...

構造用合板の手引き1

by user

on
Category: Documents
106

views

Report

Comments

Transcript

構造用合板の手引き1
1
合板の基礎知識
構造用合板 1 級
1. 1 合板とは
1. 2 合板の特徴
合板は丸太をカツラ剝きにした薄い板(単板、
合板には次の長所がある。
ベニヤなどという)を、図1に示すように、接着剤
①広い面積が得られる
で貼り合わせて作った板である。通常は、奇数
②製品サイズ(厚さ・幅・長さ)が豊富である
枚の単板を繊維方向が 1枚づつ直交するように
③含水率の変化に伴う伸び縮みが少ない
貼り合わせてある。単板の枚数はプライ数と呼
④あらゆる方向からの力に対して高い強さを発
ばれ、3プライ、5プライ、7プライなどが標準で
ある。
12㎜
特類
⑥釘の保持力が高い
⑦樹脂や薬剤の処理が容易にできる
1. 3 合板の種類
心 板(コアー)
JAS規格(日本農林規格)に規定される合板に
添え心板(クロスバンド)
は次のものがある。
裏 板(バック)
・構造用合板
1級
2級
構造用合板(低ホル)
910×1,820㎜
C-D
○○合板株式会社○○工場
図1. 合板の構成(5プライ合板の場合)
図 2. JAS 表示例
表3. 強度等級を記号A、B、C、Dで表わす構造用合板1級の適合基準
0°方向
90°方向
曲げ強さ
(N/㎜ )
曲げ強さ
(N/㎜ )
2
厚さ
(㎜)
2
A-B
B-B
A-C
B-C
C-C
A-D
B-D
C-D
D-D
曲げヤング係数
(10 N/㎜ )
3
2
A-B
B-B
A-C
B-C
C-C
A-D
B-D
C-D
D-D
曲げヤング係数
(10 N/㎜ )
3
2
38.0
34.0
8.5
8.0
8.0
8.0
0.5
38.0
36.0
32.0
8.0
14.0
14.0
14.0
1.0
7.5以上9.0未満
34.0
32.0
28.0
7.0
12.0
12.0
12.0
2.0
・コンクリート型枠用合板
9.0以上12.0未満
32.0
28.0
26.0
6.5
16.0
16.0
16.0
2.5
12.0以上15.0未満
26.0
24.0
22.0
5.5
20.0
20.0
20.0
・普通合板
3.5
15.0以上18.0未満
24.0
22.0
20.0
5.0
20.0
20.0
20.0
4.0
18.0以上21.0未満
24.0
22.0
20.0
5.0
20.0
20.0
20.0
4.0
21.0以上
26.0
24.0
22.0
5.5
18.0
18.0
18.0
3.5
・天然木化粧合板
・特殊加工化粧合板
2
3.2
表5. 構造用合板2級の
適合基準
表4. 強度等級を記号EとFで表わす構造用合板1級の適合基準
曲げ強さ
(N/㎜ )
2
表1. 強度等級を記号A、B、C、Dで
表わす構造用合板の等級と板面の品質
等級
面内
せん断強さ
(N/㎜ )
A-B∼D-D:合板の等級
(板面の品質による)
。
0°, 90°:表板の繊維方向がスパン方向または荷重方向にそれぞれ平行および直交する場合。
板面の品質
表板 裏板
構造用合板とは、建築物の構造上重要な部
A-B
a
b
位に使用する合板をいう。板面の品質は 9 つに
A-C
a
c
A-D
a
d
によって、表板・裏板の板面の品質を表している。
B-B
b
b
B-C
b
c
強度等級
また、規定される強度試験の種類によって1 級
B-D
b
d
E50-F160 E70-F220
C-C
c
c
E55-F175 E75-F245
C-D
c
d
E60-F190 E80-F270
D-D
d
d
E65-F205
板の品質(大文字)で表すもの(表 1)と板面の
12(0 . 3)
× 910 × 1 , 820㎜
化粧単板 ヒノキ
○○合板株式会社○○工場
42.0
2.1 構造用合板の種類
と2 級の等級がある。1 級には等級を表板・裏
12㎜
6.0未満
構造用合板とは
分類され、アルファベット2 文字(A〜D)の記号
特類
6.0以上7.5未満
・化粧ばり構造用合板
5プライ
(5枚合わせ)
12㎜
ろいろな性能の製品がつくれる
呼称である。
添え心板(クロスバンド)
F ☆☆☆☆
構造用合板(低ホル)
910 × 1,820㎜
C-D
○○合板株式会社○○工場
揮する
発音されることがあるが、
『ごうはん』が正しい
表 板(フェイス)
表2. 強度等級を
記号EとFで表わす
構造用合板1級の
強度等級
品質によらず担保する曲げヤング係数と曲げ強
1
特類
化粧ばり構造用合板
F ☆☆☆☆
⑤単板の樹種や構成(厚さ、枚数)によって、い
合板はベニヤ板と呼ばれたり、
「ごうばん」と
2
構造用合板 2 級
F ☆☆☆☆
さを記号EとF で表示するもの(表 2)がある。
類別がある。JASの基準に合格した構造用合
さらに、接着剤の耐久性によって特類と1類の
板には図2に示すマークがスタンプされている。
曲げヤング係数
(単位:10 N/㎜ )
曲げ
強度等級
0°方向
3
90°方向
0°方向
E50-F160
16.0
5.0
E55-F175
17.5
5.5
E60-F190
19.0
E65-F205
20.5
E70-F220
22.0
E75-F245
24.5
E80-F270
27.0
単板数が3の場合:5.0,
6.0
単板数が4の場合:6.5,
6.5
単板数が5の場合:9.0,
7.0
単板数が6以上の場合:10.0
7.5
2
90°方向
単板数が4の場合:1.1,
単板数が5の場合:1.8,
単板数が6以上の場合:2.2
表6. 単板厚さと構成比率
単板数
3以上
15.0以上18.0未満
4以上
18.0以上24.0未満
5以上
24.0以上
7以上
単板厚さ
(㎜)
1.0以上
5.5以下
2
単板数が3の場合:0.4,
0°, 90°:表板の繊維方向がスパン方向または荷重方向にそれぞれ平行および直交する場合。
厚さ
(㎜)
曲げ
ヤング
係数
(10 N/㎜ )
3
8.0
15.0未満
厚さ
(㎜)
6.0未満
6.5
6.0以上7.5未満
6.0
7.5以上9.0未満
5.5
9.0以上12.0未満
5.0
12.0以上24.0未満
4.0
24.0以上28.0未満
3.5
28.0以上
3.3
構成比率
表面単板と同じ繊維方向の単板の厚さの合計の合板の
厚さに対する比率が40%以上70%以下であること。
2
表7. 強度等級を記号A、B、C、Dで表わす構造用合板1級の基準許容応力度
0°方向
2
曲げ
A-B
B-B
積層
数
A-C A-D A-B A-C
B-C B-D B-B B-C
C-C C-D
C-C
D-D
圧縮
曲げ
引張
圧縮
A-D A-B A-C A-D A-B
B-D B-B B-C B-D B-B
C-D
C-C C-D
D-D
D-D
A-C A-D A-B A-C
B-C B-D B-B B-C
C-C C-D
C-C
D-D
A-D A-B A-C A-D
B-D B-B B-C B-D
C-D
C-C C-D
D-D
D-D
漬することをはさみ、13 0℃で2時間スチーミン
グすることを2度繰り返すもので、全ての単板
5.0以上6.0未満
3
10.5 9.5
8.5
6.5
6.0
5.5
4.5
4.0
4.0
2.0
2.0
2.0
3.5
3.5
3.5
2.5
2.5
2.5
JAS 規格の上では、1級と2級の違いは、規
が針葉樹の合板では、0 . 0 8 5 MPa 以上の減圧
6.0以上7.5未満
3
9.5 9.0
8.0
5.5
5.0
4.5
4.0
3.5
3.5
3.5
3.5
3.5
4.5
4.5
4.5
3.5
3.5
3.5
7.5以上9.0未満
5
8.5 8.0
7.0
6.0
5.5
5.0
4.0
4.0
3.5
3.0
3.0
3.0
3.5
3.5
3.5
2.5
2.5
2.5
定されている強度試験などの種類であるが、実
を3 0 分間行った後、0 . 4 5 - 0 . 4 8 MPaの加圧を
際上は、強度等級を記号A、B、C、Dで表わす
9.0以上12.0未満
5
8.0 7.0
6.5
5.0
4.5
4.0
3.5
3.5
3.0
4.0
4.0
4.0
4.5
4.5
4.5
3.5
3.5
3.5
12.0以上15.0未満
5
6.5 6.0
5.5
5.0
4.5
4.0
3.5
3.5
3.0
5.0
5.0
5.0
4.5
4.5
4.5
3.5
3.5
3.5
3 0 分間行う方法も取られる。いずれの処理も
15.0以上18.0未満
7
6.0 5.5
5.0
4.0
3.5
3.0
3.0
2.5
2.5
5.0
5.0
5.0
5.5
5.5
5.5
4.0
4.0
4.0
18.0以上21.0未満
7
6.0 5.5
5.0
5.0
4.5
4.0
3.5
3.5
3.0
5.0
5.0
5.0
4.5
4.5
4.5
3.5
3.5
3.5
1級の構造用合板は主としてラワン合板、強度
過酷な条件である。また、1類の接着耐久性
21.0以上24.0未満
7
6.5 6.0
5.5
5.0
4.5
4.0
3.5
3.5
3.0
4.5
4.5
4.5
4.5
4.5
4.5
3.5
3.5
3.5
等級を記号EとF で表わす1 級および2級の構
試験も、試験片を6 0℃で 2 0 時間乾燥すること
24.0以上
9
6.5 6.0
5.5
5.0
4.5
4.0
3.5
3.5
3.0
4.5
4.5
4.5
4.5
4.5
4.5
3.5
3.5
3.5
造用合板は針葉樹合板である。
をはさんで、4時間の煮沸を2度にわたって繰
1級の構造用合板は、高度な構造的利用を
り返すか、1 2 0℃で3時間スチーミングするとい
考えて基準が作られている。各種の強度を保証
う厳しい方法である。
向)および 9 0°方向(短手方向)のそれぞれに
関する曲げ剛性試験・曲げ強度試験に加え、面
内せん断試験が義務付けられている。また、曲
げヤング係数と曲げ強さを記号EとFで表示す
るものについては表4のような適合基準が設け
2.1-3 化粧ばり
構造用合板
スギ、カラマツ、ヒノキ等による構造用合板の
られている。
利用が多くなるにつれ、床・屋根・天井に張っ
2級の構造用合板は、壁・床・屋根の下地板
た構造用合板を「現し」とする意匠が増えてき
などの用途を考えて基準が作られている。一般
た。しかし、合板の中には節が多過ぎるものや
的な使い方では強度は十分な余裕があるため、
色合いが不揃いのものがあり、デザイン的に扱
義務付けられている強度試験は、表5に示すよ
いが難しい面がある。そこで、2 014 年(平成
うに、0°方向の曲げ剛性試験のみとなっている
2 6 年)の「合板の日本農林規格」の改正で新し
が、曲げ強度を適切に推定できるように単板構
く誕生したのが、化粧ばり構造用合板である。
成に関する断面性能として有効断面係数比を
化粧ばり構造用合板は、構造用合板 2 級を台
表示することもできる。
板として厚さ1㎜未満の化粧単板を貼ったもの
単板の厚さや構成にはある程度の自由度が
で、その強度や接着耐久性は構造用合板 2 級と
持たされており、表6に示すようになっている。
2.1-2 特類と1類
層内
せん断
AーB,B-B
:1.4
A-C,B-C,
C-C:1.3
0.4
A-D,B-D,
C-D,D-D
:1.2
0°方向
厚さ
(㎜)
積層
数
5.0以上6.0未満
6.0以上7.5未満
ヤング係数
曲げ
引張および
圧縮
3
8.5
3
8.0
7.5以上9.0未満
5
9.0以上12.0未満
90°方向
面内
せん断
弾性係数
ヤング係数
曲げ
引張および
圧縮
5.5
0.5
3.5
4.5
1.0
4.5
7.0
5.5
2.0
3.5
5
6.5
4.5
2.5
4.5
12.0以上15.0未満
5
5.5
4.5
3.5
4.5
15.0以上18.0未満
7
5.0
3.5
4.0
5.5
18.0以上21.0未満
7
5.0
4.5
4.0
4.5
21.0以上24.0未満
7
5.5
4.5
3.5
4.5
24.0以上
9
5.5
4.5
3.5
4.5
0.4
面内
せん断
弾性係数
0.4
2.5
許容応力度
(単位:N/㎜ )
2
強度等級
曲げ
0°
方向
4.0
4.3
同じになるように設計されている。しかし、化
E60-F190
4.7
粧ばり構造用合板は構造用合板とは品目が異
E65-F205
5.0
E70-F220
5.5
E75-F245
6.1
E80-F270
6.7
90°方向
曲げヤング係数
(単位:10 N/㎜ )
せん断弾性係数
(単位:10 N/㎜ )
90°方向
(0°,90°方向)
3
面内
層内
せん断 せん断
0°
方向
2
3
単板数が4の場合:1.6,
5.5
単板数が5の場合:2.2,
6.0
0.8
単板数が6以上の場合:2.5
0.4
6.5
7.0
7.5
単板数が4の場合:1.1,
単板数が5の場合:1.8,
強度等級を記号A、B、C、Dで表す1級の構
2級の構造用合板の主要な用途は、壁・床・
る接着耐久性が確保されており、外壁や屋根の
れから様々な化粧が登場すると思われる。
造用合板の許容応力度は、
(一社)日本建築学
屋根の下地であり、合板を張った壁・床・屋根
会編「木質構造設計規準・同解説」において、
の強度は実験的に評価され、特に合板の許容応
表7のように提案されている。表中の基準許容
力度が必要とされなかったため、その許容応力
応力度は、JAS規格の強度試験の適合基準に
度は提案されていなかった。しかし、建築基準
対して曲げで1/4、圧縮で1/3 . 5の値となっ
法の改正により構造計算で壁・床・屋根の設計
ている。また、1級の構造用合板の基準弾性係
を行うことが可能になったことから、
(一社)日
数を表8に示す。1級のうち曲げヤング係数と
本建築学会編「木質構造設計規準・同解説」に
曲げ強さを記号EとFで表示するものの基準許
おいて2級の構造用合板の基準許容応力度の
容応力度等については表 9のように提案されて
値が表 10のように提案された。この基準許容
建築基準法では、構造用合板の許容応力度
0.5
8.0
いる。
間煮沸すること、または、室温水中に1時間浸
A-D,B-D,
C-D,D-D
:2.4
0°
,90°
:表板の繊維方向がスパン方向または荷重方向にそれぞれ平行および直交する場合。
出典:木質構造設計規準・同解説
や弾性係数に関する規定はない。
われる。特類の劣化処理は、試 験片を7 2 時
A-D,B-D,
C-D,D-D
