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私たちの生活と産業 を支える海運

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私たちの生活と産業 を支える海運
CONTENTS
暮らしと経済の原点を支える海上輸送
私たちの生活と産業 を支える海運
日本の貿易物資のほぼ 100%
(重量ベース)が
「船」
で運ばれていることをご存じでしょうか。
現代の私たちの暮らしは、資源・エネルギーの大
量消費の上に成り立っています。その、
「衣・食・住」
に必要な食料・原材料をはじめ、原油、天然ガスな
暮らしと経済の原点を支える海上輸送 ∼ どのエネルギー資源のほとんどは外国からの輸入に
頼っています。
暮らしを運ぶ・・・・・・・・・・・・・・・
私たちの身近にある電化製品、家具、衣類やガス
エネルギーを運ぶ・・・・・・・・・・
コンロなどどれをとっても元をたどれば外国の製品
産業を運ぶ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
や原材料でできているのです。
内航海運の活躍
日本は島国のため、これらの大量な必要物資はす
日本海運の現況と課題
また、日本は輸入した工業原料を加工し製品にし
べて船で運ばれてきます。
て輸出する加工貿易により経済成長を遂げてきまし
安全運航への取り組み
た。
環境問題への取り組み
現在では、日本企業の海外進出が拡大し、海外で
船員育成への取り組み
が、日本の海運はこれら海外進出した日本企業の輸
の現地生産が進むなど、貿易形態は変化しています
▲日本の豊かな生活と産業を支える外航海運(写真はLNG船)
日本と世界をつなぐ日本の海運 ∼
送ニーズに応えて地球規模のグローバル輸送ネット
ワークを形成しています。さらに、中国やインドを
国内輸送においても、長距離・大量輸送の利点を
運の重要性が再認識されました。
∼
はじめアジアの新興国の経済発展に対応して増大す
生かして暮らしを運ぶ大動脈として貢献しています。
日常あまり目にすることのない「船」は、私たちの
る輸送ニーズにも応え、今では世界の産業や生活に
特に平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災に
暮らしと産業に欠かせない物資を輸送するという重
必要な物資を輸送する重要なインフラストラクチャ
おいては、いち早く救援隊や救援物資の輸送に従事
要な役割を担っています。
ーとして貢献しています。
し、被災者をはじめ関係者から高い評価を受け、海
船のいろいろ
海運用語集
日本商船隊※によるわが国の物資の積取比率(2011年)
輸出
輸入
全体
100%
わが国の海上荷動き量が世界に占める割合(2011年)
主要品目別海上荷動き量 単位:100万トン
出典:Clarksons「SHIPPING REVIEW DATABASE」
国土交通省海事局
全体
100%
全 体
12.1%
世界
8,023
8,238
8,947
8,591
915
7,838
1,840
1,858
日本商船隊58.0%
原 油
日本商船隊
28.4%
日本籍船
日本籍船
出典:国土交通省海事局
※は巻末の「海運用語集」参照
鉄鉱石
国際貨物輸送における海上輸送と
航空輸送の割合(2010年、重量ベース)
1,905
石油製品
780
鉄鉱石
779
12.2%
石炭
石 炭
出典:日本船主協会「日本海運の現状」
SHIPPING NOW 2012-2013
穀 物
771
841
(液化天然ガス)
1,053
(液化石油ガス)
938
898
778
837
出典:国土交通省海事局
203
日本商船隊
による
輸送量
3,505
833
2007
3,599
866
2008
3,281
824
2009
205
344
338
3,693
819
2010
3,935
67
14
69
14
180
139
140
65
12
105
鉄鉱石
石炭
317
18.7%
7.7%
原油
LPG
992
898
776
323
752
302
903
833
穀物
その他
海上輸送9億1,500万トン
(99.6%)
796
日本
181
177
70
12
79
12
134
128
185
175
27
26
306
306
LNG
1,793
812
穀物
航空輸送400万トン
(0.4%)
1,903
9.6%
6.0%
0.7%
原油
970
964
186
192
28
28
162
26
327
その他
322
283
775
2011
2007
2008
2009
2010
2011
SHIPPING NOW 2012-2013
暮らしを運ぶ
船が運ぶ私たちの「衣・食・住」
▲国際定期航路の主力として多種多様な貨物を運ぶコンテナ船
デパートやスーパーマーケットの衣料品売り場。
は外国からの贈り物であふれています。
並んでいる商品を手に取ってつい生産地を見るとメ
住まいはどうでしょう。マンションなどの建設用
イドインチャイナとかベトナムとか、外国製品が所
鋼材、木造家屋の木材、内装の板、フローリング、
狭しと並んでいます。もちろん航空機で運ばれるア
テーブル、プラスチックの容器まで考えてみればど
パレル製品もありますが、その多くは
「船」で運ばれ
れも外国から運ばれた製品だったり国内製でも原材
ます。
料は外国産です。
食料品も同様です。冷凍エビやウナギなどは外国
このように、私たちの身近にあるものの多くは、
で養殖されたものが大量に運ばれてきます。肉類も
「船」で遠い外国から運ばれた来たものであり、
「船」
国内産と言ってもその飼料となるトウモロコシなど
がなければ私たちの日々の暮らしは成り立たないと
はほとんど輸入品です。パンや麺類に至っても原料
いっても過言ではないでしょう。
