...

第4章 公共施設の今後のあり方

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

第4章 公共施設の今後のあり方
第4章
第 3公共施設の今後のあり方
章 課題整理(分野別)
第4章
公共施設の今後のあり方
1.公共施設等の課題の解消に向けて
1-1
本市の公共施設に関する課題の整理
第1章から第3章では、公共施設等の現況調査の結果から、各分野ごとに施設全
体の傾向や状況を整理しました。第4章では、今後の社会的動向を見据え、各分野
ごとに有する特徴や課題の整理を行います。
公共施設等に関する課題
①建設から30年を経過する施設が多く、施設の寿命が近づいている。
②公共施設の老朽化により維持管理経費が増加する中で、投資的経費をどう確
保していくか。
③施設の分野によっては、施設量(施設数や規模)と利用量(利用率)が合致
していない施設も見られる。
④人口減少が予測される中、今後の公共施設の利用需要が変化していく。
・・・これから必要なこと!
公共施設の全体を把握し、長期的な視点をもって、更新・統廃合・長寿命
化などを計画的に行うことにより、財政負担を軽減・平準化すると共に、公
共施設の最適な配置を実現することが必要である。
課題の解消には、課題に適切に対処する処方箋(対策・手法)が必要であります。
その検討にあっては、公共施設それぞれの個別の視点で検討するのではなく、市
全体の施設のあり方を検討しながら、既存施設をどのように活用していくかを議論
し、将来にわたり持続可能な都市を形成するための、より適切な対策・手法を講じ
ていくことが必要です。
そのためには、公共施設の現状をよく「知ること」、そして理解し「分析するこ
と」、そして理解した上で適切に「判断すること」が求められます。
~ 56 ~
第4章
2.
公共施設の今後のあり方
課題解消手法の検討に向けた手順について
公共施設等の課題解消手法の検討においては、「知る」「分析する」「判断する」
の3つの視点により、手法の検討を行います。
■「知る」
⇒⇒⇒
公共施設等を調査し実情を知る。
■「分析する」⇒⇒⇒
設置基準や利用の背景等を分析し、施設を分類する。
■「判断する」⇒⇒⇒
理解した上で、適切な方針を決める。
<課題解決手法の検討に向けた作業フロー図>
『知る』
『分析する』
『判断する』
◆Step 1「施設現況調査」・・・施設の現況調査(平成 26 年 7 月~9 月)を
実施し、保有する公共施設全体を把握する。
◆Step 2「目標の設定」・・・Step1 で把握した全ての施設について、複数の
客観的な基準により施設を分類する。
◆Step 3「基本方針の取りまとめ」
・・・Step2 の分類ごとに、課題を解消する対策・手
法を検討し、施設と手法の組み合わせにより、
客観的な視点からの最適な対応策を提案する。
以上の3つの手順により、客観的な視点での課題解消策を検討します。
~ 57 ~
第4章
3.
