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資料8 - 経済産業省

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資料8 - 経済産業省
資料8
産業構造審議会 環境部会 第14回地球環境小委員会議事録
日時:平成15年2月25日(火)
場所:経済産業省 本館17階 国際会議室
出席委員:茅委員長、秋元委員、植松委員、大國委員、岡部委員、角田委員、河野委員、坂
本委員、谷口委員(衛藤代理)、千速委員(萬谷代理)、中井委員、中澤委員、新澤委員、
福川委員、藤委員(原田代理)、松尾委員、三浦委員、光川委員、村上委員、森嶌委員、山
本委員(永里代理)、米本委員
●
●
開会
資料3について村瀬教授より説明
○村瀬教授 今日は、国際法の形成過程というか、国際立法という観点からこの問題を考え
てみたい。京都議定書にかわる新しい枠組みを提示するとすれば、第2期の交渉が始まるこ
とになっている 2005 年以前に提示しなければならず、その枠組みは米国及び主要な途上国が
参加可能なものでなければならないというところがポイントである。
そこで、京都議定書の問題点をどういうところに見るかということである。一言で言えば、
排出に関する強制的、拘束的な、かつ固定的で国別の数値目標、キャップを設定したところ
にあるというところである。
その問題点の一つは、そもそも国家の権限、国家のマンデートが及ばない事項についても
対象にしているということで、計画経済体制を取らない限り、6%、7%という削減目標を
設定すること自体がおかしな話であった。さらに、数値のみが先行して、具体的なルール、
例えば森林のシンクの問題であるとか、京都メカニズムの具体的な運用ルールについても未
確定のまま、その数値のみがひとり歩きしたということが第2の問題点である。そもそもそ
の数値にも根拠がなかった。どんぶり勘定で設定されたということである。第4には、絶対
化された数値と、削減目標というものを前提にして、その不遵守に制裁を課そうとしている
ことである。
COP7で、第2約束期間から 1.3 倍を差し引くということが決まったが、そういった形
で制裁を課そうというのは問題である。総じて、京都議定書は長期的、継続的あるいは柔軟
な対応といった、温暖化問題に対する配慮が欠如していると私は考えざるを得ない。
もう一つ重要な問題点は、途上国の意味ある参加が欠如しているということである。2010
年以降、先進国の排出量を途上国の総排出量が逆転もしくは凌駕するという状況の中で、途
上国の意味ある参加を確保しなければ、恐らく持続可能な枠組みにはならないと思う。
京都議定書も含めて、こういう地球環境条約の基本的な性格、あるいはそこに盛り込まれ
るべき要素は何かということを立ち戻って考えてみると、普通の条約と違い、この地球環境
条約というのは国際社会全体に対する利益というものを義務がつけられるという、世界に対
する対世的義務、erga omnes な義務と呼んでいるが、これは、少なくとも短期的な国家の利
害に関係するものではない。ただ、こういう国際レジームをつくってやっていくことが必要
だという立場から、各国はそのレジームを担う1単位として位置づけられているということ
になる。
したがって、性善説と書いたが、締約国についてはいろんなインセンティブ措置を規定し
ていくと、そして仮に条約の不履行ということがあったにしても、これは履行しようとして
できなかったのだということで、非行少年を少年院に入れるような形で、むしろこれを支援
していく。普通、条約の違反ということがあると、制裁を課すという話になるが、そうでは
なく、支援していくと。モントリオール議定書の場合は、ロシアが履行できないということ
で、日本は 100 万ドルか何か出させられたわけだが、そういう考え方になっている。
これに対し、非締約国に対しては性悪説というか、普通の国際関係と同じであり、非締約
国ですから不履行ということではないが、そういう国に対しては、むしろ国家責任を追求し
て制裁を課していくというのがモントリオール議定書の4条の貿易制裁の規定の根幹になっ
1
ている。
しかし、現在、温暖化問題については、締約国に制裁を課していこうと、非締約国はフリ
ーライダーで何の制裁もないという状況で、もちろんアメリカに対して制裁ということは実
行不可能であろうから考えられないわけだが、総体として、正直者がばかを見るという形の
条約レジームになりつつある。そういう条約は、やはり持続可能ではない。
そこで、地球環境条約におけるコミットメント、約束というものの性格を、特に温暖化の
問題に引きつけて履行確保の側面から考えてみると、気候変動枠組条約では、報告と審査、
report and review という制度を取っている。従前のというのは 1990 年ということであるが、
従前のレベルに安定化させるという、かなりマイルドな義務を課して、各国がそのアクショ
ンプログラムをつくって、それが履行できたかどうかをレポートするというところにとどま
った。
ただ、気候変動枠組条約を作る時も、その交渉のときには report and review ではなく、
むしろ pledge and review という形で、制約と審査と言っているが、これはOECDの資本
自由化のときに使われた制度であるが、この制約というのは一定の拘束性を持っている。少
なくとも禁反言の法理が適用されるという意味で、拘束性を持っている。
仮に気候変動枠組み条約で、もう少し pledge and review に近い形でできれば、今のよう
な京都議定書の拘束的な、強制的なレジームにはならなかったのかもしれないとも思う。京
都議定書は、拘束的あるいは強制的な約束というものを6%、7%、8%という形で、数値
目標によって課していくという制度である。
第3番目に地球環境条約の基本的な性格としては、途上国の特別事情を配慮するというこ
とで、モントリオール議定書では、5条で、10 年間の猶予という特恵的な扱いを定めている。
途上国であるからアプリオリに義務が免除されるというのは、おかしいのではないかと思う。
もちろん途上国に対する特別配慮は必要だが、特別配慮の仕方は考えるべき問題である。
4番目に、地球温暖化の問題は、ある意味で軍縮条約と似ている。軍縮条約というのは軍
備を持っている国が軍縮するから意味があり、もちろん軍備を持っていない国も外野からい
ろんな応援をするのはよいが、しかし、特別利害関係国というか、主要国が削減ということ
に合意しなければ、恐らく国際レジームとしては意味ないだろう。
地球環境条約で一番うまく機能していると私が思うのは南極条約である。南極条約の場合
には 44 カ国ぐらいの当事国があるが、そのうちで 27 カ国は協議国というステータスを持っ
ている。27 カ国は南極の調査活動に実績のある国が中心になっている。つまり、そういう国
が南極条約体制を動かしているということになっているわけだが、そういった協議国体制の
