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No.18(12月22日)
================================≪JSC-WIRE≫================================ ☆☆本メールは日本化学療法学会電子情報配信誌[JSC-WIRE]の No. 18 です。☆☆ ---------------------------------------------------------------------------=========================≪JSC-WIRE HEAD LINE≫ =========================== 【日本化学療法学会事務局からのお知らせ】 ○現在の会員数:3,488 名(正会員) 、228 件(団体会員)、36 社(賛助会員) ○第 55 回日本化学療法学会総会 ○第 54 回日本化学療法学会東日本支部総会 ○第 55 回日本化学療法学会西日本支部総会 ○国際化学療法学会メール配信登録について ○「セフトリアキソンナトリウム小児 1 日 1 回投与」に関するアンケートのお願い (小児感染症患者さん(<15 歳)を診療される医師 会員各位へのお願い) ○レジオネラ症例情報収集のご協力のお願い 【厚生労働省】 ○ハンセン病に関する情報ページの更新 ○ノロウイルスに関するQ&A(一般向) ○フィリピンからの帰国後に狂犬病を発症した患者(輸入感染症例)について 【Health Canada】 ○リン酸オセルタミビルに関する新たな情報 【CDC】 ○人種/民族および教育による HIV 感染リスク上昇における 22-24 才の割合 【新薬情報】 ○抗菌性ペプチドの簡易・高効率探索法の開発 ○酸性条件下で緑膿菌に強く作用する塩基性ペプチド LAH4 ○肺炎クラミジア持続感染に対する新規標的 Integrin ○炭疽菌のジヒドロ葉酸還元酵素を標的とする阻害剤の探索研究 ○重症例に対する Daptomycin 高用量投与に向けての第1相試験 ○Daptomycin 耐性菌の顕在化を予測する ○超持続性の Dalbavancin の VISA に対する PD 解析 ○新しい作用機序の抗真菌薬が開発されるかも知れない ○新規抗 CMV 薬 Maribavir は Ganciclovir と拮抗する ○新規抗 HCV 薬 Valopicitabine は Ribavirin と拮抗する ○HIV 感染を予防するプロバイオティックの創製 ○抗 HIV 薬の新標的インテグラーゼの阻害活性の簡易測定法 ○クロイッフェルト・ヤコブ病に有効な併用療法が開発されるか?? 【学術情報】 ○アメリカ国内の新型ベータラクタマーゼ産生菌株の状況 ○ヒト由来のストレプトグラミン耐性 E. facium は動物由来と相違する ○フルオロキノロン高度耐性チフス菌の出現を予測する ○AcrB は非対称性の 3 量体で,薬剤を蠕動的に移動する ○Daptomycin 非感性黄色ブドウ球菌を識別する Etest 法の信頼性 ○大規模で国際的な感受性調査 Alexander Project 10 年間の記録 ○北米とヨーロッパで問題化している C. difficile 重症感染症 ○多剤耐性緑膿菌及びアシネトバクター感染症の Colistin 療法 ○Amphotericin B とトリアゾール系抗真菌薬は拮抗的である ---------------------------------------------------------------------------================================≪JSC-WIRE≫================================ 【日本化学療法学会事務局からのお知らせ】 ○現在の会員数(12 月 1 日現在) 3,488 名(正会員)、228 件(団体会員) 、36 社(賛助会員) ○第 55 回日本化学療法学会総会 会期:2007 年 6 月 1 日(金)~2 日(土) 会長:渡辺 彰(東北大学加齢医学研究所呼吸器腫瘍研究分野) テーマ:「化学療法学のブレイクスルーに向けて~耐性菌・適正使用を再考する~」 会場:仙台国際センター 演題締切日:2007 年 1 月 16 日(火)正午 http://www.chemotherapy.or.jp/meeting/sokai/index.html (学会ホームページ:http://chemo55.umin.jp/) ○第 54 回日本化学療法学会東日本支部総会 会期:2007 年 10 月 26 日(金)~27 日(土) 会長:堀 誠治(東京慈恵会医科大学薬理学第一) テーマ:「原点からの出発 感染症・化学療法を見直す」 会場:東京ドームホテル http://www.chemotherapy.or.jp/meeting/higashi/index.html ○第 55 回日本化学療法学会西日本支部総会 第 55 回日本化学療法学会西日本支部総会は、第 50 回日本感染症学会中日本地方会総会と 同時開催いたします。会期が 10 月末と、例年より早いので、恐縮ですが一般演題を 2007 年 5 月 8 日から 6 月 21 日までにご登録いただきたく存じます。一般演題の優秀 演題には日本化学療法学会西日本支部長賞ならびに同支部奨励賞が授与されます。 