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埼玉県における放射線の影響に関する Q&A
埼玉県における放射線の影響に関する Q&A 平成 23 年 9 月 9 日 埼玉県 目次 (はじめに) P.3 ○埼玉県における放射線の影響についてご心配な方、被ばくを減らす方法をお知り になりたい方へ 1. 埼玉県の放射線の現状はどうなっているのですか? 1-1. 福島第一原発事故以前はどうだったのですか? 1-2. 福島第一原発事故以後はどうなったのですか? 1-2-1. 測定対象と方法、その結果についても教えてください。 1-3. 放射線は人体'健康(にどのような影響を与えるのですか? どれくらい被ばくするとどれくらいの健康リスクがあるのですか? 1-4. 福島第一原発事故以後に増加した放射線量による人体への影響はあるのですか? 1-5. 妊産婦'胎児(への影響はどうですか? 1-6. 乳幼児に授乳しても大丈夫ですか? P.4 P.6 P.11 P.18 1-7. 報道されている 1mSv(ミリ・シーベルト(や 20mSv(ミリ・シーベルト( の基準値とはなんですか? また、それを超えるとどう危ないのですか? P.25 P.22 P.24 P.24 2. 被ばくを防ぐための対応方法はどのようなものがありますか? 2-1. 外部被ばくを防ぐための方法はどのようなものがありますか? 2-2. 内部被ばくを防ぐための方法はどのようなものがありますか? 2-2-1. 放射性物質が付きやすいのはどんな種類の野菜ですか? 2-2-2. 野菜をゆでたり洗ったりすると放射性物質が減りますか? 2-2-3. 安定ヨウ素剤、プルシアンブルーを服用すると予防効果があるというの は本当ですか? P.26 P.27 P.27 P.28 P.29 2-2-4. 昆布、ワカメを食べると被ばく予防効果があるというのは本当ですか? 2-2-5. 水道水を飲んだり調理に使っても大丈夫ですか? P.30 P.30 1 ○さらに詳しく放射線のことについてお知りになりたい方へ 3.放射線って何? 3-1. 放射線'放射能(とは何ですか? なぜ出るのですか? 3-2. 放射能の単位がよくわかりません。「ベクレル(Bq)」「シーベルト(Sv)」とは? 3-3. 放射性物質はずっと残るのですか?最終的にはどうなるのですか? P.32 P.34 P.37 (おわりに( P.39 2 'はじめに( ○ 埼玉県では今回の福島第一原発事故による放射線についてのご心配や不安にお応えするため、 県民の皆様からメールや電話等で多くいただいたお問い合わせを中心に「埼玉県における放射線 の影響に関する Q&A」を作成いたしました。 この Q&A は何度も検討を行いながら県の責任で作成したものですが、一部の専門家の方々の 意見とは違う見解が述べられていることもあるかもしれません。内容に不備な点等がございま したらご指摘いただきながらよりよいものにしていきたいと考えています。 埼玉県では今後も放射線に関する新たな情報等があれば適宜見直し、必要な改訂や追加を行い 当 HP の記載内容を充実させてまいります。 ○ 放射能の単位について,「ベクレル(Bq)」「シーベルト(Sv)」とは? ・ 放射線を出す能力の強さを表す単位を「ベクレル(Bq)」といいます。 「ベクレル(Bq)」の数字が大きいほど、たくさんの放射線を出すことになります。 ・放射線による人体の影響を表す単位を「シーベルト(Sv)」といいます。 「シーベルト(Sv)」の数字が大きいほど、人体'健康(への影響が大きいことになります。 ・「ベクレル(Bq)」に実効線量係数という係数をかけることにより「シーベルト(Sv)」になりま す。 ・ 0.001 シーベルトは 1 ミリ・シーベルト、1 ミリ・シーベルトは 1,000 マイクロ・シーベルトになります。 例えば夏の暑い時期に外にいたと仮定して考えてみましょう。このとき太陽の光の強さを「ベク レル(Bq)」とすると、それによる日焼けが「シーベルト(Sv)」と考えることができます(図 1)。 詳しくは「さらに詳しく放射線のことについてお知りになりたい方へ」をご覧ください。 図1 放射線の単位の違いを太陽と光に例えて説明した図 3 ○埼玉県における放射線の影響についてご心配な方、被ばくを減 らす方法をお知りになりたい方へ 1. 埼玉県の放射線の現状はどうなっているのですか? 測定対象と方法、その結果について教えてください。 1-1. 福島第一原発事故以前はどうだったのですか? A. もともと、私たちは大気や食品などを通して自然界の放射線を受けており、その量は全国平 均で年 1.5mSv(ミリ・シーベルト)程度と言われています。 原子力発電所からの放射性物質が出ていなくても、自然界には普通に放射性物質が存在していま す。このため人は日々の普通の生活の中で被ばくしているのです。またこの自然界からの被ばくに は宇宙線や大地からの被ばく(外部被ばく)と吸入・食べ物から体内に放射性物質が入って起こる 被ばく(内部被ばく)があります。 自然放射線による年間線量の世界平均は 2.4mSv(ミリ・シーベルト) (1-3-1.〔図 8 身の回り の放射線被ばく〕参照)、日本の平均は 1.5mSv(ミリ・シーベルト)とされています(下図)。 図 2 日本における自然放射線による平均年間線量の内訳 《出典:1992 年原子力安全研究協会「生活環境放射線」》 4 宇宙線や大地、食べ物から受ける放射線量は場所によって差があり、ラドンなどの吸入によるも のを除くと埼玉県は年間 0.90 ミリ・シーベルトと見積もられています。埼玉県は日本の中でも尐 ない方です。自然放射線による年間線量は最大約 0.38mSv(ミリ・シーベルト)程度の地域差があり、 西日本が高い傾向にあります。放射性物質を多く含む花崗岩(かこうがん)が多いからです。関東 平野では、火山灰地(関東ローム層)で大地からの放射線が"遮断"される点もあります。(下図参 照)(出典:「放射線のひみつ」中川恵一著 朝日出版社刊) 図 3 都道府県別の宇宙線や大地から受ける放射線量 '出典:放射線科学 Vol.32 No.4 1989( 5 1-2.福島第一原発事故以後はどうなったのですか? A. 3 月 11 日以降の一年間で、原発事故により大気や食品などを通じて受ける放射線量は事故前と比べ て約 0.25 mSv(ミリ・シーベルト)増えると推定されます。 この値は 1-1.で述べた全国の自然放射線量の地域差〔最大 0.38mSv'ミリ・シーベルト(〕の範囲内であり 健康に影響を与えるレベルではありません。例えば埼玉県から自然放射線量の高い地域に旅行したとし ても特別な対応が必要ないのと同じです。 詳しくは 1-4.をご覧ください。 正確に推計することは難しいですが、放射線医学総合研究所 HP http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i14 に東京都について概算で推計した例がありますので,それと同様に埼玉県の場合を参考として下記 に示します。 ここでは成人におけるモデルケースについて、体の外から受ける放射線(外部被ばく)と放射性 物質を体の中に取り込むことによって受ける放射線(内部被ばく)のそれぞれについてお答えしま す。ただし、計算される以下の数値は代表的な放射線量を表し、一人一人については行動や食生活 などで大きく違ってきますのでご了承ください。 ○外部被ばくについて 大気中の放射性物質によって体の外から受ける放射線量(外部被ばく量)は、埼玉県が事故前か ら収集しているさいたま市内で計測したデータから推定します(県内各地における高さ 1m のデータ については現在収集中です)。自然放射線分を除くと、2011 年 3 月 12 日から事故後 1 年間(2012 年はうるう年のため 366 日あるが、前年との比較のため 365 日として計算)の積算値は 182 マイク ロ・シーベルト(0.182 ミリ・シーベルト)です。また 8 月の放射線量がこのまま続いたと仮定 し、また1日8時間屋外にいたと仮定すると、事故後1年間の自然放射線分を除く被ばく量の推計 値は 109 マイクロ・シーベルトと推定されます。(参考①) ○内部被ばくについて 1.水道水、2.食べ物、3.呼吸について考えます。 1.水道水から受ける放射線量は、大久保浄水場の水を飲んだ場合で推定してみます。水 1kg あ たりに含まれるヨウ素 131、セシウム 137 セシウム 134 を毎日測定しています。測定を開始した 3 月 12 日から 8 月 10 日まで毎日 1.65 リットル飲んだ場合、成人の実効線量の推計値は約 8.47 マイ クロ・シーベルトと推定されます。