Comments
Description
Transcript
2007年9月
【 2007 年 の 主 要 3 政 党 党 大 会 で 発 表 さ れ た 地 方 自 治 政 策 】 英国 (イングランドのみ対象) 政党名 政策 労 働 党 ( 9 月 23∼ 27 日 ) ・ 地域の公共サービス提供へのコミ ュニティの関与。 − 党 大 会 で 討 議 さ れ た 政 策 文 書「 持 続 ・ 地方議会議員の支援と指導。 可 能 な コ ミ ュ ニ テ ィ を 築 く( Creating ・ 妥当で公正な地方財政システムを Sustainable Communities)」 よ り 構築。 ・ 地方自治において、高い質と金銭 的効率性を維持。 ・ 新築住宅の提供について自治体に も役割を付与。 保 守 党 ( 9 月 30 日 ∼ 10 月 3 日 ) ・ 「 イ ン グ ラ ン ド 基 準 委 員 会 」 1を 廃 止。 − エ リ ッ ク・ピ ク ル ス 影 の コ ミ ュ ニ テ ・ ィ ・ 地 方 自 治 相 が 9 月 30 日 に 行 っ た 党大会演説より 中央政府が地方自治体に課す達成 目標と使途限定補助金を廃止。 ・ 中央政府と地方自治体間の合意を 全 て 撤 廃 (「 地 域 協 定 」 な ど )。 ・ 地 域 レ ベ ル の 戦 略 を 全 て 撤 廃(「 地 域 経 済 戦 略 」、「 地 域 交 通 戦 略 」、 「 地 域 都 市 計 画 戦 略 」 な ど )。 ・ コミュニティまたは地方議会議員 からの要請に基づき、議会の各委 員会が執行機関となる「委員会シ ステム」の復活を許可。 ・ 地方自治構造改革を中止。 ・ 公営住宅の建設数達成目標を撤 廃。 自由民主党 ・ 中央政府と地方自治体の権限の配 分に関する契約を締結。 − 党 大 会 で 承 認 さ れ た 政 策 文 書「 違 い を 生 み 出 せ る 力 ( The Power to be ・ 中央政府が地方自治体に課す達成 目標を廃止。 1 イングランドの地 方 議 会 議 員 が行 動 規 範 (Code of Conduct)を遵 守 するよう地 方 自 治 体 を支 援 し、地 方 議 会 議 員 による行 動 規 範 違 反 について調 査 を行 う。 1 Different)」 よ り ・ パリッシュを含めた全ての地方自 治体への更なる権限を委譲。 ・ 地域住民の承認に基づき、イング ランド全土で地方自治体をユニタ リ ー 2化 。 ・ 地方議会選挙の投票に比例代表制 を導入。 ・ 地方自治体の財源のうち、地域で 調 達 す る 資 金 の 割 合 を 現 在 の 25% か ら 75% に 引 き 上 げ 。 ・ コミュニティまたは地方議会議員 からの要請に基づき、地方議会議 員を内閣と政策評価委員会のメン バーに分ける現行システムを廃止 す る と と も に 、「 委 員 会 シ ス テ ム 」 を復活。 ・ 地域住民の要望に基づき、直接選 挙で選ばれた地域議会を設立。 【大きく進展した英国主要3政党の環境政策】 英国 背景 環 境 問 題 は 一 般 に 、有 権 者 の 関 心 を 引 き に く い と 言 わ れ る が 、英 国 で は 過 去 2 年 間 、 主要3政党が重要課題として掲げ、キャンペーンを展開してきた分野である。 野 党 第 一 党 の 保 守 党 は 、 2005 年 12 月 に 党 首 に 就 任 し た デ ー ビ ッ ド ・ キ ャ メ ロ ン 氏 が、環境問題を同党の主要政策として位置付けた。同党首はこれまで、生活の質向上 という論点から環境保護を訴えてきたが、更に踏み込み、高次の目的である気候温暖 化への取組みの必要性も主張している。 キ ャ メ ロ ン 党 首 の 狙 い は 、1997 年 か ら 3 回 続 け て 総 選 挙 に 敗 北 し て い る 保 守 党 の 不 振 に 歯 止 め を か け る べ く 、党 の イ メ ー ジ 刷 新 を 図 る こ と で あ っ た( 2002 年 の 保 守 党 大 会 で 、テ レ サ ・ メ イ 党 幹 事 長( 当 時 )は 、「 英 国 民 は 保 守 党 を『 陰 険 な 党 』と 見 な す よ う に な っ て き て い る 」と 発 言 し た が 、こ の 背 景 に は 、当 時 の 保 守 党 政 権 の 要 人 が 、「 失 業 は イ ン フ レ 抑 制 の た め 払 う 価 値 の あ る 代 償 で あ る 」「 政 策 は 、痛 み を 伴 わ な け れ ば 機 能 し な い 」 な ど と 発 言 し 、 国 民 の 反 感 を 買 っ た こ と が あ っ た )。 2 一 層 制 の自 治 体 。 2 同 党 首 は 環 境 問 題 を 、 自 ら が 標 榜 す る 「 思 い や り の あ る 保 守 主 義 ( compassionate conservatism)」の 中 核 に 据 え 、ま た 国 民 に 不 人 気 だ っ た 前 任 者 と の 差 別 化 を 図 る 手 段 と し て 位 置 付 け た 。 2006 年 5 月 の イ ン グ ラ ン ド 地 方 選 挙 で は 、「 保 守 党 に 投 票 し て 、 環 境 を 保 護 し よ う( Vote Blue, Go Green)3 」と の ス ロ ー ガ ン を 掲 げ 、環 境 重 視 政 策 へ たいまつ の 転 換 を 有 権 者 に 印 象 付 け よ う と し た ほ か 、同 年 9 月 に は 、長 年 使 用 し て い た 青 い 松 明 を描いた党のロゴマークを、緑と茶、そして青も少し使ってオークの木をデザインし た も の に 変 更 し 、「 環 境 に 優 し い 」 イ メ ー ジ を 打 ち 出 そ う と 務 め た 。 キ ャ メ ロ ン 党 首 と そ の 支 持 者 は 、「 自 然 に 敬 意 を 払 い 、保 護 す る こ と は 、保 守 主 義 の 重要な理念の一つであり、保守党は環境問題に真摯な態度で取り組んでいる」と主張 し て い る 。キ ャ メ ロ ン 党 首 は 、「 環 境 政 策 に お い て 産 業 界 寄 り の 傾 向 が 強 過 ぎ る 」と し て労働党を批判したことさえあるが、伝統的に産業界寄りの政策を採ってきたのは当 の保守党であり、歴史的な方針転換とも言えるこの発言に対しては、党の一部からは 驚きと怒りの声が上がった。 保 守 党 内 の 対 抗 勢 力 は 、2005 年 総 選 挙 の 同 党 の マ ニ フ ェ ス ト( 選 挙 公 約 )が 、当 時 同党の政策顧問首席長を務めていたキャメロン氏が監修したものであるにもかかわら ず 、環 境 に は 全 く 触 れ て い な か っ た こ と を 指 摘 し て い る 。