ようなものが実際に条約を動かすという側面では重要であろうと思う。
4番目は、2013 年以降の枠組みを考える場合に、どういう方向で考えるか。一つは、今の
京都議定書、特に国別の固定キャップというものを前提にして、これが存続するということ
を前提にして若干中身を変えるかということである。これはcとかdで書いているように、
そういう方向では米国の参加はあり得ないだろうし、また途上国による参加も期待できない。
2013 年にどういうことになっているかということを考えてみると、最悪のシナリオが待っ
ているのではないかという気がしてならない。多くの先進国は、その数値目標を履行できな
かった。先進国の中で、日本のような立場の国と、例えばヨーロッパとはかなりとらえ方が
違うだろうし、途上国の先進国に対する非難あるいは、とりわけ京都議定書から離脱したア
メリカの裏切りとかという形で、最悪のシナリオが待っているような気がする。
そうならないためには、代替的なレジームをできるだけ早く提示することが必要であろう。
今の状況は、ちょうど 1982 年に国連海洋法条約が採択されて 96 年に発効するわけだが、そ
の 10 数年間の状況と非常に似ているのではないかと思う。この海洋法条約では、御承知のよ
うに、海洋法条約それ自体が深海底資源を人類の共同遺産ということで守ろうというところ
から出発しているわけだが、この条約の 11 部は、マンガン団塊とか、人類の残された最後の
資源というものを国際管理しようということで、国際海底機構あるいはエンタープライズと
いう国際組織を作って、そこで開発していくという、当時のソ連や途上国が推進した非常に
計画経済的な発想であった。
しかし、深海底資源の開発の資本や技術を持っているのは先進国で、米国はそういう 11 部
なら入らないと、独自に深海底開発のための協調国レジームという、ミニ協定と当時呼んで
いたが、そういうものを作り、独自にガルフとかそういうところに試掘のライセンスを発給
2
するということをした。
この条約は 60 カ国で発効することになっていたが、だんだん 60 カ国に近くなると、先進
国が言っていたことは、これが発効したら深海底機構もつくらなくちゃいけないと。莫大な
お金がかかるわけで、条約をつぶすのに、発効させるのが一番いい方法だと考えていたわけ
である。
しかし、そういうわけにいかないだろうと、国連事務総長の斡旋で、この 11 部を何とか棚
上げというか、凍結というか、死文化させようということで、結局、11 部の自主協定という、
11 部に葬式を出すという趣旨の協定が別途できて、それで発効するということになった。
もちろん深海底資源の問題が、南アが国際社会に復帰するとかいうことで経済制裁が解除
されて、南アの鉱物資源がどっと出てくるとか、冷戦が終わって米軍のそれまでためていた
ニッケルやコバルトが一気に市場に放出されて、深海底開発そのものの市場性がなくなった
ため、そういう合意ができたわけである。
そういう状況が今の京都議定書の状況ではないか。アメリカは最近、ビジョンという独自
の対策を公表したが、これは義務的なものではなく、各国が裁量的にやるという趣旨で、非
常に似ているのではないかと思う。
そういうことを考えてみると、海洋法条約の場合には、まだアメリカは入っていないが、
何百年かの国際慣習法の歴史があり、その慣習法で規律する部分が多いので、国際法として
破綻するということにならないわけであるが、京都議定書の場合には、これがそのまま存続
するとは考えにくい。
そこで、私の資料の裏側の(2)であるが、ここが私のメーンである。仮に京都議定書の
外で大々的な枠組みとしてレジームを考えるという場合には、どういうことを考えなければ
いけないかと。
第1には、この問題は 50 年、100 年単位の長期的な問題であって、それくらいの期間存続
するような枠組みをつくらなければいけないということである。そういう継続的な枠組みを
可能にするようなレジームは、京都議定書が採用しているような5年とか 10 年で期間を区切
って、その期間内に目標が達成できたかどうかというのを次の期間に反映させていくという
のは、国内ではできるかもしれないが、国際社会ではとてもうまくいかないだろうと思う。
固定的な義務を課すという制度ではなく、各国の個別事情にも配慮した柔軟な対応と、そ
れを可能にするような制度が必要であろう。それから、今のが6%、7%、8%で、国別キ
ャップで、トップダウン方式で行われているわけだが、これはセクター単位あるいは産業単
位の取り組みを積み上げて、ボトムアップで削減目標をつくっていくという、Policies and
Measures と言っているが、そういうものを前提にして、国際的にリンクさせるような枠組み
が必要ではないだろうか。
そういう意味では柔軟なシステムであるが、これはあくまでも拘束的な国家の義務として
履行を求める制度でなければいけないだろう。とりわけ、そこで求められる国家の義務とい
うのは、いわゆる維持の義務という、一定の法的、事実的な状態を維持するという種類の新
しい義務になる。つまり、ソフトローに、あるいは 92 年の国連気候変動枠組み条約のレベル
に戻るということにはならないということで、拘束的な制度。しかし、拘束的といってもい
ろんな意味があるわけで、これは後でお話しするが、そういうことが考えられるのではない
か。同時に、先ほどの協議国レジームのように、主要国のイニシアチブが保障されるような
機関が必要であろうということである。日本は京都議定書のホスト国でもあり、批准したと
いうことで、こういう提案をする正当性あるいはその立場は非常に強いものがあると思う。
ただ、守れないからということではなくて、京都議定書の固定的な制度では機能しないから
ということを強調していく。
同時に、実現可能な提案でなければいけないということである。国際環境税構想などいろ
いろ出されているが、そういうものは理想的なものであるが、実現ということでは無理であ
ろうと。
一つの例として、どういう提案ができるかということを、ほとんど思いつきのレベルであ
るが、考えてみた。1990 年に David G. Victor がGATTにならって、GACCというもの
をつくろうという提案を、中身は余りはっきりしないが。WTO/GATTというのは国際
経済組織の中で、恐らく唯一成功した組織ではないかと思う。特に関税引き下げということ
について。関税引き下げというのは、排出基準、排出量の削減ということと非常に似た性格
3
を持っていると思う。関税も放っておくとどんどん上がるわけで、したがって、ときどきラ
ウンド交渉をやって、東京ラウンドとかケネディ・ラウンドとかいう形でやって下げていく
ということになるわけである。
このGATTのモデルというのは、要するに、二国間主義と多数国間主義というものの組
み合わせで、まず二国間で交渉する。その交渉の成果が全加盟国に最恵国条項のもとで均て
んされていくというシステムで、これはセクター別とか産業別のアプローチによって積み重