会期:2007 年 10 月 29 日(月)16:00~イブニングセミナー 2007 年 10 月 30 日(火)学術大会 2007 年 10 月 31 日(水)学術大会、ICD・ICP 講習会 会長:荒川創一(神戸大学医学部附属病院手術部・感染制御部) 会場:イブニングセミナー:ホテルオークラ神戸 学術大会:神戸国際会議場 ICD・ICP 講習会:神戸国際展示場 演題募集:2007 年 5 月 8 日(火)~6 月 21 日(木) 運営事務局:〒541-0047 大阪市中央区淡路町 3-6-13 (株) コングレ(担当:吉田直司) Tel:06-6229-2555 Fax:06-6229-2556 http://www.congre.co.jp/doji2007/(準備中) E-mail:[email protected] ○国際化学療法学会メール配信登録について 今後、国際化学療法学会(ISC)からの情報配信をご希望される場合は、メール アドレスを本学会事務局宛([email protected])にご連絡ください。 当事務局より ISC にアドレスを連絡いたします。なお、この件については メールの件名(Subject)に「ISC メールアドレス登録」と明記して頂きますよう お願い申し上げます。 ○「セフトリアキソンナトリウム小児 1 日 1 回投与」に関するアンケートのお願い (小児感染症患者さん(<15 歳)を診療される医師 会員各位) 本学会では「セフトリアキソンナトリウム(製造輸入発売元:中外製薬株式会社)の 小児に対する用法・用量(1 日 1 回投与)の追加」に関する要望書(昨年 7 月)および 追加要望書(本年 5 月)を厚生労働大臣宛てに提出致しました。つきましては、 本学会としても小児感染症患者さんを診療される先生方にセフトリアキソン ナトリウムの1日1回投与の使用状況およびその必要性に関する意見を伺いたく アンケートを企画致しました。日々のご診療にご多忙中誠に恐縮ですが何卒 ご理解を頂き、本剤の用法追加が速やかに承認され臨床現場で使用可能となりますよう ご協力のほど宜しくお願い申し上げます。資料整理の都合上から、年末の慌ただしい中、 短期間で恐縮ですが、2006 年 12 月 27 日(水)までに下記のサイトでご回答頂けると幸い です。 アンケートの回答結果は全て統計的に処理し、診療される医師の方々、製薬業界や 関係団体に対する情報提供のための貴重な資料として活用することを目的としております。 なお、収集(取得)した個人情報は、原則として統計データとしてまとめられ、 個人が特定できる形で利用することはありませんので、ご回答いただいたことにより、 先生並びに貴施設に関する個人情報(お名前、施設名、アドレスおよび E-mail など)が、 外部に出ることは一切ございません。これらの点に関しまして、何卒ご理解ご了承の程、 よろしくお願い申し上げます。あわせまして「調査についての守秘義務」の観点から 当アンケートの内容および当アンケートで知りえた情報については、決して第三者に 口外しないよう(掲示板やホームページへの記載を含む) 、ご協力をお願いします。 http://www.chemotherapy.or.jp/news/gakkai_28.html ○レジオネラ症例情報収集のご協力のお願い 当学会は厚生労働省医薬食品局審査管理課長より、レジオネラ属の適応を取得した抗 菌薬を製造・販売する製薬企業(以下、関係製薬企業)の実施する製造販売後調査へ の協力依頼を受け、レジオネラ治療薬評価事業を発足いたしました。つきましては、 レジオネラ肺炎患者を治療されたご経験のある医師の方に、以下の事項につきご協力 を頂きたく存じます。 1.2006 年 4 月以降に治療したレジオネラ肺炎患者の登録、および関係製薬企業が実施 する特定使用成績調査への参加 2.登録患者から分離されたレジオネラ菌株の提供 ご協力いただく際の詳細な手順につきましては、下記をご参照下さい。 http://www.chemotherapy.or.jp/news/gakkai_27.html ---------------------------------------------------------------------------================================≪JSC-WIRE≫================================ ○【厚生労働省】ハンセン病に関する情報ページの更新(2006.12.8) http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/hansen/index.html ○【厚生労働省】ノロウイルスに関するQ&A(一般向) (2006.12.8) http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/dl/040204-1.pdf ○【Health Canada】リン酸オセルタミビルに関する新たな情報(2006.11. 29.) リン酸オセルタミビルを服薬している患者における自傷行為や異常行動などの国際的 な報告について通知。これらの報告は主に日本からのもの。 http://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/medeff/advisories-avis/public/2006/index_e.html ○ 【CDC】人種/民族および教育による HIV 感染リスク上昇における 22 - 24 才の割合 (2006.11.24) 22~24 才のヒスパニックおよび非ヒスパニック系白人において教育は HIV 感染状況に 関連していなかったが、非ヒスパニック系黒人においては高等教育と HIV 感染低リス クに強い関連性があった。 http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5546a7.htm ○ 【厚生労働省】フィリピンからの帰国後に狂犬病を発症した患者(輸入感染症例) について(2006.11.22) フィリピンより帰国した男性が、現地で狂犬病ウイルスに感染し、国内で発症。 