ま た 、「 環 境 に 優 し い 」党 へ のイメージチェンジは、必ずしも党全体の支持を受けているわけではなく、減税や治 安強化、移民対策、国防などに重きを置く従来からの路線に回帰することを望む声も 大きい。 お は こ 従 来 、環 境 政 策 は「 緑 の 党( Green Party)」 4 の 十 八 番 と も 言 え る 分 野 だ っ た 。し か し 、「 地 球 の 友 ( Friends of the Earth)」 や 「 グ リ ー ン ピ ー ス ( Greenpeace)」 の よ う な環境保護団体が常に一定の支持を受け、世間の関心も集めている一方で、緑の党は 振 る わ ず 、 イ ン グ ラ ン ド 地 方 議 会 議 員 に 110 人 、 ロ ン ド ン 議 会 議 員 に 2 人 、 欧 州 議 会 議員に2人のみを代表として出すに留まっている(ほかに、貴族院議員も1名のみ首 相 か ら 指 名 さ れ て い る )。特 に 、他 の 欧 州 諸 国 の 緑 の 党 と 比 較 す る と 、不 振 ぶ り は 顕 著 であると言える。保守党と、更に後述するように自由民主党も環境保護を優先課題と して位置付け、自らの領域に踏み込んできたという事実は、緑の党にとっては皮肉で あると同時に苛立たしいものであったことは想像に難くない。 労 働 党 と 自 由 民 主 党 と い う 二 つ の 中 道 左 派 政 党 は そ れ ぞ れ 、「 社 会 主 義 環 境 資 源 連 盟( Socialist Environmental Resources Association)」と「 緑 の 自 由 民 主 主 義 者( Green Liberal Democrats)」 と い う 環 境 問 題 の キ ャ ン ペ ー ン グ ル ー プ を 党 内 部 に 有 す る 。 野 3 青 は保 守 党 のシンボルカラーである。 4 1985 年 、「環 境 党 (Ecology Party)」として創 設 。 3 党 第 二 党 で あ る 自 由 民 主 党 は 、今 年 9 月 、環 境 団 体 に よ る 報 告 書 で 、「 主 要 3 政 党 の う ち最も環境政策に優れた政党」と評価されたことからも分かるように、環境問題に熱 心 な こ と で 知 ら れ て い る 。し か し 、保 守 党 の 例 に 倣 い 、2006 年 3 月 に ミ ン ギ ー ス・ キ ャンベル氏を新党首に迎えたのを契機に、更に環境政策重視の姿勢を強く打ち出すよ うになった。同年秋の年次党大会では、環境に負荷を与える行為に課税し、代わりに 所 得 税 を 削 減 す る と い う 方 針 に つ い て 党 は 承 認 し た( 同 党 は 、「 環 境 税 へ の 移 行( Green Tax Switch)」 と の 標 語 で こ の 方 針 を ア ピ ー ル し て い る )。 労働党は、政権党であり、政策の達成具合が注視にさらされているだけに、思うよ うに環境政策を掲げることができないでいる。京都議定書など大きな枠組みの中では 高い目標を設定しているものの、まだ達成には至っていない。保守党と自由民主党の 環境重視路線に対し、当時のトニー・ブレア首相が講じた策は、コミュニティ・地方 自治相を務めていた党の若手ホープ、デービッド・ミリバンド氏を環境・食糧・農村 問題相に起用し、キャメロン保守党党首に対抗させたことのみであった。伝統的に、 環境問題は労働党の重要な政策課題ではなく、党支持者の間での関心も薄い。雇用創 出など経済的な問題に比べ、重要性が低いと考えられているのが事実なのである。 政策の影響 キャメロン保守党党首は、環境政策について自身の主張の信憑性を強調するだけに 止 ま ら な か っ た 。「 環 境 問 題 へ の 取 り 組 み に は 代 償 が 必 要 と さ れ る 」と 述 べ る と 同 時 に 、 「 環 境 問 題 に 対 処 す る こ と は 、次 世 代 に 対 す る 社 会 的 責 任 の 遂 行 で あ る 」と も 指 摘 し 、 議会場への移動に車ではなく自転車を利用してみせたり、ロンドン市内の自宅に風力 発電機を取り付けるなどして、自ら環境保護を実践していることを見せつけようとし た(しかし、自転車通勤については、スーツや書類などを車で運ばせていることがマ ス コ ミ に 暴 露 さ れ た 。風 力 発 電 機 に つ い て は 、設 置 ま で 長 い 期 間 が か か っ た ば か り か 、 いざ設置されると間違った場所に取り付けられ、更には近隣の住民から「景観を損な う」との苦情の声も上がり、環境保護に熱心な政治家とのイメージを打ち出そうとす る キ ャ メ ロ ン 党 首 の 目 論 見 は 必 ず し も 成 功 し て い な い )。 1997 年 5 月 の 総 選 挙 で 18 年 ぶ り の 政 権 交 代 が 行 わ れ た た め 、同 年 12 月 に 京 都 議 定 書に署名したのは保守党ではなく労働党政権であった。また、それ以前の保守党政権 は、緑地破壊を促進する都市計画政策を実施したことで良く知られていた。しかし、 キャメロン党首はこうした党の歴史を書き換えようとするかのごとく、環境政策の優 先度を高めていった。 同 党 首 は 2006 年 8 月 、党 の 目 標 と 原 則 を 示 す 政 策 綱 領 文 書「 永 続 す る 保 守 党( Built to Last)」を 党 に 提 出 し た 。同 文 書 は 、8 つ の 政 策 分 野 の う ち 3 つ 目 に 環 境 を 挙 げ 、ま ず 前 書 き で 、「 我 々 は 、 人 生 に は 富 よ り 大 事 な も の が あ る と 信 じ て い る 。 美 し い 環 境 、 良い人間関係、そして環境の持続可能性は、力強く公正な社会を築く上での中核的な 4 要 素 と な る 」 と 記 し た 。 同 文 書 は 、 党 員 に よ る 投 票 で 92.7% が 賛 成 票 を 投 じ 、 採 択 さ れた。 同文書に盛り込まれた提言は下記の通りである。 ・環 境 保 護 と 経 済 成 長 の 両 立 を 奨 励 す る こ と に よ り 、環 境 保 護 へ の 取 り 組 み の 一 端 を 担 う 。 こ れ は 、 法 的 拘 束 力 の あ る 二 酸 化 炭 素 ( CO2) 排 出 量 削 減 の 年 間目標設定、二酸化炭素を排出する活動に対するペナルティー適用、新たな 環境保護技術の開発において英国が世界をリードするのを妨げている障壁を 取り除くことによって達成する。 ・エ ネ ル ギ ー と 水 資 源 の 保 全 、ご み の リ サ イ ク ル な ど 、よ り 環 境 に 配 慮 し た 資 源の利用を奨励する。 ・魅力があり、価格が適正で、環境に優しい住宅の建設を促進する。これは、 都市計画と建築許可規制について新たなアプローチを採用し、地域でのエネ ルギー供給率を引き上げることによって達成する。 ・公 共 交 通 シ ス テ ム の 改 善 。こ れ は 、鉄 道 シ ス テ ム の 統 合 強 化 、ス ク ー ル バ ス の運行数拡大、都市での新たなライトレールシステム建設、そして新規車両 の二酸化炭素排出量について厳格の基準を適用することによって達成する。 保 守 党 近 代 化 計 画 の 一 環 と し て 、 キ ャ メ ロ ン 党 首 は 、「 社 会 正 義 」「 外 交 政 策 」「 公 共 サ ー ビ ス 」「 経 済 競 争 力 と 規 制 」「 世 界 の 貧 困 」「 生 活 の 質 」 と い う 6 つ の 政 策 分 野 に つ い て 、党 政 策 の 見 直 し 作 業 を 行 っ た 。見 直 し 作 業 の 責 任 者 に は 、原 則 と し て 、元 閣 僚 と 保守党に属さない専門家 1 人ずつが任命された。 「 生 活 の 質 」 に 関 す る 政 策 見 直 し 作 業 の 検 討 事 項 は 、「 人 工 環 境 ( built environment)」 5 、地 方 で の 生 活 環 境 や 人 々 の 活 動( 食 糧 、農 業 、漁 業 、海 洋 環 境 を 含 む )、交 通 、エ ネ ル ギ ー 、廃 棄 物 、水 資 源 な ど に つ い て 、包 括 的 に 調 査 ・ 分 析 す る こ と であった。責任者はジョン・ガマー元環境相が、責任者代理は「エコロジスト」誌の 副 編 集 長 で あ る ザ ッ ク ・ ゴ ー ル ド ス ミ ス 氏 6が 務 め た 。 見 直 し 作 業 の 結 果 報 告 書 「 環 境 に 優 し い 経 済 の 青 写 真 ( Blueprint for a green economy)」は 9 月 に 発 表 さ れ 、そ こ で 提 案 さ れ た 環 境 保 護 政 策 は 大 き な 注 目 を 集 め た が、保守党内部では、産業界寄りの右派陣営から反発の声も上がった。 報 告 書 に は 、環 境 破 壊 防 止 策 に 加 え 、地 方 の 住 民 の 生 活 を 守 る こ と を 目 的 と し た 提 案 も 含 ま れ て い る 。一 つ に は 、主 に 都 市 の 住 民 が セ カ ン ド・ホ ー ム と し て 地 方 の 住 宅 を 買 い 占 め て し ま う 近 年 の 傾 向 に 対 処 す る べ く 、地 域 住 民 の み が 購 入 で き る 住 宅 建 設 の た め 5 自 然 のまま存 在 する環 境 に対 し、住 宅 、インフラ設 備 など人 間 の手 によって造 られた環 境 全 てを指 す。 6 ゴールドスミス氏 は、次 期 総 選 挙 でロンドンの選 挙 区 リッチモンド・パークから保 守 党 公 認 候 補 として出 馬 すること が決 まっている。 5 土地を温存することが提案された。 報告書の主な提案は下記の通りである。 ・費 用 効 果 の あ る 省 エ ネ 対 策 を 取 り 入 れ た 、環 境 負 荷 の 少 な い 住 宅 に 対 す る 印 紙税の引き下げ。 ・ 家 屋 の 補 修 、 改 築 に 対 す る 付 加 価 値 税 ( VAT) の 引 き 下 げ 。 ・家 屋 の 増 築 は 、既 設 部 分 に 対 し て 省 エ ネ 対 策 を 適 用 す る こ と を 承 認 の 要 件 と する。 ・環境保護に配慮したオフィス、事業所に対するビジネス・レイトを割引。 ・ス イ ッ チ を 消 し て も 待 機 状 態 と な る 電 化 製 品 、ま た は そ の 他 の 環 境 基 準 を 満 たさない電化製品の販売を禁止。 ・環境負荷の少ない住宅に対するカウンシル・タックスの割引。 ・廃熱の量に応じて発電所に課税する。 ・航空旅客税は、旅客1人当たりではなく、航空機1機当たりの課税に変更。 ・国内行きの航空機に付加価値税を課税。 ・空港の拡張を一時停止。 ・燃 費 の 悪 い 大 型 車 の 車 両 登 録 税 を 引 き 上 げ 、燃 料 効 率 の 良 い 小 型 車 の 付 加 価 値税を免除する。 ・鉄道システム拡大に対する投資。 ・ごみのリサイクルをする世帯のカウンシル・タックスを割引。 ・埋 め 立 て 税 を 2015 年 ま で に ご み 1 ト ン あ た り 80 ポ ン ド( 約 18,400 円 )に 引 き 上 げ ( 現 労 働 党 政 権 の 方 針 で は 、 2010 年 度 ま で に ご み 1 ト ン あ た り 48 ポ ン ド ( 約 11,040 円 ) に 引 き 上 げ ) ・国 民 の 生 活 の 質 を 評 価 す る 尺 度 と し て 、国 内 総 生 産( GDP)だ け で は な く 、 環境及び社会的要素を考慮に入れた新たな指標を用いる。 保 守 党 は 後 に 、同 報 告 書 に つ い て 、「 単 な る 提 案 で あ り 、党 の 政 策 を 拘 束 す る も の で はない」として、その内容から距離を置く姿勢を示した。 他方、自由民主党は、キャンベル党首が党首就任と同時に、将来の党幹部として今 後を期待されているクリス・ヒューン下院議員を環境問題のスポークスマンに起用し て お り 、環 境 重 視 の 方 針 の 現 れ と し て 受 け 止 め ら れ た 。先 に 述 べ た よ う に 、2006 年 の 党 大 会 で は 、「 環 境 税 へ の 移 行 」と の 標 語 の も と 、環 境 保 護 を 狙 い と し た 税 政 策 を 明 ら か に し た 。 2007 年 9 月 の 党 大 会 で は 、「 環 境 : 今 こ そ 行 動 を ( The Environment: Action Now)」と の テ ー マ の も と 、新 た な 環 境 政 策 パ ッ ケ ー ジ「 二 酸 化 炭 素 排 出 量 ゼ ロ の 英 国 を 目 指 し て( Zero Carbon Britain)」を 発 表 、党 の 承 認 を 得 た 。内 容 は 下 記 の 通 りである。 6 1. 二酸化炭素の排出量と吸収量が同じである「カーボン・ニュートラル ( carbon neutral)」 な 社 会 を 実 現 す る 。 2. 高速鉄道を整備し、鉄道システム改善を支援する。 3. 開発途上国におけるクリーンエネルギー利用支援を目的とした基金を設 置する。 4. 気候変動に備え、洪水対策とその他の施策を強化する。 5. 2050 年 ま で に 、二 酸 化 炭 素 を 全 く 排 出 せ ず 、原 子 力 に も 頼 ら な い 発 電 方 法を開発するよう努力する。 