:2.2
単板数が6以上の場合:2.2
るが、適当に節があるものなど、好みに応じてこ
後、接着強度や木部破断率を確かめることで行
A-D,B-D,
C-D,D-D
:1.5
0.4
特類の構造用合板は、常時湿潤状態におけ
許容応力度と
弾性係数
A-C,B-C,
C-C:2.6
単板数が3の場合:0.4,
化粧単板としては無節のヒノキなどが想定され
接着耐久性の評価は、促進劣化処理を施した
A-C,B-C,
C-C:2.3
5.0
単板数が3の場合:1.2,
土交通省ではそのための検討が行われている。
壁、床の下地板に用いる。
A-C,B-C,
C-C:1.6
2
類または1類のいずれかとなっている。
2.2 構造用合板の
AーB,B-B
:2.8
表9. 強度等級を記号EとFで表わす構造用合板1級の基準許容応力度と基準弾性係数
2類の類別があるが、構造用合板の場合は、特
水紙等で防水処理を施した外壁・屋根、間仕切
AーB,B-B
:2.4
層内
せん断
単位:103N/㎜2
0°
,90°
,45°
:表板の繊維方向がスパン方向または荷重方向にそれぞれ平行、
直交および45°
の角度をなす場合。
出典:木質構造設計規準・同解説
正が必要であり、現在(2 014 年12月時点)、国
状態における接着耐久性が確保されており、防
AーB,B-B
:1.8
面内
せん断
45°方向
面内
せん断
弾性係数
合板の接着部分の耐久性には、特類、1類、
下地板に用いる。1類の構造用合板は通常の
圧縮
表8. 強度等級を記号A、B、C、Dで表わす構造用合板1級の基準弾性係数(強度等級によらない)
E55-F175
して使用するには、建築基準法関連告示等の改
面内
せん断
せん断
引張
A-B∼D-D:板面の品質
単位:N/㎜2
0°
,90°
,45°
:表板の繊維方向がスパン方向または荷重方向にそれぞれ平行、
直交および45°
の角度をなす場合。
めりこみは面に直角方向の場合
出 典:木質構造設計規準・同解説
E50-F160
なるため、これを構造用合板と同じ構造部材と
45°方向
せん断
2.1-1 1級と2級
するため、表3に示すように、0°方向(長手方
3
厚さ
(㎜)
0°,90°方向
90°方向
引張
4
めり
込み
2.0
2
応力度の値は、JAS規格に基づき、最も強度の
下の式で計算することができるとしている。
低い樹種であるエンゲルマンスプルースで製造
f 0 =FR 0 / 8
された合板を対象に、0°方向および 9 0°方向の
f 9 0 =FR 9 0 / 8
許容応力度(単位:N/㎜ )
弾性係数(単位:10 N/㎜ )
2
厚さ
(㎜)
それぞれについて強度が最も低くなる単板構成
f 0 、f 9 0:0°
方向、90°
方向の基準許容曲げ応力度
を仮定して誘導されている。しかし、実際に使
F:当該樹種の木材の曲げ強さの5%下限値
用される樹種は一般にエンゲルマンスプルース
表11.厚さ24、28㎜構造用合板2級の基準許容応力度と基準弾性係数 (日合連暫定値)
曲げ
0°方向
90°方向
24
3.3
2.5
28
3.4
2.5
3
面内
層内
せん断 せん断
0.8
0.4
曲げヤング係数
0°方向
面内せん断弾性係数
(0°,90°方向)
90°方向
4.6
2.2
4.4
2.2
2
0.4
(不明の場 合はエンゲルマンスプルースの値
より強度が高いこと、0°と9 0°の両方向が最弱
43 . 9N/ ㎜ 2 を仮定してもよい)
単板構成となることはありえない(例えば 0°方
R 0:0°
方向有効断面係数比=(繊維方向が表板
向の最強単板構成は9 0°方向の最弱単板構成
のそれに平行な単板だけを有効と見なしたときの
となる)ので、提案されている値は相当の余裕を
断面係数)/(見かけの断面係数)
2.3 構造用合板の釘接合許容せん断耐力
持った値である。
R 9 0:90°
方向有効断面係数比=(繊維方向が表
表12. 合板—軸材釘接合許容せん断耐力
なお、同書では樹種や単板構成が特定できる
板のそれに直角な単板だけを有効と見なしたとき
場合は、基準許容応力度は表の値によらず、以
の断面係数)/(見かけの断面係数)
表10. 構造用合板2級の基準許容応力度と基準弾性係数
許容応力度(単位:N/㎜ )
弾性係数(単位:10 N/㎜ )
2
厚さ
(㎜)
曲げ
0°方向
90°方向
3
面内
層内
せん断 せん断
曲げヤング係数
0°方向
90°方向
2
面内せん断弾性係数
(0°,90°方向)
釘接合短期許容せん断耐力(N/ 本)
合板厚さ
(㎜)
くぎ種類
7.5
9
軸材の種類
スギ、エゾマツ、
スプルースなど
ヒノキ、ベイツガ、
ヒバなど
カラマツ、
ベイマツなど
N50
CN50
350
380
360
390
370
400
380
N50
360
380
CN50
390
400
410
N50
410
420
430
CN50
440
450
460
N65
480
490
500
CN65
530
540
550
N75
540
560
570
5.0 5.2
6.5
0.4
6.0 4.8
6.5
0.3
7.5 4.3
5.5
0.3
9.0 3.9
5.0
0.3
CN75
640
660
680
12.0 3.3
4.0
0.3
N90
640
660
670
15.0 2.7
4.0
0.6
CN90
740
770
790
18.0 2.4
4.0
1.1
N65
530
550
560
21.0 2.2
4.0
1.1
CN65
590
600
610
24.0 2.2
3.5
1.4
N75
600
620
630
28.0以上
2.0
3.3
1.7
CN75
700
720
740
N90
700
720
730
CN90
810
830
850
N65
580
600
620
CN65
640
660
680
N75
660
690
700
CN75
770
790
810
N90
770
790
810
CN90
880
900
920
N65
580
600
620
CN65
640
660
680
N75
660
690
710
CN75
810
840
870
N90
810
840
860
0.8
0.8
0.4
12
0.4
15
0°, 90°:表板の繊維方向がスパン方向または荷重方向にそれぞれ平行および直交する場合。
出典および誘導方法:木質構造設計規準・同解説
表 11は、日本合板工業組合連合会(日合連)が
ることとされている。また、各合板の基準弾性
上式により誘導した2 4、2 8㎜の構造用合板の
係数は、表 3〜5に示したJAS規格の適合基準
基準許容応力度である。この値は、傘下の全合
の値である。
板メーカーが製造している2 4、2 8㎜の構造用
各荷重継続期間に対する許容応力度は下記
合板の単板構成を調査し、その最弱単板構成
で求める。
から誘導した値であり、その妥当性については、
長期許容応力度(5 0 年相当)=1.1×(基準許容
曲げ強度試験で裏付けを行っている。なお、表
応力度)
CN90
960
990
1010
11の曲げヤング係数は最弱単板構成の合板の
長期積雪時許容応力度(3ヶ月相当)=1 . 4 3×
N65
580
600
620
CN65
640
660
680
平均値である(実験データについては P49 , 表
(基準許容応力度)
N75
660
690
710
32 参照)
。
短期積雪時許容応力度(3日相当)=1. 6×(基
CN75
810
840
870
N90
810
840
860
なお、実際の設計にあたっては基準許容応力
準許容応力度)
CN90
970
1000
1030
度に荷重継続期間・寸法効果・含水率等の影
短期許容応力度(5 分相当)=2 . 0×(基準許容
N75
660
690
710
CN75
810
840
870
響を勘案する係数を乗じて許容応力度を決定す
応力度)
N90
810
840
860
CN90
970
1000
1030
18
21
24
28
35
N75
660
690
710
CN75
810
840
870
N90
810
840
860
CN90
970
1000
1030
出典:2007年枠組壁工法建築物構造計算指針(緑本)
出典元の樹種は北米材のみであるが、
(一社)日本建築学会「木質構造設計規準・同解説」の樹種区分に従い、代表的
な国産材を加えた。
5
6
2
2.4 構造用合板の標準寸法と生産品目
合板のJASにおけるホルムアルデヒド放散量
は換気回数に応じて使用可能面積が制限され、
区分と建築基準法のホルムアルデヒド規制は対
F ☆製品は内装材としては使用できない。なお、
・構造用合板の標準寸法と生産品目は表 13のとおりである。
応している(表 15)
。最上位区分のF ☆☆☆☆
天井裏などには F ☆☆☆の使用が認められて
表13. 構造用合板の標準寸法と生産品目
の製品は内装仕上げとして無制限に使用するこ
いる。
樹種
厚さ
国産材
スギ、カラマツ、アカマツ、トドマツ、ヒノキ
外国産材
ラーチ、ベイマツ、ラジアータパイン、ラワン
これらの樹種の複合
例)カラマツースギなど
とが認められており、F ☆☆☆及び F ☆☆製品
F☆☆☆☆
5㎜、5.5㎜、6㎜、7.5㎜、9㎜、12㎜、15㎜、18㎜、24㎜、28㎜、30㎜
910 × 1820㎜、910 × 2430㎜、910 × 2730㎜、910 × 3030㎜
さね加工なし
1000 × 2000㎜、1000 × 2430㎜、1000 × 2730㎜、1000 × 3030㎜
1220 × 2440㎜、1220 × 2730㎜、1220 × 3030㎜
標準寸法
920 × 1820㎜、920 × 2430㎜、920 × 2730㎜、920 × 3030㎜
さね加工あり
12㎜
特類
1010 × 2000㎜、1010 × 2430㎜、1010 × 2730㎜、1010 × 3030㎜
12㎜
1類
1230 × 2440㎜、1230 × 2730㎜、1230 × 3030㎜
等級
1 級、2 級
接着の程度
特類、1 類
ホルムアルデヒド放散量
F ☆☆☆☆(平均値 0.3㎎/ L 以下、最大値 0.4㎎/ L 以下)
品 名:構造用合板(低ホル)
寸 法:12.0×910×1820㎜
接着性能:特類
等 級:1級
板面の品質:C-D
ホルムアルデヒド 放散量:F☆☆☆☆
製 造 者:会社名・工場名
※樹種、サイズ等については当会またはメーカーにお問い合わせください。
2.5 構造用合板のホルムアルデヒド放散量
7
ホルムアルデヒドとは合板用接着剤の原料等
ての建築基準法改正により、建築材料及び換
として用いられている化学物質の名称である。
気設備に関する規制が行われている。その主
ホルムアルデヒドは常温では無色の気体で刺激
な内容は、①ホルムアルデヒド発散建材の内装
臭があり、その37%程度の水溶液はホルマリン
仕上げ材への使用面積制限と同時に換気設備
と呼ばれている。
の設置の義務化、②防腐剤としてのクロルピリ
住宅の高気密化等に伴い19 9 0 年代にシック
ホスの全面使用禁止である。ホルムアルデヒド
ハウス症候群が社会問題となり、厚生労働省
(当
時は厚生省)は平成9 年に、我が国で初めて化
2級
1級
F ☆☆☆(平均値 0.5㎎/ L 以下、最大値 0.7㎎/ L 以下)
構造用合板(低ホル)
12×910×1820㎜
C-D
会社名・工場名
図3. ホルムアルデヒド放散量の表示例
表14. 合板のJASにおけるホルムアルデヒド放散量区分
基準値(mg/L)
表示記号
平均値
最大値
対策としては、室内濃度が厚生労働省室内濃
F ☆☆☆☆
0.3mg/L 以下
0.4mg/L 以下
度指針値を上回らないようホルムアルデヒドを
F ☆☆☆
0.5mg/L 以下
0.7mg/L 以下
学物質の室内濃度指針値を策定した。その化
放散するおそれのある建築材料については、換
F ☆☆
1.5mg/L 以下
2.1mg/L 以下
学物質がホルムアルデヒドであり、数値は10 0μ
気回数と当該建築材料のホルムアルデヒド発散
F☆
5.0mg/L 以下
7.0mg/L 以下
3
g/m (0
. 1mg/m3)である。なお、室内濃度指
速度に応じて、内装仕上げの使用面積が制限さ
針値とは、
「ヒトがその濃度の空気を一生涯に
れている。
わたって摂取しても、健康への有害な影響は受
シックハウス対策としての建築基準法の改
けないであろうと判断される値を算出したもの」
正と連動して平成15 年に合板のJAS 規格にお
(厚生労働省「シックハウス(室内空気汚染)問
けるホルムアルデヒド放散量区分も改正され
題に関する検討会中間報告書-第8回~第9回
た(表 14)。表示記号についてはJIS 規格との
のまとめ」
)であり、シックハウス症候群とは直接
整合性が図られ、放散量区分は「F」と「☆」の
関係があるわけではない。指針値を超えたら
数の組み合わせとなっており、基準に合格した
直ちにシックハウス症候群を引き起こすというも
ものだけに図 3に示すJASマークの表 示が認
のではなく、また、指針値以下だからシックハウ
められている。JAS 規格におけるホルムアルデ
ス症候群にならないというものでもない。特に、
ヒド放散量試験には一般に「デシケータ法」と
「化学物質過敏症」と呼ばれる人については、
呼ばれる方法が採用されており、水中に吸収さ
指針値により健康被害を判断することは困難で
れるホルムアルデヒド量が測定される(単位は
あり、医学的な対応が必要とされている。
mg/L)
。基準値はデシケータ法による放散量
平成15 年7月からは、シックハウス対策とし
の程度に従って区分されている。
表 15. 内装仕上げの制限(ホルムアルデヒド発散建築材料の基準等)
ホルムアルデヒドの発散
速度基準
(*1)
告示で定める建築材料
名 称
対応する規格
5μg/m2 h以下
規制対象外
(上位規格)
JIS、JASの
F☆☆☆☆
5μg/m2 h超
20μg/m2 h以下
第3種
ホルムアルデヒド
発散建築材料
JIS、JASの
F☆☆☆
(旧E0、Fc0)
20μg/m2 h超
120μg/m2 h以下
第2種
ホルムアルデヒド
発散建築材料
JIS、JASの
F☆☆
(旧E1、Fc1)
120μg/m2 h超
第1種
ホルムアルデヒド
発散建築材料
JIS、JASの
F☆
(旧E2、Fc2)
内装仕上使用可能面積
換気回数0.5回以上 換気回数0.7回以上
面積の制限なし
床面積の
2倍以内
床面積の
5倍以内
小屋裏等では面積の制限なし
床面積の
約0.3倍以内
床面積の
約0.8倍以内
