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topic1203.
日本銀行下関支店
〒750-8601
下関市岬之町 7-1
TEL:083-233-3113
FAX:083-228-1021
BANK OF JAPAN
SHIMONOSEKI BRANCH
日本銀行
山口県経済の構造的な変化とその対応
―中長期的な成長の実現に向けて―
山口県経済は、人口減尐などのさまざまな構造的な変化に直面しており、これは
今後の県経済の動向を左右する重要なポイントである。本レポートでは、県内にお
ける変化への対応の動きや今後の課題等について簡単に整理した。
NO.29
2012年3月
日本銀行下関支店
本ペーパーは、天白隼也、中村結香が作成しました。
内容に関する照会は、日本銀行下関支店総務課・陰山敦司、天白隼也
(Tel:083-233-3113、E-mail:[email protected])までお寄せ下さい。
本ペーパーは当店 web サイト(http://www3.boj.or.jp/shimonoseki/)に掲載しています。
1.はじめに
山口県は、①人口の減尐や高齢化の進行、②グローバルな競争環境や国内産
業構造の転換、③就業構造の変容といった、現在日本経済が直面している構造
的な変化やその影響が典型的に表れている地域である。本レポートでは、こう
した変化の特徴や県内で既にみられている変化に対応した前向きな取り組み事
例を整理するとともに、県経済が中長期的な成長を展望するうえで重要とみら
れる視点について示唆する。
2.県経済に影響を与える構造的な変化
(1)人口の減少と高齢化の進行
山口県は、早くから人口が減尐に転じているほか、老年人口指数(老年人口
<65 歳以上>/生産年齢人口<15~64 歳>)も急速に上昇している(図表1、
2)
。こうした中、県内の民間の消費活動も弱めで推移している(図表3)。
(図表1)
110
総人口の推移
(図表2)老年人口/生産年齢人口の推移
(指数、1980年=100)
(%)
50
山口県
105
40
100
30
山口県
95
全国
中国地方
20
全国
中国地方
10
90
1980年 1985
1990
1995
2000
2005
1980年 1985
2010
(出所)総務省「国勢調査」
1990
1995
2000
2005
07
08
2010
(出所)総務省「国勢調査」
(図表3)民間最終消費支出(名目)の推移
(指数、1996年度=100)
106
山口県
104
全国
中国地方
102
100
98
96
96年度
97
98
99
00
01
02
03
(出所)内閣府「県民経済計算」
1
04
05
06
09
(2)グロ―バルな競争環境や産業構造の転換
成熟期を迎えた日本経済の成長が減速している一方、アジアの新興国は急速
に成長しており、相対的にみた市場の規模は、国内が小さく、新興国が大きく
なっていく傾向にある(図表4、5)。こうした流れは供給サイドの動向をみ
ても同様であり、山口県の主要産業である化学産業では、汎用品を中心に海外
勢の存在感が一段と高まっている(図表6)。
(図表4)世界のGDP構成の推移
8
(図表5)2000 年以降のGDP成長率
(十兆ドル)
12
予測
2000年代に新興国を中心として急
速に経済規模が拡張
7
6
(前年比伸び率、%)
8
新興国(除くアジア)
アジア新興国
5
4
先進国(除く日本)
4
日本
0
3
世界
2
-4
日本
1
アジア新興国
-8
0
90年
95
00
05
00年 01
10
(出所)IMF「World Economic Outlook」
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
(出所)IMF「World Economic Outlook」
(図表6)世界の化学製品生産能力の推移
エチレン
塩ビモノマー
高純度テレフタル酸
( 1,000万t )
( 1,000万t )
( 1,000万t )
5
18
6
予測
予測
16
14
4
5
3
4
12
10
予測
3
8
2
6
2
4
1
1
2
0
0
02年
04
