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平成 27 年度 エネルギー需給緩和型インフラ・システム

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平成 27 年度 エネルギー需給緩和型インフラ・システム
平成 27 年度
エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業
(円借款・民活インフラ案件形成等調査)
タイ:地方部における上下水道整備、工業地帯向け環境対策事業調査報告書
経
平成28年2月
済
産
業
委託先 :
丸紅株式会社
日本工営株式会社
1
省
禁転載
2
ま え が き
本報告書は、経済産業省から丸紅株式会社、日本工営株式会社が平成 27 年度の事業として受託した
「平成 27 年度エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業(円借款・民活インフラ案件
形成等調査)
」の成果をとりまとめたものです。
本調査「タイ:地方部における上下水道整備、工業地帯向け環境対策事業調査報告書」は、タイ地方
部における給水エリア拡大/給水サービス向上、タイ下水道インフラ整備、タイ国内工業地帯向け環境
対策のそれぞれにおける対象事業の課題抽出、優先案件の選定を踏まえた基本設計書の作成、実施可能
性検討調査したものです。
本報告が上記プロジェクト実現の一助となり、加えて我が国関係者の方々のご参考になることを希望
します。
平成 28 年 2 月
丸紅株式会社
日本工営株式会社
3
プロジェクト地図
4
略語表
略語
AC
AEC
ASEAN
B.E.
BMA
BOD
BOI
BOT
COD
DBO
DD
DMA
EBITDA
正式名称
EGCO
EHIA
EIA
EIEB
EIRR
EMP
EPA
EPC
FIRR
FS
GDP
GRP
Asbestos Cement
ASEAN Economic Community
Association of Southeast Asian Nations
Buddhist Era
Bangkok Metropolitan Administration
Biochemical Oxygen Demand
Board Of Investment
Build Operate Transfer
Chemical Oxygen Demand
Design Build and Operate
Detail Design
District Metered Area
Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and
Amortization
The Electricity Generating Public Company Limited
Environmental and Health Impact Assessment
Environmental Impact Assessment
Environmental Impact Evaluation Bureau
Economic Internal Rate of Return
Environmental Management Plan
Environmental Protection Area
Engineering, Procurement and Construction
Financial Internal Rate of Return
Feasibility Study
Gross Domestic Product
Glass fiber Reinforced Plastics
HCN
HDPE
HHM
H2S
IEAT
IEE
IMF
IPO
IPP
LGO
MCM
MLR
MNRE
MOF
MOI
MOU
MP
MWA
NEB
NHA
NCPO
Hydrogen Cyanide
High Density Polyethylene
Hua Hin Municipality
Hydrogen Sulphide
Industrial Estate Authority of Thailand
Initial Environmental Examination
International Monetary Fund
Initial Public Offering
Independent Power Producer
Local Government Organizations
Million Cubic Meters
Minimum Lending Rate
Ministry of Natural Resources and Environment
Ministry of Finance
Ministry of Interior
Memorandum of Understanding
Master Plan
Metropolitan Waterworks Authority
National Environmental Board
National Housing Authority
National Council for Peace and Order
5
日本語訳
アスベスト
アセアン経済共同体
東南アジア諸国連合
仏滅紀元
バンコク首都圏庁
生物化学的酸素要求量
投資委員会
建設・運営・譲渡
化学的酸素要求量
設計・建設・運営
詳細設計
配水管理区域
利払い前税引き前償却
前利益
EGCO 社
環境健康影響評価
環境影響評価
環境影響評価事務局
経済的内部収益率
環境計画
環境保全地域
設計・調達・建設
財務的内部収益率
事業化調査
国内総生産
ガラス繊維強化プラス
チック
シアン化水素
高密度ポリエチレン
フアヒン自治体
硫化水素
工業団地公社
初期的環境影響評価
国際通貨基金
株式新規公開
独立系発電事業者
地方自治体
百万立方メートル
優遇貸出金利
天然資源・環境省
財務省
内務省
了解覚書
マスタープラン
首都圏水道公社
国家環境委員会
国家住宅公社
国家平和秩序評議会
NEQA
NESDB
NHA
NRC
NRW
JBIC
JETRO
JICA
O&M
OD
ONEP
The Enhancement and Conservation of National
Environmental Quality Act
National Economic and Social Development Board
National Housing Authority
National Reform Council
Non Revenue Water
Japan Bank for International Cooperation
Japan External Trade Organization
Japan International Cooperation Agency
Operation and Maintenance
Oxidation Ditch
PCD
pH
PWA
RAP
RBC
RID
RO
SEPO
SPC
SS
THBFIX
TDS
TISI
TKN
TRIS
UF
UU
Office of Natural Resources and Environmental
Policy and Planning
Pollution Control Department
potential Hydrogen
Provincial Waterworks Authority
Resettlement Action Plan
Rotating Biological Contactor
Royal Irrigation Department
Reverse Osmosis
State Enterprise Policy Office
Special Purpose Company
Suspended Solids
Thai Baht Interest Rate Fixing
Total Dissolved Solids
Thai Industrial Standards Institute
Total Kjeldahl Nitrogen
Thai Rating and Information Services Co., Ltd.
Ultra Filtration
Universal Utilities Limited
VAT
WMA
WTP
WWTP
Value Added Tax
Wastewater Management Authority
Water Treatment Plant
Wastewater Treatmtment Plant
6
国家環境保全推進法
国家経済社会開発局
国家住宅公社
国家改革評議会
無収水
国際協力銀行
日本貿易振興機構
国際協力機構
運転維持管理
オキシデーションディ
ッチ(酸化溝法)
天然資源・環境政策計画
局
公害管理局
水素イオン指数
地方水道公社
住民移転計画書
回転生物接触法
王室灌漑局
逆浸透
国営企業政策局
特別目的会社
浮遊物質
タイ指標金利
総溶解固形分
タイ工業標準局
ケルダール窒素
トリス・レーティング社
限外ろ過膜
ユニバーサルユーティ
リティ社
付加価値税
下水道公社
浄水場
下水処理場
目次
まえがき
プロジェクト地図
略語表
目次
要約
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
プロジェクトの背景・必要性等 ··············································
プロジェクト内容決定に関する基本方針········································
プロジェクトの概要··························································
実施スケジュール ··························································
実施に関するフィージビリティ ··············································
我が国企業の技術面等での優位性··············································
案件実現までの具体的スケジュールおよび実現を阻むリスク······················
調査対象国内での事業実施地点が分かる地図····································
10
10
10
11
12
13
14
15
第1章
(1)
(2)
(3)
相手国・セクターの概要
相手国の経済・財政事情······················································
プロジェクトの対象セクターの概要············································
対象地域の状況······························································
17
20
39
第2章
(1)
(2)
(3)
調査方法
調査内容·
·
調査方法・体制·····························································
調査スケジュール···························································
43
43
43
第3章
(1)
(2)
(3)
プロジェクトの内容および技術的側面の検討
プロジェクトの背景・必要性等···············································
プロジェクトの内容等決定に必要な各種検討···································
プロジェクトの計画概要·····················································
47
51
78
第4章
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
環境社会的側面の検討
環境社会面における現状分析·················································
81
プロジェクトの実施に伴う環境改善効果·······································
91
プロジェクトの実施に伴う環境社会面への影響·································
92
相手国の環境社会配慮関連法規の概要およびそのクリアに必要な措置············· 105
プロジェクトの実現のために当該国(実施機関その他関係機関)が成すべき事項··· 117
第5章 財務的・経済的実行可能性
(1) 事業費の積算······························································· 119
(2) 予備的な財務・経済分析の結果概要··········································· 119
第6章 プロジェクトの実施スケジュール
(1) プロジェクトの実施スケジュール············································· 124
第7章
(1)
(2)
(3)
相手国側実施機関の実施能力
相手国実施機関の概要······················································· 127
相手国の組織体制··························································· 131
相手国実施機関の能力評価と(不十分な場合は)対応策························· 134
第8章 我が国企業の技術面等での優位性
(1) 想定される我が国企業の参画形態(出資、資機材供給、施設の運営管理等)
········ 136
7
(2) 当該プロジェクト実施に際しての我が国企業の優位性(技術面、経済面)·········· 136
(3) 我が国企業の受注を促進するために必要な施策································· 138
第9章
(1)
(2)
(3)
プロジェクトの資金調達の見通し
資金ソースおよび資金調達計画の検討········································· 140
資金調達の実現可能性······················································· 140
キャッシュ・フロー分析····················································· 141
第10章 案件実現に向けたアクションプランと課題
(1) 当該プロジェクトの実施に向けた取り組み状況·································
(2) 当該プロジェクトの実現に向けた相手国の関係官庁・実施機関の取り組み状況·····
(3) 相手国の法的・財務的制約等の有無···········································
(4) 追加的な詳細分析の要否····················································
8
143
143
143
144
要約
9
(1)プロジェクトの背景・必要性等
タイの上下水市場は、ASEAN 諸国の中でも上水普及の地域格差が大きく、下水の普及が依然として遅
れている。また、2011 年には洪水、2015 年には渇水の被害を受けており、安全で持続可能な水利用が
喫緊の課題となっている。
これらの課題への対応策として、イーストウォーター社は、給水・下水処理・再生水といった新たな
事業分野で事業計画を立案中である。尚、イーストウォーター社は、地方水道公社を筆頭株主とし、日
系企業が多数進出している東部臨海地域において、工業団地や地方水道公社等に対して原水供給を主に
手掛けている。
タイにおいて上下水市場の課題を解決することは、タイ国民の生活の質が向上するのみならず、進出
日本企業の水事情を安定させ、国際的なサプライチェーンの維持に寄与することから、実現は必要であ
る。
以上から、丸紅株式会社は、日本工営株式会社と共同で、イーストウォーター社の有する事業計画か
ら、優先的に行うべき案件(以下「優先案件」と表記)を実現可能性と経済性の観点から選定し、優先
案件の実現に向けた分析と提言を行った。尚、丸紅株式会社は、海外で水事業の豊富な経験を有し、日
本の技術及び制度金融に通じている。
優先案件には、①フアヒン上下水案件、②パタヤ特別市再生水・下水案件、③バンコク首都圏庁小規
模下水案件を選定した。イーストウォーター社は、施設建設のみならず完工後の施設運営までを民間事
業として想定しており、資金調達は日本の政府系金融を含め検討している。
本調査報告書は、優先案件選定過程、各優先案件の基本設計書、実施可能性結果を記載した。
(2)プロジェクト内容決定に関する基本方針
優先案件は政府事業に該当するが、建設から完工後の運営までを民間企業が実施することを想定して
おり、事業額が 10 億バーツを超える場合には、PPP 事業の形式が採られることとなる。
本調査は、事業性調査の初期の段階であることと、PPP 法を含めた水関連の法規制の全体像を把握す
ることを考慮し、以下の基本方針で調査を実施した。
・法規制、関連組織、上位計画等のマクロ情報を整理する。
・対象地域の既存施設、タリフに関する現状把握、課題抽出を行う。
・需要予測、及び概略設計を行う。
・概略に基づいた積算、経済分析を行う。
・イーストウォーター社、地方自治地体との緊密な連携を通じて信頼関係を醸成する。
(3)プロジェクトの概要
プロジェクトの概要は以下の通りである。
1) フアヒン上下水案件
フアヒン自治体はタイを代表する観光都市であるが、給水システムに関して、水道普及率は 60%であ
り、また 48%に上る高い無収水率、O&M 能力不足が課題になっている。下水については、自治体中心部
の処理システムは機能しているものの、周辺地区の整備が課題となっており、特に Khao Tao 地区での
汚染の度合いが大きいため、同地区の下水整備が最優先課題となっている。
上水分野の事業は、供給能力の拡大を目的とした浄水場建設、送水管の敷設、及び約 80km のアスベ
スト管の交換、DMA 設定による無収水削減事業であり、建設・運営も含めている。尚、浄水場建設、送水
管の敷設は、需給状況にあわせてフェーズを二段階に分けて実施する計画にしている。
下水分野は、Khao Tao 地区の下水道システムの構築、下水マスタープランの更新及びサービス向上の
ための既存下水施設の更新となっている。
本案件が実現した際には、タイに対しては、上下水道サービスの改善、環境改善、タイ有数の観光都
市であるフアヒン自治体の観光価値向上が期待される。また、日本にとっての裨益として、下水料金未
回収の問題を抱える他の地方自治体へのコンセッション事業の横展開、本邦からの管網維持管理、下水
処理運営ノウハウの提供等が期待される。
2) パタヤ再生水・下水案件
パタヤ特別市は、タイ有数の観光都市であり、且つ日本企業が多数進出する工業団地が周辺に多く存
10
在している。同市では、周辺の新規水源開発の余地が減少しており、一方で需要は拡大基調が続くこと
が予測されることから、持続可能な水利用が課題となっている。
下水では、既存の下水処理能力が流入量を下回っており、これに対応するものとして拡張案件を提案
する。
再生水分野では、既存下水処理場の処理排水を工場向けに再生水利用する計画を提案する。パタヤ特
別市を含むチョンブリー県、ラヨーン県では、2027 年頃には水需給逼迫に直面する可能性が有り、新た
な原水供給源として再生水利用を提案するものである。
本案件が実現した際には、タイに対しては、安定した水供給源の確保、タイ有数の観光都市であるパ
タヤ特別市の観光価値向上が期待される。また、日本の裨益として、UF 膜の供給、再生水事業の横展開、
パタヤを含む東部臨海地域に進出する日系企業に対する安定した水供給が期待される。
3) バンコク首都圏庁小規模下水案件
バンコク首都圏では、水路の汚染、下水料金徴収未実施等が課題となっている。
バンコク首都圏庁との協議の結果、12 ある住宅開発エリアのうち、水路汚染の度合が大きく、緊急性
が高い Rom Klao 下水処理場の拡張事業を優先的に取り組むべき案件とする。
下記表 1 に具体的に行う事業の詳細を列挙する。フアヒン上下水案件は、新規上水供給、無収水削減、
下水処理場新設、下水マスタープランの更新、既存処理場のリハビリ等から成る。パタヤ再生水・下水
案件は、再生水プラント、下水処理場新設などから成る。バンコク首都圏庁小規模下水案件は、小規模
下水処理場の新設から成る。
No
1
2
3
表 1 プロジェクトの概要
プロジェクト
概要
フアヒン上下水案件
上水
新規上水供給
 送水管:口径 1,000mm、長さ=1.2km
 浄水場:48,000 m3/d(フェーズ 1)
48,000 m3/d(フェーズ 2)
 送水管:口径 900mm、長さ=29.3km(フ
ェーズ 1)、口径 900mm、長さ=29.3km(フ
ェーズ 2)
無収水削減
 アスベスト管の交換:長さ=80km
 DMA 設定
下水
Khao Tao 地域の下水改善  下水管:口径 600mm-800mm、長さ
=3.5km
 下水処理場:2,360 m3/d、敷地 1.2ha
下水マスタープランの更 下水発生量の予測及び必要となる下水
新
施設の更新
既存下水処理場のリハビ 収集システムと下水処理場の運転状況
リ
の調査
O&M 能力向
 研修制度
上
 日本からの技術移転
パタヤ再生水・下水案件
水供給
再生水
 再生水:15,000 m3/d
 送水管:口径 500mm、長さ=20.7km
 加圧ポンプ(1 台稼動、1 台予備)
下水
下水拡張
 下水処理場:65,000 m3/d
バンコク首都圏庁小規模下水案件
下水
Rom Klao 下水システム
 下水処理場:9,500 m3/d(フェーズ 1)、
9,500 m3/d(フェーズ 2)
 既存の下水収集状況の調査
本調査で提案された上水、下水ならびに再生水施設の建設・改良事業は、案件対象の当該地域におい
て、各々の案件内容に基づいた、水質の改善を含む上下水処理能力の向上を可能とする。これらは副次
的に、当該地域の増加する水需要ならびに汚染の軽減/防止に貢献する。
総論として、本対象プロジェクトは、主に以下の様な生活様式や生計といった環境改善効果が期待で
11
きる。
 上水の供給能力及び対象地域の増加、ならびに、下水処理能力の向上により、本プロジェクト対
象地区の周辺ならびに下流の住民/コミュニティの生活の向上に寄与する。
 地域への上水の供給が安定かつ向上することによる、生活利用水ならびに経済産業利用水の増加
(特に、上水事業、再生水事業の場合)。
 下水処理能力の向上により、地域コミュニティにおける、衛生状況の向上、水由来の感染病等の
軽減/防止への寄与(特に、下水事業の場合)。
現時点で、技術的には、適切な緩和策が採用および実行されるのであれば、本関連プロジェクトの建
設および操業による深刻な悪影響は予想されない。3 つの対象案件のうち、環境保全地域の規定により、
フアヒン下水案件が IEE レベル、パタヤの再生水案件が EIA レベルの調査が必要となる。
(4)実施スケジュール
実施スケジュールは、案件ごとに異なるが、2016 年度に最も進捗の早い事業の詳細な事業化調査が行
われる前提で、下記の実施スケジュールを想定した。本プロジェクトでは、2018 年建設、2020 年度か
らの運営開始を想定した。案件ごとのスケジュールは、以下の通りである。
図 1 実施スケジュール
年
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4
1 フアヒン上下水案件
FS
フェーズ1 詳細設計 、調達
建設
詳細設計 、調達
フェーズ2
建設
新規上水供給
上水
交換
無収水削減事業
DMA設定
詳細設計 、調達
マスタープラン
建設
FS
Khao Tao地域の下水改善
詳細設計 、調達
建設
下水マスタープランの更新
マスタープラン
既存下水処理場のリハビリ
調査+詳細設計
下水
O&M能力向上
研修制度
2 パタヤ再生水案件
水供給
再生水
下水
下水拡張
3 バンコク首都圏庁小規模下水案件
下水
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
FS
詳細設計 、調達
建設
詳細設計 、調達
建設
Rom Klao下水システム
FS
フェーズ1 詳細設計 、調達
建設
詳細設計 、調達
フェーズ2
建設
(5)実施に関するフィージビリティ
1) 事業費の積算
過去の類似案件、メーカーからの情報、及び上下水関連機関から提供された情報を基に積算を行った。
表 2 は各案件の事業コストの一覧である。
表 2 各案件のプロジェクトコスト
(バーツ)
フアヒン上下水案件
項目
処理場コスト
パイプライン
コスト
ポンプコスト
上水
フェーズ 1
フェーズ 2
411,283,609
489,495,347
61,324,939
0
962,103,895
718,834,628
833,981,779
74,466,829
182,007,400
1,809,290,636
0
0
0
0
0
12
下水
無収水事業
合計
土地コスト
事務コスト
VAT
合計
576,429,830
85,327,403
125,431,283
1,917,306,752
0
66,173,856
97,275,569
1,486,926,551
431,469,470
28,363,062
41,693,701
637,318,001
0
9,100,370
13,377,544
204,485,314
パタヤ再生水・下水案件
項目
下水
処理場コスト
パイプライン
コスト
ポンプコスト
土地コスト
事務コスト
VAT
合計
1,007,899,300
188,964,691
277,778,097
4,246,036,618
バンコク首都圏庁小
規模下水案件
再生水
合計
539,570,612
156,304,694
695,875,306
0
206,287,032
206,287,032
0
0
26,978,531
39,658,440
606,207,583
14,128,891
0
18,836,031
27,688,965
423,245,613
14,128,891
0
45,814,561
67,347,405
1,029,453,196
92,217,834
8,342,791
0
0
5,028,031
7,391,206
112,979,862
2) 収益・費用分析
a) 収益
それぞれの案件について、各自治体の実勢水道・下水料金、及び近隣で比較対象となる料金を想定し
た。第 5 章に詳細を記載。
b) O&M 費用
メーカーへのヒアリング、過去事例等を参考に、人件費、薬品代、電気代、原水コスト等を想定した。第
5 章に詳細を記載。
3) その他条件
3 案件に共通する融資条件等その他条件は以下の通りである。
項目
建設期間
運営期間
償却期間
金利(商業銀行)
融資期間(商業銀行)
金利(本邦制度金融)
融資期間(本邦制度金融)
資本比率
法人税率
VAT 税率
表 3 その他条件
単位/年
2年
25 年
25 年
4%
10 年
3.5%
15 年
30%
30%
7%
備考
無収水削減事業は 5 年
据置期間 5 年
据置期間 5 年
4) 内部収益率
以下表 4 は FIRR の計算結果である。
上水案件はタイの直近の長期金利(10 年国債利回り)
(2.5%)より高いため、上記の条件を前提にす
ると、総じて財務的実現可能性は高いと考えられる。
一方で、フアヒン自治体、バンコク首都圏庁の下水案件は、いずれもタリフ水準の低さが主因となり
実現可能性が低いとの結果になった。尚、パタヤ特別市の下水案件は、下水料金の徴収に成功している
ことを背景に高い収益性となっている。
13
表 4 FIRR の計算結果
フアヒン
項目
FIRR
上水
フェーズ フェーズ
1
2
17.5%
26.3%
無収水
事業
下水
N.A.
18.6%
パタヤ
下水
11.2%
再生水
4.1%
バンコ
ク首都
圏庁
N.A.
(6)我が国企業の技術面等での優位性
わが国企業は上下水プロジェクトにおいて技術、設計、運営面で優位性を有する。各プロジェクトにお
いて想定される優位性としては以下が挙げられる。
1)ライフサイクルコスト
優先 3 案件は事業期間として長期を想定しており、イニシャルコストだけではなく、管理・運営を含
めたライフサイクルコストの考えが重要となる。このため、省エネ効果の高い日本製品の導入、日本自
治体の支援を含めた長期に亘る管理・運営ノウハウの活用等が不可欠となる。
2)ファイナンス
地場商業銀行と比較して譲許性の高い本邦制度金融の活用はわが国企業に優位性をもたらすことに
なると考える。
3)案件ごとの優位性の確認
a)フアヒン上下水案件
タイにおいては、原水・上水の卸売分野、並びに工場向け工業用水供給分野では積極的な民間参入が
見られる。一方で、給水分野は、地方自治体、首都圏水道公社、地方水道公社の独壇場となっており、
管網の維持管理については民間企業の参入がほぼみられない。
日本においても、給水分野は主に自治体が行っているため、本邦自治体から管網の維持管理のノウハ
ウと手法を持ち込むことで優位性を得ることが可能になると考える。
無収水削減事業については、アスベスト管交換の後に、維持管理の一部として DMA 設定の提案・漏水
検知・配管診断を行うことで、コストパフォーマンスの高い効率的な配管交換を行うことができる。こ
の分野において、日本企業の持つ経験値は、競争力となる。
b)パタヤ再生水・下水案件
再生水製造においては、今回 UF 膜の導入を検討しており、日本企業には、フィリピン等の東南アジ
ア諸国での豊富な納入実績がある。尚、再生水製造における日本企業の卓越した実績は、技術的に世界
に誇るものであり、これまでのアフリカ、中東、東南アジア等における豊富な実績を有効活用できると
考える。
c)バンコク首都圏庁小規模下水案件
バンコク首都圏庁での小規模下水処理場の建設に関しては、土地制約がある中での実施となるため、
日本において既に行っている小規模処理場の建設・運営と同様に事業を進めることができる。我が国企
業の有する小規模処理場建設に関する技術、運営ノウハウは、余剰汚泥の発生削減と処理コストの低下
をもたらし、有益と考える。
(7)案件実現までの具体的スケジュールおよび実現を阻むリスク
各案件について、実現までの具体的なスケジュールは検討段階であるものの、当該プロジェクトは、
丸紅株式会社とイーストウォーター社との共同開発を前提として進めている。事業を進めるにあたり、
今後、イーストウォーター社が対象地域の行政機関との共同開発に関する MOU 締結が必要となるため、
現在調整中である。現時点では、2015 年 6 月にイーストウォーター社の子会社であるユニバーサルユー
ティリティ社が、パタヤ特別市と下水の再生水利用に関する MOU を締結している。
フアヒン上下水案件については、大きなリスクは顕在化していないが、パタヤ再生水案件は、水需給
14
逼迫の状況、或いは政策変更によって実現可能性が左右される可能性がある。またバンコク首都圏庁小
規模下水案件に関しては、現在下水料金が一般住民から徴収されておらず、バンコク首都圏庁の財源等
によって運営されている状況であり、課題となっている。現在、バンコク首都圏庁内では、下水料金の
徴収履行に向けた議論が行われており、こうした経済持続性を確認することが案件実現の条件になると
みられ、下水料金回収に向けた制度設計等も案件実現に向けた支援の形として挙げられる。
(8)調査対象国内での事業実施地点が分かる地図
図 2 事業実施地点の分かる地図
15
第1章 相手国・セクターの概要
16
(1)相手国の経済・財政事情
1)政治
2014 年 5 月、高官人事に関し憲法裁判所の違憲判決を受けインラック前首相が失職後、政治的な混乱
が高まる中、軍は戒厳令を発令し、クーデター宣言により憲法を停止するなど全権を掌握し、プラユッ
ト陸軍司令官を議長とする国家平和秩序評議会(NCPO)に実権が委ねられた。2015 年 8 月末に憲法起草
委員会は新憲法の草案を発表したが、2015 年 9 月に憲法草案の承認を行う国家改革評議会(NRC)は草
案を否決した。新憲法案が国家改革評議会で否決されたことで、民政移管のスケジュールは、憲法起草
委員会の設置からやり直すことになり、総選挙を経て新政権が発足するのは 2017 年以降にずれ込むこ
とになった。
2)社会
タイの人口はインドネシア、フィリピン、ベトナムに次ぐ ASEAN 諸国で第 4 位であり、6,590 万人に
達する。一方、増加率は最近 10 年度程度の平均はわずか+0.3%と他の ASEAN 諸国と比べ低く、国連の
“World Population Prospects: The 2015 Revision”によると、人口は 2024 年をピークに減少すると
予測されている。とはいえ、図 1-1 の通り、国連の“World Urbanization Prospects: The 2014 Revision”
によると、人口の減少は主に農村部で起こるとみられ、都市部では増加傾向は今後も継続する見込みで
ある。加えて、都市人口の増加を担うのは、バンコク首都圏ではなく、地方都市部であり、後者の増加
率の方が顕著となっている。また、図 1-2 の通り、人口ピラミッドはすでに壺型となっており、65 歳
以上の高齢者は人口全体の 10%を占める。
図 1-1 タイの都市人口、農村人口推移
出展:国連
17
図 1-2 タイの年齢別人口ピラミッド(2014 年)
出展:国連
3)経済状況
2014 年のタイの GDP は 4,048 億ドルとなり、シンガポールに次いで東南アジアでは第 2 位の規模を誇
る。タイの GDP を産業別にみると、製造業の比率が他 ASEAN 諸国と比較して高く、且つこの比率が 1990
年台から 2010 年頃まで上昇傾向にあったことが特徴である。これは GDP を需要面からみると、輸出主
導の経済であることと同義であり、景気が外需の影響を受けやすく、景気の変動が比較的高い経済構造
となっている。このため、2008 年、2009 年の世界経済危機の最中、外需低迷によって ASEAN 諸国の中
で最も深刻な景気低迷に直面したのがタイである。一方で、図 1-3 の通り、2010 年頃からこの比率は低
下傾向にあり、今後サービス関連の消費拡大とともに景気のけん引役が輸出から消費へと更にシフトす
るとみられる。
図 1-3 タイの GDP に占める製造業の比率
出展:国家経済社会開発局
国家経済社会開発局によれば、2016 年の経済政策は以下に重点が置かれる。
(ⅰ)2016 年に入札開始
18
予定のメガプロジェクトを中心とした主要インフラ投資プロジェクトの履行、(ⅱ)投資プロジェクト
の促進に向けた投資奨励策の推進、優先産業・サービスへの投資促進、中小企業の抱える諸問題の解決、
(ⅲ)目標達成に向けた財政出動、
(ⅳ)財政出動を通じた農家、低所得者への所得支援、
(ⅴ)コスト
削減、農家のグループ化、小規模農家の大型化、生産価格に応じた賃料の調整等による渇水の影響の予
防、緩和を通じた農業分野の抱える問題の解決 、(ⅵ)輸出価格の競争力強化、為替を適正なレンジに
維持することを通じた 3%を下限とした輸出拡大の実現、である。
4)財政状況
タイ政府は、a)公的債務残高の上限は GDP 比 60%以下、b)債務元利年間返済額は予算の 15%以下、
c)資本的支出は予算額の 25%以上、d)均衡予算作成、といった国家財政規律を有しており、総じて健全
な財政状況を維持している。公的債務残高の上限は GDP 比 60%である一方、2014 年では 43.5%にとど
まっている。また、債務の大部分は、タイ国内での調達となっており、対外債務はごく一部を占めるに
過ぎない。更に、財政赤字はここ数年の政府による財政出動にも関わらず、GDP 対比で-1%~-2%の範
囲で安定的に推移している。
5)日本との関係
図 1-4 で示す通り、日本からタイへの直接投資残高の推移をみると、1997 年のアジア通貨危機後、幾
つかの政局不安、洪水などマイナスの出来事が多々あったものの、右肩上がりで増加している。ここ 10
年でみても、2008 年、2009 年のリーマンショック、その後の世界的な景気後退、日本企業のサプライ
チェーンに大きな影響を及ぼした 2011 年の未曾有の洪水、2013 年の反政府デモ等の大きなイベントが
発生したものの、その間でも日本からのタイ向けの直接投資は着実に拡大傾向にあることが確認された。
これは、タイは自動車や電子分野を中心に ASEAN 随一の産業集積を誇っており、アジアを代表する生産・
輸出拠点として揺るがない地位を確立しているためである。タイにとって、日本は最大の対内直接投資
国であり(2014 年のタイの対内直接投資額に占める日本の割合は 37.6%)
、また日本にとっても、タイ
はアジアでは中国に次ぐ対外直接投資の相手国となっている。メコン地域開発を進める上で、タイ企業
は日本企業にとってのパートナーとしての位置づけも期待されており、今後も経済面での強い結びつき
が継続する見込みである。
図 1-4 日本のタイ向け直接投資残高推移
出典:ジェトロ HP
19
(2)プロジェクトの対象セクターの概要
1)上下水、工業セクターの関係組織
以下の図は、タイにおける上下水、工業セクターの関係組織を纏めたものである。基本的に上水分野
は内務省、下水分野は天然資源・環境省、工業分野は工業省の管轄となる。表流水の利用に関しては、
農業・協同組合省王室灌漑局の管轄、国家レベルの水関連の整備計画は、首相府の経済社会開発局によ
って策定される。これに加えて、案件が PPP 形式で推進される際には、財務省の国営企業政策局が事務
局としての役割を果たし、案件推進を担う。
図 1-5 タイの関連組織
出典:調査団作成
a)水分野関連組織
水利用、上水施設、及び配水システムの許認可を含む上水整備に関わる組織は、役割別に以下表の通
り分類される。
表 1-1 上水関連の関係組織
項目
原水
詳細
地下水
表流水
海水
浄水場/下水処
理場/再生水プ
ラント
配水管/送水管
関連組織
- 地下水資源局(天然資源・環境省)
-
公害管理局(天然資源・環境省)
王室灌漑局(農業・協同組合省)
公害管理局(天然資源・環境省)
海洋海岸資源局(天然資源・環境省)
- 海事局(運輸省)
- 地方自治体
- 公害管理局(天然資源・環境省)
- 工場局(工業省)
- 地方自治体
- 高速道路局(運輸省)
- 地方道路局(運輸省)
- 地方自治体
備考
- 地下水源の使用、採掘の
許認可
- 水質基準
- 水利用の許認可
- 水質基準
- 水利用、及び海底パイプ
ラインの敷設許可
- 建設許可(取水施設)
- 建設許可
- 水質基準
- 建設許可
- 建設許可
- 建設許可(土地所有者の
所属に拠る)
出典:調査団作成
タイにおける給水サービスは、サービス地域において様々な組織が役割を担っている。首都圏水道公
社(MWA)
、地方水道公社(PWA)の 2 つが主要組織であり、その他、各地の地方自治体や、民間企業も
一部地域に給水を行っている。民間企業による給水は、首都圏水道公社、地方水道公社、地方自治体に
対するバルク給水契約や O&M 契約の形がとられる。
現在、タイでは 2,310 万世帯のうち、1,910 万世帯が給水サービスを享受しており、400 万世帯が依
20
然として給水サービスへのアクセスを有していない状況である。纏めると以下の通りである。
 首都圏水道公社:220万世帯、総世帯の10%
 地方水道公社*1:380万世帯、総世帯の16%
 地方自治行政組織*2:1,310 万世帯、総世帯の 57%
 400 万世帯はアクセスを有していない。総世帯の 17%
*1
*2
カウンターパートであるイーストウォーター社(第3章で背景を説明)の筆頭株主
今回の調査対象であるフアヒン自治体、パタヤ特別市、バンコク首都圏庁はここに属する
ⅰ) 首都圏水道公社
首都圏水道公社のサービス地域は合計 3,192 平方キロメートルで、バンコク都、ノンタブリー県、サ
ムットプラーカーン県を抱える。水源はチャオプラヤ川とメークローン川である。首都圏水道公社は、
バーンケン、マハサワット、サムセン、トンブリーの 4 つの主要浄水場を有し、合計処理能力は 5,920,000
㎥/日である。現在、首都圏水道公社は 220 万世帯に給水を行っており、これは約 1,000 万人・サービ
ス地域全体の 99%の人口に相当する。首都圏水道公社の管轄地域では、首都圏水道公社理事会が水道料
金決定の権限を有しており、これは料金改定の承認も含まれる。首都圏水道公社の管轄下では、無収水
率の平均は 23.4%、平均水道料金は 12.00 バーツ/㎥となっている。首都圏水道公社は、無収水率を
2017 年に 20%まで低下させることを目標としている。
表 1-2 首都圏水道公社の主要データ
年
項目
単位
2010
2011
2012
2013
2014
造水量
百万㎥
1,736
1,716
1,764
1,805
1,798
売水量
百万㎥
1,282
1,282
1,317
1,361
1,377
%
26.1
25.3
25.3
24.6
23.4
百万接続
1.96
2.02
2.06
2.11
2.17
水使用量
㎥/接続/日
1.78
1.74
1.74
1.75
1.73
平均料金
バーツ/㎥
11.96
11.96
11.90
12.01
12.00
職員
人
4,076
4,046
3,962
4,195
4,185
売上
百万バーツ
17,296
17,544
17,830
18,860
19,492
支出
百万バーツ
11,655
11,897
12,039
11,851
12,615
純利益
百万バーツ
5,641
5,647
5,792
7,009
6,877
資産
百万バーツ
57,710
57,833
56,841
60,634
63,268
無収水率
接続数
出典: 首都圏水道公社
ⅱ)地方水道公社
地方水道公社は地方水道公社法(1979(B.E.2522))によって公社として設立され、地方部における給
水サービスを担っている。バンコク都、ノンタブリー県、サムットプラーカーン県を除く 73 県をサー
ビス地域としている。2014 年時点で、地方水道公社は 234 支所を有しており、380 万世帯に給水サービ
スを行っている。地方水道公社理事会は、首都圏水道公社と同様に、水道料金決定の権限を有している。
地方水道公社の管轄下では、
無収水率の平均は 28.7%、平均水道料金は 21.32 バーツ/㎥となっている。
明確な目標時期は明示されていないものの、25%が地方水道公社の無収水率の目標値となっている。地
21
方水道公社では地方部において多額の投資を行う必要があるため、これが首都圏水道公社と比較して高
い水道料金につながっているとも言える。加えて、投資予算の多くを中央政府からの補助金に依存して
いる状況であり、投資計画は中央政府の毎年の予算割当に左右される状況である。
地方水道公社の細則によれば、水道料金は場所及び建物の種類によって以下の様に分類されている。
 一般家庭
 官庁または小規模事業者
 国有企業、工業、または大規模事業者
表 1-3 地方水道公社の主要データ
年
項目
単位
2010
2011
2012
2013
2014
造水量
百万㎥
1,303
1,338
1,462
1,522
1,568
売水量
百万㎥
960
982
1,053
1,092
1,119
%
26.2
26.5
27.9
28.2
28.7
百万接続
3.11
3.26
3.42
3.60
3.78
水使用量
㎥/接続/日
0.870
0.844
0.863
0.822
0.811
平均料金
バーツ/㎥
17.79
17.24
18.87
21.14
21.32
職員
人
6,141
6,672
6,984
8,042
8,841
売上
百万バーツ
17,080
16,929
19,864
25,124
26,017
支出
百万バーツ
14,489
15,207
16,452
18,542
18,831
純利益
百万バーツ
2,816
2,112
3,865
6,192
5,775
資産
百万バーツ
69.373
72,215
81,798
87,906
89,226
無収水率
接続数
出典: 地方水道公社
表1-4は、地方水道公社と民間企業における主要契約を纏めたものである。コンセッション期間は最
長30年間で、全ての案件において最低保証量付きである。
案件名
期間
パトゥムタ
ーニー-ラ
ンシット給
水プロジェ
クト
25 年
ナコーンサ
ワン給水プ
ロジェクト
25 年
表 1-4 地方水道公社と民間企業との給水契約一覧
水道料金
最大容量
最低保証量 平均購入量
(バーツ/
プロジェクトの状況
(㎥/日)
(㎥/日) (㎥/日)
㎥)
288,000
12.66
260,000
374,723
・1995 年 8 月、Pathum
(初期契約)
(初期契約)
Thani Water
Co.,Ltd.と契約締
70,000
12.66
70,000
結。1998 年 10 月商
(新契約)
(新契約)
業運転開始。
・2006 年 9 月、70,000
㎥/日の追加契約。
14,400
14.07
6,450
10,541
・2000 年 11 月、
Nakornsawan Water
Supply Co.,Ltd.と
契約締結。2003 年 3
22
チャチュー
ンサオ給水
プロジェク
ト
25 年
37,200
12.82
27,000
36,252
バンパコン
給水プロジ
ェクト
25 年
43,200
12.14
27,000
33,843
ラーチャブ
リー-サム
ットソンク
ラーム給水
プロジェク
ト
プーケット
給水プロジ
ェクト
30 年
36,000
25.64
35,400
34,922
25 年
表流水
16,000
表流水
13.92
表流水
16,000
18,276
逆浸透水
12,000
逆浸透水
51.97
逆浸透水
12,000
表流水
13.70
(5 年間固
定料金)
表流水
11.68
(5 年間固
定料金)
表流水
3,000
4,221
表流水
2,000
1,634
28.58
300,000
300,000
12.14
45,000
(2014 年 9
月-2015 年 8
月)
54,000
(2015 年 9
85,398
プーケット
給水プロジ
ェクト
5年
表流水
3,000
プーケット
給水プロジ
ェクト
5年
表流水
24,000
ナコーンパ
トム-サム
ットサーコ
ーン給水プ
ロジェクト
30 年
320,000
23
10,497
月商業運転開始。
・2000 年 11 月、
Chachoengsao Water
Supply Co.,Ltd.と
契約締結。2003 年 4
月商業運転開始。
・2000 年 11 月、
Bangpakong Water
Supply Co.,Ltd.と
契約締結。2003 年 4
月商業運転開始。
・1999 年 6 月、
EGCOMTARA Co., Ltd.
と契約締結。2001 年
4 月商業運転開始。
・1999 年 10 月、
Require
Construction
Co.,Ltd.(現 R.E.Q.
Water Services Co.,
Ltd(2003 年 4 月))
と契約締結。2000 年
12 月商業運転開始。
・2005 年 12 月、契
約期間の延長(10 年
から 25 年)及び追加
購入(表流水 16,000
㎥/日、海水からの
逆浸透水 12,000 ㎥
/日)のため追加契
約。
・2012 年 1 月、Agua
Flow Co.,Ltd.と契
約締結。2012 年 7 月
商業運転開始。
・2015 年 5 月、Thai
Waterworks
Technology
Co.,Ltd.と契約締
結。2015 年 7 月商業
運転開始。
・2000 年 9 月、VKCS
(Thailand)
Co.,Ltd.と契約締
結。2001 年 2 月に
Thai Tap Water
Supply Co.,Ltd.に
社名変更し、2004 年
7 月商業運転開始。
・2008 年 12 月、最
月-2016 年 8
月)
サムイ島給
水プロジェ
クト
15 年
3,000
(逆浸透水)
63.74
2,500
パナットニ
コム-バー
ンブン給水
プロジェク
ト
15 年
30,000
11.50
10,000
サッタヒー
プ給水プロ
ジェクト
30 年
31,200
地方水道公
社の水道料
金
年間の最低
保証量が月
ごとに支払
われる
パタヤ給水
プロジェク
ト
30 年
15,972
16.63
18,000
ラヨーン給
水プロジェ
クト
25 年
86,400
11.31
(2014 年 7
月-2015 年
7 月)
11.56
(2015 年 7
月-2016 年
7 月)
46,333
(2014 年 7
月-2015 年 7
月)
49,655
(2015 年 7
月-2016 年 7
月)
低保証量を、5 年以
内に 54,000 ㎥/日
拡張するための追加
契約。2010 年 9 月完
工。
2,555
・2004 年 7 月、イー
ストウォーター社と
契約締結。2005 年 5
月商業運転開始。
28,140
・2004 年 9 月、
Industrial Water
Resources
Management
Co.,Ltd.と契約締
結。2005 年 1 月商業
運転開始。
2,294,528 ・2000 年 7 月、イー
2015 年 7 月 ストウォーター社と
~9 月の四 10 年間の契約締結。
半期平均料
金
21,448
・2004 年 10 月、契
約期間の延長(10 年
から 30 年)
、2005 年
11 月からの浄水場
及び供給システム構
築のため、追加契約。
56,453
・2006 年 3 月、
Universal
Utilities コンソー
シアムと契約締結。
2006 年 7 月商業運転
開始。
出典: 地方水道公社
ⅲ)地方自治体
首都圏水道公社と地方水道公社は、タイにおいて同様の権限を有する組織だが、地方自治体は自らの
区域の給水における主要な監督組織であり、首都圏水道公社と地方水道公社に対して優先的な立場にあ
る。タイには全体で 2,440 の自治体が存在しており、自身での給水が困難な場合、自治体によっては給
水を首都圏水道公社、地方水道公社に委ねている状況である。一方で、自治体として給水能力を有する
場合、自身で給水を行っているケースもある。地方自治体が抱える主な問題は以下の通りである。