使用できない
*1:測定条件:温度28℃、相対湿度50%、ホルムアルデヒド濃度0.1㎎/m3(=指針値)
*2:建築物の部分に使用して5年経過したものについては、制限なし
*3:告示で定める建築材料に対応する規格の他に、大臣認定を受けた建築材料として、第20条の5第4項の認定(上位規格)、
第20条の5第3項の認定(第3種)、第20条の5第2項の認定(第2種)がある。
8
3.1 地震力と風圧力の流れ
構造用合板を張った耐力壁
4.1 壁倍率
の柱 脚固定 式とタイロッド式がある)の結果
に限る)の倍率は以下の方法で求める。
から表 16 のように定められている。在 来 軸
倍率=2.5倍×0.6×
(面材の高さ)
(
/ 横架材の内法)
● 地震力の流れ
下地材を経て柱に作用する。柱は風 圧力に
組構法における合板張り耐力壁の壁倍率は、
た だし、準 耐 力 壁 は、面 材の 高さ( 張り
地震力は重量(正しくは質量)のあるところ
対しては、土台と2 階の床(1 階部分の場合)、
仕様 によって 1 . 5 〜 2 . 5 倍である。2 . 5 倍 の
継いでもよい)が 横架 材内法の 8 0 % 以 上で
に作用する。特に重量のある部分は床と屋根で
あるいは 2 階 の床と屋 根(2 階 部 分 の 場 合)
倍率は、いわゆる二つ割り筋かい(2 . 0 倍)に
あること、腰 壁・垂壁は、それぞれの高さが
あり、床と屋根に作用した地震力は、耐力壁を
で支 持され縦方向に設 置された「はり」とし
木ずり(0 . 5 倍)を張った壁と同じ値である。
3 6 cm 以上、長さが 2 m 以下で、その両側には
経て基礎・地盤へ流れる(図4)
。
て働く。柱に作用した風 圧力は土台、2 階の
枠組壁工法における壁倍率は、仕様によって
耐力壁か準耐力壁があることが必要である。
● 風圧力の流れ
床、屋根などへ伝達され 、さらに耐力壁を経
2 . 5 〜3 . 5 倍である。
外壁に作用した風圧力は外装仕上げ材や壁
て基礎・地盤へ流れる(図 5)。
ここでいう壁倍率は、建築基
による性能表示制度(任意)を
羽子板ボルト
値が使用できるほか、建築基準
法では耐力壁として認められて
いない「合板 が土台、胴差し、
はり、けた等にかからない仕様」
でも、準耐力壁、腰壁・垂壁と
して耐力を算入することができ
面 材
1820
距離L
ストッパ
変位計
る。ただし、これらを除く正規
の耐力壁だけで必要 壁量を満
図5. 風圧力の流れ
3.2 耐震設計と耐風設計の要領
たすことが条件である。
変位計
図4. 地震力の流れ
表示する場合は、同じ壁倍率の
変位計
③
耐力壁はその
地震力を基礎・
地盤に伝える
①
風圧力は外壁
仕上げ材を介
して柱に加わ
る。
柱は屋根・床
に支えられて
いるので、
風
圧力は最終的
に床・屋根に
流れる
③
耐力壁は風圧
力を基礎・地
盤に伝える
ホールダウン金物
①
地震力は主と
して重量の重
い床・屋根に
加わる
②床・屋根は風圧力を
耐力壁に伝える
変位計
P正負交番加力
利用して耐震等級や耐風等級を
②床・屋根はその地震力を
耐力壁に伝える
梁:105×180ベイマツ
単位:㎜
図 6. 柱脚固定式の面内せん断試験の例
4.2 特認による壁倍率
釘を太くしたり、釘間隔を狭くすることによって
をCN 75釘で張った耐力壁「ネダノン スタッド
壁倍率を高くすることが可能である。ただし、そ
レス5 +(ファイブプラス)
」で倍率 5 . 0の認定を
耐震設計と耐風設計の目的は、床や屋根に
耐震設計に関しては、これまで耐力壁ばかり
のような耐力壁を利用する場合は、指定された試
受けた。仕様は、外壁用の大壁・真壁仕様と間
作用する地震力や風圧力を、建物を壊すことな
に注意が集まる傾向が強かったが、床や屋根
験機関において実験を基とする評価を受ける必
仕切り壁用(床勝ち)の大壁・真壁仕様の計4
く基礎・地盤へ流すことである。そのためには
は耐力壁と両輪のように働かなければならない
要がある。この場合に与えられる建築基準法上の
仕様である。特徴としては間柱が省略できるこ
床と屋根(水平構面)および耐力壁(鉛直構面)
重要な耐震要素である。
壁倍率の上限は5倍である。
と、剛性・耐力が高く粘り強いことが挙げられ
日本合板工業組合連合会(日合連)、東京・東北
る。特に粘りについては、一般の耐力壁が最大
合板工業組合(東京・東北工組)
、
(一社)
日本ツーバ
耐力に達した後、急激に抵抗力が失われるのに
イフォー建築協会では、この国土交通大臣の特認制
対して、その2倍以上の変形を生じてもなお最
度により、構造用合板張り耐力壁の認定を受けた。
大耐力に近い抵抗力があり(図 8 参照)、現在あ
をしっかり造ることが肝心である。
3.3 構造用合板を張ることによる効果
4
距離H
準法の壁倍率である。品確法
9
準耐力壁、腰壁・垂壁(いずれも大壁仕様
耐 力壁の 壁 倍 率は面内せん断 試 験( 図 6
2730
3
建物の耐震・耐風メカニズムと
構造用合板を張ることによる効果
構造用合板を床・屋根・壁に張ると、水平構
が箱のように一体化して、地震や風に強い強固
木造軸組構法(3階建てを含む)の住宅建築で
る耐力壁の中で最も耐震性に優れた耐力壁とい
面と鉛直構面が強固になるとともに、建物全体
な建物ができあがる。
使用できる耐力壁として厚さ24㎜の構造用合板
える。また、厚さ12㎜の構造用合板をCN6 5お
10
3.1 地震力と風圧力の流れ
構造用合板を張った耐力壁
4.1 壁倍率
の柱 脚固定 式とタイロッド式がある)の結果
に限る)の倍率は以下の方法で求める。
から表 16 のように定められている。在 来 軸
倍率=2.5倍×0.6×
(面材の高さ)
(
/ 横架材の内法)
● 地震力の流れ
下地材を経て柱に作用する。柱は風 圧力に
組構法における合板張り耐力壁の壁倍率は、
た だし、準 耐 力 壁 は、面 材の 高さ( 張り
地震力は重量(正しくは質量)のあるところ
対しては、土台と2 階の床(1 階部分の場合)、
仕様 によって 1 . 5 〜 2 . 5 倍である。2 . 5 倍 の
継いでもよい)が 横架 材内法の 8 0 % 以 上で
に作用する。特に重量のある部分は床と屋根で
あるいは 2 階 の床と屋 根(2 階 部 分 の 場 合)
倍率は、いわゆる二つ割り筋かい(2 . 0 倍)に
あること、腰 壁・垂壁は、それぞれの高さが
あり、床と屋根に作用した地震力は、耐力壁を
で支 持され縦方向に設 置された「はり」とし
木ずり(0 . 5 倍)を張った壁と同じ値である。
3 6 cm 以上、長さが 2 m 以下で、その両側には
経て基礎・地盤へ流れる(図4)
。
て働く。柱に作用した風 圧力は土台、2 階の
枠組壁工法における壁倍率は、仕様によって
耐力壁か準耐力壁があることが必要である。
● 風圧力の流れ
床、屋根などへ伝達され 、さらに耐力壁を経
2 . 5 〜3 . 5 倍である。
外壁に作用した風圧力は外装仕上げ材や壁
て基礎・地盤へ流れる(図 5)。
ここでいう壁倍率は、建築基
による性能表示制度(任意)を
羽子板ボルト
値が使用できるほか、建築基準
法では耐力壁として認められて
いない「合板 が土台、胴差し、
はり、けた等にかからない仕様」
でも、準耐力壁、腰壁・垂壁と
して耐力を算入することができ
面 材
1820
距離L
ストッパ
変位計
る。ただし、これらを除く正規
の耐力壁だけで必要 壁量を満
図5. 風圧力の流れ
3.2 耐震設計と耐風設計の要領
たすことが条件である。
変位計
図4. 地震力の流れ
表示する場合は、同じ壁倍率の
変位計
③
耐力壁はその
地震力を基礎・
地盤に伝える
①
風圧力は外壁
仕上げ材を介
して柱に加わ
る。
柱は屋根・床
に支えられて
いるので、
風
圧力は最終的
に床・屋根に
流れる
③
耐力壁は風圧
力を基礎・地
盤に伝える
ホールダウン金物
①
地震力は主と
して重量の重
い床・屋根に
加わる
②床・屋根は風圧力を
耐力壁に伝える
変位計
P正負交番加力
利用して耐震等級や耐風等級を
②床・屋根はその地震力を
耐力壁に伝える
梁:105×180ベイマツ
単位:㎜
図 6. 柱脚固定式の面内せん断試験の例
4.2 特認による壁倍率
釘を太くしたり、釘間隔を狭くすることによって
をCN 75釘で張った耐力壁「ネダノン スタッド
壁倍率を高くすることが可能である。ただし、そ
レス5 +(ファイブプラス)
」で倍率 5 . 0の認定を
耐震設計と耐風設計の目的は、床や屋根に
耐震設計に関しては、これまで耐力壁ばかり
のような耐力壁を利用する場合は、指定された試
受けた。仕様は、外壁用の大壁・真壁仕様と間
作用する地震力や風圧力を、建物を壊すことな
に注意が集まる傾向が強かったが、床や屋根
験機関において実験を基とする評価を受ける必
仕切り壁用(床勝ち)の大壁・真壁仕様の計4
く基礎・地盤へ流すことである。そのためには
は耐力壁と両輪のように働かなければならない
要がある。この場合に与えられる建築基準法上の
仕様である。特徴としては間柱が省略できるこ
床と屋根(水平構面)および耐力壁(鉛直構面)
重要な耐震要素である。
壁倍率の上限は5倍である。
と、剛性・耐力が高く粘り強いことが挙げられ
日本合板工業組合連合会(日合連)、東京・東北
る。特に粘りについては、一般の耐力壁が最大
合板工業組合(東京・東北工組)
、
(一社)
日本ツーバ
耐力に達した後、急激に抵抗力が失われるのに
イフォー建築協会では、この国土交通大臣の特認制
対して、その2倍以上の変形を生じてもなお最
度により、構造用合板張り耐力壁の認定を受けた。
大耐力に近い抵抗力があり(図 8 参照)、現在あ
をしっかり造ることが肝心である。
3.3 構造用合板を張ることによる効果
4
距離H
準法の壁倍率である。品確法
9
準耐力壁、腰壁・垂壁(いずれも大壁仕様
耐 力壁の 壁 倍 率は面内せん断 試 験( 図 6
2730
3
建物の耐震・耐風メカニズムと
構造用合板を張ることによる効果
構造用合板を床・屋根・壁に張ると、水平構
が箱のように一体化して、地震や風に強い強固
木造軸組構法(3階建てを含む)の住宅建築で
る耐力壁の中で最も耐震性に優れた耐力壁とい
面と鉛直構面が強固になるとともに、建物全体
な建物ができあがる。
使用できる耐力壁として厚さ24㎜の構造用合板
える。また、厚さ12㎜の構造用合板をCN6 5お
10
4
よびCN 5 0 釘で張った耐力壁で倍率 4 . 0、3 . 8、
の影響等を勘案して定める低減係数を乗じ、
3 . 6、3 . 5、3 . 4、3 . 2、3 .1の認定を受けた。仕様
1 . 9 6kN/m=倍率1として、倍率に換算する。
は、外壁用の大壁・真壁仕様と、間仕切り壁用
(a)見かけのせん断変形角が1/120 rad時の耐力
(床勝ち)の大壁・真壁仕様の計4仕様である。
(柱脚固定式の場合)、または真のせん断変形
枠 組壁工法の住宅建築で使用できる耐力壁
角が1/150 rad時の耐力
(タイロッド式の場合)
として、厚さ12 ㎜の構造用合板をCN 6 5およ
(b) 最大耐力に2 /3を乗じた値
びCN 5 0 釘で張った耐力壁で、倍率 5 . 0、4 . 8、
(c)降伏耐力、Py
4 . 5、3 . 6の認定を受けた。
(d) 終局耐力Puに(0 . 2 /Ds)を乗じた値
建設省および国土交通省告示の壁倍率に加え、
Py、Dsなどは、実験の荷重─変形関係をバ
大臣認定を受けたこれらの合板張り耐力壁によ
イリニア(2直線)化して得られる(図7 参照)
。
り、設計の自由度を広げることができる。
なお、信頼水準75%の5 0 %下限許容限界は、
なお、本耐力壁を用いる場合は、確認申請時に
試験体数が3の場合、平均値に(1-0 . 471V)
認定書の写しを添付する必要がある。
を乗じればよい(Vは変動係数)
。
● 壁倍率の認定を行う指定機関
● 評価方法の考え方と旧評価方法との違い
(公財)日本住宅・木材技術センター、
(一財)
耐力壁の特認は以前から行われてきたが、平
ベターリビング、
(一財)建材試験センター、
(一財)
成12 年の建築基準法改正により、その方法が
日本建築総合試験所。
以下のように変わった。
● 評価方法
第1は、改正基準法で、住宅を建てる際、柱
①試験体寸法:幅1, 820㎜、高さ2 ,730㎜が標準。
脚接合部が耐力壁より先行して破壊しないよう
②軸材:はりはベイマツ構造用製材JAS甲種3
に、柱脚金物の使用が規定されたことから、耐
級程度、柱、土台はスギ構造用製材JAS乙種
力壁の評価でも、これに合わせるため、載荷式
3級程度。
あるいは無載荷式では、柱脚接合部が破壊し
③試験体数:3 以上。
ないように、補強を講じることになったこと。
④支持方法:タイロッドを用いて柱脚の浮き上が
第2は、旧基準法の非構造部分による地震力
りを拘束する方法、または図6に示す柱脚固定
の1 /3 負担の仮定をやめたことに対する処置と
式(鉛直荷重相当の錘を壁頂部に載荷する載
して、壁倍率1を13 0 kgf/mから2 0 0 kgf/mに
荷式あるいは無載荷とする無載荷式)の方法
増加させたこと。これにより、従来の壁倍率は
による。ただし、柱脚固定式では、壁部分に
低減させる必要が生じるが、見直しの結果、旧
先立って柱脚接合部が破壊しないよう、十分な
法の下限品質のための低減係数の3/4に替え
強度を有するホールダウン金物等を使用する。
て、新法では平均値(5 0 %下限許容限界)を基
⑤加力方法:柱脚固定式の場合、見かけのせん
準とすることとしたこと、柱脚接合部の補強の
断変形角が 1 /45 0、1 /3 0 0、1 /2 0 0、1 / 15 0、
ため耐力が上がったことなどによる相殺があり、
1 / 10 0、1 / 75、1 / 5 0 radで原則として3回の
結果的に倍率は従来のままとなっている。
正負繰り返しを行い、荷重が最大荷重を過ぎ
第3は、大地震時の安全性を確保するため、保
てその8 0 % 以下になるか、変形が 1 / 15rad
有耐力(靭性とエネルギー吸収能力)に関する上
に達するまで加力する。タイロッド式では、上
記(d)を、また、比較的頻繁に来る地震に対する
記の見かけのせん断変形角を真のせん断変形
サービスアビリティーとして上記(c)を加えたこと。
角と読み替え、最初に1 /6 0 0 radを加える。
なお、新しい評価方法では旧法より多くの正
⑥倍率の算定方法:以下の(a) 〜(d)について、
負繰り返し加力を行うが、その目的は、除荷時
バラツキを考慮して統計的に求めた信頼水
の荷重─変形関係やエネルギー吸収の性能を
