したように社外からも我々の取り組みが
左の障害の種別の内訳については、特定の障害種別に偏ら
認知され、評価され始めている事例をいくつか紹介させて
ない採用ができており、特定の障害者のための特別な業務
いただきます。こちらに記載したように公的機関の出版物
ではなく、幅広い職務が提供されている証しとして外部の
に寄稿させていただいたり、本日のように講演を行わせて
方からも高い評価をいただいております。これは本社の採
いただくなどの機会も徐々に増えてきております。当初は
用と同様に仕事ありきというよりは、まずは全ての職務の
行政指導という不名誉な所から始まりましたが、このよう
中から、その方にあった仕事を構築していくという人物本
に社外から評価をいただけるまでの取り組みになりつつあ
位の考えが各職場にあったことが大きいと思います。
り、当社はもちろんのこと、映画という広くお客様に愛さ
続いて右の入社経路については、ほぼ6割がハローワー
れてこそ成り立つ事業を展開している東宝グループ全体の
クの求人から採用しており、有料媒体はほぼ使っていませ
企業価値とブランドイメージの向上に資する取り組みに
ん。映画館という業務の特殊性もあると思いますが、求人
なってきたのではないかと考えています。
倍率が高い都市部だけでなく、全国に事業所を展開してい
- 26 -
<障がい者雇用の効果>
4つ目に社員の意識の変化においては、障害を持った方
は中々就業機会に恵まれないことも多いので、仕事に対し
て前向きな方が多く、どんな仕事でも真摯に取り組まれま
す。その姿勢が周囲の社員にも波及し、自分ももっとがん
ばらなくては、と感じるようになりました。
また5つ目には仕事のミスやできないことがあっても、
職場の全員で支え合う、いたわりや優しさが職場に生まれ
ました。
そして6つ目にはこのような取り組みをしている会社に
対し、この会社で働けることに誇りを感じると言ってくれ
るものまで出てきています。
これらの精神的・内面的な効果は、数値結果よりも、会
続いて、これが最も重要なポイントかと思いますが、障
社経営においては何物にも代えがたい最大の効果と言える
害者雇用の社内的な効果についてご説明いたします。これ
のではないでしょうか。
からご紹介する効果については、各劇場の採用担当者から
ヒアリングした実際の声になります。まず具体的な効果と
障がい者雇用の効果
しては、1つ目に知的障害の方などに向けて、マニュアル
採用担当者アンケート(抜粋)
類を分かりやすく改良したり、段階的に仕事を覚えてもら
Q.障がい者雇用に取り組んで良かった点は?
(担当者A)
うために、作業を細かく分類したりしたことが、結果的に
社員やアルバイトスタッフの中で、障がい者に対して少なからず偏見があったと思いま
すが、一緒に仕事をする事によって、そういう気持ちがなくなってきたように感じます。
特に学生スタッフは、今後社会に出るにあたって良い経験になったのではないでしょう
か。その経験を活かせる人間を劇場の中で育てているという意味で社会に貢献してい
ると思います。
障害を持たないアルバイトにとっても、業務を正確に効率
的に覚えることにつながり、職場全体の業務の精度が向上
(担当者B)
しました。
諸所の雑多な業務をこなしてくれており、劇場全体の日常業務を下支えしてくれている
と感じます。また、同じ仲間として共に勤務し交流を持つことで、偏見がなくなったり、考
え方が変わったアルバイトスタッフもいるようです。「ノーマライゼーション」の理念を伝
える良い機会だと感じます。また、積極的に話しかけたりするなど、特に障がい者スタッ
フの支えになってくれるアルバイトスタッフも複数おります。障がい者の定着に向け、劇
場というチームとして取り組んでくれる姿勢を見せてくれました。
22
こちらは社内アンケートを行った際の劇場の採用担当者
のコメントを一部記載させていただきました。障害者雇用
に取り組んで良かったと感じる点について質問した回答で
すが、我々としてはこのコメントからも障害者雇用に取り
組んだことで、社員が成長してくれたと感じることができ
ました。是非お時間がある時にご一読いただければと思い
ます。
こちらのスライドでは、10分単位で細分化したスケ
ジュール表や見やすく整理したマニュアルなどその一部を
紹介させていただいています。
戻りまして、2つ目にハンディキャップを持った方と共
に働くには、職場全体でのケアや意思統一が必要であり、
その課題を従業員全員が認識することで、意識的に作業の
進捗や情報の共有が図られ、チームの結束力が高まりまし
た。
3つ目に障害を持ったお客様へのサービス面では、採用
に取り組むまで実際に障害を持った方に触れあう機会が少
なかった時は、車椅子のお客様が来場されれば、トイレか
では続いて、当社の現状課題としている点についてお話
ら何から付いて回るというような過剰反応とも言える対応
させていただきます。当初目標としていた全事業所での雇
もありましたが、
実際に障害を持った方と触れあうことで、
用は、残念ながら未だ達成されておらず、ノーマライゼー
その方その方によって必要とされるものが異なることが分
ションの理念に少しでも寄与するという意味からも、全社
かり、ご要望を伺ったうえで、必要な対応ができるように
員が参画するという意味からも、できるだけ早く達成でき
なりました。
ればと思っていますが、ただ単純に雇用人数を増やすとい
- 27 -
う数値的な目標というよりは、入社された方が定着し、よ
また障害者雇用に取り組む当社の姿勢を従業員からも
り業務の幅を広げ、重要な人材として戦力化していくこと
「誇りに思う」と言われるように、企業へのロイヤリティ
が現状の課題と言えます。そもそもアルバイト採用という
を高め、労働意欲を掻き立てることは、企業活動の経営サ
こともあり、本来長期的な雇用を前提とするものではあり
イクルを動かす上でも、金銭的な報酬ではない、重要な非
ませんので、先ほども申し上げたように退職して別の会社
金銭報酬になっており、経営戦略的にも非常に価値がある
で正社員と考える方も当然いますし、少しずつでも業務の
ことだと理解しています。ですからこの活動を続け、より
幅が広がらないとご本人も仕事に飽きてしまうことはある
強化していくことが重要ではないかと考えます。
と思います。また当然のことながら会社としても多様な業
今後も更に地域社会との関係を深めていきたいと思いま
務をこなせる人材を求めている訳ですから、職域を広げて
すので、今日このような場を与えていただいたように、こ
いくことは重要なテーマであると言えます。
の取り組みを社内だけではなく、外部にも積極的に発信
2つ目に採用計画のポイントにもしていましたが、採用
し、地域との関係が強化され、更に障害者雇用が促進され
担当者だけでなく、全社員への意識の共有が課題だと考え
るよう社会に貢献していきたいと考えています。また東宝
ます。直接採用に関わっていない社員には、関心の薄い者
グループにおいては、当社の取り組みが親会社を始めとし
もまだまだおり、更にこの取り組みを推進していくには、
たグループ企業各社にも波及しつつあり、障害者雇用に限
障害者雇用の意義を全社員に理解させる必要があると考え
らず、グループ全体の社会貢献活動を推進する契機になる
ています。
よう努力していきたいと考えています。
3つ目に先ほどもお話したように、障害者を雇用するこ
<最後に>
とで、サービス面への意識の変化など少しずつ効果も表れ
始めていますが、更に障害を持った従業員の声を活かし、
障害者や高齢者なども利用しやすい映画館・サービスにつ
なげていくことが当社においては重要だと考えています。
最後になりますが、雇用率0%で行政指導を受けた当社
のような会社でも、数年でここまで来ることができまし
た。これから取り組みを始めようとされている企業のご担
当者様にとっては非常に不安も多いと思いますが、我々も
続いて、当社の今後の目標や方向性についてですが、ま
実際に取り組んでみて得られたものも多かったと感じてい
ずは今申し上げた現状の課題を克服するためにも、更にこ
ます。これからご苦労も多いとは思いますが、ご健闘を陰
の取り組みの意義を全社員に理解してもらう必要があると
ながらお祈りしております。
考えており、お配りした「With YOU」という冊子
ちなみに、この「GOOD MEMORIES」とは当
を制作したのもその一環です。
社の基本理念であり、お客様に「良い想い出」をお持ち帰
この冊子を制作するにあたり、これまでの活動を振り返
りいただくのが、私たちの使命だと日々従業員に教育して
り、当社にとっての障害者雇用の意義を、我々担当者自身
おります。
も見つめ直すことができました。その結果、障害を持った
本日は拙い内容でお聞き苦しい点もあったかと存じます
方を雇用してあげるのではなく、我々が障害を持った方か
が、皆さんにとってこの時間が障害者雇用の「良い機会」