運営・維持管理にあたっての職員の能力不足

高い無収水率

水需要に対する十分な水源不足、及び供給能力不足

必要な基礎情報の未整備
尚、今回調査対象のフアヒン自治体上水案件は、第 8 章で記載の通り、丸紅株式会社とイーストウォ
ーター社が特別目的会社を設立の上、特別目的会社とフアヒン自治体が契約を結び、これに基づき事業
を実施する形態を想定する。
24
b)下水分野関連組織
タイでは下水関連組織が異なる責任と権限を有しており、下水道公社(WMA)
、天然資源・環境政策計
画局(ONEP)
、公害管理局(PCD)
、地方自治体(LGO)がこれに含まれる。
ⅰ)下水道公社
下水道公社設立に関する勅令(1995(B.E.2538))に拠り、下水道公社は集中方式の下水処理システム
を下水管理地域(バンコク都、ノンタブリー県、サムットプラーカーン県、サムットサーコーン県、ナ
コーンパトム県、パトゥムターニー県、その他政府官報で公示された地域)において導入し、継続的、
かつ経済的に下水処理サービスを進める目的で設立されたものである。
ⅱ)天然資源・環境政策計画局
天然資源・環境政策計画局は天然資源・環境省に属しており、環境管理計画、保護政策の策定、天然
資源の保護に対する政策の提案を行う。EIA レポートは天然資源・環境政策計画局に提出の上、許可プ
ロセスを踏む形になる。
ⅲ)公害管理局
公害管理局の一般的な役割は、国家環境保全推進法(1992(B.E.2535))の規定に則っており、その中
で国家環境委員会、公害規制委員会とともに、公害対策局は汚染を原因とした環境問題の管理、防止、
解決のために対策を講じる権限を有する、と記載がある。また、国の汚染防止政策の提案、環境基準の
制定(河川、運河の水質基準、大気環境基準等)、汚染源からの汚染防止に係る基準設定(建物、工業
団地、工場からの排出基準、自動車の排気基準等)、環境質管理計画、公害管理対策の策定(固形廃棄
物管理、危険物処理、公害管理地域の通達等)等も役割に含まれる。
ⅳ)地方自治体
タイ政府は、これまで国全体で下水普及に向けた努力を続けてきたが、一方で、一部の下水処理施設
において、当初の目論見通りには十分な施設運営がなされていない現状も存在する。地方自治体は、下
水処理施設の運営上、主に三つの主要課題に直面していると指摘出来る。1 点目は、下水処理施設を運
営管理する人員不足である。2 点目は、運営・管理費用の予算不足である。この結果として、一部の下
水処理施設では稼動停止を迫られており、また完工したにも関わらず、稼動開始が出来ていないケース
も存在する。3 点目は、下水処理システムが導入されているほぼ全地域において、下水料金が徴収出来
ていない点である。タイでは、フアヒン自治体、パタヤ特別市、プーケット自治体を含む幾つかの地方
自治体でのみ下水料金の回収が行われている。加えて、パタヤ特別市でのみ一般住民からの回収に成功
しており、他の自治体では、商業セクターなど一部の顧客からのみ料金回収出来ている状況である。
下水サービス向上に向けた解決方法の一つは、下水料金の徴収、つまり汚染者負担原則の実現である。
下水料金の決定、及び料金の回収は以下を根拠に実施されるものである。

国家環境保全推進法(1992(B.E.2535)):下水処理を担う地方自治体は、下水料金を徴収する
ことが可能との規定がある。また、集中処理設備が政府或いは地方自治体の収入を原資にする
際には、地方自治体は調査実施の上、下水料金徴収に関する条例を設置することになる。

地方自治体への地方分権化への計画とプロセス法(1999(B.E.2542)):地方自治体は、公共サ
ービスの受益者からの下水料金の回収が可能である。汚染者負担原則は、下水サービスにも適
用される。
尚、今回調査対象のフアヒン自治体下水・パタヤ特別市下水案件、バンコク首都圏小規模下水案件は、
丸紅株式会社とイーストウォーター社がが特別目的会社を設立の上、特別目的会社とフアヒン自治体が
契約を結び、これに基づき事業を実施する形態を想定する。
c) 工業分野関連組織
ⅰ)工業団地公社
工業団地公社は、工業省傘下の公社であり、工業団地の開発、設立を管轄している。工業団地は工場
25
の稼動に必要となる電気、給水、洪水対策、下水処理、固形廃棄物処理等も提供している。
現在、工業団地は 16 県にまたがり、56 ヵ所の工場団地が稼動している。このうち 11 ヵ所は工業団地
公社によって運営されており、45 ヵ所はデベロッパーとの共同運営となっている。今回調査で関係する
のは、パタヤ再生水案件である。
表 1-5 工業団地一覧
名称
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
Amata City 工業団地
Amata Nakorn 工業団地
Amata Nakorn 工業団地 (Project 2)
Asia 工業団地
Asia 工業団地 (Suvarnabhumi)
Asia Terminal Port 工業団地
Ban Wa (Hi-Tech)工業団地
Banbung Patana 工業団地
Bang Pa-in 工業団地
Bangchan 工業団地
Bangplee 工業団地
Bangpoo 工業団地
Chiang Khong 工業団地
Eastern Seaboard 工業団地 (Rayong)
Gateway City 工業団地
Gemopolis 工業団地
Gemopolis 工業団地 (Project 2)
Halal Food 工業団地
Hemaraj Chon Buri 工業団地
Hemaraj Chon Buri (2)工業団地
Hemaraj Eastern 工業団地 (Map Ta Phut)
Hemaraj Eastern Seaboard (2)工業団地
Hemaraj Eastern Seaboard (3)工業団地
Hemaraj Eastern Seaboard (4)工業団地
Hemaraj Eastern Seaboard 工業団地
Hemaraj Rayong 36 工業団地
Hi-Tech Kabin 工業団地
Kaeng Khoi 工業団地
Laem Chabang 工業団地
Lam Phun 2 工業団地
Latkrabang 工業団地
Luck Chai Rubber City 工業団地
Maharajnakorn 工業団地
Map Ta Phut 工業団地
Nong Khae 工業団地
Nong Khai 工業団地
Northern Region 工業団地
Padaeng 工業団地
Phichit 工業団地
Pinthong (Laem Chabang)工業団地
Pinthong (Project 4)工業団地
Pinthong (Project 5)工業団地
Pinthong 工業団地
Pinthong 工業団地 (Project 3)
26
県
Chon Buri and Rayong
Chon Buri
Chon Buri
Rayong
Samut Prakan
Rayong
Ayutthaya
Chon Buri
Ayutthaya
Bangkok
Samut Prakan
Samut Prakan
Chiang Rai
Rayong
Chachoengsao
Bangkok
Bangkok
Pattani
Chon Buri
Chon Buri
Rayong
Rayong
Rayong
Rayong
Rayong
Rayong
Ayutthaya
Saraburi
Chon Buri
Lam Phun
Bangkok
Rayong
Samut Sakhon
Rayong
Saraburi
Nong Khai
Lam Phun
Rayong
Phichit
Chon Buri
Chon Buri
Chon Buri
Chon Buri
Chon Buri
名称
45 R I L 工業団地
46 Ratchaburi 工業団地
47 Rayong 工業団地 (Ban Khai)
48 Saha Rattana Nakorn 工業団地
49 Samut Sakhon 工業団地
50 Sinsakhon 工業団地
51 Southern Region 工業団地 (Songkhla)
52 TFD 工業団地
53 Thai Diamond City 工業団地
54 Udonthani 工業団地
55 V R M 工業団地
56 Well Grow 工業団地
出典:工業団地公社
県
Rayong
Ratchaburi
Rayong
Ayutthaya
Samut Sakhon
Samut Sakhon
Songkhla
Chachoengsao
Phetchaburi
Udon Thani
Ratchaburi
Chachoengsao
2)タイの上水・下水分野の主要整備計画
a)上水セクター
水源管理、上水供給システムに関連した主要方針或いは国家開発計画は以下の通りである。
ⅰ)第 11 次国家経済社会開発計画(2012-2016(B.E.2555-2559)
)
タイ政府は、首相府の経済社会開発局が主体になり、5 年ごとに中期的な開発計画として、国の開発
における優先順位と政策を決定する国家経済社会開発計画を策定している。第 11 次国家経済社会開発
計画では、以下の 6 つの戦略が設定されている。
(1) 公正な社会の創出
(2) 生涯学習社会の推進
(3) 食料分野の強化と食料及びエネルギー安全保障
(4) 質的成長と持続性に向けた経済の構造転換
(5) 社会的、経済的安定に向けた地域内連携の構築
(6) 持続性に向けた天然資源及び環境管理
上記戦略に従って、水関連に関しては、次の記載がある。

統合的な水資源管理は早急に推進すべきである。加えて、給水能力の向上のために、水資源の
保全、改善の努力を行う必要がある。更に、水利用の更なる効率化が重要であり、このために
は、水消費を機能的に管理するための水インフラのマスタープランの策定が求められる。
ⅱ)施政方針演説
施政方針演説は、プラユット首相が国民立法議会で 2014 年 9 月に行ったものであり、この中の 11 の
重点分野は以下の通りである。
(3)
、(5)、
(9)が水関連となるが、より具体的には、水資源を質的、量
的な観点から管理し、無駄を省くべく、関係機関の実施計画と予算を総合し、水管理計画を提供すると
の内容がある。
(1) 王室護持
(2) 治安維持と外交関係
(3) 社会格差の是正と機会創出、公共サービスへのアクセス
27
(4) 教育と学習、宗教・美術や文化
(5) 公衆衛生サービスと健康管理の向上
(6) 経済の競争力強化
(7) アセアン共同体における役割拡大と機会創出
(8) 科学技術、研究開発、技術革新
(9) 天然資源管理、保全と持続可能な利用のバランス
(10)国家機関における良い統治の促進と汚職防止
(11)法制度の改善
b)下水セクター
ⅰ)下水道公社の 4 ヵ年計画
現在、タイでは大規模な下水処理プロジェクトに関する計画は存在しないが、下水道公社は 4 ヵ年
(2014-2017(B.E.2557-2560)
)の戦略で以下の三つの目標を掲げている。
(1) 下水処理量について、2017 年までに毎年 550,000 ㎥/日の能力拡大を目指す。尚、2014 年時
点の下水道公社の処理能力は 16,246,007 ㎥/日である。
(2) 21 ヵ所の集中・小規模の下水処理システムを下水管理地域において 2017 年までに建設する。
合計の予算は 316,477 万バーツであり、以下の通り、割り当てられている。
(2.1.) 306,014 万バーツは、チャオプラヤ川流域の 12 の集中・小規模下水処理システムの建設、
管理、リハビリ向けである。
(2.2.) 10,463 万バーツは、パクパナン川流域の集中・小規模下水処理システムの建設、管理、
リハビリ向けである。
(3) 地方自治体の 35 ヵ所の集中下水処理システムを、214,799 万バーツを予算として、2017 年ま
でにリハビリ及び効率管理を実施する。
上記に基づき、下水道公社は下水処理システムの建設、管理に対して幾つかの戦略を有している。詳
細は以下の通りである。
(1) 275,063 万バーツを予算としたサムットサーコーン県オムノイでのオムノイ集中下水処理プロ
ジェクト、及び 2,536 万バーツを予算としたパトゥムターニー県ランシットのランシット下水
処理プロジェクト向けの建設プロジェクト。
(2) 38,878 万バーツを予算とした 19 ヵ所の小規模自治体の下水処理システムの整備。
(3) 214,799 万バーツを予算とした地方自治体向けの統合的下水管理システムプロジェクト。15 年
に及ぶリハビリ、O&M、下水料金回収に向けた調整。
(4) 159,922 万バーツを予算とした人材育成、知識構築、広告キャンペーン、住民参加等。
ⅱ)バンコク 12 ヵ年開発計画
また、バンコク首都圏庁の 2014 年年次報告書によると、現在、バンコク首都圏庁の下水処理能力は
1,136,800 ㎥/日、実際の処理量は 717,702 ㎥/日である。バンコク 12 ヵ年開発計画(フェーズ 2、2013
年から 2016 年)では、バンコク首都圏庁は上水総消費量の 45%の下水処理を目標にしているが、2014
28
年年次報告書によると上水の消費量は 2,505,080 ㎥/日、実際の処理量は 28.65%となっている。12 ヵ
年計画の目標を達成するために、バンコク首都圏庁は 3 つの下水処理施設を追加で建設することが計画
されているが、設計、建設コストに係る予算割当はいまだ成されていない。
(1) トンブリー下水処理プロジェクト。規模は 148,000 ㎥/日。
(2) ブンノンボン下水処理プロジェクト。規模は 135,000 ㎥/日。
(3) クロントゥーイ下水処理プロジェクト。規模は 360,000 ㎥/日。
上記処理場の完成後のバンコク都の下水処理能力は 1,360,702 ㎥/日、上水消費量の 54%に増加する
予定である。
3)上水、下水、工業分野の関連法及び規制
この項では、タイにおける上水、下水プロジェクトに係る既存法、及び規制の概要を纏める。第 3 章
で記載の通り、本調査はフアヒン上下水案件、パタヤ再生水・下水案件、バンコク首都圏庁小規模下水
案件を取り上げるため、法や規制の確認はこれらの案件、地域に関連するものを中心に行う。
民間企業によるプロジェクト推進に際しては、コンセッション権を関係政府機関から取得することが
必要となり、プロジェクト規模が 10 億バーツ以上となる場合、案件の始まりから履行、管理、モニタ
リングまでが PPP 法への準拠が必要であり、これは入札プロセス、契約交渉も含むものである。このた
め、PPP に関する法制度の概観は重要となる。
a)上水セクターの関連法制度及び規制
ⅰ)上水のコンセッション権
革命評議会布告第 58 条(1972(B.E.2515)
)には、給水は政府事業であると記載がある。このため、
民間企業が給水事業を行う際には、政府関係機関からコンセッション権を付与される形となる。
安全と公共福祉のための給水事業のコンセッション手続きに係る天然資源・環境省通達の定義による
と、コンセッションとは、政府から一定期間付与された権利に基づき民間企業により実施される水事業
となる。この通達では、給水事業は以下の 3 つの分類が可能である。
 小規模上水供給システムとは、3,000 ㎥/日に満たない給水事業で、コンセッション期間は 5 年
を超えないものである。
 大規模上水供給システムとは、3,000 ㎥/日を超える給水事業で、コンセッション期間は 10 年
以上 30 年を超えないものである。
 特別規模の上水供給システムとは、高い技術プロセスを伴った給水規模に上限が無い給水事業の
ことである。高い技術とはイオン交換、吸着設備、膜技術或いはその他の天然資源・環境省水資
源局が規定するプロセスである。コンセッション期間は 30 年を超えることが可能である。
上水のコンセッショ権を得る書類、傍証は、上述の給水システムの種類によって異なり、コンセッシ
ョン権に関連する事項としては、給水、配水、コンセッション地域の拡大、コンセッション権の更新、
コンセッション権の委譲、料金改定、給水量の拡大が含まれる。コンセッション権は、天然資源環境省
の管轄下にあり、書類整備が十分であれば、90 日以内にコンセッション権付与の承認が下りる。尚、下
水分野には斯様なコンセッション権に関する許認可プロセスを規定したものは存在しない。
ⅱ)国営灌漑法(1942(B.E.2485)
)
水路が、農業・協同組合省によって灌漑用と官報において公布された場合には、農業・協同組合省の
王室灌漑局によって規制、管理されることになる。農業・協同組合省大臣は幾つかの規定によって、灌
漑エリアに居住するか否かを問わず、灌漑用水から便益を得る水使用者から費用を回収する権利を有す
る。これは給水事業にも該当し、費用の上限は 0.5 バーツ/㎥と定められている。
灌漑用水から取水を行う場合において、灌漑用水の利用が灌漑事業に悪影響或いは漏水を引き起こし
てはならない。仮に何者かが灌漑用水、水門、灌漑設備にダメージを与えた場合、王室灌漑局局長は加
害者に対してそうした影響を是正するように命じる権利を有する。これが放置された場合には、ただち
29
に関係者にその修復を命じ、その費用については加害者に課せられることになる。
b)下水セクターの関連法制度及び規制
ⅰ)国家環境保全推進法(1992(B.E.2535)
)
国家環境保全推進法では、下水を汚染源から排出された廃棄物ごみ、汚物、土壌、汚染物質、危険物
質で、液体状態のものと定義している。一般家庭も汚染源の一つと考えられるものの、一般家庭からの
下水排出に関する具体的な環境基準はこの法律の中では存在していない。
国家環境保全推進法 88 条によれば、国家環境委員会は、汚染管理委員会の助言のもと、汚染管理地
域、或いは集中下水処理場の建設、運営が政府予算、政府収入、環境ファンドによって賄われている場
合において、自治体における下水料金を規定する権限を有する。国家環境委員会は、汚染管理地域に指
定されているフアヒン自治体、パタヤ特別市の下水料金について、以下の様に規定している。
表 1-6 フアヒン自治体、パタヤ特別市の下水料金(2015-2020)
(バーツ/㎥)
汚染者
フアヒン自治体
パタヤ特別市
グループ 1:一般家庭
4.00-4.50
6.5
グループ 2:政府の建物、
財団、
4.75-5.25
7.0
病院、学校、小規模商業施設
グループ 3:ホテル、工場、大
5.75-6.25
7.5
規模商業施設
出典:国家環境委員会
国家環境保全推進法 93 条によれば、下水処理場の運営を担う地方自治体が国家環境委員会の定めた
料金に基づき、料金回収する権限を有する。これに基づき、汚染管理地域と規定された地方自治体は、
料金に関する条例を定める形となる。
ⅱ)自治法(1953(B.E.2496)
)
自治法によれば、地方自治体は廃棄物を自身の区域において廃棄する義務があり、公共サービス供給
と衛生維持の権限を有し、下水分野の監督組織と位置づけられる。自治体は以下の条件のもと、民間企
業との合弁企業の株主となることが可能である。

合弁企業の目的が公共サービスの提供であること。

地方自治体が合弁企業の 50%以上の株式を保有すること。仮に複数の自治体が一つの合弁企
業の株式を保有する場合は、合算の株式がこの目的として計算される。

内務省の承認を得ること
自治体の収入は多数の資金源から得ることが出来る旨が自治法 66 条に記載があり、これはいかなる
法人からの借入も含まれる。借入実施のためには、地方自治体は議会と内務省の承認を事前に取得する
必要がある。
ⅲ)バンコク都法(1985(B.E.2528)
)
バンコク都の調達に関する条例 15 条では、6 つの調達方法の規定がある。
(1) 価格合意(随意契約)。100,000 バーツ以下。
(2) 指名入札。100,000 バーツと 2,000,000 バーツの間。
(3) 競争入札(公開入札)。2,000,000 バーツ以上。
(4) 特別限定入札。100,000 バーツを上回る場合で以下の条件での調達。
a. 特殊技能が必要となるもの。
b. 工事が緊急性を要し、遅延に伴う影響があるもの。
c. 契約締結の必要性、緊急性があり、また再発注が必要なもの。
30
d. 契約が他方法によって過去行われ、成功しなかったもの。
(5) バンコク都で設立された企業、団体、政府組織、国営企業等への特例は以下の条件の通り。
a. 物品或いは工事が上記組織によって製造、履行され、これをバンコク都知事が承認している
こと。
b. 法律或いは閣議決定において、この方法による調達が規定されている場合。
(6) 公開電子入札。2,000,000 バーツ以上。
バンコク都法では、内務省承認のもと、バンコク都が条例を設け、サービス提供に対するサービス料
金を設定することを認めている。この結果、バンコク都は、下水料金に関する条例を 2004 年(B.E.2547)
に設けている。バンコク都の下水料金は以下表の通りである。
表 1-7 バンコク都の下水料金表
建物
バーツ/㎥
1. 排水 10 ㎥/月超の住居
2.0
2. 政府系施設
2.0
3. 宗教施設、学校、大学
2.0
4. 病院
4.0
5. ホテル
4.0
6. ショッピングモール、展示場
4.0
7. マーケット
4.0
8. レストラン
8.1 面積 100 ㎡未満
2.0
8.2 面積 100 ㎡以上
4.0
9.マッサージ店、入浴施設
4.0
10.商業ビル
10.1 占有面積 100 ㎡未満
2.0
10.2 占有面積 100 ㎡以上
4.0
11. 多目的ビル
4.0
12. 工場
12.1 排水量 200 ㎥/未満
4.0
12.2 排水量 200 ㎥~500 ㎥/月
6.0
12.3 排水量 500 ㎥/月以上
8.0
13. その他
4.0
出典:バンコク首都圏庁
ⅳ)下水道公社設立に関する勅令(1995(B.E.2538))
既述の通り、下水道公社は勅令によって設立されており、タイ法制度の序列のもとでは勅令は法律の
下位法との位置づけである。この結果、下水道公社の権限は法律と矛盾することや、優先的な扱いとな
ることはない。自治法で記載の通り、下水管理は地方自治体の管轄である。このため、自治体の範囲に
おいて、下水処理を行うという地方自治体の権限は地方水道公社より優先される。
地方自治体は、自区域における下水処理に関する監督組織であり、下水道公社は自治体の区域におい
て下水処理管理を行う際には、自治体との合意、契約が必要となる。自治体の区域において、下水道公
31
社は地方自治体と契約を締結し、下水管理地域における下水処理システムを地方自治体と合同で管理し、
効率的、協力的に下水処理サービスを実施することになる。
c)工業セクターの関連法制度及び規制
ⅰ)工場法(1992(
(B.E.2535)
)
)と工業省令
工場法の下位法である工場省令では、廃棄物、汚染物質、環境に影響を及ぼすその他物質の排出規制
を行っている。工場からの下水排水においては、処理水質に関しては工業省の規制に準拠しなくてはな
らず、以下の規制が設けられている。
(1) pH は 5.5 より大きく、9.0 は下回る
(2) TDS(総溶解固形分)は以下が求められる。
 3,000mg/ℓ 以下、或いは工場局の規定に則った排水量、流入資質、工場の種
類により異なる値。但し、5,000mg/ℓ は下回るもの。
 2,000mg/ℓ超の塩を含んだ受入水の場合、5,000mg/ℓ以下、或いは工場局の規
定に則った排水量、流入資質、工場の種類により異なる値。
(3) SS(浮遊物質)は 50mg/ℓ 以下、或いは工場局の規定に則った排水量、流入資
質、工場の種類により異なる値。ただし、150 mg/ℓ は下回るもの。
(4) 重金属は以下の通り。:
 水銀は 0.005mg/ℓを下回る。
 セレンは 0.02 mg/ℓを下回る。
 カドミウムは 0.03 mg/ℓを下回る。
 鉛は 0.2mg/ℓを下回る。
 ヒ素は 0.25mg/ℓを下回る。
 六価クロムは 0.25mg/ℓを下回る。
 三価クロムは 0.75mg/ℓを下回る。
 バリウムは 1.0mg/ℓを下回る。
 ニッケルは 1.0mg/ℓを下回る。
 銅は 2.0mg/ℓを下回る。
 亜鉛は 5.0mg/ℓを下回る。
 マンガンは 5.0mg/ℓを下回る。
(5) H2S(硫化水素)の様な硫化物は 1.0mg/ℓ を下回る。
(6) HCN(シアン化水素)の様なシアン化物は0.2mg/ℓを下回る。
(7) ホルムアルデヒドは 1.0mg/ℓを下回る。
(8) フェノール化合物は 1.0mg/ℓを下回る。
(9) 遊離塩素は 1.0mg/ℓを下回る。
(10) 農薬は含まない。
(11) 温度は 40 度を下回る。
(12) 色は不快でないもの。
32
(13) 匂いは不快でないもの。
(14) O&G(油類)は 5.0mg/ℓ を下回る、或いは工場局の規定に則った排水量、流入資
質、工場の種類により異なる値。ただし、15.0mg/ℓ を下回る。
(15) BOD(生物化学的酸素要求量)は 20mg/ℓ を下回る、工場局の規定に則った流出
量、受水タイプ、製造タイプにより生じる差は 60mg/ℓ を下回る。
(16) TKN(ケルダール窒素)は 100mg/ℓ を下回る、或いは工場局の規定に則った排水
量、流入資質、工場の種類により異なる値。ただし、200mg/ℓ を下回る。
(17) COD(化学的酸素要求量)は 120mg/ℓ を下回る、或いは工場局の規定に則った排
水量、流入資質、工場の種類により異なる値。ただし、400mg/ℓ を下回る。
ⅱ)工業団地法(1979(B.E.2522)
)
工業団地に所在する下水処理施設は、工業団地法によって運用される。入居企業は特殊なケースを
除いて、工業団地にある集中下水管路に至るまでの管路建設を行う必要あるほか、上記の工場法の規
制とは別途工業団地ごとに設定される下水処理基準を満たすとともに、以下も満たす必要がある。
 下水は十分な速度で排出されなくてはならない。
 管路システムは、密閉し、臭気を発生させない。
 管路システムは、雨水排水システムとは独立させる。
 少なくとも 1 ヵ所のマンホールを工場内の下水排出ヵ所に設ける必要がある。
 下水排出量の時期変動に備えて、適切な容量の調整池を設ける必要がある。
4)PPP 法
The Private Investments in State Undertakings Act of 2013、現行 PPP 法はタイにおける PPP
プロジェクトの運用を目的とするものであり、1992 年の旧 PPP 法に代わるものである。現行 PPP 法は
政府事業への民間投資を促進することを目的としており、明確な体系的指針、PPP 案件の適切なリス
ク分担と案件履行の管理を取り入れている。旧 PPP 法が 2 度の内閣承認を必要とする一方で、現行
PPP 法における承認回数は一回のみとなっている。しかしながら、内閣承認を得るに際して、事前に
PPP 政策委員会の承認を取る必要がある。現行 PPP 法の第 4 条では、政府事業を以下のうち 1 つに該
当する事業と定めている。
 政府機関、国営企業、地方自治体が個別或いは連帯を問わず、履行にあたって法的義務を負っ
ている事業
 政府機関、国営企業、地方自治体の所有する天然資源、資産の個別或いは集団使用を必要とす
る事業
現行 PPP 法は、石油及び鉱物のコンセッションに基づくものを除いた 10 億バーツを超える全ての
政府事業が対象となる。現行 PPP 法は公共サービスにおいて、DBO、BOT 等のコンセッションの形態を
もとに官民パートナーシップのもとに運営、資金調達を行うことを可能にするものであり、慣習的に
コンセッション契約は 30 年を超えない期間で設定される。
現行 PPP 法では PPP 政策委員会を設置した上で、その事務局として国営企業政策局を有しており、
PPP 政策委員会に対してのサポートを行う。国営企業政策局は、PPP 案件推進に向けた指針の作成、
事業者の選定方法に関する PPP 政策委員会への助言、案件の精査、分析、PPP 戦略計画のドラフト、
PPP 政策委員会における各種事項を所管としている。
PPP 政策委員会はポジションによって以下メンバーによって構成されている。
 議長:首相
 副議長:財務大臣
33
 財務省事務次官
 国家経済社会開発局局長
 予算局局長
 会計検査院院長
 公的債務管理局局長
 司法長官
 7 名を超えない閣議によって指名された者
a) PPP 戦略計画(2015-2019(B.E.2558-2562))
現行 PPP 法の 19 条では、PPP 案件に関して、5 ヵ年の PPP 戦略計画を策定するように求めており、こ
の戦略計画は国全体の政策或いは国家経済社会開発計画に沿ったものとして位置づけられる。この戦略
計画では、PPP 案件の緊急性、優先順位、民間投資の目標や実施スケジュールが示され、これには政府
予算の支出計画も含まれる。
首相を議長とする PPP 政策委員会は 5 ヵ年の戦略計画を策定し、内閣による承認後、2015 年 6 月 10
日に国営企業政策局の通知を経て発効した。上下水事業は、民間投資を促す 14 あるオプトアウト案件
の一つとして位置づけられており、10 億バーツ以上の上下水コンセッション案件は、現行 PPP 法に従う
必要がある。
2015 年から 2019 年までの PPP 案件に係る予定総投資額は、1.41 兆バーツに上る。PPP 戦略計画が官
報に掲載されると、政府機関は案件形成、承認においてこの戦略計画に縛られることになる。更に、内
閣と PPP 政策委員会は PPP 案件の承認に関する意思決定において、PPP 戦略計画に則ることが求められ
る。
2015 年から 2019 年までの PPP 戦略計画は、政府事業案件を二つのグループに分類している。第 1 グ
ループは、民間投資が必須の案件(オプトイン案件)であり、第 2 グループは、民間投資を奨励する案
件(オプトアウト案件)である。第 1 グループ、第 2 グループに分類される政府事業は以下の通りであ
る。
第 1 グループ:民間投資が必須の案件
(1) 都市鉄道
(2) 首都圏有料道路
(3) 港湾
(4) 高速鉄道
(5) 通信網
(6) 高速インターネット
第 2 グループ:民間投資を奨励する案件
(1) 都市間有料道路
(2) 物流センター
(3) 共通発券システム
(4) 空港管理
(5) 水質管理
(6) 灌漑システム
(7) 廃棄物処理
(8) 公立教育機関
34
(9) 公衆衛生
(10) 医療装置
(11) 科学技術インフラ
(12) デジタル経済
(13) 大規模ビジネスイベント
(14) 低所得者・障害者向け住居
b) PPP 案件の全体プロセス
政府機関が 10 億バーツ以上の案件形成を進めようとする場合で、そしてプロジェクトが政府事業に
当たる場合、ホスト機関は現行 PPP 法に定められたプロセスに従わなくてはならない。
下図は PPP 案件の全体プロセスを示したものである。現行 PPP 法に従えば、全体のプロセスは、プロ
ジェクトの提案、プロジェクトの履行、プロジェクトのモニタリング、契約書の改訂、更新の 4 つのマ
イルストーンに分類される。
プロジェクトの提案にあたっては、ホスト機関は事業化調査を実施し、管轄省庁、そして PPP 政策委
員会の原則承認を得る。その後、ホスト機関は自身が主導した選定委員会を通して民間企業への入札参
加を促す。選定の方法としては、入札、ショートリスト、選定された入札者との交渉となる。プロジェ
クトの実施中は監督委員会が指名され、契約書の全条件の遵守状況のモニタリングを行い、契約内容の
変更は監督委員会によって担われる。仮に変更がマイナーである場合には、監督委員会とホスト機関が
管轄省庁に通知する形で実施される。大幅な変更となる場合には、内閣の承認が必要となる。更に、契
約の更新に関しては新規の政府事業として扱われるため、現行 PPP 法に則り、手続きを再度踏む必要が
ある。契約の更新手続きは、既存契約終了の 5 年前より開始可能となる。
図 1-6 PPP プロジェクトの全体プロセス
出典:調査団作成
ⅰ)PPP プロジェクトの提案
現行 PPP 法によれば、承認取得にあたって、ホスト機関はプロジェクトの採算性を評価するために事
業化調査を実施する必要がある。調査は、質的・量的評価をいずれも含む必要があり、以下図はプロジ
ェクト提案の流れを示したものである。現行 PPP 法では、PPP 政策委員会の原則承認後、内閣承認の取
得回数を 1 回に短縮している。
ただし、プロジェクトが政府予算或いは政府機関からの資金に拠る場合、
PPP 政策委員会の承認以前に内閣の承認が必要となる。
図 1-7 PPP 案件のプロジェクト提案
35
出典:調査団作成
現行 PPP 法に基づくプロジェクト提案の手続きは以下の通りである。

ホスト機関が、10 億バーツ以上のプロジェクトを推進する際、ホスト機関は外部のコ
ンサルタントを起用し、事業化調査を実施する。このレポートはプロジェクト提案書
と呼ばれるが、この提案書には国家経済社会開発局の意見が含まれる。仮にホスト機
関が自己資金或いは財務省保証によって金融機関からの融資をプロジェクトに充当す
る際には、内閣の承認が必要となる。加えて、政府の財政規律、債務残高規制も考慮
される。

ホスト機関は、審議、承認を目的に事業化調査レポートを管轄大臣に提出する。検討
は提案書受領から 60 日以内に終了する。大臣の承認取得後、ホスト機関は提案書を国
営企業政策局に提出し、PPP 政策委員会に対する意見を作成する。

提案書受領から 30 日以内に、国営企業政策局はホスト機関に対して、必要な際には、
訂正・改訂を求める。訂正・改訂後の提案書は国営企業政策局に提出されるのと同時
に、管轄大臣に再度審議・承認を求めることになる。

国営企業政策局が提案書に同意の場合、提案書は、PPP 政策委員会の原則承認に向け
て進む形となる。仮に国営企業政策局がプロジェクトに反対する場合、管轄大臣に対
してその旨通知される。その際、大臣意見と国営企業政策局意見が異なる場合であっ
ても、提案書は PPP 政策委員会の承認に向けて自動的に進むことになる。

PPP 政策委員会メンバーの過半数以上の出席を以って定足数となり、過半数を持って
決議が行われる。仮に投票がデッドロック状態となった場合、決定権は委員会の議長
にある。委員会メンバーの中で審議中のプロジェクトに対して利益相反がある場合に
は、その委員は審議に参加出来ず、投票も出来ない。
上述の通り、現行 PPP 法の 24 条では、最低 10 億バーツのプロジェクトの提案を行う際、ホスト機関
は外部コンサルタントが作成した案件評価報告書を提出しなければならず、報告書には少なくとも以下
の内容が含まれている必要がある。

PPP 戦略計画との整合性を含めたプロジェクトのもたらす妥当性、必要性そして便益

実施に伴うコスト:一部政府予算を充てる場合には、プロジェクト全体の期間の中で必
要となる政府予算も記載する必要がある。

政府予算使用時と民間投資時のコスト、Value for money 比較

民間投資の代替手段
36

案件の影響

関連リスクとプロジェクトのリスク管理に向けた対策

ホスト機関がプロジェクトの資金調達として自らの予算を充てる場合、ホスト機関の財
務状態、資金源、他案件に対する予算のコミットメント、そしてホスト機関の財務状態
に影響を及ぼすことなく、プロジェクトに対する資金拠出を行うことが出来ることの説
明
ⅱ)プロジェクトの実施
政府事業が PPP 政策委員会より承認を取得した際、民間企業選定のための選定委員会が設置される。
ホスト機関の代表を議長とし、国営企業政策局、司法長官庁の代表、4 名を超えない者より構成される
選定委員会が設置される。
選定委員会には以下の権限がある。

入札書類、Terms of Reference、契約書ドラフトの承認審議

入札保証証券、契約履行保証証券の設定

民間企業との交渉、選定

ホスト機関、または民間企業に対する説明、関連書類提出の要請

その他適切とみられるアクションの検討
図 1-8 PPP 案件のプロジェクト履行
出典:調査団作成
上述のプロセスの通り、選定方法は、入札或いは公開入札を経ない代替手段いずれかの方法が採られ
る。代替手段が採られるのは、選定委員会が、入札による選定は不適切であると判断する場合である。
ホスト機関が代替手段による選定に同意の場合、選定委員会はその旨を国営企業政策局に提出し、検討
を仰ぐ。国営企業政策局において入札が適当と判断する場合には、民間企業の選定は入札で実施される
ことになる。一方で、仮に国営企業政策局が入札はやはり不適切と判断する場合には、PPP 政策委員会
の決定を仰ぐことになる。PPP 政策委員会が要請を承認した場合には、選定委員会は入札ではない形で
選定プロセスが進められることになる。
選定委員会が民間企業選定を決定した後、選定結果を国営企業政策局の検討向けに提出する。更に、
交渉中の条件、契約書ドラフトは司法長官庁の内容確認が必要となる。選定委員会による選定の 60 日
以内に、国営企業政策局は選定、財政義務に関する意見を管轄省庁に提出、その後内閣の最終承認に進
むことになる。また、司法長官庁はこれと同時並行で契約書のドラフトの確認を義務付けられる。内閣
37
は、関係機関からの意見を含めた一連の書類を勘案することになる。内閣承認によって、ホスト機関は
契約書への署名権限を付与され、プロジェクトが開始することになる。
ⅲ)PPP プロジェクトの監督、モニタリング
契約締結後、管轄省庁は”監督委員会”と呼ばれる委員会を設置する。この委員会は管轄省庁の代表
が議長を務める。他の委員会メンバーは、国営企業政策局、司法長官庁の代表、管轄省庁から指名され
た 4 名を超えない者となる。
監督委員会は以下の権限を有する。

契約書通りに運営されていることの確認、及びプロジェクト実施にあたり、発生可能
性のある問題への対策の計画

ホスト機関、或いは民間企業に対する説明要請、関係書類提出の要請

管轄省庁に対する運転状況、進捗、課題抽出、課題解決への対策の報告、及び国営企
業政策局へのレポート、関連書類の複写

契約書改訂の検討
図 1-9 PPP 案件の監督、モニタリング
出典:調査団作成
ⅳ)契約書の改訂、更新
現行 PPP 法では契約書の改訂手続きについての記載もある。ホスト機関、管轄省庁による契約変更を
認める一方で、如何なる契約変更も監督委員会に上程されることになる。ホスト機関は、監督委員会に
対して、契約改訂の必要性を提出する必要がある。監督委員会が変更は小さいと判断する場合には、監
督委員会はこの変更を許可し、変更を管轄省庁の認知のために通知する形となる。
一方、この契約変更が大幅な変更である場合、監督委員会はホスト機関の提案を通じて司法長官庁の
審議を仰ぐことになる。その後、改訂後の契約書は承認取得のため、管轄省庁に提出され、最終的に内
閣が審議・承認する形となる。
契約期間終了の 5 年前には、現行 PPP 法ではホスト機関は、政府、現在のコンセッショネア、或いは
これ以外の民間事業者による運営の比較により、契約満了後の政府事業の今後の運営計画を策定する必
要がある。契約更新のためには、ホスト機関は別の政府事業案件の様に、契約更新の要請を再度提出す
ることになる。事業化調査を再度実施し、PPP 政策委員会への原則承認の要請、その後、選定された民
間企業によりプロジェクトは実施されることとなる。現在民間事業者には、契約更新に係り、他の民間
企業に対する優遇・先買権は与えられない。契約更新には、他の競合と同様に公正な競争を経なければ
ならない。
図 1-10 契約書の更新、改訂
38
出典:調査団作成
c)プロジェクト規模の境界値変更
2015 年 9 月 22 日、内閣は現行 PPP 法に基づく選定、承認プロセスを踏む必要のあるプロジェクト規
模の境界金額を 10 億バーツから 50 億バーツに引き上げる財務省令のドラフトを承認した。省令が発布
されれば、境界金額は 10 億バーツから 50 億バーツに引き上げられ、プロジェクトは現状の 2 つから、
以下の 3 つに分類されることにある。