準75%の5 0 %下限許容限界の最小値(kN/
見ることではなく、繰り返しによる耐力低下の
m)に、壁材料の耐久性、使用環境、施工性
影響を含んだ包絡線(処女変形の荷重─変形
の影響、壁量計算の前提を満たさない場合
関係)を得ることである。
表16. 告示における木造軸組構法と枠組壁工法の耐力壁の倍率(日合連、東京・東北工組、
(一社)日本ツーバイフォー
建築協会で取得した合板の特認についてはP13表17を参照)
枠組壁工法の耐力壁
木造軸組構法の耐力壁
倍率
材料
材料
種類
厚さまたは断面(㎜以上)
施工例
種類
厚さまたは断面(㎜以上)
施工例
5.0
製材
(筋かい,
たすき掛け)
90×90
4.0
製材
(筋かい,
たすき掛け)
45×90
構造用合板1級
9
⑫
製材
(筋かい)
90×90
構造用合板1級
7.5(9.0未満)
⑫
製材
(筋かい,
たすき掛け)
30×90
構造用合板2級
9
⑫
ハードボード
7
パーティクルボード
12
3.5
3.0
構造用パネル
2.5
①,②
構造用合板1級,2級
(直張り,
受材真壁)
7.5
構造用合板2級
7.5(9.0未満)
パーティクルボード
(直張り,
受材真壁)
12
ハードボード
5.0(7.0未満)
硬質木毛セメント板
12
製材
(筋かい,
たすき掛け)
15×90
フレキシブル板
6
製材
(筋かい)
45×90
パルプセメント板
8
鉄筋
(たすき掛け)
φ9
硬質木片セメント板
(直張り)
12
炭酸マグネシウム板
(直張り)
12
ハードボード
(直張り)
5
1.7
構造用せっこうボードA種
(直張り)
12
構造用せっこうボードA種
12
1.6
構造用せっこうボードA種
(直張り床勝ち)
12
1.5
製材
(筋かい)
30×90
構造用せっこうボードB種
12
構造用合板1級,2級
(貫真壁)
7.5
製材(斜め打ち)
13×210
パルプセメント板
(直張り)
8
パーティクルボード
(貫真壁)
12
強化せっこうボード
12
構造用パネル
(直張り,
受材真壁)
2.0
③
⑫
構造用パネル
(貫真壁)
せっこうラスボード
(受材真壁)
9
構造用せっこうボードA種
(受材真壁)
12
土塗り
(両面)
70
1.3
構造用せっこうボードB種
(受材真壁)
12
1.2
構造用せっこうボードB種
(直張り)
12
1.0
木ずり
(両面)
せっこうボード
12
製材
(筋かい)
15×90
シージングボード
12
鉄筋
φ9
ラスシート(角波亜鉛鉄板)
0.4
シージングボード
(直張り)
12
ラスシート(メタルラス)
0.6
ラスシート(角波亜鉛鉄板,
直張り)
0.4
ラスシート(メタルラス,
直張り)
0.6
せっこうラスボード
(貫真壁)
9
せっこうボード
(受材真壁)
12
強化せっこうボード
(受材真壁)
12
構造用せっこうボードB種
(直張り床勝ち)
12
土塗り
(片面,
両面)
55
製材
(格子壁)
105×105
せっこうボード
(直張り,直張り床勝ち)
12
強化せっこうボード
(直張り,直張り床勝ち)
12
製材
(格子壁)
45×90
0.8
構造用せっこうボードA種
(貫真壁)
12
0.7
構造用せっこうボードB種
(貫真壁)
12
0.6
製材
(格子壁)
90×90
製材
(落込み板壁)
27×130
木ずり
(片面)
製材(筋かい)
18×89
土塗り
(片面)
製材(横打ち)
13×210
0.9
0.5
備考
せっこうボード
(貫真壁)
12
強化せっこうボード
(貫真壁)
12
上記の材料を併用した場合は倍率を加算することができるが、
5.0倍を上限とする。
枠組壁工法の倍率は、
たて枠間隔50cm以内の仕様のみ記載。
軸組構法は建築基準法施行令第46号および建設省告示第1100号。枠組壁工法は、国交省告示第1541号による。
11
12
Ⅴ
0.9Pmax
Pu
0.8Pmax
Ⅲ
荷重
Ⅰ
Py
Ⅱ
Du :
Ⅳ
Ⅰ :
Ⅱ :
Ⅲ :
Py :
Dy :
Ⅴ :
Ⅵ :
0.4Pmax
0.1Pmax
Pu :
Dy
Dv
Ds =
包絡線
Ⅵ
4.3 構造計算で設計する耐力壁の耐力
1
2Du/Dv̶1
0.8Pmaxの時の変形(実験で0.8Pmax以下に
ならない場合は1/15rad)
0.1Pmaxと0.4Pmaxを通る直線
0.4Pmaxと0.9Pmaxを通る直線
直線Ⅱを平行移動して包絡線に接する直線
直線Ⅰと直線Ⅲの交点の荷重
包絡線のPyに相当する変形
原点と(Dy,Py)を通る直線
包絡線とX軸及びDuを通りY軸に平行な直線
によって囲まれる面積が、ハッチの面積と等しく
なるように引いたX軸に平行な直線
直線ⅥのY軸の値
倍率
仕様
主な施工場所
2級
以上
○
CN65
外周 100㎜以下
FRM-0335
中通り 200㎜以下
④
○
○
CN50
外周 75㎜以下
FRM-0416
中通り 200㎜以下
④
3.1
○
○
CN50
外周 100㎜以下
FRM-0415
中通り 200㎜以下
④
3.6
○
○
CN65
外周 100㎜以下
FRM-0334
中通り 200㎜以下
⑤
CN50
外周 75㎜以下
FRM-0414
中通り 200㎜以下
⑤
⑤
3.6
大壁床勝ち
外壁
外壁・間仕切り壁
軸
組
3.2
受材真壁
外壁
3.5
受材真壁床勝ち
外壁・間仕切り壁
3.6
5.0
枠 組
2級
以上
2級
13
CN50
○
×
CN50
外周 100㎜以下
FRM-0337
中通り 200㎜以下
⑥
CN65
外周 100㎜以下
FRM-0339
中通り 200㎜以下
⑦
CN50
外周 100㎜以下
FRM-0338
中通り 200㎜以下
⑦
外周 100㎜以下
FRM-0483
中通り 200㎜以下
⑦
○
×
×
×
○
CN65
○
○
CN75
外周 100㎜以下
FRM-0297
⑧
大壁床勝ち
外壁・間仕切り壁
○
○
CN75
外周 100㎜以下
FRM-0296
⑨
外壁
○
○
CN75
外周 100㎜以下
受材真壁床勝ち
外壁・間仕切り壁
○
○
CN75
外周 100㎜以下
○
○
CN65
枠組壁
4.5
外壁・間仕切り壁
○
○
○
枠組壁・横張り
※ 商品名 ネダノン スタッドレス 5
※※CNZくぎも使用
● 認定書請求先
○
受材真壁
4.8
1.5
○
外周 100㎜以下
FRM-0336
中通り 200㎜以下
外壁
3.6
9 以上
10 未満
○
大壁
5.0
12
○
○
4.0
2級
以上
施工例
○
大壁
くぎの間隔
認定番号
種類※※
3.4
24 ※
くぎ打ちの方法
1000
3.8
12
モジュール
910
4.0
外壁・間仕切り壁
○
計算や限界耐力計算による設計ルートを採る
ただし(公財)日本住宅・木 材 技術センター
ことが可能である。この場合、耐力壁は釘接
編集「木造軸組 工法 住宅の許 容応力度設計
合許容せん断耐力や合板に生じるせん断応力
(2 0 0 8 年版)」は、通常の住宅の設計において
度等から設計することができる(P. 2 5を参照)。
は13 . 72 kN/m(倍率 7 相当:=7×1 . 9 6)を上
基準法では、このルートで設計した耐力壁に耐
限とすることを推奨している。
4
4.4 実験に見る合板張り耐力壁の性能
表17. 合板張り大臣認定耐力壁の倍率
等級
力の上限はない。
Du
せん断変形角
図7. 荷重一変形関係のバイリニア化の方法
厚さ
工法
(㎜)
在来軸組構法や枠組壁工法では許容応力度
○
○
○
○
FRM-0298
⑩
⑪
外周 50㎜以下
TBFC-0114
中通り 200㎜以下
⑫
CN50
外周 50㎜以下
TBFC-0112
中通り 200㎜以下
⑫
CN65
外周 75㎜以下
TBFC-0111
中通り 200㎜以下
⑫
CN65
外周 100㎜以下
TBFC-0113
中通り 200㎜以下
⑫
CN50
外周 100㎜以下
TBFC-9034
中通り 200㎜以下
⑬
耐力壁の倍率はせん断実験の結果を基に定
裕があること、スギ合板 12㎜の耐力壁は告示仕
められている。図 8は実験結果の一例で、合板
様に比べて耐力も変形性能(粘り)も向上して
張り耐力壁の場合、在来軸組構法住宅の許容
いること、さらにネダノン スタッドレス5 + は、他
変形角である1 / 12 0 rad時の耐力は、基準法・
の耐力壁にはない高い耐力と優れた変形性能
告示の倍率(倍率2 . 5 = 4 . 9 kN/m)に対して余
を有することが見て取れる。
30
スギ合板24㎜、
2級
(スタッドレス5+大壁.
特認5倍)
25
長さ1m当たりの耐力(kN/m)
4
Pmax
20
スギ合板24㎜、
2級
(スタッドレス5+真壁.
特認5倍)
スギ合板12㎜、
2級
(大壁、特認4倍)
15
スギ合板12㎜、
2級
(受材真壁、特認3.4倍)
10
ラワン合板7.5㎜、
1級
(告示2.5倍)
5
軸材の樹種
耐力壁
柱・土台
桁
合板24㎜
スギ
ベイマツ
スギ
ベイマツ
合板12㎜
合板7.5㎜
0
二つ割り筋かい ベイツガ ベイツガ
ベイツガ二つ割り筋かい
ツガ二つ割り筋違い
(基準法2倍)
(基準法2倍)
2
ベイツガ ベイツガ
6
4
見かけのせん断変形角
(10
−2
8
10
rad)
図8. 構造用合板耐力壁のせん断性能
+
・軸組 12㎜ 枠組 12㎜…日合連(ホームページから認定書のコピーの申請用紙が入手可能です。
)
・軸組 24㎜(ネダノン スタッドレス 5 +)…東京・東北工組(ホームページから認定書のコピーの申請用紙が入手可能です。
)
・枠組 9㎜以上 10㎜未満…(一社)日本ツーバイフォー建築協会(但し、認定書の発行には会員登録が必要となります。
)
14
4
4.5 筋かいとの違い
4.6 合板張り耐力壁の施工方法
● 方向性がない
● 合板には JASマークの付いた構造用合板
筋かい耐力壁は、図 9 のように基本的に筋
力の方向
力の方向
を使用する
幅の最小値は9 0 cm以上、告示仕様の合板張り
耐力壁の幅の最小値は6 0 cm以上かつ階高/
例え JASマークが付いていても、コンクリー
幅は5以下とされている。国土交通大臣特認の
筋かいが圧縮となるときは、端部が土台 ・柱・
ト型枠用合板(コンパネ)等の他の合板を使用
耐力壁の幅の最小値については、個々に変形性
胴差しなどに接する( 胴 付きとなる)ことに
すると建築基準法違反になるので、絶対に使用
能が異なるため、9 0 cmとも6 0 cmとも言及され
よって、力が 伝 達されるが、筋かいが引張り
しない。
ていないものもあるが、これらの幅の最小値に
かいが圧縮になるときに抵抗する。これは、
ついては最終的には建築主事の判断と考えられ
を受けるときには、筋かい端部の接合部は十
分に抵抗できないからである。そのため、筋
● 釘は規定された種類のものを使用する
るので、問題がありそうな場合は事前に建築主
かい端部は金物で補強することになっている
市販されている釘には、N釘、CN釘、FN釘な
事に確認ください。
が、それでも耐力は圧縮の時の半分程度であ
どいくつかの種類がある。FN釘はこの中で最
枠組壁工法では、
(一社)日本ツーバイフォー
も多く出回っている釘であるが、胴部径の細い
建築協会発行・国土交通省監修「2 0 0 7年枠組
造作用釘であり耐力に乏しい。国土交通省(建
壁工法建築物構造計算指針」によると、幅の最
設省)告示や国土交通大臣の認定書に規定され
小値は6 0 cm以上となっている。
た釘を使用しないと、所定の耐力が出ず建築基
合板を張り継ぐ場合は、合板はできるだけ大
準法違反となるので、設計時だけでなく施工時
きくすることが望ましい。
る。このような理由から、筋かい耐力壁は、
同一耐力壁線上で、筋かいの方向が一対とな
るように配置することになっている。これに
筋かいは圧縮
筋かいは引張
筋かいは柱と横架材の
軸組の中で突っ張る
筋かい端部が柱や横
架材から離れる
対して、合板 張り耐 力壁には方向性が無く、
図9. 筋かい耐力壁の方向性
これが筋かいと比べて最大のメリットである。
例えば 狭 小な敷地で間口部分に半間の壁し
の現場管理でも細心の注意が必要である。
か設けられない場 合、筋かいを1 本入れても
合板を留め付ける釘は N釘またはCN釘であ
一対にならないが、合板を張れば有効な耐力
り、以下のようになっている。
壁とすることができる。
と、図 10 のように荷重がゼロの付近で容易に
変形するスリップ成分が見られる。これは筋
かい端部が土台・柱・胴差しなどに接するま
での隙間によるものである。これに対して合
板耐力壁の場合は初期剛性が高く、筋かいの
ようなスリップ成分はない。
筋かいの耐力壁の初期のスリップ成分は金
物補強により減 少させることはできるが、端
部の隙間は施 工 精度に依存し、その影 響を
完全になくすことは困難である。したがって、
合板耐力壁は、高い施工精度がなくても、初
長さ1m当りの荷重(kN/m)
● 施工精度に左右されない
一対の筋かいに繰り返し荷重を作用させる
4
10
切に調整する
・ 軸組構法の告示の耐力壁(表16)
:N50
空気圧が過大で、釘が合板にめり込むと、終
・ 枠組壁工法の告示の耐力壁(表16)
:CN50
局強度が低下し、破壊の性状が脆性的になる
・ 軸組構法の大臣認定耐力壁(表17)
:仕様に
など、耐震性をそこなうことになる。
よりCN50、CN65又はCN75
20
・ 枠組壁工法の大臣認定耐力壁(表17):仕様
によりCN50又はCN65
10
5
●自動釘打機を使用する場合は、空気圧を適
● 合板の張り方には大壁仕様と真壁仕様と
がある
なお、CN釘の代わりに、CN釘に亜鉛メッキ
大壁仕様の場合は、柱と横架材に直接釘打
処理したCNZ 釘を使用してもよい。
ちし、真壁仕様の場合は、横架材に合板の胴つ
なぎ材を取り付けてこれに合板を釘打ちするか
-10
10
20
-10
頂部の水平変位(cm)
-5
10
20
30
-10
(a)
三つ割り筋かい入り
(b)
合板張り
図10. 耐力壁の復元力特性
● 合板を張り継ぐ場合は、目地部分に胴つな
ぎ材を設けて釘を打つ
(受材タイプ)、貫を入れてこれに合板を釘打ち
する(貫タイプ)。
この胴つなぎ材は合板と合板とを継ぐための
受材タイプの真壁仕様はメカニズム的には大
一種の添板であるから、胴つなぎ材の端部は柱
壁仕様と同じであるが、受材と柱・横架材がす
や間柱に強固に接合する必要はない。一般的
べりを生じないように強固に接合する必要があ
には釘の斜め打ちで留め付ける程度で良い。
る。貫タイプの真壁仕様は、メカニズムが他の