ら学び・気付かされることが非常に多いと改めて感じまし
になればと願っております。本日は長時間ご清聴いただき、
た。ですから、我々自身が学んでいくという姿勢が大事で
ありがとうございました。
はないかと思います。
刎田 土屋様、どうもありがとうございました。少々時
それから障害者雇用はそのご家族や支援機関、学校など
間が厳しくなってきておりますけれども、もし質問等ござ
地域の方々と連携しながら取り組むもので、地域社会との
いましたら、お受けしようと思うのですが。どうぞ。
関係性も深まります。その結果として、映画館の運営とい
フロアより ご講演ありがとうございました。2つ、質
う当社の経営基盤の強化にもつながっているということも
問させていただきます。本社での採用にあたって部門横断
改めて認識しました。
的に業務の切り出しをされたということなのですが、その
- 28 -
結果、実際に障害を持った方にご担当いただいている業務
の内容を教えていただければというのが1つ。それからも
う1つは、先ほどの車椅子の障害についてのご講演があっ
た中で在宅勤務、在宅就労の可能性ということで少しお話
があったのですが、そういった側面で何か検討された経緯
があるかどうかという点について教えてください。
土屋 まず1つ目のご質問の「部門を超えた業務の切り
出し」ということですが、まずは各部門からお願いしたい
業務を出してもらい、並行して面接を進める中で、視覚障
害の方だったのですが、前職でホームページの更新作業の
ご経験がある方がいまして、ちょうど会社のホームページ
をリニューアルしようということも検討していましたの
で、その業務を担当していただくことにしました。ただそ
の作業だけでは十分な業務量にならないので、配属は総務
室とし、その方の得意とされるスキルを活かしながら、総
務の他の業務も行っていただきました。
2つ目の「在宅勤務」については、特に積極的に検討し
たことはありません。やはり映画館の運営という人で成り
立つビジネスを展開しているということもありますし、基
本的には人前に出て仕事をしていただくことを前提に採用
しています。
フロアより 仕事ありきではなくて人物本位で職域開発
するという点は非常にいい気づきになりました。ありがと
うございました。
刎田 ありがとうございました。では少々お時間が差し
迫っておりますので、質問はここまでにさせていただけれ
ばと思います。また後ほど情報交換の機会を持っていただ
ければとも思いますので、ここまでとさせていただこうと
思います。
どうも土屋様、ありがとうございました。
- 29 -
講座3.発達障がい者の受け入れについて
~雇用現場からの実践事例~ 岡谷 それでは続きまして講座3に移りたいと思いま
す。私は講座3のほうを担当させていただきます職域開発
課の岡谷和典と申します。よろしくお願いします。講座3
は「発達障がい者の受入れについて、雇用現場の実践事例
について」ということで、本日ははるばる岡山県から日本
ゴア株式会社クオリティマネージメントの坂中正樹様にお
越しいただいております。坂中様につきましては、実は人
事担当の方ではなく、製造プロジェクトのリーダー、生産
坂中 皆さんこんにちは。ただいまご紹介いただきまし
プロジェクトのリーダー等、現場の責任の方です。現在は
た日本ゴア株式会社の坂中です。いま私の仕事はクオリ
品質保証グループリーダーとして会社全体の品質マネージ
ティマネージメントといって品質保証のほうを全社的に担
メントの役割を担うかたわら障害者雇用についても人事と
当してるんですが、それより以前に生産管理も含めた製造
協力して進めていただいている次第です。
のリーダーをやっていました。そのときに岡谷さんにはす
ごくお世話になって、特に発達障害者の方の採用をしたん
ですけれども、その際にすごくお世話になって、一緒に悩
みながら取り組んでまいりました。そのあたりの話を今日
させていただければと思っております。
<岡谷課長>
私と坂中様との接点は、私が岡山県の国立吉備高原職業
リハビリテーションセンターに平成19年から21年まで
勤務しておりました時です。発達障害者支援法が平成17
年に制定されて、平成18年から当機構でも発達障害者を
本日紹介する事例の中には決していい話ばっかりが出て
受入れをしようと取り組んでいたころに日本ゴア様も障害
くるわけじゃないです。非常に難しかったこととか、悩ん
者雇用をどうしたらいいかというところで吉備リハに相談
だこと、うまくいかなかったこと、そういったこともあり
に来ていただき、その中で受け入れについていろいろご協
ますし、紹介する中にはそれはちょっと拙かったんじゃな
力していただいたというような経緯があります。現在も引
いの?というようなこともあるかもしれません。その辺も
き続き、様々な障害者の雇用に取り組んでいただいている
踏まえて、皆さんのお手元の資料をご覧いただければわか
というような状況になっています。本日は障害者雇用をど
るかと思いますが、沢山いろんな資料を盛り込んでます。
のように考えて、どのように進めてきたかとか、また雇用
これだけ全部しゃべると多分全然時間が足りなくなるとは
していただいた障害者の方が安心して継続するのにどのよ
思うんですが、是非ご覧になり、参考になるところは使っ
うに取り組んでいただいているか。さらに先ほどもお話が
ていただければと思っております。
ありましたけれども、障害者の方を受け入れて、会社とし
てどのような効果があったかとか、そういった話をご紹介
していただけると思っております。それでは、坂中様、よ
ろしくお願いします。
- 30 -
<主要事業拠点>
それでは進めさせていただきます。本日ですが、まずこ
れから会社の概要を少しだけお話しさせていただいて、そ
主要な事業拠点ですけれども、本社機能は東京の品川駅の
れから障害者雇用のあらまし、弊社での始まりの辺の話で
側にあります。こちらのほうでは経営管理及び主要事業部
すね。あと吉備リハさんとの連携、初期の事例をお話しし
門の統括をしております。あと工場のほうですけれども、
たあと、発達障害者雇用の実践の事例、まとめという形で
岡山県に2ヶ所あります。備前市というところと岡山市の
進めてまいりたいと思います。
2ヶ所に有しております。画面とお手元の資料と幾分違う
<会社概要>
点が出てくると思いますが、ご容赦願います。
まず会社のほうですけれども、社名が日本ゴア株式
弊社は W.L.Gore & Associates, ということで世界中に
会 社 で す。 英 名 は W.L.Gore & Associates, Co.,Ltd. で
展開しておりますが、世界中で見ると、オフィスが主要
Associates というのが社名にも入っていて、社員は仲間
30ヶ国、プラントが米国、ドイツ、スコットランド、中
だという考え方でやっている会社です。そういったあた
国、日本ということで、約80拠点持っております。社員
りも障害者雇用に少しは影響してるんじゃないかなと思い
数が約9600人。売上高はおよそ30億ドルということ
ます。売上は約400億円、社員数は去年の11月現在で
なんですが、本日お話しするのはその中の日本の部分だけ
576名です。以前はジャパンゴアテックスという社名で
になります。
したが、2009年に米国の W.L.Gore 社の完全子会社と
なって、2011年に日本ゴア株式会社と社名が変更され
ています。
主要な事業内容ですけれども、皆さんが一番目にする機
会があるとすると、ゴアテックスのレインウェアで、これ
- 31 -
は少し皆さんご存じの方が多いんじゃないかと思います
<私の病気体験>
が、他にも燃料電池用の固体高分子膜であるとかメディカ
ル用の人工血管とか、ステントグラフトとか、そういった
いろんなものを多岐にわたって展開しております。
<障がい者雇用の現況>
ちょっと話が展開してしまいますが、実は私はちょうど
10年ぐらい前に病気をしたことがあるんです。脳の血管
の病気だったのですが、そのときに頭を開いて手術をしま
した。手術の前の説明では視野の狭窄が出るかもしれない
それでは障害者雇用の現況ですが、現在、障害者の方は
とか、言語の障害があるかもしれないとか、知的障害が出
10名働いておられます。
カウントの関係もありますので、
るかもしれないといろいろ説明がありました。結果として
雇用率で言うと2.47%。色分けしていますが、いろん
はどの障害も出ることなく終えることができたんですが、
なタイプの障害の方が働いております。
リハビリのときに車椅子に乗ったり自分で排泄できなかっ
たり、いろんなことを経験しました。エレベータに乗った
ときに高い目線から見下ろされるということも初めて経験
しましたし、初めて身近に障害というのを感じました。そ
のときにエレベーターで困ってるときに、ある人が「お手
伝いしましょうか」と言ってくれたんです。それが本当に