6. 新たな形式の「グリーン住宅ローン」を導入し、市場に供給されている 住 宅 を 環 境 負 荷 の 少 な い 住 宅 に 改 築 す る 資 金 を 調 達 す る 7。 7. 人間から環境破壊を招く行動へと課税対象をシフトする。 8. 欧 州 連 合( EU)の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 取 引 制 度 を 、排 出 権 の オ ー ク シ ョ ン を可能にすることにより強化する。 9. 全ての人に対して公平に同量の二酸化炭素排出量を割り当てることを目 指す世界規模の条約を支持する。 10. 政 府 機 構 を 改 革 し 、全 て の 省 に よ る 気 候 変 動 の 問 題 に 対 す る 真 剣 な 取 り 組みを実現する。 自 由 民 主 党 の 2007 年 の 党 大 会 は ま た 、「 ガ ソ リ ン 車 の 利 用 禁 止 措 置 を 2040 年 ま で に 段 階 的 に 導 入 す る 」、「 ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト の レ ジ 袋 を 有 料 化 し 、1 枚 に つ き 15 ペ ン ス ( 約 34 円 ) 課 金 す る 」 な ど の 具 体 的 な 環 境 対 策 を 承 認 し た 。 ところで、労働党は、環境問題への取り組みに関する各党間での合意書に署名して い る ほ か 、 1997 年 以 降 の 環 境 分 野 に お け る 実 績 を 下 記 の よ う に 掲 げ て い る 。 ・ 京 都 議 定 書 の 目 標 を 達 成 す る た め 、「 2000 年 気 候 変 動 プ ロ グ ラ ム ( 2000 Climate Change Programme)」 を 導 入 し た 。 ・ 二 酸 化 炭 素 排 出 量 取 引 制 度 に 関 し て 他 の EU 加 盟 国 と 協 働 し た 。 ・2003 年 の エ ネ ル ギ ー 白 書「 エ ネ ル ギ ー 問 題 へ の 対 応( Energy white paper: meeting the energy challenge)」 と 2006 年 の エ ネ ル ギ ー 政 策 見 直 し 作 業 結 果 報 告 書「 エ ネ ル ギ ー 政 策 に お け る 課 題( The Energy Challenge)」を 発 表 。 二酸化炭素排出量削減、エネルギーの安定供給の確保、国内外における競争 力のあるエネルギー市場の促進、全ての家屋に適正な価格で十分に暖房機能 7 銀 行 の資 金 及 び「グリーン住 宅 ローン」利 用 者 からの支 払 金 を利 用 して、環 境 負 荷 が軽 減 されるよう住 宅 を改 築 するという案 。従 来 からある「グリーン住 宅 ローン」は、ローンの利 用 があるごとに木 が植 樹 され、二 酸 化 炭 素 の吸 収 に貢 献 するというもの。 7 が整備されることなどを提案。 ・ 「 燃 料 貧 困( fuel poverty)」8 を 、社 会 的 弱 者 の 世 帯( vulnerable households) か ら 2010 年 ま で に 、 全 て の 世 帯 か ら 2016 年 ま で に 根 絶 す る 。 ・ごみの量を最小限に抑え、可能な限り再利用を実践する。 また、コミュニティ・地方自治省は、住宅、都市計画に関して、環境問題への配慮 を 軸 に そ の 業 務 と 政 策 の 立 て 直 し を 図 っ て い る 。2007 年 7 月 に 同 省 が 発 表 し た 政 策 文 書 「 よ り 環 境 に 優 し い 未 来 を つ く る ( Building a Greener Future)」 は 、 建 築 許 可 基 準 の エ ネ ル ギ ー 効 率 に 関 す る 項 目 を 大 幅 に 強 化 す る こ と で 、「 2016 年 ま で に 全 て の 新 築 住 宅 の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 を ゼ ロ と す る 」と の 目 標 を 掲 げ た 。中 間 目 標 と し て 、「 2010 年 ま で に 、全 新 築 住 宅 の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 を 2006 年 規 定 比 で 25% 減 、2013 年 ま で に 44% 減 と す る 」 こ と を 定 め た 。 最後に、地方自治体における動きとしては、気候温暖化に対する取り組みで公共部 門 を リ ー ド し よ う と す る 地 方 自 治 体 協 議 会( LGA)の 努 力 の も と 、同 協 議 会 内 部 に「 気 候 変 動 委 員 会 ( Climate Change Commission)」 が 設 立 さ れ て い る 。 同 委 は 今 年 後 半 、 地球温暖化対策で自治体が果たせる役割などについてまとめた報告書を発表する見込 みである。 ま た 、 2000 年 か ら 開 始 さ れ て い る 「 気 候 変 動 に 関 す る ノ ッ テ ィ ン ガ ム 宣 言 ( Nottingham Declaration on Climate Change)」 は 、 地 球 温 暖 化 対 策 に 積 極 的 に 取 り組むことを地方自治体が誓約する宣言書であり、既にイングランドとウェールズの 約 200 の 自 治 体 ( 全 自 治 体 の 半 分 以 下 ) が 署 名 し て い る 。 自 治 体 は 、 署 名 に よ り 、 物 品調達とエネルギー利用に関して、最低限の基準達成とベスト・プラクティス(優良 事例)の共有に合意することになる。 グ レ ー タ ー・ロ ン ド ン・オ ー ソ リ テ ィ( GLA)に お い て は 、ケ ン・リ ビ ン グ ス ト ン ・ ロンドン市長の指揮下で、環境問題に関して様々な努力を続けている。二酸化炭素排 出量削減とごみのリサイクルでロンドンの公的部門をリードしているのみならず、 「 シ ー フ ォ ー テ ィ ー・シ テ ィ ー ズ( C40 Cities)」9 の 創 設 や「 ク リ ン ト ン 財 団( Clinton Foundation)」10 と の パ ー ト ナ ー シ ッ プ 締 結 に よ り 、世 界 レ ベ ル で の 環 境 問 題 対 策 の 指 導 的 役 割 を 果 た し て い る 。 最 近 発 表 さ れ た 独 自 の 調 査 に よ る と 、 GLA の エ ネ ル ギ ー 政 策は、既に二酸化炭素排出量削減に多大な貢献をしているという。 【ロンドン市内の自治体に特別の権限を付与する法律について】 英国 8 暖 房 費 が収 入 の 10%以 上 を占 める状 態 。 