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/11/h1122-1.html ---------------------------------------------------------------------------================================≪JSC-WIRE≫================================ 【新薬情報】 ○抗菌性ペプチドの簡易・高効率探索法の開発 High-Throughput and Facile Assay of Antimicrobial Peptides Using pH-Controlled Fluorescence Resonance Energy Transfer 動物由来の塩基性ペプチドの抗微生物活性が注目されており,それらペプチドの部 分構造が耐性菌などに対する新規抗菌薬候補として開発研究が行われている。本報は, そのような活性ペプチドの大規模な探索研究を容易にする技法の開発に関するもので あり,pH コントロール下に大腸菌が破裂して細胞内物質が菌体外に吐出されるのを, 黄色蛍光と青色蛍光の変化で測定する方法である。汎用性が高く,高効率スクリーニ ングに応用が可能である(Antimicrob Agents Chemother 50; 3330-3335, 2006 年 10 月) → http://aac.asm.org/cgi/content/abstract/50/10/3330 ○酸性条件下で緑膿菌に強く作用する塩基性ペプチド LAH4 Enhanced Membrane Disruption and Antibiotic Action against Pathogenic Bacteria by Designed Histidine-Rich Peptides at Acidic pH フランスの Louis Pasteur 大学の研究者らは,ヒスチジン含量が高い塩基性ペプ チド LAH4 (26 アミノ酸のうちヒスチジンが 4 残基)による細菌細胞膜の破壊は酸性 条件下で強いことを,プロトン NMR を用いて確認した。黄色ブドウ球菌に対しては, MSSA と MRSA ともに中性域で活性を示すが,緑膿菌に対しては酸性域でしか活性を 示さない。5種の類似する合成ペプチドの活性を測定したところ,グラム陽性菌には 活性は弱く,大腸菌に対する MIC は pH5.5 で 0.5 mcg/mL,pH 7.2 で 5 mcg/mL で あった(Antimicrob Agents Chemother 50; 3305-3311, 2006 年 10 月) → http://aac.asm.org/cgi/content/abstract/50/10/3305 ○肺炎クラミジア持続感染に対する新規標的 Integrin Effect of PEX, a Noncatalytic Metalloproteinase Fragment with Integrin-Binding Activity, on Experimental Chlamydophila pneumoniae Infection 細胞内寄生性の肺炎クラミジアの持続感染には,宿主細胞の integrin が関与して いることが推定されていたが,確認されていなかった。著者らは,integrin に結合 活性を有するメタロプロテアーゼ(MMP-2)の部分構造(210 アミノ酸残基)の PEX が, in vivo での肺炎クラミジア感染に有効であることを確認することにより, integrin の関与を実証したとしている。PEX の in vitro 及び in vivo 効果は Azithromycin と Rifampicin の併用と有意差はなく,integrin は肺炎クラミジア感 染に対する新規抗菌薬の標的として適していると述べている(Antimicrob Agents Chemother 50; 3277-3282, 2006 年 10 月) → http://aac.asm.org/cgi/content/abstract/50/10/3277 ○炭疽菌のジヒドロ葉酸還元酵素を標的とする阻害剤の探索研究 Structure-Activity Relationships of Bacillus cereus and Bacillus anthracis Dihydrofolate Reductase: toward the Identification of New Potent Drug Leads 炭疽菌のジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)はセレウス菌の DHFR と 98% の塩基配列相 同性があるので,著者らはセレウス菌の DHFR 遺伝子をクローニングし,十分量の DHFR を得て,その阻害物質の検討を行った。既存の DHFR 阻害剤である Trimethoprim,Methotrexate,Pyrimethamine を陽性対照として,27 種のプテリジ ン,キナゾリン,ピロルピリミジン,ジアミノピリミジン,ジアミノナフトキナゾリ ン化合物の阻害活性を調べたところ,ジアミノデアザプテリジン化合物の中に IC50 が nM レベルという強い活性を示す物質が認められた。著者らは,化合物のグルー プ別に DHFR の結合部位を解析しており,極めて詳細な構造-活性相関研究を行って いる(Antimicrob Agents Chemother 50; 3435-3443, 2006 年 10 月) → http://aac.asm.org/cgi/content/abstract/50/10/3435 ○重症例に対する Daptomycin 高用量投与に向けての第1相試験 Pharmacokinetics and Tolerability of Daptomycin at Doses up to 12 Milligrams per Kilogram of Body Weight Once Daily in Healthy Volunteers Daptomycin はアメリカで発売されてから既に 2 年以上になるが,その有効で安全な 使用法については,市販後も様々な検討が行われている。