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ビスケットでハロウイン・パー`アイを/ 轟石井研士
続・都市の歳時記⑪ ビスケットでハロウィン・パーティ券7.至石井研士 ︵国学院大学鱗師︶ ’ 我々の日常生活の中に占めるコンビニエンスストアの重要性は は惰報大国になれるか﹂一九八八年︶。コンピューター管理により れている︵NHK取材班煽﹃コンピューターが世界を変える1日本 には、市場調査、商品開発、供給体制、店頭での配架など、商品 どの程度なのだろうか。一○月になるとセプンイレプンをはじめ ウィン﹂は諸聖人の祝日である万聖節の前夜のことで、死者の魂 イレプンの店頭に元ロウィン﹂のかぼちゃ型お菓子が並ぶ背後 が家に帰ると信じられた。アメリカでは大きなかぼちゃがくり抜 プルボンや森永製菓など菓子メーカー三三社からなる全国ビス ゃは、考え抜かれた商品戦略の結果である。 ケット協会は、クリスマスのケーキ、パレンタインデイのチョコ を売るためのあらゆる企業努力が存在する。ハロウィンのかぼち を回る行事である︵﹁ハローウィーと山折哲雄監修﹁世界宗教大事 れ、子供たちが魔女や怪物になってお菓子をねだり隣近所の家々 えている︵﹁産経新聞﹂一九九○・一○・一一六︶。ビスケット市場は、 レートと同様に、ハロウィンにビスケットを普及させることを考 こ七∼八年年間三○○○億円程度で横ばいであるという。そこで 最大の顧客である児童数の減少、噌好の多様化などによって、こ ビスケット協会は、ハロウィンの日を日本に輸入し、ビスケット 総売上が九三一九億円でコンビニエンス業界のトップの座を占め ンピニエンスシステムズが店舗数三七八三、売上高五一○○億円で一一 ている︵八九年三月にローソンとサンチェーンが合併したダィェーコ セブンイレプンは全国に四三七六店舗を有し、九○年度決算の 典﹄平凡社、一九九一年︶。 かれ提灯にして窓際に飾られる。学校では仮装パーティーが開か 発注が決定され、商品が納入され、配架が決まる。全国のセプン 品がPOS︵販売時点情報管理︶によってコンピューター管理さ 位となっている[﹃時事年鑑一九九一巳︶。セプンイレプンでは、商 ■ ゃを型どった、キャンディの入った容器がならべられる。﹁ハロ 一○月三一日は﹁ハロウィン﹂? ミ としたコンビニエンスストアの店頭に、﹁ハロウィン﹂のかぼち − の日として販売の拡大を図ったのである。協会は一九九○年のハ ロウィンからキャンペーンを行うこととし、SFXの映画監督 S・M・ジョージが製作したビスケット・モンスターをキャラク 作り出される年中行駆 年中行事を普及させるためのプロセスと熱意を﹁サン・ジョル ﹁サン・ジョルディの日﹂は日本で始められてからすでに六年に ディの日﹂を例にして見ることにしよう。 ィーを開いたとされるミネソタ州アノカ市からミス・アノカを招 なる。﹁本と花を贈りあう愛と知性の習慣﹂のことで、四月二三 ターに設定した。さらに、アメリカで初めてハロウィン・パーテ いてPRに努めた新聞に掲載された協会担当社のコメントは﹁ク 日がその日にあたる。サン・ジョルディの日実行委員会の調査に に本や花を贈った、またはもらった人は一二%であるという リスマス並に大人も巻き込んでブームをつくりたい﹂であった ビスケット業界がキャンペーンを張り、セプンイレプンなどの ︵﹁卯愛のサンジョルディキャンペーンマスタープラン﹄︶。