公共施設の今後のあり方
施設を分類する基準について
各施設にあった適切な対策・手法を検討するために、施設現況調査で把握した全
ての公共施設について、調査データから求められる客観的な基準により施設を評価
し、その評価結果により施設の分類を行いました。
3-1 基準の設定と分類作業フロー
すべての公共施設(建築系・インフラ系・プラント系)を対象とし、客観的な基
準により施設を評価し、施設の優位性に基づく3つの分類(A・B・C)に整理を
行いました。
<公共施設全体>
・建築系 235 施設
・インフラ系
・プラント系
施設の
基準①
位置付
はい
都市の基盤
けによ
施設を存続し
となる施設
る分類
A ランク
更新していく施設
いいえ
基準②
Bランク
設置状況特性による、
各施設
はい
施設の寿命(耐用年
優位性は高い
数)を迎える前まで
の設置
いいえ
状況に
に、存続するか検討
する施設
に関す
る分類
Cランク
施設の存続を検討
する施設
~ 58 ~
第4章
3-2
基準①
公共施設の今後のあり方
公共施設等の位置付けによる分類
基準①では、各公共施設の役割、位置付けからみた種別を下記のとおり整理しま
した。
『支える』・・・・・市民生活の土台となり、市民生活を支える施設
『守
る』・・・・・市民生活を守り、都市機能を保持する施設
『活動する』・・・・市民生活の活動の場となる施設
公共施設等の位置付けイメージ図
インフラ系施設やプラント系施設は、市民生活を支える重要な役割を担う施設
であり、また、行政施設や消防施設、医療施設については、市民生活を守る役割を
担う施設として、都市基盤を構成する重要な施設として位置付け、『Aランク』と
しました。
市役所
消防本部
上水道配水管
市道鹿乗共栄線
~ 59 ~
第4章
3-3
基準②
公共施設の今後のあり方
施設設置状況の特性による分類
基準②では、基準①で抽出されなかった、『市民生活の活動の場となる施設』を
さらに分類するため、各施設の特性から、複数の基準で総合的に判定し、優位性を
整理しました。判定は、本市の施設設置状況を踏まえ、全国的な基準ではなく、本
市における標準的な施設設置状況を「普通」と仮定した場合に、その状況に対して
「高い」若しくは「低い」と判定しています。
◆市民生活の活動の場となる施設(その他建築系施設)
基準
項目
設
置
基
準
利
用
度
施
設
代
替
の
可
否
関地
連域
性防
災
計
画
と
の
耐
用
年
数
基準概要
優
高
い
位
普
性
通
低
い
施設の設置
根拠法令の
有無により
分類
法律又は政令に、施設
の設置及び管理に関す
る事項の特別な定めが
ある施設
地方自治法第 244 条の
2 に基づき、条例で施
設の設置及び管理に関
する事項を定めた施設
法令等の位置付けがな
い施設
施設の利用
者数及び会
議室等の稼
働率等によ
り分類
他施設を活
用し運営が
可能か否か
(機能移転
の可能性の
有無)によ
り分類
稼働率 50%以上又は
利用者 50 人/日以上
(平均値を超える)
稼 働 率 30%~50%未
満又は利用者 30 人~
50 人/日未満 (平均
値)
稼働率 30%未満又は利
用者 30 人/日未満
(平均値未満)
機能移転は不可
機能移転は可能だが条
件(地域性、規模等)
を伴う
機能移転は可能
地域防災計
画の指定緊
急避難場所
等、防災と
の係わりが
あるかによ
り分類
関連性高い
施設の耐用
年数を想定
し、耐用年
数までの残
年数により
分類
残年数 10 年以上
-
残年数 10 年未満
B ランク
関連性低い
耐用年数を超える
C ランク
施設の寿命(耐用年数)を迎える前
施設の存続を検討
までに、存続するか検討する施設
する施設
~ 60 ~
第4章
4.
公共施設の今後のあり方
課題解決手法の検討について
4-1 課題解決手法の検討フロー
基準①及び基準②により、本市の公共施設等の位置付け及び優位性により、施設
の分類を行い、第4章1項で整理した「公共施設等に関する課題」を解消するため
の手法について検討し提案します。
A ランク
Bランク
Cランク
施設を存続し
施設の寿命(耐用年数)
施設の存続を検討
更新していく施設
を迎える前までに、存続
する施設
するか検討する施設
公共施設等に関する課題の解消すべき視点
・施設規模等、将来必要とする施設の量に関する整理(施設機能の見直し)