同薬の FDA 承認用量は, 複雑性皮膚・皮膚組織感染症に1日1回 4mg/kg 静注,MRSA による心内膜炎を含む 黄色ブドウ球菌性敗血症には同じく 6mg/kg であるが,致命的な重症感染症に対して は,さらに高用量の投与法が求められている。本報は,製造・販売会社である Cubist 社が行った,1日1回 12mg/kg までの高用量を,健常成人に投与した際の PK と耐容性の検討成績である。12 名に 14 日の投与を行ったところ,用量依存的な PK プロフィルが得られ,心機能,筋,神経などに異常は認めらなかった(Antimicrob Agents Chemother 50; 3245-3249, 2006 年 10 月) → http://aac.asm.org/cgi/content/abstract/50/10/3245 ○Daptomycin 耐性菌の顕在化を予測する Mechanisms of daptomycin resistance in Staphylococcus aureus 発売後 2 年余りになる Daptomycin に対して,既に心内膜炎治療において耐性黄色 ブドウ球菌が出現している。アメリカの Wayne 大学の研究者らは,将来の耐性菌出 現を予測するために試験管内耐性菌を得て耐性機序を検討した。得られた変異株はヘ テロ耐性を示し,耐性形質は不安定であって,その耐性形質の安定化には,同薬含有 培地での継代培養が必要であった。同薬は細胞膜を障害するが,耐性菌は 81 kDa の 膜タンパク(chaperone と推定)を欠損しており,Daptomycin の膜への結合が低下 していると推測している。このような耐性菌が臨床で顕在化する可能性があると警告 している(Int J Antimicrob Agents 28; 280-287, 2006 年 10 月) → http://www.sciencedirect.com/science ○超持続性の Dalbavancin の VISA に対する PD 解析 Pharmacodynamics of dalbavancin studied in an in vitro pharmacokinetic system Teicoplanin A2-2 の誘導体である Dalbavancin は超持続性の抗菌薬であり,その PD プロフィルは興味がもたれるが,イギリスの MacGowan のグループは,ヒトにお ける同薬の遊離薬剤濃度を用いて,VSSA と VISA に対する in vitro PD 解析を行っ た。初発濃度は 0.6 _ 21mcg/mL で 240 時間にわたり観測している。同薬の殺菌活性 は濃度非依存性であり,AUC/MIC が抗菌力に最も関連している。静菌効果発現には, AUC/MIC が 24 時間では 36,120 時間では 55,240 時間では 100 が必要であり,2 log の菌数減少には 24 時間では 214,120 時間では 195,240 時間では 331 が必要で あった(J Antimicrob Chemother 58; 802-805, 2006 年 10 月) → http://jac.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/58/4/802 ○新しい作用機序の抗真菌薬が開発されるかも知れない (1) Efficacy of Ambruticin Analogs in a Murine Model of Invasive Pulmonary Aspergillosis (2) Efficacy of Ambruticin Analogs in a Murine Model of Coccidioidomycosis 1990 年代に発見されたポリケチド系抗真菌抗生物質 Ambruticin VS4 は,細胞内で グリセロールを過剰生産し,細胞外から過剰な水を取り込ませることにより,細胞が 膨潤して破裂するという特異的な作用を有することが知られている。しかしながら, 同物質は in vivo で抗真菌活性を示さないので,アメリカの Kosan 社では in vivo 活性を示す誘導体 KOSN-2079 を創製し,その評価を行った。連続する2報が掲載さ れているが,1報目では侵襲性のアスペルギルス感染モデルにおいて,同化合物の 200mg/kg 経口投与は Amphotericin B の 3mg/kg 腹腔内投与と同等の効果を示した ことを報告しており,2報目では他の誘導体(KOSN-2089)と併せて,マウスにおけ る致死的な Coccidioides 感染症に対する有効性を報告している((1) Antimicrob Agents Chemother 50; 3464-3466, 2006 年 10 月,(2) ibid. 3467-3469) →(1) http://aac.asm.org/cgi/content/abstract/50/10/3464 (2) http://aac.asm.org/cgi/content/abstract/50/10/3467 ○新規抗 CMV 薬 Maribavir は Ganciclovir と拮抗する Maribavir Antagonizes the Antiviral Action of Ganciclovir on Human Cytomegalovirus Malibavir(1263W94, VP-41263)は Glaxo-SmithKlein 社が ViroPharma 社から導 入したサイトメガロウイルス(CMV)の UL97 キナーゼ阻害剤であり,臨床第 3 相試験 に入る段階にある。