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中高一貫校における 情報教育カリキュラム
情 報 教 育 と その評 価 中高一貫校における 情報教育カリキュラム 文 田 抄 録 情報活用教育をすすめる上で留意すべきことは3つ。 ① 明 良 「情報」を一教科として孤立させないで,教科間を 連携し,各教科を活性化できるように心掛ける。 2 「情報授業」の設置 まず最初に,現在(2004 年度)の「情報」授業のカリ スキルで評価するのではなくて,作品のコンテンツ キュラムについて簡単に紹介すると,全員必修の情報授 やプレゼンの表現力などオリジナリティな部分で評価す 業としては,中学1年と2年でそれぞれクラス単位で週 るように心掛ける。 1単位(前期または後期に集中して週2時間)の授業を ③ 行っている。これはいずれも「総合的な学習」の一部と ② 具体的な指導に関わっては独自の教材やテキストな どを用意し,独自のカリキュラムをすすめる努力をする。 して設けているもので,残りの半期の「総合」で行って <キーワード> いる「測る,変わる,創る(科学的なものの見方・考え サイエンス,教科連携,オリジナリティ,中高一貫, 方)」とセットになっているものである。また,高校1 高大連携,系統的カリキュラム 年生では「情報A」をスキルレベル別に2クラスを3つ の講座に分けて週2時間で授業を行っている。さらに, 1 はじめに(サイエンスの視点) はじめに,簡単に学校紹介をしておきたい。本校は, 中高大院一貫による 10 年以上の長いスパンで,生徒の個 高校3年生には,理系選択者の必修科目として「理系情 報」を週2時間で行っている。これらの情報科が担当す る科目以外にも,コンピュータサイエンスに属すると思 われる専門的な選択科目がいくつか設けられている。 性を発見して磨き,将来の夢を実現するためのカリキュ そのそれぞれについて簡単に説明をすると,中学1年 ラムを構築してきている。中高の6年間を「基礎教養修 2年の「情報」は,一般教科での情報活用につなぐ具体 得プログラム」の4年間と「個性伸長プログラム」の2 的な操作を習得すること,ネットワークモラルを身につ 年間に分け,後半の2年間には進路に応じた高大連携専 けることを目標とし,創作活動などを中心に授業を展開 門科目を数多く用意している。たとえば,数理系にはス している。たとえば,学年行事の大山合宿の報告を「新 ーパーサイエンスプログラム,文社系には法曹や会計士 聞」という形で絵や写真を取り込んで作っているが,同 や福祉事業等を目指すプログラム,国際系には留学プロ 時に新聞や放送などのマスメディアの役割や読者に対す グラムなどを設けている。 る配慮などを考えさせる取り組みを行っている。 立命館高校が文部科学省から「スーパーサイエンスハ 高校1年の「情報A」では,学習指導要領に基づく内 イスクール」に指定された(2002~2004)こともあり, 容を基本としつつ,自主研究レポートの作成,意見交流 これまで以上に理科や数学や情報を中心に,新しい取り によるまとめ,それらをまとめてプレゼン資料を作成す 組みが始められている。それは,必ずしも一部の生徒だ るなど,協働作業や発表学習,発信活動を中心に展開し けを対象としたプログラムに限定せず,学校全体が「サ ている。また理系の進学志望者の多い本校の特性から, イエンス」の視点や考え方を大事にするカリキュラムを アルゴリズムやプログラミング(ロボット制御)を取り 目指すというものだ。「サイエンス(科学)の力」とは, 入れている。中1から高1までの「基礎教養修得プログ 物事の本質を見極める力,さまざまな情報を分析判断す ラム」の4年間にこのような授業を用意することで,他 る力,そして発見を生活や環境に生かす力と考えており, の教科でのレポート作成や発表学習などにおいて質の高 情報活用能力の伸長においても,このような考え方に基 い作品を制作させることを狙っている。 づいた教材選びをしている。ここでは,情報教育カリキ ュラムを中心に,本校の中高6ヵ年の取り組みを紹介する。 Fumita 高校3年生においている「理系情報」は,UNIX のフ ァイル操作やC言語プログラミングを中心に学習し,問 Akiyoshi:立命館中学校・高等学校(京都市伏見区深草西出山町 23) - 51 文田明良:中高一貫校における情報教育カリキュラム 題の論理的解決方法を学習するとともに,大学での情報 系の研究とリンクしたカリキュラムとして設けている。 