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日本企業の研究開発戦略と政策課題

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日本企業の研究開発戦略と政策課題
資料3
日本企業の研究開発戦略と政策課題
民間CTO定点観測インタビュー2007
中間とりまとめ
※
平成20年3月
経済産業省
※ METI研究開発課では、4年前より、民間技術企画部門を訪問しCTO他関係者との意見交換を続けており
(これまで約130社のネットワーク)、毎年そのうち何十社かを、定点観測的にインタビューしている。本資料は、
本年度インタビュー予定企業約40社のうち約30社までのインタビュー情報を分析・取りまとめたもの。
<目次>
1.民間研究開発投資アウトルック・・・・・・・・・・
2
<参考1> 我が国主要産業の国際競争ポジション
2.技術経営の動向
(1) 民間研究開発投資のシフト・・・・・・・・・・・・・・・
4
(2) 外部研究資源の活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7
(3) 研究開発のスピードアップと効率化・・・・・・・・・・・ 10
(4) 非連続的イノベーションへの対応・・・・・・・・・・・・ 14
(5) 知財の価値最大化(「強い特許」)への取組・・・・・・・ 18
3.国の研究開発への期待
(1) 公的研究開発の役割(研究開発プロジェクト、産学連携)・・・
20
<参考2> 科学技術関係予算の配分構造−日米構造比較−
(2) 技術戦略マップの役割・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
<参考3> METI「技術戦略マップ」
4.研究開発政策上の課題・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
1
75%
8,000
6,000
料
デ
学
空
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ビ
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売上高R&D比率(2006年度)
バイオ系
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22
;連結対象子会社(R&D投資額上位300のみ)
注)
高
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日
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東
東
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日
フ
主要企業における直近5年間の変化
-25%
2,000
20%
15%
10%
5%
0%
3,000
材料系
50%
-
25%
5,000
N
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東
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松
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ト
0
1,000
4,000
機械系
R&D伸び率(’06/’02)
9,000
エレクトロニクス系
7,000
注1)円の大きさは、R&D投資規模
注2)企業としては、R&D投資額(2006年度)が1,000億円以上(NTTを
除く)、売上高R&D比率(2006年度)が10%以上、又はR&Dの2002年度
に対する2006年度の増減率が50%増以上の企業を基本的に掲載
注3)一部の企業は、M&Aによる補正あり
注4)R&D投資額の計上方法を大きく変更した企業は除く
100%
2006年度
R&D投資額
(億円)
∼ (1) 研究開発投資200社
1.民間研究開発投資アウトルック
✔ 日本の民間研究開発投資は、上位200社(合計10兆9千億円)で全体投資額の9割を超え、上位20社で半分を
占める。エレクトロニクス、自動車、材料、機械、製薬が主たる産業分野。
✔ ここ5年(2002年→2006年)で、上位200社の研究開発投資額は、全体で約2割増。その内、製薬、自動車・同部
品、電子部品、精密電子製品関連企業が高い研究開発投資伸び率を示している。一方、総合メーカー、コンピュ
ターメーカーには研究開発投資を絞っている企業がある。
0%
<参考1> 我が国主要産業の国際競争ポジション
1000兆円
【情報サービス】
(15兆円、10%)
【情報通信機器※】
(40兆円、27%)
主要先端製品・部材の
売上高と世界シェア
【AV機器※】
(7.5兆円、47%)
【自動車】
(43兆円、30%)
100兆円
【電子部品※】
(9.0兆円、50%)
世 界 市 場 規 模
【ディスプレイ※】
(2.8兆円、35%)
10兆円
【通信機器※】
【半導体材料】
(2.0兆円、73%)
【半導体※】
(6.2兆円、22%)
【医薬品】
(7.5兆円、11%)
【液晶ディスプレイ材料】
(2.1兆円、65%)
【コンピューター及び
情報端末※】
(8.1兆円、19%)
【デジタルスチルカメラ】
(9,958億円、80%)
(3.8兆円、15%)
【その他の電子機器※】 【半導体製造装置】
(2.6兆円、29%)
(1.2兆円、30%)
【光ピックアップ】
(3,893億円、83%)
【LCD※】
(2.2兆円、39%)
【HDD用磁気ヘッド】
(3,647億円、57%)
1兆円
【白色LED】
(1,680億円、80%)
【多層プリント配線板】
(6,831億円、45%)
1000億円
0%
−バブルの大きさは日本企業の売上高
−( )内は日本企業の売上高と世界シェア
−「※」印は、表中の構成部材の重複があるもの
(出典)
・ものづくり白書(平成18年度版)、JEITA「電子情報
産業の世界生産動向」、富士キメラ2005年推定
・自動車は売上高上位12社より算出
・1ドル=111円
25%
【HDD用
スピンドルモータ】
(1,751億円、100%)
【LCDカラーフィルタ】
(3,623億円、95%)
【半導体封止材】
(2,108億円、96%)
【単結晶シリコンウェハ】
(5,331億円、68%)
【光ディスクドライブ
半導体レーザ】
(1,442億円、98%)
【LCD蛍光管】
(932億円、80%)
【LCD偏光板】
(2,786億円、70%)
【LCD位相差
【LCD視野角
【携帯電話用
フィルム】
リチウムイオン電池】(1,152億円、100%) 向上フィルム】
(945億円、100%)
(1,962億円、76%)
【PDPパネル
部品材料】
(2,258億円、73%)
50%
日 本 企 業 の 世 界 市 場 シ ェ ア
75%
100%
3
2.技術経営の動向
∼ (1) 民間研究開発投資のシフト①
✔ バブル崩壊後の事業の選択と集中に成功してきた日本企業では、研究開発資源を自社の強みを有する幾つか
のコア技術に選択・集中し、それらを深化・融合させて、競争優位を確保してきている状況。
✔ アジア企業台頭等による国際競争激化から、事業部門の製品開発にキャッシュが優先的に投下され、研究開発
のスコープが短期化の傾向。先行研究(コーポレート研究)への投資が不十分であるため、持続的な成長を懸念
する企業が多数。
(※特に技術進歩の速さが製品サイクルを短期化する一方、莫大な開発投資でコスト競争に曝されるコモディティ(情報家電製品)分野で深刻化)
民間研究開発投資は基礎から応用へシフト
民 間 研究開発
%
80
開発
75
民間研究開発投資
9兆4285億円
70
∼
∼
2兆4965億円
∼
∼
10
5
8027億円
基礎
0
<基礎>
(応用研究は22%→20%前後へ推移)
<応用>
<開発>
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
40
基礎
35
開発
9339億円
1兆5523億円
1兆2582億円
公的研究開発投資
30
25
(応用研究は31%前後
→34%前後へ推移)
20
92
93
94
95
96
97
98 99
00
01
02
03
04
◆「目先の研究開発が相対的に増えて
いるのは事実。中長期的な研究開発
への取組が課題となっている。」(材料
系)
◆「事業のライバルは設備投資が充実し
ているため、 R&D の D の割合が
どうしても増えてしまう。 R が増やせ
ないことが悩み。確かに売上は上がっ
ているが、直近の売上を伸ばすため
に設備投資にしか資金を投入できて
なかった。次の10年に投資してこな
かった。その 失われた10年 のツケ
がボディーブローのようにきいてきて
いる。」(エレクトロニクス系)
公 的 研究開発
%
45
<製品開発投資へのシフト>
◆「’80年代から15年間以上、研究所は
新事業開拓の役割を担ってきたが、全
体としては上手くいかなかった。今は、
本業支援型の研究内容が主流となっ
ている。」(機械系)
05
(出所:総務省科学技術研究調査報告)
4
2.技術経営の動向
∼ (1) 民間研究開発投資のシフト②
<コア技術の事例>
☞
☞
☞
☞
☞
☞
☞
☞
☞
<先行的研究の重要性の認識>
〔東レHPより〕
〔花王HPより〕
<研究開発配分のリバランス>
◆「本社のコーポレート部門のR&D投資額が拡大してきている。技術の組合せが増えてきて事業部単位では対応できないことが、
コーポレート部門の投資額が拡大する理由。」(エレクトロニクス系)
◆「社長は、コスト低減に注力しているイメージで語られることは多いが、必ずしもそうでなく、必要な研究開発にはきちんと投資。環