期剛性の高い安定した性能が容易に得られ
2 つと異なる部分があり、実際の剛性と耐力は
● 耐力壁の幅の最小値を守り、合板の大きさ
る耐力壁であるといえる。
やや低くなる傾向がある。
はできるだけ大きくする
● 力が分散するので粘りがある
建築基準法では耐力壁の幅の最小値や合板
● 耐力壁の構造用合板に設ける開口はできる
筋かい耐 力壁は、筋かい自身とその 接 合
これに対して、合板耐力壁では合板と軸組と
の最小の大きさについての規定はないが、在来
だけ小さくし、大きい場合は開口周囲を補
部に大きな力が集中する構造であり、場合に
の力の 伝 達が 多数の釘を介して行われるの
軸組構法では、
(公財)日本住宅・木材技術セ
強する
よっては土台が引き裂かれたり筋かいが折れ
で力が集中せず、粘り強い構造となる。
ンター編「木造軸組工法住宅の許容応力度設計
従来から、耐力壁の構造用合板に配管、電
(2 0 0 8 年版)」によれば、筋かい等の耐力壁の
気配線、換気扇等の小さい孔を設けることは許
たりして脆 性的な破壊を生じることがある。
15
16
4
容されていたが、国住指第 13 3 5号「国土交通
ぼ元の状態に戻るので、床仕上げの前には十分
省住宅局建築指導課長通知(技術的助言)」に
に乾燥することが必要である。
より、
「木造の耐力壁について、周囲の軸組か
強度は水分によって変化するが、乾けば元に
ら離して設ける径50cm程度の換気扇用の孔は
戻る。合板の製造には、JAS規格に規定された
「開口部」に該当しない」と明示された。しかし、
特類(屋外又は常時湿潤状態となる場所で使
合板の厚さが 12㎜以下で換気扇用等の比較的
用)または1類(断続的に湿潤状態となる場所
大きい孔を空ける場合は、孔の周囲を木材で適
で使用)の接着剤が使用されているため、単板
切に補強することが望ましい。
がはがれるようなことはない。
(雨や湿気で単
4
板がはがれた合板を見ることがあるが、このよ
● 雨ぬれを生じた場合の考え方
うな合板は、耐水性の低い接着剤を使用した
合板は木材と同様に水分を吸放出する性質
造作用の合板である。
)
があり、それにともなってわずかではあるが寸
また、雨ぬれによってスギやカラマツなどに
法変化を生じる。雨ぬれによって水分を多く吸
含まれる化学成分が反応し、板面が褐色や黒
収すると、膨らみ、ねじれ等を生じる。雨ぬれ
色に変色することがあるが、そのために強度が
の程度が激しいと膨らみ、ねじれ等が戻らない
低下することはない。
構造用合板7.5㎜以上
N50@150以下
構造用合板7.5㎜以上
N50@150以下
ことがある。雨ぬれの程度が軽微であればほ
合板を張り継がない場合
合板を張り継ぐ場合
図12. 施工例−② 構造用合板7.5㎜厚以上 外壁部 告示「受材真壁仕様」(壁勝ち)基本施工例
貫15×90以上
@610㎜以下
5本以上
間柱
300㎜以下
構造用合板7.5㎜以上
N50@150以下
合板を張り継がない場合
構造用合板7.5㎜以上
N50@150以下
合板を張り継ぐ場合
図11. 施工例−① 構造用合板7.5㎜厚以上 外壁部 告示「大壁仕様」(壁勝ち)基本施工例
17
構造用合板7.5㎜以上
N50@150以下
図13. 施工例−③ 構造用合板7.5㎜厚以上 外壁・間仕切り壁 告示「貫真壁仕様」基本施工例
18
4
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
4
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
胴つなぎ
45
(見付)
×60以上
胴つなぎ
45
(見付)
×60以上
受材
(見付)
×45以上
30
受材
30
(見付)
×45以上
受材
30
(見付)
×45以上
受材
30
(見付)
×45以上
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
合板を張り継がない場合
合板を張り継ぐ場合
合板を張り継がない場合
図14. 施工例−④ 構造用合板12㎜厚 外壁部 特認「大壁仕様」(壁勝ち)基本施工例
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
図16. 施工例−⑥ 構造用合板12㎜厚 外壁部 特認「受材真壁仕様」(壁勝ち)基本施工例
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
胴つなぎ
45
(見付)
×60以上
合板を張り継ぐ場合
受材
(見付)
×45以上
30
間柱
30
(見付)
×60以上
継手間柱
45
(見付)
×60以上
胴つなぎ
45
(見付)
×60以上
受材
30
(見付)
×45以上
受材
30
(見付)
×45以上
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
合板を張り継がない場合
受材
30
(見付)
×45以上
受材
30
(見付)
×45以上
受材
30
(見付)
×45以上
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
合板を張り継ぐ場合
図15. 施工例−⑤ 構造用合板12㎜厚 外壁・間仕切り壁 特認「大壁仕様」(床勝ち)基本施工例
19
合板を張り継がない場合
合板を張り継ぐ場合
図17. 施工例−⑦ 構造用合板12㎜厚 外壁・間仕切り壁 特認「受材真壁仕様」(床勝ち)基本施工例
20
4
受材
45×45以上
合板を張り継がない場合
構造用合板24㎜
CN75@100
合板を張り継ぐ場合
図18. 施工例−⑧ 構造用合板24㎜厚(ネダノン スタッドレス5+)外壁部
特認「大壁仕様」基本施工例
受材
45×45以上
構造用合板24㎜
CN75@100
合板を張り継がない場合
受材
45×45以上
受材
45×45以上
構造用合板24㎜
CN75@100
構造用合板24㎜
CN75@100
合板を張り継がない場合
合板を張り継ぐ場合
図20. 施工例−⑩ 構造用合板24㎜厚(ネダノン スタッドレス5+)外壁部
特認「受材真壁仕様」(壁勝ち)基本施工例
受材
45×45以上
胴つなぎ
60
(見付)
×45以上
受材
45×45以上
胴つなぎ
60
(見付)
×45以上
受材
45×45以上
構造用合板24㎜
CN75@100
合板を張り継ぐ場合
図19. 施工例−⑨ 構造用合板24㎜厚(ネダノン スタッドレス5+)外壁・間仕切り壁
特認「大壁仕様」(床勝ち)基本施工例
21
胴つなぎ
60
(見付)
×45以上
胴つなぎ
60
(見付)
×45以上
構造用合板24㎜
CN75@100
4
受材
45×45以上
受材
45×45以上
構造用合板24㎜
CN75@100
合板を張り継がない場合
受材
45×45以上
構造用合板24㎜
CN75@100
合板を張り継ぐ場合
図21. 施工例−⑪ 構造用合板24㎜厚(ネダノン スタッドレス5+)外壁・間仕切り壁
特認「受材真壁仕様」(床勝ち)基本施工例
22
4
4.7 合板張り耐力壁のメカニズム
頭つなぎ
(204)
頭つなぎ
(204)
上枠
(204)
上枠
(204)
ブロッキング
(204)
たて枠
(204)
たて枠
(204)
合板張り耐力壁のメカニズムは、図2 4 のよう
接合部の変形による軸組全体のせん断変形、
に垂直に立てた片持のIビームと同じである。
③柱の浮き沈みによる軸組全体の回転変形、
すなわち、外側の柱はフランジとして曲げの力に
④柱の引張・圧縮による軸組全体の曲げ変形
対して抵抗し、合板はウェブとしてせん断力に対
からなる。この中では特に①〜③が支配的で、
して抵抗する。合板耐力壁の剛性・強度が高
それぞれ、合板の厚さとせん断弾性係数(G)、
いのは、柱と横架材に合板を張り付けることに
合板を留めている釘接合部の剛性(釘の太さと
よって、せいが大きく長さが短いIビームが構成
間隔)、柱と土台・胴差し・桁・はりなどの接合
されるからである。
部の剛性によって決まる。このうち、③の変形
合板耐力壁の変形は、図2 5に示すように、①
については改正基準法でホールダウン金物等を
合板自身のせん断変形、②合板を止めている釘
用いて強度の確保を図ることとなった。
4
下枠
(204)
下枠
(204)
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
合板を張り継がない場合
構造用合板12㎜
釘種類と間隔は認定により異なる
合板を張り付けている
② 釘接合部分が変形する
合板を張り継ぐ場合
図22. 施工例−⑫ 枠組壁工法 構造用合板12㎜厚 外壁・間仕切り壁 告示・特認 基本施工例
柱はフランジに相当
力の方向
(曲げの力に抵抗)
フランジ
(せん断力に対
して抵抗)
ウェブ
合板は
ウェブ
に相当
合板がせん断
変形を生じる ①
この柱には引張
応力が生じる ④
頭つなぎ
(204)
この柱には圧縮
④ 応力が生じる
反力
合板耐力壁
上枠
(204)
Iビーム
図24. 合板耐力壁のメカニズム
③ 柱が土台から
引き抜ける
③ 柱が土台に
めりこむ
図25. 合板耐力壁の変形
たて枠
(204)
下枠
(204)
構造用合板2級9㎜以下10㎜未満
CN50 外周@100以下
(水平方向の目地を除く)
その他の部分@200以下
図23. 施工例−⑬ 枠組壁工法 構造用合板9㎜厚以上10㎜厚未満 外壁・間仕切り壁
特認 基本施工例
23
24
4
4.8 許容応力度計算における
合板張り耐力壁のせん断耐力
構造用合板を張った床
● 軸組構法
● 枠組壁工法
5.1 水平構面の役割
軸組構法において、3階建て建物や延べ床
枠組壁工法の場合も、軸組構法と同様に、
● 水平構面に加わる地震力を耐力壁に伝達
面積が 5 0 0 平米を超える場合は、許容応力度
3階建てなどになると許容応力度計算が要求
計算が要求される。一般的に、告示や特認に
される。告示や特認の耐力壁のせん断耐力に
水平構面の第一の役割は、水平構面に作用
までであるが、現実的には間取りや敷地条件な
よる耐力壁のせん断耐力については、倍率1=
ついては、倍率 1=1 . 9 6 kN/mとして倍率から
する地震力を耐力壁に伝達することである。い
どからそのようにならざるを得ない場合が多い。
1 . 9 6 kN/mとして壁倍率から換算する方法で計
換算するのも軸組構法と同様である。これら
かに耐力壁が十分に配置されていたとしても、
図 2 7のように、耐力壁の配置が悪い建物の
算することとなっている。また、これら以外の
以外の耐力壁については、
(一社)日本ツーバ
水平構面が弱いと建物は分解する。
場合、水平構面の剛性が低いと、水平構面はひ
耐力壁については、
(公財)日本住宅・木材技
イフォー建築協会発行「2 0 0 7年枠組壁工法建
強度だけでなく剛性も重要である。水平構面
し形に変形し、地震力は二つの妻壁に等分に
術センター「木造軸組工法住宅の許容応力度
築物構造計算指針」に釘接合耐力等から計算
の剛性が低いと、図 2 6 のように内部耐力壁は
加わることになる。従って開口の大きい手前の
設計(2 0 0 8 年版):通称 グレー本」に釘接合
で誘導する方法が記載されている。この式は、
外壁の耐力壁より大きな変形を生じることとな
妻壁は大きく変形し、建物は大きな損傷を受け
耐力等から計算で誘導する方法が記載されて
軸組構法を対象としたグレー本の式よりシンプ
る。このような変形を生じると、内部耐力壁に
ることになる。
いる。ただし、これによる耐力は、13 . 72 kN/m
ルであるが、耐力を安全側に見積もる傾向が
は過大の地震力が集中し、逆に外壁の耐力壁
しかしながら、水平構面が剛床であれば、水平
ある。
(倍率 7 相当)までとなっている。
すること
バランスな建物であった。耐力壁の配置のアン
バランスは、設計が悪いといってしまえばそれ
は十分に働かないことになる。水平構面の変形
構面は変形せずに矩形を保つので建物は図に
なお、ネダノン スタッドレス5 + の倍率は5であ
は耐力壁間距離が大きくなると、また、吹き抜け
示すようにねじられる。ねじりに対しては地震の
るが、実力はそれ以上あり、柱頭・柱脚接合部設
などを設けると大きくなるので、このような場合
力の方向と直角の方向にある耐力壁も抵抗する
計用の耐力としてその倍率(仕様によって5 . 9 ~
は、特に水平構面の剛性を高くする必要がある。
ので、この直交壁の耐力が大きければねじり変
7. 0)が付随している。従ってネダノン スタッドレ
ス5 の耐力は、この柱頭・柱脚接合部設計用の
+
倍率を換算した値を使用する。
5
形は小さくなる。すなわち、開口の大きい手前の
● 耐力壁の配置のアンバランスによる悪影響
を少なくすること
妻壁の変形と反対側の妻壁の変形との差が小さ
くなる。このように水平構面の剛性が高いと、耐
阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた木造
力壁の配置がアンバランスであっても、直交壁を
住宅の一つのパターンは、耐力壁の配置がアン
補強することで、その悪影響を減少させることが
できる。
壁
耐力
の
小
線
形
変
線
壁
耐力
の
大
形
変
線
壁
耐力
中の
形
変
線
力壁
耐
小の
形
変
震力
地
図26. 水平力と耐力壁の変形
25
26
5
(a)
柔らかい床の場合
P/2
表18 品確法の存在床倍率
P/2
柔らかい床の変形
P/2
耐力の高い壁
床組等の構造方法
地震力,P
地震力,P
耐力の低い壁
(上から見た図)
P/2
(b)
剛床の場合
剛床
(変形しない)
地震力,P
直交壁
直交壁の抵抗
図27. 耐力壁の配置がアンバランスである場合の床の役割
80
ネダノン四周釘打ち
(倍率3)
床組の水平構面としての耐力は構造方式に
年7月)に、存在床倍率という単位で示されてい
る。
(表 18)それによると、一般的な施工方法に
よる火打ち材を設けて製材小幅板を張った床の
存在床倍率が 0 . 5 〜 0 . 8 倍程度であるのに対し
60
水平力, P
(kN)
る耐力は、品確法(建設省告示16 5 4号、平成12
12㎜合板直張り
(倍率2)
40
P
床
20
て、火打ち材を省略して12㎜合板を直張りした
床の存在床倍率は1. 4倍(根太間隔4 5 5㎜の場
合)、2倍(根太間隔3 03㎜の場合)、2 4㎜以上
の合板(ネダノン)を直張りした床の存在床倍
ころばし根太の上に
12㎜合板張り
(倍率0.
7)
製材板張り+火打ちばり
(倍率0.