7,8 月の大久保浄水場の水道水は 7 月 2 日にセシウム 134 が 0.22Bq/kg 検出された以外は不検出であり、この状況がこのまま続いたとすれば、事故後 1 年間の 6 被ばく量の推計値はこの 8.47 マイクロ・シーベルトと推定されます。(参考②) 2.食べ物中の放射性物質から受ける放射線量は食事の習慣や量などで個人差が大きく、相当に 難しい推定となります。国の食品安全委員会によれば、事故後一年間の食品による内部被ばくは 111.0 マイクロ・シーベルトと推定されています。(参考③) 3.空気中の放射性物質を吸い込むことによる放射線量は、1 日あたり 22.2m3 の空気を吸ったと して、東京都が発表したちりの中の放射性物質のデータ (東京都産業労働局 HP:http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/whats-new/measurement.html) を用いると 3 月 14 日から 7 月 31 日の間に空気中の放射性物質を吸入したことによる放射線量は約 21 マイクロ・シーベルトと推計されます。8 月 1 日以降は 8 月のちりの中の平均放射性物質濃度が 続いたと仮定して、事故後 1 年間の放射線量は約 21.75 マイクロ・シーベルトと推定されます。 (参 考④) これらを足し合わせると事故後 1 年間で 約 109+8.47+111.0+21.75=250.2 マイクロ・シーベルト=0.25mSv(ミリ・シーベルト)を受け ると推定されます。 この放射線量は、 1-1.で述べた日本全国の自然放射線による年間線量の地域差〔最大約 0.38mSv(ミリ・シーベルト(〕の範囲内であり健康に影響を与えるレベルではありません。 ただし今後、福島第一原発の状況によっては環境中の放射性物質濃度が変わることもありますので、 埼玉県や国からの発表に注意し要請などがあった場合にはそれに従ってください。 (参考) 参考① 空間線量について '出典:埼玉県 HP「原発事故に関する本県での放射線量について」 http://www.pref.saitama.lg.jp/page/housyasenryou.html ) 2011 年 3 月 12 日から 2011 年 8 月 31 日までの間で、さいたま市での計測値をすべて足し合わせ ると 242.280 マイクロ・シーベルトでした。-(A) また、さいたま市の 8 月の平均空間線量は 0.051 マイクロ・シーベルト/時でした。 この空間線量レベルがこのまま来年 3 月まで続いたと考えると、2011 年 9 月 1 日から 2012 年 3 月 11 日まで(2012 年はうるう年のため 366 日あるが、前年との比較のため 365 日として計算)の間で 235 マイクロ・シーベルト(=8 月の平均空間線量/時×24 時間×2011/9/1~2012/3/11 までの日数 =0.051×24×192)と推定されます。-(B) 同じ場所で計測した事故前 1 年分(2009 年 4 月 1 日~2010 年 3 月 31 日)の空間線量は 295 マイ 7 クロ・シーベルトでした。-(C) 以上から、事故後 1 年間(2011 年 3 月 12 日~2012 年 3 月 11 日)に、福島第一原発事故の影響 により増加したと考えられる放射線量は以下のとおりとなります。 2011/3/12~8/31 の実測値(A)+ 2011/9/1~2012/3/11 の推定値(B) -事故前 1 年分(2009/4/1~ 2010/3/31)の空間線量(C) = 242+235-295 = 182 マイクロ・シーベルト 木造屋内では 0.4 倍の被ばく量と推定される(「原子力施設等の防災対策について(P.94,95)」 (http://www.nsc.go.jp/anzen/sonota/houkoku/bousai220823.pdf) ので、屋内に 1 日 16 時間いると考 えると 182 × 8/24 + 182 × 0.4 × 16/24 =109.2 マイクロ・シーベルトとなります。 参考② 水道水中に存在する放射性物質からの放射線量について 水道水中に存在する放射性物質から受ける放射線量(体内の放射性物質によって将来受ける放射 線量を含めた積算値)は ICRP(国際放射線防護委員会)*による実効線量係数(表 1)を用いて、下 の計算式で推計できます。 * ICRP(国際放射線防護委員会):専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う国際学術組織 一日に受ける放射線量(マイクロ・シーベルト)=実効線量係数(μSv/Bq)(下の表の値) ×水道水中の放射性物質濃度(ベクレル(Bq)/kg)×1 日に飲水した量(kg) 表 1 成人が口から放射性物質を体内に取り入れた場合の実効線量係数'マイクロシーベルト)/ベクレル( 核種 実効線量係数 ヨウ素 131 0.022 セシウム 134 0.019 セシウム 137 0.013 (出典:緊急被ばく医療研修のホームページ http://www.remnet.jp/lecture/b05_01/4_1.html を基に埼玉県で編集( ○3/18~8/10 の大久保浄水場における水道水の放射性物質濃度データ ・3/18~6/30:http://www.pref.saitama.lg.jp/uploaded/attachment/456172.pdf ・7/1~8/10 :http://www.pref.saitama.lg.jp/page/housyasei-sokuteikekka.html ○一日に飲水した量(kg)=1.65(kg) 出典: ICRP Publication 23 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/gijyutu/004/008/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2010/07/23/1295513_3.pdf 8 これらのデータから、ある1日の被ばく量は下記のように計算されます。 0.022×ある 1 日の大久保浄水場における水道水のヨウ素 131 濃度×1.65 0.019×ある 1 日の大久保浄水場における水道水のセシウム 134 濃度×1.65 0.013×ある 1 日の大久保浄水場における水道水のセシウム 137 濃度×1.65 + これらのデータを 3/18~8/10 まですべて足し合わせると、 受ける放射線量=7.998(ヨウ素 131)+0.281837(セシウム 131) +0.185543(セシウム 137) =8.46538≒8.47(マイクロ・シーベルト)となります。 参考③ 食べ物中の放射性物質から受ける放射線量について 「放射性物質を含む食品による健康影響に関する Q&A」P.21 http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/radio_hyoka_qa.pdf 参考④ 空気中に存在する放射性物質から受ける放射線量について 空気中の放射性物質を吸入することによる放射線量の計算は、福島第一原発事故後、毎日の空気 中の放射性物質の濃度により計算できます。そこで、近隣の東京都産業労働局が公表しているデー タを使用し推計すると次のようになります。 (東京都産業労働局 HP:http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/whats-new/measurement.html) 受ける放射線量(マイクロ・シーベルト)= 実効線量係数(下の表の値) ×放射能濃度(ベクレル(Bq)/m3) × 呼吸率(ここでは 1 日当たり 22.2m3) × 日数 表2 成人が放射性物質の吸入により体内に取り入れた場合の実効線量係数'マイクロ・シーベルト)/ベクレル( 核種 実効線量係数 ヨウ素 131 0.0074 セシウム 134 0.021 セシウム 137 0.039 (出典:緊急被ばく医療研修のホームページ http://www.remnet.jp/lecture/b05_01/4_1.html を基に埼玉県で編集( 9 たとえば、東京で空気中のちりの中の放射能濃度がもっとも高かった 3/15 10:00~11:00 のヨウ 素 131、セシウム 137、セシウム 134 の濃度はそれぞれ、241、64、60 ベクレル(Bq)/m3 でした。 成人は 1 日に平均 22.2 m3 の空気を吸い込むと言われていますので、この 1 時間に放射性物質から 吸い込んだ放射線量の合計の概算値は、以下のとおりになります。 