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子どもの事故の傾向と予防について

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子どもの事故の傾向と予防について
子どもの事故の傾向と予防について
~ 平成26年度意識調査を中心としたまとめ ~
平 成 2 7 年 9 月
御 坊 保 健 所
【全国の状況】
1
全国的に不慮の事故による子どもの死亡は多いのです(表1)
全国的に不慮の事故による子どもの死亡は多いのです(表1)。
平成25年の死因順位(表1)は、学童期では死因順位の第1位であり、幼児期は第2位では
あるものの、死亡数の多くを占めていることから、子どもの事故予防を推進していくことは、子
どもの健全育成を考えるうえでも重要なことです。
表1
年齢階級別にみた死因順位(平成25年:全国)
年齢
第1位
第2位
第3位
第4位
第5位
0歳
死亡数
死亡率
(割合)
1-4歳
死亡数
死亡率
(割合)
5-9歳
死亡数
死亡率
(割合)
先天奇形等
811
78.8
37.1
先天奇形等
142
3.4
18.4
呼吸障害等
308
29.9
14.1
不慮の事故
109
2.6
14.1
乳幼児突然死症候群
不慮の事故
89
8.6
4.1
肺炎
54
1.3
7
心疾患
22
0.4
4.9
出血性障害等
76
7.4
3.5
心疾患
52
1.3
6.7
肺炎、先天奇形等
20
0.4
4.4
124
12
5.7
悪性新生物
83
2
10.7
その他の新生物
35
0.7
7.7
悪性新生物、不慮の事故
106
2
23.4
※死因順位は死亡数の多いものから定めた。死亡数が同数の場合は、同一順位に死因名を列記し、次位を空欄とした。
※0歳の死亡率は出生 10 万対の率である。
2
年齢によって不慮の事故死の種類はちがうのです(図1)
。
年齢によって不慮の事故死の種類はちがうのです
子どもの事故の種類や起こり方は心身の発育発達段階と深く関わっているので、子どもの年齢
によりどのような事故につながりやすいかが異なります。
図1
年齢階級別、不慮の事故の死因別、死亡数及び割合(平成25年:全国の状況)
その他
3%
交通事故
8%
転倒・転落
1%
火炎
5%
溺死・溺水
5%
窒息
26%
0 歳児
0歳児
窒息
83%
窒息
7%
5~9
歳児
交通事故
29%
1~4
歳児
転倒・転落
5%
溺死・溺水
25%
火炎 その他
5%
4%
溺死・溺水
27%
その他
10%
交通事故
50%
転倒・転落
7%
-1-
1)0歳児
寝ていることの多い0歳児は、吐物や異物などが気道を閉塞して生じる機械的窒息が多く、乳
児の事故死の83%を占めています(図1)。
乳児期前半では、母乳やミルク、また離乳食などを吐いた時に気道を詰まらせたり、柔らかい
敷き布団の上にうつ伏せに寝てかせていて、また掛け布団をかけ過ぎて鼻と口が塞がれたりしま
す。さらに何でも口の中に入れたがる乳児期後半になると、ナッツ類やアメ、おもちゃなど小さ
な物を自分でつまんで口に入れ、気道を詰まらせたりします。
2)1~4歳児
危険な状況を十分には理解できないにもかかわらず、行動範囲が次第に広がっていく1~4歳
児は、交通事故、溺死・溺水が多く、これらが事故死の半数以上を占めています(図1)。
交通事故死のほとんどは自動車事故です。低年齢児では、子どもにあったシートベルト未着用
のまま発生する乗車中の事故死、また年齢とともに、自動車にはねられる事故死が比較的多くな
ります。
溺死は1歳以降に多く、その約80%は家庭の浴槽の中で発生しています。その他、洗面器、
水槽、バケツ、ビニールプールなど少量の水でも思いもよらぬところで溺水事故は起きています。
3)5~9歳児
幼稚園や小学校に通園・通学する5~9歳児は、自動車による交通事故が多く、この年齢階級
の事故死の約半数を占めています(図1)。
幼児は遊んでいる中での、そして小学校低学年児童は、下校中での自動車事故死が比較的多い
のです。外で遊んでいてボールや他の子どもを追いかけて急に飛び出したり、下校時の他、買物
や外出時に車の直前・直後の横断をして発生することが多くなります。
次に多い溺死は、海、川、プールなどに転落して、または水泳中に発生しています。
【御坊保健所管内の状況】
3 御坊保健所管内の不慮の事故の状況