5)
0
2
4
3.64m
よって大きく異なる(図28)
。各種構造方法によ
δ
7.28m
試験方法
6
8
10
中央の水平変位, δ(㎝)
12
14
図28. 構造用合板を張った床の水平力に対する性能
厚さ12ミリメートル以上の構造用合板又は構造 0.7
用パネル
(1級又は2級のものに限る。)
を、根太
② (根太相互の間隔が500ミリメートル以下の場
合に限る。)
に対し、鉄丸釘N50を用いて150ミ
リメートル以下の間隔で打ち付けた床組等
⑦又は⑧の床組等において、横架材上端と根 ⑦又は⑧の倍率
⑨ 太上端の高さの差を根太せいの2分の1以下と に1.2を乗じた数
値
したもの
①又は②の床組等において、横架材上端と根
④ 太上端の高さを同一に納めたもの
①又は②の倍率
に2を乗じた数値
厚さ24ミリメートル以上の構造用合板を用い、
そ
の四周をはり等の横架材又は構造用合板の継
⑤ ぎ手部分に補強のために設けられた受け材に対
し、鉄丸釘N75を用いて15センチメートル以下
の間隔で打ち付けた床組等
3
厚さ24ミリメートル以上の構造用合板を用い、
は
り等の横架材に対し、構造用合板の短辺の外
周部分に各1列、その間に1列以上となるよう
⑥
に、鉄丸釘N75を用いて15センチメートル以下
の間隔で打ち付けた床組等
(はり等の横架材の
間隔が1メートル以下の場合に限る。)
1.2
厚さ12ミリメートル以上、幅180ミリメートル以上
の板材を、根太
(根太相互の間隔が340ミリメー
⑦ トル以下の場合に限る。)
に対し、鉄丸釘N50を
用いて150ミリメートル以下の間隔で打ち付けた
床組等
0.3
⑦又は⑧の床において、横架材上端と根太上
⑩ 端の高さを同一に納めたもの
0.2
⑦又は⑧の倍率
に1.3を乗じた数
値
断面の短辺が90ミリメートル以上の製材又はこれと 0.15
同等の耐力を有する火打ち材を、
平均して5平方メ
(主
⑪ ートルごとに1本以上となるよう配置した床組等
たる横架材
(火打ち材に取り付くものをいう。以下
同じ)
のせいが105ミリメートル以上のものに限る。)
⑪の床組等において、火打ち材を、平均して3.3
⑫ 平方メートルごとに1本以上となるよう配置したも
の
⑪の床組等において、火打ち材を、平均して2.5
⑬ 平方メートルごとに1本以上となるよう配置したも
の
0.3
0.5
⑭
⑪、⑫又は⑬の床組等において、主たる横架材
のせいが150ミリメートル以上のもの
⑪、⑫又は⑬の
倍率に1.2を乗じ
た数値
⑮
⑪、⑫又は⑬の床組等において、主たる横架材
のせいが240ミリメートル以上のもの
⑪、⑫又は⑬の
倍率に1.6を乗じ
た数値
①から⑩に掲げる構造方法の1、⑪から⑮に掲
⑯ げる構造方法の1のうち、2つ以上を併用した床
組等
それぞれの倍数
の和
この表において、
「 構造用合板」
は構造用合板の日本農林規格
(昭和44年農林省告示第1371号)
に規定する特類又は1類を、
「 構造用パネ
ル」
は構造用パネルの日本農林規格
(昭和62年農林水産省告示第360号)
に規定する1級、2級又は3級を、
「鉄丸釘N50」
はJISA5508-1992
に定めるN50又はこれと同等の品質を有するくぎをいう。
周釘打ちの場合)と非常に高い値となっている。
ちした仕様については、3 . 5 3kN/m(床倍率で
5.3 合板張り床構面の施工方法
構造計 算で設計 する場 合、水平 構面の許
1 . 8 倍相当)の許容耐力が与えられた。
容 耐 力は、床 倍 率を 換 算した 値( 倍 率1=
また、品確法の性能表示制度を使用する際
●共通事項
・合板の配置は、千鳥とするのが望ましい。
1. 9 6kN/m)を用いることができる。しかし、
(公
の床倍率について、性能評価機関より下記の評
・合板は、胴差しとはりに直接張るのが望ましい。
品確法等では必ずしも千鳥張りを強制していな
財)日本住宅・木材技術センター編「木造軸組
価を受けている。
・合板の長手方向は、はり(ネダノンの場合)また
いが、接着剤併用釘打ちの場合を除いて、千鳥張
工法住宅の許容応力度設計(2 0 0 8 年版)
」によ
・厚さ28㎜、N75@150㎜(外)、20 0㎜(中)、四周
は根太(根太仕様の場合)に対して直角(直交
りの方がイモ張りより水平構面としての性能、た
張り)とするのが望ましい。
わみ性能とも高くなる。
率は1 . 2倍(川の字型釘打ちの場合)、3 倍(四
ると、ネダノンを四周釘打ち仕様で直張りした
床の耐力が見直され、7. 8 4 kN/m(4 . 0 倍相当)
と、床倍率を換算した値より高い値に引き上げ
られた。さらに、川の字釘打ちに加えて合板の
長辺についても耐力壁線上の胴差し等に釘打
27
存在床倍率
厚さ12ミリメートル以上、幅180ミリメートル以上
の板材を、根太
(根太相互の間隔が500ミリメー
に対し、鉄丸釘N50を
⑧ トル以下の場合に限る。)
用いて150ミリメートル以下の間隔で打ち付けた
床組等
水平構面が剛床の場合、
耐力壁の配置がアンバランスであっても、
直交壁が強ければ、
その悪影響は軽減される
5.2 存在床倍率
床組等の構造方法
厚さ12ミリメートル以上の構造用合板又は構造 1
用パネル
(1級又は2級のものに限る。)
を、根太
① (根太相互の間隔が340ミリメートル以下の場
合に限る。)
に対し、鉄丸釘N50を用いて150ミ
リメートル以下の間隔で打ち付けた床組等
①又は②の床組等において、横架材上端と根 ①又は②の倍率
③ 太上端の高さの差を根太せいの2分の1以下と に1.6を乗じた数
したもの等
値
地震力,P
(上から見た図)
存在床倍率
釘打ち仕様
4 . 70 倍
・厚さ28㎜、N75@150㎜、川の字釘打ち+合板
長辺耐力壁線上釘打ち仕様
2 .98倍
(図 31左図のような根太仕様の場合は、合板
の外周を釘打ちするために根太に平行とする)
・厚さ28㎜、N75@100㎜(外)、200㎜(中)、四周
釘打ち仕様
6 . 73 倍
千鳥張り
イモ張り
28
5
● 厚さ12㎜以上の合板を使う根太落し込み
・釘はN 釘またはCN 釘を用いる。
釘は N 5 0またはCN 5 0(合板の厚さが 12㎜
の 場 合)、N 6 5またはCN 6 5(15 ㎜ の 場 合)、
N 75またはCN 75(ネダノン2 4㎜以上の場合)
を使用する。CN釘を用いるとN釘の場合より
水平構面としての強度が約10 〜2 0%高くなる
こと、専用の自動釘打機が広く普及しているこ
とから、CN釘を推奨する。N釘より胴部径の
細い自動釘打機の釘やBN釘は、所定の強度が
直張り仕様(図 31)
・遵守事項:合板を釘で、はり、胴差し、根太等
に間隙15 0㎜以下で留め付ける。
・合板を切り欠く場合はその場に打つべき釘を
柱などのために合板を切り欠く場合は本来打
つべき釘を15 0㎜以内に移動して打ち、釘の本
実力を向上させるが、法的な強度性能を上げるも
とする。
のではありません。品確法を適用する場合、補強
・補強した床の床倍率
の有無によらず、床倍率は表 18の値とする。
合板の切り欠きと釘の移動
通し柱
・遵守事項:釘は合板の四周および中通りに打
●さね加工を施したネダノンを使う直張り仕様
・遵守事項その1:釘は川の字型(合板の外周
隔は外周、中通りとも150㎜以下とする。
・遵守事項その2:合板の外周の長辺部分で床
の外周(耐力壁線上)にあたる部分では、釘を
・火打ちばりは省略することができる。
150㎜以下の間隔で打つ。
表 18の構造用合板を張った床組の中で、④~
この釘打ちは、品確法では規定されていないが、
⑥および根太を渡りあごかけとした③(施工の
(独)住宅支援機構の仕様書では要求されている。
詳細については(独)住宅金融支援機構監修「木
●補強方法
造住宅工事共通仕様書」参照)の仕様について
・さね加工を施さない合板を使う場合
は、火打ちばりを省略することができる。法的
補強法:JIS A 5 5 5 0(床根太用接着剤構造
には、国交省建築指導課監修「2 0 0 7年版建築
用一類)に規定する接着剤、
(公財)日本住宅・
物の構造関係技術基準解説書」のP. 81に「構造
木材技術センター認定の床用接着剤または同等
用合板を釘打ちすることによる場合も火打材と
品を用いて、はり、胴差し、根太等と合板の接触
見なすことができる」とあり、正確には火打材は
部分に接着剤併用釘打ちとする。
省略するのではなく、構造用合板という火打材
・さね加工を施した合板を使う場合
を設けたことになる。
(独)住宅金融支援機構監修
補強法①:さね部分をJIS A 5 5 5 0(床根太
「木造住宅工事共通仕様書」では「火打材は火打
用接着剤構造用一類)に規定する接着剤、
(公
ちばりまたは構造用面材とする」となっている。
財)日本住宅・木材技術センター認定の床用接
●厚さ12㎜以上の合板を使う根太仕様
着剤または同等品で接着する。
(図 29、30)
補強法 ②:補強法 ①を行った上で、JIS A ・遵守事 項:合板を釘で 根 太に間 隔 15 0 ㎜
5550(床根太用接着剤構造用一類)に規定する
※
≦500
構造用合板
ア
○12 釘N50@150
ち、間隔は外周で 15 0㎜以下とする。
数が減ぜぬようにする。
以下で留め付ける。
し、根太等と合板の接触部分に接着剤併用釘打ち
仕様(図 32)
の短辺部分に1列、その間に1列)に打ち、間
移動して打つ。
これらの補強は、水平構面としての強度性能の
● さね加工を施さないネダノンを使う直張り
(図33)
出ないので絶対に使用しない。
の床用接着剤または同等品を用いて、はり、胴差
はり
根太
間柱
※
≦500
胴差し
根太掛け
910
柱
※根太間隔が340以下の場合 床倍率 2倍
根太間隔が340を超える場合床倍率1.4倍
図31. 存在床倍率表(表18)の④の施工例(火打ちばり省略可)
合板の切り欠きと釘の移動
本来柱の位置に打つべきであるが、
打てないために移動して打った釘
合板の切り欠き
柱
間柱
150
150
柱
200
ネダノン
(構造用合板)
釘(CN75またはN75)
受材
60(見付幅)×45以上
150
胴差し
釘の斜打ちで留める
はり
間柱
はり
910
910
注1)受材寸法は60×45の場合、釘先端が受材より出ることがあるが、
耐力上の支障はない。
注2)3×6サイズ施工例。
メーターサイズの場合、
はり間隔は1000とする。
柱
図32. 存在床倍率表(表18)の⑤の施工例(火打ちばり省略可)
合板の切り欠きと釘の移動
本来柱の位置に打つべきであるが、
打てないために移動して打った釘
品確法では要求されていないが、
床の外周では長辺部分に釘を打つことを推奨する
合板の切り欠き
接着剤、
(公財)日本住宅・木材技術センター認定
柱
間柱
150
通し柱
柱
はり
構造用合板
ア
○12 釘CN50または
N50@150
150
通し柱
150
構造用合板
ア
○12 釘CN50または
N50@150
胴差し
ネダノン
(構造用合板)
150
柱
釘(CN75またはN75)
胴差し
はり
根太
根太
※
≦500
間柱
柱
※根太間隔が340以下の場合床倍率1.0倍
根太間隔が340を超える場合床倍率0.7倍
図29. 存在床倍率表(表18)の①②の施工例
29
≦1/2
1/2以上
1/2以上
※2
※2
※1
≦500
胴差し
間柱
根太
はり
柱
※1:根太間隔が340以下の場合 床倍率1.6倍
根太間隔が340を超える場合床倍率1.12倍
※2:根太背の1/2以上組込
図30. 存在床倍率表(表18)の③の施工例
(はり、
胴差に際根太を設け、
合板を@150で
釘打ちする場合は、火打ちばり省略可)
910
間柱
はり
910
さね加工部分に接着剤を塗布して張り継ぐ
柱
注)3×6サイズ施工例。
メーターサイズの場合、
はり間隔は1000とする。
図33. 存在床倍率表(表18)の⑥の施工例(火打ちばり省略可)
30
柱
受材
間柱
柱
5.4 実験に見るネダノン床構面の
4.7 せん断性能
受材
間柱
の許容耐力(計算による場合を含む)を十分に
実大床構面の水平せん断試験(図 3 8)の結
果を表 19 に、品確法による水平せん断試験(図
満足している。さらに、洋間と和室のレベルを揃
39)の結果を表 20に示す。いずれも、品確法によ
えてバリアフリーとするために、和室の床下地を
る倍率をはるかに上回る高い耐力を示し、また、
下げる(落とし込む)工法の床構面は、通常仕
様の床構面と同等の強度性能を示した。詳し
(公財)日本住宅・木材技術センター編「木造軸
構造用合板
合板の切欠
組工法住宅の許容応力度設計(2 0 0 8 年版)」
くは、ネダノンマニュアルを参照。
図 38. 実大床構面のせん断試験(落とし込み工法)
図 39. 品確法に基づく床構面のせん断試験
構造用合板
合板の切欠
構造用合板
構造用合板
受材
受材
はり、胴差し、土台
はり、胴差し、土台
図34. 内部間仕切り部 施工例
大壁耐力壁仕様
図35. 内部間仕切り部 施工例
受材真壁耐力仕様
柱
柱
筋かい
表19. 実大床構面のせん断試験結果一覧
筋かい
試験体
間柱
間柱
試験体
番号
仕様
許容耐力
実験値
倍率 ①耐力 許容耐力時の
せん断変形
釘打ち
(1/150)
y
(倍) (kN/m) (rad)
1
合板の切欠
構造用合板
筋かい金物
同一釘打ち条件
(倍)
4.0
7.8
1/366
11.8
11.0
20.8
13.1
16.3
11.0
5.6
1.4
1.8
3.5
1/612
7.6
8.1
14.2
6.6
10.5
6.6
3.4
1.9
3
川の字
1.2
2.4
1/820
5.2
6.2
11.1
4.6
8.4
4.6
2.3
2.0
4
四周
4.0
7.8
1/227
9.7
16.6
29.8
8.3
20.0
8.3
4.3
1.1
0.8
1.8
3.5
1/606
7.2
11.5
19.0
7.9
17.5
7.2
3.7
2.0
1.1
1.2
2.4
1/671
5.6
9.6
15.8
5.4
11.9
5.4
2.8
2.3
1.2
③
③
−
①
③
−
②
標準型
落とし込み型 川の字+床外周
6
釘
(kN/m)
標準型に対する比
四周
5
合板の切欠
Ds
基準耐力の
落とし込み型の
川の字+床外周
2
筋かい金物
u
②
2/3
② 基準耐力の −
max 基準耐力 相当倍率 ①
川の字
許容耐力の値は、
(公財)
日本住宅・木材技術センター編「木造軸組工法住宅の許容応力度設計
(2008 年版)
」
による。
Ds
合板の切欠
はり、胴差し、土台
図36. 筋かい部 施工例
筋かいは床合板・柱に突付け
構造用合板
注)筋かい金物には、
ネダノンの上に
取り付け可能なタイプもあります。
はり、胴差し、土台
図37. 筋かい部 施工例
筋かいは横架材・柱に突付け
表20. 品確法に基づく床構面のせん断試験結果一覧
試験体
試験体
番号 釘打ち
釘間隔
(㎜)
1
四周
2
四周
3
実験値
①
②
品確法 許容耐力
倍率 相当倍率
(倍)
(倍)
外周@100、
中通り@200
外周@150、
中通り@200
床外周@150
川の字+床外周 川の字@150、
3.0
(1/150)
y
Ds
(kN/m)
2/3 基準耐力 基準耐力の
max
相当倍率
(倍)
5.4
13.2
14.5
14.1
18.7
13.2
6.7
4.0
9.2
11.2
9.6
14.3
9.2
4.7
1.8
5.8
6.4
6.3
8.8
5.8
3.0
1.2
1.6
1.2
1.6
許容耐力相当倍率の値は、
(公財)
日本住宅・木材技術センター編「木造軸組工法住宅の許容応力度設計
(2008 年版)
」
による。
試験体番号1の②の値は計算により求めた値である。
Ds
31
32
5
5.5 合板張り床構面の水平力に対するメカニズム
集中荷重などに対する設計では、荷重直下の
合板を張った床のメカニズムは、Iビームのそれ
合板を張った床や屋根の変形は、①合板自身
はりや根太だけが抵抗すると仮定して計算を行う
と同じで、図4 0に示すように、構面の外周に配置
のせん断変形、②合板を留めている釘接合部の
された横架材(胴差し、はり、桁)は曲げ応力を
変形による床全体のせん断変形、③フランジとな
負担するフランジ、内部の合板はせん断応力を負
る胴差しや桁の継手などの変形による床全体の
担するウェブとして働く。合板を張った床の剛性・
曲げ変形からなる。胴差しや桁はその他に曲げ
強度が非常に高いのは、横架材に合板を張り付
応力(引張・圧縮)を受けるが、応力の大きさに
けることによって床自体が巨大なせいを持つI 形
対して断面が大きいので、一般には無視できる。
ばりとなるからである。
胴差継手
(フランジ継手に相当)
胴差など
フランジに相当
(曲げモーメントによる
引張/圧縮力を負担)
●荷重の分配効果
フランジ継手
ウェブ継手
耐力壁
合板
ウェブに相当
(せん断力を負担)
重は近隣のはりや根太にも分配される。つまり、
床下地は一種の直交ばりとして働き、荷重はスパ
ン方向だけでなくこれと直角方向にも流れる。
ウェブ
(せん断力を負担)
合板張り水平構面
根太
(両端支持)
合板は製材板より剛性が高いのでこの効果は大
きい。厚い構造用合板を用いると、床は周辺を支
側根太
(全面支持)
持された版に近づく。この効果は、集中荷重だ
図42. 合板による荷重分布のメカニズム(概念)
曲げ応力度の算定式
たわみと合板の曲げ応力度は次式で計算する。
等分布荷重に対して
鉄骨のIビーム
5 ι4
たわみ= ≦ 設計者が判断する値
384
図40. 合板張り水平構面は両端を耐力壁で支持された I ビームにモデル化できる
5.6 床の鉛直荷重に対する性能
ι2
曲げ応力度= ≦ 許容応力度
(P4,5を参照)
8
●局部たわみの減少
中央集中荷重に対して
床下地に構造用合板を用いると、製材板の
ι3
たわみ= ≦ 設計者が判断する値
48
場合と比べて幅が大きいので、局部たわみが小
さくなる。
●ストレスト・スキン効果
ストレスト・スキン効果とは、図41に示すよう
に、合板と根太やはりが一体化し複合部材となる
効果で、これによりたわみが減少する。ストレス
スパン方向
5.7 合板張り床構面の許容応力度設計の方法
5.7-1 鉛直荷重に対する合板のたわみと
フランジ
(曲げモーメントによる
引張/圧縮力を負担)
スパンに直角方向
が、実際は図42に示すように、床下地によって荷
けではなく、等分布荷重に対しても有効である。
釘で接合した合板目地
(ウェブの接合部に相当)
力
1単位
1単位
1単位
合板下地
根太またははり
(a)
下地に合板を用いた床
曲げ応力度=
ι
4
≦ 許容応力度
(P4,5を参照)
ここでι:スパン
(㎜)
ト・スキン効果は合板を根太やはりに固い接着剤
:等分布荷重(N/㎜2)
で接着するとより大きくなる。
:合板の幅(㎜)
:合板の曲げヤング係数(N/㎜2)
:合板のみかけの断面2次モーメント(=
1単位
(b)
合板の応力分布
図41. 合板を張った床のストレスト・スキン効果
:合板のみかけの断面係数(=
/12、 =厚さ㎜)
3
/6)
2
:集中荷重(N)
上記は、
合板を単純ばりとみなした場合の式で、
実際には合板は3以上の支点で支えられる連続ばりであり、
また支持も釘により半固定支持となるから、
安全側の計算である。
33
34
5
5.7-2 許容応力度計算における
水平構面のせん断耐力
●軸組構法
なっており、ネダノン床は表 21に示した値となる。
軸組構法において、3階建て建物や延べ床面
ただし、
「四周釘打ち仕様」
及び「川の字+床外
積が 5 0 0 平米を超える場合は、許容応力度計算
周釘打ち仕様」については、実験等により新た
が要求される。水平構面のせん断耐力について
に誘導され、品確法の床倍率換算値より高い許
は、
(公財)日本住宅・木材技術センター「木造
容せん断耐力が与えられている。
軸組工法住宅の許容応力度設計(20 08 年版)
:通
また、品確法以外の水平構面については、同
称 グレー本」によれば、品確法に記載のある水
書に釘接合耐力等から計算で誘導する方法が
平構面の許容せん断耐力は、倍率1=1. 96kN/m
記載されており、それによる例を同表に示した。
として床倍率から換算する方法で計算することと
●枠組壁工法
●大規模建築構造物の水平構面
枠組壁工法でも、軸組構法と同様に、3階建て
大規模建築物では、水平構面に加わるせん断
建物や延べ床面積が 5 0 0 平米を超える場合は、
力が住宅と比べて非常に大きくなるが、厚物合板
許容応力度計算が要求される。水平構面のせん
(ネダノン)を用いると、倍率換算で2 0 倍を超える
断耐力の計算方法については、
「2 0 07年枠組壁
高強度の水平構面を設計することが可能である。
工法建築物構造計算指針」に示されている。
「中層・大規模木造建築物への合板利用マニュ
なお、告示の仕様規定によると床根太間隔は
アル」では、そのような高強度水平構面の設計方
6 5 0㎜以下となっているが、2 0 07年の告示改正
法と実大強度実験による検証データなどを紹介
で、構造計算によれば、1mまで拡大できることと
している。詳しくは同マニュアルを参照ください。
なり、軸組構法の合板張り床のような構造を採用
することも可能となった。
「中層・大規模木造建築物への
合板利用マニュアル」を見てね
表21. 水平構面の許容せん断耐力
釘打ち仕様
(合板厚さ24∼30㎜。釘:N75)
釘打ち配列
川の字釘打ち
川の字+耐力壁線上の
梁・桁・胴差に合板長辺を
釘打ち
四周釘打ち
注
35
釘間隔
(㎜)
許容せん断耐力
(構面の長さは勾配に沿う長さとする)
せん断耐力
(kN/m)
品確法
倍率
相当倍率
(倍)
(倍)
150
2.35
1.2
1.2
100
4.23
**
2.2
−
75
5.27
**
2.7
−
150
3.53
*
1.8
−
100
5.41
**
2.8
−
75
6.85
**
3.4
−
150
7.84
*
4.0
3
100
9.28
**
4.7
−
75
12.57
**
6.4
−
(公財)
*
日本住宅・木材技術センター
「木造軸組工法住宅の許容応力度設計
(2008年版)
」
に記載の値。
**同書に従って計算した値で、釘はN75とし、低減係数αとして、24㎜の構造用合板を張った耐力壁
ネダノン スタッドレス5+の大臣認定の際に適用された値、0.89を乗じている。
36
5
5.8 床の遮音性能
は 5 0㎜×10 0㎜の強化木を、またラワン合板の
径 70㎜の銅製ロットを使用。
試験ではこれより厳しい直径 3 6㎜、先端曲率半
実験によると、図 4 3 のように12㎜構造用合
軽量衝撃音LH = 85
板あるいは 3 5㎜の構造用合板(ネダノン)を直
重量衝撃音LL = 75
張りした床の衝撃音に対する遮音性能は次の
通りであった。
(フローリング)
合板 12㎜
120
110
L
(H)
L
(L)
床衝撃音レベル
(dB)
100
90
L-90
80
L-85
70
L-75
60
L-65
50
L-55
L-80
L-70
L-60
L-50
L-45
40
30
63
125 250 500 1000 2000 4000
オクターブ帯域中心周波数
(Hz)
グラスウール10K 100?