ありがたくて、それから随分障害者雇用に対する認識が変
わったわけです。そういう理由で何とかハンディキャップ
のある人の手助けをしなければという思いが強くなりまし
た。
<障がい者雇用の失敗>
それでは弊社の障害者雇用についてお話を進めてまいり
ます。まず、以前はほとんど障害者雇用に理解はありませ
んでした。10年ぐらい前までは全くと言っていいほどな
かったと思います。長らく1%にも満たないような状態が
続いていました。納付金を納めればいいという程度の認識
だったと思います。実際のところ、障害者を現場に入れる
と仕事の質が確保できないんじゃないかとか、生産性が低
下するんじゃないか、あと庶務部門はともかく、生産部門
で採用するのは難しいという認識でした。これは明らかに
先入観なのですが、そういう認識であったことは間違いな
いです。
それから数年経ったころ、人事の担当のほうから「脳の
病気で足に麻痺が残った方の雇用オファーがあるんだけ
ど、現場で使えませんか」と言われました。聞いてみると、
私と全く同じ病気で、私は未破裂だったんですが、その人
は破裂してしまったということで障害が残ったと。そこで
私のほうで預かりますと採用したのですが、しばらくして
2つ大きな問題が発生してしまいました。1つは報酬に対
する不満を言われ出したこと。もう1つは居眠りが頻発し
- 32 -
てしまったということです。よく聞いてみると、薬の影響
<日本ゴアの職場環境>
で眠気が我慢できないというところがあったようです。そ
ういったことで結果的には辞められることになったのです
が、非常に障害者の雇用は難しいなというのを実感した失
敗事例です。
<吉備リハとの出会い>
このときなぜそう思ったかというと、弊社は15~6年
前から5S活動というのを本当に積極的に取り組んでい
て、安全衛生に関わるようなところ、いろんな標準化をし
て、表示、標識をしたりというようなことを積極的に取り
組んでいたからです。非常にきれいな環境というのが整っ
それからしばらくは障害者の雇用に二の足を踏んでたん
ていたわけですね。そのきれいにするとかいう活動を通じ
ですが、ちょうどいまから5年ぐらい前ですね。岡山にあ
て仲間のやさしさというのも非常に培われてきてましたか
ります国立吉備高原職業リハビリテーションセンター、こ
ら、もともと働きやすい環境というのが日頃から整備でき
れ以降、吉備リハと言わせていただきますが、こちらのほ
ていた。そのため吉備リハさんで、訓練している様子を見
うを見学する機会がありました。もともと障害者雇用を何
たときに、うちの会社は結構できてるなという認識が持て
とかしなければという気持ちはあったのですが、うちでは
たわけです。よくよく考えてみると、日頃から働きやすい
難しいかなという思いはありました。最初に応接室に通さ
職場を整えていくということは、障害者にとっても働きや
れて、二人の方がお茶を持ってきてくれて、そのときに本
すい職場になってるんだということを、見ることによって
当に気持ちよく笑顔で挨拶をしてくれたのですが、
「訓練
初めて感じて、ああ、うちならできるなということを思い
生の人です」という話を聞いて、あっ、こういう仕事なら
ました。
できるなとそのときは思いました。
そして、そこから一気に話が進んでいくわけですけれど
その後、現場を案内してくれたのですが、そこで私は非
も、まず見学を終えた後、就業意欲の高い人がいれば数名
常に衝撃的なところを目の当たりにするわけです。1つは
紹介してほしいという話をしました。但し、吉備リハさん
指導員の人が本当に熱心に訓練、指導してくれている。も
と良好な関係を続けながら障害者雇用に取り組んでいきた
う1つは訓練のレベルが非常に高くて、それを訓練生の人
いので失敗を極力避けたいということで、
「うちの職場を
が一生懸命訓練しているというのを見たからでした。その
先生、見てください。この中のどの職場に障害者が仕事で
ときに、あ、これは何とかしないといけないというのと、
きそうなところがありますか」という話をして、来ていた
やってる訓練の様子を見ると、幾らでもやることはあるぞ
だきました。一方、我々は経営者のほうにも判断を仰がな
というふうに感じたわけです。同時に、うちの会社なら何
ければいけないので相談をしました。経営者、現社長は
「現
とかなるというふうな認識も持ちました。
場が無理をして受け入れるのなら賛成しない。但し、人事
と現場と双方が納得して取り組むなら反対はしないけど」
- 33 -
というような答えでした。ですから積極的にどんどんやり
ハでの訓練の一環として来られますから、その時点では採
なさいと言われたわけではない。無理はしすぎるなよとい
用するとかしないとかいう話ではないんですけれども、一
う助言でした。そしてその言葉を踏まえて準備を進めて
方、うちの会社で働いてもらうというのを前提に見極めを
いったわけです。
していくので、職場体験とはいうものの相性の見極めもし
<障害者雇用に向けて>
ていきました。特に支援候補者となる人と受け入れる人の
相性あたりを見ることを重視しています。1週間の職場体
験なんですが、初日と最終日にはそれぞれの担当の教官が
来てくれて、訓練計画の確認をして、途中、先生が見に来
てくれたりもしました。ここに書いてある通りです。職場
体験と言っても弊社での就業が前提の体験になりますか
ら、受入れ可能か否かを見極める非常に重要なフェイズに
なると思います。3人とも本当に一生懸命何とか就職した
いという思いで取り組んでくれました。それを見て、
私も、
一緒に訓練した教育の担当者も、これは何とか成功させた
いなという思いが高まってきたので、そのまま進めること
にしました。
吉備リハさんとの関係を通じて障害者雇用を進めていこ
うという話になりました。今度はそのときの様子を順を
追ってお話ししたいと思います。まずフェイズ1として予
め障害者雇用の候補となる職場を複数選定して、吉備リハ
の先生方に現場を見ていただきました。その結果、3名の
候補者を選んでいただきました。
そのときは知的障害の人、
聴覚障害の人、発達障害の人、3人紹介していただきまし
た。それぞれタイプの違う障害の方です。それぞれの人が
できそうな仕事を選んでいただきました。一方、弊社のほ
うは、その選んでいただいた仕事を基に教育支援をする担
当を決めていきました。次にその支援する担当者に吉備リ
ハのほうに行ってもらって訓練の内容を見てもらいまし
次に行ったことは仕事の抽出と受入れの準備です。現場
た。そのときに支援候補者が3人いたのですが、それぞれ
の体験を終えて、その情報を基に3人の方のできそうな仕
が嫌な顔することなく、何とかなるんじゃないの?という
事の抽出をしていきました。抽出したときのポイントは、
感じで受け止められたので、これはいけるかなということ
1つは従来の仕事の1人分を考えるのではなくて、複数の
で、それからどんどん進めていくわけです。もうこの段階
メンバーがやっている仕事の、障害を持ってる方のできる
では受入れしようという気持ちになってましたから、それ
ところを切り出して、合わせることで1人分をつくってい
ぞれの担当教官の人からこの3名の人の情報提供を受けま
こうというようなことを考えました。あと、その職場の中
した。1つは障害特性から来る行動の傾向、それから興味
に本当に親身になって支援してくれる人がいるかどうか、
を持って取り組んだ訓練、あと苦手だった訓練、そういっ
それを見極めました。あと何か教育するときに何もなくて
た情報の提供です。
はできないので、きちんと手順が整備できているか、もし
くは受入れまでに整備できるかどうか、そのあたりを確認
していきました。
次にやったことは1週間の職場体験です。これは吉備リ
- 34 -
<障がい者雇用事例①>
準備が終わると、いよいよ採用に向けての最終関門、面
接ということになります。これまでに受入れをするという
ではここからは事例の話で、最初に入った3人の事例を
方針はほぼ決まっているので、最終的にここでは本人の意
少しだけ紹介します。まずはAさん、知的障害の方の事例
志確認ということになります。面接のやり方は、人事の責
です。仕事の内容としては製造消耗品の管理と各職場への
任者、それから担当者、私の3人と対面する形でそれぞれ
配達をお願いしています。切り出し方法としては、従来は
の人、
それから吉備リハの先生に同席していただきました。
それぞれの職場が消耗品を注文したり管理したりしていた
先生にはちょうど視界から外れるところに座っていただき
んですが、それを一箇所に集めて、そこから配達してもら
ました。この理由は、1つは緊張を和らげるというか、安
うという形を取りました。それによってそれぞれの製造現
心をもたらすため、それからもしもパニックになったりし
場に消耗品を置いているという置き場もなくなれば在庫も