図2 平成5~25年の御坊保健所管内0~9歳の不慮の事故死の状況(単位:人)
その他
17%
管内においても、子ども(0~9歳)の不慮の事故死は、平成
5年~25年までの21年間で12人あります。最近の事故死
では、平成25年に窒息が1人ありました。(図2・表2)。
交通事故
25%
有害物質
8%
転倒・転
落
0%
火災
0%
窒息
17%
表2
溺死・溺水
33%
御坊保健所管内の不慮の事故死の推移 (単位:人)
H5
交通事故
H6
H7
H8
H9
1
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
1
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
1
3
転倒・転落
溺死・溺水
0
1
1
窒息
1
1
1
その他
4
1
火災
有害物質
計
2
0
1
1
2
2
※空欄は該当なし
-2-
4
御坊保健所管内の調査結果の状況
表3
事故原因別発生件数
チェックリスト
外傷
回収件数
図3 健診別事故経験有の推移(単位:%)
や け
誤飲
交通
そ の
ど
(たばこ)
事故
他
不明
合計
12
(延)
10
H20
1,522
46
16
5 (2)
6
9
10
92
H21
1,492
63
14
1 (0)
4
17
3
102
H22
1,460
45
10
2 (1)
2
8
5
72
H23
1,474
45
13
1 (0)
8
7
1
75
4
H24
1,465
49
13
4 (1)
3
12
4
84
2
H25
1,421
59
10
8 (1)
2
9
3
91
0
8
6
H26
1,378
37
6
2(0)
2
7
10
64
10.3 10.6
10.4
8.7
10.4 8.68.2 7.9
7.7
7.4
6.9
7.6
6.6
6.9
7.5
7
6.9
6.3
6.2 6.2
6
4.3
0.6
1
2.6
1.4
0.6
0
1.1
0
H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26
4ヵ月児
※外傷:転落・転倒の合計数
1.6 1.8
1
1歳6ヵ月児
3歳児
管内6市町の協力を頂き、4か月児・1歳6か月児・3歳児健診対象の保護者に事故経験の調査を
盛り込んだ安全チェックリストを事前に郵送し、健診当日回収しています。事故経験のある子ども※は、
平成 26 年度では、チェックリスト回収総数 1,378 件のうち 64 件(4.6 %)でした(表3)。事故経験
有の割合は、1歳6か月児・3歳児健診では減少し、4か月児健診では増加していました(図3)。
※
4か月児は生後から、1歳6か月児は4か月健診受診以降、3歳児は1歳6か月健診受診以降にお
いて、医師にかかるほどの事故の経験を調査しています。
図4
平成26年度事故発生時の月齢(単位:全健診対象児の事故経験の合計件数)
件 数
16
医療機関にかかる程の
事故の発生状況では、子
どもの年齢 12 ~ 17 か月
児が 14 件(24.1%)と最多
で、次いで 0 ~ 5 か月児
の 9 件(15.5%)、24 ~ 29
か月児と 36 か月児以上
の 8 件(13.8%)、18 ~ 23
か月児の 6 件(10.3 %)の
順でした(図4)。
14
12
10
8
6
4
2
0
0~5
6~11 12~17 18~23 24~29 30~35 36以上
月 齢
-3-
不明
図5
平成26年度事故種類別年齢別状況(単位:全健診対象児の合計件数)
件 数
転 落 、転 倒 に よ る 事故 件 数
は、合わせて 37 件(63.8 %)
と多く、12 ~ 17 か月児で1つ
の ピ ー クが み ら れ ま した 。 12
~ 17 か月児以降では、階段や
ベ ッ ド 、す べ り 台 な どの 遊 具
か ら の 転落 事 故 が 多 いで す 。
同様にやけどによる事故も 12
~ 17 か月児が多く計 2 件(3.4
% ) あ りま し た 。 誤 飲、 交 通
事故もともに計 2 件でした(図
5)。
7
6
5
4
3
2
1
0
0~5
6~11
1転落
4窒息
7交通事故
図6
12~17 18~23
2転倒
5やけど
24~29 30~35
3誤飲
6溺水
36以上
月 齢
平成26年度誤飲の原因(単位:健診対象児別の合計件数)
誤飲事故は、平成24年度
は4件、平成25年度は8件、