ヨウ素 131 : 0.0074 x 241 x 22.2 x 1/24 = 1.65 マイクロ・シーベルト・・・(1) セシウム 134 : 0.021 x 64 x 22.2 x 1/24 = 2.16 マイクロ・シーベルト・・・(2) セシウム 137 : 0.039 x 60 x 22.2 x 1/24 = 2.16 マイクロ・シーベルト・・・(3) 受ける放射線量 = (1) + (2) + (3) = 5.07 マイクロ・シーベルト このような計算をすべての時間について行い、3/14~7/31 について合計し、8/1 から 3/11 まで は、8 月の空気中の平均放射性物質濃度(ヨウ素 131 不検出、セシウム 134:0.000072 ベクレル(Bq)/m3、 セシウム 137:0.000084 ベクレル(Bq)/m3)が続くと仮定して合計しました。 10 1-2-1. 測定対象と方法、その結果について教えてください。 A. 大気、水、食品について測定しています。以下の表のようになります。(2011 年 8 月 30 日現在) 概ね暫定規制値以下、または未検出となっています。 表 3 環境中の放射性物質の測定状況について 11 項目 調査項目 基準値 大気 放射線量 降下物'ちり、雨水等( 調査状況 調査対象・検体数等 検査結果 規制値無し さいたま市内1か所 頻度:毎時 0.051μ Sv/h'8/9 12時( 放射性ヨウ素 放射性セシウム 規制値無し さいたま市内1カ所 頻度:毎日 検出せず'8/9( 大気'園庭・校庭( 放射線量 1μ Sv/時 '年間線量の原則目安 を1mSvとした場合( 項目 調査項目 暫定規制値 放射性ヨウ素 300Bq/kg 水道水 品目 放射性セシウム 200Bq/kg 調査項目 暫定規制値 放射性ヨウ素 '根菜、芋類除く( 2,000Bq/kg 農産物 '野菜等( 放射性セシウム - 調査状況 調査対象・検体数等 〔県内浄水場5カ所5検体〕 大久保浄水場、庄和浄水場、行 田浄水場、新三郷浄水場、吉見 浄水場 検体数、頻度等 〔8検体程度/回〕 〔調査累計:25品目、 176検体〕 頻度:週1回 〔調査累計:50検体〕 米:市町村単位に実施 麦:農協等出荷単位に 実施 放射性セシウム 500Bq/kg 茶 放射性セシウム 500Bq/kg 放射性ヨウ素 300Bq/kg 検出せず'8/9( 頻度:毎日 500Bq/kg 米・麦 検査結果 調査状況 調査対象 調査結果 ホウレンソウ コマツナ ミズナ ほか 全て暫定規制値以下 玄米 小麦 大麦 全て暫定規制値以下 〔調査累計:21検体〕 生茶葉、荒茶、 一番茶及び二番茶ごとに 製茶 実施 県内クーラーステーション 2カ所 〔2検体/回〕 全て暫定規制値以下) 原乳 放射性セシウム:検出せず~2.9Bq/kg '8/25( 〔調査累計:55検体〕 牛肉 全て暫定規制値以下 豚肉 〔調査累計:1回〕 豚肉 検出せず 鶏肉 〔調査累計:1回〕 鶏肉 検出せず 〔調査累計:1回〕 鶏卵 検出せず アユ 暫定規制値以下 原乳 〔調査累計:43検体〕 放射性セシウム 200Bq/kg 牛肉 放射性ヨウ素 放射性セシウム 頻度:週1回 規制値無し 500Bq/kg 鶏卵 放射性ヨウ素 2,000Bq/kg 〔調査累計:2検体〕 放射性セシウム 500Bq/kg 頻度:1回 淡水魚 12 *9/2 厚生労働省が公表した調査により暫定規制値を超える茶葉 3 点が検出された。 詳しくはこちらへ http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001nq2o.html http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001nqg2-att/2r9852000001nqlg.pdf 詳しい最新の情報をお知りになりたい方はこちらへ http://www.pref.saitama.lg.jp/page/tohokukanto.html#genpatsu 13 ○ 大気中の放射線量を毎時間、降下物(雤水)中の放射性ヨウ素、セシウム等ガンマ線放出核種 を毎日測定*しています(下図)。(*4 階建の建物(さいたま市桜区)の屋上(約 18m)に設置したモニタリングポストで測定) 詳しくはこちらをご覧ください。 「原発事故に関する本県での放射線量について」 http://www.pref.saitama.lg.jp/page/housyasenryou.html また、7 月 7 日から県内を 6 キロメートル四方の 90 のメッシュに区分し、各メッシュごとに合 計 116 カ所の測定箇所を設け、それぞれ地上 5cm,50cm、1m の高さで空間放射線量を測定し公表し ています。 詳しくはこちらをご覧ください。 「校庭等における空間放射線量の測定について」 http://www.pref.saitama.lg.jp/page/sokutei.html] 一日あたりの空間放射線量 'μSv/day( 6.0 3/15 5.0 4.0 3/23 3.0 空間放射線量の計測値 2.0 1.0 事故前の自然放射線分 図 4 大気中放射線量の経時的変化 4 階建ての建物'さいたま市桜区(の屋上'約 18m(に設置したモニタリングポストで測定 14 7/23 7/16 7/9 7/2 6/25 6/18 6/11 6/4 5/28 5/21 5/14 5/7 4/30 4/23 4/16 4/9 4/2 3/26 3/19 3/12 0.0 ○ 飲料水については、 県内で使用される水道水の約 75%を県営浄水場で浄化し、約 25%を市町 村の水道部局が地下水や河川水を浄化して各家庭へ送っています。 また、1 年間摂取しても健康に影響が無い値として、国の原子力安全委員会は暫定規制値を放射 性ヨウ素については 300 ベクレル(Bq)/kg、放射性セシウムについては 200 ベクレル(Bq)/kg と定 めています。各家庭へ送られる水の安全性を確保するため、大久保浄水場では 3 月 18 日から、庄 和浄水場、行田浄水場では 3 月 23 日から、新三郷浄水場、吉見浄水場では 3 月 24 日から放射性ヨ ウ素と放射性セシウムを毎日検査しており、その結果は下図のとおりです。 それぞれの浄水場が県内のどの地域に水を供給しているかについては、下記をご覧下さい。 http://www.pref.saitama.lg.jp/site/suidou/housya-suidou.html#anamachi また、市町村の水道についても定期的に検査を行ない、暫定規制値を超過した場合は、県と市町村 が連携して摂取制限を実施するとともに、代替水の確保に努めます。 80.0 ヨウ素131 Bq/kg 70.0 60.0 大久保 50.0 庄和 40.0 新三郷 30.0 行田 20.0 吉見 10.0 3.0 4/29 4/27 4/25 4/23 4/21 4/19 4/17 4/15 4/13 4/11 4/9 4/7 4/5 4/3 4/1 3/30 3/28 3/26 3/24 3/22 3/20 3/18 0.0 セシウム134*137 Bq/kg 2.5 2.0 大久保 1.5 庄和 新三郷 1.0 行田 0.5 吉見 4/29 4/27 4/25 4/23 4/21 4/19 4/17 4/15 4/13 4/11 4/9 4/7 4/5 4/3 4/1 3/30 3/28 3/26 3/24 3/22 3/20 3/18 0.0 図 5 県営浄水場におけるヨウ素 131 及びセシウム 134*137 の検査結果 15 表 4 これまでの県営水道の水道水の検出結果の最大値(Bq/kg) ヨウ素 131 セシウム 134 と セシウム 137 の合計値 大久保浄水場 37(3 月 26 日) 1.09(4 月 3 日) 庄和浄水場 53(3 月 24 日) 2.80(4 月 1 日) 行田浄水場 39(3 月 24 日) 1.77(4 月 4 日) 新三郷浄水場 72(3 月 24 日) 2.25(3 月 28 日) 吉見浄水場 48(3 月 24 日) 0.82(4 月 2 日) 県営水道のこれまでの検査結果では、いずれも国が示す暫定規制値を超過することはありませんで した。なお、川口市が 3 月 22 日に採水した水道水からは、放射性ヨウ素が 120 ベクレル(Bq)/kg と 乳児の暫定規制値である 100 ベクレル(Bq)/kg を超過しましたが、再検査の結果 46 ベクレル (Bq)/kg と規制値以下となったため摂取制限は行いませんでした。 現在の検査結果は、ほとんど不検出です。降雤の状況などにより微量の放射性セシウムが検出さ れることはありますが、暫定規制値を大きく下回っているので、通常どおりに生活や飲用に使って いただいて問題ありません。詳細はこちらをご覧ください。 