境対応の広がり、価値構造の広がり、技術分野の広がりを考えると技術開発の規模は益々広がっている。2000年過ぎから大幅
に増やしたのもこの考えに沿ったもの。」(機械系)
◆「カンパニー制が導入されてから比較的短期の成果を求める応用・開発研究に光が当たり過ぎた。最近は基礎研究、基盤研究を活
性化、強化している。新事業創出につなげることを強化するという観点で新しい研究開発体制が必要となっている。」(バイオ系)
◆「技術を経営の中心におくという方針とし、前中期計画対比でコーポレート研究費を倍増している。ただし、事業グループは、短期
での収益重視。」(材料系)
◆「全社R&Dリソース配分を探索・育成へシフトさせており、30%から40%とした。」(材料系)
5
2.技術経営の動向
∼ (1) 民間研究開発投資のシフト③
<これまでの技術経営の変遷>
★資源分散した多角化経営の修正
<現在の日本の技術経営の課題>
∼ イメージ ∼
《日本》
ト
既存製品・技術との連続性
イノベーション
R&D
非連続
イノベーション
R&D
︹
コーポレート・
ラボ︺
連続的
非連続的
コア技術との連続性
★外部資源の活用最大化
フ
低い
連続的
∼ 「中央研究所の時代の終焉」・「オープンイノベーション」
・1996年、米国ハーバード大学ローゼンブルーム他は著書 Engines
of Innovation (「中央研究所の時代の終焉」)の中で、AT&Tベル研
究所、IBMワトソン研究所等を取り上げ、リニアモデル的な前提で
研究者が組織的・物理的に市場から切り離されている問題を指摘。
米国競争政策の転換、開発コスト増大等を背景に、研究開発を企
業戦略と結びつける自社技術のSWOT分析等の技術経営の契機
となる。
・その後、IT革命、知識社会到来を背景に、 NIH (Not Invented
Here)シンドロームが指摘され、2003年にH.チェスブロー(現UCバー
クレー大教授)がオープンイノベーションを提唱し現在に至っている。
シ
︹
ディビジョン・
ラボ︺
★事業戦略と乖離した技術経営の修正
からオープンイノベーションへ 《米国》
高い
資源投入
コア事業と乖離した領域に進出し撤退・売却
特に近年の資本市場の圧力・M&Aの興隆により産業組織
再編が進行中
・住友金属−医薬品・バイオ事業撤退(1997年)
・花王−フロッピーディスク事業撤退(1998年)
・新日鐵−DRAM事業撤退(1998年)
・日立・NEC−DRAM事業をエルピーダに分社化(1999年)
・日本ゼオン−塩化ビニル事業撤退(2000年)
・日立・三菱電機−LSI事業をルネサスに分社化(2003年)
・コマツ−半導体ウェハー事業をSUMCOへ譲渡(2006年)
・日立化成−住宅設備事業譲渡発表(2007年)
・ソニ−−最先端半導体事業を東芝へ譲渡(2007年)
・三洋電機−携帯電話事業を京セラへ譲渡発表(2007年)
★持続的な成長に 課題
∼
∼
<研究開発配分のリバランス>(続)
◆「一つ一つのコア技術を世界No.1とし、この技術を合わ
せたシナジー効果で製品開発力を高め、新事業創出と持
続的成長を行う。これにより持続的イノベーションと破壊的
イノベーションを行おうとしているが、そのウエイト付けが
重要。ヒットを多く打つ持続的イノベーション型の会社は強
い。ホームランは時々である。」(エレクトロニクス系)
6
2.技術経営の動向
∼ (2) 外部研究資源の活用①
✔ 国際市場で競争優位を獲得している多くの日本企業では、コア技術への選択と集中の結果として、顧客ニーズに
迅速・的確に対応するために必要な自社にない技術は、外部に広く積極的に求める協創型の技術戦略に転換して
いる。
✔ 内外のあらゆる技術シーズ情報の取得に資源を割き、公的機関・民間企業含め必要な新技術の獲得のための対
話・連携を強化している。 (※産学連携やライセンシングだけでなく、M&A、JVも視野)
外部リソース活用の増加
14
オープンイノベーション型研究開発
(%)
社外支出研究費割合
海外支出割合
12
12.6
11.9
11.1
12.9
12.4
11.2
社外・市場への展開
他社のマーケット
自社の新しい
マーケット
10
8.8
8
7.7
6
4
企業等における外部支出研究費
(支出ベース)
2
0
0.5
90
0.9
1.3
1.1
1.2
1.5
1.5
自社の既存の
マーケット
1.9
(年度)
95
00
01
02
03
04
05
新規の市場ニーズの抽出
社内外の技術シーズの抽出
Henry Chesbrough, UC Berkeley, “Open Innovation”
10th annual innovation convergence conference (2004)
<外部資源活用の強化戦略(脱「自前主義」)>
◆ 「自前のみで行おうとすると発想も固まり打ち手にも限界があるので、外部との連携が重要。」「基礎研究は、自社だけではできない。
徹底的に 官 や 学 と組むことが良いと考えている。」「WEB上で世界中にニーズを発信し、補完技術や新材料に関するシーズを応募
してもらうようなオープンイノベーションのサービスを行っている企業を活用。」(材料系)
◆「シーズは大学や国研にあるものと考えている。当社の研究開発は、顧客の立場に立って、シーズをいかにユーザーが求める製品にト
ランスファーしていくかという役割としている。」(エレクトロニクス系)
◆「大学やファンドと取り組むことは、過去に比べて増えた。新しいものを作るのに一つの技術だけでは難しく、複数技術の融合が求めら
れる。…IT、バイオ、エネルギー、環境、グリーンテクノロジーなど新事業の目があるものは、ファンドを利用して有効なベンチャーに投
資することで、注目すべき会社とのコネクションを作り、コミュニケーションや助言を行っている。」(エレクトロニクス系)
7
2.技術経営の動向
∼ (2) 外部研究資源の活用②
<外部資源活用の強化戦略(脱「自前主義」)>(続)
◆「米国では、企業パートナー連携のための仕組み作りが非常に上手く、巧みにGive & Takeの関係を作っている。権利と義務に関して、その
場その場に即して無段階・連続的に対応できる柔軟なシステムを作っており、日本にないものがある。日本はみな同じビジネス戦略をとっ
てしまうが、米国は商品化した時の差別化を初めから想定している。」(エレクトロニクス系)
◆「大学との共同研究などに投資を増やしていく傾向。一線級の人間を送り込む必要がある。優れた大学には、コンペティターのA社、B社と
いった海外トップ企業が優秀な研究者を送り込んでおり、そういう中でディスカッション出来る研究者でないとダメ。さらには、そのようなコン
ペティターがいる最先端の研究室に何を委託研究するかについては、慎重にならざる得ない場合がある。」(エレクトロニクス系)
◆「新しいテーマの探索に研究費の1割を割いている。社内研究者に対しては、自分の分野のトップランナー研究者3人見つけてくるように
言っている。現在の事業に関係ないものも許される。面白そうであったら躊躇せずに共同研究を申し入れするようにしている。」「社外連携
については、2003年から急増している。技術が高度化していることから、テーマをすべて自前でするのではなく、的確にパートナーと組み、
役割分担をしっかりして開発することが重要。」(材料系)
◆「研究者には特許の調査・評価によるベンチャー企業の買収提案を推奨している。長い目で見るとこれは血となり肉となる。米国ベンチャー
などへは現地法人が常にアンテナを張って見ている。」(材料系)
◆「世界トップをとるためにはスピードが大事。そのために産学官連携を有効活用する。科学と技術を一体として研究開発する。」(材料系)
◆「基盤技術の強化は、自社での推進の他、社外リソースの活用も重要。研究の難易度が高いと自ずと外部連携は増える傾向。」(材料系)
◆「多くのサプライヤーと共同開発を行っている(サプライヤーは系列に限らない)。最近は電機メーカーと協働するケースも増えている。先行
開発段階から広くコラボレーションをするための先進技術開発センターをつくった。また大学や研究機関とのネットワーク(共同研究数)が
この3年間で約2倍になっている。」(機械系)
◆「計測など自社の核となる技術は自社中心に開発し、バイオ、化学素材など自社に欠ける技術は社外パートナーとの共同研究、技術導入
で開発を加速している。」(エレクトロニクス系)
◆「産学官連携は科学に立ち帰る研究に必要。積極的な産学官連携によって人材育成をしていければと期待している。」(材料系)
◆「新しいことを始める時、資源、人材がない場合は、外部リソースを求める。自社でその人材を育てるには時間がかかり効率的ではない。」
(エレクトロニクス系)
◆「研究者の個人的なつながりやMRを通して先生とタイアップする。TLO経由では遅い。公開前の情報を知ることがポイント。企業はこれをい
かに見つけるかに力を入れている。」「海外拠点は、日本の研究だけでは対応出来ないものを、ベンチャー企業の買収を含めて取り込んで
いる。ベンチャー買収は加速しているところ。世界的な動きではあるが、研究開発を1社だけでやっていくのは難しい実状がある。どのよう
にいい企業を見つけてどのように提携していくかが重要。」(バイオ系)
◆「自社で基礎研究を大々的にやるより、ベンチャーなど外部リソースを積極的に活用していく方向である。グローバルな時間との競争の中
で、特定の新規技術構築に多くのリソースをかけるより、既にできあがっている必要な新規技術を導入し垂直的に立ち上げた方が効率が
よい。ベンチャー企業との連携は活用しているが、主に海外ベンチャーと実施することが多い。我々が興味を示すようなテクノロジーを持つ
国内ベンチャーが少ないように感じる。」(バイオ系)
8
2.技術経営の動向
∼ (2) 外部研究資源の活用③
オープンイノベーションに係る国際経営会議の事例
<米国における指摘>
☛
☛
☛
☛
☛
“It’s not a vender,
not a supplier,
but a partner.”