平成26年度は2件でした
(図6)。
1歳6か月児健診の誤飲
原因の推移をみると、8件
から2件に減少しています
(図7)。3歳児健診の誤
飲原因の推移は、平成25年
度と同様に0件でした(図
8)。
8
7
2
6
5
4
5
3
2
1
2
1
0
0
H25
件 数
0
H26
4ヵ月児健診
0
H25
1歳6ヵ月児健診
タバコ
図7
0
H26
H25
その他
3歳児健診
不明
1歳6ヵ月児健診 誤飲原因の推移
(単位:健診対象児別の合計件数)
図8
件 数
5
たばこ
その他
たばこ
3
2
2
2
1
0
その他
不明
4
3
0
不明
4
3
1
3歳児健診 誤飲原因の推移
(単位:健診対象児別の合計件数)
件 数
5
5
4
0
H26
1
0
0
0
3
1
1
0
0
0
2
2
1
1
0
2
0
H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26
-4-
2
2
2
1
1
1
1
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26
また、たばこによる誤飲事故の減少傾向について評価するため、管内におけるたばこの誤飲事故に
よる病院受診の実態把握を国保日高総合病院へ依頼し調査しました。その結果は、チェックリストか
ら把握できた件数と異なり、チェックリスト把握件数以上に誤飲事故が発生していました(表4)。
事故発生月齢は6か月~11か月が最多であり、次いで12か月~17か月で多く発生していました。
表4
たばこの誤飲事故による受診件数
管内基幹病院受診件
チェックリスト把握件
H19
11
0
H20
15
2
H21
6
0
H22
9
1
図9 平成26年度心肺蘇生法を知っている親の割合
(単位:% 健診対象児別数の割合)
H23
6
0
H24
9
1
H25
9
1
H26
6
0
図10 心肺蘇生法を知っている親の割合の推移
(単位:%)
100
4ヵ月児健診
74.9
25.1
知っている
1歳6ヵ月児健診
76.7
3歳児健診
23.3
75.6
全体
20%
40%
知っている
46.2
48.7
43.2
45.8
43.2
24.3
60%
80%
56.8 56.8
51.3
60.9 61.7 64.3 67.8
71.3
75.7
70.8
67.9
% 50
24.4
75.7
0%
53.8 54.2
知らない
100%
32.1
39.1
38.3
35.7
29.2
32.2
28.7
24.3
0
H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26
知らない
保護者の7割以上は、心肺蘇生法を知っていると答えています(図9)。心肺蘇生法を「知っている」
と答えた保護者は、年々わずかながら増加傾向を示しています(図10)。
-5-
図11
平成26年度事故防止対策に問題あり(ときどきありも含む)の割合(単位:%健診対象児別数の割合)
チェックリスト項目
子どもだけにして留守にしない
ソファーやベッド等高いところでは目を離さない
階段・段差対策
ベランダに踏み台
コイン・ボタン等小さな物で遊ばせる
ピーナッツ、アメ等食べさせる
薬、たばこ等手の届かないところにおく
ビニール袋・ラップ等手の届かないところにおく
熱いものを手の届かないところにおく
暖房器具の安全策
浴槽等に水をためない
浴室に鍵等入らない対策
日頃から交通安全教育をしている
自動車に子どもを放置しない
4ヵ月
チャイルドシート使用
1.6歳
3歳
心肺蘇生法を知っている
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
これらは保護者の事故予防対策に問題がある割合を示しています。
「コイン・ボタン等小さな物で遊ばせない」「ピーナッツ、アメ等食べさせる」「熱いものを手の届
かないところにおく」等は、年齢が高くなるほど、事故防止対策に問題がある割合が高くなっていま
す。特に「ピーナッツ、アメ等食べさせる」は1歳6か月児の約 27 %、3歳児の約 85 %が「はい」
または「ときどき」と答えています。
「階段・段差対策」「浴室に鍵等入らない対策」は、1歳6か月児で 35 %に問題がありました。ま
た、「チャイルドシート使用」は年齢が高くなるほど問題がある割合が増え3歳児では約 15 %に問題
があり、「心配蘇生法を知っている」は4か月児・1歳6か月児・3歳児のすべての時期で約 25 %に