現在の CMV 感染症の標準的治療薬である Ganciclovir は CMV の UL97 によりリン酸化されて活性体となるので,理論的にも,Malibavir が Ganciclovir と拮抗することが考えられるが,本報は,その拮抗現象を実証するとと もに,他の抗 CMV 薬である Foscarnet 及び Cidofovir とは拮抗しないことを示し ている(Antimicrob Agents Chemother 50; 3470-3472, 2006 年 10 月) → http://aac.asm.org/cgi/content/abstract/50/10/3470 ○新規抗 HCV 薬 Valopicitabine は Ribavirin と拮抗する Ribavirin Antagonizes the In Vitro Anti-Hepatitis C Virus Activity of 2'-C-Methylcytidine, the Active Component of Valopicitabine Valopicitabine (NM283)はメチルシチジンのバリンエステル体で, Indenix 社 が開発を進めており Novartis 社が排他的なライセンス権を有する経口用の抗 HCV 薬であり,臨床第 3 相に入る段階にある。その作用機序は,細胞内でリン酸化されて 活性体となり HCV の RNA ポリメラーゼを阻害することである。既存の抗 HCV 薬と して Ribavirin があるが,同薬はピリミジン系の抗 HIV 薬と拮抗することが知られ ており(プリン系とは拮抗しない) ,HCV 感染症治療に Valopicitabine と Ribavirin を併用すると拮抗現象が起こることが推定される。本報は,その拮抗現象 を実証したものであり,プリン系の抗 HCV 薬である VX-950 では拮抗現象が認めら れなかったことを述べている(Antimicrob Agents Chemother 50; 3444-3446, 2006 年 10 月) → http://aac.asm.org/cgi/content/abstract/50/10/3444 ○HIV 感染を予防するプロバイオティックの創製 Engineered Vaginal Lactobacillus Strain for Mucosal Delivery of the Human Immunodeficiency Virus Inhibitor Cyanovirin-N HIV 感染の予防として頸膣部でウイルスを殺滅する様々な方法が考案されているが, 膣に生存する菌に HIV 阻害物質を定常的に生産させるというユニークな方法が発表 された。阻害物質として,シアノバクターの1種が生産する分子量 11,000 の抗 HIV タンパクを選び,その遺伝子を膣に定着性のある Lactobacillus jensenii に導入・ 発現させることに成功した。同タンパク Cyanovirin-N は酸性条件下で安定であり, 化学的な安定性や温度に対する安定性でも優れており,その抗 HIV 作用はウイルス 表層の gp120(gp41 も ? )への結合であることが解明されており,既にサルにおい て HIV 伝播を防ぐことが知られている。まだ,ヒトへの応用は試験されていないが, 有効であるならば,極めて廉価な HIV 感染予防法として多大な恩恵を与えることに なると期待される(Antimicrob Agents Chemother 50; 3250-3259, 2006 年 10 月) → http://aac.asm.org/cgi/content/abstract/50/10/3250 ○抗 HIV 薬の新標的インテグラーゼの阻害活性の簡易測定法 Development of a Human Immunodeficiency Virus Vector-Based, Single-Cycle Assay for Evaluation of Anti-Integrase Compounds 現在までの抗 HIV 薬の標的は,逆転写酵素,プロテアーゼ及びウイルスの侵入と 細胞融合の 3 つであったが,HIV の耐性変異が高頻度であることから,各種の新しい 標的に対する阻害剤が探索されている。それら標的の阻害剤の中で,インテグラーゼ 阻害剤 MK-0518 や GS-9187 の臨床評価が進んでおり,次世代の抗 HIV 薬として期 待されている。本報はイタリーの国立エイズセンターとアメリカの NIH の共同研究 による,インテグラーゼの簡易測定法の開発に関するものであり,L-731,988 や RDS 1624 など多数のキノリノン化合物を材料として同測定法の確立について論じている (Antimicrob Agents Chemother 50; 3407-3417, 2006 年 10 月) → http://aac.asm.org/cgi/content/abstract/50/10/3407 ○クロイッフェルト・ヤコブ病に有効な併用療法が開発されるか?? Enhanced Antiscrapie Effect Using Combination Drug Treatment Scrapie (牛海綿状脳症,BSE)に有効な治療薬の探索は急務とされているが,現 在までに,ある程度の有効性が期待される化合物として Pentosan polysalfate (PPS)と 3 価鉄をキレートしたポルフィリン化合物(FeTSP)が知られており,PPS はクロイッフェルト・ヤコブ病(CJD)患者に試験的に脳内投与されている。