ねて、一定程度に関税率が下がる。ケネディ大統領は 50%削減しようということでやって、
実際には、工業製品について 36%の削減ができたというわけだが、そういう形のフレキシブ
ルで、しかし、それぞれ合意した内容については拘束的なものとなるということである。
それから、途上国に対する問題についても、GATTで特恵制度の経験があるわけで、途
上国もかなり発展した段階になれば卒業させていくというような卒業条項もできたというと
ころも参考になるだろうし、協議国制度の設立といったこともその中に含めて提案するとい
うのがいいのではないか。
もちろん、それだけではなくて、いろんな付録をつけて、CDMの拡充とかいろんなこと
を考える必要が提案をする場合にはあるだろうと思うが、私が一つ考えているのは、WTO
のカウンターパートとしてのWEOといったようなものを非常に大胆にくっつけて提案して
いくと。ちょうど国連大学を東京に誘致したように、これを東京に作っていくというのがよ
いのではないかと思う。
【以下質疑】
○秋元委員 きょうの村瀬先生のお話で、京都議定書の問題点が非常にきちっと整理をして
いただき、これだけの問題点があるということが非常によくわかった。
これを本当に問題点のない実効性のあるものに切りかえていかなければいけないわけだが、
本当に 2013 年まで待たないと、今の枠組みはどうしようもないのかというのが私どもとして
は非常に疑問なところがある。
日本が批准をするときにも、京都議定書の問題点をほとんどまじめに議論されることなし
に通ってしまったというところがあるのだろうと思うが、少なくとも、この問題点を国のレ
ベルできちんと認識していただくことが大事なのではないかと思う。
さるところで、地球環境問題にどう対応していくかというお話を伺いますと、政府の方針
としては、一つはできるだけ多数の国が公平な立場で参加できるような枠組みをつくるんだ
と。それはまさに賛成なんだが、もう一つとしては、何とか早く批准を達成するためにロシ
アを説得するんだという話がある。将来、たくさんの途上国も含め、参加してもらえるよう
な公平な条約をつくるためにやらなければいけないプロセスなのかどうかということで疑問
がある。
特に深海底の問題について同じような状況があったというお話をいただいたわけだが、ア
メリカが入らない、途上国がこういう形で参加できないという状況がはっきりしているわけ
であるから、ロシアの批准を日本側から促進するのではなくて、議定書の問題点そのものを
ロシアの側にも理解してもらい、新しい枠組みに向けて、みんなで議論をしていくという流
れをつくっていく方が大事なのではないか。
そういう意味で、2013 年まで、完全に今のものはロシアが批准をしてでき上がって動かざ
るを得ないという前提で、しかも、それを日本側が促進するという形で動くということには
いささかの疑問があるわけだが、日本としてはそういう方向に向けてやれる選択肢というか、
手段というか、そういうものはないのか。その点をお伺いいたしたいと思う。
○新澤委員 二つほどお伺いしたい。
まず、最初の国家の権限の及ばない事項について合意したということ。意味がよく理解で
きなく、日本の国内の環境を改善するためにいろんな法制度というものがあって、それなり
に成果を上げていると思うのだが、それと比較した場合、なぜ京都議定書の目標が国家の権
限の及ばないものであるのかということをお伺いしたい。
もう一つ、2ページ目の各国の個別事情に配慮した柔軟な対応を可能にするような制度と
か、Policies and Measures にかかわることなのだが、この点は議題の2番目でもう一度同
じ話が出てくるので、そのときに伺いたいと思う。
4
○森嶌委員 質問ということではなくて、今の村瀬さんの国際法学者としての御議論は十分
存じておりますし、秋元委員がおっしゃったようなことは法律学者の中では議論していたわ
けです。例えば海洋法の場合は 20 何年かかっている、まだ実際にきちっとは動いていないわ
けだが。
温暖化の問題はああいう削減目標をつくったという、あの目標がよかったかどうかという
のが一つありますけれども、少なくとも放っておくと非常に温暖化が進むであろうというこ
とはわかっているわけで、その意味では、少なくとも法律家としての私は、セカンドベスト
かサードベストか知らないが、一つの動きが出てきているときに、今ともかくやらないと、
これだめだからというので放っておきますと、多分 10 年や 20 年はできない。そうして、温
暖化が完全に始まって、特に日本も強い影響を受けるようになってから始まったのでは遅い
ということで、法律的な議論と、もう一つは、これを今動かすことの政治的な、あるいは国
際的な意味とのバランスで考えているということを申し上げたい。
これは別に質問ということではなくて、一つのものをどういう角度で見るかということを
申し上げたい。村瀬さんのおっしゃったことに反対しているわけでは決してない。
○茅小委員会委員長 私も一つ伺いたいのだが、具体的な対応の考え方として、GATT/
WTOという話を出しているが、2国間主義と多国間主義との組み合わせというのは、貿易
の場合には大変よくわかるのだが、温暖化のようにグローバルな問題だと、どういう意味な
のかがわからない。つまり、2国間の交渉が排出権か何かだったらあり得るのだけれども、
一体どういうイメージで言っているのかが理解できないので、そこを御説明いただければあ
りがたい。
○坂本委員 先ほど秋元委員がおっしゃったロシアの問題なのだが、ロシアが京都議定書に
参加した根拠の一つは、彼らの方で持っているホットエア、この排出権をアメリカと日本が
買ってくれるだろうと。そういう中で、その販売の利益というか、代金でもって、ロシアが
これから実行していく排出の統計的な整備とか実情の把握とかにかかるコストを賄っていこ
うと、こういう前提でロシアは参加をしたんだろうと思う。
アメリカがいなくなって、今どういう状況にあるかというと、ロシア政府の人なんかと接
触すると、日本に早く排出権を買ってほしいということを盛んに言っている。私は、日本は、
みずからの技術で排出削減の努力をすると。次に、CDMとかJIというものを使って、み
ずから技術的に削減をするという。
それでも、なお目標達成に至らぬ場合には、排出権を買うということはあるかもしれない
が、今それは念頭にないと、私はそういうふうに応対をしている。アメリカが withdraw した
状況で、ロシアが本当にこれに入るインセンティブを持っているのかどうか。そこのところ
を経産省の方で把握しておられる限りで教えていただきたい。少なくともロシアが日本に早
く排出権を買ってくれといスタンス、あるいはそういうパーセプションが形成されるのはお
かしい。それはなぜかと言うと、「早く批准しなさいよ」ということを、日本政府というか、
日本側がロシアに迫るから、「入りたいけれども、お金がないので、お金を出してくださ
い」と、こういうやり取りになっている。
非常に奇妙な形の状況になっていると私は思っているので、ロシアは今、どういう状況に
