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携帯電話による防災情報収集と被災調査法の検討

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携帯電話による防災情報収集と被災調査法の検討
携帯電話による防災情報収集と被災調査法の検討
倉又
章1・森田
義一2
1北陸技術事務所 防災技術課長(〒950−1101 新潟市西区山田2301−5)
2北陸技術事務所 防災技術課 防災技術係長(〒950−1101 新潟市西区山田2310−5)
北陸地方整備局では、被災現場の画像情報の他、災害情報時系列情報、災害対策資機材の検索な
ど、災害時の情報共有を目的とした「防災情報共有化システム」を展開し、災害対策の効率化を行
っているところである。今回は Tec-Force など被災現場で活動する際にも、情報の共有化を図るこ
とを目的として、携帯電話を活用した防災・災害情報の閲覧等を行うためのシステムを追加構築し
た。また、災害初動時に簡易的な方法で被災箇所の概略的な地形を把握するための計測手法につい
ても検討したので、併せて報告する。
キーワード
災害情報,情報共有化,携帯電話,被災状況,簡易測定
1. はじめに
(1)防災情報共有化システムのモバイル化
災害時の情報共有は、災害対策業務を効率的に進
める上で大変重要であり、北陸地方整備局では「防
災情報共有化システム」を運用し、災害画像(静止
画)のほか、災害情報時系列情報、災害対策資機材
検索などの機能を活用して防災・災害対策業務を効
率的に実施しているところである。
防災情報共有化システムの情報入力は、被災地の
画像情報を職員等の携帯電話より電子メールを用い
て入力するほか、北陸地整職員のパソコン端末でも
入力することが最大の特長である。ただし、情報の
閲覧は職員のパソコン端末に限られている。
昨年発生した東日本大震災や新潟福島豪雨などの
災害対策(支援)業務においては、被災現場での災
害情報が希薄であり、十分に情報が共有できたとは
言い難い状況であったため、現地で活動した
Tec-Force 隊員からは、被災現場でも災害情報を取
得できるようにとの要望が多かった。
こうしたことから、通信被害のリスクが高いもの
の、比較的汎用性が高く操作性に優れた携帯電話の
web サイトを用いた災害情報の共有化を実現すべ
く、検討を進め、防災情報共有化システムのモバイ
ル版を新たに構築した。
(2)被災現場の簡易測定手法の検討
Tec-Force による被災地調査のほか、大規模土砂
災害時の被災地調査などでは、容易に立ち入ること
ができない被災現場の地形を迅速に把握するための
簡易計測の手法についても要望が多く、併せて検討
を行った。
検討は非接触型の計測手法について市場調査を行
って、測定精度や経済性について照査し、被災規模
による測定時期や測定精度別に計測手法を分類・整
理した。
2. システム構築の留意点
(1) 利用者ニーズの調査
東日本大震災のほか、新潟福島豪雨災害において
Tec-Force 等で被災現場に派遣された職員をはじめ、
各事務所の防災担当者(係長クラス)を対象に web
アンケートを実施して、防災情報共有化システムに
求められる機能につ
いて、あらためてニ
ーズを調査した。
「防災情報共有化
システムを現場で利
用したいか」という
問いに対し、回答者
の63%が「利用した
い」と考えており、
図-1 現場での必要性
システム構築への要
望が高いと言える。(図-1)
また「現場では災害対応に集中すべきで、システ
ム登録に時間を取られたくない」という考えも示さ
れ、導入時は被災現場での入力や操作の負担を極力
減少させることが求められた。
(2) 情報セキュリティポリシーによる制限
アンケート結果を元に、できる限り現行システム
との操作性を一致させ、かつ簡略化することを検討
した。一方で北陸地方整備局の情報セキュリティポ
リシーの範囲内でのシステム構築が求められた。
モバイルパソコンを用いたシステムについては、
セキュリティ確保の点で困難性が高いことや、スマ
ートフォンも同様に現時点で汎用性に乏しいことか
ら導入を見送り、携帯電話を用いたシステムを基本
として検討した。
携帯電話を用いた場合、外部ネットワークに直接
接続することからサーバ等に対する攻撃が予想され
るため、情報セキュリティポリシーでは必要な監視
体制等の確保が求められている。実質的には外部管
理者によるホスティングサービスを受けたサーバに
展開するシステムとして運用していくことになる。
北陸技術事務所において、あらたにホスティング
サービスを契約することはコスト的に無理があるこ
とから、北陸地整で既契約のホスティングサーバに
システムを配置することとした。(図-2参照)
既契約のホスティングサービスは、ホームページ
を扱う web サーバの機能しか保有しておらず、既
存システムで活用している地点検索機能を初め、地
図表示機能などを利用することが不可能であるた
め、モバイル版システムについては検索・閲覧機能
を大きく低下させざるを得ないこととなった。
インターネット ホスティング先(IIJ)