06
08
10
12
14
0
02年
04
06
08
(出所)経済産業省「世界の石油化学製品の今後の需給動向」
10
12
14
02年
日本
中東
その他
04
06
08
10
12
14
アジア(除く日本)
北米
また、加工業種では、電子部品・デバイスにおいて事業撤退に踏み切る例が
みられるなど円高等を背景に厳しい情勢が続いているほか(図表7)、内需型
の素材産業(石油精製業・製紙業など)においても、人口動態の変化や技術の
革新などから、国内需要は減尐に転じており、現在は需要に見合った事業規模
の適正化が主題となっている(図表8)。実際、県内の事業所が事業規模の適
正化に向けた事業再編の対象となるケースもみられた。
2
(図表7)山口県の電子部品デバイス産業
(図表8)国内製品需要(燃料油、紙)の推移
円安
(季節調整済指数〈2005年=100〉、円)
(10^15J「PJ」)
(万t)
140
12000
2000
120
11500
1900
100
11000
1800
80
10500
1700
10000
1600
60
鉱工業生産指数
40
燃料油需要(左軸)
9500
為替(円/ドル)レート
20
9000
円高
03
04
05
06
07
08
1500
紙需要(右軸)
09
10
11
1400
02年 03
(出所)山口県「山口県鉱工業生産・出荷・在庫指数」、
日本銀行
04
05
06
07
08
09
10
11
(注)燃料油需要は石油の一次エネルギー総供給、
紙需要は販売数量(紙計)
(出所)経済産業省「総合エネルギー統計」、「生産動態統計」
(3)就業構造の変容
(1)、(2)のような変化を受けて、山口県の就業構造はこの 10 年間で急
速に変容している。すなわち、生産年齢人口の減尐に伴って絶対数としての就
業者数が減尐しているほか(2000 年:約 74 万人→2010 年:約 67 万人)、就業
者の内訳をみても、製造業や卸・小売業などを中心とした就業者構成にかわっ
て、医療・福祉のウェイトが高まっているなど、内容面においても変化がみら
れる(図表9)。
(図表9)山口県の就業者構成の推移
0
20
40
60
80
100
(指数、2000年=100)
農林水産業
00年
7.2
11.6
18.0
8.5
18.2
100.0
36.6
建設業
製造業
05年
6.6
10.1
15.7
17.1
10.2
36.5
96.3
卸・小売業
医療・福祉
10年
4.8 8.2
15.2
14.6
11.4
35.1
89.4
その他
(出所)総務省「国勢調査」
上述のような変化の特徴は、①変化の流れそのものを変えることは難しいと
いうこと、②ターゲットとする市場の規模が縮小に転じているということであ
り、今後は、成長期のような規模の拡大への対応といった単線的な工夫・投資
よりも、独自性を活かした新たな需要の掘り起こしなど、変化に対応した新た
3
な挑戦を積極的に行っていくことが重要である。次節では、県内企業において
既にみられている変化に対応した前向きな取り組みについて紹介したい。
3.変化に対応した前向きな取り組み
県内企業では、
(1)海外・県外への事業展開などの地域的な側面と(2)付
加価値の高いスペシャリティ事業・成長分野への投資などの質的な側面の双方
において、変化に対応したさまざまな戦略が展開されている。
(1)海外・県外への事業展開
山口県は、全国の中でも輸出依存度の高い地域であるが(図表 10)、地元製
造業の間では、県内拠点からの輸出と同時に、技術が確立された汎用品分野を
中心として現地に生産拠点を展開し、成長する海外需要(とりわけ新興国需要)
を取り込む形で売上げの増加を図る動きがみられている(図表 11)。既にみて
きたように内需が減尐傾向にある中にあって、こうした取り組みは、国内の事
業所が、高付加価値品の生産・開発拠点だけでなく(後述)、海外展開を支え
るマザー工場という重要な役割を付与されることに繋がり、県経済にもプラス
に作用し得る。この点、素材業種が中心である山口県では、海外拠点を活用し
た外需の取り込みについてはまだまだ成長の余地が大きい。
(図表 10)経済規模に対する輸出額
(図表 11)県内企業の海外売上高比率