50億バーツ以上のプロジェクトは例外なく現行PPP法に準拠。

10億バーツ以下のプロジェクトはPPP法に基づく選定、承認プロセスに準拠する必要は無
い。

(新分類)10億バーツ以上50億バーツ以下のプロジェクトに対しては、小委員会を設け、
PPP政策委員会への承認プロセスに移行する前の段階で審査を行う。但し、 プロジェク
トの選定と承認プロセスが現行PPP法に準拠するのか、或いは10億バーツ以下の様に緩和
されるのかは依然不透明である。
現在、省令のドラフトは法務委員会による内容確認中であり、その後に、官報において発布される。
(3)対象地域の状況
タイの行政は、国の行政、国による地方行政、地方自治行政の三つの体系がもととなっている。国の
行政を構成するのは省庁である。国による地方行政は権限分散化の方針のもとで行われており、国の権
限が県や郡のレベルで働く国の職員に一部委譲されている。国による地方行政は県、郡、支郡、行政区
(タンボン)
、村で構成されている。地方自治行政組織には、一般形態(県自治体、自治市町、行政区
自治体)と特別形態(バンコク都とパタヤ特別市)の二通りがある。
第 3 章で記載する通り、本報告書ではタイにおける複数の潜在案件のうち、フアヒン上下水案件、パ
タヤ再生水・下水案件、バンコク首都圏庁小規模下水案件を取り上げる。対象エリアの概要は以下の通
りである。
図 1-11 タイの行政制度
39
出典:国土交通省
1) フアヒン自治体
フアヒン自治体は、著名な観光都市であり、タイ王室の保養地としても知られ、プラチュワップキー
リーカン県フアヒン郡に属する。フアヒン自治体は、86.4 平方キロメートルをカバーし、2014 年の人
口、及び世帯数はそれぞれ 56,369 人、49,441 世帯である。雨季は 6 月から 10 月、乾季は 11 月から 3
月頃まで続く。気温は 1 年を通して比較的一定であり、年間の平均降雨量は 990 ミリメーターである。
しかし、雨季と乾季の間で降雨量に顕著な違いがあることから、水量は変動が大きい。図 1-12 は、フ
アヒン自治体の月毎の気温、降雨量を示したものである。
図 1-12 フアヒン自治体の気候条件
出典:世界気象機関
2) パタヤ特別市
パタヤ特別市は、チョンブリー県にある特別市である。パタヤ特別市は、パタヤ特別市行政組織法
(1978)を根拠に設立されており、バンコク都から 150km 離れており、総面積は 208.1 平方キロメート
ルである。ただし、総面積のうち、53.4 平方キロメートルが陸地、154.7 平方キロメートルは海であり、
3 つの島が属する。パタヤ特別市は、18 の村から成る 4 つの行政区(ナークルア, ノーンプルー, フワ
イヤイ、プラーライ)から構成されている。総人口は 113,083 人(2014 年)で未登録人口は 400,000 人
から 500,000 人に上る。図 1-13 は、パタヤ特別市の月毎の気温、降雨量を示したものである。
図 1-3 パタヤ特別市の気候条件
40
出典:世界気象機関
3) バンコク首都圏庁
バンコク都は、1,567,737 平方キロメートルの面積を誇り、人口は 5.6 百万人である。GDP は国全体
の 30%に達し、バンコク都周辺を加えると 44%に上る。バンコク首都圏庁はバンコク首都圏庁法(1985
年)を根拠に設立され、バンコク都の行政を司っている。
図 1-14 バンコク都の気候条件
出典:世界気象機関
41
第2章 調査方法
42
(1)調査内容
本調査における調査内容は次の通りである。
1) 上下水、工業セクター関連の関係組織、政策、法制度を含む一般情報の収集
2) 対象地域の既存設備と現状把握
3) 課題抽出と解決策検討
4) 概要設計、適用設備の仕様策定、概略工程、概略工事費の策定
5) 環境社会的側面の検討
6) 相手国側実施機関の実施能力の把握
7) 財務・経済分析
8) プロジェクトの資金調達の見通し
9) 我が国企業の技術面等での優位性分析
(2)調査方法・体制
1) 調査方法
調査業務は、公開された刊行物、現地技術コンサルタントへのヒアリング、カウンターパートである
イーストウォーター社、フアヒン自治体、パタヤ特別市、バンコク首都圏庁から収集・聴取する情報・
データ、現地視察に基づいて一連の調査業務を実施した。調査対象が多岐に及び、また案件検討がイー
ストウォーター社と協業して実施されたため、多くの時間を現地事情に精通した現地コンサルタント及
びイーストウォーター社との面談に費やした。
2) 調査体制
本調査団は丸紅株式会社、日本工営株式会社から構成された。図 2-1 で、調査団の体制を示す。
図 2-1 調査体制実施図
出典:調査団作成
(3)調査スケジュール
本調査は、平成 27 年 8 月から平成 28 年 2 月に亘り実施された。全体調査スケジュールは以下の通り
である。中間報告前までに、上下水関連のマクロ情報の把握、及び調査対象とする案件の絞り込みを実
施した。その後、特定された案件について、概要設計、実施スケジュール検討、コスト積算、及び経済・
財政分析、環境・社会分析を実施した。
43
図 2-2 全体調査スケジュール
平成 27 年
8月
9月
10 月
11 月
現
地
調
査
国
内
作
業
1.
2.
3.
4.
5.
1.
2.
3.
4.
5.
第 1 回現地調査
第 2 回現地調査
第 3 回現地調査
第 4 回現地調査
第 5 回現地調査
事前準備
概要設計
環境社会分析
財務経済分析
報告書執筆
報告会
中間報告▼
報告書
12 月
平成 28 年
1月
2月
最終報告▼
ドラフトファイナル▼
最終報告書▼
出典:調査団作成
実施機関及び日本関係機関との主要面談、及び現場視察先は以下の通りである。第1回現地調査の主
要目的は、関係機関に対する調査内容の共有と法制度、上下水関連の一般的な情報収集、タイ金融市場
に関する情報収集である。第2回現地調査は、タイと日本の実施機関に対する中間報告、第3回現地調査
の目的は更なる詳細調査実施及び現地視察である。第4回現地調査は、特定案件に関する追加情報の収
集、及びイーストウォーター社とのドラフトファイナル内容の最終確認、第5回現地調査は、実施機関
及び日本関係機関への最終報告を実施した。
表 2-1 第 1 回調査スケジュール
日程
行動
9月7日
8月8日
・JBIC との面談
・ジェトロ、JICA との面談
・アーンストアンドヤングとの面談
9月9日
・在タイ日本大使館との面談
9 月 10 日
・ハントン&ウィリアムス法律事務所との面談
9 月 14 日
・三井住友銀行、みずほ銀行との面談
9 月 15 日
・アユタヤ銀行との面談
・フアヒン自治体首長との面談
9 月 16 日
・フアヒン自治体における既存浄水場、下水処理場視察
9 月 17 日
・フアヒン自治体関係者との面談。
出典:調査団作成
表 2-2 第 2 回調査スケジュール
日程
行動
10 月 28 日 ・バンコク首都圏庁関係者との面談
11 月 2 日
・パタヤ特別市の既存下水処理場視察
11 月 3 日
・バンコク首都圏庁の既存下水処理場視察
11 月 4 日
・イーストウォーター社への中間報告
11 月 5 日
・在タイ日本大使館、ジェトロ、JICA への中間報告
11 月 6 日
・JBIC への中間報告
出典:調査団作成
表 2-3 第 3 回調査スケジュール
日程
行動
44
・フアヒン自治体の水源の現場視察
・フアヒン自治体関係者との面談
12 月 9 日
・フアヒン自治体首長との面談
12 月 17 日 ・パタヤ特別市における貯水池の現場視察
12 月 22 日 ・バンコク首都圏庁との面談
出典:調査団作成
12 月 8 日
表 2-4 第 4 回調査スケジュール
日程
行動
1 月 14 日
1 月 18 日
・タマサート大学教授との面談
・フアヒン自治体関係者との面談
・イーストウォーター社とのドラフトファイナル提出前の
1 月 21 日
打合せ
1 月 22 日
・バンコク首都圏庁との面談
出典:調査団作成
表 2-5 第 5 回調査スケジュール
日程
行動
2月8日
・イーストウォーター社への最終報告
・イーストウォーター社への最終報告(2 回目)
2 月 11 日
・ジェトロ、JBIC への最終報告
2 月 12 日
・JICA への最終報告
出典:調査団作成
45
第3章 プロジェクトの内容および技術的側面の検討
46
(1)プロジェクトの背景・必要性等
1) プロジェクトの背景・必要性
タイでは、ASEAN 諸国の中でも上水道サービスの普及の地域格差が大きいこと、下水道サービスは地
方のみならずバンコク首都圏庁においていも依然として遅れていること、また 2011 年の洪水、2015 年
の渇水により持続可能な水利用が課題となっている。
これに対して、タイ地方水道公社を筆頭株主とするイーストウォーター社は、現時点での計画事業は
多岐にわたっており、現在の中核事業である原水供給のみならず、給水、下水処理、再生水といった新
たな事業分野への展開を通じ、インフレ整備と環境対策の推進及び地域格差の是正を目指している。
特に以下の分野における事業強化を図っている。
a) 上水道インフラ整備の地域格差是正
b) 下水道インフラ整備の推進
c) 東海岸工業地帯向け環境対策
一方で、イーストウォーター社は上記の新たな事業分野で不可欠な技術・資金が十分でないため、海
外での水ビジネスにおける豊富な経験(フィリピンの Maynilad 社等)を有し、日本の技術及び組織・
金融制度に精通する丸紅株式会社に協力を要請した。尚、資金調達について、イーストウォーター社は
日本の政府系金融支援を検討しているところ。
イーストウォーター社の協力要請は、下水分野にも及んでいたため、丸紅株式会社は、ASEAN 地域に
おける上下水道分野の調査・設計・施工監理の経験を持ち、タイ国における下水分野に精通する日本工
営株式会社と共同で実現可能性調査を実施することとした。
また、イーストウォーター社の計画事業全てを一度に実現することは現実的に不可能であるため、調
査団は、優先的に解決するべき課題を特定し、経済性・実現可能性の観点から優先案件を 3 件選定する
こととした。丸紅株式会社は日本政府の金融支援や技術を用いた優先プロジェクトの課題解決を狙いと
している。
イーストウォーター社の計画事業が実現した際には、質の高い上下水道サービスの提供が可能となる。
質の高いサービス提供に至る過程において、日本からの技術、例えば再生水処理の膜や省スペース下水
処理施設の導入等、或いは上下水処理施設・管路施設の維持管理における日本の自治体からの技術移転
が必要となるため、本事業の実現は重要である。
2) 優先プロジェクトの選定
イーストウォーター社には上記で示したとおり、各分野の事業強化を図るための事業計画が存在する。
これらのプロジェクトはそれぞれ特徴及びステータスが異なるため、イーストウォーター社によって表
3-1 に示す 11 件のプロジェクトにスクリーニングされた。
その後、現段階における事業内容の具体性やイーストウォーター社の意向から 5 つのプロジェクトが
選定された。選定された 5 つのプロジェクトが表 3-1 の 1 から 5 である。この 5 つのプロジェクトを調
査し、最終的に詳細調査を実施する 3 つのプロジェクトに絞っていく。
ロングリスト
優先
プロジェクト
ショートリスト
図 3-1 優先プロジェクトの選定
表 3-1 将来のプロジェクトのロングリスト
No.
プロジェクト名
特徴
ステータス
1
フアヒン上下水案件
後述
2
パタヤ再生水・下水案件
後述
3
バンコク首都圏庁小規模下水案
件
Ratchapra ダムからプーケットへ
の原水配水管
後述
給水マスタープラ
ン策定中
イーストウォータ
ー社と MOU 締結
協議中
後述
地方水道公設計中
4
47
No.
プロジェクト名
5
7
カンチャナブリ水クラスター案
件
バンコク首都圏大規模下水案件
(Klong Toey)
Nava Nakorn 再生水案件
8
配水管網案件
9
マイクロ水力発電案件
6
首都圏水道公社 RO 膜海水淡水化
プラント
11
Lak Chai Meung Yang 水管理シス
テム案
出典:イーストウォーター社
10
特徴
ステータス
後述
実現可能性調査中
処理能力 360,000m3/日
マスタープラン策
定
N/A
飲料水の給水源として使用す
るため、Prempracha 運河の排
水処理を行う
1 つの配水管網で Chao Phraya
川と Tha Chin 川を繋ぐ
ポンプ場等給水施設の電力需
要を満たすマイクロ水力発電
所の建設
Samut Prakan 向け RO 海水淡
水化
Chai Meung Yang 工業団地向け
水道水・下水道システム開発
N/A
N/A
N/A
N/A
上記 5 つの優先プロジェクト概要を以下にまとめる。
1.
フアヒン上下水案件
フアヒン自治体の既存の給水システムは、水不足、
48%に上る高無収水率、そして浄水場・管網等の給水施
設の運転・維持管理技術の欠如といった課題に直面して
いる。約 80km のアスベスト管は 60%が 15 年から 20 年
前に敷設されており、40%が 21 年から 40 年前に敷設さ
れているため、フアヒン自治体は新しい給水システム及
び無収水削減プロジェクト、さらに既存の浄水場・管網
の適切な運転・維持管理の研修プログラムを必要として
いる。
下水分野に関しては、フアヒン自治体の下水処理管理
部門によると、フアヒン自治体中心部の下水処理施設は
十分機能しているため、i)Khao Tao 地区の下水道システ
ム、及び ii)下水道サービス向上のための下水収集シス
テム、下水処理場-1(RBC)
、下水処理場-2(OD)の効率
活用の強化を中心とした既存下水施設の改修としてい
る。
Irrigation
Canal
10-40 km
Phase-1: 48,000 m3/d
Phase-2: 48,000 m3/d
NEW
WTP
Proposed Expansion of
Water Supply
Existing Water
Supply
Pranburi
Reservoir
20 km
図 3-2 フアヒン自治体の上水供給
48
2.
パタヤ再生水・下水案件
パタヤ特別市内には 4 つの既存浄水場が存在する。これらの浄水場は現在の水需要は満しているが、
今後のパタヤ特別市の人口増加及び急速な産業の発展
を想定すると、現状の供給能力では、将来の水需要を
満たすのに十分ではない。このため追加の水源として、
新たな貯水池の建設、節水、海水淡水化プラントの建
設、地下水及び再生水の利用が挙げられる。しかし、
PP
現状で想定している新規貯水池の建設は送水管路延長
が非常に長くなるためパタヤ特別市では現実的でなく、
P
節水は低コストで着手が可能であるがそれのみで水需
Existing
要を満たすほどの効果は期待できない。地下水の利用
Watnongyai
は制限されており、海水淡水化プラントの建設コスト
WWTP
P
P
は再生水の利用より高いといった理由から、再生水の
65,000 m3/d
P
利用が新たな水源として期待される。
Existing
3.
バンコク首都圏庁小規模下水案件
Watbun WWTP
バンコク首都圏庁は、以前国家住宅公社が運営し
85,000 m3/d
Gravity Sewer
1998 年にバンコク首都圏庁に移管した 12 の下水処理場
Pressure Sewer
を運営している。これらの下水処理場の処理能力は
3
3,000 m /日以下と小規模で、現在、国家住宅公社の住
P Pump
宅開発地域周辺に存在する水路が汚水収集システム、
WWTP
及び下水処理施設の不足により汚染されているとバン
図 3-3 パタヤ再生水・下水案件
コク首都圏庁により報告されている。また、国家住宅
公社が住宅開発地域拡大を計画しており、近い将来に
排水量の増加が予測される。従って、バンコク首都圏庁は既存の汚水収集システムの改善及び下水処理
場の処理能力の拡張の必要性がある。その中でも、タイ国の玄関口であるスワンナプーム国際空港のあ
るラートクラバン地区に位置する Rom Klao の下水処理場は、既存施設の老朽化や近年の都市開発によ
り下流水路における水質悪化の汚染源となっているため、バンコク首都圏庁の要請もあり、本調査にて
優先的に取り組むこととする。
バンコク首都圏全体で見た場合、上水消費量は約 2,500,000m3/日であり、汚水発生量をこの 80%と
試算すると、2,000,000m3/日に上る。現在のバンコク首都圏における下水処理能力は 1,100,000m3/日であ
り、100%の下水普及率達成のためには、900,000m3/日分に充当する資本支出(概算によると、800 億
バーツ)が必要となる計算である。今回の調査で取り上げる案件自体は小規模だが、バンコク首都圏庁
が今後実施する下水道案件規模は非常に大きい為、今後、日本政府の金融支援や技術支援が必要となる
可能性がある。
表 3-2 12 の開発地域における既存下水処理場の処理能力
下水処理場
汚水流入量
既存処理能力
(m3/日)
(m3/日)
1 Thung Song Hong-1
1,400
3,000
2 Thung Song Hong-2
947
1,100
3 Bang Bua
812
1,200
4 Ram Intra
600
800
5 Huay Kwang
1,162
2,400
6 Tha Sai
1,546
1,400
7 Bangna
1,209
1,500
8 Bon Khai
350
400
9 Klong Toey
796
1,200
10 Klong Chan
2,387
6,500
11 Hua Mark
1,485
1,500
12 Rom Klao
1,936
3,800
合計
24,800
出典: バンコク首都圏庁
49
4.
Ratchapra ダムからプーケットへの送水案件
地方水道公社は、乾季等の地方自治体による給水が
困難な際に、法律に基づき、地方自治体は給水を実施
する権限を有している。そのため、地方水道公社はプ
ーケットへ水を供給するための給水施設の開発を計画
中。Ratchapra ダム及び新たに建設される浄水場(処
理能力 432,000 m3/日)を水源とし、プーケットだけで
なく送水管路に沿った他の地方都市へも送水が可能と
なる予定。一般顧客は、地方自治体と地方水道公社の
二つのメーターを有することになり、ある一定数の顧
客が給水を求めた場合、地方自治体は地方水道公社に
対する給水を許可する形となる。送水管路延長は口径
1,800mm が約 31km、
及び口径 1,600mm が約 98km である。
Ratchaprapa Dam
NEW
WTP
432,000 m3/d
Phuket Prov.
図 3-4 プーケットへの
原水供給プロジェクト
5.
件
カンチャナブリ水クラスター案
本件は、Srinakarin ダムから原水
を取水し、2 ヵ所の浄水場にて浄水後、
5 つの地区に送水する事業である。2
ヵ所の浄水場はそれぞれ 156,000 m3/
日、876,000 m3/日の処理能力を計画
している。送水管路は延長 500km が計
画されており、カンチャナブリ、ナコ
ーンパトム、サムットサーコーン、サ
ムットソンクラーム、ラーチャブリー
の 5 地区に送水される。また、13 ヵ
所の増圧ポンプ場の建設が計画され
ており、5 地区に送水される。本件は
現地コンサルタントにより現在調査
が実施中である。 調査当初には、1
つの水源で 5 つの地区への給水が可
能とされたが、長距離の送水管路建設
が事業のフィージビリティの観点か
ら困難となり、各地区でいくつか水源
を保有する必要があると報告されて
いる。
Kanchanaburi Prov.
WTP
156,000 m3/d
Nakon Pathom Prov.
876,000 m3/d
WTP
Samut Sakhon Prov.
Ratchaburi Prov.
Samut Songkhram Prov.
図 3-5 カンチャナブリ水クラスター案件
50
本調査で実現可能性を確認する優先プロジェクトを選定するために、以下の基準で調査団による二次
スクリーニングを行い、3 プロジェクトに絞った。
表 3-3 優先プロジェクト選定基準
基準
備考
イー ストウォー ター社
イーストウォーター社のビジネスプランを満たすか
1
の意向
調査団の事業コスト見積りに基づき、プロジェクト規模を評
2 案件規模
価
現地のニーズを満たすために早急に必要なプロジェクトか
3 現地のニーズ
水道料金・下水道料金が短期間で回収可能か
4 経済的実現可能性
4とほぼ同等の結果
5 融資可能性
出典: 調査団作成
No
各プロジェクトは、上記の基準で A:非常に高い、B:高い、C:中立、D:低いで評価した結果、現地
ニーズを鑑みて 3 つのプロジェクトをより詳細に調査し、日本の支援による事業として形成していくこ
ととした。表 3-4 に選定の概要を記載する。
表 3-4 優先プロジェクト選定の概要
Evaluation
No
Potential Projects
EW's
Inclination
Project Scale
(baht)
Local
Needs
Economic
Viability
Lending
Possibility
Ranking
1 Hua Hin Water Supply and Sewerage Project
A
2.3-3.2 Bil
C
A
A
A
1
2 Pattaya Water Recycling Project
A
2.0-2.5 Bil
C
A
B
B
2
3 BMA Small Scale Wastewater Treatment Plant
A
0.8 Bil
C
A
C
C
3
Raw water transmission pipe from Ratchaprapa
4 dam (Suratthani Province) to Phuket Province for
water supply project
C
7 Bil
B
C
C
C
5
5 Water cluster Projects (Kanchanaburi Province)
C
20-25 Bil
A
C
C
C
4
出典: 調査団作成
最終的に選定された優先プロジェクトは、以下である。

フアヒン上下水案件

パタヤ再生水・下水案件

バンコク首都圏庁小規模下水案件
(2)プロジェクトの内容等決定に必要な各種検討
1) フアヒン上下水案件
a) 現況
i) 上水道施設
フアヒン自治体の取水設備、浄水場、貯水池及び配水システムといった既存上水道施設は図 3-6 及び
図 3-7 のレイアウトマップに示される。フアヒン自治体には、Pran Buri 貯水池と Phet 調整池の 2 つの
水源がある。原水は Pran Buri 貯水池からの圧送、及び Phet 調整池からの自然流下によって各浄水場
内の貯水池へ導水される。表 3-5 は既存の貯水池の特徴を、表 3-6 は既存の浄水場一覧を示している。
現状、既存浄水場からの給水量では需要を満たしておらず、このためフアヒン自治体の既存浄水場では
浄水能力を上回る処理を行っている状況である。給水能力を最大限に高めるために、追加で濾過設備が
導入されたものの、処理工程は十分ではなく水質悪化を引き起こしている状況である。表 3-7 は既存の
配水管一覧を示しているが、配水管路は全長 278km に上り、このうちアスベスト管は 78km ある。
51
表 3-5 フアヒン自治体における既存原水貯水池
容量
No.
名前
水源
備考
(m3)
Kong Prajun
用水路及び高密度ポリエ
35,000 Phet 調整池
1
原水貯水池
チレン管 Ø 400 mm
高密度ポリエチレン管
Phet 調整池
Damnoen Kasem
Ø 400 mm
23,000
2
原水貯水池
Pran Buri 貯水池
鋼管 Ø 500 mm
Khao Tao
1,200 Pran Buri 貯水池
アスベスト管 Ø 300 mm
3
原水貯水池
Hua Na
鋼管 Ø 500 mm 及び高密度
87,000 Pran Buri 貯水池
4
原水貯水池
ポリエチレン管 Ø 710 mm
Khao Laeng
高密度ポリエチレン管
87,000 Pran Buri 貯水池
5
原水貯水池
Ø 710 mm
出典: 調査団作成
表 3-6 フアヒン自治体における既存浄水場
No.
1
敷地面積
(m2)
浄水能力
(m3/日)
Damnoen Kasem 浄水場
4,000
2,880
Rai Nun 浄水場
6,400
15,600
Hua Na 浄水場
51,200
12,000
Khao Laeng 浄水場
208,000
12,000
Khao Tao 浄水場
10,000
1,200
浄水場名
2
3
4
5
合計
出典: 調査団作成
ポンプ
3
m /時
240 x 2 回
560
400
450
500
500
200
x 2 回
x 1 回
x 2 回
x 1 回
x 1 回
x 2 回
(重力流)
75 x 3 回
43,680
表 3-7 フアヒン自治体における配水管路
口径(mm)
延長(km)
比率(%)
100
122.6
44%
150
55.8
20%
200
27.8
10%
250
34.5
12.5%
300
22.6
8%
400
14.7
5.5%
合計
278
出典: 調査団作成
52
揚程(m)
40
50
74
60
72
60
40
30
図 3-6 フアヒン自治体における既存上水道施設系統図
53
図 3-7 既存給水施設レイアウト図
54
ii)下水道施設
フアヒン自治体における汚水収集は、フアヒン自治体中心部である 23 km²のエリアをカバーし、合流
式の下水システムを採用している。フアヒン自治体では 2 つの既存下水処理場を有しており、表 3-8 に
示すように、一つは処理能力 8,000m3/日の回転生物接触法を用いた下水処理場(WWTP-1)、もう一つは処
理能力 17,000 m3/日のオキシデーションディッチ法を用いた下水処理場(WWTP-2)で、両処理場の水源
は家庭、ホテル、市場やレストランの排水が主である。
表 3-8 フアヒン自治体における既存下水処理場の概要
WWTP-1
WWTP-2
処理方式
回転生物接触法
オキシデーションディッチ法
8,500 m3/日 (既存)
処理能力
8,000 m3/日
17,000 m3/日 (拡張予定)
運転開始年
1991
2002
敷地面積
1,900 m2
16,233 m2
BOD: 150 mg/l
BOD: 3.1-31.1 mg/l
流入水質
SS 150 mg/l
SS 7-46 mg/l
BOD: 20 mg/l
BOD: 2.9-9.9 mg/l
放流水質
SS 30 mg/l
SS 7-27.4 mg/l
出典: 調査団作成
Royal Palace
Hua Hin
Golf Course
RBC WWTP
Sofitel Hotel
Market Village
Sailom Hotel
Cicada Night Market
Vana-Nava
Water Park
Oxidation Ditch WWTP
Khao Takiab
Takiab Canal
Effluent discharge to
open sea
図 3-8 既存下水処理施設サイト
55
b) 需要予測
i) 上水道
調査団は、2008 年から 2014 年のフアヒン自治体の売水量の統計データに基づき、上水の需要予測を
実施した。需要予測に際して、類似した観光都市で下水料金徴収も実施しているパタヤ特別市における
同様の需要予測を参考にしながら、表 3-9 に示す以下の前提を設定した。尚、需要予測には 2018 年か
ら 2022 年にかけて、
48%から 25%への無収水率低下を目指す無収水削減プログラムを含むものである。
表 3-9 需要予測前提
No.
1
2
3
4
5
6
出典:
前提
人口増加率
世帯当たり人口
顧客増加率
給水量原単位
水消費増加率
ピークファクタ(最大 / 平均)
調査団作成
単位
%
人
接続/年
l/接続/日
%
-
値
2.0
1.2
1,200
1,200
0.25
1.3
図 3-9 の 2040 年までの需要予測に示すように、2025 年の平均水需要は約 69,500 m3/日、最大水需要
は約 90,300 m3/日となる。2035 年までには、平均水需要は約 91,400 m3/日に増加し、最大水需要は約
119,000 m3/日にまで上昇する。
160,000
180.00%
170.00%
140,000
160.00%
150.00%
Increased Plant
Capacity 48,000
m3/d
140.00%
130.00%
100,000
120.00%
110.00%
80,000
100.00%
90.00%
AVG. WATER DEMAND
60,000
Increased Plant
Capacity 48,000
m3/d
80.00%
MAX. WATER DEMAND
40,000
70.00%
60.00%
WATER TREATMENT PLANT
CAPACITY
% Non-revenue water
20,000
50.00%
NRW Ratio
Volume (m3/d)
120,000
40.00%
30.00%
0
FROM RAW DATA(2008-2014)
2040
2039
2038
2037
2036
2035
2034
2033
2032
2031
2030
2029
2028
2027
2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
20.00%
YEAR
出典: 調査団作成
図 3-9 水需要予測
上記に従えば、追加の浄水場が 2 段階で必要となる。フェーズ-1 として、今後 10 年間の水需要を満
たすために早急に必要となる部分を、現在の浄水能力 43,680 m3/日に追加で 48,000 m3/日を給水するた
めの浄水場の建設を行い、フェーズ-2 で、図 3-9 が示す今後 20 年間の水需要を満たすため、更に追加
で必要となる 48,000 m3/日を供給する浄水場を建設する。
フアヒン自治体の南部に位置する Pran Buri 貯水池は、貯水池内の貯水量が十分でなく、全地域をカ
バーする給水サービスを保証するために、新設浄水場の取水源は Phet 調整池より取水することを提案
する。表 3-10 は、本調査で提案する浄水場をフェーズ毎に示したものである。
56
表 3-10 新設浄水場の建設計画
水源
Phet調整池
Pran Buri貯水池
Phet調整池
Phet調整池
浄水場
既存浄水場の浄水能力
浄水場(フェーズ-1)
浄水場(フェーズ-2)
合計
出典: 調査団作成
浄水能力(m3/日)
43,680
48,000
48,000
139,680
ii) 下水道(汚水量)
フアヒン自治体の下水道セクターマスタープランは 1999 年に策定され、1998 年から 2021 年の計画汚
水量を作成している。計画汚水量は、以下の前提に基づいて作成される。
フアヒン自治体の下水道サービスエリアは図 3-10 に示すとおりゾーン A からゾーン G の 7 エリアに
分けられている。

水消費者は 8 つのカテゴリーに分類される(表 3-11 参照)