・施設更新及び維持管理の優先順位付け
・施設運営・施設管理に関する検討
課題解決手法の検討
上記3つの視点から、様々な課題解決手法について提案する。
施設と課
題解決手
法の組み
合わせ
~ 61 ~
第4章
4-2
公共施設の今後のあり方
具体的手法の抽出
今後の公共施設の運営・管理手法の検討に向けては、様々な視点から取り組む方
法があり、他市事例等、具体的な手法も数多く存在します。
対象施設の特性に応じた適切な手法を選択するとともに、複数の手法を用いるな
ど、より効果的な方法を検討する必要があります。
■課題と対応方法の組み合わせ
本市の課題
対応方法
①他用途への転換(機能転換)
施設規模等、将来必要とする施設の量に関す
る整理(施設機能の見直し)
②機能の複合化
-1 廃止・統合
-2 多機能化
-3 集約化
③広域化
④維持管理計画
施設更新及び維持管理の優先順位付け
⑤情報の一元化
⑥新たな財源確保
⑦施設保有方法の見直し
施設運営・施設管理に関する検討
⑧アセットマネジメント
⑨民間活力の導入
⑩公共サービス提供手法の転換(ソフト化)
想定される課題と、その対応方法の組み合わせについて整理しました。
①~⑩の対応方法については、次頁以降にその内容を紹介します。
~ 62 ~
第4章
4-3
公共施設の今後のあり方
対応方法についての説明
(ア) 施設規模等、将来必要とする施設の量に関する整理
(施設機能の見直し)
①
他用途への転換(機能転換)
従来の施設の機能を変更し、他の施設として使用することや施設の機能を入
れ替えるなど、施設と機能を最適化すること。
⇒『施設機能の最適化』
例えば、利用可能人数(施設)と利用人数の関係からA施設とB施設を入れ
替えた方が効率的に利用できる場合、両施設の機能を入れ替え、最適化します。
<イメージ図>
A施設
新B施設
利用可能人数
50 人
利用人数
10 人
新A施設
B施設
利用可能人数
利用人数
利用状況 に適し た施設 の
入れ替え
20 人
40 人
C施設
C施設
利用可能人数
利用人数
施設と利用状況の整合が
図れているため、現状を
維持する
40 人
35 人
②機能の複合化
②-1
廃止・統合
余剰の公共施設を廃止または統合することにより、最適化すること。
機能の重複している施設で、廃止しても補完可能な施設を廃止する。(廃止)
機能の重複している施設を一つに統合し、その他の施設を廃止する。(統合)
⇒『機能は確保し施設量を削減』
~ 63 ~
第4章
公共施設の今後のあり方
<イメージ図>
廃止・統合前
廃止・統合後
廃止
近隣施設で
補完可能な
ため廃止
統合
【新設】
新設する施設に近隣施設を統合
②-2
多機能化
一つの施設を時間帯や場合により、異なる用途として利用し(多機能化)、有
効活用すること。
例えば、夜間や休日等、施設を利用していない時間帯に、異なる目的で施設
の新たな活用をするなど多機能化を図ります。
⇒『時と場合により、機能が変化する施設』
<イメージ図>
A施設
施設規模の大きい
A施設を多機能化
B施設
B施設
③-3
C施設
施設の集約化
休日・夜間等は、B施設
やC施設として活用
~ 64 ~
C施設
第4章
②-3
公共施設の今後のあり方
集約化
一つの施設内に複数の機能を保有し、運用や維持管理などの効率化を図ること。
⇒『複数の機能を同時に保有する施設』
例えば、A施設、B施設、C施設を同一の施設に集約することで、施設の運
営効率化や維持管理費などを削減することができます。
<イメージ図>
複合施設に施設を集約
A施設
B施設として利用
A施設として利用
C施設
B施設
C施設として利用
③
広域化
複数の地域で公共施設の機能を補完する等、現状の施設の利用対象地域より、
広域に利用対象地域を拡大すること。
⇒『多くの方に利用していただく施設』
例えば、隣接する都市間において相互利用することにより、公共施設をより
有効に活用します。
<イメージ図>
※利用対象地域の拡大
A施設
新たな利用者
B地域
利用者
利用者
A地域
新たな利用者
~ 65 ~
B施設
第4章
公共施設の今後のあり方
(イ)施設更新及び維持管理の優先順位付け
④
維持管理計画
限られた財源の中で、より効果的な更新・修繕を行えるよう施設の優先順位
付けを行うこと。優先順位は、当該施設の妥当性やサービス、機能の必要性、
