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射出成形過程における成形品板厚方向の固化層観察 Visualization of
射出成形過程における成形品板厚方向の固化層観察 Visualization of Thickness Direction during Injection Molding Key words: (金沢工大 Injection Molding/Visualization/Resin Flow/Solidification 院)○(学)熊谷 吉郎 (金沢工大)町谷 (金沢工大)(正)瀬戸 雅宏 (正)山部 1.緒言 善幸 昌 は高射出率の実験を行うと成形品板厚方向で光 射出成形品のそり変形を精度よく予測するた 量が不均一になるため可視化実験が困難であっ めには,成形時における成形品温度分布はもち た.これより金型キャビティ側にコア側と同様 ろん,成形品板厚方向の線膨張係数分布を予測 の光源取り入れ用の機構を設け実験を行った. する必要がある.筆者らはこれまで,非晶性材 また,高速度カメラもこれまで 1 秒間 240 コマ 料について成形過程中の金型内樹脂流動観察を のものからカラー撮影ができ 1 秒間 500 コマ以 行い,成形品板厚方向の樹脂流速分布によって 上 も の が 必 要 で あ る と 考 え , MEMRECAM 生じるせん断応力と分子配向,線膨張係数の関 ci-Expo( (株)ナックイメージテクノロジー製) 係について検討してきた.その結果,樹脂の固 を用いた. 液境界付近で高いせん断応力が発生し,また, せん断応力から分子配向度,線膨張係数を予測 1) できることを明らかにしてきた . 供試材料は日本ポリスチレン株式会社製,ポ リスチレン,使用グレード G690N を用いた. 2-2.樹脂流動速度測定 このように,成形品板厚方向の線膨張係数分 樹脂流動速度を測定するため光切断法及び 3) を用いて行った.光切断法はキャビテ 布を予測するためには,樹脂の固化層成長を含 PIV 法 めた樹脂流速の予測が重要である.しかし,こ ィ壁面の一部にアクリルブロックを用いた金型 れまでの板厚方向の可視化実験は,観察の困難 を使用し成形品の板厚方向からシート状の光源 さから実際の成形よりも低射出率で検討してい を成形過程にある樹脂に照射し,照射した場所 たため 1)2) ,実際の成形のような高射出率での 固化層成長を把握できていなかった. に高速度カメラの焦点を合わせることにより任 意の点を撮影できる方法である.PIV 法は光切 本研究では,高射出率の条件でも金型内の樹 断法によって得られた任意の場所の樹脂流速を 脂流動の可視化観察が行えるように,金型およ 測定するために,樹脂の流れの場に追跡用粒子 び実験設備を改良し,種々の射出率条件での樹 を混入し光源を用いて 2 コマ以上の瞬間映像を 脂流動および固化層の成長挙動を観察し,各条 撮影し,画像処理により 2 次元的な粒子位置を 件での比較を行ったので報告する. 測定し流速分布を求める方法である. 2.実験方法 3.実験結果および考察 2-1.実験設備 樹脂流動速度分布および固化層 従来の可視化用金型では金型内への光源取り PIV 法を用いて算出した樹脂流動速度分布を 入れはコア側からだけであったが,この方法で Fig.1 に示す. (a)は射出率 5.88[cm3/s]でこ Yoshiro Kumagai*, Yosiyuki Machiya, Masahiro SETO, Masashi YAMABE: Department Engineering, Kanazawa of Material Design Institute Technology,*3-1Yatsukaho, Mattou, 924-0838, Japan, Tel. 076-274-9258, Fax. 076-274-9251 E-mail: [email protected] of れまでの可視化実験と同様,低射出率で実験を , 行った結果であり, (b)は射出率 17.64[cm3/s] (c)は射出率 29.40[cm3/s]とこれまでの可 視化実験よりも射出率を高くしたときの樹脂流 速分布の結果である.ともに縦軸に流動速動を 示し,横軸に成形品板厚方向の位置を示す.FF (Flow Front)通過直後では樹脂は成形品板厚 化させると,射出率が低い条件の方が,固化層 方向全体にほぼ均等に流れ,その後充填が進む が厚くなっている. につれ樹脂流動速度は上昇する.最も樹脂流動 また,Fig.1 の樹脂流速が最大値を示したと 速度が上昇したときの樹脂流速は FF 通過直後 (b) で 3.528[cm3], きの射出量は (a) で 2.94[cm3], の樹脂流速と比較し(a) で約 30%, (b) で約 20%, (c)で 2.94[cm3]とほぼ同等である.先に述べ (c)で約 10%上昇している. たように同じ射出量では射出率が低い条件で固 また Fig.2 は射出量ごとの固化層成長を示し 化が速く進むことから,低射出率の FF 通過直後 たものである.縦軸に成形品板厚方向の位置を の樹脂流速と樹脂流速の最大値の差が高射出率 示し,横軸は測定時間に射出率を掛けることに の差より大きくなっているのは低射出率では固 より算出した射出量を示している.射出率を変 化層成長が速く流動領域が狭くなったためであ ると考えられる. 0.0[s] 0.5[s] 1.0[s] Core 50 0.5 0.0 -0.5 -1.0 Cavity -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 Core Thickness of cavity[mm] Cavity 3 250 (a)Injection rate 5.88[cm /s] -1.5 0 Fig.2 3 6 9 12 15 17..232 The injected volume[cm3] Comparison with solidification layer 0.0[s] 0.2[s] 0.5[s] 200 4.結言 150 (1) 高射出率の条件で可視化実験を行う ことができた. 100 (2) 射出率を高くすることにより樹脂流速 50 0 -1.5 Cavity の FF 通過直後と最大値の差が小さく なった. -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 Core Thickness of cavity[mm] (3) 射出率を変化させたときの樹脂流速の 最大値の変化は固化層の成長と関係が 3 400 Flow velocity ofresin[mm/s] 5.88[cm3/s] 17.64[cm3/s] 29.40[cm3/s] 1.0 0 -1.5 Flow velocity ofresin[mm/s] 1.5 solidification[mm] Flow velocity ofresin[mm/s] 100 (b)Injection rate 17.64[cm /s] 0.0[s] 0.1[s] 0.2[s] 300 ある. 謝辞 本研究を遂行するにあたり,東京大学 横井 秀俊先生および東京工業大学佐藤勲先生ご助 200 言をいただいたことに深謝いたします. 100 参考文献 0 -1.5 Cavity -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 Thickness of cavity[mm] 1.5 1) 瀬戸雅宏・山部昌,成形加工,15,5,363(2003) Core 2) 瀬戸雅宏・山部昌,成形加工 3) 横井秀俊ら,成形加工 (c)Injection rate 29.40[cm3/s] Fig.1 Measurement of the resin flow velocity ‘00,273(2000) ’90,P143(1990)