鋼製野縁
石こうボード 9.5?
120
110
L
(H)
L
(L)
100
床衝撃音レベル
(dB)
グラスウール10K 100?
鋼製野縁
石こうボード 9.5?
合板 35㎜
90
L-90
80
L-85
70
L-75
60
L-65
50
L-55
図44. 試験したさねの形状
表22. 局部集中荷重試験の結果
合板厚さ
樹種
受材とさね
の有無
根太・
はり間隔
(㎜)
根太・
はり樹種
釘打ち
方法
12㎜
ラワン
受材あり
415
ベイツガ
CN50
@150
L-80
L-70
図45. 集中荷重試験
L-60
L-50
L-45
40
30
63
12㎜
ラジアータ
パイン
受材なし
(さねあり)
500
スプルース
CN50
@150
125 250 500 1000 2000 4000
オクターブ帯域中心周波数
(Hz)
図43. 床の遮音実験の結果
最大荷重
(kN)
6.3
3.85
5.2
3.92
2.6
6.57
2.4
7.35
2.6
7.25
2.7
10.60
7.3
6.45
6.8
8,24
7.5
7.60
7.1
7.58
●試験体
をはりとツライチに配置。2 8㎜構造用合板の場合
2 , 73 0×3 , 6 4 0×2 , 73 0 ㎜( 高さ)の 柱・筋 か
は、さね付き合板を使用し根太と受材を省略する。
い付き駆体。床ばり(スパン3 , 6 4 0㎜)は10 5×
●試験方法
7.1
7.60
240㎜、@910㎜。天井は鋼製野縁にプラスタボー
JIS A1418による
6.6
5.71
ド9 . 5㎜のグラスウール10 0㎜敷込み。12㎜構造
●試験実施
5.0
13.75
用合板張りの場合は、根太45×10 5㎜、@3 03㎜
(株)ポラス暮し科学研究所
5.2
10.10
4.9
14.04
5.9 床の局部荷重に対する性能
37
1960N
(200kgf)
載荷時のたわみ
(㎜)
15㎜
ラワン
24㎜
ラジアータ
パイン
受材なし
(さねあり)
受材なし
(さねあり)
415
1,000
CN50
@150
ベイツガ
スプルース
N75
@150
●試験体の概要
まで載荷し、最後に雄ざねまたは雌ざねの片方
構造用合板を張った床(フローリングなどの
ほぼ同じたわみを生じていることから、さねは
はり間隔 415 〜1 , 0 0 0 ㎜(はりは枠組壁工法
に載荷して破壊させる。
仕上げなし)の局部集中荷重に対する耐力とた
力と変形を確実に伝達していると言える。
構造用製材、寸法形式 2 0 8で代用)。厚さ12〜
●破壊形態
わみは、表 2 2に示すように根太・はり間隔、合
●試験方法
2 4㎜の構造用合板を表板の繊維方向がはりと直
一部合板の上側にパンチングシアが生じる
板の厚さと樹種によって異なる。強度的にはピ
建設省昭和50 年度総合技術開発プロジェクト
交するように置き、釘CN 5 0または N 75 @15 0㎜
が、最終的には合板の下側が引張で破壊し最大
アノ(アップライトピアノは約 2 5 0 kg)が載って
「小規模住宅の新施工法の開発」提案による「床
で打ち付け。さねあり合板使用の場合、さねの
耐力に達する。いずれの試験体も、さねに損傷
も十分に耐えることができる。また、さね部分
下張材の端部の接合法試験」に準じる。ただ
部分に受材なし。
はなし。
の一方に19 6 0 N(2 0 0 ㎏f)が加わった時、さ
し、同提案では加圧板は 8 0㎜×10 0㎜の硬質ゴ
●加力方法
●試験実施
ね部分や合板に損傷はなく、さね部分の他方も
ムであるところ、ラジアータパイン合板の試験で
合板の縁部および中央に順次1960N
(200kgf)
(独)森林総合研究所
38
6
構造用合板を張った屋根
6.2 合板張り屋根構面の水平力に対するメカニズム
6.1 屋根構面の考え方
合板張り屋根構面の耐力のメカニズムは、基本
である。しかしながら、屋根構面には床構面ほ
的には合板張り床構面と同様にIビームであると
どの外力が加わらないために、通常の建物プラン
考えられるが、屋根の形状が複雑なことなどか
ではこれで十分な場合が多い。告示上の床倍率
屋根は瓦や積雪など鉛直荷重を支えるだけで
よっては、①と②のどちらかを主とし、他方は軽
ら、一般的なたる木方式では力学的に完全なI
を上げることはできないが、実質的な補強方法と
なく、居室階の床構面や壁構面と同様に、水平
微な構成とすることができる。
ビームとはなっていない。その最大の欠点は、構
しては、構面の外周に鼻隠しなどを設け、合板を
構面と鉛直構面で構成して、地震力や風圧力に
屋根は、高さは低くとも、居室階と同様な立体
面の外周にフランジとして曲げ応力(曲げによる
これに釘打ちしてフランジとしての役目を負わせ
抵抗する立体的な構造とする必要がある。水平
的空間である。従って、屋根面に作用する地震力
引張または圧縮応力)を負担する部材がないこと
るなどの方法がある。
構面の役割は、水平力を受け止めて下層の耐力
や風圧力を下層の耐力壁に伝達させる鉛直構
壁に伝達させると同時に、下層の耐力壁の変形
面を、はり間方向
(図 4 6 ③)と桁行方向
(同図④)
がバラバラにならないように揃えることである。
に配置する必要がある。この鉛直構面は、従来、
水平構面は、天井面または小屋ばり面(図 4 6
慣習的に小屋筋かいや雲筋かいで構成されてき
6.3 存在床倍率
①)と屋根面(同図②)の両方で構成するのが
たが、構造用合板で構成することが望ましい。
各種構造方法による小屋組の水平構面として
造方式による合板張り水平構面を構成するか、火
基本である。ただし、屋根の形状や勾配等に
施工例を図 47、4 8に示す。
の耐力は、品確法(建設省告示16 5 4号、平成12
打ちばりを設けるなどの方法で対処する。
①天井面・小屋ばり面の
水平構面
③はり間構面
(小屋筋方向)
年)に、存在床倍率(屋根倍率ではなく、床倍率
なお、たる木方 式でなく、登りばりを910 ㎜
という)という単位で示されている。それによる
(10 0 0㎜)や182 0㎜(2 0 0 0㎜)間隔で設け、こ
と、現在最も多く採用されているたる木方式で合
れにネダノンを釘打ちすれば床と同様な強固な構
板を張った屋根の床倍率は屋根勾配によって0 . 5
面を構成することができる。登りばり方式では、
~ 0 .7で、スギ板を張った屋根の0 . 2または0 .1よ
断熱方式を外断熱とすれば、屋根面に天井を張
りはるかに高い値となっている。
る必要がなくなるので、登りばりと屋根下地合板
合板を張っても、床の場合のような高い倍率が
を現しにした小屋組利用階(図 49 参照)や小屋
与えられていない理由は、一般的なたる木方式で
ばり面を吹き抜けとする居室を設けることができ
は床の場合のようなIビームがしっかりと構成さ
るなど、意匠的なメリットも多い。
れないからである。
詳しくは、
「国産厚物合板屋根の手引き」を参
建物のプランに対して存在床倍率が不足する
照ください。
場合は、複数の水平構面の床倍率を足し合わせ
②屋根構面
④桁行構面
(雲筋方向)
図46. 小屋組の構成に必要な構面
小屋裏壁
構造用合板 厚7.5以上
母屋
小屋裏壁:ネダノン スタッドレス5+
たる木
母屋
登りばり
6
ることができるので、天井面に床の場合と同じ構
野地板:ネダノン
野地板:構造用合板
厚12以上
「国産厚物合板屋根の手引き」
を見てね
はり
小屋束
小屋裏:ネダノン
小屋裏利用
ネダノン
火打材:構造用合板
厚12以上
耐力壁:構造用合板
厚7.5以上
耐力壁:ネダノン スタッドレス5+
図49 登りばり方式の屋根
(写真提供:サイト・アーキテクツ + 小口亮建築計画事務所)
柱
図47. 小屋裏の施工例
39
図48. ネダノンによる小屋裏の施工例
40
「合板耐力壁マニュアル」
を見てね
構造用合板による耐震補強
屋根の場合は、形状が様々であるので、場合
屋根構面から耐力壁への力の伝達である。た
に応じた工夫が必要である。切妻屋根でたる木
る木方式では、桁側ではたる木を桁に留め付け
方式の場合は、軒先に鼻隠しを設け、これに合板
ているあおり止め金物が水平力を伝達してくれ
7.1 特徴と注意点
を釘打ちしてフランジの役目を負わせると強くな
るが、水平力が大きい場合は、それだけでは不
既存建物の耐震補強では、構造用合板を利
④真壁造りでは補強が容易である。
る。ただし、鼻隠しに継手を設ける場合は、存在
十分な場合もある。妻側ではさらに工夫を要す
用するのが効果的である。
⑤大壁造りや、既に筋かいが入っている場合で
応力に対して継手を設計する必要がある。
る場合が多い。
①構造用合板は、全国で入手可能でかつ安価
登りばり方式の場合、
「川の字釘打ち」、
「川
また、セットバックや下屋の部分などでは、屋
の字+桁・棟木に釘打ち」、
「四周釘打ち」の釘
根構面と耐力壁との接合が重要である。耐力壁
②施工が容易で、確実な補強ができる。
打ち方法があり、この順に耐力が高くなるが、
の外側にたる木を沿わせ、あるいは耐力壁に奥
③多くの種類があり、必要な仕様と強度に応じ
桁を設けてたる木を掛け、たる木や奥桁から耐
場合は、野地合板が桁・棟木に釘打ちできるよ
力壁へ釘を打つ等によって、野地合板から耐力
うに登りばりの仕口を工夫する必要がある。
壁合板への水平力の伝達を図ることが肝要であ
屋根の施工でもう一つの重要なポイントは、
る。
(P. 5 5 図 6 4 参照)
あっても、構造用合板を張ることにより、さら
に強くすることが可能である。
である。
⑥改修補強した壁の外周部などでは、基礎と柱
を金物により固定することが耐震性を確実に
高める上で重要である。
た選択ができる。
梁
(桁)
200以下
「川の字+桁・棟木に釘打ち」、
「四周釘打ち」の
7
7.2 耐震補強壁
耐震補強に使用できる構造用合板張り壁に
は次の3 種類がある。
①(一財)日本建築防災協会による耐震補強壁
天井
間柱
合板上端
胴つなぎ
柱
②国土交通大臣認定の耐力壁
構造用合板
(厚12)
③(一財)日本建築防災協会の評価を受けた耐
震補強壁一例を図 5 0に示す。詳しくは「合板
合板下端
CN65@100以下
耐力壁マニュアル」を参照ください。
床
150以下
6
6.4 合板張り屋根構面の施工方法
土台
上下開口付き両側柱大壁仕様
梁
(桁)
柱
200以下
梁
(桁)
天井
受材
胴つなぎ
胴つなぎ
200以下
間柱
天井
合板上端
合板上端
柱
柱
構造用合板
(厚12)
構造用合板
(厚12)
CN65@100以下
合板下端
土台
上下開口付き入り隅大壁仕様
床
150以下
床
150以下
合板下端
CN65@100以下
土台
上下開口付き柱間隔 2 P 真壁仕様
図50 耐震補強壁の例
41
42
「合板耐力壁マニュアル」
を見てね
構造用合板による耐震補強
屋根の場合は、形状が様々であるので、場合
屋根構面から耐力壁への力の伝達である。た
に応じた工夫が必要である。切妻屋根でたる木
る木方式では、桁側ではたる木を桁に留め付け
方式の場合は、軒先に鼻隠しを設け、これに合板
ているあおり止め金物が水平力を伝達してくれ
7.1 特徴と注意点
を釘打ちしてフランジの役目を負わせると強くな
るが、水平力が大きい場合は、それだけでは不
既存建物の耐震補強では、構造用合板を利
④真壁造りでは補強が容易である。
る。ただし、鼻隠しに継手を設ける場合は、存在
十分な場合もある。妻側ではさらに工夫を要す
用するのが効果的である。
⑤大壁造りや、既に筋かいが入っている場合で
応力に対して継手を設計する必要がある。
る場合が多い。
①構造用合板は、全国で入手可能でかつ安価
登りばり方式の場合、
「川の字釘打ち」、
「川
また、セットバックや下屋の部分などでは、屋
の字+桁・棟木に釘打ち」、
「四周釘打ち」の釘
根構面と耐力壁との接合が重要である。耐力壁
②施工が容易で、確実な補強ができる。
打ち方法があり、この順に耐力が高くなるが、
の外側にたる木を沿わせ、あるいは耐力壁に奥
③多くの種類があり、必要な仕様と強度に応じ
桁を設けてたる木を掛け、たる木や奥桁から耐
場合は、野地合板が桁・棟木に釘打ちできるよ
力壁へ釘を打つ等によって、野地合板から耐力
うに登りばりの仕口を工夫する必要がある。
壁合板への水平力の伝達を図ることが肝要であ
屋根の施工でもう一つの重要なポイントは、
る。
(P. 5 5 図 6 4 参照)
あっても、構造用合板を張ることにより、さら
に強くすることが可能である。
である。
⑥改修補強した壁の外周部などでは、基礎と柱
を金物により固定することが耐震性を確実に
高める上で重要である。
た選択ができる。
梁
(桁)
200以下
「川の字+桁・棟木に釘打ち」、
「四周釘打ち」の
7
7.2 耐震補強壁
耐震補強に使用できる構造用合板張り壁に
は次の3 種類がある。
①(一財)日本建築防災協会による耐震補強壁