(単位:百万円、%)
都道府県
A.輸出額
(2009年)
B.県内総生産
(2009年度)
35
輸出ウェイト
(A/B)
(%)
10年間で約10%ポイント上昇
(20.4%→30.7%)
30
山口県
全国
1,418,131
5,476,589
25.9
54,170,614 483,216,482
11.2
25
(出所)財務省「貿易統計」、内閣府「県民経済計算」
20
99年度 00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
(注)山口県に本社が所在する上場企業の決算資料をもとに
下関支店が集計(海外売上高比率が10%超の企業ベース)
また、こうした取り組みは、非製造業における県外進出といった形でもみら
れており、小売、建設関連、サービス等の分野では、山口県に本拠を置きつつ、
独自のビジネスモデルを全国規模に展開する取り組みがみられている。
(2)県内におけるスペシャリティ事業・成長分野への投資
製造業では、汎用品分野を中心に生産拠点の展開による海外市場の獲得に注
力する先がみられる一方、県内事業所については、尐量・高付加価値なスペシャ
リティ事業の強化に取り組んでいる。とりわけ、成長が期待される①環境・エ
4
ネルギー関連の分野(リチウムイオン電池関係、太陽電池関係など)や、②医
療関連の分野(医薬品など)における積極的な投資が目立っている(図表 12)。
(図表 12)山口県における新規事業への投資例
平成22年
平成23年
企 業 名
業務内容
(単位:百万円、人)
企 業 名
投資額
計画雇用
220
3
1
チタン工業㈱
5,600
10
2
㈱藤伸
972
13
3
-
自動車用プレス製品
6,600
50
4
リチウムイオン電池用負極材製造
1,000
18
1
㈱宇部衛生工業社
廃棄物リサイクル
2
-
抗体薬治験原薬製造
3
-
医薬品製造
4
(株)サンメック
5
チタン工業㈱
6
日産化学工業㈱
医薬品製造
2,650
7
-
医薬品製造
1,976
投資額
計画雇用
2,600
12
466
22
有機化学工業製品製造
3,330
10
-
自動車用ミッション部品製造
1,900
10
5
-
自動車用シート用プレス加工品製造
1,100
10
8
6
-
貨物運送・保管
240
5
20
7
FDK㈱
フェライト製造
1,400
47
コールセンター
220
200
電子機器組立製造
120
10
240
5
チタン酸リチウム製造
商品配送
8
清進産業(株)
173
5
8
コープCSネット
9
長州産業(株) 太陽光発電システム製造
7,880
40
9
山口エヌエフ電子㈱
10
-
リチウムイオン電池用機能膜製造
2,226
40
10
-
燃料用タイヤチップ製造
11
武田薬品工業(株) 14,000
100
11
-
リチウムイオン電池用材料製造
12
戸田工業(株)
1,100
8
12
明石被服興業㈱
13
-
14
丸協運輸㈱
15
-
16
㈱徳山ビルサービス
倉庫業
業務内容
医薬品製造
酸化鉄・電子部品材料製造
倉庫業
商品配送・保管
船舶製造
有機質肥料製造
17
-
18
明和化成㈱
倉庫業
19
-
産業用機械製造
20
-
金属製品製造
21
㈱セイシン企業
22
大林産業㈱
23
㈱フジテクノ
プラスチック製造
学生衣料製造
8
800
30
80
2
13
-
LED関係材料製造
1,500
12
100
10
14
-
鉄スクラップ加工処理
380
3
5,600
5
15
-
リチウムイオン電池用材料製造
710
0
150
4
16
協和発酵キリン㈱
4,000
80
670
8
17
-
パン・菓子製造
220
5
1,200
8
18
-
各種機械・部品製造
220
10
内服固形製剤製造
54
1
19
山口リキッドハイドロジェン㈱
3,500
31
20
武田薬品工業㈱
食品製造
830
25
21
-
非鉄金属回収
木材製造
590
30
22
-
非鉄金属2次製錬・精製
油圧応用機械部品
179
2
23
-
57,350
441
24
25
計
2,035
※「-」は非公表
液化水素製造
インフルエンザワクチン製造