あるのかというのをぜひ教えていただきたい。
○茅小委員会委員長 今までの皆さんのコメント、御意見に対して、村瀬教授から。
○村瀬教授 秋元委員の御指摘は、そのとおりと思いますけれども、京都議定書は非常に拙
速に、最終日、時計をとめて夜が白々と明けるころに、みんな疲れ切ったところで採択され
たという感じで、問題点が煮詰まらなかった。
ただ、そういう問題点を今さら指摘してもせんないという面もあるし、特に日本はホスト
国であったため、批准をしないという選択は恐らくなかったんだろうと思う。とにかく第1
約束期間はそれでやっていこうと日本は決めたわけですから、それは一生懸命、誠実にやっ
ていくと。
5
ただ、次のレジーム、次の枠組みということは、2005 年を過ぎますと第2約束期間の交渉
が始まるということは、要するに、今の京都議定書のレールでもうやっていくということに
なっていくわけですから、提案をするならば、その前にやらなければいけないと思う。
ロシアの説得という話は後の坂本委員の御指摘と同じように、経産省の方でお願いしたい
と思います。
新澤委員の国家の権限が及ばないということですけれども、下からなんですが、国家の権
限が直接及ばないという意味で、例えば税金や関税やそういう問題であれば、もちろんそれ
は国家がマンデートを持っている。しかし、各産業部門でどれだけの排出削減をするかとい
うことは、少なくとも今の日本のように自由経済主義体制をとっている限り、ダイレクトに
それを何パーセントにするということはできない。省エネ法でトップランナー方式を採用し
たりとか、いろんな方式で、間接的に影響を与えることはできるけれども、6%ということ
になる保証は全然ない。そういう意味で、マンデートが及ばないという表現を使わせていた
だいたということであります。
それから、WTOモデルでありますけれども、関税の場合には、確かに2国間で関心品目
について、鉄鋼でこちらは 20%下げるので、そちらは自動車で 15%下げてほしいとか、そう
いうバイで関心品目について交渉して、その成果を均てんしていくということであるけれど
も、温暖化の場合も、恐らくそういう似たような性質を持っているんだろうと思う。もちろ
ん貿易に乗っかる問題については、そういう発想が有効だろう。
しかし、国内だけでやっている運輸やそういう問題について、どうやって交渉していくか
ということになりますが、ここで言っているGATTモデルは、貿易に乗せていくという前
提ではなくて、それぞれの国で必ずしも2国間でなくてもいいかもしれないが、特定国間の
関心事項について交渉をするというのが、セクター別あるいは産業別の交渉をやる上で一番
現実性があるんだろうと思う。
ですから、ある研究会で関室長が言われたような、例えば一定の排出基準をクリアしてい
る鉄鋼なら鉄鋼については、国別キャップから排除していく、除外していくといったような
特典を与えるとか、いろんな形でテクニカルな面は考えられるだろうと思うけれども、私は、
考え方の基本というものを示したいということで、単に例として提示しているだけである。
○茅小委員会委員長 最後のところは、2国間の相談で一定の削減の仕方を考えて、協調し
てやるといった意味ですね。
○村瀬教授 そういうことです。
○岡部委員 実際、ロシアがどの程度の余力を 90 年比で持っていて、現状どうかということ
もあわせてお教えいただきたい。
もう一つは、最近聞いたのだが、ロシアは日本のCDMを見ていると、どのくらいの金を
出すかを見て、その金よりも少ない金額でうちは上げるよという感じを持っているようなこ
とを聞いたことがある。そういうことも含めてお答えいただきたい。
○関地球環境対策室長 今、3人の委員の方々からロシアについての御質問があった。
ロシアの批准判断は各国が注視をしているわけだが、ロシアも例外なく、その批准判断に
当たっては、これまでの国際的な交渉の経緯あるいは国際社会からの圧力あるいは国際社会
からの期待という要素と、その条約がロシアに対して持つ意味を双方兼ね合わせて判断して
いるところだと思う。もちろんロシアも国際社会からの期待が非常に大きいということは百
も承知しているわけだが、ロシアも何分大きい国ですので、京都議定書が自分の国にとって
どういう意味を持つかということを真剣に研究しているところだと聞いている。
その中には排出量取り引きでいろいろ得をすることもあるのではないかという期待も当然
あったわけで、今御指摘ございましたが、レベルとして、排出量は 90 年に比べてロシアは6
割から7割の水準である。ロシアの削減目標というか、京都議定書の目標はプラスマイナス
0%ですから、今のまま排出量が推移すれば3、4割の余剰枠を持っているということにな
る。
ただ、その点についてもロシアにはさまざまな見方がある。今、ロシアの中からはまぜこ
ぜになったいろんなメッセージが出ている。新聞報道でもさまざまに分かれる報道がされて
6
いるぐらいである。私の想像では、それはロシアの中の実態をあらわしているのではないか
と。温暖化問題というのは、そもそもロシアにとってどういう意味を持つのか、ロシアにと
って温暖化は損なのか得なのかというところまで含めて、いろんな人がいろんな議論をして
いる。したがって、今後の見通しはなかなか立てにくいところがある。
ただ、岡部委員から御指摘があったが、京都メカニズムの関係あるいは坂本委員からも御
指摘のあった日本への期待というところについては、ロシアの統一見解というものがあるわ
けではない。今のところ、それほどクリアなメッセージを我々は受け取っているわけではな
い。ただ、そういうことを言っている人もいるのだろうと想像できる。いずれにしても、排
出量取引については、2008 年にならないと始まらないことなので、今すぐに解決できるとい
う問題でもないような気がする。
それから、ロシアは9月に大きな温暖化問題についての国際会議を企画している。これは
おととしのG8サミットでプーチン大統領が表明したイニシアチブである。その場には世界
各国から温暖化に関する研究者、産業界、政府の人間が集まる非常に大規模なものになる。
よって、彼らにとっては一つ、その場が判断のメルクマールになるのではないかという見方
がある。一方では、そんなこともないだろうという見方もあるというふうな状況である。
○茅小委員会委員長 これはロシアの態度というのではなく、実際のデータという点で、た
またま昨日、あるシンポジウムがあり、そこで資源エネルギー庁からの委託でIIASAと
いう研究所がやった調査の話が報告された。そこでは、ロシアを含めて旧ソ連・東欧圏でJ
I、排出権取引その他で、どの程度のものが動いていて、そのポテンシャルがどのぐらいで、
お金が幾らかというデータを出している。報告が今年度中で出されると思いますので、そこ
で公開されると思うが、なかなかおもしろいデータだ。
数字はよく覚えていないが、今の段階で、現実にそういう交渉がなされているもので、
8,000 万カーボントンぐらい。平均の価格が、CO2 トンでですけれども、CO2 トンで、た