9 二 酸 化 炭 素 排 出 量 削 減 と気 候 変 動 への取 り組 み強 化 を目 指 す、世 界 40 都 市 で構 成 されるグループ。 10 世 界 の貧 困 対 策 、HIV/エイズ予 防 、地 球 温 暖 化 防 止 などに取 り組 むクリントン前 米 大 統 領 による財 団 。 8 「 2007 年 ロ ン ド ン 地 方 自 治 体 法 ( London Local Authorities Act 2007)」 11 が 9 月 19 日 、施 行 さ れ た 。同 法 案 は 、ロ ン ド ン 自 治 体 連 合( London Councils) 12 が「 私 的 法 案 ( Private Bill)」 と し て 下 院 に 提 出 し た も の で 、 ロ ン ド ン 市 内 の 自 治 体 が 、 取 り 組 みに具体的な法律を必要とすると判断した一連の分野について規定している。 「 私 的 法 案 」は 、地 方 自 治 体 を 含 む 公 共 団 体 や 民 間 企 業 な ど 、英 国 を 拠 点 と す る 組 織または個人が、一般の法律の枠内で与えられた権限を超える、またはそれらと矛盾 す る 権 限 の 付 与 を 求 め る 場 合 、国 会 に 提 出 す る こ と が で き る も の 。私 的 法 案 を 策 定 し 、 議会での審議を促して法案が通るよう働きかけるのは、これらの業務の遂行を国会か ら 許 可 さ れ た 「 議 会 代 理 人 ( Parliamentary Agent)」 と 呼 ば れ る 事 務 弁 護 士 で あ る 。 今回、ロンドン自治体連合の議会代理人を務めたのは、シティ・オブ・ロンドンで登 録 し て い る 法 律 事 務 所 「 シ ャ ー プ ・ プ リ ッ ト チ ャ ー ド ( Sharpe Pritchard)」 だ っ た 。 最近、国会で審議された私的法案にはほかに、下記のようなものがある。 ・「 ボ ー ン マ ス 市 法 案 」 ・ 「湖沼地帯庁法案」 − − ボーンマス市内における路上販売を規制する。 ノーフォーク県の湖沼地帯の管理について改善を行う。 ・「 ロ ン ド ン 交 通 局 法 案 」 − ロ ン ド ン 交 通 局 に 対 し 、駐 車 違 反 な ど の 車 両 を 撤 去できる権限を付与する。 ・「 ホ ワ イ ト へ ブ ン 港 法 案 」 − カンブリア県のホワイトへブン港の運営に関す る現行法を改正する。 「ロンドン地方自治体法案」は、関係各省が各条項の内容とその合法性を確認した 後 、 上 下 両 院 を 通 過 し た 。 同 法 の 条 項 は 主 に 、「 環 境 犯 罪 ( environmental crime)」 13 と 生 活 の 質 の 向 上 に 関 す る 住 民 の 懸 念 に 答 え よ う と す る も の で 、今 年 7 月 19 日 に 女 王 の裁可を得た。 同法の各項目別内容は下記の通りである。 放置車両 ・現行法を改正し、自治体は、一定の状況下では、専有地内に放置された車 両を撤去する旨を居住者に通知する必要がなくなる。これにより、自治体の 時間と費用を節約する。 ・現行法を強化し、自治体が撤去した車両の回収には、車両放置に対する罰 11 「ロンドン地 方 自 治 体 法 」という名 称 で過 去 に 8 つの異 なる法 律 が成 立 、施 行 されており、今 回 は 9 つ目 。 12 ロンドンの 32 区 とシティ・オブ・ロンドンを代 表 する超 党 派 組 織 。 13 廃 棄 物 不 法 投 棄 やごみのポイ捨 て、落 書 き、公 共 物 の破 壊 など、近 隣 の環 境 を破 壊 する犯 罪 。 9 金の支払い証明書のほか、車両保険加入証明書、自動車税納税証明書、車検 の合格証明書の提示を義務付ける。 広告及びポスターの違法掲示 ・住民の安全保護と、快適な生活環境を提供する必要性を理由として、指定 区 域 内 で 、持 ち 運 び 可 能 な 広 告 14 の う ち 多 く の 種 類 を 掲 示 禁 止 と す る こ と を 自 治 体 に 許 可 す る 。違 反 者 に は 最 高 2,500 ポ ン ド( 約 57 万 5,000 円 )の 罰 金 を 科すことを許可する。 ・違 反 常 習 者 に 対 す る 罰 金 額 の 引 き 上 げ 。ポ ス タ ー 及 び 垂 れ 幕 広 告 15 の 違 法 掲 示 で 違 反 が 3 回 に 達 し た 場 合 の 罰 金 最 高 額 を 、 現 行 の 2,500 ポ ン ド か ら 2 万 ポ ン ド ( 約 460 万 円 ) へ 引 き 上 げ る 。 ・建物への無許可の広告掲示が続く場合、何らかの対策を講じることを建物 の所有者または賃借人に強制できる権利を自治体に与える。 ・ポスターが違法に掲示されていると判断できる場合、ポスターを押収でき る権限を自治体職員に与える。 環境犯罪 ・特定の区域について、ごみのポイ捨てや落書き、迷惑騒音、ポスターの違 法掲示を含む幾つかの環境犯罪に対して通常より高額の罰金を科すことがで きる「環境犯罪取締り強化ゾーン」への指定を申請することを地方自治体に 許 可 す る 。2 つ 以 上 の 自 治 体 に よ る 共 同 申 請 も 可 能 。申 請 は 、コ ミ ュ ニ テ ィ ・ 地方自治相に対して行う。これにより、観光名所など特定のニーズを持つ場 所の美化に繋げる。 ・植 物 が 繁 茂 し 過 ぎ て 周 囲 の 生 活 環 境 に 好 ま し く な い 影 響 を 与 え て い る 場 合 、 それら植物が生えている土地の所有者または占拠者に対し、植物を刈るよう 求める権限を自治体に許可する。 営業許可 ・ロ ン ド ン 市 内 の 商 業 施 設 の カ テ ゴ リ ー に 、新 た に「 ホ ス テ ス・バ ー( hostess bars)」 を 加 え る 。「 ホ ス テ ス ・ バ ー 」 は 、 風 俗 施 設 と し て の 営 業 許 可 が 必 要 となり、営業許可規制がより寛容だった従来のカテゴリーに代わるものとな る。 罰金 ・自治体が罰金を科すことができる違反行為に、車両からのごみのポイ捨て 14 持 ち運 びが可 能 な全 ての広 告 を含 む。ポスター、チラシなど。 15 建 物 や工 事 現 場 の足 場 で、これらをすっぽり包 むように上 から垂 れ幕 広 告 を吊 り下 げる宣 伝 方 法 。 10 も加える。更に、一般家屋の外に置かれ、自治体が回収するごみ回収箱の使 用と配置に関する行為にも罰金を科すことを可能にする。これにより、罰金 額設定や罰金支払い、罰金への不服申し立てに関するものも含めた罰金によ る処罰に関する総則を定め、罰金の対象となる違反行為の拡大に道筋を付け る。 ・ 定 額 罰 金 の 支 払 い 期 間 を 、 現 行 の 「 罰 金 支 払 い 命 令 発 令 後 14 日 以 内 」 か ら 「 28 日 以 内 」 へ 延 長 す る ( 罰 金 割 引 適 用 期 間 は 、「 罰 金 支 払 い 命 令 発 令 後 14 日 以 内 」 の ま ま と す る )。 路上販売 ・現 行 法 を 強 化 し 、「 路 上 販 売 」の 定 義 を 新 た に 規 定 す る と と も に 、テ ム ズ 川 にかかる橋の上での物品販売を規制できなかった法の不備を修正する。 ・路上販売の短期営業許可の付与、停止、取り消しについて自治体の権限を 強化する。 ・ 無 許 可 の 路 上 販 売 か ら 自 治 体 が 押 収 で き る 商 品 に 、「 腐 敗 し や す い 商 品 ( perishable items)」 を 加 え る ( 従 来 、「 腐 敗 し や す い 商 品 」 は 押 収 可 能 物 品 か ら 除 外 さ れ て い た )。 ・路上での自動車の不法販売について、起訴手続きの開始可能期間を延長す る。 廃棄物、ごみ ・一般家庭および企業を対象にした、ごみ収集に関する規則の策定を自治体 に許可する。規則には、ごみ回収箱の置き場所や、リサイクル用分別ごみ箱 の使い方などが含まれる。違反者には自治体が罰金を科すことができる。 ・車の運転者または同乗者がごみのポイ捨てに関連する違反行為を行った場 合( 車 内 か ら 道 路 に ご み を 投 げ 捨 て た 場 合 な ど )、当 該 車 両 の 所 有 者 に 罰 金 を 科すことを自治体に許可する。 ・自治体運営のごみ廃棄場の利用には、当該自治体または隣接自治体の管轄 地域内における居住証明の提示を義務付けること、他地域の居住者によるご み廃棄場の利用を禁止することを自治体に許可する。 その他 ・ポルノビデオの販売規制を強化し、店頭でのビデオの陳列についても規制 する。 ・労 働 者 の 臨 時 宿 泊 所( temporary sleeping accommodation)と し て 使 わ れ て い る 建 物 16 に つ い て 、 立 ち 退 き 命 令 に 従 わ な い 場 合 は 、 建 物 に 立 ち 入 り 、 16 日 雇 い労 働 に従 事 する多 数 の不 法 移 民 が宿 泊 している倉 庫 など。 11 捜索を行い、物品を押収できる権限を自治体に付与する。必要ならば強制的 に立ち入ることも許可される。 ・風俗施設及びその他の施設への客引きの禁止。 ・自治体が提供する埋設管の利用料金を電気通信事業者に請求する権利を自 治体に付与する。 ・ 埋 葬 か ら 最 低 75 年 が 経 過 し た 遺 体 を 掘 り 起 こ し 、 墓 穴 を よ り 深 く し て 埋 葬スペースを拡大できる権限を自治体に付与する。この場合、掘り起こした 遺体は再び同じ墓穴に埋葬するものとする。 ・郵便物転送サービス業者に対し、地方自治体への登録と顧客情報の記録を 義 務 付 け る 。 違 反 に は 最 高 5,000 ポ ン ド ( 約 115 万 円 ) の 罰 金 。 自 治 体 は 、 法の執行を目的とする場合は、郵便物転送サービス業者の事業所内に立ち入 り、調査を行い、物品を押収できる既存の権利を保持する。 (参考) http://www.londoncouncils.gov.uk/doc.asp?doc=20592 http://www.publications.parliament.uk/pa/privbill.htm 【生徒会のある学校は成果をあげている】 英国 イ ン グ ラ ン ド と ウ ェ ー ル ズ の 学 校 に お け る 「 生 徒 会 ( School Council)」 の 機 能 や 利 点 、 可 能 性 な ど に つ い て 検 討 し て い た 調 査 の 結 果 報 告 書 が 9 月 18 日 、 発 表 さ れ 、「 生 徒会のある学校は、学校職員と生徒間、および生徒同士でもより良い関係が築かれて お り 、ま た 、生 徒 が 市 民 と し て の 権 利 と 責 任 を よ り 深 く 認 識 し て い る 」と 結 論 付 け た 。 生徒会は、選挙で選ばれた生徒の代表者によって構成される組織であり、全ての公 立 学 校 17 で 設 立 す る こ と が で き る 。学 校 の 意 思 決 定 に「 生 徒 の 声 」を 反 映 さ せ る こ と を 狙 い と し て お り 18 、メ ン バ ー は 、定 期 会 合 で 、学 校 施 設 や 給 食 、い じ め 問 題 な ど 、学 校 に関する様々な問題について話し合う。優良な生徒会は、自治体に掛け合って学校施 設を修繕させたり、制服を改良するなど、具体的な成果を挙げている。 報告書は、教育・技術省(現在の児童・学校・家族省)の委託で、ロンドン大学付 属 教 育 研 究 所 ( IoE) の ジ ェ フ ・ ホ イ ッ テ ィ ー 教 授 が 執 筆 。「 生 徒 会 が あ る 学 校 で は 、 生徒が感情のコントロールや社会的スキル、自分に対する自信を養い、市民の参加で 成 り 立 つ 民 主 主 義 の 重 要 性 を 認 識 す る よ う に な る 」と 記 し た 。ま た 、「 調 査 を 行 っ た 15 の学校では、生徒会が、学校教育と学習に関する議論を促進するだけではなく、生徒 17 小 中 学 校 及 び大 学 進 学 コース専 門 学 校 であるシックスフォーム・カレッジを含 む。 18 現 政 権 は、教 育 の場 における生 徒 の権 利 保 護 のため、生 徒 の声 をより反 映 させる方 針 を推 進 している。 12 の体力向上にも大いに貢献している」と指摘したほか、生徒会の運営モデルは、政府 が単一の形式を押し付けるのではなく、各学校にそれぞれ考えさせる方が望ましいと 提 案 し た 。更 に 、「 教 師 と 行 政 側 は 共 に 、生 徒 の 声 を 反 映 さ せ る こ と に よ っ て 意 図 し な かった結果に直面することも予想しなければならない」と指摘した。 報告書を受け、アンドリュー・アドニス学校担当大臣は次のように述べた。 「 現 在 、 公 立 学 校 の 90% に 生 徒 会 が あ る 。 生 徒 会 の 設 置 が 学 校 の 法 的 義 務 と な る 見 込 み は な い が 、 全 て の 学 校 は 、 生 徒 会 の 設 立 を 検 討 す べ き で あ る 」「 報 告 書 は 、生 徒 会 が い か な る 価 値 を 有 す る か を 示 し 、学 校 が 生 徒 の 意 見 を 聞 く に あたっての革新的な方法を提案している」 ま た 、 生 徒 会 の 設 置 、 活 用 を 促 進 す る 独 立 団 体 「 英 国 生 徒 会 協 会 ( School Councils UK)」 は 、 報 告 書 に つ い て 下 記 の よ う に コ メ ン ト し た 。 