◆ほとんどの国際企業は米国に研
究開発センターを構え、その多くは
シリコンバレーにベンチャー企業に
係る投資・提携・買収等を担当する
出先を置いている。日本の大企業
に関して、現地VB関係者からは、
以下のような問題認識が指摘され
ている。
−技術を一方的に収奪したり、下
請と取引するような感覚で接触して
くることが多い。お互いWinーWinと
なる関係構築が重要。
−日本からの駐在員は、シリコンバ
レーのエコシステム、人的・知的
ネットワークに溶け切れていない
ケースがある。
−他国企業に比し、提携交渉等に
当たり日本本社の対応に時間を要
し、経営判断が遅い面あり。
◆連邦政府の民間コンソーシアム
プロジェクトに参加してきている米
国大企業からは、バリューチェーン
を考えれば垂直連携は昔から当た
り前(WinーWinが基本)で、むしろ
競合他社とどう研究協力して成果
を生むかが重要との指摘がある。
☛
日本の産・学・官ともに、
世界のブレイン・サイクル
に溶け込むことが重要。
9
2.技術経営の動向
∼ (3) 研究開発のスピードアップと効率化①
✔ 国際競争優位を保持する部材企業の多くでは、「正しい答は顧客に聞け」、「開発したものを売るから売れるもの
を開発する」へといった方針を明確に掲げ、研究者が顧客の研究所にまで入り込み、課題の解決、新製品の設
計・開発に一緒になって取り組む戦略が展開されている。
✔ その際、自社のコア技術を武器としながら、新技術に関しては外部連携も機動的に活用して確実にトップユー
ザーのニーズに応えることで、研究開発のスピードアップと効率化を図り、かつ新製品のデファクトスタンダードの
掌握を希求している。
✔ さらには、顧客とWIN-WINの関係を維持しつつも、材料開発から評価へ、装置開発からオペレーションへといっ
た顧客の領域まで踏み込み高付加価値化をねらう他、未だ潜在化もしていないニーズに対しても新しいコンセプト
を提案し、顧客を勝ち取る例もある。
<顧客重視の研究立案・展開(「正しい答は顧客に聞け」)>
顧客主導型研究開発
企業間すりあわせ
顧客とのコラボレーション
財・サービス
企業群
(情報・知識サプライチェーン)
プラットフォーム
リーダーシップ
リアルタイム
インタラクション
◆「何がものになるかについては 正しい答えは顧客に聞け としている。カス
タマーとの交流および継続研究開発の中でシーズを探し出すことがモットー。
シーズを多く持っておき、顧客のニーズに合わせ、うまく組み合わせて提供
することが重要だと考えている。顧客の様々な要求は断らない。」「プロセス
開発は装置メーカー側に拠ってきており、ラインを一括納入する方針で臨ん
でいる。」(エレクトロニクス系)
◆ 「如何にトップユーザーと付き合っていくかにかかっている。海外半導体
メーカーG社、H社、I社、J社の4社といかに一早く最新技術でコラボするか
が最重要。」「顧客の研究所の所長が何を考えているのか重視している。海
外トップメーカーでも 今後求められる事業は何か について語れる人が少
なくなってきている気がする。彼らも悩んでいる。」 (材料系)
◆「材料を決めるのはK社、L社、M社などの海外セットアップトップメーカーで
あり、グローバルトップメーカーと付き合っていくことが大切と考えている。材
料メーカーからセットメーカーに逆提案をするようになってきている。スペッ
クが出ていない段階から顧客と相談しコンセプトを確認し提案する。」「今後
は、顧客が持っている評価能力、解析技術も開発・生産プロセスに組み込
むことができた会社が強くなり勝ち残っていくのではないか。」(材料系)
顧客
ニーズ
新しい価値の創造
William L. Miller, Stanford, “Fourth Generation R&D” (1999)
Eric Von Hippel, MIT, “Democratizing Innovation” (2006)
Naoshi Uchihira, JAIST
10
2.技術経営の動向
∼ (3) 研究開発のスピードアップと効率化②
<顧客重視の研究立案・展開(「正しい答は顧客に聞け」)>(続)
◆「研究の大部分はニーズ指向。研究者が探索の初期段階から顧客の所へ直接行く顧客密着型開発。顧客の仕様に答えるだけでなく、
自分らが顧客に合う材料を選んで提供するということも行っている。」「顧客から得た情報により機動的(1週間以内)に着手する研究費
もある。」(材料系)
◆「顧客と日常的に対話(共同で実験や合宿などを開催)をし、外部とコンタクトを取り続けている。互いの研究所に入るように、一緒になっ
て研究しないといい成果はでない。」(材料系)
◆「消費者ニーズの把握については、生活者リサーチ部門を活用したり、また研究者自身が調査票を作成、配布、回収しマーケティング調
査しているケースもある。研究員が試供品の提供などにより、自らも参加して意見を聞くのはニーズや反応を知るために最も良い手段。
これまでは、研究者から自然発生的に出てきたアイディアを商品化してきたが、今後はマーケティングの方からの要望を受けて商品を開
発することもやっていこうと思う。」(バイオ系)
◆「選任マーケッターとして、技術の目利きが開発中のサンプルアイディアを関心のある企業に売り込む人を置いている。」(材料系)
◆「技術開発のための研究とならないよう、常にニーズを意識して取り組む。一方で、昔と比べ、ニーズが複雑化しており、新しいイノベー
ションの創出のためには、交流を大事にしている。ユーザーにも意見を聞くことで、本当に価値のあるものを知り、そこで初めて価値のあ
る研究開発が実施できる。」(エレクトロニクス系)
◆「製造業の本質が、新しい物作りから、新しい価値作りに変化してきた。多くの製造業では、顧客自身も気づいていない新しい価値の提
案を共同で模索する時代に入っている。」(材料系)
顧客
ニーズ
《戦略イメージ1》スピードアップと効率化
リニア
開発
∼ 今後 >
応用
応用
リニア
基礎
製品開発と先端研究の
開発
﹁同期化﹂
< 現在
< 過 去 >
基礎
時
間
先端研究
シーズ
時 間
スピード
アップ!
11
2.技術経営の動向
∼ (3) 研究開発のスピードアップと効率化③
《戦略イメージ2》コア技術の新展開による価値創造・市場獲得
コア技術×サービス
・ソフトで価値創造
コア技術を桁違い
に磨き合わせ
市場制覇
コア技術を外部
連携で拡張し顧客
新ニーズ獲得
コア技術を外部
異種技術と融合し
新たな価値創出
☞圧倒的な歩留まり・
高品質・最小誤差・
多品種・供給安定
性を合理的なコスト
で実現(徹底的なプ
ロセス・イノベーショ
ン)
☞顧客ニーズに応え
コア技術を機敏に
周辺へ拡張、外部
連携をフル活用
☞産学官連携、事業
提携、ライセンスイン、
買収などにより異
分野技術を融合し
価値創造
サービス
☞コア技術製品化の
際に、デザイン、ソフト
ウェア等のインタンジブ
ルな付加価値を最
大化
☞コンテンツ、ソフト開発
をコアとしファブレ
ス化して価値創造
非コア
外部連携 = 技術
☞自社の複数のコア
技術相互の徹底し
た融合により価値
創出
☞世界トップユー
ザーと開発連携し、
ニッチの拡張・クラ
スター化+次世代
標準獲得
☞合弁事業化、子会
社化、カーブアウト
などにより他社のコ
ア技術と融合し新
事業創出
12
2.技術経営の動向
∼ (3) 研究開発のスピードアップと効率化④
企業における研究開発ガバナンスの在り方におけるポイント10か条
(経済産業省「企業における研究開発ガバナンスの在り方」:2007.3)
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
自社にあった仕組みを試行錯誤で作っていく
新しい手法の導入を拒まずに、そこから本質を盗む
目標やテーマの選択に関する方針を明確にする
革新的な「融合」の生まれやすい「自由/遊び」のある環境を作る
研究開発は中期的な競争力のための「投資」として経営判断する
研究者に何らかのビジネスモデルを考えるメンタリティを持たせる
事後的なチェックが可能な状況を作り、レビューしてレッスンを得る
オープン・イノベーションは、研究開発の評価のチャンスと考える
研究人材のモチベーションを高め、持てる能力を最大限発揮させる
段階に応じて個人の能力と組織の力のベストミックスを実現する
死の谷に陥っていない企業の特徴
(三菱総研「デスバレー現象と産業再生(政策創発研究シリーズ)」:2003.1)
① まだ世の中で提起されていない市場や事業を社内向けに文章やチャートで明確か
つ具体的に表現
② 全体是正化を考えたトップダウン型技術経営
③ 社内の研究・開発・生産や社外との間で相互にアイデアを交換しつつ、新しい知識
を創出していく関係を確立
13
2.技術経営の動向
∼ (4) 非連続的イノベーションへの対応①
✔ イノベーションのジレンマを乗り越え、非連続的な技術・製品を創出するために、個人の創造力やチーム内の相互
誘発作用を最大化する柔軟な管理手法、開放的な組織環境など、各社様々な取組が展開されている。
✔ 研究開発マネジメントにおいて、単なる厳格な研究管理ではなく、知識創造のプロデューサーとしいての役割に傾
注し研究者のモチベーションを引き出すことを重視したり、自由にアングラ研究※をさせる次元から、多産多死を基本
として創造性とスピード・効率を両立させる工夫が見られる。
<創造性・革新性を発揮させる柔軟な研究運営>