利用率など、複合的な視点から整理し、必要な費用を踏まえて整理します。
⑤
情報の一元化
自治体が保有する公共施設の情報を一元化し、今後の維持管理を効率化するた
めに活用すること。例えば、所管課ごとの施設情報を全て収集し、施設の諸元の
ほか、老朽化状況や稼働率などを把握することにより、機能転換や多機能化を検
討する際の基礎資料として活用します。
また、地方公会計の推進により、公共施設等の固定資産台帳を整備し、各施設
の現状を適切に評価し情報の統一化・一元化を図ります。
(ウ)施設運営・施設管理に関する検討
⑥
新たな財源確保
財源の確保を目的として施設利用を有料化するなど、公共施設を活用した多
様な財源を確保します。また、施設内容や規模と、その利用料が適正であるか
検証し、利用料の適正化により、財源を確保します。
⑦
施設保有方法の見直し
自治体が保有する資産のうち、遊休資産(公共施設跡地、用地等)を売却した
り、貸し出すことで財源を確保します。また、施設を借用し所有しないことによ
り、維持管理経費を抑制します。
遊休資産
の売却
効
施設の借用
遊休資産
施設を所有
の貸し出し
しない
・歳入による、維持管理経費の確保
果
⑧アセットマネジメント
~ 66 ~
・維持管理経費の抑制
第4章
公共施設の今後のあり方
施設を資産と捉え、適正に資産としての評価を行い、将来に渡り適正に維持す
ることで、公共サービスの最適化やコスト縮減を行います。
⇒『施設機能を、長期的に適正な環境に保つマネジメント』
施設の長寿命化
施設の予防保全
コンパクト化を基本とした選択と集中への転換
施設更新時期の延伸、ランニングコスト縮減
⑨
民間活力の導入
将来の利用状況を踏まえ、自治体がサービスを直接提供するよりも、民間に
委ねた方が効率的である場合、公共施設等の維持管理や運営業務を民間へ委託
あるいは民間と連携し実施します。
手
⑩
法
内
容
民営化
公設民営⇒行政が設置し運営は民間企業が行う。
民設民営⇒民間企業が設置し運営する。
施設運営
の外部化
運営業務の委託化、指定管理者制度の導入
PFI
⇒プライベート・ファイナンス・イニシアティブ
民間の資金、経営能力、技術的能力を活用し、公的機関(施
設)を建設・運営し、効率的かつ効果的な公共サービスの提
供を行う。
公共サービス提供手法の転換(ソフト化)
民間が設置した施設を代替施設とし、公的利用すること。
例えば、民間会議室の賃貸借や、民間スポーツ施設の利用助成など、施設を保
有せずに公共サービスを提供します。
~ 67 ~
第4章
公共施設の今後のあり方
5.
今後の公共施設等のあり方(モデルケースの検討)
5-1
施設整備に関する基本的なルールの設定
本市の公共施設等に関する課題に、これまでに示した具体的な手法を照らし合わ
せることで、本市の公共施設等に関する課題を解消するためのモデルケースを検討
し提案します。
その前提として、公共施設等の維持管理に最も影響を与える「施設量」に対し、
施設の整備に関する基本的なルールを設定し、本市の公共施設等のあり方(モデル
ケース)を検討します。
ルール決めの目標(基本的な方針)
必要な機能は維持し、施設量を 削減する!
公共施設が一斉に寿命を迎える中で、既存の公共施設の維持管理に係る「人」
も「経費」も、これ以上負担することはできないのが 現実 。
施設の拡 大に
サービス
施設量
の増加
サービス
伴い、サ ービ
の提供
ス提供も 拡大
するが、 運営
の提供
に関する 経費
施設
施設管理
も増加。
管理
非現実的
施設量 を維 持し
ても、 老朽 化す
サービス
施設量
の維持
の提供
施設
サービス
施設
管理
関する 経費 は増
加。サ ービ スの
低下を招く。
管理
サービスの低下
~ 68 ~
る施設 の管 理に
第4章
公共施設の今後のあり方
現実的な手段
施設量 を削 減す
れば、 施設 の老
朽化対 策を 進め
ながら 、当 面は
サービス
施設量
の減少
の提供
施設
管理
サービス
サービ スを 維持
の提供
することが可
施設管理
能。
現実的
施設量を 削減 することで、サービス(機能)を 維持する!
サービス(機能)を維持するために、まずは施設量を削減する基本的なルールを
決めます。
~ 69 ~
第4章
5-2
公共施設の今後のあり方
基本的なルール
ルール
①
これ以上施設を増やさない!