http://www.pref.saitama.lg.jp/page/housyasei-sokuteikekka.html また、県内の水道事業者は、水道水源として使用している地下水の検査も実施していますが、こ れまでに放射性ヨウ素と放射性セシウムについては、いずれも不検出でした。 【暫定規制値の算出根拠について】 原子力安全委員会により、ICRP(国際放射線防護委員会)*が勧告した放射線防護の基準(放射 線セシウムは実効線量 5 mSv(ミリ・シーベルト)/年、放射線ヨウ素は等価線量 50 mSv(ミリ・シ ーベルト)/年)を基に、我が国の食品の摂取量等を考慮して食品のカテゴリーごと(飲料水、食 品等)に指標値(放射性ヨウ素 300 ベクレル(Bq)/kg、放射性セシウム 200 ベクレル(Bq)/kg)が定 められました。 なお、食品衛生法では、乳児用調整粉乳及び直接飲用に供する乳の放射性ヨウ素が 100 ベクレ ル(Bq)/kg を超えた場合は、乳児に与えないように指導しています。 したがって、乳児による水道水の放射性ヨウ素の摂取制限の規制値は 100 ベクレル(Bq)/kg とされ ました。 * ICRP(国際放射線防護委員会):専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う国際学術組織 表5 飲料水に関する暫定規制値'Bq/kg) 乳児以外 放射性ヨウ素 放射性セシウム 300 200 乳児 放射性ヨウ素 放射性セシウム 100 200 16 ○ 食品についても、水道水と同様に暫定規制値が定められていて、これを上回る食品は食用にす ることはできません。これを上回る食品がみつかったときは、原子力災害対策特別措置法の規定に より、内閣総理大臣が都道府県知事に対して出荷制限を指示し、都道府県知事は農家等に出荷自粛 要請を行うことになっていますので、現在販売されている食品は問題ありません。 (出典:食品安全委員会 HP http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/emerg_QA.pdf) 詳しくはこちらをご覧ください。 食品安全委員会 HP Q&A http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/emerg_QA.pdf 消費者庁 HP Q&A http://www.caa.go.jp/jisin/pdf/110701food_qa.pdf 表6 食品に関する暫定規制値'Bq/kg) 対象 放射性ヨウ素 放射性セシウム 飲料水 300 200 牛乳・乳製品 300 200 野菜類(根菜・いも類除く) 2,000 - 野菜類 - 500 穀類 - 500 魚介類 2,000 - 肉・卵・魚・その他 - 500 17 1-3. 放射線は人体(健康)にどのような影響を与えるのですか? どれくらい被ばくするとどれくらいの健康リスクがあるのですか? A. 放射線は受ける量によって人体(健康)への影響は異なります。子供は大人より 2~3 倍影響 を受けやすいと言われています。 一度に大量の放射線(約数百 mSv(ミリ・シーベルト)以上)を受けた場合、白内障、一時的脱 毛、不妊、造血機能の低下、嘔吐、下痢、皮膚の発赤などの障害やがんの発生をもたらします。 尐量(100mSv(ミリ・シーベルト)未満)では、科学的に示されてはいないものの影響がないとは言 いきれず、がんで死亡するリスクは放射線量に比例して高まるという仮定の下に基準などは定め られています。 人体は多くの細胞からできていて、健康な細胞は細胞分裂を繰り返しています。しかし、一度に 大量の放射線が細胞にあたると、細胞が死ぬ、または細胞分裂が遅れます。このため、細胞分裂 が盛んな組織である骨髄、生殖腺、腸管、皮膚などに一度に大量の放射線(約数百 mSv(ミリ・シ ーベルト)以上)を受けた場合、数週間以内に障害が起きることになります。 尐量でも長期的に 一定量の放射線を受けることで、造血器官などの細胞の中の DNA などの遺伝物質が損傷し、修復 能力が追いつかず、がんや白血病などになることもあります。原爆被ばく生存者調査結果によれ ば、100mSv(ミリ・シーベルト)の被ばくによりがんによる生涯死亡リスクが 0.5%増えるとされ ています。(http://www.rerf.or.jp/rerfrad.pdf) 一時的であれ、例えば 5 年間であれ、その期間の合計で 100mSv(ミリ・シーベルト)以下の低線 量被ばくでは疫学的・統計的に健康影響があることは示されていませんが、ICRP(国際放射線防護 委員会)*が放射線防護の観点から採り入れている「低線量でも影響があるという仮説(LNT 仮説)」 にもとづけば、健康影響がないとも言いきれません。ただし、低線量被ばくの健康影響について は専門家の間でも様々な考え方の違いがあります(図 6)。 * ICRP(国際放射線防護委員会):専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う国際学術組織 ①は、先ほど述べた「直線しきい値なし仮説(LNT 仮説)」と呼ばれ、国際放射線防護委員会(ICRP) や、米国科学アカデミー(BEIR)などで提唱されている考え方で、高線量域(200mSv 以上)におけ る放射線量とがんの発生率の増加の関係を、低線量域にもそのまま延長し、100mSv 以下であって も、放射線量の増加に比例してがんの発生率が上昇するとし、がんのリスクがゼロになる安全な 線量(しきい値)はないと仮定する考え方です。 ②のように ECRR(欧州放射線リスク委員会)のように上に凸とする考え方や、③のように低線量 で DNA の損傷が尐ない場合にはその修復が有効に働き、下に凸となるとする考え方もあります。 こうした考え方に対し、④はフランス科学・医学アカデミーにおいて提唱されている考え方で、中 国やインドの自然放射線量が高い地域でがんの発生率の増加が見られないことや放射線により誘 発される肉腫は低線量では発生しないこと等から、がんにはリスクがゼロとなる安全な線量(し きい値)があるとする考え方です。 一方、⑤のようにいくつかの動物実験では、低線量の放射線が寿命を延ばすことができるという 18 ホルミシスといわれる効果を示す結果もありますが、逆の結果も得られており現在のところよく 分かっていません。 (出典:食品安全委員会:放射性物質を含む食品による健康影響に関する Q&A P.15 http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/radio_hyoka_qa.pdf) (出典:「虎の巻 低線量被ばくと健康影響'医療科学社刊(P.44~47」より抜粋・改編) がんや白血病などの病気が発症するかどうかや、発症時期は人によって差があります。 またこ うした放射線の影響は、大人よりも細胞分裂が活発な乳幼児・子供・妊産婦(胎児)のほうが2~ 3倍受けやすくなるとされています。《出典:Preston.et.al, Studies of Mortality of Atomic Bomb Survivors. Report 13: Solid Cancer and Noncancer Disease Mortality: 1950–1997. Radiat.Res. 160, 381–407 (2003)》 このため日本産婦人科学会では、米国産婦人科学会と同じ立場をとり、胎児に悪影響が出るのは、胎児 被ばく量が 50mSv(ミリ・シーベルト(以上の場合と述べています。詳しくはこちらをご覧ください 'http://www.jsog.or.jp/news/pdf/announce_20110324.pdf) 図 6 低線量における健康影響についての様々な考え方'文献等をもとに独自作成( 19 まとめると、図 7 のようになります。「確定的影響」とは、ある被ばく量以下であれば出現しな い影響をいいます。また、このときの被ばく量を「しきい値」といいます。 「確率的影響」とは被ばく量の増加に伴い発生確率が増加する影響で、しきい値はないとされてい ます。「遺伝的影響」は原爆被ばく者の調査では確認されていません。 '出典:消費者庁「食品と放射能」及び'財(原子力安全研究協会「緊急被ばく医療の基礎知識」を改編) 図 7 放射線の人体'健康(への影響'文献等をもとに独自作成( 20 図 8 身の回りの放射線被ばく '出典:放射線医学総合研究所 http://www.nirs.go.jp/data/pdf/hayamizu/j/0407-low.pdf を基に改編( 図 9 放射線被ばく量と健康影響 '出典:数値は国連放射線影響科学委員会'UNSCEAR(2000 年報告による( 21 1-4. A. 福島第一原発事故以後に増加した放射線量による人体への影響はあるのですか? 今回推計した 0.25 mSv(ミリ・シーベルト)という放射線量は、1-1.