◆「事業は、選択と集中が必要である。しかし、技術開発は、選択と集中に加えて分散も重要。全て絞り込むことは危険。」(エレクトロニク
ス系)
◆「研究開発は管理よりも創造性を重視している。したがって、ステージゲート方式などのマネジメント手法は採用していない。研究を管
理して成果が出るなら管理だけしていればよい。研究者には自律的にどんどんテーマを出すように言っている。プロデュースがテクノ
ロジーマネジメントの要諦。」(材料系)
◆「 選択と集中 をしないのが当社のキャッチフレーズ。研究者が顧客と話しつつ何でもやる。独創的アイディアが花開くまで10年はか
かると考えており、失敗してもやめさせない。やらないのが一番悪く、失敗を恐れないことが大事。研究開発は10に1つしか成功しな
いものだと思っている。」(エレクトロニクス系)
◆「大部屋制をとっており、研究者間の自由な交流を妨げない形としている。こうした当社の風土から研究テーマは自然発生的に生まれ
てきている。研究は管理してはいけない。研究予算についても、室長レベルの申請・登録で概ね方向性がよければOKとし、予算は大
枠のみが管理されている。一定の成果が出ていれば、好きに研究をやってもらってまったく問題ない。研究者の自律性を大きく尊重す
る弊社の研究開発の風土を壊さず、かつ、カバーすべき領域に漏れがないようにする仕組みが重要。全社的にみて、基盤研究など目
標を設定しない自由な研究費が約20%である。この20%は例えトップに研究内容を否定されても室長レベルで与えられた仕事をこな
すのであれば、実施可能。研究企画グループは、運営企画はするが研究管理は行わない。」(バイオ系)
◆「新規テーマの提案は毎月の検討会にて審議し、予算外で研究費を充当することで積極的な推進を図っている。一方、研究を始める
時と終える時とで経営環境・外部環境が同じことはほとんどない。変化こそが技術経営の本質である。」(エレクトロニクス系)
◆「研究開発費は3年から5年前に比べ、倍以上になっている。...ソフト開発は多額の費用になる一方で、売れる保証はない。その開発費
のことを忘れ、ヒット商品を出したのに収入が見合わないと勘違いして独立する人もいるが、成功例は少ない。」「クリエイター達の新し
い発想を経営陣がリスクを背負ってチャレンジすることとそれができる体質が重要。」(エレクトロニクス系)
◆「これからの破壊的イノベーションの鍵は、出口のイメージを明確にしたサイエンティフィック・ブレークスルーとそれが実現できる環境整
備(大学、国研、企業研究所)。」(材料系)
※ 3Mの「15%ルール」:研究者や技術者は、今後ビジネスに役立つだろうと思われる研究であれば、自分に与えられた
テーマとは別に、労働時間の15%を費やして取り組んでも良い。 (アングラ研究)
14
2.技術経営の動向
∼ (4) 非連続的イノベーションへの対応②
✔ 3極特許※1の発明者にアンケート調査を行ったRIETI日米発明者サーベイ※2においては、日本は想定され
た範囲の研究成果に基づく特許が多いが、米国は、当初想定されなかった研究成果(セレンディピティ)に依
拠する特許が多いことが明らかとなっている。また、米国は、研究以外の活動から生まれる特許が日本よりも
多いことも特徴的である。
✔ 特許が科学技術文献を引用する程度(サイエンスリンケージ)の各国比較では、日本は90年代後半をピークに低
迷しているのに対し、米欧は近年増加の趨勢。
発明プロセス (Serendipityの程度)
特許のサイエンスリンケージ
☞ 日本
☞ 米国
☞ 米国
※1)日米欧三極に登録される特許は、一般的に質の高い特許と言われる。
※2)RIETI発明者サーベイ・プロジェクト”Invention & Innovation process in Japan & US:
some findings from the Inventers Surveys in Japan & US”, Jan.2008, Dr. S. Nagaoka
(一橋大) & Dr. J. P. Walsh (Georgia Institute of Technology)
15
2.技術経営の動向
∼ (4) 非連続的イノベーションへの対応③
✔ 日米発明者サーベイ前出において、発明に関わる研究の目的に関しては、
① 米国は、技術基盤の強化、既存事業の延長線上にない長期的なシーズ創出である割合が日本の3倍ある
② 上①の傾向は、半導体デバイス、光学製品、バイオテクノロジー、情報ストレージ、ソフトウェア、通信といっ
た先端科学技術分野で特に顕著な差となる
③ 既存事業の強化が目的の研究が、日本は7割、米国は5割。
技術基盤を強化する研究プロジェクトのシェア(分野別)
研究プロジェクトの目的
☞日
本
☞米
Enhancement
of existing
business line
国
Enhancement
of the technology
base or the longterm cultivation of
technology seeds,
not associated
with current
business
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2.技術経営の動向
∼ (4) 非連続的イノベーションへの対応④
<米国連邦政府のラディカル・イノベーションに向けた取組事例>
DOD:
DOD:国防総省国防高等研究事業局
国防総省国防高等研究事業局(DARPA)
(DARPA)
•1957年のスプートニクショックを受け、ハイリスク・ハイリ
•1957年のスプートニクショックを受け、ハイリスク・ハイリ
ターン研究支援を行うために設立。
ターン研究支援を行うために設立。
•米国の国防にとって重要なラディカル・イノベーションとな
•米国の国防にとって重要なラディカル・イノベーションとな
る技術的アイデアを発掘し、国防のニーズにいち早く応用
る技術的アイデアを発掘し、国防のニーズにいち早く応用
できるようにすることを目標とし、宇宙・軍事・IT関連の最新
できるようにすることを目標とし、宇宙・軍事・IT関連の最新
技術の研究開発を支援。
技術の研究開発を支援。
NIH:
NIH:パイオニアに与えるNIHディレク
パイオニアに与えるNIHディレク
ターアワード(NDPA)
ターアワード(NDPA)
•2004年に開始されたパイオニア・アワードで
•2004年に開始されたパイオニア・アワードで
は、通常のピアレビューシステムに拠るのでは
は、通常のピアレビューシステムに拠るのでは
なく、研究アイディアの革新性やインパクトの大
なく、研究アイディアの革新性やインパクトの大
きさを重視した採択システムを導入。
きさを重視した採択システムを導入。
•2007年には、上記アワードを若手研究者に
•2007年には、上記アワードを若手研究者に
フォーカスしたものも新たに追加。
フォーカスしたものも新たに追加。
DOE:
DOE:エネルギー先端研究局
エネルギー先端研究局 (ARPA-E)
(ARPA-E)
•エネルギー版DARPAを目標に、長期的でハイリスクな研
•エネルギー版DARPAを目標に、長期的でハイリスクな研
究開発を支援する組織として、2007年8月成立の米国競争
究開発を支援する組織として、2007年8月成立の米国競争
法で規定。下記3つの目標達成の為の技術開発を支援。
法で規定。下記3つの目標達成の為の技術開発を支援。
①①海外からのエネルギー輸入量の削減
海外からのエネルギー輸入量の削減
②②温室効果ガス等有害物資の排出の削減
温室効果ガス等有害物資の排出の削減
③③全ての経済セクターにおけるエネルギー効率の改善
全ての経済セクターにおけるエネルギー効率の改善
DOC/NIST:技術革新プログラム(旧ATP)
DOC/NIST:技術革新プログラム(旧ATP)
•米国競争法により、Advanced
•米国競争法により、AdvancedTechnology
TechnologyProgram(AT
Program(AT
P)をTechnology
Innovation
Program(TIP)として、発展解
P)をTechnology Innovation Program(TIP)として、発展解
消し、よりイノベーティブな補助制度に変革。
消し、よりイノベーティブな補助制度に変革。
NSF:
NSF:トランスフォーマティブ研究
トランスフォーマティブ研究
・トランスフォーマティブ研究(Transformative
・トランスフォーマティブ研究(Transformative
Research)とは、全く新しい分野の開拓やパラ
Research)とは、全く新しい分野の開拓やパラ
ダイムの転換を通じて科学・工学の根本的な
ダイムの転換を通じて科学・工学の根本的な
変革等を目指すイノベーティブな研究。
変革等を目指すイノベーティブな研究。
•今後トランスフォーマティブ研究の明確な定義
•今後トランスフォーマティブ研究の明確な定義
づけを始め、イノベーティブなプロジェクトが案
づけを始め、イノベーティブなプロジェクトが案
件審査で不利となっている現状を改める為の
件審査で不利となっている現状を改める為の
審査基準変更なども計画。
審査基準変更なども計画。
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2.技術経営の動向
∼ (5) 知財の価値最大化(「強い特許」)への取組①
