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問い合わせ先 公正取引委員会事務総局経済取引局企業結合課 電話

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問い合わせ先 公正取引委員会事務総局経済取引局企業結合課 電話
キリングループと協和発酵グループの資本提携について
平成20年12月19日
公 正 取 引 委 員 会
公正取引委員会は,キリンホールディングス株式会社(以下「キリンHD」と
いう。)による協和醗酵工業株式会社(以下「協和発酵」という。)の株式の取得
について,報告書の提出がなされたことから,両グループの資本提携について調
査を行ってきたところ,本件企業結合については,一部の品目に係る取引分野に
おける競争を実質的に制限することとなるおそれがあると認められるものの,当
事会社が申し出ている問題解消措置の確実な実施を前提とすれば,独占禁止法の
規定に違反するおそれはないものと判断した。
第1
本件の概要
本件は,医薬品事業を営むキリンファーマ株式会社(以下「キリンファー
マ」という。
)と同業を営む協和発酵の合併(平成20年10月1日付けで合
併。協和発酵は,協和発酵キリン株式会社(以下「協和発酵キリン」という。)
に商号変更。)を柱とする両グループの資本提携の一環として,キリンHDが
協和発酵の株式を段階的に50%を超えて取得したものである。
なお,両グループは,医薬品事業以外にも共通する分野が多いことから,
今後順次,それぞれの事業統合や連携を進めることとしている。
第2
1
独占禁止法上の考え方
重点的に審査を行った一定の取引分野
本件においては,当事会社グループ間で競合する製品が多数に上るが,競
争に及ぼす影響が大きいと考えられる以下の6品目(概要は別紙1及び2)
について,詳細に検討した。
(1) 遺伝子組換え型ヒト顆粒球コロニー形成刺激因子製剤(以下「G−CS
F」という。)
(2) 酒類原料用アルコール
(3) 清酒タイプ・みりんタイプ発酵調味料(業務用・加工用)
(4) ワインタイプ発酵調味料(業務用・加工用)
(5) グルタミン酸ナトリウム(以下「MSG」という。)
(6) 複合うまみ調味料(業務用・加工用)
問い合わせ先
ホームページ
公正取引委員会事務総局経済取引局企業結合課
電話 03−3581−3719(直通)
http://www.jftc.go.jp
1
2
独占禁止法上の評価
(1) G−CSF
ア 単独行動による競争の実質的制限について
(ア)本件企業結合後,G−CSFの市場における当事会社グループの市
場シェアは約60%・第1位となり,当該市場におけるメーカーの数
は2社のみとなる。キリンファーマが開発中の「KRN125」
(持続
型G−CSF)による潜在的な競合もあることを考慮すれば,当事会
社グループへの市場集中度は将来的に更に高まる可能性がある。
(イ)協和発酵が製造販売している「ノイアップ」は,キリンファーマが
製造販売している「グラン」,競争事業者A社が製造販売しているα医
薬品に2年半遅れてG−CSFの市場に参入してシェアを拡大したが,
本件企業結合により,ノイアップがそれまで有してきた競争を促進す
る効果が失われ,医療機関に納入される実勢価格に影響が及ぶおそれ
がある。
(ウ)G−CSFは,バイオテクノロジー応用医薬品(以下「バイオ医薬
品」という。)であるところ,バイオ医薬品の後発医薬品に相当するバ
イオ後続品を開発することは,一般的な化学合成医薬品の後発医薬品
と異なり,多くの時間と費用を要し,容易に参入できない。
(エ)がん化学療法に伴う重大な副作用である感染症を治療・予防する薬
剤としては抗生物質があるが,G−CSFと抗生物質は補完的に使用
されており,代替的に使用されているとはいい難いことから,隣接市
場からの十分な競争圧力が期待できる状況にない。
(オ)医療用医薬品はその性質上,需要者である患者や医師から製薬会社
への競争圧力は働きにくい状況となっている。
以上のことから,当事会社グループの単独行動により,一定の取引分
野における競争を実質的に制限することとなるおそれがあると考えられ
る。
イ
協調的行動による競争の実質的制限について
本件企業結合により,G−CSFの市場におけるメーカーの数が3社
から2社へと減少すること,前記ア(ウ)及び(エ)のとおり,新規参
入の可能性が当分期待できないこと及び隣接市場や需要者からの競争圧
力も働きにくいことから,当事会社グループと競争事業者の協調的行動
に対する十分な牽制力が働かないと考えられる。
よって,当事会社グループと競争事業者の協調的行動によって一定の
取引分野における競争を実質的に制限することとなるおそれがあると考