「 報 告 書 に 示 さ れ た 調 査 結 果 は 、 こ の 分 野 に お け る 我 々 の 過 去 15 年 間 の 経 験 を そ の ま ま 反 映 し た も の で あ り 、 驚 く に 当 た ら な い 」「 例 え ば 報 告 書 で は 、 教 師 や 生 徒 た ち が 生 徒 会 に 対 し て 強 い 熱 意 を 持 っ て い る こ と 、ま た 校 風 や 生 徒 の 素 行 、学 校 活 動 へ の 関 わ り な ど の 点 に お い て 生 徒 会 が 効 果 を 発 揮 し た 例 な ど が 取 り 上 げ ら れ て い る が 、 こ れ ら は 我 々 に と っ て 既 知 の 事 実 で あ る 」「 我 々 は 、 生 徒 が 学 校 の 意 思 決 定 に 関 与 し 、健 康 状 態 の 向 上 を 含 め 、自 ら の 利 益 を 促 進 で き る 可 能 性 を 持 つ こ と が 重 要 で あ る と 考 え て い る 」「 英 国 生 徒 会 協 会 は 、『 生 徒 会 に 係 わ る 学 校 職 員 と 生 徒 は 、生 徒 会 活 動 の た め 、質 の 高 い ト レ ー ニ ン グ と 資 金 、十 分 な 時 間 を 与 え ら れ る べ き で あ り 、ま た 学 校 の 運 営 上 層 部 は 、生 徒 会 に 関 心 を 払 う べ き で あ る 』と す る 報 告 書 の 指 摘 を 強 く 支 持 す る 。学 校 側 に そ れ く ら い の 熱 意 が な け れ ば 、生 徒 会 は 、メ ン バ ー の 生 徒 に 健 全 な 民 主 的 シ ス テ ム の 運 営 に 必 要 な 価 値 あ る 経 験 を 提 供 す る 代 わ り に 、失 望 と 幻 滅 を 味 わ わ せ る こ とにもなり得る」 (参考) http://www.dcsf.gov.uk/pns/DisplayPN.cgi?pn_id=2007_0165 http://ioewebserver.ioe.ac.uk/ioe/cms/get.asp?cid=1397&1397_1=16816 http://www.schoolcouncils.org/news/Whitty-response 【ドイツの公共交通を巡る事情】 ドイツ 日 本 や 英 国 と 比 較 し て 、ド イ ツ に お け る 鉄 道 の 民 営 化 は 遅 れ を と っ て い る 。1990 年 の東西ドイツ統一後、両ドイツの鉄道制度の統合と改善を達成するには、大規模な改 13 革 が 必 要 で あ り 、こ の「 鉄 道 改 革 」は 1994 年 に 始 ま り 、現 在 で も 続 い て い る 。最 終 的 な目的は民営化であるが、一方でドイツの憲法に当たる基本法では、国家は総合的な 鉄道網を提供する義務を負っていることにも留意が必要である。 ド イ ツ 鉄 道 株 式 会 社 ( Deutsche Bahn AG、 DB AG) は 、 1994 年 1 月 に 、 旧 西 ド イ ツ の ド イ ツ 連 邦 鉄 道 ( Deutsche Bundesbahn ) と 旧 東 ド イ ツ の ド イ ツ 国 有 鉄 道 ( Deutsche Reichsbahn)、更 に「 歴 史 的 な 負 債 」( 年 金 等 )を 管 理 す る 組 織 を 合 併 し 、 「 鉄 道 改 革 Bahnreform」の 第 一 歩 と し て 設 立 さ れ た 。旧 組 織( 国 有 )と の 大 き な 違 い は 、公 共 有 限 株 式 会 社 と し て 設 立 さ れ た 点 で あ る 。2007 年 現 在 、す べ て の 株 は ド イ ツ 連邦共和国の所有である。 鉄 道 改 革 の 第 二 段 階 と し て 、 DB AG は 1999 年 に 組 織 を 分 散 し 、 そ れ ぞ れ の 分 野 の 独 立 性 を 高 め た 。 DB AG は ホ ー ル デ ィ ン グ ( 持 株 会 社 ) と な り 、 そ の 中 の 5 つ の 主 要 子会社の間ですべての鉄道線路、職員、資産が分散された。5つの子会社とは、長距 離旅客サービス、州の監視の下に置かれた地域旅客サービス、貨物サービス、線路を 運 営 す る 会 社 と 駅 を 運 営 す る 会 社 で あ っ た 。こ の 背 景 に は 、EU が 、鉄 道 に は 他 会 社 も 自由にアクセスできるよう命じる指令を出したことも大きく影響した。なお、前の国 有鉄道の重要な遺産、たとえば公務員として雇用されていた人の年金を扱っている組 織 は 、「 連 邦 鉄 道 資 産 ・ Bundeseisenbahnvermögen」 が ホ ー ル デ ィ ン グ の 下 に 存 在 す る。 1999 年 以 降 、 DB AG は 規 模 が 拡 大 し 、 子 会 社 が 増 え た が 、 全 体 で は 三 つ の 分 野 に 分類することができる。 「 移 動・Mobility」に は 、す べ て の 旅 客 サ ー ビ ス が 含 ま れ 、「 ネ ットワーク」にはインフラ、つまり線路と設備が含まれ、そして「ロジスティクス」 には貨物や他の支援サービスが含まれる。しかし、国有鉄道時代から引き継いだ財政 赤字の負担が大きいため、末だに民営化には至っていない。 DB AG は ド イ ツ 最 大 の 鉄 道 会 社 で あ り 、交 通 関 連 企 業 と し て は 世 界 的 に も 規 模 が 大 き く 、 年 間 の 利 用 者 は 20 億 人 に 上 る 。 鉄 道 改 革 が 開 始 し て か ら 13 年 が 経 ち 、 DB AG の 業 績 も 改 善 し 、 次 の 段 階 と し て 、 連 邦 政 府 は 部 分 的 な 民 営 化 を 目 指 し て い る 。線 路 は 基 本 的 に 公 共 所 有 の ま ま で 、DB AG の 列 車 運 行 サ ー ビ ス を 民 営 化 し よ う と す る も の で あ る 。但 し 、DB AG に は 、す べ て の インフラ、つまり線路、駅、エネルギー部門の利用、それについての決裁と報告権利 が委譲される。この部分民営化を可能にする法案が連邦議会で議論されているが、可 決されるかについては疑問視されている。特に州からは法案に対する反対意見が多い ため、州首相や州大臣で構成される連邦参議院において否決される可能性が高い。