本報は, マウスの実験的 scrapie モデルで,プリオン含有脳ホモジェネート接種 14 日後に PPS と FeTSP を併用したところ,有意な併用効果が認められたことを報告している。 無治療群では,マウスは 40-50 日で死亡するが,PPS と FeTSP の単独投与では,そ れぞれ 27 日と 17 日の延命効果が認められ,併用では 52 日の延命効果が認められ た。いずれも有意差が認められている。活性の無いポルフィリン化合物 FeTAP には PPS との併用効果が認められなかった。接種後 28 日目からの併用療法では延命期間が 短縮し,35 日目からでは効果がなかった(Antimicrob Agents Chemother 50; 3447-3449, 2006 年 10 月) → http://aac.asm.org/cgi/content/abstract/50/10/3447 ---------------------------------------------------------------------------================================≪JSC-WIRE≫================================ 【学術情報】 ○アメリカ国内の新型ベータラクタマーゼ産生菌株の状況 Prevalence of Newer beta-Lactamases in Gram-Negative Clinical Isolates Collected in the United States from 2001 to 2002 Nebraska 大学の Ken Thomson らによる,アメリカにおけるグラム陰性菌のベータ ラクタマーゼの現況に関する報文であり,全米の 63 施設から収集した 6,421 株を対 象とし,ベータラクタマーゼ陽性であった 746 株について,ESBL,AmpC 及びカルバ ペネマーゼなど新型ベータラクタマーゼの産生状況を検討している。ESBL は腸内細 菌科にのみ認められ,その頻度は 4.9% であって,ICU の 74% で分離されていた。 AmpC 型は肺炎桿菌の 3.3% に認められ,それらの株は 25% の施設で分離されていた。 カルバペネマーゼ産生株は 3 施設で分離されていたが全て クラス A であり,クラス B 及び D は認められなかった(J Clin Microbiol 44; 3318-3324, 2006 年 9 月) → http://jcm.asm.org/cgi/content/abstract/44/9/3318?etoc ○ヒト由来のストレプトグラミン耐性 E. facium は動物由来と相違する Quinupristin-Dalfopristin Resistance in Enterococcus faecium Isolates from Humans, Farm Animals, and Grocery Store Meat in the United States FDA や Michigan 大学などの多機関による共同研究であり,全米で 1995-2003 年の 間にヒト,七面鳥,鶏,豚,乳牛,肉牛などや鶏肉,豚ひき肉から分離され た Quinupristin/Dalfopristin (QPR/DPR)耐性の E. faecium 361 株について PFGE 解析を行った。QPR/DPR 耐性に関与する vatD,vatE 及び vgbA とマクロライ ド耐性遺伝子 ermB は PCR 法で検出した。 PFGE 解析で,ヒト由来株は動物及び畜 肉由来株と類似は認められなかった。vatE は,七面鳥,鶏,ヒト由来株の 35%,26% 及び 2% で,それぞれ認められたが,それ以外の由来株には認められなかった。それ とは対照的に,ermB は全ての由来株で共通して検出された。ほとんどの株で既知の QPR/DPR 耐性遺伝子が検出されておらず,未知の耐性機序の存在が示唆された(J Clin Microbiol 44; 3361-3365, 2006 年 9 月) → http://jcm.asm.org/cgi/content/abstract/44/9/3361?etoc ○フルオロキノロン高度耐性チフス菌の出現を予測する The acquisition of full fluoroquinolone resistance in Salmonella Typhi by accumulation of point mutations in the topoisomerase targets チフス菌の gyrA 及び parC に点変異を人為的に起こし,それら変異のフルオロキ ノロン耐性への関与を検討した。ParC だけ単独の変異では耐性化は認められなかっ たが,GyrA では造成した3種の変異の何れでも Nalidixic acid に耐性化が認めら れ,フルオロキノロンへの感受性が最大で 23 分の1に低下した。GyrA に2カ所の変 異を有する株では,ParC 変異が加わることにより,フルオロキノロンの殺菌力が低 下した。GyrA に3カ所の変異を有する株は,試験に供した Gatifloxacin, Ofloxacin 及び Ciprofloxacin の全てに高度耐性を示した。Ofloxacin や Ciprofloxacin などの使用により,比較的新しい Gatifloxacin への耐性株を選択す る可能性があると論じている(J Antimicrob Chemother 58; 733-740, 2006 年 10 月) → http://jac.