3,000
10
34,000
150
5,000
0
10,500
4
医薬品・農薬製造
2,140
0
-
リチウムイオン電池用材料製造
4,000
4
備後特殊金網㈱
産業用樹脂形成網製造
50
15
80,171
662
(出所)山口県
計
また、非製造業を含めた設備投資額(建築着工床面積<民間非居住用>)を
みても、このところ医療・福祉用(病院、介護施設等)の増加が際立っている
ほか(図表 13)、高齢者の介護ニーズを捉えた医療施設併設型のサービス付き
高齢者向け住宅事業が注目されている。今後は、同分野においても、単純な拡
大投資に止まらない、新たな付加価値提供の動きが拡がることが期待される。
(図表 13)山口県の民間設備投資額(建築着工床面積<民間非居住用>)の推移
250
※凡例中( )内は2011年のウェイト
(千㎡)
その他(37.9%)
宿泊、飲食業用(0.9%)
200
卸売、小売業用(6.0%)
製造業用(24.0%)
150
医療、福祉用(31.2%)
系列6
100
50
0
⎿
0
8
⏌
⎿
0
9
⏌
(出所)国土交通省「建築着工統計」
5
⎿
1
0
⏌
⎿
1
1
⏌
4.もう一歩前へ
3.でみてきたような先端的な分野は、産業の裾野が相対的に狭いため、県
内経済全体の確かな成長を実現するうえでは、基礎体力となる既存分野におけ
る潜在的な力をより一層引き出す努力が重要である。この点、2.でみてきたよ
うな生産年齢人口の減尐やモノづくりを取り巻く外部環境の変化を踏まえると、
今後は、非製造業を含めた産業全体としての取り組みが期待される。具体的に
は、(1)製造業における既存事業のリファインのほか、非製造業においては、
(2)交流人口の拡大などの需要面からの取り組みや(3)ミスマッチの解消
を通じた労働力の有効活用などの供給面からの取り組みが重要である。
(1)製造業における既存事業のリファイン
製造業では、優秀な現場作業員を採用したい企業と安定した職に就きたい高
校生との間でいわゆるウィンウィンの関係が構築されていることを強みに、安
定的な運営や品質の向上などの点で改善を積み上げている1。例えば、造船業
においては、経験を積んだ現場の技術者が斬新な商品の開発に成功し、円高下
でも新興国勢との差別化を図る高付加価値化戦略を展開している。このように、
力強く生産活動を続けてきた当地製造業ならではの地道な努力・改善こそ、企
業の競争力の源泉であり、今後の県経済を牽引する原動力と考えられるため、
引き続き製造業の取り組みには期待したい。
(2)交流人口の拡大
人口が減尐傾向にある中で県経済の成長を展望するうえでは、交流人口の拡
大は重要なテーマの一つである。山口県は、近年訪日観光客が増加傾向にある
東アジア諸国の近くに位置するほか(図表 14)、史跡名勝天然記念物が豊富で
あるなど(図表 15)、潜在的な魅力に恵まれていると考えられるが、こうした
潜在的な魅力を実際の観光・消費活動へと繋げる工夫――ハード面の整備だけ
でなく、ターゲット客層を意識したソフト面の充実を通じた個性的な需要喚起
策――に、地域一丸となって取り組むことが重要である。この点、既に周防大
島における「民泊」をウリにした修学旅行生の受入れや、海外および首都圏に
おける規制の緩和を通じた「ふぐ」ブランドの売り込み、周南・宇部地区にお
けるコンビナートを観光資源として利用した夜景観賞ツアーの企画などの個
性的な取り組みが県内各地でみられているが、今後も各地域において、「独自
性」を活かした需要掘り起こしの努力が一段と拡がり、交流人口の拡大に繋が
ることを期待したい。
1
山口県金融・経済レポート№22「高校新卒者の就職状況にみる山口県の工業高校の強さと
魅力」
(2010/5 月公表、日本銀行下関支店)参照。
6
(図表 14)近隣アジアからの訪日客数の推移
6
(図表 15)史跡名勝天然記念物の数
順位 都道府県
1
奈 良
2
京 都
3
福 岡
4
山 口
5
北海道
6
島 根
7
静 岡
8
大 阪
9
滋 賀
10
福 島
平均
全国
(百万人)
5
香港
台湾
中国
韓国
4
3
2
1
0
03年
04
05
06
07
08
09
10
(出所)日本政府観光局
指定件数