F/W
ホスティング
サーバ
時系列情報フォルダ
VPN
災害情報(画像)フォルダ
防災情報共有化
システム
DB サーバ
北陸技術事務所
F/W
F/W VPN ルータ
F/W
データ
ベース
保存されたデータを
HTML に動的に変換
本局
中継サーバ
新設
図-2 携帯電話による情報閲覧機能の構成
3. モバイル版システムの概要
(1) モバイル版情報の種類
既存システムで扱う情報のうち、災害画像情報(静
止画)及び災害時系列情報に限定した。
また、災害画像情報は位置情報を含んでおり、地
図上に情報を表示することが可能であったが、地図
画像を同時に送信する場合は情報量が多く、通信速
度が十分でない場面での使用が想定できること、さ
らには携帯電話の地図機能を活用するにはコストが
増大することから、地図情報を付加しないこととし
た。
(2) モバイル版の情報の流れ
あらたに追加した災害時系列情報の入力機能につ
いては、これまでの災害画像情報と同じく、携帯電
話によるEメール機能を用いてサーバに登録する手
法とし、違和感なく使用できる操作性を確保した。
災害画像情報及び災害時系列情報については、イ
ンターネットの携帯サイトを閲覧させる方法とし、
災害モードのみを閲覧させることとした。
(3) モバイル版の情報閲覧方法
① 携帯電話(NTTdocomo で説明)のiモードを起
動させ「サブメニュー」から「URL 入力・情報」
を選択して URL を直接入力する。(ログイン時に
Bokkmark を登録しておくと再入力不要)
【防災情報共有化システムモバイル版サイト】
http://www.hrr.mlit.go.jp/hokugi/i/bousai/index.html
または、操作マニュアルのQR
コードからサイトを表示させる。
① ユーザ名とパスワードを入力し
てサイトにログオンする。(PC版
サイトの「お知らせ」に記載)
② トップ画面が表示され「災害対
応時系列情報サブシステム」と「災
害画像情報サブシステム」のどち
らかを選択する。
③ 災害画像情報サブシステムで
は、当日に登録された画像情報の
リストが表示されるので、閲覧し
たい情報を選択する。
④ 災害画像情報が表示される。
⑤ 画像情報の表示は、事務所別と
日付け別で表示を分けることがで
きる。
⑥ 災害対応時系列情報サブシステ
ムも同様であり、最新の情報から
5件づつ表示され、事務所別に表
示を分けることができる。
災害画像情報、災害時系列情報
ともに、閲覧日から7日前までの
情報しか登録していないため、さらに過去の情報は
閲覧ができない。
(4) 時系列情報の登録(モバイル版)
① 携帯電話のEメール機能を
起動させる
② 宛先に災害時系列情報宛の
アドレスを入力する。(アドレ
ス帳に登録しておく)
または操作マニュアルに示
すQRコードからアドレスを
取得する。
③ 本文を入力して送信する。
情報記入者は、発信者のメールアドレスから自動
的に表示させる。
め、土砂災害発生の発見を最優先に対応することと
している。また、上空からの調査の後、地上調査を
実施するが、この時点でも正確な測量を求めること
ではなく、被災規模(崩壊土砂量や堆積高さなど)
の概略的な状況の把握、二次災害の危険性の判断な
どが調査の中心となる。
土砂法では、直轄が対応すべき天然ダムの規模を
「20m以上」と定めており、できるだけ正確な判
断が必要であることは言うまでもないが、上空・地
上調査ともに迅速な被災状況の把握を優先してい
る。
土砂法による緊急調査に限らず、災害発生初動時
の調査は、迅速な被災状況の把握を最優先に、被災
状況の全体を把握することを急がなければならない
ため、調査方法について検討した。
4. モバイル版の整備効果と課題
6. 災害初動時の被災状況調査
運用を開始した後に大規模な災害対応を行ってい
ないため、整備効果の検証を行っていないものの、
被災現場においても災害画像情報と災害時系列情報
を共有させる環境が整っているため、災害対応の機
会があれば検証を続けていく。
操作性においては、PC版と大きく異なることか
ら今後の改善が求められる。また、地図情報の付加
も重要な課題である。さらに、現場ニーズが高い交
通規制情報や生活情報などの収集・提供機能につい
ても検討を進めていくが、被災現場の職員が負担を
感じるシステム整備ではなく、今後も利便性を重点
としたシステムをめざして整備を進める。
5. 災害現場での被災状況の把握
被災現場における Tec-Force 等の調査活動おいて
は、被災直後の段階から、災害復旧にいたるまで、
時間的な段階を追って必要な情報の種類や精度が変
化していく。被災直後の調査は、若干の正確性を欠
いたとしても被災箇所の現状を把握する必要がある
し、災害復旧にあたっての調査は、正確な地形を把
握し、対策工法の選定や施工数量などの算出を行う
ための情報が必要となる。
改正土砂災害防止法(以降は「土砂法」)による、
大規模土砂災害(天然ダム・火山噴火)の緊急調査
においては、初動調査としてヘリコプター機上から
レーザー測距器によって地形を把握することとなっ
ている。計測精度(標高)に数メートルの誤差を認