たときに助けてもらおうというところ。あと弊社のほうの
減るというような効果もありました。こういう内容の訓練
質問に適切性が欠けていたときに助言したり、チェックし
があったみたいですね。ちゃんと届けたりピッキングした
てもらおうという思いもありました。あと聴覚障害の方に
りというようなことはきちんとやってもらいました。知的
ついては見えるところで手話をしてもらって、我々の意図
障害ではあるんですけれども、非常に明るい人で、みんな
がきちんと伝わるように配慮しました。確認するポイント
の人気者で頑張ってくれています。ただ配達したついでに
は、本当に弊社で働きたいという希望、意欲を持っている
人と話しだすと止まらなくなるところがあるので「あまり
か、あともう1つは自分自身の障害をきちんと受け入れら
しゃべり出すとストップと言ってくださいね」と周りの人
れているかどうか。その部分をチェックしていきました。
には伝えてあります。
そして面接が終わったあと、今度は控室に戻ってもらっ
<障がい者雇用事例②>
て、弊社と吉備リハの先生と面談します。ここでは何をす
るかというと、モチベーションを保ってもらうために、こ
んな訓練を入社までにしてくださいという話をその場でし
ます。合格通知は多分次の日になったと思うんですが、そ
の通知が届いた後、訓練をしっかりやって入社準備しよう
ねという話を先生のほうからフォローしてもらいました。
面接が終わった後は、トライアル雇用に備えてもう一度い
ろんな情報の交換をしたり、作業の標準化をしたりという
ことを進めました。そして3人のトライアル雇用をスター
トさせています。トライアル雇用では最初の何日か先生に
も入っていただきました。途中にも来ていただきました。
特にその3ヶ月間というのは非常に慎重にやりました。
あと聴覚障害の方が一緒に入られてます。この方につい
ては製品の検査のほうをやってもらっています。朝礼では
プロジェクターを使って予定や注意事項を伝えたりとか、
火災報知機が鳴るとフラッシュの光で認識できるようにす
るとか、館内放送があるときがあるんですけども、そのう
ち必要な情報は携帯のメールに同内容を送り不安を与えな
いというようなことをやっています。いまは弊社のメディ
カル、医療の関係で、非常に間違いが起こっては困る仕事
なのですが、こちらのほうの仕事を担当してくれて、非常
- 35 -
に頑張ってくれています。
<発達障がい者雇用実践事例>
<吉備リハとの連携>
ここからが発達障害者の雇用事例で今回のメインのテー
お話ししてきた通り、弊社の障害者の方は大半が吉備リ
マなんですけれども、これまでにたくさん時間を使っちゃ
ハの訓練生です。やはり就業可能そうな人材の情報提供を
いました。発達障害者ですが、いま3名、弊社では就業し
受けたりとか、入社前後で連携してやれるということで雇
ています。傾向を見てみると、見た目ではほとんど障害が
用のミスマッチが防げたり、何よりビジネスマナーあたり
あるということはわからないというところがあります。あ
の基本的な教育をしなくていいというか、ものすごくちゃ
とこれも経験的に学校や社会の中で傷ついてる人が多いよ
んとできているので一般の新卒の子なんかよりもはるかに
うだということですね。だからトラウマになって、単に発
マナーが優れていたりというようなところ、そういうのが
達障害がどうこうというよりも、社会に順応するのに臆病
訓練済みというのは大きなメリットだろうと思います。
になってる人が多いんじゃないかなと思います。
<どのように啓蒙したか>
<発達障害者とその傾向>
配属部署の仲間に対してどのように啓蒙したかというこ
あと発達障害ということで一括りに話をしてますが、3
とですけれども、
メインとなる支援者は吉備リハに行って、
人それぞれで、状況は全く違います。そういう意味で1人
先生から障害の特性とか対処方法をレクチャーしてもらい
ひとりに合わせていかないと、どうやらカテゴリーでどう
ました。あと他の人に対しては人事とか、私とかが言うん
のこうのというような話じゃないぞというのも経験的にわ
じゃなくて、その支援者の人から説明してもらうというこ
かりました。あと発達障害がどういうものなのか誤解が多
とをしています。あと何かもし困ったときには我々とか、
いということです。新聞報道とかそういうのを見ても、何
吉備リハの先生にも協力してもらって何とかするから、あ
か発達障害というのが一人歩きして、怖いもののように勘
なた自身が全部背負いこむことはないからという安心をし
違いされるような情報もあるので、仕方ないところがある
てもらえるように配慮しました。あと直接関わらない人に
のかもしれませんが、接してみると全然そんなことないで
はあまり啓蒙はしていません。先入観を持たれるよりも、
す。
むしろまずはありのまま見てもらって、自然に受け入れて
もらおうと。その辺は、先に先に啓蒙しなくても追々ちゃ
んと情報が伝わるだろうということでした。このやり方が
いいかどうかわかりませんが、そういうやり方を取ってい
ます。但し、車椅子の方については援助してもらう関係が
ありますので、その辺は社内に掲示をして伝えました。
- 36 -
<障がい者雇用事例③>
期間にやる仕事を組み合わせて仕事の切れるのを防いで契
約の更新の1回目はしました。
では事例を進めていきます。まず1人目、Cさんです。
Cさんは最初に3人入ったうちの1人になります。現在
あと非常に約束事に厳格なところがあって、2回目の契
32歳、高校を卒業して、超難関な国立大学の文学部に入
約満了日の1ヶ月前がちょうど夏休みにかかったために、
学されています。大学在学中に学校生活が困難になり発達
夏休みが終わった後、契約更新をしようとしたところ、明
障害と認定されたようです。一応、履歴書上は8年かけて
らかに様子がおかしくなりました。多分、夏休み期間中も
卒業されていますが、その後は全く就業できずにいたよう
んもんと過ごしてたんだと思いますが、へそを曲げてなか
です。その後、職歴はなく吉備リハに入所されました。そ
なか更新をしてもらえませんでした。そのときには吉備リ
の訓練修了後に弊社に入社されています。知的な能力は
ハの先生にも来てもらって対処しました。そのときの話の
非常に際立っています。とにかく真面目。対人的には無愛
中で「6ヶ月先の約束はできません。だから契約は更新で
想、ぶっきらぼう、あと歩くのはものすごく速く黙々と歩
きません」という話も出てきました。それに対しては「辞
きます。パソコンのスキルも非常に高いですし、文章力も
めたくなったら辞めたらいいんだから」ということで吉備
非常に高い、計算能力も優れているということで、その事
リハの先生にも話をしてもらって契約更新に至りました。
務処理能力の高さから最初は出荷事務を担当してもらいま
した。
次でもやはり契約更新が難しかったです。次は自分が役
に立ってるかどうかわからないというような話で契約更新
仕事は非常に正確、速い。ただこのことによって我々の
をためらわれました。そのときには仕事の出来ばえを月に
想定している仕事の量よりもはるかにたくさんこなすため
1回きちんとフィードバックするからという約束をして契
に仕事が追いつかないということが起きて、我々は仕事を
約更新をしています。
切らせてしまいます。
ですから
「次の仕事、
何しましょうか」
ということを聞かれて「ちょっと待ってて」とか「適当に
やっといて」というようなことを言おうものなら、C さん
はどうしていいか困ってしまいます。
そうこうしてちょうど半年が経過したときに初回の契約
更新があったんですけれども、彼のほうから「契約更新を
求めません」という話がありました。理由は仕事が切れる
のが苦痛だということだったので、その日にある仕事と、
ある程度時間が空いたときに請求書のチェックのような長
- 37 -
そうこうしていて、また本人から仕事が続けられないと
いう申し出がありました。とにかく人の出入りがあったり、
話が飛び交う環境では仕事ができないという話でした。そ
こで我々は何ヶ所か候補地を選んで、どこかいいところ
があれば場所を代わってもいいよという話をしたところ、
ちょうど書庫があって、その後ろに2坪ぐらいのパーティ
ションで仕切られた場所があったんですけど、そこにして
ほしいという話がありました。静かではあるのですが、非
常に暗い環境です。でも光に敏感なようで、調光された暗
いところで仕事ができるというのを非常に本人は喜んで、
ここでやらせてほしいという話があって、ビデオの編集で
またその後も騒々しい職場環境が苦痛だというようなこ
もあるので、そこでやってもらうことにしました。
ともありました。そのときにはもうその仕事は無理そうだ
なというところがあって、思い切って仕事の変更と場所の
変更を提案しました。提案した仕事はビデオで仕事の様子
を写して、それを標準書にまとめていくというような仕事