・1つ施設を増やすときは、1つ以上施設を減らす。
・1つの機能しか持たない施設は新規で建てない。2つ以上の機能を有する施
設を建設することで、余分な施設を建てない。
ルール
②
フルスペック・フルセット施設の縮減!
・ニーズが低い施設機能は廃止もしくは縮小する。
・新規施設の建築にあっては、施設に求められる必要最小限の機能を確保する。
5-3
公共施設等の管理(マネジメント)に関するの基本方針
施設量に関する基本的なルールに基づきながら、公共施設等の管理に関する基
本的な方針を取りまとめました。
◆管理(マネジメント)の考え方の区分
~ 70 ~
第4章
公共施設の今後のあり方
◆ファシリティ・マネジメントの考え方
①フルスペック型から機能型への転換
これまでの地方自治体が整備してきたハコモノの多くは、あったらいいを形する
『フルセット主義』によって整備が進められてきた。
また、学校施設に代表される団塊の世代を受け入れるためのピークを基準に整
備された施設は、今では余剰となっているものも少なくない。
こうした都市に存在するフルスペックの施設群について、都市経営に必要なもの
をどうやって残すかの分岐点は、個別の事案ごとでのフルスペックを許容せず、
「施設偏重から機能優先」への基準転換が不可欠である。
②多機能型(複合型やソフト化)への転換
これまでのハコモノの多くは、「1つの機能を1つの施設で果たす」考え方が主流
であったが、人口減少を与件とするならば、社会に必要な機能を求める議論を深
める過程で、活動拠点が個々に無ければならないという「城」の概念を捨てた検
討が必要となる。
その検討には、単に効率性だけの視点でハコモノ廃止の議論を促進しようとす
るものではなく、社会に求められる機能を複合的に組み合わせた選択と集中によ
り、1つのハコモノで多機能な組み合わせを実現するための発想の転換が求めら
れている。
③既存のハコモノの広域利用に関する可能性の検討
現代では、公共交通機関の充実とモータリゼーションの発達によって、ハコモノ
整備の最盛期であった昭和中期と比べて、移動時間の飛躍的な短縮を実現して
いる。
今後の更なる技術の進歩がもたらす移動手段の確保を前提とするならば、それ
はハコモノの広域利用を可能とするもので、既存の全てのハコモノに聖域を設け
ず、広域利用に関する可能性を追求することが求められている。
~ 71 ~
第4章
公共施設の今後のあり方
◆アセット・マネジメントの考え方
①長寿命化への挑戦
都市の営みに欠かすことのできない機能を担うライフライン全てを、同時期に更
新するためのコスト負担は不可能である。
また、プラント系の更新には、現存とは別の場所で、新たな整備を実施する必要
が生じるため、新規整備に比べて多額のコストが発生する。
そうした難しい課題を解決する術を検討するためにも、今できることとして、現存
する社会資本の長寿命化に取り組む必要がある。
②予防保全の長期包括委託への転換
これまでの社会資本に対する維持管理は、事後保全を基本に実施されてきた
が、そうした手法が肥大化した社会資本に対する最適な対処方法であるかの議
論は尽くされていない。
限られた予算の有効活用という視点で、あえて事後保全という前例踏襲を否定
し、傷まないようにする手法に取り組む発想の転換が求められている。
また、事後保全から予防保全への転換には、民間企業への長期包括委託も含
めた聖域の無い検討が求められる。
③コンパクト化を基本とした選択と集中への転換
国では、少子高齢化者社会の進展による人口減少を背景に、維持すべき都市
の範囲を限定し、必要な社会資本の集約を図ろうとするコンパクトシティ論が提案
されている。
本市では、あえて過疎地域の排除論を容認するのではなく、プラント系の利用量
の削減や、インフラ系維持管理への市民参加といったソフト面の充実に都市全体
で取り組み、更新しなければならない社会資本そのものをコンパクトにする取り組
みに挑戦する。
~ 72 ~
第4章
5-4
公共施設の今後のあり方