の小麦は輸入がほとんど。このように私たちの食卓
主な「衣・食・住」関連物資の輸入依存度(2010年)
100%
綿花
100%
3%
羊毛
米
91%
94%
小麦
大豆
100%
とうもろこし
19%
62%
野菜
果実
44%
74%
肉類
砂糖類
46%
74%
魚介類
木材
0
50
100(%)
出典:「食料需給表」平成22(2010)年度版 「木材需給表」平成22(2010)年 他
「衣・食・住」関連物資の主な輸入先(2011年)
SHIPPING NOW 2012-2013
衣
食
インドネシア
その他
3.9%
14.3%
4.4%
6.8%
0.4%
オーストラリア
インド
シリア
住
その他
米国
綿花
33.8%
4.5%
20.3%
小麦
輸入量12万t
インドネシア
米国
58.1%
輸入量621万t
中国
4.1%
オーストラリア
17.3%
英国
3.5%
ブラジル
14.8%
14.9%
カナダ
14.7%
木材
カナダ
輸入量5,202万㎥
19.5% 21.2%
その他
中国
4.9%
カナダ
フランス
6.7%
オーストラリア
マレーシア
8.2%
オーストラリア
その他
羊毛
25.0%
0.1%
12.5%
ブラジル
18.9%
輸入量 1万t
その他
1.6%
大豆
輸入量283万t
チリ
米国
9.1%
11.2%
マレーシア
欧州
7.3%
9.6%
ニュージーランド
5.3%
ロシア
中国
12.0%
台湾
19.5%
ニュージーランド
20.2%
4.5%
米国
66.9%
(注)木材のみ2010年
出典:財務省貿易統計、「森林・林業白書」平成24(2012)年版
生活に欠かせない電気、ガスはもちろん、ガソリ
原子力発電所の事故により、電力の不足が大きな
ンや重油など全ての産業にとってエネルギーは不可
問題になっていますが、石油・天然ガスの供給がス
欠です。
トップすれば私たちの生活は根底から崩れてしまい
しかし、日本のエネルギー資源の自給率はわずか
ます。都市ガスに使用される天然ガスやプロパンガ
4%です。原油の 99.6%、天然ガスの 96.7%、石炭
スも同様に外国からの輸入です。
は 100%を海外からの輸入に依存しています。
これらエネルギー資源を日本に安定的に運んでい
近年、電力では太陽光・風力・バイオマスなどの
るのが船です。外航海運は、エネルギー資源国と日
再生可能エネルギーの導入も進められていますが、
本をつなぐ欠くことのできないパイプラインといえ
その供給率は、石油、天然ガス、石炭のそれに遠く
るのです。
エネルギーを運ぶ
エネルギー資源国と
日本を結ぶパイプライン
及びません。
▲
日本の暮らしと産業に欠かせな
い原油を運ぶタンカー
エネルギー原料の輸入依存度(2010年度)
エネルギー原料の主な輸入先(2010年度)
クウェート 7.0%
エネルギー
全 体
その他 14.4%
96%
サウジアラビア
ロシア
7.1%
イラン
9.8%
原 油
99.6%
カタール
29.2%
原油
カナダ 5.6%
中国
アラブ首長国連邦
20.9%
11.6%
その他 1.5%
オーストラリア
輸入量2億1,433万キロリットル
ロシア
石 炭
100%
6.1%
3.5%
アメリカ 2.0%
石炭
一般炭及び
( )
無煙炭
62.3%
インドネシア
19.0%
7.2%
輸入量1億8,664万トン
ブルネイ
8.4%
LNG
96.7%
50
100(%)
7.2%
LNG
マレーシア
20.7%
オーストラリア
18.8%
ロシア
8.5%
カタール
0
アラブ首長国連邦
その他
10.9%
インドネシア
輸入量7,056万トン
18.3%
出典:「エネルギー白書」2011年版
SHIPPING NOW 2012-2013
※
産業を運ぶ
国境を越えて活躍する日本商船隊
▲世界の港に日本製の自動車を運ぶ自動車専用船
従来、日本の経済は、外国から工業原料を輸入し
され、輸出産業を中心に製造業の海外移転が急速に
これを加工して製品にし、輸出することで外貨を獲
進展しつつあります。
得し、生活必需品やエネルギーを輸入して成り立っ
この日本の企業の海外進出に呼応して海外の生産
ていました。この工業原料の輸入も製品の輸出も船
拠点から直接外国の消費地に運ぶ「三国間輸送」も
による輸送です。
日本海運の活躍する場となっています。
原料の調達先も製品の輸出先も、日本の産業界と
海運は、海洋でつながった世界の国々と国境を越
一緒に世界中に広げています。
えてつながっているのです。
近年、日本は「円」の過大評価による円高に悩ま
※は巻末「海運用語集」参照
日本の地域別海上貿易量の内訳(2011年)
主な工業原料の輸入先(2011年)
インド
2.7%
欧州
アフリカ
4.8%
2.2%
その他
2.7%
南アフリカ
3.6%
3.7%
62.5%
鉄鉱石
輸入量
1億2,840万t
28.5%
6.8%
19.7%
ロシア
オーストラリア
ブラジル
中南米
フィリピン
米国
その他
8.3%
2.4%
アジア
北米
カナダ
10.7%
パプアニューギニア
中東
22.5%
大洋州
25.2%
インドネシア
53.4%
輸入量365万t
ニューカレドニア
26.9%
30.6%
7.9%
ニッケル鉱
5.7%
インドネシア
8.3%
カナダ
8.8%
原料炭
オーストラリア
輸入量6.866万t
その他
インドネシア
6.0%
21.4%
53.5%
マレーシア
3.9%
中国
4.3%
その他
1.1%
インド
銅鉱
輸入量439万t
チリ
47.5%
13.5%
アルミニウム鉱
輸入量99万t
オーストラリア
77.2%
オーストラリア
9.2%
出典:国土交通省海事局
SHIPPING NOW 2012-2013
ペルー
14.5%
出典:財務省貿易統計
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