また,情報科の授業とは区別しているが,いくつかの教 科や高大連携科目でコンピュータやネットワークを日常 的なツールとして活用する授業が実施されている。たと えば,「コンピュータ数学」という科目においては, Mathematica を用いて数学的事象の分析の取り組みが行 われていたり,「情報英語」では,ネットワーク教材を 活用して,授業と家庭学習の両方で課題にチャレンジし ている。また,スーパサイエンスプログラムの中では, 形状モデリング(コンピュータグラフィックス)の講座 やマイクロプロセッサの設計(HDL 言語による論理回路 等)の講座など,大学教員の支援を受けながら,最先端 の科学に触れる授業を設けている。 下記に,それぞれの情報授業科目のスキル面における 到達目標を整理しておく。 中学1年生 情報 ① Windows の基本操作の習得 ・コンピュータ・ネットワーク利用におけるマナーやルールの理解。 ・ファイル・フォルダの仕組みの理解と基本的操作の習得。 ・タッチタイピングの習得。(日本語 100 文字/分) ② ワープロ活用力の習得 ・文章の入力・編集,ワードアート・クリップアート,画像の貼付け。 ・マスメディアの働きや影響力の理解。 ・新聞(レポート)の作成と発表できる力。 ③ ネットワークの基本的活用力の習得 ・メールの活用(メールの受信・発信,署名,ファイルの添付)。 ・Web 検索(カテゴリー・キーワード)による調べ学習とレポート。 ・ネットワーク利用におけるマナーと自己防衛の理解。 中学2年生 情報 ① 基本操作の習得・情報倫理の学習 ・タッチタイピングの習得。(日本語 150 文字/分) ・加害者・被害者にならないためのルールやマナーの理解。 ② データ処理(表計算)活用力の習得 ・合計や平均,統計処理,分布表,グラフ作成ができる力。 ③ 画像作成・画像処理活用力の習得 ・画像の作成,画像形式の変換。 ・デジカメ写真・スキャナ画像の取り込み,いろいろな画像効果処理, 他のアプリケーションとの連携。 ④ プレゼンテーション能力の向上 ・テキスト,画像,アニメーションを使ったプレゼン資料の作成。 ・プレゼンテーションの方法と留意点の理解。 ・プレゼンテーションコンテストでの発表力。 ・Flash等によるWebページ上でのアニメーションの作成。 ・デジカメやスキャナでの取り込み画像を加工し,他のアプリとの連携。 ④ コンピュータの仕組みと情報倫理 ・情報化社会のマナー・ルール,様々な情報のコンピューターでの扱 われ方,ネットワークの仕組みなど,基本的な知識を身につける。 ・正しい倫理観,情報を読み解く力,自ら発信できる力を身につける。 ⑤ 動画編集 ・動画の取り込みと文字や音楽を含めた編集。 ・メディアの効果・影響の理解とメッセージ性のあるストーリーの制作。 ⑥ プログラミング ・アルゴリズムの理解とロボット制御用RCXコードの学習 ・Flash等によるWebページ上でのアニメーションの作成。 ・デジカメやスキャナでの取り込み画像を加工し,他のアプリとの連携。 ④ コンピュータの仕組みと情報倫理 ・情報化社会のマナー・ルール,様々な情報のコンピューターでの扱 われ方,ネットワークの仕組みなど,基本的な知識を身につける。 ・正しい倫理観,情報を読み解く力,自ら発信できる力を身につける。 ⑤ 動画編集 ・動画の取り込みと文字や音楽を含めた編集。 ・メディアの効果・影響の理解とメッセージ性のあるストーリーの制作。 ⑥ プログラミング ・アルゴリズムの理解とロボット制御用 RCX コードの学習。 高校3年生 理系情報 ① UNIXの基本 ・UNIXのファイル操作コマンド,Muleによる文書作成の習得。 ② C言語プログラミング ・C言語プログラミングの基本(条件判断,繰り返し,配列等)の習得。 ・アルゴリズムの理解と,数値計算やデータ解析のプログラミング。 ③ Webプログラミング ・PerlとCGIによるWebプログラミング。 ・ネットワーク上のデータ処理の仕組みの理解。 ④ 理系論文ツール ・Gnuplot,Latex 等,理系論文を書くためのツールの活用。 3 「情報」と一般教科や行事との連携 各学年の「情報」授業で取り組んだ内容と生徒の到達 度を各教科に明示することで,一般教科での情報ツール の活用が可能になる。