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/58/4/733 ○AcrB は非対称性の3量体で,薬剤を蠕動的に移動する Structural Asymmetry of AcrB Trimer Suggests a Peristaltic Pump Mechanism 薬剤排泄ポンプタンパクの単離・結晶化・構造及び機能解析の研究は進展が速く, 競争が激しいが,本報はスイスの研究グループによる AcrA/AcrB/TolC に関する研究 成果の発表である。結晶化された AcrB は3つの異なるモノマーから成る非対称性の 3量体であり,その構造データは,薬剤を蠕動的に移動させる新規な機序を示唆する ものであると述べている(Science 313; 1295-1298, 2006 年 9 月 1 日) → http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/313/5791/1295 ○Daptomycin 非感性黄色ブドウ球菌を識別する Etest 法の信頼性 Multicenter Evaluation of the Etest and Disk Diffusion Methods for Differentiating Daptomycin-Susceptible from Non-Daptomycin-Susceptible Staphylococcus aureus Isolates アメリカで市販後2年を経過した Daptomycin は適応が拡大され,使用頻度も増加 している。一般臨床において,同薬の対象菌種である黄色ブドウ球菌の感性と耐性を 判断する簡易法として,Etest 法の採用が望まれている。本報は,Ron Jones,Fred Tenover,John McGowan らが協力して,同薬の Etest 法及びディスク拡散法による 感受性試験の信頼性を評価した成績に関するものである。Etest 法は,参加施設のう ちの1施設を除き,微量液体希釈法とよく合致する結果を与えた。しかしながら,ディ スク拡散法は信頼性が低かった。ちなみに,CLSI M100 標準 2006 年版 ではディスク 拡散法による Daptomycin のブレークポイントは削除されている(J Clin Microbiol 44; 3098-3104, 2006 年 9 月) → http://jcm.asm.org/cgi/content/abstract/44/9/3098?etoc ○大規模で国際的な感受性調査 Alexander Project 10 年間の記録 The Alexander Project: the benefits from a decade of surveillance 1992 年に始められた Alexander Project は,製薬企業による大規模で国際的な感 受性調査の第1号であり,その後,SENTRY,PROTECT,MYSTIC など数件の調査が経年 的に行われている。Alexander Project は呼吸器感染症分離菌を対象とし,収集菌株 の感受性は中央検査室で標準法により測定し,MIC 値で公表する方式を採用しており, それまでの調査が主としてブレークポイントによる耐性率の公表であったのに比して, 地域間,国際間での比較や経年的な耐性化の解析などに有用なデータベースとなって いる。特に Penicillin 耐性肺炎球菌や Ampicillin 耐性インフルエンザ菌の動向な ど,同調査で得られてきた情報は貴重である。本報は,検査機関である GR Micro 社, スポンサーである GlaxoSmithKlein 社と,同調査を支え活用してきた Peter Appelbaum らによる,同調査の 10 年間の記録である(J Antimicrob Chemother 56; Suppl 2, ii3-ii21, 2005 年 10 月) → http://jac.oxfordjournals.org/ ○北米とヨーロッパで問題化している C. difficile 重症感染症 REVIEW Emergence of Clostridium difficile-associated disease in North America and Europe ヨーロッパの臨床微生物・感染症学会(ESCMID)と疾病予防・制御センター(ECDC) が共同で行った C. difficile による重症感染症(CDAD)の調査報告であり,2003 年 以後の急激な増加傾向に対して,検査とサーベイランスの必要性を唱えている。同菌 は PCR リボタイプで 150 種以上,毒素型で 24 種に区分され,病原性ローカスにエン テロトキシン A の遺伝子 tcdA とサイトトキシン B の遺伝子 tcdB がコードされて おり,遺伝子全体の 11% までがトランスポゾンによる外来遺伝子であり,極めて変 異しやすい細菌であると考えられている。北米で急激に増加している CDAD の起炎菌 は PCR リボタイプ 027 で毒素型 III に属し,フルオロキノロン耐性である。ヨー ロッパでは,英国で 75,オランダで 16,ベルギーで 13,フランスで 9 カ所の医療施 設で同型菌が検出されており,北米と同様な CDAD の多発が予測される。