(1) 上空からの被災地調査に用いる手法
【リモートセンシング技術による調査】
移動衛星を用いたリモートセンシング技術を用い
た地形測量についても期待ができる。ただし、測定
精度の課題があるほか、衛星軌道の問題から測定可
能なサイクルが1週間程度となる場合もあり、迅速
性に難がある。
【レーザープロファイラー測量】
レーザー光を使って複雑な対象物を高速でスキャ
ンし、高精度で3次元的な計測をする機器で、航空
機による測量の場合、河川・道路など線的な測定で
あれば、1㎞あたり5
∼10万円で三次元に
よる図化が可能であ
る。
事前に測定し蓄積し
たデータと、被災後に
測定したデータを比較
して差分情報を導き出
すことで、被災後の変
形状況を表すことがで
きる。(図-3参照)
また、縦・横断図や
図-3 レーザープロファイラー概 念図
平面図なども図化する
ことが可能であり、管理図など管理データが不足す
る直轄管理区間以外においても、災害調査や災害復
旧時に必要な情報が、比較的容易に得られる。
【レーザー測距器による測量】
レーザープロファイラーと同じくレーザー光が対
象物に反射して戻る時間から対象物の距離を計測す
る機器である。計測可能距離は商品の価格や精度に
よって様々であるが、土砂法の緊急調査に使用する
「ベクター ・重量 1.8㎏
21」の諸 ・動作環境 −35℃∼60℃
元は右に示 ・レンズ倍率 光学7倍
・測定範囲 5m∼10㎞まで
すとおりで
・測定精度 距離計測± 5m
ある。
方位角± 0.6°、傾斜角± 0.2°
GPSレ ・価格 240万円
シーバーと併用して、測定位置の情報と高度情報を
取得した上で対象物までの距離を測定し、2点間距
離などのデータを得ることができる。
ただし、測定誤差が5mと大きいことに加え、価
格が高価で Tec-Force 各班に所持させる機器にはな
り得ない。また、測定の再現性が確保できないこと
も課題である。
【デジタルカメラによる画像解析】
無人飛行体のほか、有人のヘリコプターや航空機
などで、少なくとも2カ所から画像を撮影し、その
画像を解析して、三次元画像に変換する。
2枚以上の写真の対応点を決め、既知の距離(長
さ)情報を与えると、三次元画像処理を行うことで、
パソコンを使用して2点間の距離や指定した部分の
面積などを算出することができる。解析は1時間程
度で終了するため迅速性に優れる。
(2) 地上からの被災地調査に用いる手法
【レーザースキャナによる測定】
上 空 から の 測定
でも紹介したレー
ザー光を用いた測
定技術を活用する。
上空からの測定と
同様に高い精度で
被災地の地形を把
握することが可能 図 -4 レーザースキャナに よ る 測 定
である。
ただし、機動性が良好とは言えないことに加え、
データ解析に時間を要し、価格も高額になる。
【デジタルカメラによる画像解析】
デジタルカメラによる画像解析によって、被災現
場の地形を把握することができる。現地には、軽量
コンパクト、かつ汎用性のある市販のデジタルカメ
ラを持参するだけで機動性に富み、画像解析に必要
な時間も1箇所あたり30分程度と短時間で測定結
果を導き出すことが可能である。
【トータルステーションによる測量】
高度な測量技術が必要で高額であることから、
Tec-Force の活動など初動期の災害現場で活用する
ことはなかったが、比較的安価(150万円程度)な
機器も存在する。また、測量対象物にプリズムなど
を設置しなくとも、目印となる対象物の距離や方位
角・仰角などが測定できる。加えて、現地の測量デ
ータから迅速な地形分析が可能である。
【レーザー測距器による計測】
上空からの測定で使用する
機器ほどの性能は無いもの
の、量販品としてのレーザー
測量器も活用が可能である。
特に平成23年の台風12号の災
写真-1トゥルーパルス 360
害支援活動では Tec-Force の
(TOPCON製)
一部の班が現地調査時に使用
して好評を得た。
森林管理や建築、レジャーの分野でも
使用が促進されており、市販品が豊富に
ある。Tec-Force の現地調査などで使用
することを考慮し、ハンディータイプで
あること、また軽量で操作性に優れてい
ることなどを考慮
写真-2 DISTO D8
して機器を選定す
(LEIKA製)
る。
(写真-1,2参照)
7. 災害現場での被災状況調査のまとめ
被災時の現地調査手法について、上空からの調査、
地上調査それぞれに、測定機器の情報を列記した。
それぞれに特長と課題があり、活用時は特長を最大
限に活かせる場面で使用していく。
特に災害初動期の調査は迅速性が求められること
から、測定精度にこだわらずに調査手法を選定する
必要がある。
また地上調査では機動性や操作性も重要であり、
調査員の負担をできる限り減少させることが求めら
れる。(図-5参照)
トータルステーション
高
レーザープロファイラー
レーザースキャナ
デジタルカメラ
測
定
精
度
リモートセンシング
低
レーザー測距器
低
迅速性・機動性
図-5 被災地調査手法判断の概念
高
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