単位当たり水消費量の増加率:1998 年から 2007 年は 2%、2008 年から 2021 年は 1%

単位当たり排水量は単位当たり水消費量の 80%と推定

浸透率は汚水量の 20%と推定
表 3-11 単位当たり水消費量及び汚水量
Type of User
Residential
Commercial
Excursionist
Hotels
School
Hospital/Clinic
Slaughterhouse
Factory
Unit
l/person/d
l/person/d
l/person/d
l/person/d
l/person/d
l/bed/d
l/animal/d
l/place/d
1998
2008
2021
Water Supply Wastewater Water Supply Wastewater Water Supply Wastewater
290
232
354
283
406
325
345
276
421
336
483
387
30
24
30
24
30
24
1,190
952
1,190
952
1,190
952
20
16
20
16
20
16
170
136
170
136
170
136
130
104
130
104
130
104
6,610
5,288
6,610
5,288
6,610
5,288
出典: フアヒン自治体マスタープラン(1999)
57
表 3-12 1998 年~2021 年 汚水量予測
1998 (High Season)
Residential Community
Zone
Zone A
Zone B
Zone C
Zone D
Zone E
Zone F
Zone G
Total
Commercial Community
Tourists
Excursionists
large Source
Total
Wastewater
Wastewater Volume including
Wastewater
Wastewater
Wastewater
Wastewater
Wastewater
Person
Person
Rooms
Person
Sources
Volume(m3/d)
Volume(m3/d)
Volume(m3/d)
Volume(m3/d)
Volume(m3/d) Volume(m3/d) Infiltration(m3/d)
8,751
2,030 19,837
5,475
1,662
1,582
5,653
136
20
162
9,385
11,262
2,441
566
0
0
104
99
97
2
23
307
975
1,170
5,312
1,232
268
74
888
845
3,119
75
7
55
2,282
2,738
1,220
283
0
0
0
0
0
0
1
5
288
346
1040
241
0
0
130
124
195
5
3
12
382
458
1,449
336
0
0
40
38
195
5
4
21
400
480
1,632
379
1,743
481
10
10
97
2
4
19
891
1,069
21,845
5,068 21,848
6,030
2,834
2,698
9,356
225
62
581
14,602
17,522
2008 (High Season)
Residential Community Commercial Community
Tourists
Excursionists
large Source
Total
Wastewater
Zone
Wastewater
Wastewater
Wastewater
Wastewater
Wastewater
Wastewater Volume including
Person
Person
Rooms
Person
Sources
Volume(m3/d)
Volume(m3/d)
Volume(m3/d)
Volume(m3/d)
Volume(m3/d) Volume(m3/d) Infiltration(m3/d)
Zone A
8,567
2,416 22,349
7,509
2,244
2,136
7,631
183
20
183
12,428
14,913
Zone B
6,644
1,874
1,465
492
140
133
131
3
23
335
2,837
3,405
Zone C
6,400
1,805
717
241
1,198
1,140
4,211
101
7
63
3,350
4,020
Zone D
1,512
426
0
0
0
0
0
0
1
6
432
519
Zone E
1230
347
0
0
175
167
263
6
3
13
533
639
Zone F
2,478
699
0
0
54
51
263
6
4
22
779
934
Zone G
1,769
499
2,061
692
14
13
131
3
4
19
1,227
1,472
Total
28,600
8,065 26,592
8,935
3,825
3,641 12,630
303
62
641
21,586
25,903
2021 (High Season)
Residential Community Commercial Community
Tourists
Excursionists
large Source
Total
Wastewater
Zone
Wastewater
Wastewater
Wastewater
Wastewater
Wastewater
Wastewater Volume including
Person
Person
Rooms
Person
Sources
Volume(m3/d)
Volume(m3/d)
Volume(m3/d)
Volume(m3/d)
Volume(m3/d) Volume(m3/d) Infiltration(m3/d)
Zone A
8,953
2,910 27,119
10,468
3,001
2,857 10,203
245
20
211
16,690
20,029
Zone B
10,241
3,328
5,795
2,237
188
179
176
4
23
370
6,118
7,342
Zone C
8,132
2,643
1,474
569
1,603
1,526
5,630
135
7
73
4,946
5,935
Zone D
1,998
649
0
0
0
0
0
0
1
7
656
788
Zone E
1562
508
0
0
234
223
351
8
3
14
753
903
Zone F
3,990
1,297
0
0
72
69
351
8
4
24
1,398
1,677
Zone G
2,064
671
2,625
1,013
18
17
176
4
4
20
1,725
2,070
Total
36,940
12,006 37,013
14,287
5,116
4,870 16,887
405
62
719
32,287
38,745
出典: フアヒン自治体マスタープラン(1999)
表 3-13 計画汚水量の概要
45,000
Zone
A
B
C
D
E
F
G
Total
Wastewater quantity (m3/day)
1998
2008
2021
11,263
14,913
20,029
1,170
3,405
7,342
2,738
4,020
5,935
346
519
788
458
639
903
480
934
1,677
1,069
1,472
2,070
17,524
25,902
38,744
Wastewater Volume[m3/d]
40,000
35,000
A
30,000
C
20,000
D
E
15,000
F
10,000
出典: フアヒン自治体マスタープラン(1999)
58
B
25,000
G
5,000
Total
0
1998
2008
Year
2021
出典: フアヒン自治体マスタープラン(1999)
図 3-10 フアヒン自治体の汚水収集ゾーン
2008 年及び 2021 年における 1 日当たりの平均汚水量は、1999 年の下水マスタープランでそれぞれ
25,902 m3/日と 38,744 m3/日と推定されている。他方、図 3-9 の水需要予測に基づき、汚水量が水消費
量の 80%と想定する場合、日平均汚水量はそれぞれ約 32,000 m3/日と 52,000 m3/日と計算される。既存
の下水処理場の総処理能力は 25,000 m3/日であり、マスタープランの 2008 年時点での汚水量と一致す
る。従って、2014 年の水消費量に基づく汚水量約 29,000 ㎥/日は処理されずに直接自然水路や海に排出
されていると考えられる。
(表 3-14)
表 3-14 未処理汚水量
処理能力
No
1
項目
日平均水消費量(2014)
2
3
推定汚水量
既存下水処理場の総処理能力
3
67,680 m /日
54,144 m3/日
25,000 m3/日
29,144 m3/日
4
未処理汚水量
出典: 調査団作成
59
備考
フアヒン自治体実績デー
タ
水消費量の 80%
WWTP-2: 17,000 m3/日
WWTP-1: 8,000 m3/日
No.2- No.3
c) 課題
i) 水資源
浄水場へ原水を供給するため、Pran Buri 貯水池と Phet 調整池の 2 つの水源が存在する。図 3-6 は、
取水から浄水場までの上水供給施設の系統図である。
[Pran Buri 貯水池]
Pran Buri 貯水池は、プラチュワップキーリーカンの Pran Buri
地区に 1981 年に建設された。
ダム本体は提体高 42m、
長さ 1,500m、
3
そして 445 百万 m の貯水容量で形成される堤防タイプである。原
水は農業用水路からポンプにより圧送され、口径 1,000mm の高密
度ポリエチレン管を通して Khao Laeng 浄水場へ、口径 600mm のス
チール管を通して Damnoen Kasem 原水貯水池及び Hua Na 原水貯水
池へそれぞれ導水されている。
図 3-11 Pran Buri 貯水池
[Phet 調整池]
Phet 調整池は、ペッチャブリー内 Tha Yang 地区の Tha Khoi 小
地区西部に 1950 年に建設された。ダム本体は提体高 22m、長さ
273.6m、幅 148.85m で形成されるコンクリート構造である。
Phet 調整池の原水は、10.49 m3/秒もしくは 906,336 m3/日の流
量で農業用水路-3 を通って Khao Wang ポンプ場へ導水されている。
フアヒン自治体は用水路からポンプにより Damnoen Kasem 浄水場
へ圧送するため、口径 400mm の GRP パイプを導入した。
図 3-12 Phet 調整池
図 3-13 は 2013 年から 2015 年の Pran Buri 貯水池の貯水容量記
録を記載したものである。標準最小容量より貯水量が低くなる水
不足が 2013 年の 6 月と 7 月に発生し、2015 年の 9 月と 10 月に深刻な状況に陥った。そのためフアヒン
自治体は、Pran Buri 貯水池ではなく Phet 調整池から原水を取水する新たな上水道プロジェクトを計画
している。
出典: フアヒン自治体
図 3-13 Pran Buri 貯水池の貯水容量(2013-2015)
60
ii) 無収水
現在の給水サービスエリアはフアヒン自治体全世帯の 60%をカバーしている。浄水はポンプで直接配
水管に送られているが、Khao Laeng 浄水場及び 3 ヵ所の配水池のみ標高が高い場所にある関係で、高架
タンクを通じ自然流下により配水している。幹線管路の管材はアスベスト、ポリ塩化ビニル及び高密度
ポリエチレンであり、口径 100‐400mm の管路は Phetkasem 道路の両側に沿って敷設されている。現在
の配水システムにおいて、約 80km のアスベスト管では頻繁に漏水及び給水サービスの停止に繋がる管
路の破損が起きているとみられる。表 3-15 に既存のアスベスト管の概要を示す。
表 3-15 既存アスベスト管
口径(mm)
延長(km)
比率(%)
100
16.0
20%
150
15.6
20%
200
14.0
18%
250
14.5
19%
300
9.4
12%
400
4.7
6%
500
3.7
5%
合計
77.9
出典: 調査団作成
頻繁な漏水が 2014 年の 48%という高い無収水率をもたらしたため、フアヒン自治体は漏水を最小限
抑えるために、低圧バルブを導入している(表 3-16)が、結果として、丘陵地帯のエンドユーザーに対
して水圧の低下という事態を引き起こしている。高い無収水率はアスベスト管が原因で引き起こされて
いる可能性があるため、既存のアスベスト管の交換が推奨される。
表 3-16 フアヒン自治体の実績(2006-2014)
Customer Type
Residential Government Commercial
Year
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
25,124
26,003
27,088
28,071
-
578
637
639
641
431
454
475
506
Water
Total
Water Sale
Revenue Expenditur
Production
Raw Water Number of
(Million NRW (%) (Million e (Million
(Million
for
Customers
m3/year)
Baht/Year) Baht/Year)
m3/year)
Residential
19,466
13.90
8.24
41%
70.89
63.30
20,994
14.20
9.07
36%
78.90
68.26
22,496
14.70
9.45
36%
114.80
102.12
23,976
15.30
10.37
32%
77.85
98.59
25,105
15.90
11.03
31%
102.30
78.46
40
26,173
18.13
11.11
39%
94.30
86.06
41
27,135
18.13
12.14
33%
103.70
106.12
41
28,243
24.70
12.50
49%
108.96
89.24
41
29,259
24.70
12.87
48%
111.89
99.57
出典: フアヒン自治体
iii) 上水の水質管理と運転管理
現状では、原水と浄水の水質分析が定期的に行われておらず、不適切な化学薬品の使用等、信頼性の
低い原水の水質分析が問題となっている。また、定期的に実施されている水質測定パラメーターは pH
及び濁度の測定のみであり(表 3-17)
、国家環境委員会の表面水質測定通知及び世界保健機関の水道水
基準の両方の基準に準拠していない。
61
表 3-17 フアヒン自治体既存浄水場の水質
Damnoen Kasem WTP
Parameter Unit
2006/6/16
Raw Water
pH
6.2
Turbidity
16.6
Clear Water Tank
pH
7.9
Turbidity
1.1
Rai Nun WTP
Parameter Unit
Raw Water
pH
Turbidity
Clear Water Tank
pH
Turbidity
Hua Na WTP
Parameter Unit
Raw Water
pH
Turbidity
Clear Water Tank
pH
Turbidity
Khao Tao WTP
Parameter Unit
Raw Water
pH
Turbidity
Clear Water Tank
pH
Turbidity
Khao Laeng WTP
Parameter Unit
Raw Water
pH
Turbidity
Clear Water Tank
pH
Turbidity
2015/8/26 2015/9/3 2015/9/10
2006/9/8 2016/9/9 2006/9/15
7.9
2.78
7.8
3.01
7.8
4.27
7.8
2
7.8
2.5
7.7
2.21
2015/8/26 2015/9/3 2015/9/10
7.39
21.8
7.55
21.3
7.42
21.2
7.9
2.78
7.9
2.99
7.8
4.27
7
6.22
7.26
4.9
6.86
7.8
7.8
1.9
7.6
2
7.7
2.11
2006/9/15
2015/8/26 2015/9/3 2015/9/10
7.42
21.2
7.8
4.72
7.8
4.9
7.7
5.27
6.86
7.8
7.8
1.9
7.8
3.5
7.7
3.33
2006/9/20 2006/9/21 2006/9/22 2006/10/7
7.27
9.87
7.4
8.48
7.33
8.41
7.93
4.37
7.14
2.51
6.95
2.31
7.66
2.63
7.91
1.07
2006/9/21 2006/9/22 2006/10/7 2015/8/26 2015/9/3 2015/9/10
7.07
10.2
7.06
8.4
7.67
3.43
7.9
2.78
7.8
2.8
7.8
3.22
7.51
1.31
7.46
1.07
7.79
2.08
7.8
2.3
7.8
3.5
7.7
3.97
出典: フアヒン自治体
備考: 浄水場の原水貯水池より原水をサンプリング
4 つの浄水場(Damnoen Kasem, Rai Nun, Hua Na,及び Kao Tao 浄水場)からの給水は、主に高架タンク
ではなくポンプによるものである。日常的に使用される圧送ポンプは緊急時もしくは電力障害時のため
の予備ポンプ無しで稼動しているため、いずれかの緊急時には給水システムが中断してしまう状況にあ
る。
また、調査団は下水処理場を訪問し調査を行った。
(表 3-18)
表 3-18 フアヒン自治体既存下水処理場の評価と提案
Treatment Facility
Primary Treatment
Collection Sump
Automatic Bar Screen
Grit Chamber
Secondary Treatment
Aeration Tank
Secondary Sedimentation Tank
Sludge Holding Tank
Disinfection
Chlorine Dosing System
Chlorine Contact Tank
Dewatering Sludge
Belt Filter Press
Evaluation
Remarks
Recommendation
Adequate
Adequate
Inadequate
Machines/Equipment are
damaged
Check and repair/replace the travelling
bridge. Install a degreasing equipment
Machines/Equipment are
damaged
Check and repair/replace the gear motor,
scraper, etc.
Adequate
Inadequate
Adequate
Inadequate
Check and repair the chlorine pumping
Machines/Equipment are out of
system. Install a residual chlorine
order
measurement instrument
Adequate
-
Machines/Equipment are not in
use due to low sludge volume
Inadequate
Lack of personnel for
laboratory work
Laboratory
Laboratory Room
Need training for all laboratory staff
出典: 調査団作成
iv) 下水道施設の必要性
2015 年 9 月のフアヒン自治体への聞き取り調査にて、フアヒン自治体はゾーン D(図 3-10 参照)の
Kao Thao 地区に新たに独立した下水道システムを構築すること、及びサービスエリアを満たし既存の 2
ヵ所の下水処理場を効率的に運転するための汚水収集システム改修の必要性を感じている。下水処理の
62
手法には、回転生物接触法とオキシデーョンティッチ法とが検討されるが、タイ国内で唯一の回転生物
接触法を用いた既存下水処理場(8,000 m3/日)は運転を開始して以来、その運転の視察に国内外の多くの
学生が訪れており、この下水処理場を公共の学習センターとして保持したいとフアヒン自治体は考えて
いる。
一方、オキシデーションディッチ法を用いた下水処理場では、既存のエリアで当初計画の 34,000 m3/
日の下水処理を行うことが可能である。2015 年時点でオキシデーションディッチ法の既存施設の処理能
力は予算の都合により 8,500 m3/日に留まっているが、2015 年に締結した建設契約の完工後には、処理
能力は 17,000 m3/日となる。また、オキシデーションディッチ下水処理場の利用可能な土地では処理場
の拡張が可能であり、フアヒン自治体は回分式活性汚泥法などの別の処理方式の採用を検討している。
既存の 2 ヵ所の下水処理場は海岸近くに位置しているため、排水は海水の水質に影響を与える可能性
がある。タイでは海の水質が汚染管理局によって数値的に報告されないため、利用可能な地域データは
Chulalongkorn 大学より取得した。これらのデータより、フアヒン海岸沿いの海の水質は表 3-19 に示す
ように 2012 年時点で海岸線の各地域において「良い」から「中程度」にランク付けされていたが、Sofitel
ホテル地域の腸球菌と Sofitel ホテル地域及び Khao Takiab 地域のアンモニアが規定値を超えたため、
2014 年には Khao Takiab 地域の水質は「悪い」にランク付けされた。水質結果によって確認されるよう
に、現在の Khao Takiab 地域の海岸はビーチとして良好な状況でなはく、これは未処理下水やこの地域
への大量排水の両方が影響している可能性がある。
従って、Khao Takiab のような汚染の可能性のある地点で採水試験を実施し、各水利用形態から汚水
量を調査し、既存の排水状況を把握することが推奨される。調査により既存施設における問題点を把握
し必要となる新規施設の処理方式・施設規模等の検討が可能となる。
地域
評価
Klaikangwon 宮殿
Sofitelホテル
Sailomホテル
Khao Takiab
標準値*
良い
中
良い
中
‐
表 3-19 フアヒン海岸水質調査結果(2012)
pH
DO
NH3‐N NO3‐N
TCB
(mg/L) (µg/L) (µg/L) (MPN/100
ml)
8.1
8.0
8.1
8.1
7‐
8.5
7.46
6.63
6.68
7.05
>4
75.5
77.1
22.7
85.5
<70
22.0
37.0
11.0
12.0
<60
13
330
<1.8
330
<1,000
FCB
CFU/100
ml)
16
60
<1
59
<100
Enteroco
cci
(CFU/100
ml)
21
47
1
14
<35
出典: Chulalongkorn 大学
備考: * 階級 4 の海水標準値: レクリエーション・スポーツのための水質
v)料金
〔水道料金〕
現在の水道料金は 2005 年 10 月 1 日にフアヒン自治体にて制定され、5 年ごとに料金改定が可能であ
るにもかかわらず 10 年以上改定されていない。表 3-20 は現在のフアヒン自治体の水道料金の構成を表
している。
表 3-20 フアヒン自治体の水道料金の構成(2005 年 10 月 1 日より)
範囲
継続利用者
範囲
一時的な利用者
(㎥)
(バーツ/㎥)
(㎥)
(バーツ/㎥)
0-5
(転換料 18 バーツ)
0-5
(転換料 18 バーツ)
6-40
3.50
6-40
5.00
14-60
4.00
41-100
6.00
61-80
4.50
101-200
8.00
81-100
6.00
201-300
10.00
101-200
8.00
301 以上
15.00
201-300
10.00
301-400
12.00
>401
15.00
出典:HHM 水道局長
注記:一時的な利用者とは建設期間中の水消費者のことをさす
63
[下水料金]
下水料金の請求は 10 年前から開始されているが、実際の回収は 2 年前から行われている。表 3-21 の
通り、フアヒン自治体は 2013 年に国家環境委員会による地方下水処理料金地方法を制定。同法ではフ
アヒン自治体からの水道水を利用する全ての世帯、官庁、民間企業は下水処理料金を支払うよう定めて
いる。本調査により、官庁及び一部民間企業は支払い意志があるが、一部の地方世帯及び民間企業は支
払い意志が低く、最近は住宅からの費用は徴収していないことを確認した。5 回の延滞は違約金を課す
一方で、この違約金は季節変動のある営利団体に対しては多少流動的である。下水徴収料金は、2014 年
は 6 百万バーツ、2015 年は 10 百万バーツとなっている。
表 3-21 フアヒン自治体の下水道料金(バーツ/㎥)
年
汚染源
タイプ 1
4.00
2014–2021
汚染源
タイプ 2
4.75
汚染源
タイプ 3
5.75
出典:フアヒン自治体
タイプ 1:一般家庭、タイプ 2:官庁、タイプ 3:民間企業
d)概略設計
1)プロジェクト範囲
[上水道]
フアヒン上水道事業の範囲は、1)水需要を満たすための新規上水システムの建設、2)無収水の削減、
3)既存施設の維持管理能力の向上、である。
前述した需要分析から、追加の浄水場は以下の通り 2 フェーズで建設される。
フェーズ-1:新しい容量 48,000 ㎥/日の浄水場建設
フェーズ-2:新しい容量 48,000 ㎥/日の浄水場建設
図 3-14 の通り、新たな浄水場の建設場所はフアヒンの北部にあるムックダーハーン自治体を予定し
ている。供給システムと新しい浄水場をつなぐためにはライヌン浄水場まで 23.9km の管路の敷設が必
要となる。新設浄水場は既存の農業用水路より上流に建設される計画であるため、Phet 調整池から浄水
場の導水管路施設は最小限とすることが出来る。また、取水施設および新設浄水場内の貯水池のどちら
もフェーズ-1 において建設する。新設上水道システムの施設計画は以下の通りまとめられる。
表 3-22 新しい供給システムのための施設計画
施設
導水管路
浄水場
送水管路
特徴
鋼管 D1000、L:1.2km
フェーズ-1:48,000m3/日
フェーズ-2:48,000m3/日
フェーズ-1:HDEP D900、L:29.3km
フェーズ-2:HDEP D900、L:29.3km
出典:調査団作成
新規浄水場の概略レイアウトは図 3-15 に示す通りである。標準的な処理方式であり必要とする敷地
面積は約 144,000 m2 と概算される。農業用水路からの原水は灌漑目的にも利用されているため灌漑施設
の修繕等の場合を考慮し、浄水場敷地内で 7 日間分の原水を蓄える貯水池を計画する。容量は 672,000 m3
である。
64
出典:調査団作成
図 3-15 新規浄水場のレイアウト
[無収水率削減計画]
現在の無収水率 48%は地方水道公社の目標である 25%まで削減することを提案する。削減計画は、ま
ずは表 3-15 のように全長 80km のアスベスト管に付け替え、同時に水供給システム維持のための配水ブ
ロックシステム(DMA)の構築が求められる。図 3-16 の通り、DMA は送水幹線からの流入箇所にのみメ
ーターを設置することにより流量をモニタリングするシステムである。それぞれの DMA はメーターで計
測される給水量によって境界がわけられている。DMA の大きさは道路、水路、送水管路の位置によって
異なるが通常は 1,000 から 3,000 接続を一単位とする。
DMA
Water
Source
Meter
P
High Ground Level
Reservoir
P
WTP
Meter
Low Ground Level
P
Reservoir
出典:調査団作成
図 3-16 DMA イメージ
フアヒン上水道事業がコンセッションの形態で実施される場合、既存施設を含む全ての上水道施設は
コンセッショネアの資産として移管される。
65
図 3-14 設計上の上水道施設
Proposed Water Treatment Plant and Water Pipeline
新規浄水場
送水管(フェーズ 2)
D:900mm, L 29.3km
送水管(フェーズ 1)
D:900mm, L 29.3km
出典:調査団作成
図 3-14 設計上の上水道施設
66
[下水道]
フアヒン下水道事業の範囲はフアヒン自治体への現状の聞き取り調査と 1999 年のマスタ
ープランによって策定した。フアヒン自治体で必要となる下水道計画は表 3-23 の通りであ
る。
Khao Tao 地区では、1999 年のマス
Sewerage System Improvement
in Kao Thao Area
タープラン策定以降継続的に調査
が行われていないため、まずはゾ
ーン D 全体の実現可能性調査が必
要になる。同地区に必要となる下
水管渠や下水処理場は、集水対象
2,360 m3/d
地域を元におおよそで想定した。
管渠径 600mm-800mm の下水管渠は
図 3-17 に示す通りであり、延長は
3.5kmと推定される。
NEW
WWTP
図 3-17
Khao Tao 地域の下水道事業
表 3-23 フアヒン自治体の下水道事業計画
計画
内容
1
Khao Tao 地区下水下水道事業 ・地形測量・地質調査、水質調査
(実行可能性調査、詳細設計及 ・汚水量、収集エリアの確認
び建設)
・下水管渠の敷設位置・仕様の検討
- 延長 3.5km, 管径 600mm-800mm
・下水処理場の建設場所、レイアウト、処理容量の
検討
処理容量 2,360 ㎥/日、敷地面積:1.13ha
2
下水マスタープランの更新
・人口増加のレビュー
・下水量の見直し
・水質調査
・既存下水道システムの見直し
・需要予測の更新
・必要な下水施設の提案
・プロジェクト費用の積算
・実施スケジュールの策定
3
既存下水道施設のリハビリ
・既存の汚水収集システムや下水処理場運用の検討
出典:調査団作成
[運用・保守(OM)スキルの強化]
既存の上下水道施設の維持管理が不十分であるため、浄水場については、水質測定や水・
薬品・定期洗浄の管理、保守、また無収水率削減のための漏出ヵ所の見つけ方、DMA 構築の
知識習得を薦める。
また、下水管渠についても維持管理に不可欠な管理台帳の整備、既存下水管渠の定期的な
洗浄、ポンプ施設の管理、保守についての知識取得が重要である。
67
2)パタヤ再生水・下水案件
a)再生水案件
i)原水供給の現状
第 1 章で触れた通り、パタヤ特別市はチョンブリー県にある特別市であり、チョンブリー
県では 7 ヵ所の工業団地と 2 ヵ所の工業地域、隣接するラヨーン県では 8 ヵ所の工業団地と
5 ヵ所の工業地域を擁している。パタヤ地区では、タイ石油公社、及び同公社の傘下企業
Thaioil Refinery 社の石油精製工場をはじめ、石油化学コンプレックス、その他業種の工場
郡があり、タイにおける有数の観光リゾートであるばかりではなく、一大工業地帯を形成し
ている。
イーストウォーター社は、パタヤ地区における原水供給に従事しており、工業団地・石油
化学コンプレックス等に加え、地域住民が使用する民生用水を含む膨大な水需要を効率的に
賄うべく、チャチョエンサオ地区、チョンブリー地区、プルアック・ダエンボーウィン地区、ラ
ヨーン地区の 4 地区に分割して給水地区を管理し、各地区に対してはドック・クライ貯水池、
ノン・プラ・ライ貯水池、クロン・ヤイ貯水池、プラサエ貯水池、ノン・ホ貯水池、バン・フラ貯水
池の計 6 ヵ所の貯水池を水源とする原水給水と、貯水池間の調整・補完給水を実施している
(有効貯水量計:661.35 百万㎡)。
上記 6 ヵ所の貯水池は、王室灌漑局の所有・運営となっているが、イーストウォーター社
は、王室灌漑局から通常 5 年毎に更新される給水許認可を付与され、貯水池を水源とした原
水の給水に従事している。なお、イーストウォーター社はこの地区一帯における原水給水需
要全体の約 70%を賄っている。また残りの約 30%は地方水道公社により供給されている。
イーストウォーター社は給水に際し、顧客・給水先の需要水量と貯水池の貯水量に基づく
需給バランスに応じて、各貯水池間を結ぶ給水管網により相互に水量を補完・調整のうえで、
過不足の無い給水体制を構築している。
貯水池の貯水量は、
季節要因に左右されるが、顧客・給水先によっては自社で雨水を貯水す
る貯水池を別途保有しているところもあり、現状では貯水量に起因する給水問題は発生して
いない。
しかし、タイ政府では将来の需要拡大を見越した新規水源開発に従事しており、現状の計
6 ヵ所の貯水池に加え更なる水源として、新たにパタヤ特別市北部のチャチューンサオ県を
流れるバン・パコン川と東部に位置するチャンタブリ県を流れるワン・タノッド川を水源と
する既存貯水池への転水案件の具体化に着手している。
うち、バン・パコン川を水源とするフラ・オン・チャイヤヌチット転水案件については、給水
管経由でのバン・フラ貯水池への転水のための工事が 2015 年に終了している(転水量:50 百
万㎡/年)。
また、パタヤ特別市東部を流れるワン・タノッド川から水量 50 百万 m3/年を取水し、主要
水源の1つであるプラサエ貯水池への導水を計画しているワン・タノッド転水案件について
は 2016 年の工事完了を目指して計画に着手したものの、現在のところでは住民問題が発生
していることにより工事の進捗が遅延している状況である。
68
出典:イーストウォーター社
図 3-18 顧客と貯水池の給水パイプネットワーク
ii)原水の需要見通し・概略設計
原水供給の主な顧客・給水先としては、工業用水を必要とする上記の工業団地、石油化学コ
ンプレックス等があげられる。
需要伸長見通しは、1991 年以降の各種資料・データより、タイの経済成長に応じた伸長と
一致すると言える。参考まで、2005 年から 2013 年のイーストウォーター社の給水需要伸長率
が平均 6.1%/年であるのに対し、チョンブリー県とラヨーン県を合計した同期間の GDP 伸び
率が平均 5.1%/年であった。
IMF が 2020 年のタイの GDP 伸び率を 3.2%と予測しており、この成長率が 2020 年以降も
継続すると仮定すると、2020 年以降の水需要は年間 3.9%伸長すると見込むことができる。
この需給双方の予測に基づき、2027 年頃にパタヤ特別市の水需給は逼迫するとの結果とな
った。
69
出典:イーストウォーター社
図 3-19 水需要予測
原水供給の需要伸長への対策として、
同地区に大規模な貯水池を追加建設することは非現
実的であり、他水源からの転水も限りがあるため、タイの経済成長に伴う東海岸工業地帯の
発展・拡大と原水需要の増大に応えることができない可能性がある。
また、現状では国として新たな水源確保のための計画は具体的に立案されていない。
限られた条件の中での水資源確保には、水の再利用が有効であり、工業用水としての原水
供給に、再生水の活用が長期的に見ても最も現実的な解決策のひとつとして考えられる。
なお、2015 年 11 月、国家環境委員会はタイ国において下水処理水の再利用に関する規制
を新設するための委員会を発足させており、工業団地、農業、その他関係省庁の代表者によ
って、当該規制の政府内承認取得に向け議論を続けているところ。この動きは再生水プラン
ト建設への後押しとなる。
700
600
Water Demands
Water Resources
500
MCM
400
300
200
100
0
2015
Water Demands
Water Resources
Existing
1) Bang Pakong/
Nakhon Nueng Khet
2) Bang Phra Res.
3) Nong Kho Res.
4) Dok Krai Res.
5) Nong Pla Lai Res.
6) Khlong Yai Res.
7) Prasae Res.
8) Rayong River
Under Construction
1) Khlong Phra Ong Chaiyanuchit
2) Wang Tanod River
2015
334.49
440.24
2016
2016
347.47
490.24
2017
2017
360.95
490.24
2018
2018
374.96
490.24
2019
2019
389.51
490.24
2020
2020
404.62
540.24
2021
2021
420.32
540.24
2022
2022
436.63
540.24
2023
2023
453.57
540.24
2024
2024
471.17
540.24
2025
2025
489.45
540.24
2026
2026
508.44
540.24
120.00
9.21
8.00
100.90
100.94
30.22
40.00
30.97
50.00
50.00
出典:イーストウォーター社・調査団作成
図 3-20 2023 年までの水需要と水源
70
2027
2027
528.17
540.24
2028
2028
548.66
540.24
2029
2030
2029
569.95
540.24
Unit : Million Cubic Meter
2030
2031
2032
592.06
615.03 638.90
540.24
540.24 540.24
2031
2032
パタヤ特別市内には 2 ヵ所の下水処理場があるが、ワットノーンヤイ下水処理場は、送水
先として想定しているレムチャバン工業団地及び SAHAPHAT グループ工業団地への距離が短
いこと、また将来的に下水処理能力を 130,000 m3/日まで拡張する計画があることから再生
プラントの販売水量を大きくできる可能性がある為、再生水プラントの建設は、ワットノー
ンヤイ下水処理場敷地内の利用可能なスペースへの建設が提案されているところ(図 3-23)
。
ワットノーンヤイ下水処理場の下水収集システムは図 3-21 の通りである。当該調査では、
再生水はワットノーンヤイ下水処理場から 20km離れたレムチャバン工業団地と SAHAPHAT
グループ工業団地、Thai Oil Refinery 社を莫大な水需要のある潜在顧客として再生水の供
給を想定した。
再生水の使途によって、求められる水質も異なり、再生水製造のプロセスも様々である。
工業団地向けであれば、砂ろ過、消毒が通常適用される。原水同様の基準になるような安全
側の処理方法を検討。提案処理方式は、保安フィルター付の UF 膜であり、プロセスは図 3-22
の通りである。
Pattaya Map
Gulf of Thailand
Wastewater Treatment
Plant
(Wat Nong Yai)
Combined Sewer
Sewage Conveyance Pipe
Pump Station
WWTP
出典:イーストウォーター社・調査団作成
図 3-21 パタヤ特別市のプロジェクト位置
71
出典:調査団作成
図 3-22 再生水プラントのプロセス
出典:調査団作成
図 3-23 再生水プラント、及び下水処理場プラントのレイアウト
b)下水案件
i) 既存の下水処理場の容量
表 3-24 の通りパタヤ特別市には、現在、離島 2 ヵ所を含む 4 つの下水処理場がある。これらの処理
場の場所は、図 3-24 の通りである。
1
名称
ワットブン処理場
表 3-24 パタヤ特別市の下水処理場
場所
処理能力(m3/日)
ワットブンカンチャナラ
43,000
ム
72
2
3
4
ワットノーンヤイ処理場
ラン処理場
ローウェンビーチ処理場
ワットノーンヤイ
Samae ビーチ(ラン島)
ローウェンビーチ
(ラン島)
65,000
300
出典:調査団作成
パタヤ特別市では、現在ワットノーンヤイ処理場の拡張を計画中。ワットノーンヤイ処理場は、パタ
ヤ特別市の北部、中央部、南部と NaKluea 地区からの汚水を収集し、65,000 ㎥/日の処理能力を持つが、
最近の汚水流入量が 70,000 ㎥/日を超えるため、下水処理場の容量を 130,000 ㎥/日へ拡張する予算
計画となっている。
出典:調査団作成
図 3-24 パタヤ特別市における既存下水処理場
ii)運用・保守の欠陥
65,000 ㎥/日の既存最大容量を持つワットノーンヤイ下水処理場は 2000 年から非上場会社 WETCO 社
によって運営・管理が行わており、O&M 期間は 2017 年までである。WETCO 社は下水処理場の運営に際し
て、オペレーターと従業員チーム、および洪水制御システムを提供し運営をする責任があるにも関わら
ず、実態はパタヤ特別市が交換や保守のための機器の購入を行っているという状態である。また、パタ
ヤ特別市の下水処理場改善予算に限界があるため、機器類が十分に配置できない状況となっている。ワ
ットノーンヤイ下水処理場に対する評価と提言は表 3-25 にまとめた通りである。
処理場設備
一次処理
汚水回収
表 3-25 パタヤ特別市下水処理場の評価と提言
評価
備考
提言
不十分
機器、装置の故障
73
水門、タンクデッキ、レベル測
定及びコントロールシステム
の交換。水門歯車モーターの修
復または交換。
スクレーパーとスクリューコ
ンベアーの確認と修復または
交換。
歯車モーター、バースクリーン
の確認と修復または交換。回収
システムの準備。
沈砂池
不十分
機器、装置の故障
自動バース
クリーン
不十分
機器、装置の故障
流量測定
不十分
センサーの故障
流入測定器の交換。追加のオン
ライン監視システムの設置。
機器、装置の故障
歯車モーター、スクレーパー、
汚泥流量測定システムの確認
と修復または交換。
新たに吸収力の高い曝
気システムが必要
空気噴射の確認と交換。エアフ
ローと DO 測定装置の設置。
機器、装置の故障
歯車モーター、スクレーパー、
汚泥排水システムの確認と修
復または交換。汚泥量測定返却
の設置。追加の沈殿槽の設置。
最初沈殿池
二次処理
曝気槽
最終沈殿地
不十分
不十分
充分
不十分
汚泥貯蔵槽
不十分
機器、装置の故障
汚泥貯蔵槽の確認。汚泥排水シ
ステムの確認と修復または交
換。汚泥混合と上澄み排水装置
の設置。
塩素投与シ
ステム
不十分
機器、装置の故障
ベルトプレスと汚泥下処理シ
ステムの確認と修復または交
換。
塩素接触槽
不十分
機器、装置の故障
オンライン流入測定器の設置。
残留塩素測定器の設置。
不十分
機器、装置の故障
消毒
脱水汚泥
ベルトフィ
ルタープレ
ス
制御室
実験室
出典:調査団作成
不十分
不十分
ベルトプレスと汚泥下処理シ
ステムの確認と修復または交
換。
遠隔操作、モニタリング オンラインモニタリングシス
システム無
テムの設置。
機器較正経験者の不足 全スタッフのトレーニング。
3) バンコク首都圏庁小規模下水案件
a)現状
低・中所得者層向けの住宅を提供することを主な役割としている国家住宅公社では、図 3-25 の 12 の
開発エリアの開発権を住宅開発業者に付与しており、これまでも当該エリアにて宅地拡張・マンショ
ン・ショッピングモールのような開発プロジェクトを実施してきた。そのため、これらのエリアからの
汚水量は増加しており、下水管渠と下水処理場拡張を含む下水道システムが必要となっている。表 3-26
は、12 の開発エリアの下水流入量と既存下水処理場の設計容量を示している。いくつかの処理場では下
水流入量は既存の設計処理容量に比べてはるかに少ない。この理由としては、1)開発が当初のスケジュ
ールより遅れていること、2)下水収集システムが損傷していること、3)下水が処理場以外の場所へ放流
されていること、が考えられる。
バンコク首都圏庁によると、Rom Klao の下水道管渠は破損しており、既存ポンプがメンテナンス不足
74
のため状態が悪く、汚水が下水管渠で適切に収集されていない状況とのこと。同下水処理場の下水収集
システム改善が喫緊に求められているため、本調査では、Rom Klao の下水処理場の改修を優先的に調査
することとした。
Tha Sai
Thung Song Hong-1
Thung Song Hong-2
Bang Bua
Ram Intra
Hua Mark
Klong Chan
Huay Khwang
Bonkai
Rom Klao
Bangna
Klong Toey
出典:調査団作成
図 3-25
12 の開発エリアの場所
表 3-26 12 の開発エリアの既存下水処理場(WWTP)容量
名称
流入量
既存容量
(㎥/日)
(㎥/日)
1 ThungSongHong-1
1,400
3,000
2 ThungSongHong-2
947
1,100
3 ノンタブリー
812
1,200
4 ラムイントラ
600
800
5 フワイクワーン
1,162
2,400
6 ThaSai
1,546
1,400
7 バンナー
1,209
1,500
8 BonKhai
350
400
9 クロントゥーイ
796
1,200
10 クローンチャンディ
2,387
6,500
11 フアマーク
1,485
1,500
12 Rom Klao
1,936
3,800
合計
24,800
出典:調査団作成
b)課題(水路汚染)
本調査の対象となる Rom Klao の下水処理場が存在するラートクラバン地区は、タイ国の玄関口であ
るスワンナプーム国際空港が位置しており、域内を流れるプラウェッツ水路の水質が著しく汚染されて
いる。2015 年 10 月 30 日付け地元紙のバンコクポストによると、水路沿いにある 20 地域の住人 20,000
人が汚染水の影響を受けており、プラウェッツ水路沿いに位置するランブン寺院前では汚染水により死
んだ魚が大量に発見されたとのこと(図 3-26 参照)。
このように、水路の水質汚染は、悪臭や蚊による伝染病を誘引し、衛生面から住民に悪影響をもたら
している。この汚染はラートクラバン地区の工場、住宅、農業地域からもたらされた汚水によるとされ
ており、この地域の水質の改善には、Rom Klao の下水処理場の拡張・整備、下水処理場までの汚水を
収集する管渠の改修、及び同下水処理場の上流に位置する Saikai 水路の水質改善が不可欠である。
75
出典:2015 年 10 月 30 日付バンコクポスト
図 3-26 プラウェッツ水路の汚染が、悪臭、蚊による伝染病を誘引している
c)概略設計
Rom Klao の既存処理容量 3,800 ㎥/日の下水処理場は 1985 年に建設され、国家住宅公社が運用・保
守を行い、1998 年以降の運用・保守はバンコク首都圏庁にて行われている。Rom Klao の下水道システ
ムの一般的な概要は表 3-27 と図 3-27 に示している。
表 3-27 Rom Klao の下水道システムの一般概要
項目
特徴
供給エリア
1.28km2/1,837世帯
人口
23,000人
収集システム
合流式
下水管渠の管径
200–800mm
処理容量
3,800m3/日
処理方法
活性汚泥
処理水放流先
KhlongsongThonnun水路
敷地面積
1.3ha
出典:調査団作成
76
Saikai Canal
with concrete
embankment
Waste/Storm water pump
station from Saikai Canal to
Canal 1
Aerated Lagoon
(transferrable to BMA)
Romklao
WWTP (BMA)
Waste/Storm water pump
station from Saikai Canal to
Canal 1
NHA’s WWTP in Zone 10
(damaged and inoperable,
BMA refusing transfer)
出典:調査団作成
図 3-27
Rom Klao の下水道システム
現在、住宅開発業者は、図 3-27 の通り、既存の 1.28km2 のサービスエリア周辺の住宅や商業エリアの
拡張を計画しているところ。既存の処理設備の容量では、拡張エリアからの汚水には対応できないため、
Rom Klao においては拡張エリア(Rom Klao 域内の住宅開発、及びエアアルトン Rom Klao プロジェク
ト 2:表 3-28 参照)からの汚水に対応した容量が求められる。当該調査にて想定した下水量は表 3-28
の通り。
住宅ゾーン
表 3-28 Rom Klao の想定下水量
世帯数
想定人口
水の使用量
(㎥/日)
18,074
90,370
18,074
6,024
30,120
6,024
想定下水量
(㎥/日)
14,459
4,819
Rom Klao
エアアルトンRom
Klaoプロジェクト2
合計
24,098
120,490
24,098
19,278
出典:イーストウォーター社・調査団作成
注記:2030 年を計画年、人口は 1 世帯 5 名、水の消費単位は 200lpcd、下水量は水消費量の 80%
で計算
表 3-28 の通り、Rom Klao の下水処理場に求められる容量は 19,000 ㎥/日と想定される。既存の下水
処理場の敷地面積は 1.3ha のみだが、将来的に 19,000 ㎥/日の下水処理場には 2.5ha から 3.0ha が必
要となる。このため、調査団は既存の下水処理場を 9,500 ㎥/日まで拡張し、残りの 9,500 ㎥/日につ
いては、拡張エリアの北部のラグーンとして利用している場所で、新規下水処理場を建設し、対応する
ことを提案する。この提案では、地形条件や、収集流域を既存の 1 流域から 2 つに分割することとなる
ため、既存システムと適合するかという点において詳細に調査をする必要がある。
また、プラウェッツ水路の水質改善には、汚水が下水管渠で収集され、水路への放流前に適切な処理
が行われることが必要であるため、下水道の損傷ヵ所の詳細調査も必要となる。
更に、Rom Klao の下水処理場上流に位置する Saikai 水路(図 3-27 参照)の水質改善には、遮集管シ
ステム若しくは、
分流式下水道システムを導入することで行うことが必要である(図 3-28 の略図参照)
。
Saikai 水路は、依然として未処理汚水を下水処理場へ運搬しており、水質改善に際し、費用対効果、最
低限の目標水質を期待でき建設期間を考慮すると、分流式下水道システムよりも遮集管システムが推奨
77
され、更に、雨天時越流水(CSO)の併設を推奨する。遮集管システム及び CSO を設置することで、雨季
には雨水で希釈された汚水が水路へ放流されることは避けられないが、乾季における汚水は水路へ放流
することなく処理場へ輸送され処理された後に放流される。そのため、完璧ではないもの水質改善への
大きな寄与が期待できる。2015 年 9 月の現地調査では、水路のほとりには多くの世帯が存在するため、
水路に沿った遮集管の敷設を検討する必要がある。
遮集管による改善
Interceptor system
分流管よる改善
Separated
Sewer System
CSO
雨水
Storm Water
遮集管
Interceptor
ポンプ施設
Pumping
Station
処理場
WWTP
Saikai水路
Canal
Wastewater
汚水
Canal
Saikai水路
Drainage
Channel
既存水路
Wastewater
汚水
ポンプ施設
Pumping
Station
雨水
Storm Water
処理場
WWTP
出典:調査団作成
図 3-28 遮集管システムと分流式下水システム
(3)プロジェクトの計画概要
本事業は、上下水の需給を満たすことや、上記(2)で記載の各事業における課題に対する解決を図る
ものである。選定されたフアヒン上下水道案件、パタヤ再生水・下水案件、バンコク首都圏庁小規模下
水道案件の 3 案件の概要は表 3-29 の通りである。
No
1
プロジェクト
フアヒン上下水案件
上水
新規上水道事業
無収水率削減
下水
Khao Tao 地区の下
水道改善
下水マスタープラ
ンの更新
既存下水処理場の
リハビリ
O&M 能力向
表 3-29 優先事業の概要
概要
 送水管:口径 1,000mm、長さ
=1.2km
 浄水場:48,000 m3/日(フェーズ
1)
48,000 m3/日(フェー
ズ 2)
敷地面積 14.4ha
 送水管:口径 900mm、長さ
=29.3km(フェーズ 1)、口径
900mm、長さ=29.3km(フェーズ 2)
 アスベスト管の交換:長さ
=80km
 DMA 構築
 下水管渠:管径 600mm-800mm、
長さ=3.5km
 下水処理場:2,360m3/日、敷地
面積 1.13ha
汚水量の予測及び必要となる下
水道施設の更新
収集システムと下水処理場の運
転状況の調査
 研修制度
78
事業規模
フェーズ 1:1,917 百万バー
ツ
フェーズ 2:1,486 百万バー
ツ
204 百万バーツ
637 百万バーツ
-
2
上
パタヤ再生水・下水案件
水供給
再生水事業
 日本からの技術移転
 再生水:15,000 m3/日
 送水管:口径 500mm、長さ
=20.7km
 中継ポンプ(稼動+予備ポン
プ:2 台)
 下水処理場:65,000 m3/日
下水
下水処理場の拡張
バンコク首都圏庁小規模下水案件
下水
Rom Klao 下水道シ  下水処理場:9,500m3/日(フェ
ステム
ーズ 1)、9,500 m3/日(フェーズ
2)
 既存の下水収集状況の調査
出典:調査団作成
423 百万バーツ
606 百万バーツ
3
79
113 百万バーツ
第4章 環境社会的側面の検討
80
(1) 環境社会面における現状分析
タイおよび、フアヒン自治体、パタヤ特別市ならびにバンコク都周辺の自然状況、社会状況等に関す
る既存文献、データを収集し、当該地域の現状を以下、分析した。
1) 自然条件
a)気候
図 4-1 にタイの気候区分図を示す。事業対象予定地であるフアヒン、パタヤ、バンコクの 3 地域は、
いずれも熱帯モンスーン気候に属する。ただし、雨期、湿潤期の長さにより 3 地域の気候は以下のよう
に区分される。
フアヒン地域: D2: 長い乾期(湿潤期 4.5-5.5 カ月)と少雨の熱帯モンスーン気候
パタヤ地域: B2: 長い雨期(湿潤期 6.5-8 カ月)と中程度の降雨の熱帯モンスーン気候
バンコク地域: パタヤ同様
フアヒンは他の 2 地域に比べて乾燥しており、降雨の年較差や季節変動が著しい。これら 3 地域の降
雨ならびに気温データは本報告書の 1 章 (3)に記載している。
b)環境保全地域 (Environmental Protection Area:EPA)
国家環境保全推進法 1992(The Enhancement and Conservation of National Environmental Quality
Act B.E. 2535: NEQA 1992)において、タイにおける環境保全地域(EPA)の設置についての規定がなされ
ている。EPA は主に海岸線沿いの地域が指定され、EPA 内において関連する通知により、特定の経済/
開発活動が禁止もしくは制限される。
フアヒン地域ならびにパタヤ地域の沿岸部は、以下の通知により 2010 年に EPA として指定されてい
る。
 Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re: specify territory and
protective measure for EPA in Ban Laem and Mueang Phetchaburi, Tha Yang and Cha-Am District,
Phetchaburi Province and Hua Hin, Pranburi District, Prachuap Khiri Khan Province, B.E. 2553
(2010)
 Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re: specify territory and
protective measure for EPA in Banglamung and Sattahip district, Chonburi Province(Pattaya),
B.E. 2553 (2010)
上記の通知は、
2015 年までの 5 年間有効であったが、EPA の指定を 1 年間延長する旨の通知が出され、
2015 年 12 月現在も EPA として指定されたままである。

Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re: extend the duration
for 1 more year for the Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment
re: specify territory and protective measure for EPA in Banglamung and Sattahip district,
Chonburi Province(Pattaya), B.E. 2553 (2010)

Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re: extend the duration
for 1 more year for the Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment
re: specify territory and protective measure for EPA in Hua Hin, B.E. 2553. (2010)
フアヒン地域、およびパタヤ地域における EPA 指定地域は、各々、図 4-2 と図 4-3 に示したとおりで
ある。
81
Bangkok
Hua Hin
Pattaya
出 典 : The Soil Map of Asia, European Digital Archives of Soil
http://eusoils.jrc.ec.europa.eu/esdb_archive/EuDASM/Asia/lists/s1_cth.htm
図 4-1 タイの気候区分図
82
Maps
Hua
Municipality
Hin
出典:関連通知
図 4-2 フアヒン地域における EPA 指定地域
出典:関連通知
図 4-3 パタヤ地域における EPA 指定地域
83
c) 汚染対策地域 (Pollution Control Area)
NEQA 1992 では、EPA のみならず、汚染対策地域(Pollution Control Area)についても規定している。
NEQA 1992 の 60 条には、汚染対策地域を指定し、当該地域の汚染の削減・根絶を目的とした行動計画の
作成および提出を地方自治体が行うことを規定している。この行動計画は、政策計画の形態をとり、各
県における、汚染の削減・根絶のための戦略が記載されている。
フアヒン地域とパタヤ地域は各々、B.E. 2539(1996 年)と B.E. 2515(1972 年)に国家環境委員会
(National Environment Board)の通達により、汚染対策地域として指定された。フアヒン地域、及びパ
タヤ地域の汚染対策地域の位置を各々、図 4-4 と図 4-5 に示した。
出典:関連通知
図 4-4 フアヒン地域における汚染対策地域
2015 年 12 月時点で、フアヒン地域、パタヤ地域共に汚染対策地域として引き続き指定されている。
しかし、汚染対策地域に指定されてはいるものの、具体的な緩和策や対策は講じられていない模様であ
る。この 2 地域では、汚染を含む環境問題が顕在化しており、早急な対策が必要とされているものの、
地方自治体の権限、能力等の不足により汚染対策地域に対する対策が十分に講じられず、EPA として指
定されたことにより、EPA における保全、環境緩和策として対応しているのが実態のようである。
84
出典:関連通知
図 4-5 パタヤ地域における汚染対策地域
d) 流域区分
タイの国土は、WSC1 から WSC5 の 5 つの流域区分(Watershed Classification: WSC)に区分されて
いる。その概要は以下のとおりである。
 WSC1:流域保全林。さらに以下の 2 区分に細分される。
o 1A:内閣決議 12 October B.E. 2519 によって指定された流域保全林地帯。流域
保全のため、他目的での土地利用が禁じられている。例外として、内閣決議 12
December B.E. 2532 により、WSC1A 内で 3 つの高速道路建設が許可された。
o 1B: 内閣決議により、土壌保全を条件に、道路建設、鉱山開発が認められ地帯。
当該地で開発事業を行う場合は、環境影響評価報告書を作成し、国家環境委員
会に報告書を提出する必要がある。
 WSC2::林業・鉱山開発地帯。 厳格な土地利用管理のもと、林業および鉱山開発利用
のための土地。農業利用は厳格に規制される。
 WSC3:林業・鉱山・農業開発地帯。水土保全等の厳格な土地利用管理のもと、林業、
鉱山開発、農業、その他利用のための土地。
 WSC4: この区分に指定された土地は、農業を除き事業/活動の制限はない。農業の場
合、水土保全を実施の上、斜度 28%以下の斜面で可能である。
 WSC5: この区分に指定された土地は、事業/活動の制限はない。
なお、NEQA 1992 の規定により、WSC1 内での開発事業は全て、環境影響評価(EIA1)の実施が必要と
なる。図 4-6 にタイの流域区分図を示した。同図によれば、事業対象である 3 地域および候補サイト近
傍は、ほぼ WSC5 に指定されているようで、流域区分による開発の規制は受けない模様である。
1
以降、英文表記箇所を除き、本文・図表において、環境影響評価全般について示す場合は、「環境影響評
価」、特定のレベルの報告書や調査を示す場合は「EIA」と表記する。
85
Bangkok
Hua Hin
Pattaya
出典:関連通知
図 4-6 タイの流域区分図
e) 森林保全地域(Forest Conservation Areas)
国立公園、野生生物サンクチュアリといった保護区や、森林保全地域(Forest Conservation Area)
と区分される地域における開発行為には、NEQA 1992 の規定により、環境影響評価の実施が求められて
いる。図 4- 7 にタイにおける保護区の状況を示した。フアヒン地域、パタヤ地域、ならびにバンコク
86
において、事業対象サイト近傍には、保護区や森林保全地域は、存在していない。
Bangkok
Hua Hin
Pattaya
出典:: Maps of protected areas in Thailand
http://www.mekong-protected-areas.org/thailand/pa-map.htm#mapdata
図 4-7 タイにおける保護区
f) 自然災害
図 4-8 にタイの洪水/干ばつ図(2006 年)ならびに、地震ハザードマップを示した。事業対象地域のう
ち、バンコク地域とパタヤ地域は洪水被害を受ける傾向が高く、フアヒン地域は、干ばつ被害にあう傾
向が高いが、洪水/干ばつの状況は、年較差が高い模様である。地震ハザードマップによれば、バンコ
ク地域とフアヒン地域は、Zone 2A(メルカリ震度階 強度 V-VII)に区分され、一方のパタヤ地域は、
87
Zone 1 (メルカリ震度階 強度 II-V)に区分される。このゾーニング区分によれば、パタヤ地域に比べ
てバンコク地域、フアヒン地域のほうが地震による影響を受けやすいが、実際の影響は、地質ならびに
その他の要因によっても左右される。
Bangkok
Bangkok
Pattaya
Pattaya
Hua Hin
Hua Hin
出 典 : 1) Risk Management of Water Resources in Thailand in the Face of Climate Change
http://www.haii.or.th/wiki/index.php/Risk_Management_of_Water_Resources
in_Thailand_in_the_Face_of_Climate_Change,
2) Department of Mineral Resources, Ministry of Natural Resources and Environment (MNRE)
図 4-8 1) 洪水・干ばつ図 2006 、2) 地震ハザードマップ 2005
2) 社会条件
a) 土地利用
図 4-9 にタイにおける土地利用区分(2000 年)を示す。基本的に、事業対象地域となるフアヒン地域、
パタヤ地域ならびにバンコク地域は、主に都市/工業地帯で占められ、その周辺にモザイク状に農地が
分布している傾向がある。事業対象となる上下水施設は、基本的に市街地に位置している。上水施設と
水源を結ぶ水道管は、農業地帯を横切る可能性がある。
88
Bangkok
Hua Hin
Pattaya
出典:: Maps of protected areas in Thailand
http://www.mekong-protected-areas.org/thailand/pa-map.htm#mapdata
図 4-9 タイの土地利用区分
b) 社会配慮
人口や一般的な社会環境情報は本報告書の 1 章(3)対象地域の状況を参照のこと。
対象事業の上下水施設は、基本的に、同様の既存施設がある土地・公有地での改修/拡張を予定して
いるため、非自発的住民移転が発生する可能性は低い。ただし、非自発的住民移転が発生する場合、関
連する国内規定・国際標準を参照・遵守する必要がある。
フアヒン自治体については、上水事業・下水改良事業の施設拡張にあたり、公有地での新規用地取得
を想定しており、非自発的住民は皆無か発生したとしても軽微であると考えられる。
その他、フアヒン自治体では、既存水道管にアスベスト製の管が多用されているため、アスベスト管
の廃棄・処理にあたっては、環境規制ならびに健康被害対策の観点での配慮が必要となる。
3) 将来予測(プロジェクトを実施しない場合)
89
「プロジェクトが実施されない場合」の将来の状況予測に関連し、以下の案件に関連して、正と負の
影響が予想される。
a.フアヒン上水案件
b.フアヒン下水改良案件
c.パタヤ再生水・下水案件
d.バンコク首都圏庁小規模下水案件
「プロジェクトが実施されない場合」の正の影響:
共通事項
 本事業の建設期における、工事車両による混雑やその他損害を、既存の交通および周辺住民が
受けない。
 本事業の建設に伴う大気質および水質への影響は無い。
 本事業による新たな用地取得や非自発的住民移転は発生しない。
「プロジェクトが実施されない場合」の負の影響:
共通事項
 本事業対象地の上下水の水質および処理能力が、現状のままで、向上が望めない。
a. フアヒン上水案件
 無収水率が現状と同じ 48%のままである。
 上水の供給能力が需要に追いつかないままである。
 既存のアスベスト管を使い続けることによる健康被害が懸念される。
b. フアヒン下水改良案件
 Khao Tao 原水貯水池が下水により汚染され続ける。
c. パタヤ再生水・下水案件
 パタヤ地域における下水処理需要に対応できていない。
 現状のまま、処理/未処理の下水の海への配水が続く。
 2027 年以降、水需要の拡大により、水不足の状況が増加する。
d. バンコク首都圏庁小規模下水事業
 処理下水の水質が現状のままである。
90
(2)事業の実施に伴う環境改善効果
上水、下水ならびに下水処理水再利用施設の建設/改良事業は、事業対象の当該地域において、各々
の事業内容に基づいた、水質の改善を含む上下水処理能力の向上を可能とする。これらは副次的に、当
該地域の増加する水需要ならびに、水由来の汚染の軽減/防止に貢献すると考えられる。
総論として、本対象事業は、主に以下の様な生活様式や生計といった環境改善効果が期待できる。
 上水の供給能力及び対象地域の増加、ならびに、下水処理能力の向上により、本事業対象サイト
の周辺ならびに下流の住民/コミュニティの生活の向上に寄与する。
 地域への上水の供給が安定かつ向上することにより、生活利用ならびに経済産業利用の増加(特
に、上水事業、下水処理水再利用事業の場合)。
 下水処理能力の向上により、地域コミュニティにおける、衛生状況の向上、水由来の感染病等の
軽減/防止への寄与。
各対象事業に関しては、さらに、以下の環境改善効果が期待できる。
a. フアヒン上水案件
 無収水率が低下し、水供給が効率的になる。
 上水の供給能力が地域の水需要に対応できるようになる。
 アスベスト管が使われなくなり、アスベストによる健康被害が軽減される。
b. フアヒン下水改良案件
 Khao Tao 原水貯水池ならびに海へ、処理された下水が排水される。
c. パタヤ再生水・下水案件
 下水処理水再利用により、下水の排水が軽減される。
 下水処理水再利用により、2027 年以降の水不足解消に寄与する。
d. バンコク首都圏庁小規模下水案件
 処理下水の水質が改善される。
 さらなる下水処理需要に対応できるようになる。
91
(3)本事業の実施に伴う環境社会面への影響
1)環境および社会的影響の検討
本調査では、以下の 4 つの事業における環境および社会的影響を評価する。
a. フアヒン上水案件
b. フアヒン下水改良案件
c. パタヤ再生水・下水案件
d. バンコク首都圏庁小規模下水案件
評価にあたっては、
「JICA の環境社会配慮ガイドライン (2010 年 4 月) 」に参考資料として添付され
ている「チェックリスト 14:上水における分類と項目」ならびに「チェックリスト 15:下水における分
類と項目」を主に用いた。
表 4-1 は、フアヒン上水案件の評価結果を示ししており、表 4-2 は、フアヒン下水改良案件、パタヤ
再生水・下水案件、バンコク首都圏庁小規模下水案件の 3 つの下水関連事業について評価している。下
水関連事業については、3 案件に共通する項目並びに、必要に応じて、個別案件についても評価し、記
載した。
ただし、本調査で行われた検討は暫定的であるため、本事業の業務実施主体等は、EIA 調査等の環境
社会配慮調査において、環境および社会的側面で深刻な影響を与え得る要因の確認・評価を十分に行う
必要がある。
分
類
環境項目
(1)環境
影響評価
および環
境許認可
1
許
認
可
・
説
明
(2)現地
ステーク
ホルダー
への説明
表 4-1 環境チェックリスト (フアヒン上水案件)
予想される環境影 予想され
響度
る環境面
主なチェック事項
大 小 無 不 の課題と
問題点
明
(a) 環境アセスメント報
告書(環境影響評価レポ
ート)等は作成済みか。
(b) 環境影響評価レポー
ト等は当該国政府により
承認されているか。
(c) 環境影響評価レポー
ト等の承認は付帯条件を
伴うか。付帯条件がある
場合は、その条件は満た
されるか。
(d)上記以外に、必要な
場合には現地の所管官庁
からの環境に関する許認
可は取得済みか。
(a) プロジェクトの内容
および影響について、情
報公開を含めて現地ステ
ークホルダーに適切な説
明を行い、理解を得てい
るか。
(b) 住民等からのコメン
トを、プロジェクト内容
に反映させたか。
環境配慮の確認(理由、緩
和策)
環境影響評価は、まだ、
行われていない。本事業
は、NEQA に則ると、
EIA/IEE 対象事業ではな
い。
同上
同上
同上
環境影響評価は、まだ、
行われていない。本事業
で計画されている施設
は、基本、既存の類似施
設のある敷地、もしくは、
公有地に建設予定であ
る。現地ステークホルダ
ーへの説明やパブリック
コンサルテーションは、
Official Information
Act B.E. 2540(1997) や
92
分
類
環境項目
(3)代替
案の検討
(1)大気
質
主なチェック事項
予想される環境影
響度
大 小 無 不
明
施設の位置、レイアウト
については、確定してい
ない。
✔
(b) 作業環境における塩
素は当該国の労働安全基
準等と整合するか。
2
(2)水質
✔
✔
汚
染
対
策
(a) 施設稼働に伴って発
生する汚泥等の廃棄物は
当該国の規定に従って適
切に処理・処分されるか。
✔
排出ガス
ならびに
塩素漏れ
による大
気汚染
作業員の
労働安全
衛生環境
への影響
本事業に
よる水質
汚染 。水
生動植物
相への変
化。
周辺環境
や住民へ
の被害
(3)廃棄
物
(4)騒
音・振動
(a) ポンプ施設等からの
騒音・振動は当該国の基
準等と整合するか。
環境配慮の確認(理由、緩
和策)
Rule of the Prime
Minister on Public
Consultation B.E. 2548
(2005)等に則り、必要に
応じて実施予定。
同上.
(b) 住民等からのコメン
トを、プロジェクト内容
に反映させたか。
(a) プロジェクト計画の
複数の代替案は(検討の
際、環境・社会に係る項
目も含めて)検討されて
いるか。
(a) 消毒用塩素の貯蔵設
備、注入設備からの塩素
による大気汚染はある
か。
(a) 施設稼働に伴って発
生する排水の SS、BOD、
COD、pH 等の項目は当該国
の排水基準等と整合する
か。
予想され
る環境面
の課題と
問題点
✔
93
車両やプ
ラントに
よ る 騒
音・振動問
題
本事業の計画・設計は、既
存の環境基準を遵守する
ものとする。環境基準を遵
守するために、環境管理計
画とモニタリング計画が
適切に策定され、実施され
る必要がある。
同上
本事業の計画・設計は、
既存の環境基準を遵守す
るものとする。
本事業による著しく深刻
な影響は無いと予想され
る。しかし、更なる調査
により影響が予想される
場合には、必要に応じた
対策が実施される。
本事業による著しく深刻
な影響は無いと予想され
る。しかし、更なる調査
により影響が予想される
場合には、必要に応じた
対策が実施される。
既設のアスベスト・コン
クリート管の交換は関連
する法令を順守して行わ
れるべきである。
本事業の計画・設計は、
既存の環境基準を遵守す
るものとする。
騒音・振動の影響は、騒
音・振動源(機械等)と
分
類
環境項目
主なチェック事項
予想される環境影
響度
大 小 無 不
明
(a) 大量の地下水汲み上
げを行う場合、地盤沈下
が生じる恐れがあるか。
✔
(5)地盤
沈下
(1)保護
区
(2)生態
系
3
自
(a) サイトは当該国の法
律・国際条約等に定めら
れた保護区内に立地する
か。プロジェクトが保護
区に影響を与えるか。
(a) サイトは原生林、熱
帯の自然林、生態学的に
重要な生息地(珊瑚礁、
マングローブ湿地、干潟
等)を含むか。
(b) サイトは当該国の法
律・国際条約等で保護が
必要とされる貴重種の生
息地を含むか。
(c) 生態系への重大な影
響が懸念される場合、生
態系への影響を減らす対
策はなされるか。
予想され
る環境面
の課題と
問題点
本事業に
よる構造
物や土地
利用への
損害
自然や生
態系の損
傷と破壊
✔
本事業の候補地ならびに
その周辺に、大規模な原
生林や湿地、干潟は無い。
同上.
本事業のために、更なる
調査によって詳細を確認
する必要がある。
同上.
目下、タイ国の環境規則
や規制を考慮すると、著
しい影響は無いと予想さ
れる。更なる調査により
影響が予想される場合に
は、予想される影響を回
避・緩和するための代替
地を検討する。
本事業による著しく深刻
な影響は無いと予想され
る。
しかし、更なる調査によ
り影響が予想される場合
には、必要に応じた対策
が実施される。
事業施設の建設と操業に
よる 表流水、地下水への
著しい 影響 は予想されて
いない。
しかし、更なる調査によ
り影響が予想される場合
には、必要に応じた対策
が実施される
✔
✔
然
環
境
(3)水象
同上.
✔
(a) プロジェクトによる
取水(地下水、地表水)
が地表水、地下水の流れ
に悪影響を及ぼすか。
✔
94
レセプター(住民等)に
距離があるので、限定的
である。
地下水の利用は限定され
ることから、本事業によ
る著しく深刻な影響は無
いと予想される。しかし、
更なる調査により影響が
予想される場合には、必
要に応じた対策が実施さ
れる。
本事業の候補地近傍に保
護区は無い。
同上
✔
(d) プロジェクトによる
取水(地表水、地下水)
が、河川等の水域環境に
影響を及ぼすか。水生生
物等への影響を減らす対
策はなされるか。
環境配慮の確認(理由、緩
和策)
水系の変
化とそれ
に伴う水
流等の改
分
類
環境項目
(1)住民
移転
4
社
会
環
境
(2)生
活・生計
主なチェック事項
(a) プロジェクトの実施
に伴い非自発的住民移転
は生じるか。生じる場合
は、移転による影響を最
小限とする努力がなされ
るか。
予想される環境影
響度
大 小 無 不
明
✔
(b) 移転する住民に対
し、移転前に補償・生活
再建対策に関する適切な
説明が行われるか。
(c) 住民移転のための調
査がなされ、再取得価格
による補償、移転後の生
活基盤の回復を含む移転
計画が立てられるか。
(d) 補償金の支払いは移
転前に行われるか。
(e) 補償方針は文書で策
定されているか。
(f) 移転住民のうち特に
女性、子供、老人、貧困層、
少数民族・先住民族等の
社会的弱者に適切な配慮
がなされた計画か。
(g) 移転住民について移
転前の合意は得られる
か。
(h) 住民移転を適切に実
施するための体制は整え
られるか。十分な実施能
力と予算措置が講じられ
るか。
(i) 移転による影響のモ
ニタリングが計画される
か。
(j) 苦情処理の仕組みが
構築されているか。
(a) プロジェクトにより
住民の生活に対し悪影響
が生じるか。必要な場合
は影響を緩和する配慮が
行われるか。
予想され
る環境面
の課題と
問題点
本事業に
伴う非自
発的住民
移転
環境配慮の確認(理由、緩
和策)
用地取得が一部想定され
る。用地取得及び非自発
的住民移転が必要な場
合、タイ国法もしくは、
国際標準に基づく住民移
転 計 画 (RAP) を 作 成す
る。
同上
同上
同上
同上
同上
同上
同上
同上
同上
✔
(b) プロジェクトによる
取水(地表水、地下水)
が、既存の水利用、水域
✔
95
本事業による著しく深刻
な影響は無いと予想され
る。騒音、振動、大気汚
染等の人々への悪影響を
考慮に入れるべきであ
る。必要に応じて対策が
実施される。
本 事 業 に 本事業による著しく深刻
伴 う 住 民 な影響は無いと予想され
の 生 活 条 る。しかし、必要に応じ
本事業に
伴う住民
への悪影
響や失業
等
分
類
環境項目
主なチェック事項
予想される環境影
響度
大 小 無 不
明
利用に影響を及ぼすか。
(3)文化
遺産
(a) プロジェクトによ
り、考古学的、歴史的、
文化的、宗教的に貴重な
遺産、史跡等を損なう恐
れはあるか。また、当該
国の国内法上定められた
措置が考慮されるか。
(4)景観
(a) 特に配慮すべき景観
が存在する場合、それに
対し悪影響を及ぼすか。
影響がある場合には必要
な対策は取られるか。
(5)少数
民族、先
住民族
(6)労働
環境
✔
✔
予想され
る環境面
の課題と
問題点
件および
周辺住民
への悪影
響
本事業に
よる破壊
と損害
本事業に
伴う景観
阻害
(a) 当該国の少数民族、
先住民族の文化、生活様
式への影響を軽減する配
慮がなされているか。
✔
本事業に
伴う少数
民族およ
び先住民
族への影
響
(b) 少数民族、先住民族
の土地及び資源に関する
諸権利は尊重されるか。
(a) プロジェクトにおい
て遵守すべき当該国の労
働環境に関する法律が守
られるか。
✔
同上.
✔
本事業に
伴う労働
安全衛生
の悪化
(b) 労働災害防止に係る
安全設備の設置、有害物
質の管理等、プロジェク
ト関係者へのハード面で
✔
96
環境配慮の確認(理由、緩
和策)
た対策が実施される。
本事業による著しく深刻
な影響は無いと予想され
る。しかし、候補地の近
傍に考古学的、歴史的、
文化的、宗教的な遺産が
あるか確認の必要があ
る。第一に、このような
場所が選択されることを
避けるべきである。更な
る調査により影響が予想
される場合には、予想さ
れる影響を回避・緩和す
るために必要な対策を検
討する。
基本的には、著しい影響
は無いものと予想される
が、本事業が沿岸の景観
を阻害するかどうか確認
する必要がある。更なる
調査の段階で、悪影響が
予想される場合にはタイ
国の法令に基づく必要な
対策が実施される。
本事業の周辺では大きな
民族問題は無いものと予
想される。更なる調査に
より影響が予想される場
合には、予想される影響
を回避・緩和するために
必要な対策を検討する。
同上.
労働条件はタイ国の法令
により保護される。必要
に応じて、本事業では、
国際的な機関や他国で定
められている規制を参照
し、労働安全衛生の内部
規制を設ける。
本 事 業 に 安全配慮について適切な
伴 う 労 働 指示や指導が、労働者お
災害
よび本事業の関係者に行
われる。
分
類
環境項目
主なチェック事項
予想される環境影
響度
大 小 無 不
明
の安全配慮が措置されて
いるか。
(c) 安全衛生計画の策定
や作業員等に対する安全
教育(交通安全や公衆衛
生を含む)の実施等、プ
ロジェクト関係者へのソ
フト面での対応が計画・
実施されるか。
(d) プロジェクトに関係
する警備要員が、プロジ
ェクト関係者・地域住民
の安全を侵害することの
ないよう、適切な措置が
講じられるか
(a) 工事中の汚染(騒音、
振動、濁水、粉じん、排
ガス、廃棄物等)に対し
て緩和策が用意される
か。
予想され
る環境面
の課題と
問題点
✔
同上
✔
本事業に
伴う地域
住民への
安全阻害
✔
環境汚染
(騒音・振
動、濁水、
粉じん、排
ガス、廃棄
物等)
(b) 工事により自然環境
(生態系)に悪影響を及
ぼすか。また、影響に対
する緩和策が用意される
か。
✔
工事によ
る自然環
境の破壊
(c) 工事により社会環境
に悪影響を及ぼすか。ま
た、影響に対する緩和策
が用意されるか。
(d) 工事による道路渋滞
は発生するか、また影響
に対する緩和策が用意さ
れるか。
(a) 上記の環境項目のう
ち、影響が考えられる項
目に対して、事業者のモ
ニタリングが計画・実施
されるか。
✔
交通渋滞、
悪影響等
✔
同上.
(1)工事
中の影響
5
そ
の
他
(2)モニ
タリング
環境配慮の確認(理由、緩
和策)
同上
安全配慮について適切な
指示や指導が、労働者お
よび本事業の関係者に行
われる。また、一般市民
への啓蒙活動も実施す
る。
以下の措置を実施する。
(1)
騒音・振動: 低
騒音、低振動の工法や建
設車両と設備。
(2)
濁水: 沈殿池
等。
(3)
排ガス: 低排ガ
スの建設車両と装置。
(4)
粉じん: 散水
等。
(5)
廃棄物: 廃物や
固体廃棄物等は適切に
廃棄または再利用。
建設活動は、建設現場に
おいて自然環境に著しい
悪影響を与えないと考え
られるが、必要に応じ、
影響を緩和するための適
切な対策が検討される。
迂回路等の適切な対策
は、社会環境への影響を
緩和するために実施され
る。
同上.
EIA、IEE,EMP の環境計画
に基づいて、モニタリン
グを実施する。こととす
る。被影響住民(PAP)がい
る場合は、RAP に記載され
たモニタリング計画に基
97
分
類
環境項目
主なチェック事項
予想される環境影
響度
大 小 無 不
明
予想され
る環境面
の課題と
問題点
環境配慮の確認(理由、緩
和策)
づき、モニタリングする。
他の環境
チェック
リストの
参照
6
留
意
点
環境チェ
ックリス
ト使用上
の注意
同上.
(b) 当該計画の項目、方
法、頻度等はどのように
定められているか。
(c) 事業者のモニタリン
グ体制(組織、人員、機
材、予算等とそれらの継
続性)は確立されるか。
(d) 事業者から所管官庁
等への報告の方法、頻度
等は規定されているか。
(a) 必要な場合は、ダム、
河川に係るチェックリス
トの該当チェック事項も
追加して評価すること。
(a) 必要な場合には、越
境または地球規模の環境
問題への影響も確認する
(廃棄物の越境処理、酸
性雨、オゾン層破壊、地
球温暖化の問題に係る要
素が考えられる場合等)。
同上.
同上.
✔
✔
本事業に
伴う導水
路や水道
管の設置
本事業に
伴う地球
環境問題
本事業による著しい影響
は予想されない。しかし、
更なる調査によって詳細
を確認する必要がある。
本事業では、様々な省エ
ネ対策を導入すること
で、排ガスによる影響は
可能な限り抑制されるた
め、本事業に伴う深刻な
国際問題は予想されてい
ない。しかし、さらなる
調査では、詳細を確認す
る必要がある。
1). 表中『当該国の基準』については、国際的に認められた基準と比較して著しい乖離がある場合には、
必要に応じ対応策を検討する。当該国において現在規制が確立されていない項目については、当該国以
外(日本における経験も含めて)の適切な基準との比較により検討を行う。
2). 環境チェックリストはあくまでも標準的な環境チェック項目を示したものであり、事業および地域
の特性によっては、項目の削除または追加を行う必要がある。
出典:JICA 環境チェックリストを基に調査団作成
分
類
1
許
認
可
・
説
明
表 4-2 環境チェックリスト (フアヒン、パタヤ、バンコク首都圏庁下水関連案件)
予想される環境影 予想され 環境配慮の確認(理由、緩和
響度
る環境面 策)
環境項目
主なチェック事項
大 小 無 不明 の課題と
問題点
環境影響評価は、まだ、行
われていない。フアヒン:
本事業は、NEQA に則ると、
IEE 対象事業である。
パタヤ:本事業は、NEQA に
則ると、EIA 対象事業であ
る。
バンコク:本事業は、NEQA
に則ると、EIA/IEE 対象事業
ではない。ただし、資金先
や事業実施主体の要求に応
(1)環境影響 (a) 環境アセスメント
評価および 報告書(環境影響評価
環境許認可 レポート)等は作成済
みか。
(b) 環境影響評価レポ
ート等は当該国政府に
より承認されている
か。
(c) 環境影響評価レポ
ート等の承認は付帯条
件を伴うか。付帯条件
98
分
類
環境項目
主なチェック事項
予想される環境影
響度
大 小 無 不明
予想され
る環境面
の課題と
問題点
じ、IEE もしくは EMP を実施
するべきである。
がある場合は、その条
件は満たされるか。
(d)上記以外に、必要
な場合には現地の所管
官庁からの環境に関す
る許認可は取得済み
か。
(2)現地ステ (a) プロジェクトの内
ークホルダ 容および影響につい
ーへの説明 て、情報公開を含めて
現地ステークホルダー
に適切な説明を行い、
理解を得ているか。
(b) 住民等からのコメ
ントを、プロジェクト
内容に反映させたか。
(a) プロジェクト計画
の複数の代替案は(検
(3)代替案の
討の際、環境・社会に
検討
係る項目も含めて)検
討されているか。
(1)水質
(a) 下水処理後の放流
水中の SS、BOD、COD、
pH 等の項目は当該国の
排出基準等と整合する
か。
環境影響評価は、まだ、行
われていない。本事業で計
画されている施設は、基本、
既存の類似施設のある敷地
もしくは、公有地に建設予
定である。現地ステークホ
ルダーへの説明やパブリッ
クコンサルテーションは、
Official Information Act
B.E. 2540(1997) や Rule
of the Prime Minister on
Public Consultation B.E.
2548 (2005)等に則り、必要
に応じて実施予定。
同上.
施設の位置、レイアウトに
ついては、確定していない。
排出ガス
ならびに
塩素漏れ
による大
気汚染
✔
2
汚
染
対
策
(2)廃棄物
(b) 未処理水に重金属
が含まれているか。
(a) 施設稼働に伴って
発生する汚泥等の廃棄
物は当該国の規定に従
って適切に処理・処分
されるか。
環境配慮の確認(理由、緩和
策)
✔
同上
周 辺 環 境 本事業による著しく深刻な
や 住 民 へ 影響は無いと予想される。
の被害
しかし、更なる調査により
✔
(a) 汚泥等に重金属の
含有が疑われる場合、
(3)土壌汚染
これらの廃棄物からの
浸出水の漏出等により
✔
99
本事業の計画・設計は、既
存の環境基準を遵守するも
のとする。環境基準を遵守
するために、環境管理計画
とモニタリング計画が適切
に策定され、実施される必
要がある。
同上
地下水お
よび土壌
汚染.
影響が予想される場合に
は、必要に応じた対策が実
施される。
同上
分
類
環境項目
主なチェック事項
土壌、地下水を汚染し
ない対策がなされる
か。
(a) 汚泥処理施設、ポ
ンプ施設等からの騒
音・振動は当該国の基
(4)騒音・振
準等と整合するか。
動
予想される環境影
響度
大 小 無 不明
✔
(a) 汚泥処理施設等か
らの悪臭の防止対策は
取られるか。
✔
(5)悪臭
(1)保護区
(2)生態系
3
自
然
環
境
(a) サイト及び処理水
放流先は当該国の法
律・国際条約等に定め
られた保護区内に立地
するか。プロジェクト
が保護区に影響を与え
るか。
(a) サイト及び処理水
放流先は原生林、熱帯
の自然林、生態学的に
重要な生息地(珊瑚礁、
マングローブ湿地、干
潟等)を含むか。
(b) サイトは当該国の
法律・国際条約等で保
護が必要とされる貴重
種の生息地を含むか。
(c) 生態系への重大な
影響が懸念される場
合、生態系への影響を
減らす対策はなされる
か。
✔
予想され
る環境面
の課題と
問題点
環境配慮の確認(理由、緩和
策)
車両やプ
ラントに
よる騒
音・振動問
題
本事業の計画・設計は、既
存の環境基準を遵守するも
のとする。
騒音・振動の影響は、騒音・
振動源(機械等)とレセプ
ター(住民等)に距離があ
るので、限定的である。
本事業による悪臭の著しく
深刻な影響は無いと予想さ
れる。
しかし、更なる調査により
影響が予想される場合に
は、必要に応じた対策が実
施される。
本事業で
使用する
薬品およ
び汚泥処
理施設か
ら発生す
るスラッ
ジによる
悪影響
自 然 や 生 本事業の候補地近傍に保護
態 系 の 損 区は無い。
傷と破壊
同上
本事業の候補地ならびにそ
の周辺に、大規模な原生林
や湿地、干潟は無い。
✔
同上.
本事業のために、更なる調
査によって詳細を確認する
必要がある。
✔
同上.
✔
同上.
目下、タイ国の環境規則や
規制を考慮すると、著しい
影響は無いと予想される。
更なる調査により影響が予
想される場合には、予想さ
れる影響を回避・緩和する
ための代替地を検討する。
本事業による著しく深刻な
影響は無いと予想される。
しかし、更なる調査により
影響が予想される場合に
は、必要に応じた対策が実
✔
(d) プロジェクトが、
河川等の水域環境に影
響を及ぼすか。水生生
物等への影響を減らす
対策はなされるか。
100
分
類
環境項目
主なチェック事項
予想される環境影
響度
大 小 無 不明
予想され
る環境面
の課題と
問題点
環境配慮の確認(理由、緩和
策)
施される。
(1)住民移転 (a) プロジェクトの実
施に伴い非自発的住民
移転は生じるか。生じ
る場合は、移転による
影響を最小限とする努
力がなされるか。
4
社
会
環
境
✔
(b) 移転する住民に対
し、移転前に補償・生
活再建対策に関する適
切な説明が行われる
か。
(c) 住民移転のための
調査がなされ、再取得
価格による補償、移転
後の生活基盤の回復を
含む移転計画が立てら
れるか。
(d) 補償金の支払いは
移転前に行われるか。
(e) 補償方針は文書で
策定されているか。
(f) 移転住民のうち特
に女性、子供、老人、貧
困層、少数民族・先住民
族等の社会的弱者に適
切な配慮がなされた計
画か。
(g) 移転住民について
移転前の合意は得られ
るか。
(h) 住民移転を適切に
実施するための体制は
整えられるか。十分な
実施能力と予算措置が
講じられるか。
(i) 移転による影響の
モニタリングが計画さ
れるか。
(j) 苦情処理の仕組み
が構築されているか。
(2)生活・生 (a) プロジェクトの実
計
施により周辺の土地利
用・水域利用が変化し
本事業に
伴う非自
発的住民
移転
フアヒン: 用地取得が一部
想定される。
パタヤ、フアヒン:想定さ
れていない。
用地取得及び非自発的住民
移転が必要な場合、タイ国
法もしくは、国際標準に基
づ く 住 民 移 転 計 画 (RAP)
を作成する。
同上
同上
同上
同上
同上
同上
同上
同上
同上
✔
101
本 事 業 に 本事業による著しく深刻な
伴 う 住 民 影響は無いと予想される。
へ の 悪 影 しかし、必要に応じた対策
分
類
環境項目
主なチェック事項
予想される環境影
響度
大 小 無 不明
環境配慮の確認(理由、緩和
策)
響 や 失 業 が実施される。
等
て住民の生活に悪影響
を及ぼすか。
(b) プロジェクトによ
る住民の生活への悪影
響が生じるか。必要な
場合は影響を緩和する
配慮が行われるか。
✔
(a) プロジェクトによ
り、考古学的、歴史的、
文化的、宗教的に貴重
な遺産、史跡等を損な
う恐れはあるか。また、
当該国の国内法上定め
(3)文化遺産 られた措置が考慮され
るか。
(4)景 観
予想され
る環境面
の課題と
問題点
✔
(a) 特に配慮すべき景
観が存在する場合、そ
れに対し悪影響を及ぼ
すか。影響がある場合
には必要な対策は取ら
れるか。
✔
本事業に
伴う住民
の生活条
件および
周辺住民
への悪影
響
本事業に
よる破壊
と損害
本事業に
伴う景観
阻害
(5)少数民
(a) 当該国の少数民
族、先住民族 族、先住民族の文化、
生活様式への影響を軽
減する配慮がなされて
いるか。
✔
本事業に
伴う少数
民族およ
び先住民
族への影
響
(b) 少数民族、先住民
族の土地及び資源に関
する諸権利は尊重され
るか。
(6)労働環境 (a) プロジェクトにお
いて遵守すべき当該国
の労働環境に関する法
律が守られるか。
✔
同上.
✔
本事業に
伴う労働
安全衛生
の悪化
102
本事業による著しく深刻な
影響は無いと予想される。
騒音、振動、大気汚染等の
人々への悪影響を考慮に入
れるべきである。必要に応
じて対策が実施される。
本事業による著しく深刻な
影響は無いと予想される。
しかし、候補地の近傍に考
古学的、歴史的、文化的、
宗教的な遺産があるか確認
の必要がある。第一に、こ
のような場所が選択される
ことを避けるべきである。
更なる調査により影響が予
想される場合には、予想さ
れる影響を回避・緩和する
ために必要な対策を検討す
る。
基本的には、著しい影響は
無いものと予想されるが、
本事業が沿岸の景観を阻害
するかどうか確認する必要
がある。更なる調査の段階
で、悪影響が予想される場
合にはタイ国の法令に基づ
く必要な対策が実施され
る。
本事業の周辺では大きな民
族問題は無いものと予想さ
れる。更なる調査により影
響が予想される場合には、
予想される影響を回避・緩
和するために必要な対策を
検討する。
同上.
労働条件はタイ国の法令に
より保護される。必要に応
じて、本事業では、国際的
な機関や他国で定められて
いる規制を参照し、労働安
全衛生の内部規制を設け
分
類
環境項目
主なチェック事項
予想される環境影
響度
大 小 無 不明
予想され
る環境面
の課題と
問題点
環境配慮の確認(理由、緩和
策)
る。
(b) 労働災害防止に係
る安全設備の設置、有
害物質の管理等、プロ
ジェクト関係者へのハ
ード面での安全配慮が
措置されているか。
(c) 安全衛生計画の策
定や作業員等に対する
安全教育(交通安全や
公衆衛生を含む)の実
施等、プロジェクト関
係者へのソフト面での
対応が計画・実施され
るか。
(d) プロジェクトに関
係する警備要員が、プ
ロジェクト関係者・地
域住民の安全を侵害す
ることのないよう、適
切な措置が講じられる
か。
(1)工事中の (a) 工事中の汚染(騒
影響
音、振動、濁水、粉じ
ん、排ガス、廃棄物等)
に対して緩和策が用意
されるか。
✔
る。
✔
同上
✔
本事業に
伴う地域
住民への
安全阻害
✔
環境汚染
(騒音・振
動、濁水、
粉じん、排
ガス、廃棄
物等)
5
そ
の
他
本 事 業 に 安全配慮について適切な指
伴 う 労 働 示や指導が、労働者および
災害
本事業の関係者に行われ
(b) 工事により自然環
境(生態系)に悪影響
を及ぼすか。また、影
響に対する緩和策が用
意されるか。
✔
(c) 工事により社会環
境に悪影響を及ぼす
か。また、影響に対す
る緩和策が用意される
か。
(d) 工事による道路渋
滞は発生するか、また
影響に対する緩和策が
✔
✔
103
同上
安全配慮について適切な指
示や指導が、労働者および
本事業の関係者に行われ
る。また、一般市民への啓
蒙活動も実施する。
以下の措置を実施する。
(1) 騒音・振動: 低騒音、
低振動の工法や建設車両
と設備。
(2) 濁水: 沈殿池等。
(3) 排ガス: 低排ガスの建
設車両と装置。
(4) 粉じん: 散水等。
(5) 廃棄物: 廃物や固体廃
棄物等は適切に廃棄また
は再利用。
工 事 に よ 建設活動は、建設現場にお
る 自 然 環 いて自然環境に著しい悪影
境の破壊 響を与えないと考えられる
が、必要に応じ、影響を緩
和するための適切な対策が
検討される。
交通渋滞、 迂回路等の適切な対策は、
悪影響等 社会環境への影響を緩和す
るために実施される。
同上
同上
分
類
環境項目
主なチェック事項
予想される環境影
響度
大 小 無 不明
予想され
る環境面
の課題と
問題点
環境配慮の確認(理由、緩和
策)
用意されるか。
EIA、IEE,EMP の環境計画に
基づいて、モニタリングを
実施する。こととする。被
影響住民(PAP)がいる場合
は、RAP に記載されたモニタ
リング計画に基づき、モニ
タリングする。
同上
(2)モニタリ (a) 上記の環境項目の
ング
うち、影響が考えられ
る項目に対して、事業
者のモニタリングが計
画・実施されるか。
(b) 当該計画の項目、
方法、頻度等はどのよ
うに定められている
か。
(c) 事業者のモニタリ
同上.
ング体制(組織、人員、
機材、予算等とそれら
の継続性)は確立され
るか。
(d) 事業者から所管官
同上.
庁等への報告の方法、
頻度等は規定されてい
るか。
(a) 必要な場合には、
✔
本 事 業 に 本事業では、様々な省エネ
越境または地球規模の
伴 う 地 球 対策を導入することで、排
環境問題への影響も確
環境問題 ガスによる影響は可能な限
6 環境チェッ
認する(廃棄物の越境
り抑制されるため、本事業
留 クリスト使
意
処理、酸性雨、オゾン
に伴う深刻な国際問題は予
点 用上の注意 層破壊、地球温暖化の
想されていない。しかし、
問題に係る要素が考え
さらなる調査では、詳細を
られる場合等)。
確認する必要がある。
1). 表中『当該国の基準』については、国際的に認められた基準と比較して著しい乖離がある場合には、
必要に応じ対応策を検討する。当該国において現在規制が確立されていない項目については、当該国以
外(日本における経験も含めて)の適切な基準との比較により検討を行う。
2). 環境チェックリストはあくまでも標準的な環境チェック項目を示したものであり、事業および地域
の特性によっては、項目の削除または追加を行う必要がある。
出典:JICA 環境チェックリストを基に調査団作成
2) 本事業のための環境社会配慮における代替案及び緩和策
現時点で、上水ならびに下水関連施設の基本計画や設計が確定していないため、緩和策や代替地、代
替案の詳細な検討はされていない。上水ならびに下水関連施設のための代替地や可能な設計と施工方法
は、さらなる調査段階において検討される。
現時点で、技術的には、適切な緩和策が採用および実行されるのであれば、本関連事業の建設および
操業による深刻な悪影響は予想されない。
104
(4)相手国における環境社会配慮関連法規の概要およびそのクリア
に必要な措置
1) 本事業実施に関係する環境社会配慮関連法規の概要
a) 環境管理関係組織制度
2015 年 12 月時点、タイ国の環境影響評価行政を司るのは、天然資源・環境省(the Ministry of Natural
Resources and Environment: MNRE)傘下の天然資源・環境政策計画局 (the Office of Natural Resources
and Environmental Policy and Planning: ONEP) に 設 置 さ れ て い る 環 境 影 響 評 価 事 務 局 ( the
Environmental Impact Evaluation Bureau: EIEB)である。
通常、環境影響評価報告書は、ONEP に提出され、ONEP による一次レビューを受けた後に、専門家レ
ビュー委員会(the Expert Review Committee)による承認/非承認の判断を受ける。事業実施主体が、
省庁や国営/公営企業の場合、専門家レビュー委員会の意見が、国家環境委員会( the National
Environmental Board)を通して、内閣に送られ、環境影響評価報告書ついての判断は内閣によってな
される。
天然資源・環境省は 2002 年に設立された省で、環境影響評価のみならず、タイにおける環境管理、
天然資源管理全般を監督する省庁である。天然資源・環境省傘下には以下の部局、公社が設置されてい
る。
部局:
1. 大臣官房(Office of Minister)
9. 環境保全推進局(National Park, Wildlife and
2. 次 官 事 務 局 (Office of Permanent Plant Conservation Department)
Secretary)
10. 天然資源・環境政策計画局(Office of Natural
3. 公 害 対 策 局 (Pollution Control Resources and Environmental Policy and
Department)
Planning)
4. 海洋・沿岸資源局(Department of Marine 11. 王立森林局(Royal Forest Department)
and Coastal Resources)
5. 鉱 物 資 源 局 (Department of Mineral 公社:
Resources)
1. 動物園機構(Zoological Park Organization)
6. 水 資 源 局
(Department of Water 2. 下 水 管 理 機 構 (Wastewater Management
Resources)
Authority)
7. 地 下 水 資 源 局 (Department of 3. 植物園機構(Botanical Garden Organization)
Groundwater Resources)
4. 林業機構(Forest Industry Organization)
8. 環 境 質 推 進 局 (Department of 5. タ イ 合 板 公 社 (Thai Plywood Company
Environmental Quality Promotion)
Limited. )
ONEP は、主に天然資源管理と環境保全の管理全般にかかわる政策、計画を策定する。開発事業の実施、
調整、モニタリングのツールとして ONEP は環境影響評価の手続きを採択している。
(天然資源・環境省
HP2参照)
ONEP の責務の詳細は以下のとおりである。
1) 天然資源管理、環境保全、行政管理等の計画策定。
2) NEQA1992 ならびに関連法に基づいて、天然資源管理計画ならびに環境管理計画の策定及び他
機関との調整(計画の実施に伴う調整も含む)。
3) 天然資源ならびに環境保護区の布告に関する調査、分析、調整、対策立案の実施。
4) 環境関連政策/計画/対策のモニタリング・審査・パフォーマンス評価の実施、環境質現況報告
書の作成。
5) 環境質に影響を及ぼす恐れのある官民双方の事業の環境影響の分析。
6) 各レベルでの天然資源・環境管理にかかわる政策・計画実施に向けて環境基金の適切な管理。
7) 土地管理、土地所有計画、土地保全、公共の目的のための土地分配・土地保全のための政策お
よびガイドライン策定に向けた助言。
8) 天然資源管理、環境保全、行政管理にかかわる政策・計画に関して、他国および国際機関との
協力。
2
http://webeng.mnre.go.th
105
9) 省、内閣、関連法律によって指定されたその他の職務、権限と責任の実施。
天然資源・環境省において、ONEP についで環境影響評価手続きに深く関係する部局は、汚染対策局
(Pollution Control Department)と環境質推進局(Department of Environmental Quality Promotion)
である。これら 2 局の主要な責務は下表のとおりである。
表 4-3 汚染対策局と環境質推進局の主要な責務
主要な責務
- 環境質の修復、保護、保全に伴う、規制、監督、指導、調整、モニタリング、評価
を担当する責務を有する。具体的な役割は以下のとおりである。
- 汚染対策にかかわる環境質の推進と保全にかかわる国家政策・計画策定への提言。
- 国家環境基準、排出/排水基準策定にあたっての提言。
- 環境質管理計画ならび環境汚染に対する対策、防止、緩和計画の策定。
- 環境質をモニタリングし、汚染年次報告書のとりまとめ。
- 水質、大気質、騒音/振動、危険物、廃棄物の管理にかかわる適切なシステム、手法、
技術の開発。
- 環境汚染地域の環境被害の評価、ならびに、被害の緩和、修復のための対策の実施
および関係機関との調整。
- 環境管理に関する支援及び助言
- 環境管理に関して他国ならびに国際機関との協力。
- 汚染にかかわる苦情、告訴の審査
- NEQA1992 ならびに、他の関連法で規定された汚染対策にかかわるその他の職務の実
施。
- 省、内閣、関連法律によって指定されたその他の職務、権限と責任の実施。
環境クオリテ - 環境質の向上・推進を、研究開発、研修、啓蒙強化、技術移転によって実施し、生
活環境の向上と天然資源・環境の持続的な管理に寄与することを責務としている。
ィー推進局
具体的な役割は以下のとおりである。
- 天然資源と環境にかかわる広報や推進活動の実施。
- 各種情報伝達技術を用いて、環境関連情報の収集、縦覧を行う、天然資源・環境情
報センターとして機能。
- 持続的な方法で、天然資源、環境、生物多様性の保護、維持、利用するにあたり、
市民参加の推進。環境紛争の防止ならびに調停のセンターとして機能。
- 天然資源と環境の保全にかかわる広報、情報伝達推進にかかわる対策や計画に関す
る助言ならびに調整の実施。
- 環境技術や環境管理に関する調査、研究、開発、技術移転を推進。
- 省、内閣、関連法律によって指定されたその他の職務、権限と責任の実施。
出典:MNRE Webpage http://webeng.mnre.go.th
部局名
汚染対策局
天然資源・環境省が、タイにおける環境影響評価ならびに環境管理行政の主責任省庁であるものの、
他の省庁も、監督分野の環境規制にかかわる責任を有している。このような省庁として、工業省(the
Ministry of Industry)、内務省(the Ministry of Interior)、農業・協同組合省(the Ministry of
Agriculture and Cooperative)
、運輸通信省(the Ministry of Transport and Communication)、タイ
工業団地公社(the Industrial Estate Authority of Thailand)、タイ電力公社(the Electricity
Generating Authority of Thailand :EGAT)、 科学技術省(the Ministry of Science and Technology)
等が挙げられる。
b) 環境関連法令
ⅰ) 環境影響評価関連法
国家環境保全推進法 1992(The Enhancement and Conservation of National Environmental Quality
Act B.E. 2535: NEQA 1992)
環境影響評価に関する通知が出された 1981 年以降、環境影響評価手続きがタイにおける経済開発事
業の意思決定のための環境計画・管理のツールとして利用されてきている。国家環境保全推進法 1992
(NEQA1992)およびに、その関連法・通知が現在のタイにおける環境影響評価の基本法的枠組みとなて
いる。NEQA1992 は以下の章立てで構成されている。
Chapter I.
国家環境委員会(National Environment Board)
Chapter II.
環境基金(Environmental Fund)
Chapter III. 環境保護(Environmental Protection)
Chapter IV.
公害対策(Pollution Control)
106
Chapter V.
Chapter VI.
Chapter VII.
広報(Promotional Measures)
市民的義務(Civil Liability)
罰則条項(Penal Provisions)
NEQA1992 の第 III 章が環境影響評価に最も関連しており、以下の取り細分化されている。
Part
Part
Part
Part
1
2
3
4
水質、大気質、騒音・振動等における環境質基準
環境質管理計画
環境保全地域(Environmentally Protected Area)
EIA
2015 年 12 月時点で、タイにおいて、NEQA1992 に基づき、以下のカテゴリーに該当する事業種がなに
かしらの環境影響評価調査の実施ならびに報告書の提出が必要となっている。
i.
環境への著しい影響が予想され EIA 報告書の作成が必要な事業(35 種)
ii.
地域住民への深刻な影響が懸念され環境健康影響評価(EHIA)報告書の作成が必要な事業(12 種)
iii.
環境保全地域内の事業
iv.
森林保全地域内での事業
v.
国内、国際のいずれかで重要とされる湿原生態系に影響を及ぼす可能性のある事業
上記、i.から iv.のカテゴリーに該当する事業種およびその規模要件の詳細については、本報告書の
Appendix 4-1 に記載した。
環境影響評価の実施にあたっての調査の要求レベルは、概ね、以下の 3 つに区分される。
① フルスケールの「EIA レベル調査」、
② より簡素化した「IEE(初期的環境影響調査)レベル調査」、
③ 環境緩和・防止策および環境影響モニタリング対策を中心とした「EMP(環境管理計画)レベル調
査」(タイにおいては、「環境チェックリスト」調査)
環境影響評価の該当事業種のカテゴリーと調査の要求レベルの関係を表 4-4 に示した。
表 4-4 環境影響評価の該当事業種のカテゴリーと調査の要求レベルの関係
調査要求レベル
該当事業カテゴリー
EIA 報告書の作成が必要な事業(35 種)
EHIA 報告書の作成が必要な事業(12 種)
環境保全地域内の事業
森林保全地域内での事業
重要とされる湿原生態系に影響を及ぼす可能性のある事業
出典: NEQA1992 関連文書を調査団が取り纏め
EIA
レベル
○
○
○
○
○
IEE
レベル
EMP
レベル
○
○
○
ⅱ) その他関連法
自然環境、社会環境の管理ならびに汚染対策に関連する主要な法律は以下のとおり。
- The Factories Act B.E. 2535 (1992)
-
The Public Health Act B.E. 2535 (1992)
The Hazardous Substances Act B.E. 2535 (1992)
The Public Cleansing Act B.E. 2535 (1992)
Industrial Estate Authority of Thailand Act B.E. 2522 (1979)
Land Transportation Act B.E. 2522 (1979)
Industrial Products Standards B.E. 2511 (1968)
The Petrol Act B.E. 2521 (1978)
Land Traffic Act B.E. 2535 (1992)
107
-
Highway Act B.E. 2535 (1992)
Building Control Act B.E. 2522(1979) and B.E. 2535 (1992)
Energy Conservation Promotion Act B.E. 2535(1992)
Navigation in Thai Water Act B.E. 2535 (1992 Amendment)
Forest Act B.E.2532 (1989 Amendment)
Wildlife Preservation and Protection Act B.E.2535 (1992 Amendment)
National Parks Act B.E. 2504 (1961)
National Forest reserve Act B.E. 2507 (1964)
Reforestation Act B.E. 2535(1992)
Groundwater Act B.E. 2520 (1977)
Official Information Act B.E. 2540(1997)
Rule of the Prime Minister on Public Consultation B.E. 2548 (2005)
Disease Act B.E.2477 (1934)
Animal Disease Act B.E. 2499 (1956)
Fertilizer Act B.E.2518 (1975)
Toxic Material Act B.E.2535 (1992)
Fisheries Act B.E. 2490 (1947)
State Irrigation Act B.E. 2485 (1942)
City Planning Act of B.E.2518 (1975)
Bangkok Metropolis Regulation on Drainage Control B.E. 2534 (1991)
ⅲ) 本事業対象地域および上水・下水事業に関連する NEQA 1992 の下位法ならびに通知
2015 年 12 月時点で、NEQA 1992 の下位法ならびに通知のうち、事業対象地域(フアヒン、パタヤ、
バンコク)ならびに上水・下水事業に関連するものを表 4-5 に記載した。
表 4--5 本事業対象地域および上水・下水事業に関連する NEQA 1992 の下位法・通知
種類
名称
- Ministerial re: specify rules, procedures and form for statistics and
省令・規定
data collection including report preparation, detail and summary
report for performance of wastewater treatment plant, B.E. 2555
- Ministerial re: specify form of identity card for authority and
pollution control officials, B.E. 2547
- Ministerial No. 6 (B.E. 2537) concerning registration and permission
fees for those who is competent to conduct EIA report
- Ministerial (B.E. 2535) specify some area of Pattaya’s coastal waters
as an EPA and its protective measures
- Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re:
通知
specify rules, procedures, regulations and guidelines for the
preparation of EHIA reports for projects or activities that might cause
serious impact on communities both to environment quality, environment
and health, B.E. 2552 (There are 3 amendments for this Notification)
- Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re:
specify types and sizes of project or activity that require EIA report
and its rules, procedures, regulations and guidelines for report
preparation, B.E. 2555 (There are 8 amendments for this Notification)
- Notification of the National Environment Board No. 40 (B.E. 2554) re:
specify rules and procedures for appointment of expert committee in
EIA report.
- Notification of the National Environment Board No. 4 (B.E. 2558) re:
specify rules and procedures for appointment of expert committee in
EIA report in building, land development and public service in Bangkok.
- Notification of the National Environment Board No. 3 (B.E. 2558) re:
specify rules and procedures for appointment of expert committee in
IEE report and EIA report for EPA.
- Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re:
specify territory and protective measure for EPA in Hua Hin, B.E. 2553
- Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re:
extend the duration for 1 more year for the Notification of the Ministry
of Natural Resources and Environment re: specify territory and
protective measure for EPA in Hua Hin, B.E. 2553.
- Notification of the National Environment Board No. 13 (B.E. 2539) re:
designated Hua Hin as a pollution control area.
108
種類
名称
- Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re:
specify territory and protective measure for EPA in Banglamung
district of Chonburi province, B.E. 2553
- Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re:
extend the duration for 1 more year for the Notification of the Ministry
of Natural Resources and Environment re: specify territory and
protective measure for EPA in Banglamung district of Chonburi
province, B.E. 2553
- Notification of the National Environment Board No. 1 (B.E. 2515) re:
designated Pattaya as a pollution control area.
- Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re:
national environment quality plan for B.E 2555 – 2559
- Notification of the Office of Natural Resources and Environmental
Policy and Planning re: guideline for counting date and time for
preparation of EHIA report, B.E. 2553
- Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re:
specify rules, procedures, regulations and guideline for preparation
of IEE and EIA report of project within EPA of Hua Hin, B.E. 2553
- Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re:
specify rules, procedures, regulations and guideline for preparation
of IEE and EIA report of project within EPA of Pattaya, B.E. 2553
- Notification of the Pollution Control Department re: criteria for
designing of wastewater collection system and central wastewater
treatment plant, B.E. 2553
- Notification of the National Environment Board re: specify service fee
for central wastewater treatment plant of Hua Hin, B.E. 2553
- Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re:
designated central wastewater treatment plant as a point source of
pollution that must be controlled about water discharging into public
water resource or environment, B.E. 2553
- Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re:
set forth a standard about discharge of wastewater from central
wastewater treatment plant, B.E. 2553
- Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment No.
6 (B.E. 2552) re: appointment of competent authority under the
Enhancement and Conservation of the National Environmental Quality
Act, B.E. 2535
- Notification of the Pollution Control Department re: selection
criteria for the landfill waste, B.E. 2552
- Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment No.
4 (B.E. 2551) re: appointment of pollution control officials.
- Notification of the Pollution Control Committee re: calculation of
living space, buildings amount and rooms quantity per building or group
of building and guideline for collect water examples, B.E. 2550
- Notification of the Pollution Control Department re: Guideline for
collection, frequency and duration for collection of wastewater from
industry factory and industrial estate, B.E. 2539
出典: MNRE 関連文献ならびに現地法律事務所寄りの情報収集
ⅳ)アスベスト・セメント製品に対する規制
フアヒンの上水事業においては、既存のアスベスト管の交換が推奨されているが、現在、タイにおい
てアスベスト・セメント製品の禁止に関して議論・争論が生じ、閣議ならびにタイ保健議会にてアスベ
スト・セメント製品の利用禁止は決定されているものの、利用禁止を徹底する法律や規制は未だ制定さ
れていない。
なお、有害物質法(the Hazardous Substance Act, B.E. 2535)において以下のアスベスト製品が有害
物質として規定されている。