この よれば、﹁サン・ジョルディの日﹂を知っている人は三四%、実際 店頭にかぼちゃ形のお菓子が並ぶようになったのは、ここ数年で ﹃卯愛のサンジョルディキャンペーンマスタープラン﹂は、 ︵﹁産経新聞﹂一九九一・一○・二九︶。 あるように思われる。そして業界を動かした背景に、近年の若者 した計画書である。 ﹁サン・ジョルディの日﹂をいかに日本に普及させるかを詳細に示 ったのかは﹁マスタープラン﹂の説明を読んでもよくわからない。9 ところでサン・ジョルディであるが、彼がどのような人物であ コミュニケーションを表現しあう日﹂と設定している。 コミュニケーションの日としてとらえ、恋人、夫婦、家族の愛の 会は﹁四月二三日Ⅱサン・ジョルディの日を、2way︵双方向︶ すべての本を一割引で買うことができるという。日本の実行委員 の店頭や街角のテントにはサン・ジョルディの看板がかけられ、 を込めて贈る。そして女性たちは男性に本を贈るのである。本屋 を象徴する赤いバラに青い麦の穂を添えて、母親、恋人、妻に愛 行われているお祭りである。この日男たちは、サン・ジョルディ ﹁サン・ジョルディの日﹂とは、スペインのカタルーニャ地方で のパーティー好きがあるらしい。すでに若者の間でパーティー文 としているというのが実状であるようだ。 お菓子のパッケージ(モロゾフ㈱提供) 化が成立していて、業界がそのための日時とグッズを提供しよう ハロウィンのカボチャをイラストした 彼は三○三年四月二三日にカパドキアで殉教し︵どのような理由 ズデー﹂、これらの名称を聞いてどれだけの人がピンとくるだろ ﹁ラブ・スターズ・デイ﹂﹁スターマジックデー﹂﹁サマーラバー ﹁七夕﹂から﹁ラブ・スターズ・デイ﹂へ を退治する騎士としての伝説があることが記載されているが、サ うか。これは﹁七夕﹂のことである。消費者に賊買意欲を起こさ や経緯でかは不明︶、その地に墓と教会が建てられた。彼には悪竜 ン・ジョルディと、本と花を贈ることの直接的因果関係はわから ﹁ラブ・スターズ・デイ﹂と七夕を称しているのは銀座・有楽町 ない。ただ現在のカタルーニャでこのような行事が行われている、 にある三越やそごうなど七つのデパートである。客に願い事を雷 せるためには、名称変更はいともたやすい。 ﹁サン・ジョルディの日﹂を主催している実行委員会は、日本. ということがポイントであるらしい。 カタルーーーャ友好親善協会、日本書店商業組合連合会をはじめと の四デパートは一九九○年から﹁スターマジックデー﹂を開始し 納するという︵﹁朝日新聞﹂一九八七・七・四︶。銀座に対抗して新宿 た。﹁恋のたなボタ七月七日はサマーラパーズデー﹂とタイト く星型の紙を渡しササにつるす。七夕が終わってからは神社に奉 の日﹂の実体を如実に物語っている。つまり、﹁十兆円と言われ ルを決め、星や恋にちなんだアクセサリーなど独自のギフト商品 する書籍・雑誌・出版関係の六団体、そして㈱日本生花商協会の るギフト市場の中で、本はまだ立ち遅れている。今後も、魅力あ を開発して販売を行った︵﹁産経新聞﹂一九九○・六・二○︶。そして 合計八団体である。こうした組織上の樹成は、﹁サン・ジョルディ る贈り物としての本の存在をアピールしてゆきたい﹂︵﹁産経新 消費によるこの世の幸せ 経新聞﹂一九九○・六・二八︶。 ﹁スターマジックデー﹂は西武デパートのネイミングである︵﹁産 聞﹂一九九○・四・一一での関係者の談話︶が本音であるようだ。 普及のためのキャンペーンは詳細に組まれている。