同菌は接触 により伝播し,無症候性のキャリアーが多く,発症には必ずしも抗菌薬投与歴が関係 していないので,従来の C. difficile による偽膜性大腸炎とは区別して考える必要 があると述べている(Clin Microbiol Infect 12; Supple 6, 2-18, 2006 年 10 月) → http://www.blackwell-synergy.com/ ○多剤耐性緑膿菌及びアシネトバクター感染症の Colistin 療法 Effectiveness and nephrotoxicity of intravenous colistin for treatment of patients with infections due to polymyxin-only-susceptible (POS) gram-negative bacteria 2003 年から 2005 年の間にギリシャで経験された 27 例の,Polymyxin B のみに感受 性を示すグラム陰性桿菌(緑膿菌 17 例,A.baumannii 12 例; 2 例は混合感染)感染 症に対して Colistin 100 万単位を 1 日 3 回,平均 14 日間の静注を行った。9 例は人工呼 吸器関連肺炎であり,静注に加えて,同薬 100 万単位を 1 日 2 回吸入投与した。同薬に 関連すると判断された腎毒性は 27 例中の 2 例に認められただけであり,一般に云わ れているほどの腎毒性の発現はなかった(Eur J Clin Microbiol Infect Dis 25; 596-599, 2006 年 9 月) → http://www.springerlink.com/journals/ ○Amphotericin B とトリアゾール系抗真菌薬は拮抗的である Triazole-Polyene Antagonism in Experimental Invasive Pulmonary Aspergillosis: In Vitro and In Vivo Correlation アメリカ NIH の Thomas Walsh は,侵襲性アスペルギルス症に対して抗真菌薬の 併用療法が行われていることに対して,繁用されている Amphotericin B (AMPH)と トリアゾール系抗真菌薬の間の拮抗現象を臨床試験で確認するべきであると唱えてい る。本報は,AMPH のリポソーム製剤と開発中のトリアゾール Ravuconazole を用い て,in vitro 及び in vivo で拮抗現象を観察した結果の報告である。両薬剤を併用 すると,それぞれ単独で得られると予測される効果が 20-69% 低減しており,併用は 無駄であるばかりでなく,むしろ治療効果を下げることを警告している(J Infect Dis 194; 1008-1018, 2006 年 10 月 1 日) → http://www.journals.uchicago.edu/JID/home.html ---------------------------------------------------------------------------================================≪JSC-WIRE≫================================ JSC-WIRE-No.18[2006 年 12 月 22 日, 第 18 号] ☆発行:日本化学療法学会 学会誌編集委員会 ☆編集: 主 幹:満田年宏 委 員:後藤直正、坂田 宏、佐藤淳子、竹末芳生、平潟洋一、三鴨廣繁、 八木澤守正、山本俊信(50 音順) ☆お問い合わせ先: 〒113-0033 東京都文京区本郷 3-28-8 日内会館 B1 Tel. 03-5842-5533 Fax. 03-5842-5133 ※本誌に関するお問い合わせメールアドレス: karyo あっとま~く jc4.so-net.ne.jp ※社団法人 日本化学療法学会事務局(入会・会員サービス問い合わせ): http://www.chemotherapy.or.jp/をご覧下さい。 ※JSC-WIRE バックナンバーURL: http://www.chemotherapy.or.jp/ml/backnumber.html ---------------------------------------------------------------------------日本化学療法学会ホームページ: http://www.chemotherapy.or.jp/ ---------------------------------------------------------------------------**************************************************************************** ~会員の皆様からの寄稿をお待ちしております!~ **************************************************************************** ※免責事項:本号掲載資料の内容は会員の利便性を考え本誌編纂の趣旨に賛同いただ けたコミュニケーターあるいは協力企業からの情報ソースをもとに学会会員各位に対 して情報提供するものであり、個々の記事は学会として理事会や各種委員会などの公 式の場で承認を経ているものではありません。可能な限り URL や引用元の論文等の原 文を参照の上、自己責任でかつ個人の範囲でご活用下さい。 ※著作権等:無断での二次転用・転記を固く禁じます(あらゆる許諾は、編集主幹を 介さずに事務局を経由して情報提供者である各個人あるいは各会社より個別に受けて 下さい)。 ※メーリングリスト登録・削除は専用の URL から行います。 (会員各個人がご自分で登録・削除戴く形式となります: 詳細は http://www.chemotherapy.or.jp/ml/index.html をご覧下さい) ※会員の皆様の登録をお待ちしています。 まだ登録をお済みでない会員の方に登録をお勧め戴きますようお願い申し上げます。 ****************************************************************************