天井
間柱
合板上端
胴つなぎ
柱
②国土交通大臣認定の耐力壁
構造用合板
(厚12)
③(一財)日本建築防災協会の評価を受けた耐
震補強壁一例を図 5 0に示す。詳しくは「合板
合板下端
CN65@100以下
耐力壁マニュアル」を参照ください。
床
150以下
6
6.4 合板張り屋根構面の施工方法
土台
上下開口付き両側柱大壁仕様
梁
(桁)
柱
200以下
梁
(桁)
天井
受材
胴つなぎ
胴つなぎ
200以下
間柱
天井
合板上端
合板上端
柱
柱
構造用合板
(厚12)
構造用合板
(厚12)
CN65@100以下
合板下端
土台
上下開口付き入り隅大壁仕様
床
150以下
床
150以下
合板下端
CN65@100以下
土台
上下開口付き柱間隔 2 P 真壁仕様
図50 耐震補強壁の例
41
42
「合板耐力壁マニュアル」
を見てね
7
7.3 耐震補強における合板張り耐力壁の
基準耐力と基準剛性
表25. 12㎜ 構造用合板張り大臣認定耐力壁の基準耐力と壁基準剛性
工法
仕 様
認定を取得した合板張り耐力壁の基準耐力を
準剛性については、
(一財)日本建築防災協会
示した。また、大臣認定の耐力壁の基準剛性
より表 2 3、2 4 の値が 提案されている。また、
については、関係者等からのアドバイスに基づ
国交大臣認定の耐力壁の基 準耐力について
き、実 験における水平変形が 1 / 2 0 0 rad時の
は、同協会の「2 012 年改定版 木造住宅の耐
耐力の平均値(信頼率 75%)から算出した。こ
震診断と補強方法 指針と解説編」
(P. 3 7)に、
のとき、同協会の一般的な誘導方法にならっ
大臣認定の値に基づいて算出する旨が記され
て、施工精度や雨濡れ等による剛性の低減は
ている。これに基づき、表 2 5、2 6には、大臣
考慮していない。
軸組
枠組
外周
工法
軸組構法
構造用合板
(耐力壁仕様)
伝統的構法
構造用合板
(準耐力壁仕様)
枠組壁工法
構造用合板
(耐力壁仕様)
接合具
留付間隔(㎜)
認定番号
100 以下
4.0
*
*
FRM-0335
CN50
75 以下
3.8
7.4
1500
FRM-0416
CN50
100 以下
3.1
6.1
1220
FRM-0415
CN65
100 以下
3.6
7.1
1410
FRM-0334
CN50
75 以下
3.6
7.1
1510
FRM-0414
CN50
100 以下
3.2
6.3
1390
FRM-0336
CN65
100 以下
4.0
*
*
FRM-0339
受材真壁床勝ち
CN65
100 以下
3.6
7.1
1240
FRM-0483
CN50
100 以下
3.5
6.9
1350
FRM-0338
受材真壁
CN50
100 以下
3.4
6.7
1290
FRM-0337
CN65
50 以下
5.0
9.8
2110
TBFC-0114
CN50
50 以下
4.8
9.4
1800
TBFC-0112
CN65
75 以下
4.5
8.8
1650
TBFC-0111
CN65
100 以下
3.6
7.1
1400
TBFC-0113
大壁床勝ち
大壁
N50
150
CN50
外周100中間200
5.2
(1.5)
200 以下
200 以下
7
表26. 24㎜ 構造用合板張り大臣認定耐力壁(ネダノン スタッドレス5 +)の基準耐力と壁基準剛性
3.1
(1.5)
仕 様
5.4
くぎ種類
くぎ間隔(mm)
外周
倍率
6.8
*
*
FRM-0297
大壁床勝ち
7.0
13.7
2400
FRM-0296
*
*
FRM-0298
CN75
100 以下
5.0
仕様
接合具
大壁
真壁
軸組構法・伝統的構法
N50
ビス
(φ2.8以上、
長さ28∼40mm)
構造用合板
直張り
特類、
2級以上、
厚7.5以上
N50
N50
大壁
枠組壁工法
特類、2級、
厚7.5以上
特類、1級、
厚7.5以上
2級、
特類、
厚9以上
特類、1級、
厚9以上
CN50
留付間隔
(㎜)
壁基準耐力
(kN/m)
壁基準剛性
(kN/rad/m)
5.2
860
3.4
1040
川の字@150
3.1
470
四周@150
5.0
910
貫3本以上に
@150
3.0
430
川の字@150
4.0
730
5.4
850
四周@150
外周100
中間200
6.2
900
6.2
900
6.8
950
出典:(一財)日本建築防災協会編:2012年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法 指針と解説編、p.65∼70、2012.6
9.8
5.9
受材真壁床勝ち
表24. 精密診断法1での壁基準耐力および壁基準剛性
柱脚柱頭 壁基準耐力① 壁基準耐力② 壁基準剛性
認定番号
接合用倍率 (kN/m) (kN/m)(kN/rad/m)
大壁
受材真壁
構造用合板
直張り
(kN/m)(kN/rad/m)
壁基準耐力(kN/m)
注:かっこ内は胴縁仕様の場合。
出典:(一財)日本建築防災協会編:2012年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法 指針と解説編、p.31、2012.6
構造用合板
受材仕様
構造用合板
貫仕様
構造用合板
受材仕様・床勝ち・上部開口
壁基準耐力 壁基準剛性
壁基準耐力は、倍率×1. 9 6で計算 。
壁基準剛性は、評価書の1/ 2 0 0 rad 時の信頼水準 75%の 5 0%下限値より計算(低減係数なし)。
*の値については(一財)日本建築防災協会より評価を取得しているので表 2 7を参照のこと。
表23. 一般診断法での壁基準耐力
工法の種類
中通り
倍率
CN65
大壁
構造用合板を張った耐力壁の基準耐力と基
くぎ間隔(mm)
くぎ種類
壁基準耐力①は、倍率×1. 9 6で計算 。
壁基準耐力②は、柱頭柱脚接合用倍率×1. 9 6で計算 。
壁基準剛性は、評価書の1/ 2 0 0 rad 時の信頼水準 75%の 5 0%下限値より計算(低減係数なし)。
*の値については(一財)日本建築防災協会より評価を取得しているので表 2 7を参照のこと。
表27. 日本建築防災協会認定の評価を受けた構造用合板張り耐震補強壁の壁基準耐力と壁基準剛性
仕 様
合板 12㎜
上下開口付き壁
合板 12㎜
無開口壁
合板 24㎜
無開口壁
壁基準耐力
(kN/m)
壁基準剛性
(kN/rad/m)
N 値計算用
等価壁倍率
①両側柱大壁仕様
6.6
960
3.4
②両側柱真壁仕様
4.8
800
2.4
③間柱補強大壁仕様
6.3
880
3.2
④間柱補強真壁仕様
5.4
860
2.7
⑤柱間隔 2P 大壁仕様 5.1
850
2.6
⑥柱間隔 2P 真壁仕様
3.3
860
1.7
⑦後施工柱大壁仕様
6.6
960
3.4
⑧後施工柱真壁仕様 -1
4.8
800
2.4
⑨後施工柱真壁仕様 -2
6.8
980
3.5
⑩入隅大壁仕様
6.6
960
3.4
⑪大壁仕様
7.8
1320
4.0
⑫入隅大壁仕様
7.8
1320
4.0
⑬床勝ち真壁仕様
7.8
1410
4.0
⑭床勝ち真壁 600㎜仕様
6.2
1160
3.2
⑮大壁仕様
13.3
2400
6.8
⑯入隅大壁仕様
13.3
2400
6.8
⑰真壁仕様
11.6
2090
5.9
⑱真壁 600㎜仕様
10.1
1830
5.2
⑩、⑫、⑯においては、壁長さは有効壁長(合板張り付け柱(受材)の心々距離とする)。
2 0 0 4 年版の一般診断法での上限は 9 . 8 kN/m、2 012 年版の上限は10 kN/m 。
2 0 0 4 年度を用いる場合には、壁基準耐力を壁強さ倍率 Cと読み替える。
43
44
「国産厚物合板屋根の手引き」
を見てね
8
構造用合板による断熱施工方法
8.1 次世代省エネ基準による断熱施工方法
断熱工事には、充填断熱と外断熱の施工方法
規定される地域区分に対応した断熱材と防湿層
がある。以下では主として充填断熱施工方法に
の仕様の例を示す。
ついて述べる。表 28、29に省エネルギー基準に
表29. 登りばり形式屋根の勾配天井の充填断熱仕様例
省エネ区分地域
※1
基準R値(m2K/W)
仕様例1
屋根葺材
ルーフィング
野地合板 12mm
通気層
断熱材
防湿フィルム
厚物合板(ネダノン)
登りばり
厚物合板(ネダノン)
目地に
気密テープ
通気
A
(室内側)
Ⅲ地域
Ⅳ・Ⅴ地域
4.6
4.6
4.6
高性能
グラスウール16K
140×2重
高性能
グラスウール16K
90×2重
高性能
グラスウール16K
90×2重
高性能
グラスウール16K
90×2重
防湿フィルム
別張りPEフィルム
0.1㎜
(JIS A 6930A種)
別張りPEフィルム
0.1㎜
(JIS A 6930A種)
別張りPEフィルム
0.1㎜
(JIS A 6930A種)
断熱材付属
PEフィルム
(JIS A 6930B種)
断熱材
押出発泡
ポリスチレン3種
押出発泡
ポリスチレン3種
押出発泡
ポリスチレン3種
押出発泡
ポリスチレン3種
厚さ(㎜)
防湿フィルム
65×3重
なし
65×2重
なし
65※2
なし
65※2
なし
断熱材の四周と登
りばりなどの木材
とを気密テープな
どで留める。
吹付け硬質ウレタン
A種1,2
230
なし
吹付け硬質ウレタン
A種1,2
160
なし
吹付け硬質ウレタン
A種1,2
160
なし
吹付け硬質ウレタン
A種1,2
160
なし
通気層確保のため
スペーサー等が必
要 。野 地 に 直 接 吹
付けは厳禁。
厚さ(㎜)
【繊維系断熱材+
防湿フィルム】
【発泡系板状断熱材】
外気
Ⅱ地域
6.6
断熱材
仕様例2
A
Ⅰ地域
断熱材
仕様例3
【現場吹付け断熱材】
厚さ(㎜)
防湿フィルム
留意点
通気層厚が薄い時
は通気層を確保す
るためスペーサー
等を検討する。
※1:基準R値-次世代省エネおよび品確法省エネ4等級における屋根充填断熱施工方法の場合の必要断熱抵抗値。
※2:トレードオフ-開口部の断熱性能アップにより、屋根で必要な断熱抵抗を1/2までに出来る規定を適用の場合。
Ⅲ∼Ⅴ地域対象。基準開口部U値4.65(W/m2K)→4.07(W/m2K)以下とした場合。
*:通気層は30㎜以上確保すること。
室内
8.2 環境試験の例
断熱材
図51. 外壁の充填断熱
A-A 断面
図52. 登りばり形式屋根の勾配天井の充填断熱
IV~II 地域を対象とした次世代省エネ基準で設
確認した。
計した屋根、外壁の環境試験では、設計通りに
詳細については、国産厚物合板屋根の手引きをご
施工すれば合板が結露を生じることはないことを
覧下さい(http://www.jpma.jp/data/index.html)。
真岡
(IV)
東京
(IV)
真岡
(IV)
諏訪
(III)
好摩
(II)
表28. 外壁の充填断熱の仕様例
省エネ区分地域
基準R値(m2K/W)※1
Ⅰ地域
Ⅱ地域
Ⅲ地域
Ⅳ・Ⅴ地域
3.3
2.2
2.2
2.2
高性能
グラスウール16K
120
高性能
グラスウール16K
90
高性能
グラスウール16K
85
高性能
グラスウール16K
100
別張りPEフィルム
0.1㎜
(JIS A 6930)
別張りPEフィルム
0.1㎜
(JIS A 6930)
断熱材付属
PEフィルム0.05㎜
(JIS A 6930)
断熱材付属
PEフィルム0.05㎜
(JIS A 6930)
断熱材
押出発泡
ポリスチレン3種
押出発泡
ポリスチレン1種
厚さ(㎜)
防湿フィルム
65
なし
65
なし
吹付け硬質ウレタン
A種1,2
75
なし
吹付け硬質ウレタン
A種3
90
なし
断熱材
仕様例1
【繊維系断熱材+
防湿フィルム】
仕様例2
【発泡系板状断熱材】
仕様例3
【現場吹付け断熱材】
厚さ(㎜)
防湿フィルム
断熱材
厚さ(㎜)
防湿フィルム
吹付け硬質ウレタン
A種1,2
115
なし
吹付け硬質ウレタン
A種1,2
75
なし
留意点
防湿フィルムは
柱・間柱部分で内
装下地材で押さえ
るか気密テープ処
理する。
相対湿度(%)
100
90
80
70
合板室内側 上部
60
50
合板室内側 下部
40
30
0
3 6
9 12 15 18 21 24 27 30 33 36 39 42 45 48 51 54 57 60 63 66 69 72 75 78 81
実験経過日数(日)
図53. 厚さ24㎜の構造用合板を張った耐力壁(ネダノン スタッドレス5 +)の環境試験の結果
断熱材の四周と木
材部
(柱・間柱・土台・
梁など)を気密テー
プなどで留める。
電気配線の管状カ
バーが必要
※基準R値-次世代省エネおよび品確法省エネ4等級における壁充填断熱施工方法の場合の必要断熱抵抗値。
45
46
Fly UP