むしろ,そこで培った情報活用能 力を定着させるためには,一般教科での目的や意義のは っきりした使い方が必要であり,これらによって双方の モチベーションをあげることにつながる。 そもそも,「情報」は教科の壁を超えて「学際的な学 習研究の分野を開く可能性」と,「調査・発表,交流・ 協働というような学習形態を促進する可能性」をもって いると思う。情報ツールは決して万能ではないが,アプ ローチの仕方や学習の本質を探る工夫をすれば,さまざま な教科の取り組みに大きな効果が期待できると考える。 高校1年生 情報A ① プレゼンテーション ・プレゼンテーションの資料作り・方法の理解。高度なプレゼン能力。 ・総合的な学習と連携し,自主研究に基づく発表できる力。 ② Web ページ作成 ・タグを理解し,エディタを使って Web ページの作成。 ・Web ページ作成ソフトを使った Web ページデザインの習得。 ・自主研究レポートの作成と Web ページ化。 ・アップロード作業(FTP)等を通じてネットワークの仕組みの理解。 ・メールや BBS などのネットワークツールの有効な活用。 ③ 画像処理 - 52 学習情報研究 2004.7 本校の事例をいくつか挙げてみると,英語では,中1 から CD-ROM 教材やネットワーク教材を利用している が,これに必要となる認証の手続きや Web 検索,メール の基本操作については,1年の「情報」で学習する。中 2中3の理科では,表計算ソフトによるデータ処理を含 んだレポートに取り組ませるが,そのための基本的な統 計処理は中2の「情報」で学習する。中3から高校にか けて,プレゼンテーション資料の作成と実際の発表活動 が,理科や社会を中心に多く企画されているが,これに 命館宇治高校と立命館慶祥高校と本校の高校生が電子掲 関しても,中2から高1の「情報」で重点的に取り組ま 示板を使った憲法フォーラム(憲法や人権問題に関する せており,教科の課題を「情報」の授業時間に引き受け 意見交換)の取り組みなど,いろいろな工夫を重ねてき て指導するという連携活動を行うこともしばしばある。 た。Web ページ上で紹介した生徒の研究レポートがきっ 特に,高校1年で実施している「総合(進路に関する研 かけで埼玉県の高校と自主研究レポートの合同発表会を 究レポートの取り組み)」でのプレゼンテーション,高 行ったこともある。これらは,「情報」の授業時間に取 校2年の「生命」でのプレゼンテーションコンテストで り組んだものもあるが,HR の時間に担任が指導したり, は,「情報」で培った情報活用能力およびプレゼン能力 放課後に有志の生徒を集めて取り組んだものもある。テ が大いに発揮される場面となっている。 ーマを考える際,授業内容や学校行事あるいは社会問題 情報科は授業以外にも,課外活動や他校との交流など, など,時期に応じた企画を考えることも,生徒のモチベ いろいろな「乗り入れ活動」や「支援活動」を実施して ーションという点で大切なことだと考えている。 いる。たとえば,文化祭のクラスポスターをコンテスト 新学習指導要領に対応して本校でも 2002 年度から中 形式で取り組んだり,中3ニュージーランド研修(2週 高ともに新しいカリキュラムを開始した。その検討時に 間のホームステイ)にもっていく自己紹介カードを作っ は,「情報展開プロジェクトチーム」を発足し,6ヵ年 たり,帰国後のアルバムやまとめ集作りを行っている。 の情報活性化カリキュラムの系統・蓄積の組み立てにつ 他校との交流という点では,東京の中学校や愛知の小学 いて議論したのだが,その時のイメージを表にしたもの 校と本校の中学生がネットミーティングを利用してそれ に少し手を加えて下記に掲載する。ただし,毎年行って ぞれの郷土を紹介したり質問したりする取り組みや,立 いるものとは限らないので,参考まで。 