で述べた日本全国の自然放射線に よる年間線量の地域差〔最大約 0.38mSv(ミリ・シーベルト)〕の範囲内であり健康に影響を与えるレベル ではありません。1-2.で述べたように、例えば埼玉県から自然放射線量の高い地域に旅行したとしても 特別な対応が必要ないのと同じです ただし今後、福島第一原発の状況によっては環境中の放射性物質濃度が変わることもありますので、 埼玉県や国からの発表に注意し、要請などがあった場合にはそれに従ってください。 ICRP(国際放射線防護委員会()は受ける放射線を合理的に達成可能な限り減らす努力をするため のより安全サイドに立った考え方として、疫学的・統計的に示されてはいませんが 100mSv(ミリ・シーベ ルト)未満でもがんで死亡するリスクは放射線量に比例して高まると仮定することを勧めており、わが国 の原子力行政や放射線規制行政はこれを採り入れて進めてきています。 しかし、この考え方は受ける放射線を合理的に達成可能な限り減らすという観点から用いるべき考 え方であり、かつ、低線量における健康影響が不確実であることから、とても低い線量を受けた集団の リスク推計に用いるべきではない'ICRP2007 勧告 第 66 項、第 161 項(とも述べています。 このため、今回推計した 0.25mSv(ミリ・シーベルト)による具体的ながん死亡リスクの増加について検 討することは適切ではないと判断し、これは行いませんでした。 * ICRP(国際放射線防護委員会) :専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う国際学術組織 被ばく放射線量 mSv'ミリ・シーベルト( 100mSv以上で 0.5%がん死亡リスク 増加 30.1%→30.6%に 100mSv 一般公衆に対する年間線量限度 埼玉県の年間推計放射線量 受ける放射線を合理的に達成 可能な限り低く抑える努力をす るうえの考え方として、100mSv 以下ではがん死亡リスクの増 加は確認されていないががん で死亡するリスクは放射線量 に比例して高まるという仮定に 基づく 1mSv 0.25mSv 自然放射線被ばくのみ 22 図 10 埼玉県の年間推計放射線量と公衆に対する年間線量限度、がん死亡過剰リスクの関係'文献等を基に独自作成( 放射線によるリスクをどう考えるかですが、他の災害や事故による死亡リスクや日常生活によるが んのリスクと比較してみると以下のようになります。(表 7 参照) ・100mSv(ミリ・シーベルト)の放射線 を受けた場合のがんによる生涯死亡過剰リスク 0.5%=5.0×10 ー 3=1 千人に 5 人 ・交通事故による生涯死亡リスク 6.0×10-3≒1 千人に 6 人 ・自然災害による生涯死亡リスク 3.4×10-5≒10 万人に 3~4 人 ・落雷による事故による死亡リスク 2.2×10-6≒100 万人に 2~3 人 '出典:平成 8 年環境白書 http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/honbun.php3?kid=208&bflg=1&serial=10028( 表 7 放射線を浴びた場合と日常生活によるリスク '国立がん研究センター調べ( 要因 対象 比較対象 がんになるリスク(倍( 喫煙'男性( 現在の喫煙者 非喫煙者 1.6 1,000 ミリ・シーベルト 被曝なし 1.5 大量飲酒'男性( 300~449g/週 'エタノール換算( ときどき飲む 1.4 やせ'男性( BMI:14.0-18.9 BMI:23.0-24.9 1.29 肥満'男性( BMI:30.0-39.9 BMI:23.0-24.9 1.22 1 日の METs 時が 1 日の METs 時が 男性 25.45、女性 26.10 男性 42.65、女性 42.65 干物等で 1 日 43g、 干物等で 1 日 0.5g、 たらこ等で 4.7g たらこ等で 0g 1 日摂取量が 110g 1 日の摂取量が 420g 1.06 100 ミリ・シーベルト 被曝なし 1.05 夫が喫煙者 夫が非喫煙者 1.02~1.03 広島・長崎での 放射線被曝 運動不足 高塩分食品 野菜不足 広島・長崎での 放射線被曝 非喫煙女性の 受動喫煙 BMI は、体重'㎏(/身長'm(²で計算 METs は運動によるエネルギー消費量が安静時の何倍にあたるかを示す単位である。 放射線は広島・長崎の原爆被爆者の追跡調査からのデータ 大量飲酒は 1 週間でビルなら大瓶 13~20 本、ワインなら 26~39 杯に相当する。 23 1.15~1.19 1.11~1.15 1-5. 妊産婦(胎児)への影響はどうですか? A. 100mSv(ミリ・シーベルト)未満で人体に影響があるかどうか明らかになっていないなかで、 日本産婦人科学会では安全サイドにたって、50mSv(ミリ・シーベルト)未満では胎児に問題はない としています。1-2.で述べたように埼玉県で原発事故により増えた放射線量は 0.25 mSv(ミリ・シー ベルト)ですので,胎児への影響は考えにくいと思われます。 ICRP(国際放射線防護委員会)*の勧告によれば胎児の被ばくに対する安全限界は累積 100mSv (ミリ・シーベルト)といわれており、100mSv(ミリ・シーベルト)未満の胎児被曝量は妊娠継続 をあきらめる理由とはならないと勧告しています。米国産婦人科学会ではより安全サイドに立っ て 50mSv(ミリ・シーベルト)としています。1-3.でも述べましたが、日本産婦人科学会では、米 国産婦人科学会と同じ立場をとり、胎児に悪影響が出るのは、胎児被ばく量が 50mSv(ミリ・シー ベルト)以上の場合と述べています。詳しくはこちらをご覧ください。 (http://www.jsog.or.jp/news/pdf/announce_20110324.pdf) * ICRP(国際放射線防護委員会):専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う国際学術組織 埼玉県における放射線量の現状からは胎児の受ける放射線量が 50mSv(ミリ・シーベルト)以上 となるとは考えにくく、こうした専門家らの意見と合わせると現状において胎児への影響は考え にくいと思われます。 1-6. 乳幼児に授乳しても大丈夫ですか? A. 厚生労働省の研究班による母乳中の放射性物質調査結果や埼玉県で受ける放射線量の現状 から考えて、通常どおり授乳していただいてよいと考えられます。 母乳には栄養面から考えて様々な利点があります。母乳を飲ませていた方は、今までどおり、 飲ませてあげてください。 6 月 7 日、厚生労働省の研究班が、福島、宮城、山形、栃木、群馬、茨城、千葉の各県と西日 本の一部で授乳婦 100 人の母乳中の放射性ヨウ素と放射性セシウムの検査を行った結果を発表 しました。その結果、福島県内の7市 21 人のうち 4 市 7 人の母乳から 1.9~13.1 ベクレル(Bq)/kg の放射性セシウムが検出されました。研究班では、 「母乳中の放射性セシウムは、福島県内の7 人から微量に検出された。これは食品中の暫定規制値と比較しても十分に低値であり、乳児へ の健康影響リスクはないと考えられる。」としています。 詳しくはこちらをご覧ください。http://www.niph.go.jp/soshiki/seikatsu/bonyuu_results.pdf ・検出された濃度が微量で健康上の影響はないと考えられること ・福島県内でも対象者の母乳に放射性物質が検出されていない地域が存在すること ・本県より福島第一原発に近い他県の対象者の母乳に放射性物質が検出されていないこと などを総合的に勘案すると、通常どおり授乳していただいてよいと考えられます。 母乳には栄養面から考えて様々な利点があります。母乳を飲ませていた方は、今までどおり、飲 24 ませてあげてください。 1-7. 報道されている 1mSv(ミリ・シーベルト)や 20mSv(ミリ・シーベルト)の基準値とは何です か? また、それを超えるとどう危ないのですか? A. ICRP(国際放射線防護委員会)*の 2007 年勧告では、非常時の放射線の管理基準は、平常時と は異なる基準を用いることとしています。また非常時も、緊急事態期と事故収束後の復旧期を 分けて、以下のような目安で防護対策を取ることとしています。報道されている1mSv(ミリ・ シーベルト)や 20mSv(ミリ・シーベルト)とは、この ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告を基 に原子力安全委員会の助言を得て定められた基準です。 * ICRP(国際放射線防護委員会) :専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う国際学術組織 1. 