アモサアスベスト (CAS no. 12172-73-5) :有害物質第 4 種に指定され、その生産、輸出入、所有
が禁止されている。
109

ダスト・繊維状のアスベスト廃棄物:有害物質第 3 種に指定され、その生産、輸出入、所有は許可
制となっている。
法的順守基準ではないものの、タイ工業規格研究所(The Thai Industrial Standards Institute:TISI)
はアスベスト・セメント製品の工業規格および管理・取扱の基準に関連して以下の基準を策定している。
Asbestos cement flat sheets (TIS 12-2530)
Asbestos cement corrugated sheets (TIS 18-2529)
Asbestos cement asymmetrical section corrugated sheets (TIS 79-2529)
Asbestos cement pressure pipes (TIS 81-2548)
Asbestos cement joints for asbestos cement drainage pipes (TIS 125-2529)
Asbestos cement pressure couplings (TIS 126-2548)
Building and sanitary asbestos cement pipes (TIS 621-2529)
Sewerage and drainage asbestos cement pipes (TIS 622-2529)
c) 環境質基準
タイにおいて天然資源・環境省が環境質基準を設定している。表 4-6 にて天然資源・環境省が設定し
た主要な環境質基準を列記した。
水質
大気質、騒
音・振動
表 4-6 タイにおける環境質基準
基準名称
- 飲料水質基準(Drinking Water Quality Standards)
- 瓶詰飲料水質基準(Bottled Drinking Water Quality
Standard)
- 飲料用地下水質基準(Ground Water Standards for Drinking
Proposes)
- 工業排水質基準(Industrial Effluent Standards)
排水質基準
- 深井戸に排水される水質特性(Water Characteristics
Discharged into Deep Wells)
- 建物排水質基準(Building Effluent Standards)
- 住宅地の排水質基準(Housing Estate Effluent Standards)
- 灌漑システムに放流される水の水質特性(Water
Characteristics Discharged into Irrigation System)
- 養豚場における水質基準(Effluent Standard for Pig Farm)
- ガソリンスタンドならびに油備蓄場のおける排水質基準(Gas
Station and Oil Terminal Effluent Standard)
- 工業汚染対策施設における規定(Regulations of Industrial
Pollution Control Facilities)
- 沿岸部の養殖池における排水質基準(Effluent Standard for
Coastal Aquaculture)
- 汽水域の養殖池における排水質基準(Effluent Standard for
Brackish Aquaculture)
- 内陸/淡水域の養殖池における排水質基準(Effluent
Standard for Inland Aquaculture)
表流水質基準(Surface Water Quality Standards)
表流水質基準
- 表流水質基準における対象クラスの区分と目的
(Classification of Water Resources for each Region)
- Restricted Zone for Protecting the Source of Water Supply
in Bangkok Metropolitan Region
- 沿岸水質基準(Coastal Water Quality Standards)
沿岸水質基準
- 沿岸水質基準における対象クラスの区分と目的
(Classification of Coastal Waters)
- プーケット島西岸の対象クラス区分(Areas Classification
for the West Coast of Phuket Island)
- 地下水質基準(Quality Standards)
地下水質基準
淡水動物用水質基準 - 淡水動物用水質基準(Appropriated Water Quality Criteria
for Aquatic Living)
- 最大許容量(Maximum Allowance in Water)
- 大気質基準(Air Quality Standards)
大気質基準
- 移動源から排出基準 Emission Standard for Mobile Sources
カテゴリー
飲料水質基準
110
カテゴリー
基準名称
- 固定源から排出 Emission Standard for Point Sources
- 騒音・振動基準(Noise and Vibration Standards)
騒音・振動基準
- 農業土壌基準 Soil Quality Standards for Habitat and
土壌
土壌基準
Agriculture
- 土壌基準(その他)Soil Quality Standard for Other Purposes
出典: Water Quality :http://www.pcd.go.th/info_serv/en_reg_std_water.html
Air Quality and Noise: http://www.pcd.go.th/info_serv/en_reg_std_airsnd.html
Soil Quality: http://www.pcd.go.th/info_serv/en_reg_std_soil01.html
飲料水、排水、表流水、地下水にかかわる水質基準の詳細を本報告書の Appendix 4-2 に記載した。
2) タイにおける環境影響評価承認手続き
NEQA1992 および関連法律・通知によれば、タイにおける環境影響評価承認手続きは、概ね以下の 4 つ
の手続きに区分される。
a. 内閣承認が不要な事業・活動 (主に民間事業)
b. 内閣承認が必要な事業・活動 (主に政府事業)
c. 内閣承認が不要だが EHIA が必要な事業・活動 (主に民間事業)
d. 内閣承認ならびに EHIA が必要な事業・活動 (主に政府事業)
環境影響評価は、プロジェクト評価の段階で環境影響緩和策についても検討できるように、事業の初
期段階、フィージビリティ調査と同時の実施が望まれる。 通常、ONEP に登録された EIA コンサルタン
トが環境影響評価調査を実施する。以下、上記 4 つの手続き区分ごとの承認手続きを記載した。
a) 内閣承認が不要な事業・活動 (主に民間事業)
図 4-10 に内閣承認が不要な事業・活動の環境影響評価承認手続きフローを記載した。EHIA を必要と
しない多くの民間事業がこの区分に該当する。事業実施主体が、環境影響評価報告書を ONEP に提出後、
書類の不備や間違いがない場合は、15 日以内に ONEP がレビューと初期コメントを出す。報告書の訂正
等がなければ、報告書は専門家レビュー委員会に送られ、45 日以内に環境影響評価報告書のレビューと
コメント作成が行われ、承認するか否かを決定する。専門家レビュー委員会により環境影響評価報告書
が承認されると、事業監督省庁が、環境影響評価報告書に明記されている環境対策とモニタリングの実
施を条件に、当該事業に対しライセンスを発行する。専門家レビュー委員会により承認されなかった場
合は、ONEP が事業者に対し、環境影響評価報告書の修正・追加資料の提出を求める。再提出された環境
影響評価報告書は、専門家レビュー委員会が 30 日以内にレビューを行い、再度、承認するか否かを決
定する
111
Project Proponent
Submit EIA
ONEP
Not correct/ incomplete
Permitting Agency
ONEP examines EIA (15 days)
Withhold the granting of permission
Correct/ complete
Re submit revised EIA report
or New EIA report
depending upon ERC’s
opinion
Expert Review Committee
(ERC) reviews EIA (45 days)
Approve
Permitting Agency
Grant License
Disapprove
Project Proponent
Resubmit EIA Report to ONEP
and Permitting Agency
Approve
ERC reviews EIA (30 days)
Disapprove
End of the Reviewing Process
In case of agree with ERC opinion
that disapprove the report
Project Proponent
Permitting Agency
Grant License
In case of disagree with ERC opinion
that disapprove the report
May file a lawsuit at the
administrative court within 90days
出典: Environmental Impact Assessment in Thailand (August 2015), MNRE
図 4-10 内閣承認が不要な事業・活動における環境影響評価承認手続き
b) 内閣承認が必要な事業・活動 (主に政府事業)
図 4-11 に内閣承認が必要な事業・活動の環境影響評価承認手続きフローを記載した。EHIA が不要で、
省庁、公社等が事業実施主体の事業・活動の多くが該当する。この区分の事業には承認にあたっての明
確な期間や期限が設定されていない。環境影響評価報告書が ONEP に提出され、専門家レビュー委員会
がまずコメントを出す。同コメントは、国家環境委員会に送付され、国家環境委員会によりさらなるレ
ビューが行われる。国家環境委員会のコメントが内閣に送付され、最終的には内閣によって承認の是非
が決定される。
112
Government Agency
State Enterprise
Prepare EIA at the stage of
conducting Feasibility Study
Expert Review Committee (ERC)
ONEP Summarizes ERC’s comments
National Environmental Board
Submit Comments
The Cabinet
Expert Person/ Institute
submit opinion
Decision to approve or disapprove
出典: Environmental Impact Assessment in Thailand (August 2015), MNRE
図 4-11 内閣承認が必要な事業・活動における環境影響評価承認手続き
c) 内閣承認が不要だが EHIA が必要な事業・活動 (主に民間事業)
内閣承認が不要だが EHIA が必要な事業・活動の承認手続きは、上述の内閣承認が不要な環境影響評
価承認手続きと同様なフローをたどるが、専門家レビュー委員会の承認後、追加の手続きが必要となっ
ている。公聴会等のパブリックコンサルテーションならびに、第 3 者組織からの意見徴集等が、事業ラ
イセンス発行前に必要となっている。図 4-12 にこの区分の事業・活動に必要となる承認フローを記載
した。
113
Project Proponent
Submit EIA
Not correct/ incomplete
ONEP
Re submit revised EIA report or
New EIA report depending upon
ERC’s opinion
Permitting Agency
ONEP examines EIA (15 days)
Correct/ complete
Withhold the
granting of
permission
ONEP makes preliminary comments (15 days)
Expert Review Committee
(ERC) reviews EIA (45 days)
Approve
Submit ERC’s opinion
Disapprove
Approve
ONEP
State Agency which is
responsible for project/
activity or Permitting
Agency in order to
organize consultation
with the public and
interested parties
Project Proponent
Resubmit EIA Report
to ONEP
ERC reviews EIA (30 days)
Resubmit the Report to ONEP and
Summary of the measures
Disapprove
Independent Organization
Append Opinion
End of the Reviewing Process
Permitting Agency
Making clarification of all
related agencies and reason of
decision making and publish
on the web sites
In case of agree with ERC opinion
that disapprove the report
Project Proponent
May file a lawsuit at the administrative court within 90days
In case of disagree with ERC opinion that disapprove the report
出典: Environmental Impact Assessment in Thailand (August 2015), MNRE
図 4-12 内閣承認が不要だが EHIA が必要な事業・活動 の環境影響評価 承認手続き
d) 内閣承認ならびに EHIA が必要な事業・活動 (主に政府事業)
図 4-13 に内閣承認ならびに EHIA が必要な事業・活動の環境影響評価承認手続きフローを記載した。
公聴会等のパブリックコンサルテーションならびに、第 3 者組織からの意見徴集等が、専門家レビュー
委員会のコメントを国会環境委員会に送付前に必要となっている。
114
Government Agency
State Enterprise
Prepare EIA at the stage of
conducting Feasibility Study
Correct
Report
Expert Review Committee (ERC)
Government Agency
State Enterprise
Not Enough Documents
Enough Documents
Submit ERC’s result
ONEP Summarizes
ERC’s comments
ONEP
State Agency which is
responsible for project/
activity or Permitting
Agency in order to
organize consultation
with the public and
interested parties
Submit the approved report, opinion of
ERC and Summary of the measures
Independent
Organization
Append Opinion
ONEP
Submit the opinion of ERC, opinion of independent organization and consultation report
National Environmental Board
Submit Comments
The Cabinet
Expert Person/ Institute submit opinion
Decision to approve or disapprove
出典: Environmental Impact Assessment in Thailand (August 2015), MNRE
図 4-13 内閣承認ならびに EHIA が必要な事業・活動の環境影響評価承認手続き
3) 本対象事業における環境影響評価要求事項
2015 年 12 月時点の既存法や規制に基づき、本調査の対象事業における環境影響評価要求事項を表 4-7
に取りまとめた。4 つの対象事業のうち、環境保全地域の規定により、フアヒン下水案件が IEE レベル、
パタヤ再生水・下水案件が EIA レベルの調査が必要となる。
表 4-7 本対象事業における環境影響評価要求事項
事業種
フアヒン
パタヤ
事業カテゴリー
上水
下水
再利用水・下水
EIA 対象事業(35 種)
該当せず
該当せず
該当せず
EHIA 対象事業(12 種)
該当せず
該当せず
該当せず
環境保全地域 (EPA)
該当せず
IEE レベル
EIA レベル
森林保全地域
該当せず
該当せず
該当せず
出典: 調査団作成
バンコク
下水
該当せず
該当せず
該当せず
該当せず
以下の 2 つの通知が、フアヒン下水案件で IEE レベル、パタヤ再生水・下水案件で EIA レベルの環境
影響評価が必要であることを規定している。
 Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re: specify rules,
procedures, regulations and guideline for preparation of IEE and EIA report of project within
EPA of in Ban Laem and Mueang Phetchaburi, Tha Yang and Cha-Am District, Phetchaburi Province
and Hua Hin, Pranburi District, Prachuap Khiri Khan Province, B.E. 2553 (2010)
 Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment re: specify rules,
procedures, regulations and guideline for preparation of IEE and EIA report of project within
EPA of Banglamung and Sattahip district, Chonburi Province( Pattaya), B.E. 2553 (2010)
これらの通知によれば、環境保全地域(EPA)内における下水処理施設は、規模要件によって EIA も
115
しくは IEE のいずれかのレベルの影響評価が必要となる。表 4-8 に関連通知にて規定された下水処理施
設の環境影響評価にかかわる規模要件を示す。
表 4-8 環境保全地域内の下水処理施設における EIA/IEE の規模要件
要求事項
IEE レベル
EIA レベル
事業種
下水処理施設
下水処理施設で、3,000m2/日を超えな
い処理能力を有する施設(ただし、工
場法で規定する処理施設は含まれな
い)
出典:関連通知
116
下水処理施設で、3,000m2/日を超える処
理能力を有する施設(工場法で規定する
処理施設を含む)
(5)プロジェクトの実現に向け当該国(実施機関その他関係機関)が
成すべき事項
事業実施主体ならびにタイ国の関係機関は、本事業実現のために、以下の事項を実施するのが望まし
い。
 基礎調査を実施し、代替案を検討の上で、上下水関連施設の位置、線形、配置等の選定を行う。
 案件対象地域内外の世帯や人口に関するセンサスもしくは社会経済調査を行い、対象事業の利用者
や周辺住民(被影響住民:PAPs)のおよその規模をつかむ。
 その後、環境に関連する許可やクリアランス取得に向けて、環境影響評価調査の要求事項に応じて、
EIA、IEE、EMP(レベルの調査)のいずれかを各事業において実施する。現在のタイにおける環境
影響評価関連法律によれば、フアヒン下水改良案件が IEE レベル、パタヤ再生水・下水案件が EIA
レベルの調査が必要とされている。フアヒン上水案件とバンコク首都圏庁小規模下水案件は、タイ
の関連法律では要求されていないにしても、事業の財源や投資元の状況や要求事項に応じて、最低
でも IEE レベルもしくは EMP レベルの調査及び環境影響評価を行うことが望まれる。
 上記 3 点のの作業に必要となる事項は以下のとおり。

土壌調査、大気質調査、水質調査、水文・潮流調査、動植物相調査、社会調査等を行い、
本事業の計画/設計のみならず、環境影響評価を検討する上で必要となるベースライン情
報を収集する。

環境影響評価調査(もしくは、各事業に応じた適切な環境社会配慮確認調査)の仕様書の
最終化を行い、環境影響評価手続きを速やかに行う。

関係当局より、環境に関連する許可やクリアランス取得のため、事業実施主体負担で雇
用した第三者機関による環境影響評価調査(もしくは、各事業に応じた適切な環境社会配
慮確認調査)を実施する 。