情報授業 国語 社会 数学 理科 中学1年 基本操作(ファイル操作、タイピング) Web検索(情報検索、調べ学習) ワープロ(文章入力・編集、レポート 地理での世界ニュースに関す WebStudy(e-learning)の取り る調べ学習・新聞作成 WebStudy(e-learning)の取り 作成) 組み 組み 電子メール(メール送受信、情報倫 理、レポート提出) 画像処理(図の作成) 中学2年 表計算(データ整理、グラフ作成、レ ポート作成) WebStudy(e-learning)の取り プレゼンテーション 組み Web検索(情報検索、調べ学習・情 報倫理) ワープロ・画像処理(レポート作成) 高校1年 ワープロ、表計算、電子メール、Web 検索 Webページ制作(HTMLタグ、情報活 用のまとめ) プレゼンテーション(発表学習) 画像処理・動画編集 プログラミング(ロボット制御) コンピュータの仕組みと情報倫理 WebStudy(e-learning)の取り 組み 政経でMESEシミュレーション 政経・日本近代史での調べ学 習とプレゼンテーション UNIX関連(ファイル操作、Mule、 Gnuplot) C言語プログラミング Webで動くプログラミング 数学・物理のシミュレーション 理系レポート 倫理(文・理)で情報化社会の とらえ方、ネットワークの概念 現代文で、生徒作品をネット上 とモラル学習 で相互に読み、コメントをつけ 年間を通して、メ ールでの課 る意見交換 題提出、 Web掲示板によるデ ィスカッション 実験結果を表計算ソフトで処 理、図やグラフを取り入れたレ ポートの作成 Mathematicaを利用した確率実 実験レポートの作成 験シュミレーション 生命でのプレゼンテーションコ ンテストの取り組み(研究結果 やフィールドワークの結果をマ ルチメディア化して発表) 国語表現での資料検索および 世界(地歴)でのレポートとプレ 発表学習 ゼンテーション 高校2年 高校3年 WebStudy(e-learning)の取り 実験結果を表計算ソフトで処 組み 理、図やグラフを取り入れたレ BASICを利用して、1次関数と ポートの作成 グラフの概念の学習 WebStudy(e-learning)の取り 組み ディベートテーマに基づくWWW を活用した資料検索 中学3年 マルチメディア図鑑やWWWを 使っての調べ学習 数Cで、Mathematicaを利用し た2次曲線、1次変換 総合ゼミ科目で、研究成果を コンピュータ数学で、 Webページ化 Mathematicaを利用した高度な 模擬学会の取り組み 数学解析 Excelを利用して統計数学 英語 その他 WebStudy(e-learning)の取り組 み グローバルイングリッシュの取り 組み WebStudy(e-learning)の取り組 み NZ研修用自己紹介カード NZ研修用グリーティングカード 文化祭ポスターコンクール 作成 WebStudy(e-learning)の取り組 み 英文レターの作成(NZのホスト NZ研修のまとめ文集の作成 ファミリ ーへの手紙、日本の 紹 介) TOEFLのCD教材 時事英語関連ニュースの検索 ライブニュースのレポート課題 グローバルイングリッシュの取り 組みとTOEFLのCD教材 総合での進路に関する研究レ ポートのまとめとプレゼンテー ション 音楽での作曲・編曲実習 シスアド等(資格取得)の講座 SSPにおける形状モデリングな どの取り組み Writingで、英作文の課題をメー ルで提出 ロボットコンテストへの参加 Readingで、プレゼンテーション 学部選択志望理由書などの作 サイエンスインイングリッシュの 成 取り組み 話が変わるが,社会が求める力は, ず,このような本質的な「科学する力」に結びつける使 ①「自分の意見をはっきりと,また人に分かるように 命を負っていると考えるからだ。 発言・説明できる」,②「コラボレーションの中で自分 他校の先進的な事例に触れるたびに,本校の実践はま の責任と相手の意見を尊重する姿勢を身につける」,③ だまだ発想が乏しいと感じているが,異動のない私学の 「広い視野と的確な判断力に裏付けされたチャレンジ精 教員にとって,他校でのすぐれた実践や Web 教材を研究 神をもつ」 することや,他校の先生と交流を深めることは,情報に ということであると私は考えている。繰り返しになる 限らず教育の活性化に不可欠なことである。コラボレー が,情報活用が「情報」だけで完結させたり孤立させた ションや他への意識,チャレンジ精神は,むしろ我々教 りしないというのは,単純にスキルレベルの向上に走ら 員の課題として受けとめるべきものかもしれない。 - 53 文田明良:中高一貫校における情報教育カリキュラム 4 独自テキストの活用 中高6ヵ年の到達目 室,図書室やオープンスペースにもコンピュータを配置 し,同時に昼休みや放課後の利用に対応するなどを行っ ている。 