えられる。
(2) 酒類原料用アルコール
ア 単独行動による競争の実質的制限について
2
本件企業結合により,酒類原料用アルコールの市場における当事会社
グループの市場シェアは約65%に達することとなる。需要者の大半は
中小の清酒製造業者等であり,メーカーとの長期的な取引関係の継続を
重視する傾向が強いことから,需要者による価格交渉力は弱いと考えら
れる。
しかしながら,シェア10%超の有力な競争事業者が複数存在するこ
と,競合他社に一定程度の供給余力が認められ,かつその増大が見込ま
れること,今後は工業用発酵アルコールが酒類の製造用途にも普及する
可能性があること,今後の関税の低下により製品アルコールの輸入が増
える可能性があることから,当事会社グループの単独行動により,一定
の取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと考えら
れる。
イ
協調的行動による競争の実質的制限について
本件企業結合により,少数の有力な事業者に市場シェアが集中するこ
ととなる。需要者の大半は中小の清酒製造業者等であり,価格交渉力が
弱いものの,前記アに掲げた要因に加えて,新工場建設を計画している
競争事業者及び大きな供給余力を有する工業用発酵アルコール事業者が
存在し,本取引分野における事業者間の利害が共通ではないとみられる
ことから,協調的行動をとる誘因が小さいと考えられる。したがって,
当事会社グループと競争事業者の協調的な行動によって一定の取引分野
における競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。
(3) 清酒タイプ・みりんタイプ発酵調味料及びワインタイプ発酵調味料
ア 単独行動による競争の実質的制限について
本件企業結合により,清酒タイプ・みりんタイプ発酵調味料及びワイ
ンタイプ発酵調味料の各市場における当事会社グループの市場シェアは
それぞれ約45%・第1位,約55%・第1位となる。
しかしながら,シェア10%超の有力な競争事業者が存在すること,
清酒タイプの発酵調味料であれば輸入の可能性があること,清酒タイ
プ・みりんタイプ発酵調味料については清酒又は酢の製造業者が,ワイ
ンタイプ発酵調味料についてはワイン製造業者が,既存の製造設備及び
ノウハウを活用して参入することが比較的容易であると考えられること,
隣接市場として,清酒タイプ・みりんタイプ発酵調味料に対しては,清
酒,合成清酒,本みりん及びみりん風調味料が,ワインタイプ発酵調味
料に対しては安価ワインがあり,これらの商品は清酒タイプ・みりんタ
イプ発酵調味料及びワインタイプ発酵調味料の価格上昇に対する牽制力
となり得ると考えられること,ユーザーは加工食品メーカーや外食産業
であり,価格交渉力が強いと考えられることから,当事会社グループの
3
単独行動により,一定の取引分野における競争を実質的に制限すること
とはならないと考えられる。
イ
協調的行動による競争の実質的制限について
本件企業結合により,清酒タイプ・みりんタイプ発酵調味料及びワイ
ンタイプ発酵調味料の各市場における当事会社グループを含めた上位3
社の累積市場シェアはそれぞれ約60%,約90%となり,市場集中度
が高まる。しかしながら,前記アに掲げた要因のほか,発酵調味料につ
いては各事業者ごとに多様な製品を製造しており,カスタムメイド品も
存在することから,各事業者の製造する製品が同質的ではなく,協調的
行動の誘因が少ないこと,また,業務用・加工用ユーザーに対しては相
対取引で価格交渉されており,競合他社の取引条件に関する情報が容易
に入手できる状況にはないことから,当事会社グループと競争事業者の
協調的行動によって一定の取引分野における競争を実質的に制限するこ
ととはならないと考えられる。
(4) MSG
ア 単独行動による競争の実質的制限について
本件企業結合により,MSGの市場における当事会社グループの市場
シェアは約35%・第1位となるものの,シェア10%超の有力な競争
事業者が複数存在すること,海外メーカー品の直接輸入が増えており,
今後も日本市場における価格の動向によっては容易に輸入が増大し得る
状況にあること,ユーザーである加工食品メーカーは価格交渉力が強い
ことから,当事会社グループの単独行動により,一定の取引分野におけ
る競争を実質的に制限することとはならないと考えられる。
イ
協調的行動による競争の実質的制限について
前記アを勘案すれば,本件企業結合により,当事会社グループと競争
事業者の協調的行動によって一定の取引分野における競争を実質的に制
限することとはならないと考えられる。
(5) 複合うまみ調味料
ア 単独行動による競争の実質的制限について