✔ 単に発明を多数特許化するのではなく、ビジネスモデルや対抗的特許出願も想定した上で、関連特許を戦略
的に抑えることを重視。無論、スピードある出願は生命線。
✔ 世界市場で競争する企業が大学や研究独法との外部連携を強化する中、大学等国の研究開発成果について
も、国際特許取得に適切な対応が求められている状況。
<強い特許戦略>
◆「欧米の方が、基本特許を取るのがうまい。日本人は、すぐ各論に入ってしまうので、その関連特許から逃げることも容易。」(エレクトロニ
クス系)
◆「海外のN社やO社は、権利を包括的に持っている。製品化して勝つためには、少しの原理特許と多くの包括的な関連特許が必要。企
業が最終的に何に使うのかしっかりイメージを持たねば特許権利化はうまくいかない。弱い特許では効果がなく、強い特許とすることが
必要。」(エレクトロニクス系)
◆「企業としては周辺特許も囲った 強い特許 にして出したいと考えている。そのためには、特許要件などの検証を行い、発明を厚くした
上で出願する必要がある。アプリケーションまで含めた知財を固めて 強い特許 とする必要がある。」「最近は日本の出願を見て直ぐに
中韓が周辺の基本特許を出してくる動きがあり要注意。」(材料系)
◆「次世代事業では、事業そのものを排他的にし、参入する他業者(競争相手)の数を減らすために網羅的に知財網を張る。グローバルで
勝負するには、参入者を増やさないようにして、他社に真似できないもので世界のトップシェアをとっていくしかない。」(材料系)
◆「手厚く数百の特許群を張ると、本気度といった戦略が外部に見える。特許取得にはタイミングも戦略的に重要であり、他社の特許取得
状況も今日の姿が全てではない。 死蔵特許 の言葉は製薬業界にはあまりなじまない。むしろ、コアとなる特許を守るための周辺特許
や防衛特許を戦略的に維持している。」(バイオ系)
◆「特許を死蔵するようなことは少なく、必要な特許のみ取捨選択して維持している。自社で維持する必要のない特許は権利放棄し維持し
ないか、もしくは他者に権利譲渡することが多い。数より質の世界。」(バイオ系)
◆「課題対応・顧客とのすり合わせが基本。ニーズ指向なので、死蔵技術は少ないのではないか。死蔵してしまいそうな研究は早期に止め
てしまう。」(材料系)
◆「全ての研究所をロードマップで管理しており、研究開発成果が死蔵するというケースは起こりづらい。完全にニーズ志向で、将来必要で
あろう技術を想定した研究開発を行っており、外れないようにしている。」(材料系)
◆「日本の大学や独法各研究機関の発明は国内出願されるが、国際出願されていないことが多々散見される。発明が国内で特許されても
海外では特許フリーとなる。これではグローバルな活動を展開している日本企業に、この発明を活用しようという意欲を失わせると同時に、
海外の企業を利するだけで、海外での日本企業の活動を阻害することさえ懸念される。グローバルな競争に直面している企業にとって、競
争力の維持、拡大に海外での知的財産権を取得することは必須不可欠である。」(バイオ系)
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2.技術経営の動向
∼ (5) 知財の価値最大化(「強い特許」)への取組②
✔ 日米発明者サーベイ前出に表れる日米特許戦略の相
異は、以下のとおり。
− 米国は自己実施、権利保護、先行者利得を日本より
重視。すなわち、いち早く技術を占有した利益獲得をね
らっている。
− 他方、日本は米国に比べてクロス・ライセンシングを
考慮し、また生産能力による補完によって利益を獲得
することを企図。
− 米国はプルダクト特許が、日本はプロセス特許がより
多い。
☞ 米国
特許取得の重要な動機・理由
日本
☝
☞ 米国
プロダクト特許とプロセス特許の比率
☞ 米国
☞ 米国
☞ 日本
特許取得による
収益確保の方法
☞ 日本
米国
☝
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3.国の研究開発への期待
∼ (1) 公的研究開発の役割 ①研究開発プロジェクト<1>
✔ 選択・集中が奏功している企業が外部リソースとの連携を重視する中で、国の研究開発プロジェクト(以下「国プ
ロ」)を外部リソースとの効果的な連携の場と位置付けている企業が多数。大学や他企業と直接やり取りするより、
国プロに参加することが連携・融合の有効性を高めるメリットが指摘されている。
✔ 既存技術・知識から大きく飛躍するリスクの高いテーマに国プロで取り組むべきとの声が多数。そのため、一定
程度の失敗を許容すべきとの指摘も多い。
<国プロジェクトに求める外部連携機能>
<外部資源活用(協創)のイメージ>
高い
M&A
ライセンス・イン
公的研究機関
大 学
非連続的
連続的
コア技術との連続性
コンソーシアム
国プロ
活用︵協創︶
外部資源の
資源投入
低い
異業種提携
◆「東工大を中心に実施しているプロジェクトでは、初めから
末端ユーザーが参画し、開発対象技術の仕様を明確に
出す仕組みとなっており、画期的であると感じている。産
学間での垂直・水平連携が成果を上げており、今後の重
要な連携のあり方と考えている。」(材料系)
◆「民・民では広がらない他企業や研究者との提携が深ま
る場として有用な機会。」(材料系)
◆「プロジェクトの場を活用して大学や他社と組めることが
重要と考えている。」(エレクトロニクス系)
◆「国プロであれば大学と組みやすい。オフィシャルに計画
性を持ってできるので、役割分担も明確化できて良い。」
(エレクトロニクス系)
◆ 「国プロに参加すると大学の研究室とのやりとりが上手く
いく。」「国プロに参加する意義の一つとして、直接交渉で
は技術交流が難しいあるいは機会の少ない異業種会社
との連携の可能性を開けることがある。」(エレクトロニク
ス系)
◆「企業と市場の関係は多様化しており、新しいチャンスを
つかみたいと考えている。コアドメイン以外のハイリスクだが
行った方がいいテーマ、異業種との融合・協働が必要なテー
マについては国プロに参加する価値がある。」(バイオ系)
20
3.国の研究開発への期待
∼ (1) 公的研究開発の役割 ①研究開発プロジェクト<2>
<国プロへの期待>
◆「垂直連携(装置−印刷-材料)はお互いのことを知る機会になり非常に役に立った。垂直連携ならば、みんなが集まる意味が
ある。」(材料系)
◆「プロジェクトのメンバーに利害関係者がいると、情報が出しづらくなる。ユーザー会社と組んで実施した時は、ニーズを意識し
た研究開発が実施され成果が挙がった。」(エレクトロニクス系)
◆「新市場、新技術に関しては、オープンイノベーションとして、顧客、大学等と一緒に開発を見据えてあるいは国プロに参加す
ることで、5∼10年後を見据えて取り組んでいる。」(エレクトロニクス系)
◆「国プロへの参画は、先端・先進技術獲得の加速を目的としている。チャレンジャブルな将来技術に取り組んで欲しい。国プロ
は最先端を突っ走っていることが重要。」(エレクトロニクス系)
◆「国PJは基本的に 将来伸びるもの であり、 米国が強いもの と同義となってしまうと米国の土俵となって絶対に勝てない。
日本の強み を発揮出来るものに注力すべき。国PJには、事業リスクが高く、売上に比べR&D投資が莫大なテーマを期
待。」(機械系)
◆「現在は、研究期間が3∼5年のものが多く、比較的ターゲットが見えるものが多いが、10年ものものもやるべき。将来の産業
構造を見て、そのウエイト付けをしたプロジェクトを立てて欲しい。…大きな産業を作って行くには、文部科学省と一緒になって
やって欲しい。両省のプロジェクトなら、パイプライン的になれると思うしそれを期待する。」(エレクトロニクス系)
◆「国際的アライアンスを組むことが多くなって、国内で一緒にやることが難しい場合がでてきた。」(エレクトロニクス系)
◆「海外の大学の参加が可能になると更に充実したプロジェクトになる場合もあると思う。」 (機械系)
◆「プロジェクトの評価システムについて、外部専門家による評価が得られる点は良い。一方で、当初の目標値のみで評価され
るのは、プロジェクトを実施する過程でその成果の価値が変わってくることもあるため、柔軟に対応してはどうか。」(エレクトロ
ニクス系)
◆「護送船団方式はダメだと言われる傾向があるが、共通インフラの場合には必要なのではないか。」(エレクトロニクス系)
◆「成果がどうこう言うのではなく、R&Dなのだから、失敗してもいいという意気込みで、新しい分野や技術テーマなどハイリスク
な課題を時宜を逃さずやって欲しい。既存の技術や目先が見えているものは、企業でもやってゆくのだから。」(エレクトロニク
ス系)
◆「国家プロジェクトは失敗が許されず、参画すると、研究成果によって最終製品を商品化することまで求められると聞いている。
企業にとっては、リスクの高いところを国家プロジェクトでの研究開発に委ねているので、このようなことは止めた方がよいの
ではないか。」(エレクトロニクス系)
21
3.国の研究開発への期待
∼ (1) 公的研究開発の役割 ②産学連携
✔ 企業の外部資源活用が本格化する中、 3,4年前に比し、企業の国内大学との産学連携は、広がりと深さを増し
ている状況(産学本格連携の時代)。 ただし、大学にはあくまでも世界水準の基礎研究と人材育成・教育を期待。