必要に応じて、環境影響評価関連以外の環境関連許可(表流水の取水・利用、下水処理水
の排水等)の取得。
 現在、本調査対象案件において、用地取得や非自発的住民移転は、あっても軽微なのものと想定さ
れているが、万が一、発生する場合、必要に応じて、補償計画、生活改善策も含む、住民移転計画
書(RAP)を作成する。RAP の作成、関係者による RAP の合意後、予測される環境・社会影響を踏ま
えて、用地取得手続きを開始する。その後、本事業の被影響住民に対して補償等の交渉を開始する。
117
第5章 財務的・経済的実行可能性
118
(1)事業費の積算
予備的な事業費には、1)処理場コスト、2)パイプラインコスト、3)ポンプコスト、4)土地取得コスト、
5)事務コストが含まれる。下記記載の通り、地方水道公社、イーストウォーター社、タイにおける過去
の類似案件からの情報に基づき、前提を置いている。
表 5-1 各案件のプロジェクトコスト
(バーツ)
フアヒン
項目
処理場コスト
パイプライン
コスト
ポンプコスト
土地取得コスト
事務コスト
VAT
合計
項目
処理場コスト
パイプライン
コスト
ポンプコスト
土地取得コスト
事務コスト
VAT
合計
出典:調査団作成
上水
フェーズ 1
フェーズ 2
411,283,609
489,495,347
61,324,939
0
962,103,895
718,834,628
833,981,779
74,466,829
182,007,400
1,809,290,636
0
576,429,830
85,327,403
125,431,283
1,917,306,752
0
0
66,173,856
97,275,569
1,486,926,551
0
431,469,470
28,363,062
41,693,701
637,318,001
0
0
9,100,370
13,377,544
204,485,314
0
1,007,899,300
188,964,691
277,778,097
4,246,036,618
下水
無収水事業
下水
539,570,612
パタヤ
再生水
156,304,694
合計
695,875,306
0
206,287,032
206,287,032
0
0
26,978,531
39,658,440
606,207,583
14,128,891
0
18,836,031
27,688,965
423,245,613
14,128,891
0
45,814,561
67,347,405
1,029,453,196
合計
バンコク
首都圏庁
92,217,834
8,342,791
0
0
5,028,031
7,391,206
112,979,862
(2)予備的な財務・経済分析の結果概要
上記プロジェクトコスト、及び以下記載の収入、費用の前提をもとに、キャッシュフロー及びIRRを
計算した。それぞれの項目、前提は以下の通りである。記述がない限りは、各項目について毎年インフ
レ調整を行うものとする。
1)前提
a)収入
ⅰ)フアヒン上下水案件
A)上水
上水案件の水道料金は、地方水道公社の平均水道料金である 21.32 バーツ/㎡を想定し、毎年インフ
レ調整を行う。売水量はフェーズ 1、フェーズ 2 それぞれで年間 48,000 ㎡を想定する。
B)下水
下水案件について、第 1 章表 1-6 の通り、フアヒン自治体では、下水料金は顧客によって異なる。対
象エリアの顧客は、フアヒン自治体担当者からの情報によると、一般家庭 70%、商業とその他 30%の
比率であるため、これと第 3 章表 3-21 に基づき、加重平均を取り、4.23 バーツ/㎡を下水料金の想定
として置いた。処理量は年間 2,360 ㎡を想定する。
C)無収水削減
無収水削減事業において削減された無収水のうち、物理的損失(漏水)の削減分は、事業を実施しな
119
かった場合に必要であった造水コストの削減に寄与する。また、商業的損失の削減は、給水量に変化を
及ぼさないが、削減事業を実施しなかった場合に徴収出来なかった水道料金が収入になる。
無収水の原因については更なる調査が必要となるが、水需要が依然十分に満たされていない現状を鑑
み、無収水減少は収入増加につながると想定する。対象地域であるフアヒン自治体の上水料金は、0.81
㎡/接続/日(地方水道公社の平均接続当たりの1日当たり水消費量)を前提に4.0バーツ/㎡(表3-20
参照)を本来得られるであろう水道料金として前提を置き、削減された無収水量=有収水量を無収水削
減により発生する収益とする。尚、フアヒン自治体における水道料金は、2005年以降、据え置きとなっ
ている状況を勘案し、事業期間中のインフレ調整を加味しない。
ⅱ)パタヤ再生水・下水案件
下水案件に関しては、
パタヤ特別市における加重平均の下水料金である 6.65 バーツ/㎡を想定する。
顧客は、70%を一般家庭、30%を商業向けと仮定し、下水料金は第 1 章表 1-6 から採用した。再生水案
件に関しては、処理量は 15,000 ㎡/日とし、11 バーツ/㎡を想定価格として設定した。
ⅲ)バンコク首都圏庁小規模下水案件
下水料金は、第 1 章表 1-7 を参照し、2.0 バーツ/㎡を想定した。また、処理量はフェーズ 1 で行う
9,500 ㎡/日のみとした。尚、バンコク都では、現在、下水料金の回収は実施されていない。
以下は、これ以外の前提条件である。
表 5-2 その他条件
単位/年
備考
2年
無収水削減事業は 5 年
25 年
25 年
4%
10 年
据置期間 5 年
3.5%
15 年
据置期間 5 年
30%
BOI は、浄水事業について、5 年間の
法人税免税の投資奨励を付与してい
30%
る。フアヒン上水案件に関して、この
免税を適用する。
7%
項目
建設期間
運営期間
償却期間
金利(商業銀行)
融資期間(商業銀行)
金利(本邦制度金融)
融資期間(本邦制度金融)
資本比率
法人税率
VAT 税率
出典:調査団作成
2) 財務的内部収益率(FIRR)
上述の前提に基づいた FIRR の計算結果を以下表 5-3 に示す。総じて、上水案件は、タイの直近の長
期金利(10 年国債利回り 2.5%)より高いため、財務的に実現可能性は高いと考えられる。一方で、フ
アヒン自治体、バンコク首都圏庁いずれの下水案件においては、タリフ水準の低さを主因に実現可能性
が無いとの結果になった。
表 5-3 FIRR の結果
フアヒン
上水
フェーズ フェーズ
1
2
FIRR
17.5%
26.3%
出典:調査団作成
項目
無収水事
業
下水
N.A.
a) フアヒン上下水案件
120
18.6%
パタヤ
下水
11.2%
再生水
4.1%
バンコ
ク首都
圏庁
N.A.
上水案件については、いずれも 15.0%を超える高い FIRR の結果になっており、経済的に実現可能性
が高いことを示している。上水案件について、FIRR10%、15%をターゲットにした場合に設定可能な水
道料金を計算すると、それぞれ 13.7 バーツ/㎡、18.8 バーツ/㎡(2014 年価格)となった(図 5-1)
。
また、無収水率については、地方水道公社の目標値 25%とし、FIRR の感応度を以下の通り計算した。
図 5-1 水道料金に対する FIRR の感応度(フアヒン自治体、フェーズ 1)
出典:調査団作成
図 5-2 無収水率に対する FIRR の感応度(フアヒン自治体)
出典:調査団作成
b) パタヤ再生水・下水案件
下水案件にについては、経済的に実現性が高い FIRR 試算結果となっている。同様の下水案件である
フアヒン自治体、バンコク首都圏庁の案件との結果の違いとして以下の点が挙げられる。まず、下水料
金に関して、その他と比較して高く設定されており、これが経済性の高さにつながっている点は指摘で
きる。パタヤ特別市では下水料金は 6 バーツ/㎡を超えており、一方でフアヒン自治体、バンコク首都
圏庁で設定されている下水料金はそれぞれ約 4 バーツ/㎡、約 2 バーツ/㎡となっている(バンコク首
都圏では下水料金は設定されているものの、徴収出来ていない)
。次に、下水の処理量については、パ
タヤ特別市では 65,000 ㎡/日であるところ、フアヒン自治体、バンコク首都圏庁では処理量が 10,000
㎡/日を下回る。この結果、処理場単価、及び運営単価において、単位コストの低減が可能となる。再
生水案件については、FIRR は 4%程度であるが、より需要が見込めればより高い FIRR が可能となる。
このため、再生水案件の経済性は、この地域の水資源の需給関係に拠る部分が大きい。
c) バンコク首都圏庁小規模下水案件
121
想定した下水料金が極端に低く、O&M コストすらカバーできず、この結果として FIRR がマイナスとな
った。このため、現状、バンコク首都圏庁のサービスエリアにおいて、下水料金が課金出来ていない状
況を鑑み、事業として成立する下水料金を逆算して計算した。下水料金による感応度は以下の通りであ
る。尚、下水事業に経済性を持たせるためには、処理場の規模を高めることも必須であると考える。
図 5-3 下水料金に対する FIRR の感応度(バンコク首都圏庁)
出典:調査団作成
122
第6章 プロジェクトの実施スケジュール
123
(1)プロジェクトの実施スケジュール
1) プロジェクトの概要
フアヒン上下水案件、パタヤ再生水・下水案件、バンコク首都圏庁小規模下水案件の 3 案件に関する
一般事項を纏めたものは、表 6-1 の通りである。
表 6-1 優先案件の概要
プロジェクト
概要
フアヒン上下水案件
上水
新規上水道事業
 送水管:口径 1,000mm、長さ=1.2km
 浄水場:48,000 m3/日(フェーズ 1)
48,000 m3/日(フェーズ 2)
敷地面積 14.4ha
 送水管:口径 900mm、長さ=29.3km(フェーズ
1)、口径 900mm、長さ=29.3km(フェーズ 2)
無収水率削減
 アスベスト管の交換:長さ=80km
 DMA 構築
下水
Khao Tao 地区の下水道改善
 下水管渠:管径 600mm-800mm、長さ=3.5km
 下水処理場:2,360 m3/日、敷地面積 1.13ha
下水マスタープランの更新
汚水量の予測及び必要となる下水道施設の更
新
既存下水処理場のリハビリ
収集システムと下水処理場の運転状況の調査
O&M 能力向上
 研修制度
 日本からの技術移転
2 パタヤ再生水・下水案件
水供給
再生水事業
 再生水:15,000 m3/日
 送水管:口径 500mm、長さ=20.7km
 中継ポンプ(稼動+予備ポンプ:2 台)
下水
下水処理場の拡張
 下水処理場:65,000 m3/日
3 バンコク首都圏庁小規模下水案件
下水
Rom Klao 下水道システム
 下水処理場:9,500 m3/日(フェーズ 1)、
9,500 m3/日(フェーズ 2)
 既存の下水収集状況の調査
出典:調査団作成
No
1
2) 実施計画
実施計画は、情報収集や関係自治体へのヒアリング等に基づき、図 6-1 の様に想定する。各自治体に
おいて、具体的な実施計画は現時点で存在しておらず、実施計画は以下の点を勘案の上、作成した。
a) フアヒン上下水案件
ⅰ) 新規上水供給
現状の上水供給量は需要量を満たしておらず、早急に新規上水供給システムを構築することが必要で
ある。そのため、新規上水供給システム構築は、2018 年までの喫緊の需要とそれ以降の需要とに分けて
対応するため、フェーズを 2 つに分ける計画である。建設開始に際しては、環境調査を含む事業化調査
と詳細設計が必要となり、土地取得、事業化調査の認可プロセス、詳細調査、入札、入札評価のそれぞ
れにおける時間軸を実施計画に盛り込む必要がある。
無収水削減事業に関しては、5 ヵ年事業として見込んでおり、2018 年に開始、2022 年に 25%の無収
水率の達成を目標とし、詳細設計を含めアスベスト管の交換事業も、期間内に行う。また、フアヒン自
治体において初めて実施することとなる DMA 構築については、既存上水システムの確認、規模、メータ
ー導入計画を含めたマスタープランの策定が必要となり、これも 2018 年に開始する。
ⅱ) 下水案件
下水案件は、優先地域である Khao Tao 地域において実施することを確認している。しかしながら、
1999 年のマスタープランを更新の上、需要及び既存の下水処理能力を確認することを提案する。このた
め、実施計画においては、まずマスタープランのレビューを実施、その後に Khao Tao 地域における優
先事業を計画、実施する形としている。さらに、既存下水処理施設のリハビリもこれに次ぐ事業として
124
記載している。調査に基づくリハビリの設計は、マスタープランのレビューと同時並行で行うことが望
ましい。
ⅲ) O&M 能力向上
前章で記載の通り、既存浄水場、下水処理場の運営は十分とは言えない状況である。このため、タイ
及び日本において、浄水場、下水処理場の適切な維持・管理を理解するための研修の実施を提案する。
浄水場、下水処理場の規模を鑑みて、上水で 2 回、下水で 1 回の研修を提案する。
b) パタヤ再生水・下水案件
調査団の需給予測によると、水不足は 2027 年頃に発生する見込みであるため、再生水プラントは 2027
年前に完成の必要がある。この時間軸にあわせて、事業化調査、詳細設計と 2 年間の建設を含めた実施
計画を作成した。
下水処理場の拡張については、流入量が既存下水処理場の処理能力をすでに超過しており、早急に実
施する必要がある。
c) バンコク首都圏庁小規模下水案件
Rom Klao の下水案件は、水路汚染改善のために、早急に実施する必要がある。現状、下水管網が十分
に機能しておらず、既存下水処理場への下水収集が適切に行われていないことが予想されるため、既存
下水管の敷設状況の詳細調査が必要である。
さらに、国家住宅公社による住宅開発計画の詳細も明らかではなく、今後の下水需要の予測が困難で
あるため、事業化に際しては、下水需要及び必要となる下水施設の把握を行うことを提案する。本調査
においては、、フェーズを 2 つに分け、フェーズ 1 にて喫緊の需要に対応することとし、処理場、遮集
管、ポンプ場などの下水施設の初期投資を抑え、フェーズ 2 では、必要性を確認しつつ事業化へ結びつ
けていくこととした。
図 6-1 実施計画
年
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4
1 フアヒン上下水案件
新規上水供給
上水
FS
フェーズ1 詳細設計 、調達
建設
詳細設計 、調達
フェーズ2
建設
交換
無収水削減事業
DMA設定
詳細設計 、調達
マスタープラン
建設
FS
Khao Tao地域の下水改善
詳細設計 、調達
建設
下水マスタープランの更新
マスタープラン
既存下水処理場のリハビリ
調査+詳細設計
下水
O&M能力向上
研修制度
2 パタヤ再生水案件
水供給
再生水
下水
下水拡張
3 バンコク首都圏庁小規模下水案件
下水
Rom Klao下水システム
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
FS
詳細設計 、調達
建設
詳細設計 、調達
建設
FS
フェーズ1 詳細設計 、調達
建設
詳細設計 、調達
フェーズ2
建設
出典:調査団作成
125
第7章 相手国側実施機関の実施能力
126
(1)相手国実施機関の概要
1) イーストウォーター社
第 1 章に記載の通り、給水事業は、首都圏水道公社、地方水道公社、地方自治体とともに、民間企業
によっても行われている。最大の民間事業者は、タイタップウォーターサプライ社であり、地方水道公
社向けの給水をバンコク都近郊で実施しており、その規模は 2014 年において 11 億 4,850 万㎥に上る。
タイタップウォーターサプライ社に次ぐイーストウォーター社は、1992 年の 10 月に地方水道公社によ
って設立され、1997 年に水会社としてアジアで最初の上場を果たした。現在の主要株主は、地方水道公
社、工業団地公社、タイ及び海外の金融機関、EGCO 社、一般投資家である(表 7-1)
。同社は、東部臨
海地域における独占的な原水供給者として広範なパイプラインを有しており、チョンブリー県、ラヨー
ン県、チャチューンサオ県にある 4 つの主要パイプラインシステムを通じて、工業団地、工場、水事業
者に対して原水供給を行っている。現状主要パイプラインは 394.5 キロに及び、2014 年の原水の売水量
は 2 億 5,709 万㎥に上る。また、2014 年の給水による売水量は 7,561 万㎥に達する。
イーストウォーター社にとって、原水供給は主な収入源となっており、収入全体の 64%に達し、一方
でユニバーサルユーティリティ社(イーストウォーター社の 100%子会社)が行う給水事業は収入全体
の 23%を占め、残り 13%はその他の事業が占める。収入源として原水供給に頼っている部分が大きく、
イーストウォーター社は、給水事業、その他分野への投資拡大も目指している。
表 7-1 イーストウォーター社の主要株主(2015 年 12 月時点)
順位
株主
1
地方水道公社
2
EGCO 社
3
NORBAX INC.,13
4
工業団地公社
5
NORTRUST NOMINEES LTD.
6
BNP PARIBAS SECURITIES SERVICES, LONDON BRANCH
7
Thai NVDR Co., LTD.
8
Aberdeen Long Term Equity Fund
9
Aberdeen Growth Fund
10
Aberdeen Small Cap Fund
-
その他
出典:イーストウォーター社 HP
%
40.02
18.72
6.38
4.57
2.54
1.79
1.70
1.65
1.54
1.51
19.40
表 7-2 は、イーストウォーター社の保有する企業の一覧である。ユニバーサルユーティリティ社は、
給水事業を行うイーストウォーター社の中核子会社である。2015 年 12 月、イーストウォーター社は、
タイ証券取引所への同社の新規上場申請を発表した。同社株式の最大 45.2%まで上場させる計画である。
更に、2015 年 8 月にイーストウォーター社は、ラーチャブリー、サムットソンクラーム(バンコク都か
ら 80 キロメートル西部)で給水事業に従事する EGCOM Tara Company Limited の 74.2%の追加株式の取
得を、ユニバーサルユーティリティ社を通じて行うことを発表した。この追加株式の取得により、イー
ストウォーター社はグループで EGCOM Tara Company Limited の 90.1%の主要株主となった。
表 7-2 イーストウォーター社が株式 10%以上所有する企業(2015 年 12 月時点)
払込資本
(万バーツ)
会社名
業種
ユニバーサルユ
ーティリティ社
(UU)
Nakornsawan
Water Supply
Company Limited
Bangpakong
コンセッション契約・請負契約・
委任契約に基づく給水事業、下水
処理場のオペレーション
51,000
100.0%
給水事業、ナコーンサワム地方水
道公社への水の供給及び販売
4,000
100.0%
(UU 経由)
給水事業、バンコク地方水道公社
4,000
100.0%
127
出資比率
Water Supply
への水の供給及び販売
Company Limited
Chachoengsao
給水事業、チャチューンサオ地方
Water Supply
水道公社への水の供給及び販売
Company Limited
EGCOM Tara
水の供給及び販売
Company Limited
出典:イーストウォーター社 2014 年年次報告書
(UU 経由)
100.0%
(UU 経由)
10,000
90.1%
(UU が 74.2%保有)
34,500
イーストウォーター社の 2014 年の業績について、イーストウォーター社と子会社の売上合計は、43
億 476 万バーツと、前年比で 3 億 4,884 万バーツ、8.82%の増加となった。純利益は 13 億 3,445 万バ
ーツと、前年比で 2,160 万バーツ、1.64%の増加となった。業績の詳細は以下記載の通りである。
表 7-3 2013 年、2014 年のイーストウォーター社の業績
売水量
原水売水量
給水売水量
財務業績
2013
2014
2,5677
6,839
25,709
7,561
2013
2014
売上
395,592
(原水事業からの売上)
269,430
(給水事業からの売上)
87,638
(レンタル及びその他からの売上)
38,524
売上原価
-178,509
売上総利益
217,083
販売管理費
-39,225
金利
-11,521
税前利益
166,337
税金
-35,051
純利益
131.285
EBITDA
219,613
出典:イーストウォーター社 2014 年年次報告書
430,476
276,838
98,874
54,764
-209,765
220,711
-41,223
-12,123
167,365
-33,920
133,445
228,842
増減
万㎥
32
721
増減
万バーツ
34,884
7,408
11,235
16,240
-31,256
3,628
-1,998
-601
1,028
1,131
2,160
9,230
%
0.13
10.55
%
8.82
2.75
12.82
42.16
-17.51
1.67
-5.09
-5.22
0.62
3.23
1.64
4.20
給水事業向けの内部利用を含めた原水供給先は以下の図の通りである。最大の供給先は工業団地公社
であり、これに地方水道公社が続く。原水の平均料金は、10.77 バーツ/㎥であり、タリフ改定メカニ
ズムに伴い、前年比で 0.28 バーツ/㎥、つまり 2.62%上昇した。
図 7-1 イーストウォーター社の原水供給先(2014 年)
128
出典:イーストウォーター社 2014 年年次報告書
表 7-4 は、イーストウォーター社の貸借対照表を記載したものである。資産合計は、1,524,345 万バ
ーツに上る。2014 年の負債は前年の 557,852 万バーツから 672,637 万バーツに増加しているが、これは
主に新規借入れに拠るものである。負債資本比率は 0.79 倍になっている。
表 7-4 2013 年、2014 年のイーストウォーター社の貸借対照表
(万バーツ)
科目
流動資産
現金及び現金同等物
未収金
その他
非流動資産
有形固定資産
その他
資産合計
流動負債
短期借入金
その他
非流動負債
長期借入金
その他
負債合計
資本
負債と資本合計
出典:イーストウォーター社 2014 年年次報告書
2013
2014
80,064
24,331
41,427
14,305
1,267,981
1,028,415
239.566
1,348,045
145,524
72,461
73,063
412,328
384,175
28,153
557,852
790,193
1,348,045
71,649
11,286
42,059
18,304
1,452,695
1,174,778
277,918
1,524,345
174,134
79,628
94,506
498,503
464,872
33,631
672,637
851,707
1,524,345
イーストウォーター社の金融機関からの長期借入金は以下の通りである。借入金は負債資本比率やデ
ット・サービス・カバレッジ・レシオ等の融資条件はあるものの、無担保ローンである。2014 年の平均
金利は 4.53%である。
表 7-5 イーストウォーター社の長期借入金
融資枠
(百万バ
ーツ)
契約日
目的
期間
1,500
2007 年
12 月
つなぎ
融資返済
7年
1,000
2009 年
5月
パイプライン
補修
7年
1,700
2009 年
8月
パイプライン
建設
10 年
1,520
2012 年
5月
Tubma
案件への投資
10 年
975
2012 年
7月
Bangphra
案件への投資
10 年
金利
1-36 ヶ月は、年間固定金利。37 ヶ
月以降、THBFIX(3 ヶ月)+プレミア
ム。
最初 2 年は年間固定金利。3 年目か
ら 7 年目は THBFIX+プレミアム。
最初 4 年は年間固定金利。5 年目か
ら 10 年目は、MLR(優遇貸出金利)-
固定金利。
最初 3 年は年間固定金利。4 年目か
ら 10 年目は、固定預金金利+固定
プレミアム。
最初 3 年は年間固定金利。4 年目以
降は、MLR(優遇貸出金利)-固定金
利。
129
据置期間
契約日から
12 ヶ月
最初の引出
日から 30 ヶ
月
契約日から
42 ヶ月
2015 年
6 月まで
1,215
2012 年
9月
Tubma
案件への投資
10 年
2,900
2014 年
7月
つなぎ
融資返済
10 年
最初 3 年は年間固定金利。4 年目か
ら 10 年目は、6 ヶ月物固定預金金利
+固定プレミアム。
最初 3 年は年間固定金利。4 年目か
ら 10 年目は、6 ヶ月物最低固定預金
金利+固定プレミアム。
契約日から
60 ヶ月
契約日から
36 ヶ月
出典:イーストウォーター社 2014 年年次報告書
イーストウォーター社に加えて、今回カウンターパートになるフアヒン自治体、パタヤ特別市、バン
コク首都圏庁の財政状況は以下の通りである。
2) フアヒン自治体
表 7-6 は、
2014 年のフアヒン自治体の財務状態を記載したものである。
資本に対する負債比率は低く、
資産全体に占める現金の比率も高い。尚、歳入と歳出のデータは入手できていない。
表 7-6 2014 年のフアヒン自治体の財務状態
金額
(バーツ)
科目
資産(自己資金、補助金原資)
資産(借入原資)
現金及び現金同等物
未収金及びその他
資産合計
自己資金、補助金
借入金
未払費用
その他
剰余金等
負債と資本合計
出典:フアヒン自治体
1,217,788,532
115,200,000
902,605,451
944,283
2,236,538,266
1,217,788,532
80,896,140
294,774,460
43,014,675
600,064,459
2,236,538,266
3) パタヤ特別市
表 7-7 は、パタヤ特別市の歳入、歳出を示したものである。2014 年のパタヤ特別市の歳入は、
2,033,161,801 バーツ、歳出は 1,786,730,787 バーツで、収支は黒字となっている。資産合計は
9,229,571,458 バーツである。表 7-8 の貸借対照表は、負債比率は極めて小さいことを示している。
表 7-7 2014 年のパタヤ特別市の歳入、歳出実績
金額
(バーツ)
科目
歳入合計
税収入
科料・許可手数料
資産からの収入
公共サービス・商業収入
雑収入
政府からの交付税・補助金
歳出合計
出典:パタヤ特別市
2,033,161,801
408,259,713
118,734,632
78,138,083
3,880,230
14,833,582
1,409,315,562
-1,786,730,787
130
表 7-8 2014 年のパタヤ特別市の財務状態
金額
(バーツ)
科目
資産(自己資金、補助金原資)
資産(借入原資)
現金及び現金同等物
補助金預け金
その他
資産合計
自己資金、補助金
未払費用
未払補助金
その他
剰余金等
負債と資本合計
出典:パタヤ特別市
4,885,616,109
155,500,000
2,950,709,668
1,190,435,710
47,309,970
9,229,571,458
4,885,616,109
779,817,145
1,272,700,804
459,297,037
1,832,140,362
9,229,571,458
4) バンコク首都圏庁
タイの格付会社であるトリス・トレーディング社 (TRIS)は、2015 年 10 月にバンコク首都圏庁に対し
て、“AA+”格の格付けを与えている。評価レポートによれば、格付けはタイにおける行政と経済セン
ターとしてのバンコク首都圏の重要性を鑑みて与えられており、“AA+”は、バンコク首都圏庁の安定
的な税収、バランスした予算方針、負債の少なさ、手元現金の豊富さを背景とした強固な財政状態を反
映している。一方で、中央政府からバンコク首都圏庁に課せられた公共交通やインフラプロジェクトへ
の巨額な資本支出、運転費用の増加を財政悪化の懸念点として指摘している。
貸借対照表に関する情報は確認できなかったものの、図 7-2 の歳入、歳出の推移はバンコク首都圏庁
の財政状況の健全さを示している。
図 7-2 バンコク首都圏庁の歳入、歳出
出典:バンコク首都圏庁
(2)相手国実施機関の組織体制
1)イーストウォーター社
下の図は、イーストウォーター社の組織図である。事業開発部は新規給水案件の案件開発を担う部署
であり、本調査の対象案件の共同開発を担当する部署でもある。投資案件は、金額規模によって取締役
会、投資委員会、また事業開発部にそれぞれ決裁権限が与えられている。尚、原水関連の開発業務は、
プロジェクトプランニング部で行われている。
131
図 7-3 イーストウォーター社の組織図
出典:イーストウォーター社 HP
2)フアヒン自治体
図 7-4 は、フアヒン自治体の組織図である。地方経営議会は市長と 3 名の副市長から構成される。上
水は水事業局、下水は衛生事業局が管轄する。図 7-5 は、水事業局の組織図である。収益促進業務は、
請求書送付、支払い催促を行う。収益開発業務は、料金徴収の計画立案、料金徴収に係る問題解決、水
道料金のシステム改善の計画等を実施する。
図 7-4 フアヒン自治体の組織図
出典:フアヒン自治体
132
図 7-5 フアヒン自治体水事業局の組織図
出典:フアヒン自治体
3)パタヤ特別市
図 7-6 は、パタヤ特別市の組織図である。衛生事業事務所が下水サービスを管轄する。
図 7-6 パタヤ特別市の組織図
出典:パタヤ特別市
4) バンコク首都圏庁
図 7-7 は、バンコク首都圏庁の組織図を記載したものである。バンコク首都圏は、効率的な行政サー
ビスを提供するために都全体を 50 の区に分けており、各区には区長が存在する。又、バンコク首都圏
庁は 15 局から構成され、排水・下水局がバンコク首都圏庁における下水サービスを管轄している。
133
図 7-7 バンコク首都圏庁の組織図
出典:バンコク首都圏庁
(3)相手国実施機関の能力評価と(不十分な場合は)対応策
イーストウォーター社は、王室灌漑局から契約期間内において一定量の原水利用を許可される取水権
を取得、給水管を敷設し、工場や工業団地向けに原水供給を行うビジネスを主な収入源としている。こ
のため、給水事業については案件開発、運営・管理の面で、必ずしも豊富な経験がある訳ではない。ま
た、下水分野における事業経験は、タイ全体でほぼ民営化が進んでいないこともあり、皆無の状況であ
る。丸紅株式会社は、既に世界7カ国(チリ、ペルー、中国、豪州、フィリピン、ポルトガル、ブラジ
ル)で上水、下水分野を含めて事業を展開しており、豊富な経験を有する。加えて、日本企業であるこ
とから、上下水道施設の維持管理、下水汚泥の管理、資産情報の管理等で豊富な経験を持つ本邦自治体
と容易にアクセスが可能であり、技術的な支援も可能となると考える。
また、フアヒン自治体、バンコク首都圏については、下水料金を現在一部或いは全顧客から徴収が出
来ていないことが問題である。上水料金との組合せ、上水料金回収を管轄している組織との連携、税体
系の検証等下水料金回収に向けた制度設計、マスタープラン策定・見直し等の支援が必要となる。
タイ全体の問題としては、現行PPP法の運用細則が充分にクリアになっておらず、現行法のプロセス
に基づく上下水案件の組成実績が皆無であるため、案件組成は現行法制度に精通した現地法律事務所、
及び世界のPPP案件の組成に詳しい国際的な法律事務所と連携して行う必要がある。PPP形式での案件履
行における官民のリスク分担については、民間側に過度なリスク負担となっているケースが他国で散見
される点に留意する必要がある。
134
第8章 我が国企業の技術面等での優位性
135
(1)想定される我が国企業の参画形態(出資、資機材供給、施設
の運営管理等)
現在想定している本事業の形態の一つは以下の図 8-1 の通りである。本事業は、丸紅株式会社とイー
ストウォーター社が特別目的会社を立ち上げ、資金調達・設計・建設および 25 年間の管理・運営を行
う PPP/BOT 方式で実施することを想定している。特別目的会社は、自己資金と本邦制度金融の活用に
よりそれぞれ浄水場、下水処理場、再生水プラントを建設し、それぞれの顧客から得られる料金収入を
初期投資の回収や維持管理費に充てるものとする。特別目的会社は、EPC コントラクターや O&M 会社を
選定する役割を担う。
図 8-1 想定されるスキーム図
出典:調査団作成
(2)当該プロジェクト実施に際しての我が国企業の優位性(技術
面、経済面)
表 8-1 の通り、上下水プロジェクトにおけるわが国の一般的な優位性について、技術、設計、運営面
から、幾つかの点が挙げられる。これをもとに、それぞれのプロジェクトにおいて、想定される優位性
を 1)以下で纏める。
表 8-1 上下水分野における我が国企業の優位性の例
分野
強み
技術
・膜技術
・無収水削減ノウハウ
・下水処理技術
・汚泥処理技術
設計・運営
・耐震設計
・機器・設備の耐久性
・IT 等による効率的運営体制の構築
出典:調査団作成
136
1)ライフサイクルコスト
本事業は事業期間が長期となる PPP 案件としての位置づけを想定しており、イニシャルコストだけで
はなく、管理・運営を含めたライフサイクルコストの考えが重要となる。このため、省エネ効果の高い
日本製品の導入、日本自治体の支援を含めた長期に亘る管理・運営ノウハウの活用等が不可欠となる。
既述の通り、タイでは特に一部の下水処理場において、予算不足、運営能力不足により、建設後の運営・
稼動が十分に成されていない状態にある。このため、イニシャルコストだけではなく、長期的な観点か
ら効率的な管理・運営を総合的に勘案したプロジェクトの立案、実施はタイの抱える課題の解決策とし
ても合致するとみられる。
図 8-2 初期投資重視(左)とライフサイクルコスト重視(右)の概念図
出典:調査団作成
2)ファイナンス
本事業は現行 PPP 法に準拠するとみられるため、民間企業の選定にあたっては、公開入札が原則とな
る。第 9 章で詳述の通り、地場商業銀行と比較して譲許性の高い本邦制度金融の活用はわが国企業に優
位性をもたらすことになると考える。
3)案件ごとの優位性の確認
a)フアヒン上下水案件
タイにおいては、原水・上水の卸売分野、工場向け工業用水供給分野では積極的な民間参入が見られ
るが、配水分野は、地方自治体、首都圏水道公社、地方水道公社の独壇場であり、民間参入はほぼ見ら
れない分野である。
タイの地方自治体の管網の維持管理能力は未熟な部分が多く、支援の有効性は大きい。そのため、本
邦自治体の管網の維持管理ノウハウ・手法を持ち込むことで、事業参入に向け優位な立場を得ることが
可能と考える。無収水削減事業において、アスベスト管交換後に実施する DMA の提案、漏水検知、配管
診断(維持管理の一部)は、効率的な配管交換を行う上で最もコストパフォーマンスが高く、効果的に
実施することが可能となる。漏水探査の実施体制、実施頻度、使用機材、機材の適正使用方法において、
わが国の経験を生かすことが出来る。
b)パタヤ再生水・下水案件
再生水製造における日本企業の卓越した実績は、技術的に世界に誇るものであり、これまでアフリカ、
137
中東、東南アジア等における豊富な実績を誇る。特に、今回の想定プロセスである UF 膜は、フィリピ
ンをはじめ、東南アジアにおいて日本企業による豊富な納入実績があり、優位性のある技術と考える。
膜技術は、他国の技術進歩も著しいが、それでも日本企業が一定の世界シェアを維持しており、実績、
技術力の面で依然として競争力がある分野である。こうした実績を裏付けるためにも、パイロットプラ
ントを建設して、再生水の安全性とデモンストレーションすることが日本ブランドの売り込みに有効で
あると考える。
c)バンコク首都圏庁小規模下水案件
バンコク首都圏庁小規模下水案件に関しては、バンコク首都圏の都市開発が進み、且つ建設予定地の
周辺は未だバンコク首都圏庁所有のものではないため、土地制約がある中での事業となり、フットプリ
ントを抑えた形での新規処理場開発が求められる。この点で、すでに国内での実績のある我が国企業の
有する技術、或いは運営ノウハウは有益と考えられる。小規模処理場は、汚泥処理コストの増大をもた
らす傾向にあるが、最近の日本技術では、余剰汚泥の発生量を削減し、処理コストの低下をもたらすこ
とが可能である。
(3)我が国企業の受注を促進するために必要な施策
まず、他の ASEAN 諸国と比較したタイ上下水市場の特徴としては、海外企業の進出が活発なインドネ
シア、ベトナム、フィリピン等と異なり、比較的地場企業のプレゼンスが大きい点が挙げられる。そう
した意味において、タイの上下水道市場は、わが国企業及びに海外企業にとって、比較的未開の市場と
なっている。このため、差別化をもたらすという点で日本政府からの支援は非常に有益であると考える。
我が国企業の受注を促進するために必要な施策を以下に提言する。
1)わが国企業を対象とした、本邦制度金融を活用した、低利かつ現地通貨建てのファイナンス。
2)技術協力等の形を通じた本邦、本邦地方自治体の優れた技術、ノウハウの共有に対する資金支援。
138
第9章 プロジェクトの資金調達の見通し
139
(1)資金ソースおよび資金調達計画の検討
1)相手国政府・機関の資金調達の考え方
タイは 1 人当たり GDP が 6,000 ドルを越え、
「中進国」と位置づけられており、
「援助受入国」から「援
助供与国」への転換姿勢が明確になっている。このような状況のもと、タイ政府が円借款を活用して本
プロジェクトの様なインフラ整備を進める可能性は低いと考える。このため、本プロジェクトの資金調
達は民間企業主体のスキームを検討した。
2)資金調達の考え方
本プロジェクトの資金調達の主体としては、プロジェクト単位で特別目的会社を組成した上で、これ
れを通した調達、或いは相手国実施機関であるイーストウォーター社による直接の調達が考えられる。
資金調達のスキームとしては、出資者からの出資、金融機関からの融資の二種類が考えられるが、この
資金ソースの一つとして本邦制度金融である、JBIC の投資金融、JICA の海外投融資等が考えられる。
(2)資金調達の実現可能性
融資の実現可能性を考える上で、まずタイの金融市場を概観すると以下の通りである。
表 9-1 の通り、タイの金融市場は、銀行セクターを資産規模別にみると、地場商業銀行が上位を占め
ており、タイは比較的地場銀行のプレゼンスの大きい国として位置づけられる。2015 年 1 月に三菱東京
UFJ 銀行バンコック支店と統合したアユタヤ銀行は資産規模でみると、タイの中で第 5 位に位置づけら
れる。
現地での金融機関に対するヒアリングによると、現在のタイ金融市場の懸念点の一つとして、家計部
門の不良債権拡大が挙げられる。2012 年のインラック政権下で実施されたタイ政府による景気刺激策
(2012 年の自動車購入支援策や住宅減税)の反動によって、家計部門向けの不良債権残高が拡大してい
ることがその背景である。タイの中央銀行であるタイ銀行の統計によると、銀行の総資産に占める不良
債権比率は 2%台と未だ低いレベルにとどまっているものの、上記政策の反動に加えて、足元のタイ経
済の減速によって家計部門に不良債権が膨らみ、更には企業部門においても健全性が損なわれることに
よって、銀行部門の不良債権が拡大することが、タイ金融市場の抱える目下の懸念材料の一つとなって
いる。
表 9-1 タイにおける銀行の資産別順位(2014 年 12 月時点)
(百万バーツ)
総資産
27,272
26,479
25,228
21,366
11,289
9,672
8,096
3,978
3,059
2,734
順位
銀行名
1
KRUNG THAI BANK PUBLIC COMPANY LTD.
2
BANGKOK BANK PUBLIC COMPANY LTD.
3
SIAM COMMERCIAL BANK PUBLIC COMPANY LTD.
4
KASIKORNBANK PUBLIC COMPANY LTD.
5
BANK OF AYUDHYA PUBLIC COMPANY LTD.
6
THANACHART BANK PUBLIC COMPANY LTD.
7
TMB BANK PUBLIC COMPANY LIMITED
8
UNITED OVERSEAS BANK (THAI) PUBLIC COMPANY LIMITED
9
TISCO BANK PUBLIC COMPANY LIMITED
10
CIMB THAI BANK PUBLIC COMPANY LIMITED
出典:タイ銀行
表 9-2 タイにおける銀行の不良債権の推移
不良債権残高
法人
個人
貸出残高
2012 年
2013 年
2014 年
254
198
57
11,278
266
194
72
12,342
277
194
83
12,873
140
(10 億バーツ)
2015 年 2015 年
6月
9月
312
360
218
259
94
101
13,094
12,960
不良債権比率
出典:タイ銀行
2.3%
2.2%
2.2%
2.4%
2.8%
また、現地金融機関へのヒアリングによると、地場銀行によるコーポレートローンの場合、10 年程度
の融資期間が最大とのことである。更に、電力 IPP プロジェクトにおけるプロジェクトファイナンスで
は豊富な実績がある一方で、上下水プロジェクトでの過去事例はほぼ無いとのことである。
このことから、10 年を超えて融資可能な JICA 海外投融資等の本邦制度金融を活用できれば、プロジ
ェクトの実現可能性を高めることができると考えられる。ただ、上下水事業は、電力 IPP プロジェクト
等の他のインフラ事業と異なり、1)料金回収が基本的に現地通貨建てで行われ、2)地方自治体がオフ
テイカーであるケースが多く、1)については、バーツはスワップ市場が発達しており、本邦金融機関
でのバーツ建て資金調達は問題無いが、2)については、地方自治体が与信先となるため、本邦制度金
融としても融資実例がほぼ無い状況である。2015 年 11 月 21 日、マレーシアのクアラルンプールで開催
された「ASEAN ビジネス投資サミット」において、日本政府より、
「質の高いインフラパートナーシップ
のフォローアップ」が発表され、JBIC 法改正により、期待収益は充分だがリスクを伴う海外インフラ向
けの投融資を行う特別業務の追加を検討することが発表された。2016 年度には、この新勘定が設けられ
る予定であり、日本政府は、新興国における地方自治体が運営するインフラ案件増加に対して、JBIC を
受け皿として投融資を強化する方向にある。
(3)キャッシュ・フロー分析
本プロジェクトでは、資金調達については、自己資本 30%、借入金 70%を想定する。本邦制度金融、
及び地場商業銀行の融資条件の前提は第 5 章表 5-2 の通り。それぞれの案件において本邦制度金融の融
資を受けた場合と地場商業銀行の融資を受けた場合の 2 ケースについてのキャッシュフロー分析を行っ
た。いずれもバーツ建ての融資を想定する。第 5 章では融資による資金調達分も含むプロジェクト内部
収益率として FIRR を算定したが、表 9-3 で、投資家としての収益性判断の指標として特別目的会社の
エクイティ内部収益率(自己資本内部収益率)を算定した。その結果を以下に示す。
表 9-3 エクイティ内部収益率の結果
フアヒン
パタヤ
項目
上水
フェー
フェー
ズ 1
ズ 2
本邦制度
41.0%
金融
地場銀行
38.0%
出典:調査団作成
下水
無収水
事業
下水
再生水
バンコ
ク首都
圏庁
65.7%
N.A.
76.7%
23.1%
5.8%
N.A.
63.5%
N.A.
72.6%
21.0%
5.0%
N.A.
フアヒンの上水案件(フェーズ 1)の収益率でみると、本邦制度金融、及び地場銀行の融資条件で、3%
程度の差異が出る結果となった。これは水道料金でみれば、1.2 バーツ/㎡(2014 年価格)に相当する。
この差は、内部収益率を上げ、低いタリフを実現するという、我が国企業の競争力・優位性につながる
ものである。(第 8 章で記述)
141
第10章 案件実現に向けたアクションプランと課題
142
(1)当該プロジェクトの実施に向けた取り組み状況
当該プロジェクトは、丸紅株式会社とイーストウォーター社との共同開発を前提として進めており、
フアヒン自治体、パタヤ特別市、バンコク首都圏庁のそれぞれについて、共同開発に関する MOU を締結
し、その上で案件形成を進める予定である。2015 年 6 月には、イーストウォーター社子会社であるユニ
バーサルユーティリティ社がパタヤ特別市と下水の再生水利用に関する MOU を締結しており、フアヒン
自治体、バンコク首都圏庁についても MOU を締結予定である。その上で、丸紅株式会社とイーストウォ
ーター社の間で取り組み条件の協議を経て、別途 MOU を締結し、3 案件に関する共同開発を 2 社で進め
る予定である。
第 7 章で記載の通り、相手国実施機関の一つであるイーストウォーター社は、タイ東部臨海地域にお
いて工業団地、工場向けの原水供給を主な事業領域としている。バンコク都に次ぐタイ第 2 の経済圏で
ある同地域では、1970 年代にシャム湾で天然ガスが発見されたこと、また同時期にバンコク首都圏での
工業への過度の集中が問題となっていたことを契機に開発が始まり、マプタプット工業団地、レムチャ
バン工業団地等には多くの日系企業が進出しており、日本の 5 番目の工業地帯と言われるほどの産業集
積が進んでいる。更に、2011 年の洪水以降は、バンコク都近郊の日系企業の生産拠点が大きな被害を受
けたことから、日系企業の中には、バンコク都から高台に位置する東部臨海地域に生産拠点を移す動き
もみられる。
そして、同地域の開発では、日本政府の関与が大きく、これまで港湾、道路、鉄道等のインフラ整備
には日本政府による円借款が活用されてきた。円借款の対象は、16 事業 27 案件、承認総額は 1,788 億
円に上る。更に今後は、域内関税撤廃を掲げる AEC(ASEAN 経済共同体)の発足により、メコン地域開
発を担うハブとして、同地域を据える新たな役割も期待されている。
一方で、2015 年はタイにおいて約 30 年ぶりに大規模な渇水、水不足が発生した。2011 年に大規模な
洪水、そして 2015 年には水不足が発生したことになり、持続的な水利用の確保がタイにとって喫緊の
課題になっている。加えて、3 章で記載の通り、同地域では向こう 10 年程度で水不足が発生する可能性
があり、日本企業にとって重要な意味を持つ東部臨海地域において水源開発、原水供給、そして給水を
も手掛けるイーストウォーター社との案件の共同開発は、日本にとっても大きな意義があると考える。
(2)当該プロジェクトの実現に向けた相手国の関係官庁・実施機
関の取り組み状況
第 10 章(1)当該プロジェクトの実施に向けた取り組み状況にて記載の通り、現在イーストウォータ
ー社とフアヒン自治体、パタヤ特別市、バンコク首都圏庁との間で MOU を締結し、取り組みを進めてい
く予定である。地方自治体にとって、金額規模の大きいインフラ案件の遂行においては、中央政府から
の資金充当に拠る部分が大きく、これを解決する手段として、PPP 事業、そして譲許性の高い本邦制度
金融への期待が大きい。タイ現政権としても、周辺国と比較した経済の競争力強化の手段として、イン
フラ整備は喫緊の課題であり、この手段として PPP を活用した案件形成は政権の方向性とも合致すると
考える。
(3)相手国の法的・財務的制約等の有無
タイでは、上下水道事業に関する外国企業への外資規制は存在せず、また PPP 法においても、外国企
業の参入について制限する条項は存在しない。ただし、土地取引に関しては、タイ投資委員会(BOI)
奨励企業や、工業団地公社認定の工業団地に立地する企業の場合を除いて、外国企業による土地購入は
原則認められておらず、長期貸与、或いはタイ企業の出資比率が過半を占めるストラクチャーとして、
この投資主体経由で土地取得を行う等の対応が必要となる。
財務的制約に関して、一般に、サブソブリン案件の与信評価については、1)地方自治体単体として
財政状態が健全であること、2)中央政府と地方自治体との間での財源移譲の仕組みが存在すること、3)
契約不履行に陥った場合に訴訟プロセスによる契約履行(料金回収等)の蓋然性が確認できること、等
が重要な要件として挙げられる。
1)に関して、第 7 章で記載の通り、与信先となるそれぞれの地方自治体の財務状況に関しては比較的
健全であることが確認された。2)に関しては、パタヤ特別市の例で分かるとおり、タイの地方自治体に
とって、中央政府によって集められた地方歳入と中央政府からの補助金が大きな収入源になっている。
一方で、中央から地方への補助金の配分フォーミュラは存在しておらず、中央政府において政治的に決
着するケースが多い。この点で、補助金収入の予測可能性が乏しい点が、与信評価の課題として挙げら
143
れる。又、地方自治体が財源不足に陥った場合に中央政府から緊急財政支援を得られる仕組みはタイに
おいて存在しておらず、地方自治体との契約において、財政義務を負うのはあくまで地方自治体と理解
される。3)は、一般企業と同様に、地方自治体に対して債務の確認と支払いを命ずる訴訟プロセスが適
用されること、地方自治体への強制執行が法律上禁止されていないことを指すものだが、地方自治体と
民間企業の係争において、民間企業に対する制限、対政府との係争に関して、判決等が民間企業に明ら
かに不利に働いた過去事例は確認されていない。
(4)追加的な詳細分析の要否
事業化判断の確度を高めるためには、更に詳細な調査が必要となり、それに基づき再積算、経済分析
を行う必要があると考える。具体的に更なる調査が必要になると思われる項目は、案件ごとに以下の通
りである。
1)フアヒン上下水道案件

上水道事業




浄水場建設予定地の確定
導水・送水管路の敷設位置の確認
DMA 構築のための既存配水管網の確認
下水道事業


マスタープランの見直しによる優先対象地区の確認、計画汚水量の見直しにより必要となる拡
張施設の確認
Khao Tao 地区の下水管渠敷設位置の確認、処理場予定地・処理水放流先の確認
2)パタヤ再生水・下水案件