しか数ドルであったと思う。日本円でいうと、カーボントンで2、3,000 円。たしか環境庁
で提案している環境税がカーボントン当たり4、5,000 円だったと思うが、その半分ぐらい
だ。
そんなデータもあるので、かなり参考になるのではないか。
気候変動に関する将来の枠組みの構築に向けた視点
●資料4について関地球環境対策室長より説明
以下、質疑応答
○茅小委員会委員長 先ほどの村瀬先生のお話と基本的には同じ方向の問題提起であり、第
2約束期間以降も枠組みをどうするかという問題についてのいろんなポイントについて考え
方を整理したものである。
いずれにしても、第2約束期間以降において温暖化に対して何らかの抑制効果があるとい
う実効性と、できるだけ多くの国が参加するという、これは特に京都議定書の場合、成立し
ていないわけですけれども、そういったような条件が満たされる、そして、みんなが受け入
れられるものができればいいのだが、まさにこれからがこの議論の正念場だと思うので、皆
様からいろいろなコメントあるいは提案があればお聞かせいただければありがたい。
○河野委員 京都議定書が決まったときに、後になってしまったと思ったことが幾つかあり、
先程村瀬先生から御指摘あったように、根拠があるかのごとく、なきがごとき数字がとにか
くまかり通ったこと、それをとにかく飲んだこと、いろんなことがあって、環境外交上、あ
れが成功例だとは決して言えない要素をたくさん持っていたと思う。
きょう初めて、第2約束期間について、こういう点に配慮したことを考えて、それをベー
スに提案しようという意欲的なあれがあって、今までこういう広範なつかみ方をしたのを聞
いたことがなかったので、経産省はとにかく一つの案らしきものを作ったと思った。
産業界だけではないのだが、全体で京都議定書の失敗があったら、それをこれから繰り返
さないためにも、特に産業界は後になってから、ぎりぎりになってから批准反対だとかいろ
んなことを言って、それはそれなりの理由があったのだが、そのことを繰り返さないために
7
も、ここには産業界の代表もたくさんいるのだから、それぞれシンクタンクもお持ちであり、
自分で考える能力なりスタッフもたくさん持っているのだから、政府がこういう案を固める
に当たり、政府一本だけでは固まらない、後になって産業界が異議申し立てしたところで遅
いので、同時並行的に、一つの案らしきものが出たわけで、これをベースにしながら、民間
からも、学者からも、研究者からも、組織からも案が出てくるという状態がかなり活発に行
われて、その上でそれをまとめるというプロセスがあった方が納得いくと思う。
それはできる。産業界から反論がたくさんあった。そういう人たちは自分の問題で考えれ
ばいい。ただ通産に任せるだけでなく、環境省に任せるだけでなく、そういうプロセスをや
るのに、これはたたき台のたたき台、らしいものが出てきたことだけは大変な一歩前進だと
いう気がした。
○萬谷代理 私、鉄で仕事をしているのだが、ヨーロッパの会社とか、先進国以外の国の会
社の人たちと話をしていて、地球環境問題ということが、数年前に比べると共通の関心事に
なっているということを実感する。京都議定書を締約するとかしないとかということを抜き
にしても、本当に実行するということにつながっているかどうかは別として、非常に関心の
高いテーマにこの数年でなっているなという実感はある。
そういう意味では、京都議定書で一回こういう大きな壁をやったのには意味があったと思
うが、同時に、村瀬先生なんかの御指摘のあるような問題、そのとおりだと思うので、この
まま放置してずっと続けていくことにはきっとならないと思う。
したがって、ここの御提案のような新しい仕組みを提案したいと思うのだが、鉄の中で最
近起こっています議論は、先ほどの経済産業省の 17 ページの一番下にあるBATに近いこと
なのだが、世界で一番進んでいる、しかも実行可能な技術を組み合わせれば、ここまで行く
んだよということを事例を皆が共有して、技術を知らないということは少なくともなくそう
と。
それから、それだけではブレークスルーできないので、ブレークスルーするというのは個
別の企業がやってやれるものでない領域に入らないといけないので、国際鉄鋼協会という場
で、みんなで共同勉強しようという動きまで進んでいる。
だから、先ほどのどういう単位で仕事をするのかという中に、産業単位というのは意味の
ある単位ではないかと思うので、よろしくお願いしたい。
○新澤委員 前回及び今回も、いわゆる Policies and Measures というか、各国の数値、排
出量目標ではなくて、各国がどういう措置を採用すべきかどうかについての約束をしたらい
いんじゃないかという方向にだんだん行きつつあるように思うのだが、この議論は京都会議
の前にも主としてヨーロッパのEUが Policies and Measures ということで盛んに主張して
いたことだと記憶している。
当時は、各国が排出量目標を約束した上で、しかも各国が国内で採用すべき政策であると
か、当時、ヨーロッパは主に税に関心があったと思うが、さらに、今議論しているような技
術基準的なものまで、メジャーの方ですけれども、含めて議定書に入れたらいいんじゃない
かということを盛んに言っていたように記憶している。
そのとき、日本も含めてアンブレラの対応というのは、各国の事情いろいろあるので、事
情に配慮して、配慮できるような柔軟な制度にするには、そういう細かいことまで言わない
方がいいと、Policies and Measures まで言わない方がいいということで京都議定になった
と、私はそう思っていた。
もちろん、各国が排出量目標を自分の国ではこれだけできるという計算する、積み上げる
過程でそういったものを積み上げていくのは自由だと思うが、実際にヨーロッパの国々はそ
ういうことをやって京都会議に臨んでいる。しかし、ヨーロッパの国々も決して各国の積み
上げたものを国内でガチガチにやろうなんていうことは考えてない。
そういう議論からすると、そういう議論を踏まえると、今これを復活させるのかなという
ところにちょっと疑問を持つ。今の議論は、各国の排出量目標をなくし、技術基準だけでい
こうという、どちらかというと、そういうニュアンスに聞き取れる。そうすると、それはそ
れでいろいろな問題点があると思う。例えば技術が中心的なものであるというのはわかるが、
技術以外の対応はたくさんあり得るわけで、そういったものが全部抜け落ちてしまうと。例
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えば道路ばっかりつくる国と、鉄道をつくる国では全然違うと思うが、そういったことまで
入ってこないだろうと思う。
あるいは、自動車の燃費が上がれば、どうしても今まで車に乗らなかったようなところま
で車で出かけてしまう。そういう面もあるわけで、そっちの面に対する効果はかえって逆効
果だとか、あるいは、京都議定書というのは本質は費用負担だと思っているわけです。経済