141
133
111
88
87
84
80
79
77
73
60
(出所)文化庁
(3)非製造業における労働力の有効活用
非製造業を中心として、働き方などに関するミスマッチが生じていることか
ら、限られた労働力を有効に活用できていないケースがみられている。この点、
下関市において、休漁期の仕事を工夫することで漁師業における雇用条件の改
善を進め、安定的な人材獲得を図るといった取り組みがみられているが、こう
した努力を一段と広げていくことが重要である。例えば、結婚・育児を理由に
離職する人が多い医療・福祉分野では(図表 16)、離職に伴い、希望勤務地の
変更を余儀なくされたり、(ブランクが空いたために)必要とされる実務スキ
ルを維持できなくなるなど、復職を希望しながら実現できないケースが尐なか
らずみられる(図表 17)。同分野は、需要に対して供給が追い付いていないと
みられるため、①育児と仕事の両立や②復職をサポートする枠組みを設けるな
ど、工夫次第で県内雇用の底上げに繋がり得るものである。
(図表 16)前職の離職理由(山口県)
25
(図表 17)離職者の状況(山口県)
(%)
(%)
全産業
20
13.9%
11.5%
15
10
製造業
卸・小売業
医療・福祉
有業者
47.8
48.2
53.8
48.7
無業者
52.2
51.7
46.2
51.5
12.5
12.3
15.2
19.0
5
就業希望者
0
全産業
(43.7%)
製造業
(28.0%)
卸・小売業
(54.5%)
(出所)総務省「平成19年就業構造基本調査」
医療・福祉
(78.5%)
定年のため
病気・高齢のため
結婚のため
労働条件が悪かった
会社倒産・事業所閉鎖のため
自分に向かない仕事だった
育児のため
(注)業種名下の( )内は就業者に占める女性の割合
(出所)総務省「平成19年就業構造基本調査」
離職後、就職を希望しても復職できない人が多い
このほか、生産年齢人口の減尐によって就業者数が減尐している現状を踏ま
7
えると、まだまだ進んでいない女性労働力の一段の活用や(図表 18)、高齢者
を含めた短時間労働の拡大などの柔軟な働き方の検討も重要な視点の一つで
ある。
(図表 18)山口県における生産年齢人口の就業構造(男女別)
0%
25%
男
(423,008人)
女
(434,948人)
50%
57.3%
26.5%
雇用者(正社員)
75%
10.8%
29.3%
雇用者(それ以外)
11.7%
その他就業者
100%
19.8%
12.0%
32.6%
非就業者
(出所)総務省「平成22年度国勢調査」
5.終わりに
山口県経済は構造的な変化に直面しており、この流れは先行きにかけても大
きく変わることはないものと考えられる。本レポートでは、既にみられている
変化への対応事例を紹介しながら、県経済が成長するうえで重要と考えられる
視点をいくつか示唆してきたが、こうした視点からみても、山口県が成長に向
けたポテンシャルを有していることが確認できたはずであり、いたずらに悲観
的になるべきではない。
ただし、こうした変化への対応は、今まで山口県経済を支えてきた事業の内
容や考え方の転換ないし変更を伴うものであるため、そこには様々な困難や障
壁が存在しているものと考えられる。したがって、それぞれの企業の努力だけ
でなく、行政や金融機関等による、変化へ対応する新しい動きをサポートする
環境づくりが一体となった取り組みが重要であり、日本銀行においても、
「成長
基盤強化を支援するための資金供給」の枠組みを導入・拡充するなど、こうし
た動きをサポートすべく努めているところである。
現在起きている変化は、ただ傍観しているだけではマイナスの影響が強いも
のであるが、対応の仕方次第ではプラスにもなり得るという点では成長力の源
泉でもある。日本銀行下関支店としては、こうした構造的な変化が山口県経済
におよぼす影響について引き続き注視するとともに、山口県経済が、現在生じ
ている変化を捉えて、中長期的な成長を実現することを期待したい。変化はピ
ンチであると同時にチャンスにもなり得るのである。
以
8
上
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