再生プラント



再生水を受け入れる顧客の調査
送水管路の敷設位置の確認
下水処理場の拡張

汚水を収集する下水管渠の敷設位置の確認
3)バンコク首都圏庁小規模下水案件



汚水集水流域(NHA の開発計画)の確認
流入計画汚水量の確認、処理場規模の確認
遮集管敷設位置の調査
144
Appendix 4-1: 2015 年 12 月時点で環境影響評価が必要となる事業種およびその規模要件
表 1: EIA 報告書が必要となる事業種およびその規模要件
No
事業種
規模
1
Mining defined by the Mineral Act:
1.1 Mining projects as follow:
1.1.1 Coal Mining
All sizes
1.1.2 Potash Mining
All sizes
1.1.3 Rock Salt
All sizes
Mining
1.1.4 Limestone Mining for cement
industry
1.1.5 All Metal Mining
All sizes
1.2 Underground Mining Projects
All sizes
1.3 All Mining Projects located in
the following areas:
1.3.1 Class 1 Watershed area
according to cabinet resolution
1.3.2 Sea
All sizes
All sizes
All sizes
All sizes
1.3.3 Conservation Forests added by All sizes
cabinet solution
1.3.4 RAMSAR Sites
All sizes
2
1.3.5 Areas located next to Ancient
Remains, Archaeological Resources,
Historical Sources or Parks
regulated by Ancient Monuments,
Antiques and National Museum Act or
World Heritage Sites inscribed in
World Heritage List according to
World Heritage Convention within 2
kilometer distance
1.4 Mining Projects with explosive
materials
1.5 Other Mining Projects defined by
the Mine Act except for item 1.1, item
1.2, item 1.3 and item 1.4 but not
include mining projects as follow:
Glass sand, Cement clay, Ceramic
clay, Marl, Ball clay, Fire clay,
Diatomite
Petroleum Industry
2.1 Petroleum Exploration by means
of geophysical drill
All sizes
All sizes
All sizes
All sizes
145
原則、手法、手続き
Submit during
concession
Submit during
concession
Submit during
concession
Submit during
concession
Submit during
concession
Submit during
concession
Submit during
concession
Submit during
concession
Submit during
concession
Submit during
concession
Submit during
concession
Submit during
concession
apply for mining
apply for mining
apply for mining
apply for mining
apply for mining
apply for mining
apply for mining
apply for mining
apply for mining
apply for mining
apply for mining
apply for mining
Submit during apply for mining
concession
Submit during apply for mining
concession
Submit during apply for project
approval form related government
agencies or permitting agencies
defined by Petroleum Act
No
3
4
5
6
7
8
9
10
11
事業種
2.2 Petroleum Production Industry
規模
All sizes
Petroleum and Fuel Pipeline System All sizes
Project Except:
原則、手法、手続き
Submit during apply for project
approval form related government
agencies or permitting agencies
defined by Petroleum Act
Submit during apply for project
approval from related government
agencies
3.1 the Natural Gas Pipeline System
Project having a Maximum Operating
Pressure of less than or equal to
twenty bars and a pipeline diameter
of less than or equal to sixteen
inches, in any area, except for areas
otherwise provided by a resolution of
Council of Ministers or by law
3.2 The Natural Gas Pipeline System
Project having a Maximum Operating
Pressure of more than twenty bars and
a pipeline diameter of more than
sixteen inches situated in an
industrial estate under the law on
industrial estate
Industrial Estate as defined by the All sizes
Submit during apply for a permit
Industrial Estate Authority of
of project construction or
Thailand Act or Projects with
operation
identical feature or Land Allocation
Project for industrial development
Petrochemical
Industry
using Productivity is Submit during apply for a permit
chemical process in production
100 tons/ day or of project construction or
more
operation
Petroleum Refining Industry
All sizes
Submit during apply for a permit
of project construction or
operation
Natural Gas Separation Industry or All sizes
Submit during apply for a permit
Natural Gas Reforming Industry
of project construction or
operation
Chlor-alkaline Industry that
Productivity
Submit during apply for a permit
required Sodium Chloride as raw
each or total of project construction or
material to produce Sodium
products are 100 operation
Carbonate, Sodium Hydroxide,
tons/day or more
Hydrochloric Acid, Chlorine, Sodium
Hypo-Chloride and Bleaching powder
Cement Industry
All sizes
Submit during apply for a permit
of project construction or
operation
Pulp Industry
Productivity is Submit during apply for a permit
50 tons/ day or of project construction or
more
operation
Pesticide Industry or Industry All sizes
Submit during apply for a permit
producing active ingredient by
of project construction or
chemical process
operation
146
No
12
事業種
Chemical Fertilizer Industry using
chemical process
13
Sugar Industry
13.1 Producing raw sugar, white
sugar and refine sugar
13.2 Producing Glucose, Dextrose,
Fructose or other products alike
14
Iron or Steel Industry
15
Mineral Smelting Industry, Mineral
Dressing Industry or Metal Melting
Industry except Iron or Steel
Liquor and Alcohol Industries
including beer and wine
16.1 Liquor and Alcohol Industries
16
16.2 Wine Industry
16.3 Beer Industry
規模
All sizes
原則、手法、手続き
Submit during apply for a permit
of project construction or
operation
All sizes
Submit during apply for a permit
of project construction or
operation Submit during apply for
a permit of project construction
or operation
Productivity is ditto
20 tons/ day or
more
Productivity is Submit during apply for a permit
100 tons/ day or of project construction or
more
operation
Productivity is Submit during apply for a permit
50 tons/ day or of project construction or
more
operation
Productivity is
40,000
liter/month or
more (calculated
at 28 degrees)
Productivity is
600,000
liter/month or
more
Productivity is
600,000
liter/month or
more
All sizes
17
Central Waste Treatment Plant
defined by the Factory Act
18
Thermal power plant except those that Productivity of
use solid waste as a fuel
electricity is
10 MW or more
Thermal power plant using solid waste
as a fuel, which is exempted in the
first paragraph, does not include
those that situated at a location as
follow:
(1) watershed area class 1 and 2 in
accordance with the cabinet
resolution
(2) the environmentally protected
Areas
(3) forest conservation area in
accordance with the cabinet
147
Submit during apply for a permit
of project construction or
operation
Submit during apply for a permit
of project construction or
operation
Submit during apply for a permit
of project construction or
operation
Submit during apply for a permit
of project construction or
operation
Submit during apply for a permit
of project construction or
operation
No
事業種
規模
原則、手法、手続き
resolution
21
(4) an internationally important
wetland in accordance with the
cabinet resolution
(5) area with air pollution more
than 80% of the general air quality
standard
Expressway as defined by the
Expressway and rapid Transit
Authority of Thailand Act or other
projects alike
Highway or road which defined by the
Highway Act, passing through the
following areas:
20.1 Wildlife sanctuaries and
Wildlife non-hunting area defined
by Wildlife Conservation and
Protection Act
20.2 National Park which defined by
National Park Act
20.3 Watershed area classified as
class 2 by the cabinet resolution
20.4 Mangrove forests designated
as National Forest Reserve
20.5 Coastal area within 50 meters of
the highest sea level by nature
20.6 Areas located next to RAMSAR
sites or World Heritage Sites
inscribed in World Heritage List
according to World Heritage
Convention within 2 kilometer
distance
20.7 Areas located next to Ancient
Remains, Archaeological Resources,
Historical Sources or Parks
regulated by Ancient Monuments,
Antiques and National Museum Act or
World Heritage Sites inscribed in
World Heritage List according to
World Heritage Convention within 2
kilometer distance
Rail-Type Mass Transit System
22
Port
19
20
All sizes
Submit during apply for project
permission or approval
All sizes
Submit during apply for project
permission or approval
All sizes
Submit during
permission or
Submit during
permission or
Submit during
permission or
Submit during
permission or
Submit during
permission or
All sizes
All sizes
All sizes
All sizes
apply for
approval
apply for
approval
apply for
approval
apply for
approval
apply for
approval
project
project
project
project
project
All sizes
Submit during apply for project
permission or approval
All sizes
apply for project
approval
apply for project
approval
Submit during
permission or
With capacity of Submit during
vessels for 500 permission or
gross tons or
more Or with the
total length of
the front port is
100 meters or
148
No
事業種
規模
原則、手法、手続き
more Or with the
total port area
is 1,000 square
meter or more
With capacity of Submit during apply for project
50 vessels or
permission or approval
more
All sizes
Submit during apply for project
permission or approval
23
Recreational Port
24
Land Reclamation
25
Construction or Expansion of
Structures close to or in the sea
25.1 Groin, Training Jetty, Training All sizes
Wall
25.2 Offshore Breakwater
All sizes
26
27
Aviation Transportation System
26.1 Construction or Expansion of
commercial airport or temporary
take-off or landing strips for
commercial purposes
26.2 Water Airport
Submit during
permission or
Submit during
permission or
apply for project
approval
apply for project
approval
The runway
length is 1,100
meters or more
Submit during apply for project
permission or approval
All sizes
Submit during apply for
permission of airport
establishment or of aircraft
take-off-landing
Building which defined by the
Building Control Act that has
location or building utilization as
follow:
27.1 Building that located near
rivers, seacoast, lakes or beaches or
in the vicinity or inside National
Parks or Historical Parks which may
potentially cause unpleasant impact
to environmental quality
With 23 meter
height or more Or
the total floor
area or
individual area
in the same
building is
equal to 10,000
square meters or
more
27.2 Building used for wholesale or With 23 meter
retail business
height or more Or
the total floor
area or
individual area
in the same
building is
equal to 10,000
square meters or
more
27.3 Building used as private office With 23 meter
height or more Or
the total floor
149
Submit during apply for a permit
for construction or at a time of
notification to local officials
in case of no permit required
which defined by the Building
Control Act
Submit during apply for a permit
for construction or at a time of
notification to local officials
in case of no permit required
which defined by the Building
Control Act
Submit during apply for a permit
for construction or at a time of
notification to local officials
No
28
29
事業種
規模
area or
individual area
in the same
building is
equal to 10,000
square meters or
more
Land Allocation for residential or 500 plots of land
commercial purposes which defined by or more Or total
the Land Allocation Act
allocated area
is more than 100
Rai (16
hectares)
Hospitals or Nursing Homes that
defined by the Medical Services Act
located in the following area:
29.1 Areas are near rivers,
Total 30
seacoast, lake or beaches within 50 in-patient’s
meters distance
bed or more
29.2 Other areas from 29.1
Total 60
in-patient’s
bed or more
30
Hotel or Resort which defined by the Total 80 rooms or
Hotel Act
more or total
utilization area
is 4,000 square
meters or more
31
Residential Building which defined
by the Building Control Act
32
Irrigation
33
34
With 80 rooms or
more Or total
utilization area
is 4,000 square
meters or more
Irrigated area
of 80,000 Rai
(12,800
hectares) or
more
All projects located in the areas All sizes
classified as Class 1 watershed area
by the cabinet resolution
Trans watershed diversion
35.1 Trans major watershed diversion All sizes
as temporarily operated except for
150
原則、手法、手続き
in case of no permit required
which defined by the Building
Control Act
Submit during apply for a permit
of land allocation defined by the
Land Allocation Act
Submit during apply for a permit
for construction or at a time of
notification to local officials
in case of no permit required
which defined by the Building
Control Act
Submit during apply for a permit
for construction or at a time of
notification to local officials
in case of no permit required
which defined by the Building
Control Act
Submit during apply for a permit
for construction or at a time of
notification to local officials
in case of no permit required
which defined by the Building
Control Act
Submit during apply for a permit
for construction or at a time of
notification to local officials
in case of no permit required
which defined by the Building
Control Act
Submit during apply for project
permission or approval
Submit during apply for project
permission or approval
Submit during apply for project
permission or approval
No
35
事業種
disaster or impact to public security
35.2 International trans watershed
diversion as tempo rarity operated
except for disaster or impact to
public security
Sluice gate in the major river
規模
All sizes
All sizes
原則、手法、手続き
Submit during apply for project
permission or approval
Submit during apply for project
permission or approval
出典: Environmental Impact Assessment in Thailand (August 2015), MNRE
The amendment No. 7, (9 September 2015: modify condition of project no. 18: Thermal Power
Plant.)
The amendment No. 8, (5 November 2015): nullify Project no. 36: Coke Production.
151
表 2: EHIA 報告書が必要となる事業種およびその規模要件
No
事業種
規模
1
Land reclamation in the sea or lake in More than 300 Rai of
the external existing coastline land
except it is done for seashore
improving purpose.
2
Mining with defined by the Mineral Act
as follow:
2.1 Underground mining which the
All sizes
structure has been specifically
designed for subsidence after
stopping operation without being
suspended or without refilling
substituted material to avoid
subsidence.
2.2 Lead mine, Zinc mine or other metal All sizes
which used Cyanide or Mercury or Lead
Nitrate in production process or other
metal mine which used Arsenopyrite as
associated mineral.
2.3 Coal mining which is specifically More than 200,000 ton
loaded Coal from the area by trucks. per month or
2,400,000 ton per
year
2.4 Marine mining
All sizes
3
4
Industrial Estate in accordance to
Industrial Estate Act or Project with
identical
characteristics
of
Industrial Estate mentioned as
follow:
3.1 Industrial Estate or Project with All sizes
identical characteristics of
Industrial Estate which is
established to support petrochemical
industry described in 4 or ironworks
industry that described in 5.1 or 5.2
more than 1 factory.
3.2 Industrial Estate or Project with All sizes
identical characteristics of
Industrial Estate which is expanding
area to support petrochemical
industry described in 4 or ironworks
industry that described in 5.1 or 5.2
Petrochemical Industry that mentioned
in the following:
4.1 Upstream Petrochemical Industry All sizes or
extensive
productivity more
than 35% of the
existing production
152
原則、手法、手続き
Submitted for project’s
approval or project’s
permission
Submitted for mining
concession
Submitted for mining
concession
Submitted for mining
concession
Submitted for mining
concession
Submitted for project’s
approval or project’s
permission
Submitted for project’s
approval or project’s
permission
Submitted for construction’s
permission, operational
permission or expansion
No
5
事業種
4.2 Intermediate Petrochemical
Industry which is mentioned as follow:
4.2.1 Intermediate Petrochemical
Industry which is manufactured
chemical substance or used chemical
substances which are Cancer stimulant
group 1 as raw material
4.2.2 Intermediate Petrochemical
Industry which is manufactured
chemical substance or used chemical
substances which are Cancer stimulant
group 2A as raw material
Mineral Smelting Industry or Melting
Metal Industry which is mentioned in
the following:
5.1 Ironworks Industry
5.2 Ironworks Industry which is
manufactured Coke Coal or provided
with sintering process
5.3 Mineral Smelting Industry of
Copper, Gold or Zinc
6
規模
原則、手法、手続き
Productivity is more
than 100 ton per day
or total extensive
production is more
than 100 ton per day
Productivity is more
than 700 ton per day
or total extensive
production is more
than 700 ton per day
Submitted for construction’s
permission, operational
permission or expansion
Quantity of Ore input
of production is more
than 5,000 ton per
day or the total
quantity of ore input
in production
process is more than
5,000 ton per Day
All sizes
Submitted for construction’s
permission, operational
permission or expansion
Submitted for construction’s
permission, operational
permission or expansion
Submitted for construction’s
permission, operational
permission
Quantity of Ore input Submitted for construction’s
of production
permission, operational
process is more than permission or expansion
1,000 ton per day or
the total quantity of
ore input in
production process
is more than 1,000
ton per day
5.4 Smelting Lead
All sizes
Submitted for construction’s
permission, operational
permission
5.5 Melting Metal (except Iron and
Quantity of output is Submitted for construction’s
Aluminum) Industry
more than 50 ton per permission, operational
day or the total
permission or expansion
output is more than
50 ton per day
5.6 Melting Lead Industry
Quantity of output is Submitted for construction’s
more than 10 ton per permission, operational
day or the total
permission or expansion
output is more than
10 ton per day
Manufacturing,
disposal
or All sizes
Submitted for operational
modification of radioactive substance
permission
153
No
7
8
9
10
11
事業種
規模
Central Waste Treatment Plant or All sizes
buried garbage or unused material
manufacturer as defined by the Factory
Act which is burning or buried
hazardous waste except burning in
cement oven that used hazardous waste
as substituted raw material or
additional fuel
Project of aviation transportation With the
system
construction or
expansion or
extension of runway
is longer than 3,000
meters
Port
1. With the berth
length is 300 meters
or more Or port area
is 10,000 square
meters or more except
port that local
people use in daily
life and for tourism
purpose
2. With the digging
of water course is
100,000 cubic meters
or more
which used in loading
hazard material or
hazardous waste
which is cancer
stimulant group 1 in
total quantity of
25,000 tons per month
or more or 250,000
tons per year or more
Dam or reservoir
1.With the capacity
of stored water is
100 million cubic
meters or more
2.The area of stored
water is 15 square
kilometers or more
Thermal Power Plant as follow:
11.1 Electric Plant using coal as fuel Total productivity
of electricity is
more than 100
megawatts
11.2 Electric Plant that used biomass Total productivity
fertilization as fuel
of electricity is
more than 150
154
原則、手法、手続き
Submitted for construction’s
permission, operational
permission
Submitted for project’s
approval or project’s
permission
Submitted for project’s
approval or project’s
permission
Submitted for project’s
approval or project’s
permission
Submitted for project’s
approval or project’s
permission
Submitted for project’s
approval or project’s
permission
Submitted for project’s
approval or project’s
permission
Submitted for construction’s
permission, operational
permission
Submitted for construction’s
permission, operational
permission
No
事業種
規模
megawatts
11.3 Electric Plant that used natural Total productivity
gas as fuel which is co-thermal system of electricity is
of combined cycle or co-generation
more than 3,000
megawatts
11.4 Nuclear Power Plant
All sizes
原則、手法、手続き
Submitted for construction’s
permission, operational
permission
Submitted for construction’s
permission, operational
permission
12 Coke production
All sizes
Submit during apply for project
permission or approval
出典: Environmental Impact Assessment in Thailand (August 2015), MNRE
The amendment No. 8, (5 November 2015):
155
表 3: 関連通知により EIA もしくは IEE が必要となる事業が存在している環境保全地域(EPA)
1. Doonlampan forest, Mahasarakham Province
2.
3.
4.
Pattaya, Chonburi province, islands and territorial water
Phuket Province, island and territorial water
Coastal areas of Bang Taboon Subdistrict, Baan Leam District of Phetchaburi Province through Pak
Nam Pran Subdistrict, Pranburi District of Prachuapkirikhan Province
5.
Phi Phi islands and territorial water, parts of Aow Nang Subdistrict, Sai Thai Subdistrict, Nong
Thaley Subdistrict and Pak Nam Subdistrict, MuangKrabi District, Krabi Province
Kuraburi, Takuapa, Tai Muang, Tub Pud, Muang Phang-nga, Ta Kua Tung and Koh Yao Districts, Phang-nga
Province
AowLuk, MuangKrabi, Nuea Klong, Klong Tom and Koh LanTa Districts, Krabi Province
6.
7.
8.
Taling Ngam, Bo Phut , Maret, Mae Nam, Na Muean, Ang Thong, Lipa Noi, Koh Samui Districts, Koh
Pha-nga, Ban Tai, Koh Tao and Amphole, Koh Pha-ngan Districts, Surat Thani Province
出典: Environmental Impact Assessment in Thailand (August 2015), MNRE
156
表 4: 森林保全地域にて EIA、IEE、環境チェックリストのいずれかの報告書が必要となる事業種および
その規模要件
レベル
事業種/規模要件
EIA
1.1 Dam or reservoir project in national forest conservation area over 500 Rai.
1.2 Hydro power plant project dam type and weir type (non-reservoir), over 10
MW.
1.3 Transmission line project (for power plant under section 46 of the National
Environmental Quality Act 1992), in national forest conservation are need
to report together with that power plant.
1.4 Petroleum survey project by seismic wave measure according to petroleum act.
1.5 Project under the third category according to the factories act.
IEE
2.1 Dam or reservoir with in national forest conservation area between 50 to 500
Rai.
2.2 Hydro power plant project dam type and weir type (non-reservoir) between 200
kilowatt to 10 megawatt.
2.3 Transmission line project or the specific case of the radial expansion of
the security of right of way in national forest conservation area.
2.4 Road construction or expansion project and construction in national forest
conservation area over 5 km.
2.5 Pipe construction project or irrigation system project in national forest
conservation area over 5 km.
2.6 Mineral survey project according to the mineral act.
2.7 Mine project according to the mineral act in case of concession extension.
2.8 Project under the second category according to the factories act.
Environmental
All projects excluded EIA and IEE required, projects need to provide
Checklist
with environmental checklist with environmental impact mitigation and preventive
environmental
measures and environmental impact monitoring measures.
impact mitigation
and
preventive
measures
and
environmental
impact monitoring
measures.
出典: Environmental Impact Assessment in Thailand (August 2015), MNRE
157
Appendix 4 -2: タイにおける主要な水質基準
1. 飲料水質基準
表 1-1: 飲料水質基準
基準値
属性
Physical
パラメーター
1. Colour
単位
2. Taste
Platinum-Cobalt
(Pt-Co)
-
3. Odour
-
4. Turbidity
Silica scale unit
(SSU)
mg/dm3
mg/dm3
mg/dm3
mg/dm3
Maximum
Acceptable
Concentration
5
Maximum
Allowable
Concentration
15
Non
Objectionable
Non
Objectionable
5
Non
Objectionable
Non
Objectionable
20
5. pH
6.5-8.5
9.2
6. Total Solids
500
1,500
7. Iron (Fe)
0.5
1
8. Manganese (Mn)
0.3
0.5
9. Iron & Manganese
0.5
1
(Fe&Mn)
10.Copper (cu)
mg/dm3
1
1.5
3
11.Zinc (Zn)
mg/dm
5
15
12.Calcium (Ca)
mg/dm3
75b
200
13.Magnesium (Mg)
mg/dm3
50
150
14.Sulphate (SO4)
mg/dm3
200
250c
15.Chloride (Cl)
mg/dm3
250
600
16.Fluroride (F)
mg/dm3
0.7
1
3
17.Nitrate (NO3)
mg/dm
45
45
18.Alkylbenzyl
mg/dm3
0.5
1
Sulfonates (ABS)
19.Phenolic substance
mg/dm3
0.001
0.002
(as phenol)
Toxic elements 20.Mercury (Hg)
mg/dm3
0.001
3
21.Lead (Pb)
mg/dm
0.05
22.Arsenic (As)
mg/dm3
0.05
3
23.Selenium (Se)
mg/dm
0.01
24.Chromium
mg/dm3
0.05
(Cr hexavalent)
25.Cyanide (CN)
mg/dm3
0.2
3
26.Cadmium (Cd)
mg/dm
0.01
27.Barium (Ba)
mg/dm3
1
3
Bacterial
28.Standard plate
Colonies/cm
500
count
29.Total coliform
MPN/100 cm3
< 2.2
30.E.coli
MPN/100 cm3
None
備考: mg/dm3 : milligram per cubic decimeter, MPN: Most Probable Number
a. These values are allowed for tap water or ground water that is used as temporary
drinking water. Such water with a parameter between the maximum acceptable
concentration and the maximum allowable concentration can not be certified as standard
Chemical
158
drinking water for industrial products and stamped with the standard logo.
b. If the calcium concentration is higher than the standard and magnesium concentration
is lower than the standard, calcium and magnesium will be identified in terms of total
hardness with a standard value of less than 300 mg/dm3 (as CaCO3)
c. If a sulphate concentration of 250 mg/dm3 is reached, magnesium concentration must
not be more than 30 mg/dm3.
出典: Notification of the Ministry of Industry, No. 322, B.E. 2521 (1978), issued under the
Industrial Products Standards Act B.E. 2511 (1968), published in the Royal Gazette,
Vol. 95, Part 68, dated July 4, B.E. 2521 (1978).
159
表 1-2: 飲料用地下水質基準
属性
Physical
パラメーター
単位
Platinum-Cobalt
(Pt-Co)
JTU
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
1. Colour
基準値
Suitable
Maximum
Allowance
Allowable
5
15
2. Turbidity
5
20
3. pH
7.0-8.5
6.5-9.2
Chemical
4. Iron (Fe)
<=0.5
1
5. Manganese (Mn)
<=0.3
0.5
6. Copper (Cu)
<=1.0
1.5
7. Zinc (Zn)
<=5.0
15
8. Sulphate (SO4)
<=200
250
9. Chloride (Cl)
<=250
600
10.Fluoride (F)
<=0.7
1
11.Nitrate (NO3)
<=45
45
12.Total Hardness as CaCO3
<=300
500
13.Non-carbonate hardness as
mg/l
<=200
250
CaCO3
14.Total solids
mg/l
<=600
1,200
Toxic elements 15.Arsenic (As)
mg/l
None
0.05
16.Cyanide (CN)
mg/l
None
0.1
17.Lead (Pb)
mg/l
None
0.05
18.Mercury (Hg)
mg/l
None
0.001
19.Cadmium (Cd)
mg/l
None
0.01
20.Selenium (Se)
mg/l
None
0.01
3
Bacterial
21.Standard plate count
Colonies/cm
<=500
22.Coliform bacteria
MPN/100 cm3
<2.2
23.E.Coli
None
出典: Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment :Technical Criterias
and Measures to Prevent Public Health and Environment Hazard B.E. 2551 (2008), issued
under the Ground Water Act B.E. 2520 (1977), published in the Royal Gazette, Vol. 125,
Special Part 85 D, dated May 21, B.E. 2551 (2008).
160
2. 排水質基準
表 2-1: 工業排水質基準
パラメーター
基準値
1. pH value
5.5-9.0
2. Total
not more than 3,000 mg/l depending on receiving
Dissolved
water or type of industry under consideration
Solids (TDS)
of PCC but not exceed 5,000 mg/l
not more than 5,000 mg/l exceed TDS of receiving
water having salinity of more than 2,000 mg/l
or TDS of sea if discharge to sea
3. Suspended
not more than 50 mg/l depending on receiving
solids (SS)
water or type of industry or wastewater
treatment system under consideration of PCC but
not exceed 150 mg/l
4. Temperature not more than 40°C
5. Color and
Odor
6. Sulphide as
H2S
7. Cyanide as
HCN
8. Fat, Oil &
Grease (FOG)
9.
Formaldehyde
10. Phenols
11.Free
Chlorine
12.Pesticides
13.Biochemical
Oxygen Demand
(BOD)
14.Total
Kjedahl
Nitrogen (TKN)
15.Chemical
Oxygen Demand
(COD)
16.Heavy
metals
1. Zinc (Zn)
2. Chromium
(Hexavalent)
3. Chromium
(Trivalent)
4. Copper
(Cu)
5. Cadmium
(Cd)
検証/測定方法
pH Meter
Dry Evaporation 103-105 °C, 1
hour
Glass Fiber Filter Disc
not objectionable
Thermometer during the
sampling
Not specified
not more than 1.0 mg/l
Titrate
not more than 0.2 mg/l
Distillation and Pyridine
Barbituric Acid Method
not more than 5.0 mg/l depending of receiving Sovent Extraction by Weight
water or type of industry under consideration
of PCC but not exceed 15.0 mg/l
not more than 1.0 mg/l
Spectrophotometry
not more than 1.0 mg/l
Distillation and
4-Aminoantipyrine Method
lodometric Method
not more than 1.0 mg/l
not detectable
not more than 20 mg/l depending on receiving
water or type of industry under consideration
of PCC but not exceed 60 mg/l
not more than 100 mg/l depending on receiving
water or type of industry under consideration
of PCC but not exceed 200 mg/l
not more than 120 mg/l depending on receiving
water of type of industry under consideration
of PCC but not exceed 400 mg/l
Gas-Chromatography
-Azide Modification at 20 °C ,
5 days
not more than 5.0 mg/l
not more than 0.25 mg/l
Atomic Absorption Spectro
Photometry; Direct Aspiration
or Plasma Emission
Spectroscopy ; Inductively
Coupled Plama : ICP
not more than 0.75 mg/l
not more than 2.0 mg/l
not more than 0.03 mg/l
161
Kjeldahl
Potassium Dichromate Digestion
パラメーター
6. Barium
(Ba)
7. Lead (Pb)
8. Nickel
(Ni)
9. Manganese
(Mn)
10. Arsenic
(As)
11. Selenium
(Se)
基準値
not more than 1.0 mg/l
検証/測定方法
not more than 0.2 mg/l
not more than 1.0 mg/l
not more than 5.0 mg/l
not more than 0.25 mg/l
Atomic Absorption
Spectrophotometry; Hydride
Generation, or Plasma Emission
Spectroscopy; Inductively
Coupled Plasma : ICP
Atomic Absorption Cold Vapour
Techique
not more than 0.02 mg/l
12. Mercury
not more than 0.005 mg/l
(Hg)
備考:
1)PCC, Pollution Control Committee
2)The standards were summarized from the Notification of the Ministry of Science, Technology
and Environment, No. 3, B.E. 2539 (1996) and it specifies that pollution sources that the above
standards are to be applied are factories group II and III issues under the Factory Act B.E.2535
(1992) and every kind of industrial estates.
3)Notification of the Pollution Control Committee, No. 3, B.E. 2539 (1996) dated August 20, B.E.
2539 (1996) has issued types of factories (category of factories issued under the Factory Act
B.E.2535 (1992) that are allowed to discharge effluent having different standards from the
Ministerial Notification No. 3 above as follows :
1. BOD up to 60 mg/l
(animal furnishing factories (category 4 (1)), starch factories (category 9 (2)), food from
starch factories (category 10), textile factories (category 15), tanning factories (category
22), pulp and paper factories (category 29), chemical factories (category 42), pharmaceutical
factories(category 46), frozen food factories (category 92))
2. COD up to 400 mg/l
(food furnishing factories (category 13 (2)), animal food factories (category 15 (1)), textile
factories (category 22), pulp and paper factories (category 38)
3. TKN:
100 mg/l: effective after 1 year from the date published in the Royal Government Gazette
(Ministerial Notification No. 4)
200 mg/l: effective after 2 year from the date published in the Royal Government Gazette
(Ministerial Notification No. 4)
for the following factories:
1. food furnishing factories (category 13 (2))
2. animal food factories (category 15 (1))
出典
Notification the Ministry of Science, Technology and Environment, No. 3, B.E.2539 (1996)
issued under the Enhancement and Conservation of the National Environmental Quality Act
B.E.2535 (1992), published in the Royal Government Gazette, Vol. 113 Part 13 D, dated
February 13, B.E.2539 (1996)
162
表 2-2: 深井戸に排水される水質特性
パラメーター
基準値
(maximum allowance)
50
50
5.0-9.2
2,000
40
単位
1. Color
Platinum Cobalt
2. Turbidity
JTU
3. pH
4. Total Solids
mg/l
5. BOD
mg/l
6. Fat , Oil and
mg/l
5
Grease
7. Free Chlorine
mg/l
5
8. Copper (Cu)
mg/l
1.5
9. Zinc (Zn)
mg/l
15
10. Chromium (Cr)
mg/l
2
11. Arsenic (As)
mg/l
0.05
12. Cyanide (CN)
mg/l
0.2
13. Mercury (Hg)
mg/l
0.002
14. Lead (Pb)
mg/l
0.1
15. Cadmium (Cd)
mg/l
0.1
16. Barium (Ba)
mg/l
1
出典: Notification of the Ministry of Industry, No. 5 B.E. 2521 (1978), issued under the Ground
Water Act B.E. 2520 (1977), published in the Royal Gazette, Vol. 95, Part 66, dated June
27, B.E. 2521 (1978).
163
表 2-3: 建物排水質基準
パラメーター
1. pH
2. BOD
単位
mg/l
カテゴリー毎の最大許容値もしくは範
囲値
A
B
C
D
E
5-9
5-9
5-9
5-9
5-9
20
30
40
50
200
検証/測定方法
pH Meter
Azide Modification at
20 °C , 5 days
3. Solids
mg/l
30
40
50
50
60
Glass Fibre Filter
Disc
- Suspended Solids
- Settleable Solids
ml/l
0.5
0.5
0.5
0.5
Imhoff Cone 1,000 cm3
1hour
- Total Dissolved
mg/l
500*
500*
500*
500*
Dry Evaporation
Solid (TDS)*
103-105 °C, 1 hour
4. Sulfide
mg/l
1
1
3.0 4
Titration
5. Nitrogen as TKN
mg/l
35
35
40
40
Kjeldah
6. Fat, oil and
mg/l
20
20
20
20
100
Sovent Extraction by
grease (FOG)
Weight
備考: 1. Base on: Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater recommended by
APHA: American Public Health Association, AWWA: American Water Works Association and WPCF:
Water Pollution Control Federation
*= These values are in addition to the TDS of the water used.
2. Notification of the Ministry of Science, Technology and Environment: Building Effluents
Standards dated January 10, B.E.2537 was revoked by a)
3. Notification of the Ministry of Science, Technology and Environment issued under the
Enhancement and Conservation of the National Environmental Quality Act, B.E.2535 (1992)
and Notification of the Ministry of Science, Technology and Environment issued under the
Enhancement and Conservation of the National Environmental Quality Act, No. 2 B.E.2538
(1995) dated January 10, B.E. 2537 was revoked by b)
出典: a) Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment : Building Effluents
Standards dated November 7, B.E. 2548 (2005) published in the Royal Government Gazette,
Vol. 122 Part 125 D, dated December 29, B.E. 2548 (2005)
b) Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment issued under the
Enhancement and Conservation of the National Environmental Quality Act. Dated November
7, B.E. 2548 (2005) published in the Royal Government Gazette, Vol. 122 Part 125 D, dated
December 29, B.E. 2548 (2005)
164
表 2-4: 排水規制を受ける建物種類と規模
建物種類
1. Condominium
A
500 units
or more
2. Hotels
200 rooms
or more
3. Dormitories
-
4. Massage parlors (or
equivalent)
-
5. Hospitals
30 beds or
more
6. Schools, Colleges,
Universities, or
Institutes
7. Government offices,
State enterprises,
International
agencies, Banks, and
Office Buildings
8. Department stores
25,000 m2
or more
55,000 m2
or more
B
From 100 to
not greater
than 500
units
From 60 to not
greater than
200 rooms
250 rooms or
more
規模
C
Less than 100 units
Less than 60
rooms
From 50 to not
greater than
250 rooms
2
5,000 m or
From 1,000 to
more
not greater
than 5,000 m2
From 10 to not greater than
30 beds
From 5,000 to not greater
than 25,000 m2
From 10,000
From 5,000 to
to not
not greater
greater than than 10,000 m2
55,000 m2
25,000 m2
or more
-
D
E
-
-
From 10 to not greater than
50 rooms
-
-
-
-
-
-
-
From 5,000 to not greater
than 25,000 m2
2
9. Fresh food markets
2,500 m or From 1,500 to From 1,000 to From 500 to
more
not greater
not greater
not greater
than 2,500 m2 than 1,500 m2 than 1,000 m2
10. Restaurants and
2,500 m2 or From 500 to
From 250 to
From 100 to
Less than
food shops or food
more
not greater
not more than not more than 100 m2
centers
than 2,500 m2 500 m2
250 m2
備考: Level of standard refers to the 6 parameters listed in the Building Effluent: Standard
Values table
出典: Notification of the Ministry of Science, Technology and Environment issued under the
Enhancement and Conservation of the National Environmental Quality Act, B.E.2535,
published in the Royal Government Gazette, Vol. 111 special part 9, dated February 4,
B.E.2537 (1994).
165
表 2-5: 住宅地の排水質基準
パラメーター
単位
カテゴリー毎の最大許容値もしくは
範囲値
(A) 100 戸以上、
(B) 500 戸以上
500 戸未満
5.5-9.0
5.5-9.0
30
20
1. pH
2. BOD
mg/l
3. Solids
Suspended Solids
mg/l
40
30
Settleable Solids
mg/l
0.5
0.5
検証/測定方法
- pH Meter
- Azide Modification at
20 oC , 5 days
- Glass Fiber Filter Disc
- Imhoff Cone 1,000 cm3
1hour
Total Dissolved
mg/l
500
500
- Dry Evaporation
Solids*
103-105 °C, 1 hour
4. Sulfide
mg/l
1
1
- Titration
5. TKN
mg/l
35
35
- Kjeldahl
6. Fat , Oil and
mg/l
20
20
- Sovent Extraction by
Grease
Weight
備考: 1. * These values are in addition to the TDS of the water used. Base on: Standard Methods
for the Examination of Water and Wastewater recommended by APHA: American Public Health
Association, AWWA : American Water Works Association and WPCF : Water Pollution Control
Federation
2. Notification of the Ministry of Science, Technology and Environment No. 5 B.E.
2539(1996) issued under the Enhancement and Conservation of National Environmental
Quality Act, B.E.2535 (1992) and Notification of the Ministry of Science, Technology and
Environment No. 6, B.E. 2539(1996) issued under the Enhancement and Conservation of
National Environmental Quality Act, B.E.2535 (1992) was revoked by a)
出典: a) Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment : Housing Estate
Standards dated November 7, B.E. 2548 (2005) published in the Royal Government Gazette,
Vol. 122 Part 125 D, dated December 29, B.E. 2548 (2005)
b) Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment issued under the
Enhancement and Conservation of National Environmental Quality Act. dated November 7,
B.E. 2548 (2005) published in the Royal Government Gazette, Vol. 122 Part 125 D, dated
December 29, B.E. 2548 (2005)
166
表 2-6: 灌漑システムに放流される水の水質特性
パラメーター
単位
1. pH
2. Conductivity
3. Total Dissolved Solids (TDS)
µMole/cm
mg/l
4. Biochemical Oxygen Demand
(BOD5)
5. Suspended solids (SS)
6. Permanganate (PV)
7. Sulphide (as H2S)
8. Cyanide (as HCN)
9. Fat ,Oil and Grease
10.Formaldehyde
11.Phenol & Cresols
12.Free chlorine
13.Pesticides
14.Radioactivity
15.Colour and Odour
16.Tar
17. Heavy metals
- Zinc (Zn)
- Chromium (Hexavalent)
- Arsenic (As)
- Copper (Cu)
- Mercury (Hg)
- Cadmium (Cd)
- Barium (Ba)
- Selenium (Se)
- Lead (Pb)
- Nickel (Ni)
- Manganese (Mn)
出典: Summarized from Royal Irrigation
B. E. 2532 (1989) 2532
mg/l
基準値
(Range or Maximum Permitted Values)
6.5-8.5
2,000
1,300
20
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
mg/l
30
6
1
0.2
5
1
1
1
None
None
Not objectionable
None
5
0.3
0.25
1
0.005
0.03
1
0.02
0.1
0.2
0.5
Department Order No. 883/2532 (1989), dated 19 December
167
表 2-7: 養豚場における水質基準
最大許容値
基準 B
検証/測定方法
1. pH
5.5-9
pH meter
2. Biochemical
mg/l
100
Azide Modification, or
Oxygen Demand (BOD)
Membrane Electrode
3. Chemical Oxygen
mg/l
300
400
Potassium Dichromate
Demand (COD)
Digestion ; Open Reflux
or Closed Reflux
4. Suspended solids
mg/l
150
200
Glass Fiber Filter Disc,
(SS)
Dry Evaporation
103-105 °C
5. Total Kjedahl
mg/l
120
200
Kjeldahl; Colorimetric
Nitrogen (TKN)
or Ammonia Selective
Electrode
備考: 1. For large and medium farm will be effective on February 24, 2002.
2. Large farm is more than 600 Livestock Unit (LU.)
3. Medium farm is 60-600 LU.
4. Small farm is 6 - < 60 LU.
5. 1 LU. = 500 kg.
6. Weight of breeding pig = 170 kg./head
7. Weight of fattened pig = 60 kg./head
8. Weight of nursling pig = 12 kg./head
Notification of the Ministry of Science, Technology and Environment issued under the
Enhancement and Conservation of the National Environmental Quality Act, B.E.2535,
published in the Royal Government Gazette, Vol. 118, Special Part 8, page 11-18, dated
February 23, B.E.2544 (2001) effective since February 24, B.E. 2545 (2002) and
Notification of the Ministry of Science, Technology and Environment issued under the
Enhancement and Conservation of the National Environmental Quality Act, B.E.2535,
published in the Royal Government Gazette, Vol. 118, Special Part 8, page 11-17 dated
February 23, B.E.2544 (2001) effective since February 24, 2545 B.E.(2002) was revoked
by a) and b)
出典: a)Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment ,Effluent Standard
for Pig Farm dated November 7, B.E. 2548 (2005) published in the Royal Government Gazette,
Vol. 122 Part 125 D, dated December 29, B.E. 2548 (2005)
b) Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment issued under the
Enhancement and Conservation of the National Environmental Quality Act dated November
7, B.E. 2548 (2005) published in the Royal Government Gazette, Vol. 122 Part 125 D, dated
December 29, B.E. 2548 (2005)
パラメーター
単位
基準 A
5.5-9
60
168
表 2-8: ガソリンスタンドならびに油備蓄場のおける排水質基準
パラメーター
単位
最大許容値もし
くは範囲値
1. pH
2. Chemical Oxygen Demand (COD)
mg/l
5.5-9.0
200
3. Suspended Solids (SS)
mg/l
60
4. Fat Oil and Grease
mg/l
15
検証/測定方法
pH Meter
Potassium
Dichromate
Digestion
Glass Fiber Filter Disc
Extract with solvent after
solvent evaporation is weighed
to determine the oil and grease
content.
備考: Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater recommended by APHA : American
Public Health Association, AWWA : American Water Works Association and WPCF : Water
Pollution Control Federation
出典: Notification of the Ministry of Science, Technology and Environment : Gas Station Effluent
Standard and Oil Terminal Effluent Standards, and Notification of the Ministry of Science,
Technology and Environment: Designated Gas Stations and Oil Terminals as Pollution Point
Sources published in the Royal Government Gazette, Vol. 119, Part 43 D, dated May 28,
B.E.2545 (2002)
169
表 2-9: 工業汚染対策施設における規定
1. The following industrial plants must have supervisors and machine operators take
responsibility for the system of prevention of pollution. Qualifications for these individuals
are specified in section 2 below.
1. An industrial plant discharging waste water at a rate of more than 60 cubic meters/hour (with
the exception of cooling water) or having a BOD load of influent higher than 100 kilograms/day.
2. An industrial plant using heavy metals in its production process discharging wastewater at
higher than 50 cubic meters/day and having a heavy metal content in the discharged waste water
at the following values:
Zinc higher than 250,000 milligrams/day
Chromium higher than 25,000 milligrams/day
Arsenic higher than 12,500 milligrams/day
Copper higher than 50,000 milligrams/day
Mercury higher than 250 milligrams/day
Cadmium higher than 1,500 milligrams/day
Barium higher than 50,000 milligrams/day
Selenium higher than 1,000 milligrams/day
Lead higher than 10,000 milligrams/day
Manganese higher than 250,000 milligrams/day
3. An industrial plant dealing with iron and steel:
Using dry furnaces or acids or other substances which may be polluting the environment in the
production process with capacity of more than 100 tons/day.
Using steel smelters with the total capacity of 5 tons/batch.
4. An industrial plant producing 100 tons/day petrochemicals from the raw materials obtained
as by-products of the oil refinery in the production process.
5. An industrial plant of any size separating or producing natural gas.
6. An industrial plant producing chloralkali, using sodium chloride (NaCl) as a raw material
in the production of soda ash (Na2CO3), caustic soda (NaOH), hydrochloric acid (HCl), chlorine
(Cl2),and bleach (NaOCl) with separate or combined production more than 100 tons/day.
7. An industrial plant of any size producing cement.
8. An industrial plant engaged in ore smelting or production of metals with production of more
than 50 tons/day.
9. An industrial plant producing paper pulp with production more than 50 tons/day.
10. An industrial plant of any size engaged in crude oil refining.
2. The supervisor and machine operators responsible for pollution control system shall meet the
following qualifications:
1. The supervisors must be holders of a bachelor degree in engineering or chemistry or other
branches of study with experience in the the field of environment, and who has been approved
by the Department of Industrial Works. In the case of an Engineering Consulting Firm, it must
be operated by person(s) having the above qualifications.
2. Machine operators must have a secondary education but can be lower than those in (a) above.
3. The persons stated in (a) & (b) above must register themselves with the Department of
Industrial Works and comply with all regulations and procedures of the Department of
Industrial Works.
3. Factories mentioned in article 1.1 to 1.10 above must arrange to create and submit every three
months Poisonous Matter Analysis Reports to the Department of Industrial Works according to
its standards. Analysis must be carried out by a government laboratory or in a private
laboratory approved by the Department of Industrial Works.
出典: Notification of the Ministry of Industry, No. 13 B.E. 2525 (1982), as amended in No. 22
B.E. 2528 (1985), issued under the Factory Act B.E. 2512 (1969), published in the Royal
Gazette, Vol. 99, Part 89, dated June 29, B.E. 2525 (1982).
170
171
表 2-10: 沿岸部の養殖池における排水質基準
パラメーター
単位
最大許容値もしくは範
囲値
検証/測定方法
1. pH
6.5-9.0
pH Meter by Electrometric
2.BOD (Biochemical
mg./l.
20
Azide Modification by
Oxygen Demand)
Synthetic Seawater
3.SS (Suspended
mg./l.
70
Glass Fiber Filter Disc
Solids)
4.NH3-N (Ammonia
mg-N./l.
1.1
Modified Idophenol Blue
Nitrogen)
5.Total Phosphorus
mg-P./l.
0.4
Ascorbic Acid
6.H2S (Hydrogen
mg./l.
0.01
Methylene Blue
Sulfide)
7.Total Nitrogen
mg-N./l.
4
-Total Dissolved
(1) Persulfate Digestion
Nitrogen and Total
(2) Nitrogen Analyzer
Particulate
Nitrogen
備考: 1. Water sampling method for effluent standard examination control must be Grab Sampling
from discharge point of the coastal aquaculture area.
2. Base on: Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater (APHA, AWwA and
WEF), Practical Handbook of Seawater Analysis (Stickland and Parsons), Methods of Seawater
Analysis (Koroleff), Determination of Ammonia in Estuary (Sasaki and Sawada) Methods of
Seawater Analysis (Grasshoff K.) and /or Manual for Water and Wastewater Examination of
Environmental Engineering Association of Thailand and WEF
出典: Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment, dated March 19, B.E.
2547 (2004) published in the Royal Government Gazette, Vol. 121, Part 49 D, dated May
1, B.E.2547 (2004).
Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment: Designated Coastal
Aquaculture as Pollution Point Sources published in the Royal Government Gazette, Vol.
122, Part 129 D, dated November 14, B.E.2548 (2005)
172
表 2-11: 汽水域の養殖池における排水質基準
パラメーター
1. pH
2.Salinity
> 10
< 10
6.5 - 8.5
> 50%
検証/測定方法
pH Meter by Electrometric
Electrometric Conductivity or
Density
Azide Modification by Synthetic
Seawater
Glass Fiber Filter Disc
Modified Idophenol Blue
Ascorbic Acid
Methylene Blue
(1) Persulfate Digestion
(2) Nitrogen Analyzer
3.BOD (Biochemical Oxygen
20 mg./l.
Demand)
4.SS (Suspended Solids)
70 mg./l.
5.NH3-N (Ammonia Nitrogen)
1.1 mg-N./l.
6.Total Phosphorus
0.4 mg-P./l.
7. H2S (Hydrogen Sulfide)
0.01 mg./l.
8.Total Nitrogen
4.0 mg-N./l.
-Total Dissolved Nitrogen
and Total Particulate
Nitrogen
備考: Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater (APHA, AWwA and WEF),
Practical Handbook of Seawater Analysis (Stickland and Parsons), Methods of Seawater
Analysis (Koroleff), Determination of Ammonia in Estuary (Sasaki and Sawada) Methods of
Seawater Analysis (Grasshoff K.)
出典: Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment ,Effluent Standard for
Brackish Aquaculture published in the Royal Government Gazette, Vol. 124 Part 84 D, dated
July 13, B.E. 2550 (2007)
Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment: Designated Brackish
Aquaculture as Pollution Point Sources published in the Royal Government Gazette, Vol.
124 Part 84 D, dated July 13, B.E. 2550 (2007)
173
表 2-12: 内陸/淡水域の養殖池における排水質基準
パラメーター
単位
1. Biochemical
Oxygen Demand (BOD)
2. Suspended solids
(SS)
3. NH3-N (Ammonia
Nitrogen)
4. Total Nitrogen
-Total Dissolved
Nitrogen and Total
Particlate
Nitrogen
5. Total Phosphorus
6. pH
7. EC at 25 ๐C
最大許容値
基準 C
> 10
< 10
20
基準 A
基準 B
mg/l
20
20
mg/l
80
80
-
20
mg-N./l
-
1.1
-
1.1
mg-N./l
-
4
-
0.5
mg-P./l
dS/m
-
0.5
6.5-8.5
-
-
検証/測定方法
Azide Modification,
or Membrane
Electrode
Glass Fiber Filter
Disc, Dry
Evaporation
103-105 °C
Modified Idophenol
Blue
(1) Persulfate
Digestion
(2) Nitrogen
Analyzer
0.5
Ascorbic Acid
6.5-8.5 pH meter
0.75
Electrical
Conductivity
備考: Electrical Conductivity Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater
American Public Health Association, American Water Works Association Water Environment
Federation
出典: a)Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment ,Effluent Standard
for Inland Aquaculture dated November 23, B.E. 2550 (2007) published in the Royal
Government Gazette, Vol. 125 Part 21 D, dated January 30, B.E. 2551 (2008)
b) Notification of the Ministry of Natural Resources and Environment: Designated Inland
Aquaculture as Pollution Point Sources dated November 23, B.E. 2550 (2007) published in
the Royal Government Gazette, Vol. 125 Part 21 D, dated January 30, B.E. 2551 (2008)
174
3. 表流水質基準
表 3-1: 表流水質基準
パラメーター1/
単位
統計
-
クラス毎の基準値 2/
検証/測定方法
Class5
-
-
Class1
n
Class2
n'
Class3
n'
Class4
n'
C°
-
-
n
n
n'
5-9
n'
5-9
n'
5-9
-
mg/l
P20
n
6
4
2
-
mg/l
P80
n
1.5
2
4
-
6. Total Coliform
Bacteria
MPN/100
ml
P80
n
5,000
20,000
-
-
7. Fecal Coliform
Bateria
MPN/100
ml
P80
n
1,000
4,000
-
-
8. NO3 -N
mg/l
-
n
5
-
9. NH3 -N
mg/l
-
n
0.5
-
10.Phenols
mg/l
-
n
0.005
-
11.Copper (Cu)
mg/l
-
n
0.1
-
12.Nickle (Ni )
mg/l
-
n
0.1
-
13.Manganese (Mn)
mg/l
-
n
1
-
14.Zinc (Zn)
mg/l
-
n
1
-
15.Cadmium (Cd)
mg/l
-
n
0.005*
0.05**
-
16.Chromium
Hexavalent
mg/l
-
n
0.05
-
1. Colour,Odour
and Taste
2. Temperature
3. pH
4. Dissolved
Oxygen (DO)2/
5. BOD (5 days,
20°C)
175
Thermometer
Electrometric
pH Meter
Azide
Modification
Azide
Modification
at 20°C , 5
days
Multiple Tube
Fermentation
Technique
Multiple Tube
Fermentation
Technique
Cadmium
Reduction
Distillation
Nesslerizatio
n
Distillation,
4-Amino
antipyrene
Atomic
Absorption
-Direct
Aspiration
Atomic
Absorption
-Direct
Aspiration
Atomic
Absorption
-Direct
Aspiration
Atomic
Absorption
-Direct
Aspiration
Atomic
Absorption
-Direct
Aspiration
Atomic
Absorption
-Direct
パラメーター1/
単位
統計
クラス毎の基準値 2/
Class1
Class2
Class3
Class4
Class5
検証/測定方法
Aspiration
17.Lead (Pb)
mg/l
-
n
0.05
-
Atomic
Absorption
-Direct
Aspiration
Atomic
Absorption-Co
ld Vapour
Technique
Atomic
Absorption
-Direct
Aspiration
Pyridine-Barb
ituric Acid
Gas-Chromatog
raphy
18.Total Mercury
(Total Hg)
mg/l
-
n
0.002
-
19.Arsenic (As)
mg/l
-
n
0.01
-
20.Cyanide
(Cyanide)
21.Radioactivity
- Alpha
- Beta
22.Total
Organochlorine
Pesticides
23.DDT
mg/l
-
n
0.005
-
Becqure
l/l
-
n
0.1
1
-
mg/l
-
n
0.05
-
Gas-Chromatog
raphy
µg/l
-
n
1
-
24.Alpha-BHC
µg/l
-
n
0.02
-
25.Dieldrin
µg/l
-
n
0.1
-
26.Aldrin
µg/l
-
n
0.1
-
27.Heptachlor &
Heptachlorepoxide
28.Endrin
µg/l
-
n
0.2
-
µg/l
-
n
None
-
Gas-Chromatog
raphy
Gas-Chromatog
raphy
Gas-Chromatog
raphy
Gas-Chromatog
raphy
Gas-Chromatog
raphy
Gas-Chromatog
raphy
Remark:
1. Applied for Classes 2-4, Class 1 depends on natural conditions, not applied for Class 5
2. DO for minimum standards
P: Percentile value, n: naturally, n': naturally but changing not more than 3°C
* when water hardness not more than 100 mg/l as CaCO3
** when water hardness more than 100 mg/l as CaCO3
Based on Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater recommended by APHA :
American Public Health Association, AWWA : American Water Works Association and WPCF : Water
Pollution Control Federation
Source: Notification of the National Environmental Board, No. 8, B.E. 2537 (1994), issued under
the Enhancement and Conservation of National Environmental Quality Act B.E.2535 (1992) ,
published in the Royal Government Gazette, Vol. 111, Part 16, dated February 24, B.E.2537
(1994).
176
表 3-2: 表流水質基準における対象クラスの区分と目的
クラス区分
クラスの目的、条件
Class 1
Extra clean fresh surface water resources used for :
(1) conservation not necessary pass through water treatment process
require only ordinary process for pathogenic destruction
(2) ecosystem conservation where basic organisms can breed naturally
Class 2
Very clean fresh surface water resources used for :
(1) consumption which requires ordinary water treatment process before
use
(2) aquatic organism of conservation
(3) fisheries
(4) recreation
Class 3
Medium clean fresh surface water resources used for :
(1) consumption, but passing through an ordinary treatment process before
using
(2) agriculture
Class 4
Fairly clean fresh surface water resources used for :
(1) consumption, but requires special water treatment process before
using
(2) industry
Class 5
The sources which are not classification in class 1-4 and used for
navigation.
177
4. 地下水質基準
表 4-1: 地下水質基準
パラメーター
1. Volatile Organic Compound
1) Benzene
2) Carbon Tetrachloride
3) 1,2-Dichloroethane
4) 1,1-Dichloroethylene
5)
cis-1,2-Dichloroethylene
6)
trans-1,2-Dichloroethylene
7) Dichloromethane
8) Ethylbenzene
9) Styrene
10) Tetrachoroethylene
11) Toluene
12) Trichloroethylene
13) 1,1,1-Trichloroethane
14) 1,1,2-Trichloroethane
15) Total Xylenes
2. Heavy metals
1) Cadmium
2)
3)
4)
5)
6)
7)
8)
Hexavalent Chromium
Copper
Lead
Manganese
Nickel
Zinc
Arsenic
9) Selenium
10) Mercury
単位
基準値
µg/l
Not exceed 5
"
"
"
"
Not exceed 5
Not exceed 5
Not exceed 7
"
"
"
"
"
"
"
"
"
"
mg/l
Not exceed 70
Not exceed 100
Not
Not
Not
Not
Not
Not
Not
Not
Not
exceed
exceed
exceed
exceed
exceed
exceed
exceed
exceed
exceed
5
700
100
5
1,000
5
200
5
10,000
Not exceed 0.003
"
"
"
"
"
"
"
Not
Not
Not
Not
Not
Not
Not
exceed
exceed
exceed
exceed
exceed
exceed
exceed
"
"
Not exceed 0.01
Not exceed 0.001
3. Pesticides
178
0.05
1.0
0.01
0.5
0.02
5.0
0.01
分析方法
Purge and Trap Gas Chromatography
or Purge and Trap Gas
Chromatography/Mass Spectrometry
or other methods approved by PCD
"
"
"
"
"
"
"
"
"
"
"
"
"
"
Direct Aspiration/Atomic
Absorption Spectrometry or
Inductively Coupled Plasma/Plasma
Emission Spectroscopy or other
methods approved by PCD
"
"
"
"
"
"
Hydride Generation/Atomic
Absorption Spectrometry or
Inductively Coupled Plasma/Plasma
Emission Spectroscopy or other
methods approved by PCD
"
Cold-Vapor Atomic Absorption
Spectrometry/Plasma Emission
Spectroscopy or other methods
approved by PCD
パラメーター
1) Chlordane
2)
3)
4)
5)
6)
Dieldrin
Heptachlor
Heptachlor Epoxide
DDT
2,4-D
単位
µg/l
基準値
Not exceed 0.2
"
"
"
"
"
Not
Not
Not
Not
Not
exceed
exceed
exceed
exceed
exceed
0.03
0.4
0.2
2
30
7) Atrazine
8) Lindane
"
"
Not exceed 3
Not exceed 0.2
9) Pentachlorophenol
"
Not exceed 1
4. Others
1) Benzo (a) pyrene
µg/l
Not exceed 0.2
分析方法
Liquid - Liquid Extraction Gas
Chromatography/Mass Spectrometry
or Liquid - Liquid Extraction Gas
Chromatography (Method I) or other
methods approved by PCD
"
"
"
"
Liquid-Liquid
Extraction
Gas
Chromatography or other methods
approved by PCD
"
Liquid-Liquid
Extraction
Gas
Chromatography (Method I) or other
methods approved by PCD
Liquid
Liquid
Extraction
Chromatography or Liquid - Liquid
Extraction Gas Chromatography/Mass
Spectrometry or other methods
approved by PCD
Liquid
Liquid
Extraction
Chromatography or Liquid-Liquid
Extraction
Gas
Chromatography/Mass Spectrometry
or other methods approved by PCD
2) Cyanide
"
Not exceed 200
Pyridine
Barbituric
Acid
or
Colorimetry or Ion Chromatography
or other methods approved by PCD
3) PCBs
"
Not exceed 0.5
Liquid - Liquid Extraction Gas
Chromatography (Method II) or other
methods approved by PCD
4) Vinyl Chloride
"
Not exceed 2
Purge and Trap Gas Chromatography
or
Purge
and
Trap
Gas
Chromatography Mass Spectrometry
or other methods approved by PCD
Remark 1. Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater which American Public
Health Association, American Water Works Association and the U.S.A. Water Environment
Federation or Manual for Water and Wastewater Analysis of Thailand Environmental
Engineering Association accept.
2. Methods for Sampling and Preservation follow as PCD Announcement in the Royal Government
Gazette
出典: Notification of the National Environmental Board No. 20, B.E. 2543 (2000), issued under
the Enhancement & Conservation of National Environment Quality Act B.E. 2535 (1992),
published in the Royal Government Gazette, Vol. 117 Special part 95 D, dated September
15 , B.E. 2543 (2000)
179
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