問題がありました(図11)。
-6-
5 御坊保健所管内のチャイルドシートの使用状況
チャイルドシートは道路交通法改正により平成 12 年4月より6歳未満の幼児を対象に着用が義務付
けられました。運転者は、チャイルドシートを使用しない幼児(6歳未満)を乗車させて自動車を運
転してはいけません。違反した場合は、幼児用補助装置義務違反として、1点の点数が付されます。
(罰則、反則金はありません)
全国のチャイルドシート使用率(平成 27 年の警視庁・JAF 調査)は、1歳未満 85.2%、1~4歳 64.4%、
5歳 38.1 %でした。それに対して、県内のチャイルドシートの使用率(6歳未満全体)は、67.0%と
全国の使用率 62.7 %と比べ高い結果でした。
御坊保健所管内の安全チェックリストの意識調査で「チャイルドシートを使用していますか」に「は
い」と答えた保護者は、4か月児 97.3%、1歳6か月児 93.6%、3歳児 83.6%でした(図12)。
図12
チャイルドシート使用率の推移(単位:%健診対象児別数の割合)
(御坊保健所)
チャイルドシートの着
用が義務付けられる
100
92.8
93
91.5 92.4 92.6
82.7
69.3
67.2
61.5
73.3
94.9 94.2 96.7 96.8 96.7 97.4 97.3
94.9
94.7 91.9 91.8 92.4
79.8
75
91.4 91.8
85.8 88.6
88.3
78.9 79.1
91.1
82.7
79.1
72.2
67.6 68.6
94
78.8
92.5
81
97.6
92.8 93.6 94
86.4
83.6 83.5
69.9 71.3
% 50
25
24.8
19.4
0
H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26
年度
4か月児健診
1歳6か月児健診
-7-
3歳児健診
6
個票からのまとめ
安全チェックリストより事故経験があり、事故詳細の聞き取り調査に了解が得られた保護者に対し
て、管内市町の保健師の協力を得て乳幼児健診時に個票を使用し調査を行いました。、平成 26 年7月
から平成 27 年6月末までに 52 件の報告があり、事故種類別にみると、転倒による事故が 17 件と最多
であり、次いで転落による事故で 15 件でした(図13)。
事故が起こった場所は、屋内で 40 件あり、そのうち自宅で起こっている事故が 30 件と多く、なか
でも、居間が最多でした。自宅以外の場所では、祖父母や友人宅、飲食店内などでした。また、屋外
で起こった事故は 13 件あり、自宅の玄関先や駐車場、自宅近くの道路や公園などでした。事故の発見
者は、母親が最多(26 件:50 %)で続いて父親(7 件:14 %)、祖父や祖母、兄姉などでした(図1
4)。
事故が起こった時の状況は、母親が家事をしていたり、家族や友人との会話中やうたた寝中などで
少し目を離した隙に起こったり、兄弟のみで遊んでいる時や公園などで遊んでいて保護者の目や手の
届かないところで起こっていました。
【事故事例抜粋】
・ 父と留守番している時、父がうたた寝し、児が高い所にあったタバコをつかんで誤飲し、帰宅し
た母が発見した。
・祖母が家事をしている間に、児が祖父の血圧と糖尿の薬を合計12錠出してかんで食べていたのを
祖母が発見した。
・母が家事をしている時に、兄(3歳4か月)がふすまを閉めて、左手第4指を裂傷し、爪がはがれ
た。
・母が台所で洗い物をしている時、リビングで転び、棚の角で左まゆの上を切傷し、受診した。3日
テープ固 定していたが、開いてきたので、後日3針縫った。
・ 母が台所で後片付けをしており、児から少し離れていた時、台所の椅子に立っていて、後頭部より
後 ろ向きに転落した。
図13
事故種類別年齢別状況
図14
事故の発見者状況
18
16
14
兄弟と他家
族
8%
1
3
4
その他
6%
父
13%
12
2
10
3
8
3
6
2
4
2
2
3
2
1
2
2
4
3
5
3
1
1
0
転落
転倒
0~5
12~17
1
1
誤飲
窒息
18~23
やけど
24~29
1
1
1
1
1
溺水
30~35
交通事故
36~
その他
6~11
-8-
祖父母
12%
両親
11%
母
50%
【事故予防対策】
7
事故予防の対策(特に気をつけて欲しいこと!)
