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No.73
LAAN-J-MS073 GC-MS Gas Chromatgraph Mass Spectrometry ワイン中の2,4,6-トリクロロアニソール の高感度分析 - HS-Trap GC/MSによる高感度分析 - 73 Analysis of 2,4,6-Trichloroanisole in Wine using Headspace-trap GC/MS <紹介> コルク栓から生じる2,4,6-トリクロロアニソール(TCA)によりワインが汚染され異臭を生じることがあります。その臭 気閾値は低いため,モニタリングには高感度な測定が必要とされます。従来、測定手法としては濃縮効果の高い パージ・トラップ法や加熱脱着法などが使用されてきました。ヘッドスペースサンプラー(HS-20)は、ヘッドスペース ガスの濃縮が可能なTrap機能を有します。 本データシートでは、HS-Trap GC/MSを用いた、ワイン中のTCAの高 感度測定例をご紹介します。 TCAの構造式をFig.1に、マススペクトルをFig.2 に示しました。 % 100 196.9 209.9 50 0 Fig.1 TCAの構造式 Structure of TCA 166.9 62.173.0 50.0 75.0 97.0109.0 100.0 198.9 147.1160.1 177.0 125.0 150.0 175.0 200.0 Fig.2 TCAのマススペクトル Mass Spectrum of TCA ■装置と分析条件 Table 1 分析条件 Analytical Conditions HS-20 モード 保温時間 保温温度 サンプルライン温度 トランスファライン温度 トラップ待機温度 トラップ冷却温度 トラップ加熱温度 バイアル加圧時間 同平衡化時間 ロード時間 同平衡化時間 ドライパージ 注入時間 ニードルフラッシュ 注入回数 サイクルタイム サンプル封入量 GCMS-QP2010 Ultra トラップ 30 min 60℃ 260℃ 260℃ 80.0 ℃ 80.0 ℃ 280.0 ℃ 2.0 min 0.1min 0.1min 0.1min 5 min 20 min 20 min 3 50 min 5 mL GC部 カラム カラムオーブン温度 キャリアガス制御 キャリアガス圧力 注入モード サンプリング時間 追加フロー APC1 APC3 MS部 インターフェース温度 イオン源温度 溶媒溶出時間 測定開始時間 測定終了時間 測定モード 選択イオン(m/z) イベント時間 Rxi-5ms 内径0.32mm長さ60m df=1.0 μm 50℃(1min)-10℃/min-300℃(5min) 圧力一定 180 kPa スプリットレス 3 min 100kPa 50kPa 280.0 ℃ 230.0 ℃ 14 min 15 min 20 min SIM 211.9, 209.9, 196.9, 194.9 0.2 s 73 (x1,000) 211.90 2.0 209.90 ■感 度 Sensitivity 1.5 ワイン中にTCAが1ng/Lとなるように添加した試料 を、HS-Trap法にてSIM測定しました。(Fig.3) 低濃度のTCAが高感度で分析できていることがわ かります。 ワイン中にTCAを100 ng/Lとなるように添加し、ヘッ ドスペース-GC/MS法とHS-Trap法にてSIM測定した 例をFig.4,5に示しました。両者を比較したところ、HSTrap法では10倍程度の感度向上が可能でした。 1.0 0.5 16.75 17.00 17.25 Fig.3 HS-Trapによるワイン中TCAのSIMクロマトグラム (1 ng/L TCAをワインに添加) SIM Chromatogram of TCA in Wine with HS-Trap ( 1 ng/L TCA spiked in Wine ) (x10,000) 211.90 3.0 209.90 (x1,000) 211.90 209.90 2.0 2.0 1.5 1.0 1.0 0.5 16.75 17.00 16.75 17.25 17.00 17.25 Fig.5 HS-Trapによるワイン中TCA のSIMクロマトグラム (100 ng/L TCAをワインに添加) SIM Chromatogram of TCA in Wine with HS-Trap (100 ng/L TCA spiked in Wine) Fig.4 従来のヘッドスペース法によるワイン中TCAのSIM クロマトグラム(100 ng/L TCAをワインに添加) SIM Chromatogram of TCA 100ng/L with conventional HS (100 ng/L TCA spiked in Wine) 面積 (x10,000) ■直線性および繰り返し分析精度 R2 = 0.99991 Linearity and Repeatability 5.0 ワイン中にトリクロロアニソールを所定濃度になるように添 加し,直線性を確認しました。(1-100 ng/L Fig.6) 良好な直 線性が得られました。 2.5 ワイン中にトリクロロアニソールを3 ng/L になるように添加 し、ピーク面積の繰り返し再現性(n =5)を調べました。(Table.2) CV値5%以下と良好な値が得られました。 0.0 0 50 濃度 Fig.6 TCAの直線性 (1-100 ng/L TCA をワインに添加) Linearity of TCA (1-100 ng/L TCA spiked in Wine) Table 2 TCAの繰り返し面積値再現性 (n=5 3 ng/L TCA をワインに添加) Area Repeatability of TCA ( n=5 3ng/L TCA spiked in Wine) AREA TCA m/z 211.9 1 2 3 4 5 3,103 3,051 2,925 3,020 2,742 平均 2,968 %RSD 4.79% ■まとめ Conclusion 本データシートでは、HS-Trap GC/MS法によるワイン中のトリクロロアニソールの高感度測定例をご紹介しまし た。 数ng/Lレベルにおいても十分に測定可能であることが確認できました。 ワイン中のトリクロロアニソールの モニタリングに、HS-20を用いたHS-Trap-GC/MS法が有用であることが確認できました。 初版発行:2013 年 1 月 © Shimadzu Corporation, 2013