学の間では大体そういう意見なのだが、各国がトップランナーの技術を導入するんだという
ことで合意したとしても、「日本、金払えよ」ということになったら、実質的な負担という
面では京都議定書と大して変わらないものになり得ると思う。
さらに余計な心配をすると、日本がセカンドランナー、サードランナーになったときに、
言うことを変えるのかどうかとか、そういったことまであると、この種の措置を国際的に約
束するというのは、従来はそういうものが中心だったということなのだが、そういうことは
やめて、排出量目標で約束しようというのが、私なりには、ある国際的な環境の約束の一つ
の進化形態であるように思っていたのだが、前回、今回で別の方向に行っているような印象
を持った。
○茅小委員会委員長
○秋元委員 今まで気候温暖化の話というと、最初に京都議定書ありしで、その後、パッチ
ワークでどうやって辻つまを合わせていくかという議論というか、いわば戦術論的なものが
多くて結構しんどかったわけだが、きょうのこの話は、先ほどの河野さんのあれではないの
だが、初めて本来の温暖化問題の基本に立ち戻った論点というか、そういうのを整理したと
いう意味で、出発点としては非常に意味があったのではないかと感じでいる。
ただ、実際に枠組みを実行して、各国を取り込んでいくという、その流れの中で、そう簡
単に一筋縄ではいかないということではないかと思うし、幾ら理論的に精緻であっても、そ
れを納得してもらうための具体的な取り組みも必要なんだという気がしている。先ほど先生
のお話にもあり、レジュメの中にもあったが、一方でマルチの交渉をしていきながら、一方
で2国間でやれるものはやっていく。特に影響力の非常に高い主要国の間で、そういう問題
を煮詰めていくというようなことで、実質的にそういう流れをつくっていくことが必要なの
だと思う。
そういうことで、一番大きいのはアメリカがどういう形で、我々がこれから作る枠組みと
いうものを理解し、それと一緒に協力をしてくれるかということだと思う。例えば、これを
構築しながら国際間、特にアメリカとの間でのチャンネルをもう少しきちっと構築をして、
その了解を取りつけていくということが非常に大事だという気がしている。
財界の方でも、例えば日米財界人会議で、環境問題は一応議題に出しているが、前々回の
とき、アメリカの財界の方が環境問題を議論する雰囲気にないということで、門前払いに近
いような格好で議論にならなかったわけだが、去年の秋(前回)では、非常に財界人の方も
乗ってきた。
というのは、アメリカ政府そのものが、今度の Climate VISION で出ているように、かなり
はっきりした戦略の方向を打ち出してきたので、それに乗って産業界の中でも話し合いがで
きるようになるというようなことを考え出しているんだろうと思っており、そういうところ
で、例えばワークショップをつくっていく。そのワークショップの一つの議題のテキストと
して、今日のような問題を出して投げかけていくというような、そういう動きも必要なので
はないかなと感じている。
それから、こういうことで、第2約束期間に向けて着々とやっていくということは非常に
大事だと思うのだが、それと同時に、今、日本にとって何が一番の国益なのかということを
踏まえた行動もぜひ必要なのではないかという気がしている。
先ほどのロシアの批准の問題についても、日本が京都議定書の議長国としてのメンツで行
動するのか、あるいは本当に実効性のある枠組みを目指して、しかも国益を維持するという
立場にのっとって行動するのかというところが、今の日本の動きが非常に読みにくいという
感じがしており、京都議定書自体が矛盾点のあるということは非常にはっきりしているわけ
です。ただ、既にそういう形で動き出しているということもはっきりしているわけですから、
どこまで矛盾点を減殺しながら、実効性は上げていくという方向でいくと。
そうすると、なるべく多くの国の参加を求めるという基本原則とロシアに批准を強く求め
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るという行動とは矛盾をしているのではないかという感じがするし、そのあたりも整理をし
ながらやってもらえると大変ありがたい。
○原田代理 気候変動に関します将来の枠組みについては、2ページに基本的な要請事項と
いうことでまとめられているが、これらの内容については異論のないところだが、今、話に
もあったが、この要請事項の中には日本の国益といった視点が必要なのではないかと考えて
いる。
また、本会委員会の第 11 回の時に、多くの委員の方々から京都議定書の失敗を教訓にして
日本の国益を考えるべきだという多数の意見が出されたと記憶している。
気候変動に関する将来の枠組みという構築に対しては、まず日本として受け入れられるも
のは何かということをより大きな枠組みの中で考えるべきではないかと認識している。
また、要素として挙げられている、合意形成プロセス、参加へのインセンティブ、公平性
等については、今申し上げた日本として受け入れられるものを固めた次に検討すべきではな
いか。
また、日本におけるエネルギー供給を考えた場合、御承知のとおり、石炭や天然ガスとい
った化石燃料は将来にわたって相当量を海外から輸入し続ける。そこで、例えば現在我が国
のエネルギーセキュリティの大宗を担っております原子力については、温暖化対策としての
役割も含めて、どんなふうに位置づけていくのか、そういった議論をし、固めるべきではな
いか。
同時に、日本は非常にまじめに温暖化対策に取り組んでいるといった現状についても、今
以上に海外へ情報発信をしていく。そういったことにより、他の国々の理解を得ていくとい
うことが必要ではないか。
○米本委員 非常に基本的な話から始まっているので、私も具体的なことというよりは、こ
れまで出なかった視点を少し、これまでの議論、全くよく勉強になりまして、そういうこと
だと思うのだが、今までにない議論を少し指摘させていただく。
一つは、温暖化あるいは地球環境というのはいきなり地球レベルで京都議定書及び枠組み
条約をやったのだが、もう一つ 90 年代、ポスト冷戦後の環境ということでは冷戦のブロック
が終わった結果、リージョナルな環境協力が非常に活発化したことだと思う。ですから、途
上国あるいは参加していない国を巻き込むというか、そういう国を少しでもテーブルに乗せ
るという意味では、国連の代表を割り振るように、リージョナルな責任という枠組み、ある
いはリージョナルなカウンティングということを少し環境対策には入れてもいいのではない
か。いきなり地球レベルのことでやると、どうも空中戦みたいになってしまう可能性がある
のではないかと思う。
その点で、EUを見るときに、私は要点が二つあると思います。一つは、90 年に旧ソ連が
崩壊した結果、90 年代の初頭に東欧支援あるいは東ドイツの旧西ドイツ統合ということで、
90 年代初期に東欧に対する援助が始まり、それが地球温暖化プロセスの中で入り口は東欧支
援だったが、それが全部JIに切り変わるという。そういう意味では、ヨーロッパにとって