平常時:年間 1mSv(ミリ・シーベルト)以下に抑える 2. 緊急事態期:事故による被ばく量が 20~100mSv(ミリ・シーベルト)を超えないようにする 3. 事故収束後の復旧期:年間 1~20mSv(ミリ・シーベルト)を超えないようにする 現在の福島第一原子力発電所の状況は、2.の緊急事態期に当たると考えられます。 今回の国の方針は、緊急事態期の被ばくとして定められている 20~100mSv(ミリ・シーベルト) の下限値にあたるものです。福島第一原子力発電所周辺の方々の被ばくが、事故による被ばく の総量が 100mSv(ミリ・シーベルト)を超えることがないような対応をしつつ、将来的には年間 1mSv(ミリ・シーベルト)以下まで戻すための防護策を講ずることを意味していると考えられま す。 重要な点は、この基準は政府等が判断や対策を行う上での目安となる数値であって、これ以下 なら安全でこれ以上なら危険であるという意味ではありません。従って健康影響の有無と直接 結びつけて考えることは適切ではありません。 「年間 20mSv(ミリ・シーベルト)まで放射線を受 けてよい」という基準ではありませんのでご注意ください。 (参考:放射線医学総合研究所 HP「放射線被ばくに関する基礎知識 第6報」http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i14 文科省 HP「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方」等に関する Q&A http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1307458.htm) 図 11 ICRP(放射線防護委員会)による放射線の目安 25 (出典:放射線医学総合研究所 HP「放射線被ばくに関する基礎知識 第 6 報」 http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i14( 2. 被ばくを防ぐための対応方法はどのようなものがありますか? 2-1.外部被ばくを防ぐための方法はどのようなものがありますか? A. 基本的に通常の生活をしていただいて問題はないと考えられます。 しかし、どうしてもご心配な場合は、洗濯物を部屋干ししたり、マスクをしたり、不要な外出を 避けたり、外出先から家に入るときはほこりを払い、うがいをすること等で、放射線の影響を尐 なくすることができます。 現在の埼玉県における放射線及び放射性物質の検出状況から考えると、基本的に通常の生活を していただいて問題はないと考えられます。しかし、どうしてもご心配な場合は、原子力発電所 周辺の防災対策である防災指針では次のような方法を紹介していますので参考にしてください。 出典:「原子力施設等の防災対策について(防災指針)」(P.94,95) http://www.nsc.go.jp/anzen/sonota/houkoku/bousai220823.pdf を改編)。 (1) 地面等に落ちた放射性物質による被ばく量の減る度合い(%) 表8 地面等に落ちた放射性物質による被ばく量の減る度合い(%) 場 所 被ばく量の減る度合い(%) 平屋あるいは2階建ての木造家屋 60 平屋あるいは2階建てのブロック 80 あるいは煉瓦造りの家屋 大規模なビルの上層階 (2) 99 ハンカチやシャツにより口を覆った場合に被ばく量の減る度合い(%) 表9 ハンカチやシャツにより口を覆った場合に被ばく量の減る度合い(%) 布 被ばく量の減る度合い(%) 88.9 (折りたたんだ場合) 男性用木綿ハンカチ 27.5(そのままの場合) 濡れた木綿のシャツ 65.9 木綿のシャツ 34.6 26 2-2. 内部被ばくを防ぐための方法はどのようなものがありますか? 2-2-1. 放射性物質が付きやすいのはどんな種類の野菜ですか? A. 野菜は放射性物質が食品衛生法に基づく暫定規制値を超える場合は、出荷制限などにより流通させ ないことになっています。ですから、市場で販売されている野菜に関し、基本的に特別な対応を行う必要 はないことをご理解ください。 なお、原子力発電所の事故の後には、放射性ヨウ素などの放射性物質を含む大気中の細かいチリが 雨水などと一緒に空中から落下し、葉の表面に付くと考えられます。このため、葉の表面が上を向いて 広がっているホウレンソウ)などでは、他の野菜に比べて高い濃度の放射性物質が検出される例が多く なっています。 また、同じ重さで比べた場合、表面積の大きい野菜の方が高い濃度で検出されがちです。カキナ や福島県において摂取制限の対象となった茎立菜'くきたちな(、信夫冬菜'しのぶふゆな(も この野菜類に分類されます。ダイコンのような根菜類は、食べる部分が主に地面の下にあるため、放射 性物質を含むチリは直接付きにくいと考えられます。 一方、放射性物質がどの程度土壌から吸収されるかについては、今後注視していく必要があります。 *ホウレンソウなど非結球性葉菜類'ひけっきゅうせいようさいるい(といわれる種類の野菜では同様の例が多くなっています。 詳しくはこちらをご覧ください。 消費者庁 HP Q&A http://www.caa.go.jp/jisin/pdf/110701food_qa.pdf 27 2-2-2. 野菜をゆでたり洗ったりすると放射性物質が減りますか? A. 2-2-1.でも述べたように、放射性物質が食品衛生法に基づく暫定規制値を超える食品は、出荷制限 などにより流通させないことになっています。ですから、市場で販売されている野菜に関し、基本的に 特別な対策を行う必要はありません。 なお、熱によって放射性物質が減ることはありませんが、独立行政法人放射線医学総合研究所によ れば、「野菜を洗う、煮る'煮汁は捨てる(、皮や外葉をむく、などによって、汚染の低減が期待できま す。」とのことです。放射性物質が気になる方は、参考にしてください。 出荷制限がされている農産物などは、 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001i6pk-att/2r9852000001i6vv.pdf に掲載されていま す。 詳しくはこちらをご覧ください。 食品安全委員会 HP Q&A http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/emerg_QA.pdf 消費者庁 HP Q&A http://www.caa.go.jp/jisin/pdf/110701food_qa.pdf 表 10 放射性物質を減らすための調理例 出典:'財(原子力環境整備センター「食品の調理・加工による放射性核種の除去率」を基に改編 http://www.rwmc.or.jp/library/other/file/kankyo4_1.pdf 食品名 調理法・加工法 除去率'%( 放射性セシウム --- 除去される汚染の種類 白 米 水でとぐ 肉 凍結解凍後、 10%食塩水に 4,5時間浸す 90~95 表面/体内 汚染 カ スワ マ 身を煮る 50 表面汚染 魚マ 肉グ ロ 水洗い 50 体内汚染 キ ュ ウ リ 水洗い ― 表面汚染 ンホ ソウ ウレ ゆでて おひたし 50~80 表面汚染 ト マ ト 食塩水'1%( で洗う ― 表面汚染 ・白米、肉については出典:第372回食品安全委員会'3月23日(資料13(を基に改編: http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/housha_teigen_20110323.pdf ・-- はデータ記載なし。 参考値であり、汚染経路や状況により数値は変わります。 28 表面汚染 2-2-3. 安定ヨウ素剤やプルシアンブルーを服用すると予防効果があるというのは本当ですか? A-1. 安定ヨウ素剤について 現状では安定ヨウ素剤を服用する必要は全くありません。 わが国における安定ヨウ素剤予防服用の「指標」として、甲状腺の等価線量'甲状腺の受けた被ばく 量(100mSv'ミリ・シーベルト(が提案されているところです。'出典:原子力安全委員会「原子力施設等 の防災対策について」P.23 ( http://www.nsc.go.jp/anzen/sonota/houkoku/bousai220823.pdf しかし、 ○現状では埼玉においてこのような高線量被ばくの可能性は考えにくいこと '「1-2.福島第一原発事故以後はどうなったのですか?」参照( ○ヨウ素 131 は半減期が8日なので、既にほとんど環境中には存在しないこと '「3-3.放射性物質はずっと残るのですか?最終的にはどうなるのですか?」参照( これらの理由から、安定ヨウ素剤を服用する必要は全くありません。 