イメージキ ャラクター︵佐野蝕子︶の起用、ポスター、ラッピングシール、 サン・ジョルディブックなどのキャンペーン用品の製作、全国七 しかしながら、すさまじい企業努力にもかかわらず、こうした 地区でのイベント開催︵それぞれイベントはいちご世代、家族など 対象別に設定されている︶、全国一三○○○の書店、一○○○○の ﹁○○の日﹂が次々と我々の生活の中に定着していったわけでは の日﹂は、定着しないままに消えてしまいそうだ︵﹁AERA﹂ ない。たとえば、四年ほど前から大阪のデパートが始めた﹁ボス 胸蛇.一○月八日号︶。今回取り上げた行事もまだ浸透するかどう と、四月いっぱい﹁サン・ジョルディの日﹂は続く。﹁サン・ジョ ルディの日﹂を普及させるための﹁マスタープラン﹂は、十分に 生花店での催し、そしてテレビ・ラジオ・新聞を用いた広報活動 関係者のいきごみを伝えてくれる。 かはわからないものばかりである。これら途上の行事を見てくる 1 0 る。パレンタインデイやクリスマスが受容されるにはそれなりの したとする短絡的な見方がまったくの誤解であることがよくわか と、パレンタインデイやクリスマスが、業界の陰謀によって成立 て生産の実感を失った都市民は、情報を頼りに、この世の幸福を 作り出されたとしてもやむを得ないことなのかもしれない。そし 合の﹁社会の節目﹂が、全国規模で商戦を展開する企業によって 人々に節目をもたらそうとするのだろうか。だとすれば、その場 ので、ここではこれら行事の特徴を把握してみたい。 理由があるものと考えられる。この点に関してはすでに言及した の﹁幸せ﹂をもたらしてくれるかどうかが、消費が社会の基本で 求めて、消費に走るのだろうか。新しい年中行事が都市民に一時 の﹁幸せ﹂は、どこか神秘や宗教性を帯びているのである。 あり続ける限り、行事定着の鍵であるように思われる。そしてこ 今回取り上げた行事は、どれも日本人としての季節感を欠いた とで、本来の季節感は失われ、たんなるお中元商戦のひとこま、 文 申し込み下さい。新規剛醗の方は﹃新規﹄、継続剛疏の方は﹃継 番︶か、郵便切手で、何月号からと明配の上、直接小社へお 年分︵十回︶六○○円︵送料共︶です.振替︵東京八︲二四八六一 本誌はできるだけ定期鯛脇をお願いいたします.購醜料は一 ﹃春秋﹄予約購読のお願い 行事である。﹁七夕﹂でさえも﹁ラブ・スターズ・デイ﹂となるこ も、自然による生業への制約から大きく解放され、また自然との 若者への販売拡大のための機会と化したようにも見える。もっと 日常生活での関係が薄れた都市においては、どのような年中行事 も、程度の差こそあれ、生産過程を基盤にした季節の節目とはな 、 統﹄とお密き添え下さい。また、住所変更等ご連絡の際は、 〒152東京都目黒区平町1-16-6 りにくい。毎年繰り返される年中行事が一年間の生産過程の節目 ■ 新住所、旧住所の両方をお知らせ下されば幸いです. 0120-152-000 名 著 。己牡こ 及 会 に行われる社会的な﹁ハレ﹂の行事であるとすれば︵﹁年中行事﹂ ム 和文で綴られた珠玉の仏教の言葉 法語・伝記・寺誌・随筆など、他では 資料をご諭求下さい 見られない貴重な文献を多数収録。 ご注文.ご謂求は フリーダイヤル 柳田園男監修﹃民俗学辞典﹂昭和二六年、東京堂︶、これら行事は消 市古貞次中村元 東京大学名登敏授︵国文学︶東京大学名琶敏授︵仏教学︶ 1 8 冊四六判・定価一九八、○○○円︵税込︶ 日 費社会の中でいっそうの過剰消費によって﹁ハレ﹂を作りだし、 推薦します ▲ 一 色一 鷲尾順敬編・全 J 1 ユ