✔ 法人化の中で、商業化に近寄る研究や特許権を過度に主張する流れには抵抗感あり。
<大学との連携強化の状況>
◆「従前は、国内の大学には50万円、100万円くらいの金を名刺代わりに配っていた。本音で仕事をお願いしていなかっ
たため、成果もほとんど出てこなかった。今は大学を信用し、中期・長期の研究で開発ターゲット・開発時期なども明確に
した本命の研究を委託するようになった。」 「日本の大学は、1人の先生が全部やろうとしている。米国のように、金集め
に堪能な先生、教育が上手く良い弟子を多く輩出させる先生、ノーベル賞をねらう先生など、何かに尖ったものを持つ先
生がほとんどいない。」 (エレクトロニクス系)
◆「最近は、大学もビジネス的センスが出てきているので比較的やりやすく、話が通じやすい。とはいえ、大学には、基礎に
近いところをやってほしい。また、大学と企業の役割分担をしっかりしてほしい。」(エレクトロニクス系)
◆「大学やAISTがベンチャーの設立数や企業との共同研究数を基準として評価されるのはおかしいのではないか。独立法
人としての研究機関は、企業では徹底して取り組み難い科学技術の極限を追求するような研究や、目的・出口の明確な
基礎研究に徹してもらいたい。目先の資金稼ぎやパフォーマンスに奔走していては、決して国際競争力の高い技術は育
たない。」(材料系)
◆「大学との連携は増加の一途。実用技術(出口)の複雑化で、自前で出来ない基礎(シーズ)部分は大学に求めており、
少なくとも関係する分野についてはいつもウオッチしている。」(材料系)
◆「阪大の共同講座には、弊社から教授・助教、阪大から准教授、助教が配置されており、大学と連携し、(基礎研究部分
を)本気で委ねるようになってきている。」(機械系)
◆「国内外の大学との共同研究は多い。国内の大学では、個々の先生にホレ込んで、バイで研究を行っている。国プロとの
大きな違いは、秘密保持が確保されること。」(バイオ系)
◆「大学や国プロは、環境問題のためなど、企業を意識しないで最先端の研究を進めて欲しい。」「大学との共同研究は
年々徐々に増えている(5年前の1.5倍)。皮膚科学などは当初は何も技術をもっていなかったため大学と連携し、現在
に積み上げてきた。」(バイオ系)
22
<参考2> 科学技術関係予算の配分構造−日米構造比較−
アメリカ 〔136,885百万ドル〕 【FY2007】
日本 〔35,113億円〕 【FY2007】
Science
NSF
4,523
(3%)
NASA
12,202
(9%)
DARPA
3,294
oriented
大学等
12,194
文部科学省
23,121
(66%)
NIH
27,810
(20%)
Defense
74,076
(54%)
文部科学省
23,121
(66%)
Energy
9,047(7%)
経済産業省
5,033(14%)
Agricilture
2,012(2%)
Commerce
1,064(1%)
<予算額日米比較>
米国
Mission
oriented
All Other
6,151(5%)
日本
予算額 (億円)
146,166 35,113
(うち防衛費除く) (67,067) (33,540)
対GDP比
1.0%
0.7%
731(2%)
603(2%)
662
(2%)
785(2%)
厚生 農林 国 総 内 そ
防衛 労働 水産 土 務 閣 の
省
省 交 省 官他
省
1,573 1,315 1,290 通
房
(5%)
(4%) (4%) 省
(出所)米 : AAAS Analysis of R&D
日本:総合科学技術会議資料に基づき経済産業省で作成
<日本の主な公的研究開発機関と予算(億円)>
米/日(倍)
☞ 4.2
2.0
1.5
※1ドル=106.78円(2008.1.30現在)で換算
・大学等
12,194
・宇宙航空研究開発機構
2,255
・NEDO
2,165
・日本原子力研究開発機構 1,898
・日本学術振興会
1,588
・防衛庁技術研究本部
1,573
・科学技術振興機構
1,043
・理化学研究所
828
・産業技術総合研究所
697
・農業・食品産業技術総合研究所 526
23
3.国の研究開発への期待
∼ (2) 技術戦略マップの役割①
✔ 技術戦略マップは多くの企業が外部環境把握のリファレンスとして活用している。
✔ 技術戦略マップのメリットは、産学官の共通シナリオを見ることができること、異分野を俯瞰できること等。自社
の研究開発戦略と比較し、技術戦略マップに載っていない部分に価値を見出したり、時間軸を先取りするという使
い方に意義を指摘する企業多数。ローリングで何が変わったかも、注目されている点の一つ。
<技術戦略マップの意義>
◆「8つの研究所と企画に配布し、研究活動の道しるべとなるようにしている。自分の要素技術の延長線上だけでものを考えるというの
ではなく、世の中、外の動きから自分たちの方向付けをバックキャストするよう心がけている。出口がわからない状態の技術では、こ
のマップに書かれているような時間軸、世の中の方向で測りながら、研究を進めるために使っている。」(エレクトロニクス系)
◆「スケジュール的な観点で、社会の流れを把握するためのものと解釈している。時間軸は合わせた上で、何か違う見方ができないか
ということを考えるためのものとして活用している。」(エレクトロニクス系)
◆「当社には、研究所・商品開発・技術開発のそれぞれにロードマップがあり、それらに加えてMETIの技術戦略マップを参照することに
よって今後の方向性を検討している。」(エレクトロニクス系)
◆「技術戦略マップで、顧客の考えが見えてくるという点で、開発戦略の一つの指標となる。技術戦略マップは、社内ロードマップと世の
中の動向との整合性を確認するために活用している。」(材料系)
◆「スコープが広いのでつまみ食いし、コミュニケーションツールとして活用している。ビジョンの可視化や、 何故、当該技術開発が必要
か という理由付けを行うという意味で導入シナリオが重要。」(エレクトロニクス系)
◆「技術ロードマップは、社会の価値観の変化などを先読みするため、今後の研究開発の方向性の検討を行うため、法規制の動向を
把握するため、などに有効と考える。むしろ自社の想定するロードマップと異なっているところや、載っていないところにこそ、差別化
の価値があると考えることができる。」(材料系)
◆「マップに記載のないところを先んじるのが我々の仕事。マップにない、見えていないその先をどうするかに価値がある。その意味で
享受している。マップ作成のプロセス(いわゆるマッピング)の方が非常に勉強になる。」(エレクトロニクス系)
◆「出口のマイルストーンをハッキリさせており、良いものと理解。」「実際のロードマップでは、基礎、応用、実証があって積み上げてか
ら標準となっているが、競争中で早く進むこともあるので、それまでには標準を作成することが必要。」(材料系)
◆「自らの専門分野については必要性を感じない。社外の中長期の動向調査としては役に立つ。将来、研究所にノルマを課す時のネタ
探しにはなる。」(機械系)
24
3.国の研究開発への期待
∼ (2) 技術戦略マップの役割②
<技術戦略マップの意義>(続)
◆「垂直統合的に異分野のマップを見ている時に、分野間で標記が違い、読みにくい。…ITRSのマップのように、キーとなる技術や
革新的な技術は書き分けて欲しい。」(エレクトロニクス系)
◆「5年後、10年後、15年後、製薬業界がどのようになっているのか1人よがりに考えないために役立つ。可能であれば、ロードマッ
プだけではなく市場規模や新技術の予測といったものを充実してほしい。」(バイオ系)
◆「バージョンが変わると内容がどのように変わったのか分かりにくいので、改訂履歴がほしい。」「文部科学省の技術予測調査とリ
ンクしても良いように思う。」(エレクトロニクス系)
◆「改訂作業に注目。専門家の認識がどう変わってきているか変化が読み取れることが重要。技術予測とは質が違うものでありロー
リングが重要である。」(材料系)
◆「大枠の流れがわかりやすかったので自分たちの位置づけや外部環境を確認するために活用。海外の状況が目に見えて分かる
ものがないため、今後、国内外を比較してマップを引き直してみてはどうか。」(バイオ系)
◆「ローリングを重ね、分かりやすくなっている。国家的課題について産学官でシナリオをつくる意味がある。」(エレクトロニクス系)
◆「コアとなる分野から離れても取り組む必要のある研究領域があるので、コーポレートの方向性を示す際の指針として技術戦略
マップやイノベーション25などを活用している。技術戦略マップを見て これをやろう! とひらめくというものではなく、もともとやり
たいことがあって、その妥当性を示すために国の方針を利用。」(バイオ系)
◆「2015年の世界は技術戦略マップのようになっているとも思う。ただ、そこにどのように到達するかというプロセス(どのタイミング
で開発を始めるか等)の選択が難しい。かける金額も大きいことからそれが重要。」「それぞれの分野でスピード感が違うものが構
成されており、パラダイムシフトが見えない。」(エレクトロニクス系)
◆「研究開発プロジェクト参加に際して、総合科学技術会議の科学技術基本計画等での位置付け、技術戦略マップでの位置付けな
どが得られると大学の先生方にとってアピールとなる。」(材料系)
◆「要素技術のロードマップを議論するとき、出口を意識して議論することは、非常に重要であり、膨大なデータの中で議論の方向性