本件企業結合により,複合うまみ調味料の市場における当事会社グル
ープの市場シェアは約30%・第2位となるものの,シェア10%超の
有力な競争事業者が存在すること,複合うまみ調味料の価格が上昇した
際には,複合うまみ調味料の代わりに,単体のMSG及び核酸系調味料
を調達することが考えられ,隣接市場として一定の競争圧力を有すると
考えられること,ユーザーである外食産業等は価格交渉力が強いことか
4
ら,当事会社グループの単独行動により,一定の取引分野における競争
を実質的に制限することとはならないと考えられる。
イ
協調的行動による競争の実質的制限について
前記アを勘案すれば,本件企業結合により,当事会社グループと競争
事業者の協調的行動によって一定の取引分野における競争を実質的に制
限することとはならないと考えられる。
(注)なお,MSG及び複合うまみ調味料については,垂直型企業結合の観点からも検討を行った
が,競争を実質的に制限することとはならないと判断した。
3
当事会社グループが申し出た問題解消措置及びその評価
(1) 当事会社グループが申し出た問題解消措置
当委員会の調査過程において,G−CSFの取引分野における競争上の
懸念を指摘したところ,当事会社グループから,以下の内容を含む問題解
消措置の申出がなされた。
協和発酵キリンが製造販売しているノイアップ固有の研究開発及びノイ
アップの製造販売に係る権利等(薬事法上の製造販売承認取得者の地位を
含む。)を第三者たる製薬会社に可能な限り速やかに譲渡,利用許諾等(以
下「本件譲渡」という。)を行う(平成21年9月末までに本件譲渡に係る
契約を締結し,平成22年3月末までに本件譲渡を実行する。)。
(2) 上記措置を踏まえた独占禁止法上の評価
当事会社グループから申出のあった問題解消措置においては,薬事法上
の製造販売承認取得者の地位を承継させることを確約しており,ノイアッ
プの製造販売を行えるのは譲受先のみとなる。譲受先はノイアップの製造
を自社で行うか,他社に委託するかを選択することが可能となるところ,
本件問題解消措置においては,譲受先が希望すれば,当事会社グループに
製造委託を行うことも可能な措置内容となっている。したがって,当該問
題解消措置により,譲受先は,新規の競争者としてノイアップの製造販売
を独立して行うことが可能となり,これによって本件企業結合前の競争状
況をほぼ回復できると考えられる。
第3
結論
以上の状況から,当事会社グループが申し出た措置が確実に履行されるの
であれば,本件企業結合により,G−CSFの取引分野における競争を実質
的に制限することとはならないものと判断した。
なお,当事会社グループが申し出た問題解消措置の実施を確実なものとす
5
るため,必要に応じて,当事会社グループから報告を受けること等により,
その履行状況を監視するとともに,G−CSFの市場における競争状況につ
いても十分に把握・監視していくこととする。
以上
6
別紙1
重点的に審査を行った対象分野
取引分野
G−CSF
酒類原料用アルコール
清酒タイプ・みりんタイ
プ発酵調味料(業務用・
加工用)
ワインタイプ発酵調味料
(業務用・加工用)
MSG
複合うまみ調味料(業務
用・加工用)
概要
白血球の一種である好中球の分化・増殖を促進する効果を有
する医療用医薬品であり,がん化学療法(抗がん剤の投与によ
るがんの治療方法)による好中球減少症や造血幹細胞移植時の
好中球数の増加促進等に使用される。
平成19年度の市場規模は約372億円である。
酒税法上の「原料用アルコール」を指し,「アルコール含有
物を蒸留したもので,アルコール分が45度を超えるもの」と
定義されている。酒税法上の原料用アルコール製造免許を保有
する製造業者が製造し,清酒や連続式蒸留しょうちゅう(甲類
焼酎)等の酒類の原料として使用される。
食品用途や化学用途に使用される工業用発酵アルコールと
物質的には同等であるが,工業用発酵アルコールはアルコール
事業法の規制を受けるのに対して,酒類原料用アルコールは酒
税法の規制を受けるため,製造免許や管理手続等が異なる。
酒類原料用アルコールの一部は,酒類原料用アルコールの製
造業者が自社の酒類製造のために自家消費しており,残りが他
の酒類製造業者に対して販売されている。
平成18年度の市場規模は約77億円である。
発酵調味料とは,米,でんぷん,糖類などを発酵,熟成させ
たものであり,アルコール分を含有しているにもかかわらず,
酒税法上の「不可飲処置」として加塩することにより,酒類に
該当しない調味料である。発酵調味料は,主として「清酒タイ
プ」,「みりんタイプ」及び「ワインタイプ」に区分される。
清酒タイプ発酵調味料,みりんタイプ発酵調味料及びワイン
タイプ発酵調味料は,それぞれ清酒,本みりん,ワインと代替