は入り口のところでは国際的なポジションが有利なところにたまたまいた。要するに、冷戦
の正面にあって、それが一気に崩れたために、瞬間的な経済変動がたまたま地球温暖化対策
という意味では有利に働いているということだと思う。
もう一つは、これは余り議論されていませんけれども、EUという枠組みそのものが新し
い社会を構築する。特に科学技術が発達すると、必要な国内措置というのは、民主主義とい
うのは時間がかかるわけだが、EU委員会のレベルで、EU諸国が達成すべき社会制度はこ
うだというふうに決めてしまい、数年以内に国内法を作れという、一番典型的なのは 95 年の
個人情報保護だと思うが、これは各国別にやっていったら、多分時間がかかったと思うが、
それでもEUの場合は、これまで長い間、主権の共有というのをやってきたが、それがたま
たま新しい国際共通の社会設計という意味では比較的うまく機能している。
今のEUの排出権取引のスキームの第2段階、第3段階、続いていくと思われるが、それ
でもこうやって議論する以上は、彼らは、役に立つ立たないは別にして、これは機能させる
こととして議論しております。そういう意味では、EUの国の2段階構えの政策決定の場と
いうのは、日本は参考になるのではないかと思う。
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そういう意味では、日本は温暖化だけではなく、むしろ地域の安定という視点から、ある
意味でアジアの環境保全の主軸になるようなポジションを取りながら温暖化の次期のスキー
ムを考えてもいいのではないかと思う。
○岡部委員 将来の新しい枠組みの要素について、大変整理された御説明だったと思うが、
将来を考えた場合のゴールイメージはこれからなので、見えてない感じがする。
その中で、こういった長期的な議論をする際には、そのテクニック的な問題の前に、あら
かじめどういう着地点を目指すのかということをイメージ的に描いていく必要もあるのでは
ないか。
もともと日本は京都議定書の議長国であったということで、根拠がないとは言わないが、
ドタキャン根拠で、本流の方では何とか横ばいにして、亜流の森林で 3.7 とか、京都メカニ
ズムで 1.8 とか、そういう形でヨーロッパにないものを何とか認めさせて6%の問題をクリ
アしていこうという苦肉の策で決着している。したがって、そこにはもともと経済成長から
考えて本流をゼロにするということ自体、基本的には土台無理なところがあるという感じが
する。
これからを考えたとき、2013 年というところまで、とりあえず今の延長線上でいって、そ
こから新たなことをという感じでいく前に、何とか 2030 年までの間に中国を、アメリカを、
それからインドを、そして途上国全般を、義務化する形に引き入れないとしても、少なくと
も地球温暖化全体に対するどういう役割を彼らが少しでも果たすかということを、もう少し
京都議定書を離れた弾力的な対応によって引き入れてくるということが必要なのではないか。
アメリカの場合、原油が半分は自分のところの生産国であると、電源構成を見ますと、
70%、石炭を使っている。そういう状況の中で、土台アメリカが出てきて約束をした人と国
内でエネルギーを相当知っている人の間に相当ギャップがあったんじゃないかと思われるほ
ど、当然の離脱ではなかったかと思う。
それから、中国あたりは、1人勝ちの経済成長の中で、石炭も何百年という形で埋蔵量を
持っておって、そこが普通の化石燃料に比べれば 1.34 倍の石炭を炊こうということもベース
にはあって、とてもじゃないという感じで逃げているが、アメリカにしても、中国、インド
にしても、あるいは途上国にしても、義務化のために引き入れるというのではなく、本当に
地球全体のためにこの問題についてはある効率的な努力をしなければならないという方向に
持っていく必要があるのではないかと思う。
特に最近、途上国、とりわけ中東あたりの話を聞くと、この前の石油会議でも、リファイ
ナリーは0フレアを目指すと、油田についても大きい油田はミニフレアを目指すと、小さい
油田はゼロフレアを目指すと、そういうようなことを、持続可能社会、均衡への対応という
ことも含めて、そういうことをはっきり言うほど意識は高まっている。
したがって、そういうところが安心してインセンティブはあって、自分らが義務ではない
けれども、地球全体のために役に立つ、そういうことを先進国との間に具体的なプロジェク
トとして組んでいくことによってやると。そういうことが考えられれば、かなり成果は上が
ってくるのではないか。現実に太平洋の島国は、少なくとも海面が上がって国ごと移民を考
えようとしている国があるほどに、水面が上がるという議論はあっても、温暖化の根拠はは
っきりしている。
そういうことからすると、もっと具体的に、今の状況の中で 13 年を待つんじゃなくて、こ
の段階でインセンティブを与え、発展途上国を義務化でない形でアメリカも含めて引き込ん
でいく、そういうことを考えていくという先を読む前に、現実に立脚した形の地球全体に貢
献するような施策を日本としてもリード役を果たしていく必要があるのではないか。
○坂本委員 将来というか、第2約束期間をいかなる形にするかというのは、第1約束期間
の京都議定書の批准に関する我が国の利害得失に対して大変重要な問題だと。
その点で一つ、これはお願いみたいなことになるのだが、環境保護に熱心であると、ある
いはそれに積極的であるということと、不公平、不公正な京都議定書に反対するということ
とは違うんだということをぜひ国内の議論、国内の合意形成で、はっきり政府としてもそう
いうリードをしていただきたいと思っている。
環境の要素というのは、既に各産業というか、消費者、マーケットにおいて非常に重視さ
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れているわけで、自動車の燃料電池を初めとして各企業、業界がいろんな形でそれに適した
技術のブレークスルーをやっているということと、拘束的、義務的な京都議定書でアメリカ
が withdraw しているという側面とが混同されてはいけないと思う。
その点で、きょう村瀬先生が御指摘をいただいたのは、まことに一つ一つが十分な議論を
尽くさねばならない非常に重要なポイントを御指摘いただいたと改めて感謝している。
とりわけ、第1約束期間についている罰則は第2約束期間の排出量から3割増しを削減す
るということだが、第2約束期間の合意が各国の平等な責任分担という形で、また拘束的な、
義務的なものとして本当に形成できるのか。その見通しは、私はないと思う。EUだって、
自分に本当に影響が出てくるような削減義務を課されたときには、彼らとて産業の競争力あ
るいはアメリカとの負担の公平ということを声高に多分言い出すだろうと思う。
したがって、ヨーロッパは常に環境保護に前向きであるという前提は取るべきではない。
ましてや、中道左派政権が主流を取り、それにグリーンパーティが参加している一時期のヨ
