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グローバリゼーションと都市変容 VI

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グローバリゼーションと都市変容 VI
グローバリゼーションと都市変容 VI ̶タワーマンションとコミュニティ 武蔵小杉駅周辺再開発からの考察̶ 東京大学 三浦伸也
1 問題意識と目的・方法
都市の景観が大きく変貌しつつある。2000 年を超える頃から超高層タワーマンションがぞくぞく
と建設され、東京とその周辺の景観が大きく変わりつつある。タワーマンションを集合住宅として考
えた場合、1960 年前後にはじまる5階建てを中心とした高さの大規模団地と、20 階建てを超える垂
直方向の超高層タワーマンションのコミュニティはどのように異なるのだろうか。 本稿は、タワーマンションが林立するようになった武蔵小杉の歴史的変遷をふまえて、地域とコミ
ュニティの変容とその問題点、
とくに新保守主義的な政策によってもたらされた再開発計画によって、
地域がどのように変容したのか。新旧住民の意識の違いをふまえて、この地域にどのような問題が生
じているのかをタワーマンション住民へのアンケート調査の分析やヒアリングで明らかにし、今後の
地域におけるまちづくりの方向性を示すことを目的にしている。 2 報告の概要 神奈川県川崎市の東急東横線武蔵小杉駅周辺地域は、2008 年頃より超高層タワーマンションが林立
する地域となった。このような超高層タワーマンションが林立するようになった背景には、2002 年の
「都市再生特別措置法」の成立、施行があり、それ以降、都市計画もこの法律によって変更されてい
った。この再開発のインパクトを人口増減と年齢別人口構成の観点から分析すると、人口が倍増し、
年齢別人口構成が大きく変化している。元々、武蔵小杉駅周辺地域は、1960 年頃までは田園風景が広
がり、工場が点在する地域であったが、その後、急速に宅地化し、工場と社宅や団地などの住宅と商
店街が混在した街として発展し、近年、工場の代わりにタワーマンションが林立した地域となった。 タワーマンション住民へのアンケート調査で明らかになったのは、武蔵小杉に住む理由が交通利便
性である点、マンション住民の郊外的ライフスタイルである。タワーマンション新規居住者のライフ
スタイルは、平日は東京や横浜などに仕事に出かけ、週末も小杉以外の東京や横浜などに行く住民が
半数以上おり、武蔵小杉を拠点として交通利便性を活かして、他の都市で働き、遊ぶというのが主流
のライフスタイルであると考えられる。武蔵小杉は、郊外=「都心に通勤する雇用労働者層の居住に
特化した都市近郊地域」
(若林幹夫、2005) の入り口に位置し、鉄道の高速化でより利便性が高まり、
最新の建築技術で建設された究極の機能性を備えた近未来的なビルが林立する地域であり、
「そこでは、
それまで存在していた地域の歴史や文化に規定されるのではなく、
『都心に通勤する雇用労働者』とい
う人びとの社会・経済的な位置に対応する共通の文化とライフスタイルによって規定された社会とし
ての『郊外』が成立」
(若林)しており、旧住民がすすめるまちづくり(
「エリアマネジメント」
)とは
関心や解決する課題が異なり、コミュニティに求めるものも異なっていることを明らかにした。 3 結論 市民とは誰か、誰のための都市か、都市や地域を再生するのは誰かといった主体を明確にする必要
がある。園部雅久も指摘するように、従来の都市づくりと違って、近年の都市づくりは、行政対市民、
企業対市民といった構図では十分にとらえられなくなっている。 行政が民間企業の意向を反映した計画をつくり、民間活力を活かして再開発を行い、既に居住する
住民を中心にマネジメントするという手法は、再開発地域に新たに居住する住民がどのようなことを
志向する住民であるかは殆ど考慮されていない。今、武蔵小杉のまちづくりに求められているのは、
既存コミュニティの考え方に縛られず、新たなタワーマンション住民がどのようなコミュニティをつ
くろうとしているのかを考える地域に対する文化的想像力であろう。各主体および主体相互の議論の
なかで、どのようなコミュニティを目指すのかを明らかにしていくことが重要であると思われる。 
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