です。そういう仕事をやりませんかという話をしたら、彼
のほうから初めて 「その仕事を是非やらせてください」
という話がありました。それでマニュアルを渡して始めた
わけですけれども、
この仕事は非常にマッチングしました。
作業を全部形式知化していくわけですね。
非常に仕事はうまくいってたのですが、1つ厄介なこと
に、その仕事の量を我々が確保できなくなってしまいまし
た。そこで事務の仕事と両方をしてもらおうとしたのです
が、もうなかなか気持ちが前に向かわないということに
なってしまいました。しかし仕事が確保できないというこ
とから彼の英語の能力が非常に高かったので、ラストチャ
レンジのつもりで「翻訳の仕事をやるか」という話をした
ところ「やりたい、でも体がもたない。もう無理です」と
いう話でした。その後2ヶ月ほど、彼は休みました。弊社
これは本当に合って、自動車メーカーが工程監査に来た
の契約している精神科医に診てもらいながら休職して復職
ときにはすばらしい出来だということで大絶賛されたりも
してから翻訳の仕事に再挑戦しました。やってみると、非
しました。そのときも「すごく誉められたよ」という話を
常にレベルが高くて、ほぼ完璧というような内容でした。
したら「ああ、そうですか。別に大したことじゃないです
から」というような切り返しはされるのですけれども、そ
んなこともありました。
ちょっと話が前後しましたけど、ほぼ完璧なんだけど辞
めたいという話があったわけですね。治療を受けながら職
場復帰を目指したということです。2ヶ月休んだのは非常
- 38 -
に良かったみたいで、その後復帰して、いま翻訳の貴重な
<障がい者雇用事例④>
戦力として、メールで翻訳の部署とつながって仕事を続け
られています。
では発達障害の次の事例。Dさん、41歳、2008年
に入社されました。冒頭説明した通り、工場が2ヶ所ある
翻訳チームのメンバーから感想を抜粋したものです。
「最
んですが、この方は備前市のほうにあるもう1つの工場で
初はうまくやっていけるのか不安だったけど、とにかく一
働かれた1人目の障害者の方です。機械のオペレーターと
緒に頑張りましょう」というような内容が書かれていまし
して地元のメーカーに入ったようですが、就業が困難に
た。手元の資料を見ていただければと思います。
なって1年で退社されています。そのときには検査の仕事
を候補職場として50歳ぐらいのベテラン社員をフォロ
ワーに人選しました。非常に真面目に根気強く、仕事の理
解も高く、作業スピードもそこそこですが、環境の変化を
とにかく嫌う人です。当初は緊張するとすぐトイレに行く
というようなことが起こりました。一度に複数の仕事をす
るのは苦手です。パソコンに入力するという仕事を主に
やってもらいました。
Cさんの事例は我々にとって発達障害の1例目というこ
とで我々も大分頑張ったんですけど、支援者のほうに負担
もかかりました。果してここまでしないといけないのかと
いう話もあったんですが、
幸いにして誰1人もうやめたい、
勘弁してくれとは言わなかった、諦めなかったのです。そ
ういう意味では社長から「無理はするなよ」という助言は
ありましたが、無理と無茶とは違うので、少しの無理は仕
方がないと思っていました。でもちゃんとできたら十分仕
これは吉備リハの訓練でもかなりやってらっしゃったよう
事ができますから、そのちょっとした辛抱が大事なんじゃ
で、特に問題なくできました。ハンガーのサンプルをつく
ないかなというふうに思います。いまでは本当に関わって
るんですけれども、これのホッチキスを使うのが苦手で非
いるアソシエイツ、
仲間は、
絶対この人は辞めてもらっちゃ
常に苦労しましたけど、だんだん慣れるとできるようにな
困るということで活躍されています。
りました。仕事がうまくいかなかったり、プレッシャーが
かかるとトイレに行きます。ですから作業する位置をトイ
レの近傍に変えてトイレに行きやすくしました。
- 39 -
あとは量が過多になってくると、下痢をするというよう
嬉しかったこととしては吉備リハの文化祭に行って、先
なことが起こってきます。その辺もCさんと一緒でコンス
生に様子を聞かせてくれたりとか、おみやげを持って行っ
タントに、その日やらないといけない仕事と、少し長期的
てくれたりというようなこともあったようです。あと家族
にやればいい仕事の組み合わせをして100を超えないよ
と疎遠になってたそうですが、きちんと仕事ができだした
うに、かと言って0じゃなく、手待ちができないように、
というところから家族と連絡を取れ出したようです。相変
そういった配慮をしていくようにしたら、落ち着いて仕事
わらずぶっきらぼうにやってますけれども、職場では仕事
ができるようになりました。
に対する信頼度が高いので安心して仕事を任せられます。
<障がい者雇用事例⑤>
あと、ここでも更新でしんどい目をしています。すごく
不安らしいんですね、更新をしてらもらえるのかどうかと
もう1人は、Eさん、27歳、地元の高校を卒業して、
いうことが。ちなみに弊社の障害者雇用については半年の
その系列の大学に行かれてます。工作メーカーでMCオペ
契約社員という形を採っています。そのときは吉備リハさ
レーターとして従事しましたが、1年半で退社、発達障害
んに連絡して更新してもらえるのかという話がきたという
の診断を受けたようですが、本人も家族もなかなか受け入
連絡があったので早めの更新をしました、安心してもらう
れられずに大変苦労したようです。その後、弊社に入社さ
ためにです。これは1回目だけです。2回目以降はそうい
れました。このころになると弊社のことを吉備リハの先生
うことはなくなりました。ですから発達障害だけじゃなく
もわかってらっしゃるので、合っている人と思われる人を
て、あらゆる障害者雇用は1回目の更新をきちんとやると
紹介してくれるようになりました。
いうのがすごく大事なのだなというのを経験的に思いま
す。前は話しかけても、そんなに話をするようなことはな
かったのですが、1回目の更新をして明らかに世間話をす
るようになったりされだしました。やっぱり先が見えると
いうことがいかに大事かということだろうと思います。
- 40 -
実はそのときは3名来られたのですが、2名入社されま
した。しかし1名の方だけが採用に至らなかったというこ
とがありました。なぜかというと、吉備リハでは事務の仕
事を訓練されたようなのですが、事務だけでは1人分の仕
事がつくりきれないんで、他の仕事、検査とかそういう仕
事もできるかという話をしたのですが、事務へのこだわり
が非常に強かったために採用には至りませんでした。
トライアル雇用をスタートしましたが、いきなりちょっと
つまづいちゃいました。データ入力というのは非常に得意
だということだったのですが、間違いが頻発したというと
ころから自信をなくしてしまって、ストレスで下痢とか体
調不良になったりしました。パソコンのディスプレイを変
えたりとかしながらやったのですが、なかなか気持ちの落
ち込みが直らない。
こだわりを持つことは非常に大事だと思うのですが、会社
に入るときに必ずしもうまく仕事がつくれない場合があり
ますので、ある程度合わせるということも大事なんじゃな
いかなと思います(この辺は飛ばします)
。
ここでも吉備リハの先生に登場いただいて悩みを聞いても
らって、対処方法としては間違いが起きないようにマスキ
ングをして、違うところが見えないようにしてデータを読
み取るというようなことをしながらやりました。でもなか
そしてEさんの件ですが、データ入力やファイリングの
なか失った自信は回復しないということで、医務室で休ん
仕事で職場体験をしてもらいました。忘れないようにメモ
だりというようなことも起こるようになりました。でもそ
を取るというようなことはきちんと訓練されてました。面
こで関係者で思い切って仕事を変更しました。
接のときですけれども
「頑張ったら正社員にしてくれるか」
という質問がありました。これに対しては「基本的には正
社員の登用は難しいです」とはっきり言わせてもらいまし
た。
「正社員の採用試験を正式に受けて合格されたらなれ
るけども、障害者雇用だったら職場の仲間に助けてもらい
ながらずっと働くことは可能ですよ」という話をさせても
らいました。
データ入力へのこだわりは強かったのですが、提案した仕
事としては、判断をあまりしなくていい仕事に切り換える
- 41 -
ということをしました。
検査のサンプルをつくったりとか、
率を満足させたりとか、社会的責任を果たしたりとか、社
ファイリングをしたりとかいうような仕事です。本人は最
会貢献をすること。これも確かに大切なことなので、これ
初、データ入力を勉強してきたんだという強い思いがあっ
は多分企業側の視点に立ったものの見方、考え方だろうと
たのですが、仕事を変えることで下痢とかがなくなったこ
思います。やはり必要なのは、現場の人間が仕事を分かち