を見失わないための海図として2005年版に掲載されていた図表は有益であった。」(材料系)
◆「知らない分野を勉強する場合を知るために見ている。NEDOプロジェクトへの応募の際に参考にしている。」(材料系)
◆「マップは辞書的なデータベースであり、戦略は各自で考えるべきもので使う側の力量次第。」(材料系)
◆「これから進出を考えている新しい領域への参考として用いていきたい。ITRSのように関連する企業等がWIN-WINの関係が構築
できるような全体として合意ができる仕組みになってもらえるとありがたい。ロードマップマネジメントは、有識者の知識を統合し、
マーケットの要望にタイムリーに応えるための科学的な手法と理解。」(エレクトロニクス系)
25
<参考3>
METI「技術戦略マップ」
経済産業省は「技術戦略マップ」を各界に広く提供
経産省 研究開発課の入口
(経産省別館6階609号室)
●「御自由にお持ち帰り下さい」
<完全フリー>
● 常時コメント受付
●「技術マップ」・「ロード
マップ」は、CD-ROM
(Excel)でも提供
<編集・活用自由>
26
技術戦略マップとは
¾
経済産業省では2005年から、NEDO・産総研の協力を得て、国家的に重要な産業技
術のロードマップを俯瞰する「技術戦略マップ」を策定・公表。
¾ 全ての分野について、①導入シナリオ、②必要となる技術の俯瞰マップ、③重要技術
のロードマップ、の3層構造で策定。
¾ 毎年度、各分野の産学官の専門家を集めた作業グループ(延べ数百人)でローリン
グ(改訂)。
メリット(省外)
✔産学官の間での
認識共有
−中長期シナリオ
−技術進歩の方向性
/時間感覚
−科学技術の限界点
ほか
✔産学官の間での
コミュニケーション
の基本ツール
2分冊 (A4サイズ)
計 950ページ
メリット(省内)
✔最新科学技術動向
の把握
✔研究開発プロジェ
クト立案の拠り所+
説明責任
✔産学とのネットワー
ク形成
✔一貫性・継続性あ
る政策の知識基盤
⇒特に異分野・異業種
間での対話を効率化
27
技術戦略マップの展開状況
技術戦略マップ
技術戦略マップ
2005
2005
フレームワークの構築
フレームワークの構築
・3部構成
・3部構成
−導入シナリオ
−導入シナリオ
−技術マップ
−技術マップ
−ロードマップ
−ロードマップ
技術戦略マップ
技術戦略マップ
2006
2006
+
+
+
省内政策サイクルへの
省内政策サイクルへの
ビルトイン
ビルトイン
学会との連携
+ 学会との連携
・機械分野、化学分野、応
・機械分野、化学分野、応
用物理分野、ロボット分野
用物理分野、ロボット分野
でアカデミック・ロードマップ
でアカデミック・ロードマップ
の策定支援と摺り合わせ
の策定支援と摺り合わせ
・研究開発予算要求には技
・研究開発予算要求には技
術戦略マップ上の位置づけ
術戦略マップ上の位置づけ
を明確化することを原則
を明確化することを原則
+
外部での活用促進
外部での活用促進
・融合領域研究推進のため
・融合領域研究推進のため
のディスカッション・マニュ
のディスカッション・マニュ
アル(C−PLAN)作成
アル(C−PLAN)作成
・将来の社会像イラスト化
・将来の社会像イラスト化
年々、内容と分野を充実
改訂及び分野拡大
改訂及び分野拡大
・1分野を新たに追加
・1分野を新たに追加
・4分野を新たに追加
・4分野を新たに追加
・経済産業省、NEDO、産
・経済産業省、NEDO、産
総研、大学、民間企業によ
総研、大学、民間企業によ
る産学官の策定WG体制
る産学官の策定WG体制
を構築
を構築
・20分野でスタート
・20分野でスタート
改訂及び分野拡大
改訂及び分野拡大
技術戦略マップ
技術戦略マップ
2007
2007
+
外部での活用促進
外部での活用促進
・検索システム(産総研
・検索システム(産総研
”Kamome”導入+NEDO
”Kamome”導入+NEDO
プロジェクト基本情報とのリ
プロジェクト基本情報とのリ
ンク)
ンク)
・技術戦略マップを活用し
・技術戦略マップを活用し
た新ビジネス創出のための
た新ビジネス創出のための
ディスカッション・マニュア
ディスカッション・マニュア
ル(I−PLAN)作成
ル(I−PLAN)作成
28
技術戦略マップの策定分野
<2007年版> 25分野
○情報通信分野
○環境・エネルギー分野
・CO2固定化・有効利用
・脱フロン対策
・化学物質総合管理
・3R
・エネルギー
・半導体
・ストレージ・不揮発性メモリ
・コンピュータ
・ネットワーク
○ナノテクノロジー・材料分野
・ユーザビリティ(ディスプレイ等)
・ナノテク
・ソフトウェア
・部材
○ライフサイエンス分野
・創薬・診断
・診断・治療機器
・再生医療
・がん対策等に資する技術
※青字は2006年版から追加された分野
赤字は2007年版から追加された分野
○ものづくり分野
・ロボット
・航空機
・宇宙
・MEMS
・グリーンバイオ
・超電導
・人間生活
・ファイバー
各分野延べ
547名の
産学官の
専門家が
参加
29
技術戦略マップの3層構造
(情報通信分野の一部を抜粋)
(1)導入シナリオ
2004
2005
2006
∼
2010
∼
導入シナリオ
2015
・情報家電等IT利活用とITの安全性・信頼性の確保。
その基盤となるIT産業の国際競争力の強化。
目標
・収益力の強化
半導体メーカーにおける収益力の強化
と「選択」と「集中」
(利益率:約5∼10%→15∼30%を目指す。)
研究開発成果が製品、サービス等と
して社会、国民に提供されていく道筋と、
そのために取り組むべき関連施策を記
載したもの。
民間企業の
取組み
・経営改革
・産業再編
研究開発等をテコとした産業再編の実施
(アラクサラネットワークスの設立)
半導体設計ベンチャー企業の創出・支援
研究開発の
取組み
○標準化の推進
関連施策の取組み
(2)技術マップ
導入普及
促進策
(情報家電、グリッドコンピューティング等)
ユーザ認証、セキュリ
ティ、機器ID,機器認証
等についての共通化・標
準化の推進
(2005-2007)
○垂直連携の強化 上流企業と下流企業の摺り合わせの加速
関連産業
との連携
環境整備
技術の体系図。技術的課題、要素
技術を俯瞰するとともに、その中で重
要技術を選定して記載したもの。
早期に国際的な合意を目指した技術開発と連携した官民の取組み
共通化・標準
化すべき28
項目に関す
る状況調査
・高度部材産業
集積の維持・管理
製造装置の高度化
CASMAT:
材料評価手法の確立
・製造装置産業
競争力の維持・強化
製造装置の高度化
○技術流出防止
MIRAI実施体制の見直し、コンソーシアム(ALTEDEC等)の活用など
技術マップ
技術分野
分野構造
分野
大項目
中項目
小項目
半導体
デバイス・プロセ LSTPデバイス技 デバイス微細化
術
ス技術
ナノCMOSへ向けた新技術
混載技術
新混載技術
デバイスシミュレーション技術
プロセス技術
(3)技術ロードマップ
研究開発への取り組みによる
要素技術・求められる機能等の
向上・進展を時間軸上にマイル
ストーンとして記載したもの。
高度部材産業開発・評価センター構想
・部材評価技術の強化、
部材技術開発の促進・効率化
微細化プロセス
洗浄技術
プロセスシミュレーション技術
シリコン基板
露光装置・レジスト・プロセス技術
マスク技術
リソグラフィ
技術ロードマップ
技術分野
分野構造
大項目
半導体
中項目
小項目
デバイス LSTPデバイ
ス技術
プロセス技
デバイス微細
術
化
重要課題
パターン寸法の微細
化
プロセス技 微細化プロセ ゲートスタックプロセ
ス
術
ス
リソグラフィ 露光装置・レジ
スト・プロセス 微細化・高精度化
技術
主流量産
技術
露光装置
技術
新規技術
評価パラメータ
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
DRAMハーフピッチ(nm)
80
70
65
57
50
45
40
35
32
28
物理ゲート長 (nm)
寸法ばらつき(nm)
(プリント長、物理長)
53
45
37
32
28
25
23
20
18
16
3.15
2.81
2.50
2.20
2.00
1.80
1.60
1.40
1.30
1.10
実効ゲート酸化膜厚EOT:物理膜厚(nm)
実効ゲート酸化膜厚EOT:電気膜厚(nm)
2.1
2.8
1.9
2.6
1.6
2.3
1.5
1.9
1.4
1.8
1.3
1.7
1.3
1.7
1.2
1.6
1.1
1.5
1.1
1.5
high-kゲート絶縁膜材料
SiON
SiON
LaAlO3
LaAlO3
LaAlO3
CD制御(3σ)(nm)
4
3.3
2.9
2.5
2.2
2
1.8
1.7
1.4
1.3
線幅ラフネス(3σ)(nm)
3.6
3.2
2.8
2.6
2.2
2
1.8
1.6
1.4
1.3
光源(波長:nm)/方式
スループット、コスト
193nm+RET
RET: Resolution
Enhancement
Technology
LFD: LithographyFriendly Design
Hf02(+Si, N, Al) Hf02(+Si, N, Al) Hf02(+Si, N, Al) La2O3, Y2O3, ... La2O3, Y2O3, ...