ファシリティマネジメントに関する基本方針
(1)発想の転換
フルセット主義+フルスペック型との決別
一律的な行政サービスを行う「フルセット主義」や「フルスペック型」の維持は、も
はや破綻していると考えられる。
行政需要に合わせた資産配分(アセットアロケーション)を実現するためには、従
来の手法から決別し、「新たなハコモノは、極力つくらない」を原則とする信念を持
たなければならない。
機能転換(シェアードサービス化)への進化
本市では、地域の活動拠点となる公民館や地域交流センターが整備されている。
究極の車社会である現代においては、移動手段の確保が容易であることを前提
とすれば、複数の地域で 1 つの活動拠点を共有することが可能となる。
既存ストックを新たなコミュニティづくりに活かす
学校施設は、地理的、社会的に地域の中心に存在している。
ならば、学校施設を教育だけの機能に特化せず、地域にとって必要な公民館機
能、防災機能などを集約するといった選択肢を前提に議論を深めることが可能で
ある。
民間の積極的な活用
瀬戸市では、660 を超える事務事業を毎年執行している。
その中には、「民間に委ねた方が費用が安くなるのではないか」と思われる事業も
あるが、安直に民間委託に走れば、市民サービスの質の向上には繋がらない。
そこで、民間から行政サービスの委託や民営化への提案を自由に提案できる制
度を創設する。
~ 73 ~
第4章
公共施設の今後のあり方
(2)施設情報の適切な分析と評価
将来コスト
を予測!
これからは
【会計データ】
キャシュフロー
計算書
バランス
シート
行政コスト
計算書
利用実態
運営実態
【実態データ】
不動産
実態把握
【事業運営コスト】
その他
事業費
使用料+賃借料
物件費等
修繕費
委託費
管理費
人件費
光熱水費
建設費
+
建設
人件費
(3)自己改革
ハコモノのROAを作成して世に問う
民間企業には“R(Return)”があるが、行政には“R”がない。
だから ROA(Return on Assets)を測定できないと言われる。
そこで、瀬戸市は現存しない指標を作ることで、公会計の見える化を推進する。
ハコモノのROA
収
(総便益)/(利用量)
・・・・ 100%稼働したらいくらか?
〈定量化困難〉
益
性
(費用)/(利用量)・・・・・・・・・ 利用1件当たりの費用
〈定量化可能〉
効
率
(利用件数)/(提供能力)・・・ 稼働率(利用率)
〈定量化可能〉
性
(提供能力)/(総資産)・・・・・・ 投資効果
〈定量化可能〉
~ 74 ~
第4章
5-5
公共施設の今後のあり方
アセットマネジメントに関する基本方針
(1)新たな財産の確保のために
国策に応じた『基本計画』の策定
国策の指針である「インフラ長寿命化基本計画」を踏まえ、地方の事情に合わせた計
画の立案が求められている。
瀬戸市でも、本指針の策定を契機に、具体の取り組み内容を盛り込んだ計画(公共
施設等総合管理計画)を、迅速に立案する。
計画的な実行を担保する事業費補助の獲得
社会資本の総合的なマネージメントを盛り込んだ計画の立案を担保に、国では、新た
な補助制度を創設するとしている。
瀬戸市では、事業費補助をいち早く獲得するため、迅速な整理と計画立案し、早期に
実行へ移行する。
(2)発想の転換
事後保全の決別と予防保全への転換
これまで実施してきた事後保全型をあえて否定し、傷まないようにする『予防保全』
へと切り替える。
これまで計上していない予防保全費は、見かけは予算増となるが、フルコストでみれ
ば維持管理費を圧縮することができる新たな戦略となる。
民間企業への長期包括委託の推進
予防保全の採択と合わせて、地元企業への長期包括委託の推進を図ることは、維
持管理費の総量削減と共に、地元企業の成長の機会や、新たな雇用の創出という
効果をもたらす。
~ 75 ~
第4章
5-6
公共施設の今後のあり方
公共施設等の管理に関する「瀬戸市版モデルケース」の検討
前述の施設量を削減する基本的なルールと、課題解決の具体的な手法の提案か