とから「この仕事をやります」ということになっていきま
合おうという気持ちになれるかどうかということだろうと
した。
思います。日常業務の中には障害の影響が少なくて済む仕
ここでもやはり契約更新でしんどい目をしました。更新
事とか、一定の配慮をすればできるような仕事というのは
をしてもらえないんじゃないかという不安があったようで
たくさんありますので、それを障害者に分担する、分け与
す。要するにデータ入力をたくさん間違えたので、それが
える、そういうことができたら結果的には健常者も他の仕
原因で更新をしてもらえないんじゃないかと思ったみたい
事に時間を仕向けられるわけで、そういう発想や視点の転
ですが「仕事も変わったし大丈夫だから」ということを伝
換が必要なんじゃないかなと思います。やはり障害は、い
えたら表情も明るくなって、緊張しないで対処できるよう
つ、誰がどこで起こるかわからない。ひょっとしたら自分
になっていきました。
かもしれないし、家族かもしれない。そういうふうに考え
ると、やはり普段からそういった助け合いの気持ちでやっ
ておくということが大事なんじゃないかなと感じます。
あと主治医の先生が、この方は会社で仕事をするのは難し
いんじゃないかと思ってたのに続いてるというのが摩訶不
思議ということで、
うちの会社に来られたことがあります。
障害者雇用をするには意識と仕組みを変えていかなけれ
結果としては、我々が特に意識してなくてやってるところ
ばいけないと思います。ここに10項目ばかり挙げていま
でいろいろな配慮が効いてるという話でした。先ほどの整
す。職リハさんと連携する。職場体験を有効に利用する。
理整頓が行き届いてたりというところもそうだと思います
上手に仕事を切り出す。契約更新では注意が必要です。仕
が、本人としても医療機関と会社がつながっているという
事の出来ばえをちゃんとフィードバックしてあげないとい
安心感になったようです。
けません。職場環境、トイレとか光とか音とかへの配慮が
これまで事例のお話をしました。非常に駆け足で申し訳
必要です。あと支援者の選定、本当に理解のある支援者を
なかったのですが、配布資料を後で見ていただければと思
つけてあげるというのがすごく大事です。あと支援者がく
います。
たびれますから、その支援者をきちんとフォローしてあげ
<障害者雇用についてまとめ>
るということも大事と思います。あと、ある程度長期的視
点で、いますぐにできなくてもそのうちできるようになる
という、少し我慢も必要かなということと、人に仕事を合
わせる。ダメだったらしつこくそれを引っ張らない、切り
換えるということも大事だろうと思います。
まとめをさせていただきます。企業が障害者雇用を進める
上で大事なことについて考えてみたのですが、障害者雇用
- 42 -
終了したいと思います。どうもありがとうございました。
―まとめー
司会 講師の皆様、どうもありがとうございました。そ
れでは最後になりましたが、講座の閉会にあたりまして、
当センターの次長の塚田滋よりご挨拶申し上げます。
塚田 皆様、本日は長時間にわたりまして受講いただき、
ありがとうございました。本年度の受入れ準備講座はご覧
のように「採用の幅を拡げてみませんか?!」と、こうい
う観点からご参集の皆様方の相互の理解と情報の共有を目
障害者雇用は、大変なのですが、苦労しながらやって、
的に開催いたしましたところ、受付のほうでは165名も
それが定着できた職場というのは間違いなく結束力が生ま
の方々の参加を得たようでございます。大変感謝申し上げ
れます。
それに配慮の効いた暖かい職場になっていきます。
ます。
これも我々は経験して間違いなく言えることで、その様子
を見ていたら、他の職場の人も、うちも入れてあげようか
なというような感じになってきます。そういう意味でも最
初が肝心です。最初に失敗しないことが大事で、
いい人選、
いい支援者をつけてやっていくということが大事なんじゃ
ないかなと思います。何とか障害者と健常者がお互いに同
じ職場で共存できる、協働できる、そういった職場づくり
ができたら、みんな幸せなんじゃないかなと思います。是
非そういうふうに仕向けていければなと思っていますし、
これから悩むところがあったら、いろんな人に相談しなが
さて、本日の講座はいかがでしたでしょうか。
ら進めていきたいと思っています。
先ほど、TOHOシネマズ株式会社様、それから日本ゴ
ア株式会社様から障害者雇用の考え方、あるいは進め方、
その際の検討の視点とか、あるいは現場担当者としての留
意すべき事項等々、大変実地に則した有益な、それからこ
れはある面では重要かと思いますが、企業の論理に適った
取り組み事例を提示していただきました。
昨今の大変厳しい経済情勢の中におきまして、障害者雇
用を進めるにあたっては、さまざまな角度、立場からの検
討が必要になるかと思います。本日のご両社から提供して
いただいた内容、これはおそらくこれから障害者雇用を検
討しようとする会社の皆様にとっても、また障害者雇用の
幅を広げようと考えられている会社の皆様にとりまして
ちょっととりとめのない話になっちゃいました。ご清聴あ
も、大いに参考になったのではないかと思っている次第で
りがとうございました。
ございます。
岡谷 坂中様、どうもありがとうございます。非常に私
なお、参考までに私どものセンターにおきましても、障
も苦労しながらやったことを思い出しましたし、苦労しな
害者雇用の検討をしようとお考えの会社の皆さんに対しま
がらもいまは非常に幸せな関係になっているというのを聞
して、先ほど来、申し上げていますけれども、センターで
いて非常に嬉しく思いました。それで大分時間が押してい
の訓練見学会、あるいは会社の説明会をご案内しておりま
ますので、これだけは1つ聞いておきたいというものが何
す。また冒頭、所長からもお話がございましたように、
「求
かありましたら、1点だけ受け付けますのでよろしくお願
職情報一覧」
、こういったものも本日の配布資料にござい
いいたします。何か質問がある方は挙手よろしくお願いし
ますように用意しております。これらについての問い合わ
ます。
せは職業指導課で行っていますので、是非ともご利用いた
それではまたこの後、個々に情報交換していただくこと
だきますよう重ねてお願い申し上げます。
としまして、時間も来ましたので、これで講座3のほうを
最後に、本日の受講で得られました情報を基にご参集の
- 43 -
会社の皆様におかれましては、さらなる工夫を重ねていた
だき、一人でも多くの障害者の雇用、さらには職場定着、
こういったものの成果につながっていきますよう、強く念
願いたしまして、簡単でございますが、閉会の挨拶とさせ
ていただきます。
本日は誠にありがとうございました。
司会 以上をもちまして、平成23年度受入れ準備講座
を終了いたします。長時間にわたりご参加いただきありが
とうございました。お帰りの際に是非アンケートへのご協
力もお願いいたします。
- 終了 -
- 44 -
平成23年度受入れ準備講座参加者内訳
H23 年度講座参加者数及び内訳
参加企業数
昨年度参加企業数
参加者数
昨年度参加者数
(内昨年度参加)
(内一昨年度参加)
(内昨年度参加)
(内一昨年度参加)
事業所
114社(28社)
168社(31社)
144名(30名)
235名(37名)
関係機関
6機関(2機関)
17機関
8名(2名)
20名
就労機関※
11機関
13名
※なお、今年度就労機関(就労支援センター、就業・生活支援センター)100カ所に周知した。
H22年度以降は、受入れ人数の多い会場に変更して実施
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
業 種
建
設
業
製
造
業
情
報
運
通
信
輸
業
業
卸 売 ・ 小 売 業
金
融
業
飲 食 店 ・ 宿 泊 業
教育・ 学習支援業
サ
ー
ビ
ス
業
医 療 ・ 福 祉 業
そ
の
計
(無回答13名)
他
参加者数
7
24
13
2
8
7
1
2
28
8
12
112
%
6.3%
21.4%
11.6%
1.8%
7.1%
6.3%
0.9%
1.8%
25.0%
7.1%
10.7%
100.0%
- 45 -
受入れ準備講座参加申込書ミニアンケート集計結果
(参加申込企業148社)
Q障害者の雇用の現状についてお聞かせ下さい(複数回答)
100
90
80
70
60
企
業
数
50
40
雇用中
30
検討中
20
10
0
雇用中
検討中
肢体
車イス
聴覚
視覚
知的
精神
発達
94
38
35
14
66
18
45
12
49
16
56
13
18
15
障害別
Q在 宅 就 労 で 可 能 と 思 わ れ る職 種 は
あ り ま すか ?
Q今 後 の 採 用 の 広 げ方 と し て の お考 え は ?