【転落・転倒】
幼いほど体の重心が高くバランスを失い転倒しやすいです。ハイハイを始めたり、つかまり立ちや
一人歩きを始めるようになると、特に注意が必要です。
平成 26 年度、管内で起こった 64 件の事故のうち最も多く発生した事故は、転倒による事故で 20 件、
次いで転落による事故は 17 件ありました。年齢別には、一人歩きが可能になる 12 ~ 17 か月児から 24
~ 29 か月児に多く、階段や段差、ベッドからの転落事故が目立ちます。また、年齢が大きくなると公
園の遊具からの転落やお風呂場での転倒がありました。事故発生時の周りの状況としては、母が家事
をしたりなどで少し目を離した隙や、子どもたちだけでいた時などに事故が起こっていました。
安全チェックリストより「階段・段差対策」に問題ありの割合は、4か月児では 38 %、1歳6か月
児では 35 %と予防対策が取られていない割合が高かったです。管内で起こった事故の大半は軽い事故
で済んでいますが、中には、椅子から転落し後頭部を打って一時意識を失くした事故もありました。
家具やコンクリート、ガラスなどに頭をぶつけると大事故につながります。しかし、最近では、テレ
ビボードの高さが低かったり角がコーティングされていないものもあるため、転倒した際にその角で
打撲や切創などが多く起こっています。テーブルや家具のコーナーにはクッションテープ等でガード
する、階段の上り口には柵を付ける、上り下りの時には親が手の届く位置で下側を歩く、「少しの時
間だけだから大丈夫」というのではなく常にドアや窓をきちんと閉める必要があります。また、ベラ
ンダや窓際には、ソファーやテーブル、植木鉢、古新聞の束などの踏み台になりそうな物を置かない
ように注意が必要です。
【誤飲・窒息事故】
子どもは発達過程において、食べ物以外でも身の回りの物を何でも口に入れる時期があります。そ
のため、誤飲事故は生後5~6か月を過ぎると増加します。布団やコードなど「こんなものが?」と
思うようなものでも誤飲や窒息の事故が起こることがあるので注意が必要です。
全国的にみて、不慮の事故による死亡者数は、減少傾向の交通事故に代わり、窒息事故が平成 18 年
度以降、最も多くなっています。窒息事故の死亡者は、高齢者が大半を占めますが、乳幼児も毎年 20
人以上が亡くなっています。
また、厚生労働省「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」より、小児の誤飲原因で最も多
いのは、たばこによる事故です。同省が 1979 年にこの報告を始めて以来、変わっていません。灰皿代
わりに使った空き缶に残った液を飲んでしまうと、乾いたたばこよりも吸収が速く危険であることか
ら、飲料の空き缶やペットボトルを灰皿代わりに使うなどのまぎらわしい使い方は避け、たばこや灰
皿は絶対に乳幼児のいる環境からなくしましょう。
平成 2 6年度の管内の誤飲事故は、安全チェックリストから2件、事故個票から2件(内1件は父
うたた寝中に高い所に置いていたたばこを誤飲)の報告がありました。平成 26 年度のたばこの誤飲に
よる日高病院の受診件数は6件でした。誤飲すると中毒や消化器の異常、窒息につながり、一歩間違
えれば生命に関わる危険性があり、胃洗浄や内視鏡での異物除去など子どもにとって負担の大きい治
療方法がとられる場合があります。
安全チェックリストの集計結果から、「ピーナッツ、アメ等食べさせる」に「はい」または「とき
どき」と回答した1歳6か月児は 27 %、3歳児においては 85 %ありました。特にピーナッツのよう
な豆類は、喉や気管の中に入ると水分を吸収し、大きくなって取れにくくなるので特に危険で、肺に
入ると重篤な肺炎を起こす事もあります。予防のため3歳まではピーナッツ等の豆類などの入ったせ