標を生徒に明示するこ 情報関連教室の設計にあたっては,インターネットサ とは重要なことであ ービスの活用,動画を含むマルチメディア資料の処理, る。特に「情報」のよ プレゼンテーションの機能などを合わせ持つような教室 うなスキルレベルがは を整備するとともに,PC によるレポートやプレゼン資料 っきりとするものでは の作成やメールでの課題提出を課すことなどにより,日 なおさらである。そこ 常的な道具として定着させる仕掛けも意識して設けてい では,全員が到達すべ る。 き最低限の到達目標の ほかに,選択科目や資 (2)管理運用体制 格試験を受けるような 1700 人の中高生,100 人を超える教職員というユーザ 関心の高い生徒への最 の利用に対して,アカウントの発行やネットワーク管理 高到達目標を示すこと などの業務も教育の情報化をすすめる重要な役割であ もある。そして,いわゆる「シラバス(講義概要)」を る。しかし,「情報」授業を担当する教員がそれらの業 明示することによって,教員自身が使命と責任を意識す 務をすべて受けとめるわけにはいかない。日常的な実務 ることにつながるという面も大切にしたい。 を果たす分掌に加えて,情報基盤構築に関わる委員会や, 本校では,シラバスを示すだけでなく,もっとダイレ システム管理上の事故に対する責任体制,情報展開カリ クトに中高6ヵ年の積み上げが見えるものとして,学校 キュラムを探るプロジェクトなど,さまざまな働きが求 独自の履修内容をテキストにまとめることに挑戦してい められるが,各校のできる範囲内でこれらの管理運用対 る。すなわち,情報の授業のサブテキストとして,上図 策を探ることになる。本校では,「メディア教育部」が のような冊子を 1997 年度から毎年更新を続けながら発 中心となって,そのような管理運用業務を担っている。 行している。本校の情報関連教室の仕様や利用方法を説 明し,ネットワーク利用に関するガイドラインを示し, (3)利用規程・ガイドライン メールの受発信や Web ページ作成における留意点や具 優れた施設やシステムを構築することや,運用管理に 体的な活用方法等々,さまざまなノウハウを蓄積掲載し ついて組織や体制を整備することは大切だが,適正な情 ており,2004 年度版は 200 ページを超えるものになって 報教育の活性化のためには,生徒をはじめとする利用者 いる。もともとは,「情報」授業を設置できなかった学 の意欲やモラルの方がさらに重要となる。また,モラル 年の生徒に対して自主的な学習を助けるものとして作り や規程の指導については学校全体がその重要性を認識 始めたのが動機であるが,ネットワークを利用するモラ し,家庭にも協力を得なければならないだろう。セキュ ルの徹底や,教員の情報活用向上にも一役を買っている。 リティ面のルールや,問題発生時の対応手続きのルール 学校独自の環境に即して,たとえば,パスワードの変更 の確立も必要である。本校では,利用規程を定めて,本 の仕方とか,ネットワークフォルダの利用だとか,複数 人および保護者に対して利用規程を遵守する旨の同意書 のアプリケーションを組み合わせた作品制作だとか,学 をとって自覚を促している。 校行事などを例にとった教材を紹介するなど,独自の教 本校の利用規程(利用のガイドライン)では,およそ 材や個別の説明を行う際には,検定教科書や市販のマニ 「学校の情報活用教育の積極的な指針(利用の意義)」 ュアルだけでは説明しきれないことが多くあり,このよ 「トラブルを起こしたり巻き込まれる危険性(自己防 うなまとまったものがあればとても重宝する。 衛)」「生徒たち自身の責任とモラル・倫理観(禁止・ 制限事項)」の3つの性格に分けて整理しており,新入 5 情報活用教育を支えるもの (1)情報関連教室の仕様 中高合わせて約 1700 人の生徒数に対応し,また,情報 授業だけでなくさまざまな教科での情報活用の取り組み をすすめるために5つの情報関連教室を確保している。 そのほかに,社会や理科,美術や音楽などの教科特別教 - 54 学習情報研究 2004.7 生の合格者招集日にその説明を行っている。もちろん, 利用規程があれば,モラルが保てるというものではなく, 情報倫理に関する教育・学習は,授業の中で,またいろ いろな機会に,繰り返し説明し考えさせていく努力をせ ねばならない。