100
90
120
108
88
100
80
70
80
60
企
業 50
数
企
業
数
40
60
35
30
30
40
20
20
17
10
0
0
本社
一部の支社
全国支社
ある*
ない
*職種:事務・データ入力・電話代行、WEB制作、図面ト
レース・設計、システムエンジニア等
- 46 -
H23年度「受入れ準備講座」アンケート結果
(回答125名)
●アンケート回収率
回答
無回答
アンケート回収率
実数
%
125
76%
39
24%
無回答
24%
※複数名参加している事業所等の場合、1名
のみが回答していることも考えられる
回答
76%
●受入準備講座について
実数
時間は
短い
2
96 77%
長い
23 18%
4
120
2%
丁度良い
記入なし
時間について
%
96
100
4%
80
人
数
60
40
23
今後の採用にむけて
20
2
0
短い
実数
内容は
大いに役に立った
70
役に立った
47 38%
60
あまり役に立たなかった
記入なし
6
5%
50
1%
40
13 10%
30
1
長い
内容について
%
46 37%
普通
丁度良い
59
46
人
20数
6
10
1
0
大いに役立った
- 47 -
役に立った
普通
あまり役に立たなかった
●興味を持った講座(複数回答)
興味をもった講座
講座1
76
講座2
66
講座3
80
70
記入なし
13
60
90
80
76
80
66
人 50
数
40
30
20
10
0
講座1
125
講座2
講座3
125
250
●今後の採用について
今後の採用にむけて
実数
%
具体的に受け入れの部
署が検討できる
34 27%
検討してみたい
59 47%
現時点では難しい
記入なし
9
具体的に受け
入れ部署が検
討できる, 34
記入なし, 23
7%
23 18%
現時点では難
しい, 9
検討してみた
い, 59
●検討できる障害種別(複数回答)
検討できる障害種別
肢体
67
車イス
36
聴覚
46
視覚
21
知的
34
80
70
67
60
46
50
人
数
36
40
34
30
精神
30
発達
26
30
26
21
20
10
0
肢体
- 48 -
車イス
聴覚
視覚
知的
精神
発達
各講座等へのコメント
講座1『障害とその配慮事項、職業訓練の成果と職業能力についての発表』
<当事者の発表について>
●実際に訓練の方々の声を聞かせていただく貴重な時間でした。ありがとうございました。
●障害の特徴や、担当できる仕事内容などが理解できました。
●いろいろな障害について理解を深めることができました。
●それぞれの特徴が理解できました。
●実際に障害をお持ちの方の発表で、健常者との違いもなく、たびたび驚きました。
●ご本人からのお話はとても障害を理解する上で参考になりました。
●各障害について盲点だったこともあり、大変勉強になりました。
●当人の生の声が聞け、良かった。
●非常に分かりやすかったです。
●立派な発表ありがとうございます。
●具体的な注意点がわかり有意義でした。
●各障害のある方々が自ら発表された事にとても感銘を受けました。
●身体的な障害の内容等を理解することができました。
●実際に訓練されている方の話が聞けて勉強になった。能力が高いと改めて感じました。
●知らないことが学べて良かった。
●知的障害・精神障害の当事者からも話を聞きたかった。
●障害を持たれた方々に対する認識が変わりました。十分社会に通用すると感じました。
●訓練生の企業へのアピールの場に見えました。
●ご本人からの発信は、支援者からの発信よりも影響が大きく、効果がより大きいのではないかと思います。
●どのような配慮が必要なのか、具体的にわかり、今後に役立てられます。
●障害をお持ちの本人の話はとても貴重でした。
●発表する訓練生のレベルが高く驚きました。この企画に職業訓練をしている所の見学を取り入れるともっと良いと思
いました。
●障害のある本人の声を聴けたのは、大変参考になりました。
●障害のある本人達の意見は非常に参考になります。知的障害の方の意見も聞いてみたい。
●障害のある本人からの意見が聞けて、大変有意義でした。
●障害のある方々が明るく、明解に発表された内容に感動しました。
●やはり、障害者自身の発表というのは説得力があり、大変参考になりました。
●当事者の話は非常に参考になりました。
<視覚障害訓練生の発表について>
●視覚障害の方の能力の高さに驚かされた。
●視覚障害の講座が興味深かった(実際に読み上げソフト操作ビデオを見ることができたので)
。
●視覚障害の平野さんの機器を活用したデモの様子が見られたことが良かったです。
<肢体(車イス)訓練生の発表について>
●車イス訓練生の千葉さんの発表が分かりやすかったです。
●肢体不自由者の講座が興味深かった(細かく障害内容を説明していたため)
。
●肢体不自由者の苦労が生々しく理解ができたこと。
●肢体不自由の障害について認識がなかった部分があったので、特に勉強になりました。
<高次脳機能障害訓練生の発表について>
●高次脳機能障害の社員は、当社でも管理職として立派に働いております。まだまだ決して知られている障害ではない
はずです。むしろ企業が注目している障害です。
- 49 -
●高次脳機能障害について勉強になりました。
●高次脳機能障害について聞きたかったので、それが良かった。
●高次脳機能障害について、より知りたいと思いました。
<発達障害訓練生の発表について>
●訓練開始直後の発達障害の方の発表は理路整然として良く分かりました。
●発達障害について知ることができたので良かったです。
<精神障害者訓練生の当日発表中止について>
●精神障害について聞けなかったのは非常に残念でした。
●精神障害の方のお話も聴きたかったです。
●精神障害の方の話が聞けなかったのは残念でした。資料だけもあればよかったです。
●精神障害の方のお話が一番聴きたかったので、残念でした。
●精神障害の方の応募が増えており、是非発表を聞きたかった。
講座2 『障がい者雇用への取り組み』(TOHOシネマズ株式会社)
<スピーディーな取組み方について>
●たった数年で多くの障害者を雇用するに至ったことは、非常に参考になりました。
●雇用にすごいスピードで結びつけたことに感銘しました。
<時系列的な説明について>
●取組みの段階が順を追って、とてもよく理解できました。
●行政指導を受けてからの取組みが具体的に語られて大変参考になった。
●時系列的で分かりやすかった。障害者はアルバイト雇用なのでしょうか。
<社内での取組み方等について>
●社内横展開の可能性に希望が見えました。
●具体的な取組みについて説明があり、とても参考になりました。
●戦略的な取組み、特に社員へのアプローチは新鮮でした。
●各職場の巻き込み方が勉強になった。
●個性・特性を活かした職域開発を通じて、雇用の確保の仕方、社内への啓蒙、社員の誇りなど一連のサイクルは、大
変見習うべきものでした。アルバイトとしてのステップとしての考え方も気づきとなりました。ありがとうございま
した。
●社内の意識の共有の進め方が参考になりました。
●取組みの真剣さが大切であることがわかりました。
●弊社は、TOHOシネマズと業種は違いますが、取組み内容・方法に似たものが多くあり、とても参考になりました。
●短時間勤務の方が多く、はたして障害者のためになっているのか多少疑問が残った。
●行政指導の後、積極的な障害者雇用を進めたお話を聞きましたが、そこまでの経緯を教えてほしかった。
●業種的に障害者雇用の促進に向く、向かないものがありますが、うらやましいですね。
●採用された障害のある方々の声を拝聴したかった。長期雇用するにはどうすれば良いか。
<障害種別に偏らない雇用について>
●多様な障害種類を雇用できていることについて、参考になりました。
●障害種別のバランスがよい会社は少ないので、とても参考になるのではないでしょうか。
●特定の障害種別に偏らず、幅広い、職種が提供されている事は参考にしたい。
<障害者雇用の効果について>
●障害者雇用がもたらされた効果は、他の企業にとってもメリットになると思うので、これをきっかけに採用を検討す
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る企業が増えると良いと思う。
●障害者雇用の効果の説明を聞き、改めて意義を感じることができた。
●最終的に、企業としての「ロイヤリティ」が高まったことについては共感が持てた。
講座3 『発達障がい者の受け入れについて』(日本ゴア株式会社)
<障害者に仕事を合わせる取組みについて>
●仕事ではなく、人に合わせて仕事と環境を変えていく対応に障害者雇用の原点を見た思いです。事前の準備に具体的
で受入れのイメージが抱きやすかったです。就職後の職リハセンターの支援も心強いシステムです。感銘を受けまし
た。
●「本人に仕事を合わせる」難しいが重要なことを感じました。
●仕事に人を合わせるのではなく、人に仕事を合わせるという価値観に目からウロコが落ちる思いでした。
<職場での根気強い取組み等について>
●社員の方々の根気強さに心を打たれました。
●発表者坂中さんの苦労がよくわかりました。
●現場のご苦労と辛抱の重要性を感じ、しかし、その中に、得るものが大きいことを感じました。
●御苦労されながら取組まれている様子がよく分かりました。