また、 ・40歳以上では被ばくによる甲状腺がんで死亡する可能性はとても低いので、基本的に投与する 必要はありません。 ・安定ヨウ素剤には既に体内に入ってしまったヨウ素 131 を排泄する効果もありません。 ・ヨウ素はアレルギーがある人が飲むとショックを起こし最悪の場合、死亡することもあるため医師の 処方により投与されます。したがって自分の判断でうがい薬などを飲むようなことは絶対に止め てください。 A-2. プルシアンブルーについて 現状ではプルシアンブルーを服用する必要は全くありません。 プルシアンブルーはセシウムを身体の外に排出するのを促す効果があるとされています。 しかし、 ○放射線医学総合研究所ではプルシアンブルーについて(www.nirs.go.jp/data/pdf/prussian_blue.pdf) ・セシウムによる内部被ばくが30ミリ・シーベルト以下では治療の利益がないこと ・予防的投与は行わないこと ・医師の処方に基づくこと ・効果について内部被ばくを計測するホールボディーカウンターで測ること ・全例について治療データを放射線医学総合研究所に報告すること としています。 また、 ○前川和彦・東京大名誉教授'救急医学(も 6 月 30 日の政府・東京電力統合対策室の会見で「低線量 29 被ばくへの効果は未知数。すぐに使うべきだとは考えていない」と述べています。 http://mainichi.jp/s/select/news/20110702k0000e040042000c.html これらの理由から、現状ではプルシアンブルーを服用する必要は全くありません。 2-2-4. 昆布、ワカメを食べると被ばく予防効果があるというのは本当ですか? A. 昆布、ワカメなどのヨウ素を多く含む海藻類を自己判断で大量に食べることはお勧めできま せん。 たしかに、昆布、ワカメを摂ることで中に含まれる安定ヨウ素が甲状腺に取り込まれることに より、放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれるのを防ぐ効果があると言われています。 しかし、現在の埼玉県では3月時点で飛んできたヨウ素 131 はほとんどが壊れて安定なキセノ ン 131 に変化してしまっていると考えられますので、これから昆布やワカメを被ばく予防目的 で食べる意味はないものと考えられます。 なお、食事から摂取するヨウ素の上限量は、一般成人で 2.2mg/日です。海苔やワカメなどを 日常的に摂取している日本人の食生活から推測する平均摂取量は 1.5mg/日程度です。健康を維 持するための推奨量は 0.13mg/日ですので、日本人は普段から十分な量のヨウ素を摂取している ことになります。 2-2-5. 水道水を飲んだり調理に使っても大丈夫ですか? A. 埼玉県では、『1-2-1.測定対象と方法、その結果についても教えてください。』で述べたように、各県営 浄水場の状況を代表する給水栓'蛇口(を選定し毎日放射性ヨウ素とセシウムの濃度を検査しています。 現状ではほとんど放射性物質は検出されていませんが、雨が降ったりした次の日に少量の放射能が検 出されることもあります。5 月以降はこの検出量も非常に微量になっており、最近 1 ヶ月は検出されること もない状態が続いています。このため普通に飲んでいただいても全く問題ありません。 ただそれでもご心配な場合には、水道水をペットボトルなどに保管しておき1日後に検査結果を見ること によって放射能を検出されていない水道水を使用することができます。ただし、水道水の消毒効果は 3 日 くらいで消滅するので一般細菌が増える恐れがありますのでご注意ください。 詳しくはこちらをご覧ください。 「埼玉県の水道水の安全性について」 http://www.pref.saitama.lg.jp/site/suidou/housya-suidou.html 30 【ご提案】水道水の汲み置きで備える 放射性物質の暫定規制値(例えば乳児に関して放射性ヨウ素 100 ベクレル(Bq)/kg)を超えた水 道水を何日か飲んでも大丈夫ですが、どうしても暫定規制値を超えた水は飲みたくないと思うのも 当然です。その場合の対処方法として水道水の汲み置きのやり方をご紹介します。 【汲み置きの例】 用意するもの ペットボトルなど密閉できるきれいな容器2本(できるだけ汚れ の付いていない容器がよいので、ミネラルウォーターなどの容器がよい。) 1 日目 ペットボトル 1 本をよくすすいでから水道水を入れ、できるだけ空気を入れないように してフタを閉める。(尐し水をあふれさせるとよい。) 2 日目 1 日目に汲んだ水道水中の放射性物質の検査結果が埼玉県 HP に発表されるので、1 日目 のペットボトルに数値を書いておく。もう1本のペットボトルをよくすすいでから水道水を入れ、 できるだけ空気を入れないようにしてフタを閉める。(尐し水をあふれさせるとよい。) 3 日目 2 日目に汲んだ水道水中の放射性物質の検査結果が埼玉県 HP に発表されるので、2 日目 のペットボトルに数値を書いておく。 2 日目に汲んだ水が指標値以下だと判ったら、1 日目に汲んだ水を飲用・炊事等で使い切ってし まい、よくすすいでから水道水を入れ、できるだけ空気を入れないようにしてフタを閉める。(尐 し水をあふれさせるとよい。) 4 日目以降 以降、これを繰り返します。報道等で暫定規制値を超えたことが判っても、ペットボ トル1本には暫定規制値を超えていない水が残ります。 31 ○さらに詳しく放射線のことについてお知りになりたい方へ 3.放射線って何? 3-1. 放射線や放射能とは何ですか? なぜ出るのですか? 放射能、放射線、放射性物質はそれぞれどう違うのですか? 物を通り抜けるのですか? A. 世の中のすべてのものは目に見えない小さな粒子から出来ています。その粒子を原子'元素(とい います。 原子の中には不安定な状態のものがあり、自然に壊れて他の種類の元素に変わるものがあります。 この時に、エネルギーを持った小さい粒子や電磁波を出します。これを「放射線」と呼んでいます。この ような原子は私たちの身の回りの自然界に普通に存在しますし、また原子力発電のような核分裂反応 によっても発生します。 放射線を出す能力を「放射能」といいます。また放射能を出す能力をもった物質を「放射性物質」とい います。ホタルでこれを例えてみます。ホタルが出す光を「放射線」と考えると、光を出すホタルが「放 射性物質」と例えられます。虫かごにいるホタルを考えてみてください。「放射線漏れ」はホタルの光が 虫かごから漏れること、「放射能漏れ」はホタルが虫かごから逃げ出すことに例えられます'もちろんホ タルが放射線を出すわけではありません!(。 図 12 放射線・放射性物質・放射能の違い '出典:中部電力 HP http://www.chuden.co.jp/energy/nuclear/nuc_hosha/nuch_chigai/index.html( 放射線にはいろいろな種類があります。電子などの小さい粒子や電磁波(いわゆる電波)など があり、ものを通り抜ける性質(透過性)があります。例えばアルファ線、ベータ線、ガンマ 線などの種類があります。アルファ線、ベータ線は小さい粒子です。このため紙やアルミ箔で 止めることができます。ガンマ線は電磁波なので鉛や厚い鉄の板でないと止めることができま 32 せん。また放射線は光と同様に遠く離れれば離れるほど弱くなります(距離×距離に反比例、 距離が 2 倍になると強さは 4 分の 1 になります)。 放射線の種類と透過性 α線を 止める β線を止 める γ線、X線を 止める 中性子線を 止める ア ルフ ァ ' α( 線 ベータ' β( 線 ガンマ'γ(線 エック ス'X(線 中 性 子 線 紙 アルミニウム等の 薄い金属 板鉛や厚い 鉄の板 水や コンクリート 図 13 放射線の種類と透過性 '出典:資源エネルギー庁「原子力 2010」( 今回の福島第一原子力発電所の事故で損傷した原子炉から出ている放射線が福島県から直接埼 玉県に届くことは通常は考えられません。福島第一原子力発電所で光っている電灯の光が埼玉県か らは見えないのと同じです。問題になるのは福島県から風などに乗って埼玉県に飛んできた放射性物 質が出す放射線ということになります。この飛んできた放射性物質が体内に入ると、距離が近く遮るも のがないので体外にある場合より影響が大きくなると考えられます'いわゆる内部被ばく(。 33 3-2. 放射能の単位がよくわかりません。「ベクレル(Bq)」「シーベルト(Sv)」とは? A. 放射線を出す能力の強さを表す単位を「ベクレル(Bq)」といいます。 放射線による人体の影響を表す単位を「シーベルト(Sv)」といいます。 内部被ばくの場合、「ベクレル(Bq)」に実効線量係数という係数をかけることにより「シーベル ト(Sv)」になります。 「3-1. 放射線(放射能)とは何ですか?」