ーロッパの政権構造が将来とも変わらないということはあり得ない。中道右派政権が幾つか
の国で出てくるわけで、したがって、環境保護にヨーロッパが熱心であるということは事実
ですけれども、それが政治的な合意形成として義務づけのものに必ずなるという前提は、私
はおかしいと思う。
その点はアメリカも同じ状況であろうか。民主党が出てきたとしても、恐らくはこういう
義務的なものというのは乗ってこないのではないか。とすれば、翻って、第1約束期間の罰
則とは一体何なのか。第2約束期間が定まらないのに第1約束期間の罰則を適用するという
のはおかしいのではないか。だとすれば、さらに国内政策して慌てて環境税とか産業界のコ
ストあるいは国民生活のコストをもろに負担させるような方策は取るべきではないと深く思
っている。
そういう意味では、この問題について、第2約束期間を本当にどうするのか、皆が人類共
通の課題であるとすれば、皆が平等に公正に参加できる仕組みと、とりわけアメリカがどう
いう客観的条件であれば世界の他の国々と手をつないで参加できるのか、そして、アメリカ
が入らないのに中国やインドや途上国を、「入れ、入れ」と言っても入るわけがなく、そこ
のところの戦略的な手順をしっかり我々は作って、第1約束期間のときのような轍を踏まな
いと、我が国の産業界だけが一人不利な扱いになるような仕組みを何としても今回は避ける
必要があると考えている。
○大國委員 きょうの村瀬先生の話で、私は勇気づけられ、また今まで何年も論議していた
ものが、論点が少し間違っていたのではないかということを反省している。こういう時点で
改めて新しい視点で考えるという会議にこれが変わっていくというときなので申し上げるが、
日本は明らかにエネルギーに関しては超先進国の部類に入っている。その中で、なおかつ、
さらに大変な努力をしなければならないというのは何かが間違っていると思う。
世界の途上国あるいは低開発国は全然入る様子がないということは、基本的に、この地球
温暖化というものに取り組む姿勢として考え直さなければいけない。私も二、三途上国でい
ろいろ質問をして歩いてまいりましたが、全然関心がない。そういうところを引き入れない
限り、温暖化の論理は積み上がっていかないと思う。
したがって、もっと緩い枠を一つは考えていくという。国際的にそういうチームでも作っ
て、どの国ではどうだということを全部やって、どういう段階でどうなってくるというよう
なことまで考えるという努力を一方ではしていく。それも、ある程度目標値を出せるような
ところまで考えていく必要があるのではないかと思う。
一方、私ども日本は相当努力をしているし、この会議が始まって以来、トップランナー方
式などで、さらにいい技術が出てくる。これはこれで努力を続けていかなければいけないと
いう、日本としては2段構えの考え方で今後進めていく必要があるのではないか。何として
も、アメリカが入るというよりも、途上国がみんなこっちを向いてくれなければいけないと
いうことに特に考えをいたしていただきたいと思っている。
○植松委員 ややプリミティブな議論に戻るのかもしれませんけれども、ちょうどいい機会
ですので。
今やっております、とりあえず批准をしたところで私どもが言ったことは、アメリカも抜
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けていて実効がほとんど上がらない、それで日本だけ最も負担の大きいところだけがみずか
ら進んで義務づけを受けるというのはどういう意味があるんだということについて、日本の
ほとんど世論、政治家を含めて、与党も野党もみんな環境だからということで批准推進をや
ったのですが、まさに村瀬先生が言われたようなことが指摘されているわけで、原点にもう
一度戻って 2013 年以降のことについて考えてみるべきではないか。
そこで、それぞれが実効を挙げるということ。これは地球規模の問題ですから、したがっ
て、地球規模で参加すると。そうすると、それぞれ負荷の大きいところ、つまり炭酸ガス排
出量の大きい国が参加しなければいけないわけですが、そのときに、みんなが参加するかし
ないかというのは、むしろ不参加のディスインセンティブというのがみんな認識しなちくゃ
いけないと思う。このままいったら地球がどういうふうに温暖化になり、その結果、地球の
気候がどう変わり、人類にどういう悪影響が出るのかということについて、ある程度共通な
認識、共通の予測を持つようになれば、これは大変だと、人類共通の問題だと、LDCも黙
って不参加というわけにいかないとなってくると思う。
まず、本当に大変なんだということで、予測の精度を上げていくということをやらなけれ
ばいけないのではないか。とりあえず、ある程度のところまでは地球が温暖化するというこ
とまでははっきりしているけれども、次の気候変動の予測について、私が聞いている範囲で
は、幾つかの予測のシミュレーションがあるけれども、異なったものもあるし、精度は非常
に低いと、ともかく、変わることは変わるだろうという程度である。
具体的に言うと、変わり方によってはプラスになる国・地域もあれば、非常に悪影響を受
ける地域もある。そうすると、負担の問題についても、それぞれそれも加味したコストアン
ドベネフィット議論でやれば、負担も違ってくるはず。そこまでは言わないにしても、人類
共通の危険性があって人類の存亡にかかわる問題だという共通認識が出てくる。とにかく参
加しようと。
参加のときに、負担の公平の議論をそこでやればいい。日本として、先ほど村瀬先生のお
話を伺っていて感じたんですが、2013 年は最悪の事態、シナリオを迎えるんじゃないかとい
う中で、日本は恐らく自分は守れず、しかも、ほかの主要先進国あるいは主要排出途上国も
参加しない中で、日本だけが非難されるという事態になって、今日と同じように、「えぇ格
好しい」という感じの議論で、また無責任な議論をやっていくということになる可能性が非
常に高いので、むしろ日本が先にそういった気候変動、地球温暖化、それによって生じる影
響についても率先して、研究なり科学的な究明について率先して音頭を取っていくとか、い
ろいろな形で、もっと地球全体の問題として参加しようという議論を高めるような提案をし
て、その中で負担の公平議論とか実効ある措置をどうしたらいいか、その中て我が国はこれ
だけやるという議論を持っていかないと、日本は非常に大変な目に遭うのではないかという
気がするものですから、そういった議論をぜひやっていただければと思います。
○茅小委員会委員長 一当たり意見をいただいた。ほとんどコメントなので、答えというこ
とではないかと思うが、事務局から、今の話に対して何かあれば。
○関地球環境対策室長 さまざまな御指摘をいただいたので、次回は3月の終わりに予定し
ておりますが、その際に幾つかオプションを提示したいと思う。その際に、今日いただいた
さまざまな御指摘、コメントを盛り込ませていただく。
−了−
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