ら、本市の保有する施設のあり方についてモデルケースを下記のとおり整理しま
した。
■公共施設等の管理に関するモデルケースの提案
課
題
施設規模
等、将来
必要とす
る施設の
量に関す
る整理
評
価
手
法
対象となる施設例
施設の設置目的 廃止
と、公共サービ
スの必要性に乏
しいもの。
公共サービスの 統廃合
提供の場として
施設が必要であ
るが、施設の量
を減らす必要が
あるもの。
■市営住宅(十軒家
住宅を除く)
共用化
■学校、集会所、公
民館、地域交流セン
ターの機能を共有
■学校施設の統廃合
公共サービスの 多機能化
提供の場として
施設が必要であ
るが、提供する
場が単独の施設
である必要がな
いもの。
広域化
■学校、集会所、公
民館、地域交流セン
ター、図書館・地域
図書館、福祉施設等
の機能を集約
■体育館等スポーツ
施設、図書館、文化
センター、プラント
系(ごみ処理、斎
苑、上下水道等)
~ 76 ~
内
容
・老朽化に伴
い、十軒家住
宅以外は順次
廃止の方針
・文部科学省の
基準、「12
学級以上 18
学級以下」を
目指した、適
正配置の取り
組み
・授業後の学校
施設(会議
室・音楽室・
図工室・調理
室等)を活用
し、自治会等
の会議開催
や、生涯学習
講座を開催す
る
・学校施設の空
き教室を活用
し、地域のコ
ミュニティ施
設や高齢者利
用の高い施設
等を併設す
る。
・近隣市との施
設相互補完、
施設の共同運
用
第4章
課 題
施 設 運
営・施設
管理に関
する検討
評 価
手 法
公共サービスの 民営化
提供の場とし
て、必ずしも公
共施設である必
要がない。
公共施設の今後のあり方
対象となる施設例
内 容
■図書館、体育館等 ・民間企業によ
スポーツ施設、市
るサービス提
営住宅、保育園、
供
施 設 運 営 の ■図書館、体育館等 ・指定管理者制
外部化
スポーツ施設、地
度の導入によ
域交流センター
る施設運営
■上下水道、道路、 ・インフラ資産
橋りょう、公園
の包括管理業
務委託
民 間 活 力 の ■図書館、体育館等 ・民間の資金、
更なる活用
スポーツ施設
経営能力、技
(PFI)
術的能力を活
用し、施設を
建設、運営
施設の運営・管 施 設 保 有 方 ■遊休資産(未利用 ・遊休資産の売
理に関する、従 法の見直し
の土地・建物)
却及び貸出に
来型からの見直
よる歳入確保
し。
・施設(土地・
建物)の借用
により、運営
経費の削減
維 持 管 理 手 ■インフラ系、プラ ・アセットマネ
法の見直し
ント系施設
ジメント
・施設の長寿命
化及び予防保
全による、維
持管理経費の
削減
施 設 の 機 能 ■すべての施設
転換による
適正配置
~ 77 ~
・施設機能を有
効かつ効果的
に活用するよ
う、施設の適
切な配置を検
討し、必要に
応じ施設機能
の入れ替えを
行う
第4章
6.
公共施設の今後のあり方
今後の進め方について
これまで、各施設に関する基礎データから施設分野ごとの現況を把握し、客観的
な視点で施設の分類を行い課題を整理すると共に、その課題解消に向けた手法を提
案しました。
しかしながら、各施設の持つ固有の特性や地域特性から生じる課題の整理、将来
に向けての施設利用者の変化等、今後更なる分析が必要となります。
今後は、本白書で示した「瀬戸市版モデルケース」の実現性を検証しながら、モ
デルケースの最適化を図ると共に、市民の皆さんのニーズに応えるよう、各施設レ
ベルでの管理に関する基本的な方針を取りまとめ、実効性の高い「公共施設等総合
管理計画」の策定が必要と考えます。
~ 78 ~
瀬 戸 市 公 共 施 設 白 書
瀬戸市行政経営部経営課
〒489-8701 愛知県瀬戸市追分町64番地の1
電話 0561-88-2521
FAX 0561-21-6607
E メール
[email protected]
URL
http://www.city.seto.aichi.jp
Fly UP