193nm+RET+LFD/193nm 液浸
193nm液浸+RET+LFD
EUV(極端紫外光リソグラ
PEL(近接電子線リソグラフィ)、ML2(マスクレスリソグラフィ)
157nm液浸(RET+LFD)、ナノインプリントリソグラフィ
30
企業における技術戦略マップの活用事例①
<大企業の事例> ○ グローバルトップ製品群を有する高度部材企業において、自社の研究開
発戦略・事業戦略に、技術戦略マップをリファレンスとして活用
情報・通信 エレクトロニクス分野 技術動向
半導体設計ルール
DRAM大容量化
2004
2006
130nm
512MB
65nm
2GB
LCD:∼60型
2GB
△アナログ放送終了
光無線LAN(1Gb/s)
光無線LAN(10Gb/s)
WDM-
PDP:32∼60型
Blue-Ray HD-DVD (50GB)
6GB
16GB
第3.5世代移動体通信
(40Mb/s)
WDM-PON
(100Gb/s)
LCD:∼60型
△FTTH1500万世帯
PDP:∼80型
ホログラフィ方式 多層化/2光子
吸収技術(500GB)
PDP:∼120型
GE/GPON(10Gb/s)
(情報通信−ストレージ・メモリ分野)p25
Blue-Ray HD-DVD (50GB)
DVD-R/RW (5GB)
△アナログ放送終了
光無線LAN(10Gb/s)
(情報通信−ユーザビリティ分野)p33
Ethernet(100Gb/s)
WDMPON(10Gb/s)
WDM-PON
(100Gb/s)
△FTTH1500万世帯
ホログラフィ方式 多層化/2光子
吸収技術(500GB)
記憶
△FTTHのLANサービス(10%)
(情報通信−ネットワーク分野)p29・p30
DVD
LCD・PDP:∼
200型
伝送
B-PON(100Mb/s)
要素技術
32GB
第4世代移動体通信
(100Mb/s)
LCD:∼100型
デジタル放送
△BSデジタル(日)
△地上デジタル(日)
デジタルネットワークの進展は更に加速していく
光無線LAN(100Mb/s)
光無線LAN(1Gb/s)
五大要素技術 の進歩がシナリオ実現の鍵
インターネットの高速化
出典) 経済産業省 技術戦略マップ2006
Ethernet(10Gb/s)
FTTH普及率
2014
45nm
Ethernet(100Gb/s)
PON(10Gb/s)
LCD:32∼40型
FPDTVの大型化
△FTTHのLANサービス(10%)
65nm
2012
パワー
GE/GPON(10Gb/s)
2010
表示
第3世代移動体通信
(2Mb/s)
Ethernet(10Gb/s)
B-PON(100Mb/s)
DVD-R/RW (5GB)
LCD・PDP:∼
90nm
200型
PDP:∼120型
2008
記憶
DVD
2006
伝送
FTTH普及率
2004
512MB
△地上デジタル(日) 1GB
移動体通信
32GB
第4世代移動体通信
(100Mb/s)
LCD:∼100型
130nm
PDP:∼80型
光無線LAN(100Mb/s)
インターネットの高速化
(情報通信−半導体分野)p21
駆動
DRAM大容量化
デジタル放送
△BSデジタル(日)
要素技術
パワー
2002
LCD:32∼40型
PDP:32∼60型
16GB
第3.5世代移動体通信
(40Mb/s)
半導体設計ルール
FPDTVの大型化
2014
45nm
6GB
第3世代移動体通信
(2Mb/s)
2012
情報・通信 エレクトロニクス分野 技術動向
90nm
1GB
2010
表示
移動体通信
2008
駆動
2002
デジタルネットワークの進展は更に加速していく
五大要素技術 の進歩がシナリオ実現の鍵
出典) 経済産業省 技術戦略マップ2006
31
企業における技術戦略マップの活用事例②
<中小企業の事例> ○ 中小企業が、技術戦略マップを活用して自社のコアテクノロジーを
新たな事業に展開するモデル事例をマニュアル化し、対外的に周知
コアテクノロジー
技術戦略マップを検索した結果
①自社のカルシウムイメージング技術
を核に、現在50万円の年商を1億円に
するために、新たな事業展開の検討
②カルシウムイメージングに関連する周辺
技術まで技術戦略マップから検索・抽出す
ることで、出口(潜在市場)イメージを拡大
③抽出した技術の動向を基に、ビジネス目標
を設定。その達成のための自社技術ロード
マップを描き、それを基として新事業展開に
向けた戦略を策定
【出所】技術戦略マップを活用した新ビジネス創出プラニングのディスカッション・マニュアル(平成19年3月)
32
ロードマップに関する各国有識者のコメント
※出典:経済産業ジャーナル
2006.2 No.418
「ロードマッピングが、ロードマップそれ自体以上に重要である。」
マイケル・ラドナー教授
米国ノースウェスタン大学ケロッグスクール
(世界的なロードマップ研究の第一人者)
「技術ロードマップの価値は、完成した「文書」ではなく、様々の企業・分野の人が集まっ
て技術ロードマップ策定を行う「プロセス」にある。」
ボブ・シャラー教授
米国南メリーランド大学
(半導体技術ロードマップ研究の第一人者)
「ロードマップ策定の最も重要な成功要因は、共通の価値・利益を重視すること。」
リサ・コープ教授
米国国立衛生研究所(NIH)
「ロードマップは、産業界からのニーズを発信してもらうエンゲージメントツールであり、
産業界との協力関係を深めていくためのコミュニケーションの手段だ。」
スコット・リッチレン氏
米国エネルギー省(DOE)産業技術プログラムチームリーダー
「国レベルで技術ロードマップを作成することは研究開発の生産性向上のための構造改革につ
ながる。」
スーザン・ロセット博士
スイスIMD世界競争力センター上級エコノミスト
(世界競争力ランキング作成を通じて各国の競争力を評価)
「ここまで詳細で精緻な技術ロードマップは見たことがない。企業の長期的な戦略の検討
を刺激するであろう。」
ヒューゴ・チルキー教授
スイス連邦工科大学
(欧州におけるMOT,技術ロードマップに関する権威)
33
留意点 ∼ 技術ロードマップの限界の認識
✔ disruptive innovation(off-road技術として出現、
非連続的)を捉えることは容易でない。
「やってみないと分からないのに、ロードマップに書いてあるが故に
それ以外の技術を研究しなくなることには危険を感じる。」
(国内半導体製造装置メーカ)
⇒
⇒
常に見直すことが重要。
ロードマップ策定プロセスにおける関係者の「知」の衝突・
共有が価値を生む。
Roadmapping is rather important than “roadmaps.”
⇒
⇒
俯瞰性、分野融合性への特段の配慮。
定型化・自己目的化の回避。
34
4.研究開発政策上の課題 (1)
1.研究開発プロジェクトのあり方
(外部協創型イノベーションへの対応)
•
コア技術の選択と集中が奏功しているグローバルトップ企業には、他者との協創が生むイノベー
ションの実現に向けて、国の研究開発プロジェクト(以下「国プロ」と言う。)を外部リソースとの効果的
な連携の場と位置づける企業が多い。
•
米国の民間コンソーシアムでは垂直連携は当初から当たり前で、むしろ競合他社との連携も大学
研究拠点等を活用して有効に展開している。
•
このような状況変化の下で、国プロをより効果的な連携・融合の場とするためには、どのような対応
が適切か。また国プロを活用した大学・公的研究機関での拠点形成にどう取り組んでいくべきか。
•
最先端領域では海外の一線級の研究者(海外在住邦人研究者含む)や外国企業を国プロに参加
させる意義があるとの指摘があるが、どのような基本的考え方に基づいて対応するか。
(非連続イノベーションへの対応)
•
国の研究開発に対しては、非連続的なイノベーション創出に向けて、失敗を許容するハイリスク研
究に取り組んで欲しいとの要請が強い。
•
米国政府機関でも、既存の知識体系による評価の保守性が非連続イノベーションの障害になると
いう問題に対応して、新しい管理手法による研究開発プログラムを創設している。
•
このような中、非連続イノベーション創出のため、どのような取り組みを行う必要があるか。
(産学連携への対応)
•
大学には、世界水準の研究と人材育成が求められているが、国プロの推進の中でどのような貢献
が可能か。
35
4.研究開発政策上の課題 (2)
2.技術戦略マップについて
(広く意見を集約する仕組み)
•
技術戦略マップが民間企業の有効なガイダンスになり得ていることを踏まえると、分野別の委員会
のみならず、よりきめ細かく機動的に産学官の意見を反映するための仕組みづくりが必要ではない
か。そのために、技術戦略マップの分野ごとのマッピング実務責任者が年間を通じて企業・学会等と
コミュニケーションを行う仕組みは考えられないか。
(双方向に情報発信しつながる仕組み)
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中堅・中小企業が必要に応じて技術戦略マップを活用し、シーズとニーズのマッチングを可能とする
ネットワーク形成を促進するために、技術のクリエーターとユーザーが、双方向の情報を技術戦略
マップに書き込め、つながるような仕組みは考えられないか。
3.知財戦略・標準化戦略
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コア部分の特許のみならず、周辺特許も含めた戦略的な特許群を押さえた「強い特許」としていくこ
とが重要であるが、このような動きを加速するためにはどのような対応が可能か。
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研究開発成果の世界市場への拡大を考える上で、技術の「国際標準化」も重要であり、戦略的な国
際標準取得をどのように支援することが効果的か(特許を含む技術の標準化、国際標準化プロセス
の円滑化など)。
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知財・標準化戦略展開に関して、NEDOと産総研の新しい連携は考えられないか。
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