●大変参考になりました。注意点もわかりやすく、ありがとうございます。
●障害のある方と共に働くことの良さや難しさをとてもわかりやすく、お話して頂けたと思います。
●社内の意識の共有の進め方が参考になりました。
●障害者受入支援の詳細が役立ちました。
●時系列にお話しして頂いて、非常に理解できました。協力者がいないと難しいですね。
●講座3はご自身の経験や思いを語る面もあり、講座2とはまた違った色の内容で良かったです。
●資料が細かく、もう少し時間があれば分かりやすかった。
●型通りの発表ではない本音、自然流の説明で、教わること大でした。
<吉備リハとの連携について>
●吉備リハの有効活用、坂中様の取り組みのプロセスが丁寧であり、とても参考になりました。一緒に取り組んだ他の
社員さんたちも根気強く、対象者の方の長所に着目し続けたのだと思います。
●事例でももう少し短く、吉備リハとの事まとめの部分をもっとゆっくり聞きたかったです。必要なのは健常者と障害
者が仕事を分かち合おうとする姿勢、すごく重要と感じました。
●弊社も今後、職リハセンター様と連携しながら、雇用を促進していきたい。
<発達障害者の特性に応じた支援について>
●当社の発達障害者への配慮を最近忘れかけていたことを気づかされました。
●発達障害者の方への具体的な支援や企業側の配慮を聞くことができ、非常に参考になった。
●発達障害の方を今後受け入れる予定なので、大変参考になりました。
●発達障害者の雇用について、留意点がよく理解できました。
●発達障害者の受入に注目されている実態がよく理解できました。
●現在1名の発達障害者の育成で困っていますが、本日のゴアさんの話は参考になりました。
<失敗事例も含めた具体的事例の紹介について>
●失敗事例の紹介もあり、「企業の本音」を話してくれたことが良かった。
●失敗も成功もお話いただき、現場の協力経営陣の理解を得るための真剣な取り組み、考え方に刺激を受けました。あ
りがとうございました。
●具体的事例が参考になりました。
●実際の事例の紹介が大変参考になりました。
●具体的な受入の実例を伺って、大変興味深く感じた。
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●豊富な事例のドキュメントが大変参考になりました。
●実践事例で色々な過程があり、大変な面もあったと思うが、その分周りの信頼、定着につながったんだなと思いまし
た。
●細かく聞けて良かった。多数の方の事例を聞きたかった(発達障害は複雑なため)
。
●実際の様子が全く想像できなかったので、事例を聞けて良かったです。
●生々しいやりとりが、当院の取組みに近く、親近感が沸いた。
<同業種等での取組みについて>
●同業種の話だったので、参考になりました。
●製造業での受入ノウハウ、大変参考になりました。
●同じ外資系メーカーということでとても勉強になった。
●弊社と採用状況が似ておりましたので、職場のマッチングに関して参考になりました。
取り上げてほしい話題・問題や感じていることなど
<失敗事例と改善方法について>
●本日の2社様のような事例、失敗からの改善事例を希望します。
●成功例だけでなく、就労が続かなかった事例(何が問題だったのか、何を改善すべき)も聞きたい。
●「いい話」を聞く機会が多いので、むしろ今日のような忌憚のない問題提起・本音の話を望みます。
●障害者雇用における具体的な「失敗事例」
、また失敗を繰り返さないための取組み方など、より現場で役立てられる
ような情報が聴けると嬉しいです。
<障害特性別の支援方法等>
●受入部署の発掘についての具体例があれば、ご教示願いたい。
●精神障害者との接し方について取り上げてほしい。
●精神障害について、関心が高かったため、今回の中止は誠に残念です。次回は是非静聴したいと思います。
●精神障害者の雇用上の留意点を取り上げてほしい。
●精神障害の方の障害受容について取り上げてほしい。
●今回、精神障害について聞けなかった事が残念です。
●休職・復職の判断について取り上げてほしい。
●高次脳機能障害・聴覚障害について取り上げてほしい。
●発達障害を取り上げてほしい。
●発達障害の話は大変参考になりました。
●視覚障害者の方がどの位の(Excel)データ量で扱えるか、知りたいです。
<その他取り上げてほしい話題>
●障害者に対するメンタルヘルスケアについて取り上げてほしい。
●特に地方での職場の理解や雇用率1.8%達成後の活動や、退職率を減らすために何をすれば良いか、取り上げてほ
しい。
●在宅就労勤務について取り上げてほしい。
●職業指導の観点・企業が求めるパソコンスキルのレベルについて取り上げてほしい。
<担当者として苦慮していることや日頃感じていること>
●勤務場所が病院であり、数々の制約があり、対応に苦慮しています。
●(当社の課題・悩んでいる点)業務の切り出し、入所後のフォロー体制、定着率。そもそも障害者の応募が少ないで
す。
●車椅子使用の方は、設備の問題で、雇用が難しいと感じています。
●受け入れてほしい職場における理解が得られにくい。
●特にシステム開発部門の職域の切り出しの困難さを感じています。
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●人員削減施策と障害者雇用の両立について考えています。
●障害者雇用はしているものの、なかなか永続性がなく、突然の退職が多く、なかなか法定雇用率の達成が困難です。
<感想等>
●現在、身体障害の方のみの採用となっているため、今後は知的障害、精神障害の方の採用にも前向きに取り組んでい
こうと思いました。参考になりました。ありがとうございました。
●障害者雇用は大変ではなく、明るく楽しいことです。精神障害・発達障害の雇用事例で、当社(特例子会社)がお手
伝いできることがあればとも思います。今日はありがとうございました。
●非常に参考になりました。ありがとうございます。
●本日はありがとうございました。
●それぞれの障害について、どういう訓練をしているか、職場の配慮等を具体的に知りたかったので良かった。
●雇用担当者の姿勢の持ち方が大切だと感じています。
●講座1のパワーポイントチャート、ビデオをお借りできないでしょうか?社内で皆にシェアしたいと思います。あり
がとうございました。
※ビデオ利用は、国立職リハセンター内のみとなっております。ご了承下さい
その他;進行・会場設備等へのご意見
<内容への感想・改善点について>
●国立職リハが企業向けに行っているサービス概要の説明を聞きたい。
●後半(講座2・3)は大変参考になりました。
●大変有意義でした。発表する企業は、従業員100名位規模で障害者雇用をしている会社の話を聞きたいです。
●訓練施設・訓練場面の見学があると良いです。
●内容のポイントがまとまっていないように感じました。
●可能であれば、聴覚障害者及び本日中止になった精神障害者の方の話も聞きたかった。
●精神障害の方のお話を聞くことができなくて残念でした。お大事にしてください。
<進行・時間設定等について>
●質問する時間をもう少しとって頂ければと思います。
●今後受け入れるにあたり、具体的な質問をしたかったが、時間がなかったのが残念でした。
●質疑応答時間がもう少しあれば、尚良かった。
●(進行について)予定時間はよいが、プログラム通りに進んでほしい。障害のある当事者の発表は時間通りだったの
で、後半の企業の発表でも時間配分は守ってほしい。
●(進行について)遠方から来ているので、終了時間を早めて頂きたかった。
●3時間半は少し長いように感じました。もう少しコンパクトにまとめて頂けるとありがたいです。
●時間配分で、講座2・3を長めにしてほしかった。
●少し時間が足りなくなってしまったのではと感じます。
●第2部の受け入れについての説明が少々長く感じました。
●少し時間が長いように感じました。ただ、これだけの内容を盛り込むには仕方ないのかなとも思います。
●内容が非常に濃いため、休憩を2回入れてほしい。
●休憩の回数が少なすぎるように感じました。
●大変ためになりました。
<会場について>
●もう少し会場が暖かいと良いなと思いました。
<資料等について>
●未発表の方(精神障害)の資料も掲載して頂きたかった。
●講座1で当日欠席者が出たのはやむを得ないが、当日の資料もないのは理解に苦しむ。
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●パワーポイントの字が小さいように思いました(仕方のないことだと思いますが、大きいと良いなと)
。
以上のような意見・感想を頂いております。
今後の改善するための参考にしていただきたいと思います。ご参加してのご意見誠にありがとうございます。
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平成 23 年度 受入れ準備講座 報告書
編集・発行
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
国立職業リハビリテーションセンター
〒359-0042
埼玉県所沢市並木4-2
TEL
04-2995-1207(職業指導課)
FAX
04-2995-1277(職業指導課)
発行日 2012 年3月
印刷・製本
株式会社タマタイプ
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