んべいやチョコレートにも注意し、特に振動の多い車や電車の中では絶対に食べさせないようにしま
しょう。アメなども同様に食べさせないか、食べる時は座って動かない状態で食べるようにしましょ
う。
また最近では、白玉団子やスーパーボールによる窒息事故がありました。小さなおもちゃや一口サ
イズのカップ入りゼリー、ご飯、ナッツ類等、窒息の原因食品は多岐にわたっています。食べ物は食
べやすい大きさにし、よく噛んで食べるよう声掛けするなど注意しましょう。また、「ベビー用おや
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つ」などの表示されている月齢は目安であるため表示のみを参考にするのではなく、子どもの様子を
見て食べさせるようにしましょう。
【やけど】
子どもは、大人よりも皮膚が薄く体の表面積も小さいため、大きなやけどを負ってしまう危険性が
高いです。食事中に、熱い食べ物や飲み物に手を突っ込んだり、食器をひっくり返すことでの事故が
多いです。その他にも、炊飯器の蒸気噴出口に顔や手を近づけたり、コードを引っ張ってポットをひ
っくり返すことで、やけどをする可能性もあります。また、ストーブや鉄板などに興味を持って触り
やけどをする事故もありました。ストーブの周りには柵をする、食事中には熱いものは子どもの手が
届かない場所に置く、テーブルクロスは使わないなどの工夫をしましょう。さらに、保護者は、日頃
からやけどをしない程度の熱さのものに触らせてみて「あっちっち」と教えたり、熱さの感覚がわか
るようになれば、熱い物を指さして触ってはいけないことを繰り返し教えるようにするなど、子ども
の理解に応じたしつけを行うことも大切です。
【交通事故】
全国的にも管内の傾向としても、チャイルドシートは年齢が上がるにつれて使用率が低くなってい
ます(管内は4か月児 97.6%、1歳6か月児 94.0%、3歳児 83.5%)。子どもはなかなかじっと座ってい
られません。チャイルドシートに嫌がって座らないと、使用しないで車に乗せてしまいがちになりま
すが、スピードを出していなくても、衝突により子どもが前方へ投げ出される力は体重の 30 倍以上に
なるため、子どもを死亡させたり、怪我をさせてしまったりします。走行中に車内の装置を触らせな
いようにするためにも、発育に応じたチャイルドシートを選び正しく装着しましょう。
また、幼児は具体的に目の前にあるものを自己中心的に考える傾向が強いので、ボールで遊んでい
る場合、興味のあるボールのことしか考えられません。そこでボールが道路に飛び出ると、幼児もそ
の後を追って行き、事故に遭いやすいのです。前もって予測して、安全な遊び場を選びましょう。
【その他】
子どもがボタン電池を誤飲する事故が起こっています。ボタン電池は、誤飲時に食道にとどまり、
放電の影響によって短時間(僅か1時間)でも潰瘍ができて穴が空いてしまうなどの重篤な症状を生
じることがあり、場合によっては死に至るなど大変危険です。年齢別では、1歳児の誤飲が最も多く
なっています。ボタン電池は、おもちゃだけでなく、時計、タイマー、LED ライトなど子どもが簡単
に手にできる様々な日用品に使われていて、こうした製品で子どもが遊んでいたことによる事故が多
数発生しています。ボタン電池の危険性を認識し、保管・廃棄方法に気を付けるとともに、ボタン電
池が使われている製品の点検も行いましょう。
子どもの事故は大人がほんの少し目を離した隙や子どもの思いがけない行動で起こってしまいます。
また、子どもの成長発達とともに起こりやすい事故も変化していきます。大人の気配りだけでは不十
分で、周りの環境整備と子どもへの安全教育が大切になります。
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