のホタルの例で考えると、光を出すホタルの能力 をあらわす単位が「ベクレル(Bq)」ということになります。放射性物質の原子が壊れて他の元 素に変わるときに放射線が出ます。1秒間にこの原子がいくつ壊れるかを数えたものを「ベク レル(Bq)」という単位であらわします。 「ベクレル(Bq)」の数字が大きいほど、たくさんの原子 が壊れる、つまりよりたくさんの放射線を出すことになります。土壌や食品の検査データでよく 使われます。 「シーベルト(Sv)」は身体の組織・臓器ごとの影響を表す「等価線量」と、全身の影響を表 す「実効線量」の2つの場合に使われます。放射線は人の体に当たると、放射線のエネルギー は体に吸収されます。放射線が 1kg の物質に与えるエネルギーを「吸収線量(Gy:グレイ)」とい います。この吸収の度合いは放射線の種類によって違ってきます。紙で簡単に止めることがで きるアルファ線は、止まった場所でエネルギーをすべて出してしまうので、吸収される量は多 くなります。それに対して体を通り抜けるようなガンマ線は、エネルギーをもったまま通り抜 けていくので、吸収される量は尐なくなります。放射線の種類の違いによる影響度の係数(放 射線荷重係数)を「吸収線量」にかけて補正した各組織・臓器ごとの影響の度合いを「等価線 量(Sv)」といいます。 また、放射線による影響の受けやすさの度合いは体の部位によっても違ってきます。例えば、 睾丸などの生殖腺は影響を受けやすく、骨は比較的影響を受けにくいとされています。このよ うに放射線を受ける組織・臓器によって影響の大きさが違うため、「等価線量(Sv)」に、組織・ 臓器の違いによる影響度の係数(組織荷重係数)をかけて、それらを全身の組織・臓器につい て全て足し合わせた値を「実効線量(Sv)」といいます。(下図 14) 通常、被ばく線量といった場合にはこの「実効線量」を指します。 しかし、体内に摂取された放射性物質から、組織や臓器の受ける線量を算出することは容易 ではありません。なぜなら体内の組織や臓器に沈着している放射性物質の量を測定する必要が あり、しかも、その量の時間的変化を追跡しなければならないからです。そこで、摂取した放 射性物質の量と組織や臓器が受ける線量の大きさとの関係をあらかじめ求めておけば、放射性 物質の量に対応した被ばく線量を計算することができます。このときの摂取した放射性物質の 量と被ばく線量の関係を表す係数を実効線量係数といいます。 内部被ばくの場合、先ほどの「ベクレル(Bq)」に実効線量係数をかけることにより「シーベ ルト(Sv)」になります。外部被ばくについては、放射性物質からの距離や遮蔽物により変わっ てきます。 34 例えば夏の暑い時期に外にいたと仮定して考えてみましょう。このとき太陽の光の強さを「ベ クレル」とすると、それによって上がった体温が「シーベルト(Sv)」と考えることができます (下図 15)。 図 14 放射線の単位 '出典:「虎の巻 低線量被ばくと健康影響'医療科学社刊(P.25」より抜粋・改編( 図 15 放射線の単位の違いを太陽と光に例えて説明した図'再掲( 35 図16 放射線の単位換算例 '出典:食品安全委員会「放射性物質を含む食品による健康影響に関する Q&A」( http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/radio_hyoka_qa.pdf また、これらの単位はそのままではなく、「マイクロ・シーベルト」「ミリ・シーベルト」など、他の言葉が 頭について使われることがあります。大きな数字や小さな数字をそのまま書くとわかりにくいので、この ような言葉をつけることがあります。単位の頭につけるので接頭語といいます。 例えば長さの単位で 1 ミリ・メートルというものがあります。これは 1mの 1000 分の1つまり 0.001 メー トルのことです。0.001 メートルでは使いづらいので、これを「ミリ」という接頭語をつけることで表します。 また1キロ・メートルは 1,000 メートルのことで、「キロ」という接頭語をつけることにより表します。 このように一般的には数字を3桁ずつに区切ってわかりやすくするため、以下のような接頭語が定め られています。 1ミリ・シーベルトは 0.001 シーベルト、1マイクロ・シーベルトは 0.000001 シーベルトのことです。また1 メガ・ベクレルは 1,000,000 ベクレルのことになります'表 11 参照(。 表 11 単位について n 10 1012 9 10 106 103 1 10−3 10−6 10−9 10−12 接頭語 テラ (tera) ギガ (giga) メガ (mega) キロ (kilo) なし ミリ (milli) マイクロ (micro) ナノ (nano) ピコ (pico) 記号 T G M k なし m µ n p 0の数'n( 1 000 000 000 000 1 000 000 000 1 000 000 1 000 1 0.001 0.000 001 0.000 000 001 0.000 000 000 001 36 3-3. 放射性物質はずっと残るのですか?最終的にはどうなるのですか? A. 放射性物質の原子が壊れて放射線を出しながら他の元素に変わることを繰り返すと、最後には 壊れない安定した元素(安定同位元素)になります。こうなると、それ以上壊れないので放射線は 出なくなります。 つまり放射線を出す能力(放射能)は時間がたつと減っていくのです。この減る割合は放射性物 質の種類によって異なります。この放射能が半分になる時間を半減期(物理学的半減期)といい、 例えばヨウ素 131 では 8 日、セシウム 137 では 30 年です。ヨウ素 131 は 8 日で元々の能力の半分 になり、16 日で 4 分の 1 になる、という具合です。従って、3 月に福島県から飛んできたヨウ素 131 の放射能は、今ではもうほとんど残っていないことになります(7 月のはじめには 4096 分の 1 程度に減っていると考えられます)。それに対してセシウム 137 は半減期が 30 年ととても長いので、 3 月に飛んできたセシウム 137 はまだまだ放射能をもっていることになります(図 17)。 放射性物質の影響を考える上でもう一つ重要なポイントがあります。体内に入った放射性物質に は物質ごとにそれぞれ結びついて沈着しやすい臓器があります(図 18)が、大部分は尿や便とし て体外に出ていきます。この体外への排泄量を考慮して、体内に入った放射性物質の量が半分にな る時間は年齢によって異なりますが、これを「生物学的半減期」といいます。セシウム 137 の生物 学的半減期は成人の場合 100 日程度と考えられています。このため体内に入ったセシウム 137 は 100 日程度で半分になります。これはセシウム 137 の 30 年という半減期(これを物理的半減期と 区別することもあります。)に比べて非常に短いといえます。 このように、「物理学的半減期」に従った減尐と、「生物学的半減期」に従った減尐の2つが同時 に進むため、例えばセシウム 137 のように物理学的半減期が長い放射性物質であっても、体内に残 存する量は約 110 日で半減します。これを実効半減期といいます(表 12)。 以上のことから、同じ量の放射性物質でも、半減期が長いほど、より周りに与える影響は大きい ことになります。 図 17 放射性物質の半減期 '出典:北海道電力 http://www.hepco.co.jp/ato_env_ene/atomic/explanation/knowledge-07.html( 37 図 18 各放射性物質の沈着しやすい臓器 甲状腺 筋肉 ヨウ素131 セシウム137 肝臓 肺 セシウム137 コバルト 60 トリウム 232 アメリシウム241 セシウム137 肺に滞留 プルトニウム239 ラドン222 骨 セシウム137 トリウム232 アメリシウム241 ストロンチウム90 プルトニウム239 ラジウム226 腎臓 セシウム137 表12 物理的半減期と生物学的半減期、及び実効半減期とその求め方'独自に作成( 実効半減期の求め方: 1/実効半減期=1/物理学的半減期*1/生物学的半減期という関係がある。 例えば、ストロンチウム90の場合、物理学的半減期が28.8年、生物学的半減 期が49年であるので、 実効半減期=1/(1/28.8+1/1/49)=約18年となる。 38 (おわりに) 今回作成した「埼玉県における放射線の影響に関する Q&A」は県民の皆様からメールや電話等で 多くいいただいたお問い合わせを中心に作成いたしました。 埼玉県では、今後とも放射線に関する皆様の不安や疑問を解消するため、必要な改訂や追加等を 通じ「埼玉県における放射線の影響に関する Q&A」の充実を図ってまいります。 39