的に使用することも可能である。
平成18年度の市場規模は約100億円である。
製品概要については,上記参照。
平成18年度の市場規模は約10億円である。
アミノ酸の一つであるグルタミン酸の化合物であり,昆布の
うまみ成分を有した白色の粉末調味料である。料理や食品に添
加することで,昆布からだしをとった場合に得られるのと同様
の風味を料理等に手軽につけることができる。
平成18年度の市場規模は約125億円である。
MSGと核酸系調味料(※)を混合した複合調味料である。
これらを混合することにより,著しくうまみが増大する。
平成18年度の市場規模は約54億円である。
(※)煮干,かつお節等のうまみ成分である「イノシン酸ナトリウム」及
びしいたけのうまみ成分である「グアニル酸ナトリウム」を同量ずつ
含む混合体を「リボヌクレオタイドナトリウム」といい,これらを総
称したものを「核酸系調味料」という。
(注)市場規模は,当事会社から提出された資料に基づいて算出したものを,当委員会において概数とし
て表記している。
1
別紙2
各取引分野における市場の概況
(1)G−CSF
順位
1位
2位
3位
(1位)
会社名
キリンファーマ
A社
協和発酵
当事会社合算
合計
シェア
約45%
約40%
約15%
約60%
100%
(出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)
(2)酒類原料用アルコール
順位
1位
2位
3位
4位
5位
(1位)
会社名
協和発酵
メルシャン
B社
C社
D社
その他
当事会社合算
合計
シェア
約35%
約35%
約15%
約10%
約5%
約5%
約65%
100%
(出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)
(3)清酒タイプ・みりんタイプ発酵調味料
順位
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
(1位)
会社名
協和発酵フーズ
メルシャン
E社
F社
G社
H社
I社
キリンフードテック
その他
当事会社合算
合計
シェア
約25%
約15%
約15%
約5%
約5%
約5%
約5%
約5%
約25%
約45%
100%
(出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)
2
(4)ワインタイプ発酵調味料
順位
1位
2位
3位
4位
5位
(1位)
会社名
メルシャン
J社
協和発酵フーズ
K社
L社
その他
当事会社合算
合計
シェア
約45%
約30%
約5%
約5%
約5%
約10%
約55%
100%
(出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)
(5)MSG
順位
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
(1位)
会社名
M社
N社
協和発酵フーズ
キリンフードテック
O社
P社
味日本
その他
当事会社合算
合計
シェア
約30%
約25%
約20%
約20%
約10%
約5%
0∼5%
0∼5%
約35%
100%
(出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)
(6)複合うまみ調味料
順位
1位
2位
3位
4位
5位
(2位)
会社名
Q社
キリンフードテック
R社
S社
協和発酵フーズ
当事会社合算
合計
シェア
約50%
約25%
約10%
約10%
約10%
約30%
100%
(出所:当事会社提出資料を基に当委員会にて作成)
(注1)アルファベット等(A,B,C等)に置き換えることにより,競争事業者名等を伏せている。
(注2)市場シェアは,当事会社グループから提出された資料に基づいて算出したものを,当委員会において
概数として表記している。その際,原則として5%単位で表記している。
(注3)キリンファーマ株式会社及びキリンフードテック株式会社は,キリンHDが議決権をそれぞれ10
0%保有している子会社である。また,メルシャン株式会社は,キリンHDが議決権を50.12%保
有している子会社である。
(注4)協和発酵フーズ株式会社は,協和発酵が議決権を100%保有している子会社である。また,味日本
株式会社は,協和発酵フーズ株式会社が議決権を46%保有している持分法適用会社である。
(注5)酒類原料用アルコール及びMSGの市場シェアは,自社の関連会社で自家消費している場合があり,
当該自家消費分を除いて算出したものである。
3
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