州 が共同で憲法専門家に依頼した法案によって惹起される問題についての調査結果は 9 月始めに発表されたが、報告書によれば、連邦政府が現在予定している制度では、多 く の 地 方 路 線 が 廃 止 線 と な り 、公 共 交 通 サ ー ビ ス が 低 下 す る 可 能 性 が 高 い と し て い る 。 そ の 理 由 は 、線 路 の 所 有 権 は 連 邦 に 残 っ て も 、実 際 の 利 用 者 は 主 に DB AG で あ る た め 、 民 営 化 さ れ た DB AG の 株 主 は 、会 社 の 利 益 を 上 昇 さ せ る た め に 、経 済 的 に 採 算 の 見 込 める可能性のある線路やサービスを増やすよう圧力をかける一方で、利益を上げるた 14 め に 赤 字 路 線 を 放 棄 し 、路 線 や 駅 の 利 用 料 金 を 上 げ る こ と は 必 然 的 で あ る と し て い る 。 ド イ ツ 郡 会 議 も 、現 在 連 邦 政 府 が 予 定 し て い る DB AG の 部 分 民 営 化 は 、地 方 部 に 最 も 打 撃 を 与 え る と 警 告 し て い る 。赤 字 路 線 は こ れ ま で 以 上 に 廃 止 の 危 機 に 直 面 す る が 、 一方で充実した公共交通ネットワークは特に旧東ドイツの地域を活性化させるために 重要である上、旧西ドイツの地域においても、高齢化で自家用車の利用の減少が予想 されるため、鉄道やバスの充実したネットワークは重要である。したがって、ドイツ 郡会議は、正式に反対意見を表明し、すでに法案の見直しを求めているさまざまの団 体の列に加わった。 磁気浮上式鉄道の導入へ また、交通政策の一つとして長い間注目されている磁気浮上式鉄道のドイツ国内で の建設が近づいているようである。上海の空港と市内を結ぶ磁気浮上式鉄道はドイツ 製 で あ る が 、 ド イ ツ 国 内 で は 試 験 的 な 路 線 し か 存 在 し な い 。「 ト ラ ン ス ラ ピ ド Transrapid」 と 呼 ば れ る こ の プ ロ ジ ェ ク ト は 、 ミ ュ ン ヘ ン 空 港 と ミ ュ ン ヘ ン 市 中 心 部 を 結 ぶ 予 定 で あ る 。 37 キ ロ の 距 離 を 10 分 で 結 ぶ こ と と な る が 、 高 い コ ス ト と 必 要 性 に対する問題意識のためは5年間以上プロジェクトの実現は遅れた。 し か し 、連 邦 政 府 が 関 係 者 と の 長 い 交 渉 の 結 果 、高 額 の 補 助 を 約 束 し 、9 月 24 日 に バ イ エ ル ン 州 、 DB AG と 車 両 製 造 者 側 が 協 約 に サ イ ン し た 。 全 体 の コ ス ト は 現 在 18 億 5000 万 ユ ー ロ ( 約 2,960 億 円 ) と 見 積 も ら れ て い る 。 そ の う ち 、 連 邦 政 府 が 9 億 2,500 万 ユ ー ロ( 約 1,480 億 円 )、バ イ エ ル ン 州 が 2 億 7,500 万 ユ ー ロ( 約 440 億 円 )、 DB AG と ミ ュ ン ヘ ン 空 港 も 資 金 を 提 供 す る が 、ま だ 1 億 6,500 万 ユ ー ロ( 約 264 億 円 ) が 不 足 し て い る 。 こ の 不 足 分 は 、 バ イ エ ル ン 州 、 DB AG、 ミ ュ ン ヘ ン 空 港 、 EU と 経 済界が負担するべきとティーフェンゼー連邦財務大臣は述べている。 最 終 的 な 決 定 で は な い が 、 2001 年 に こ の 事 業 の 計 画 が ス タ ー ト し て 初 め て 、 2008 年に建設を開始する発表までに至った。しかし、政治的な反対は依然として残ってい る。バイエルン州の社会民主党は、バイエルン州政府は面子を保ちたいだけであり、 すでに空港までの交通網は充実しているため、必要性がないとしている。緑の党は、 コスト面から反対している。しかし、連邦政府とバイエルン州政府は共に、ドイツで 1923 年 に 発 明 さ れ た 磁 気 浮 上 式 技 術 が 、外 国 だ け で は な く 、ド イ ツ 国 内 で も 実 用 さ れ ることによって、ドイツの誇る技術としての輸出が促進されることを期待している。 (参照) Städte- und Gemeindebund: „Ländliche Regionen bei Bahnreform die Verlierer” http://www.dstgb.de/homepage/pressemeldungen/gemeindebund_laendliche_region en_bei_bahnreform_die_verlierer/index.html Bundesministerium für Verkehr, Website zur Bahnreform http://www.bmvbs.de/-,1462/knoten.htm Der Spiegel im Internet, 11.9.2007; “Bayerische Genossen werfen Bund und Land 15 Geldverschwendung vor” http://www.spiegel.de/politik/deutschland/0,1518,505062,00.html Netzeitung 25.9.07, “Die unendliche Geschichte des Transrapid” http://www.netzeitung.de/wirtschaft/wirtschaftspolitik/754212.html 【ザールランド州の郡機能の州への移環を巡る議論】 ドイツ ザ ー ル ラ ン ド 州 は 、 フ ラ ン ス の 国 境 に 近 く 、 ド イ ツ の 南 西 に あ る 人 口 104 万 3,000 人のドイツの最も小さい広域州である。他の州と同様、近年は行政の改革とスリム化 を 推 進 し て い る 。 州 行 政 の レ ベ ル で は 、 2005 年 か ら は 、 州 直 属 機 関 の 再 編 成 を 行 い 、 た と え ば 州 立 税 務 局 、州 立 資 産 局 と 州 立 統 計 局 は 州 立 中 央 サ ー ビ ス 局 と し て 統 合 さ れ 、 13 あ っ た 州 立 局 は 8 局 に 削 減 さ れ た 。 そ の 他 、 地 域 別 に 存 在 し た 地 方 税 務 局 の 統 合 の 他、州立図書局や地域学研究所のような特定目的組織は廃止され、それらの機能は他 の機関に移譲された。州当局は、このようなスリム化と組織の再編成により、中期的 に は 2,400 万 ユ ー ロ( 約 38 億 4,000 万 円 )の 費 用 節 減 に つ な が る と 州 は 主 張 し て い る 。 州 行 政 改 革 の う ち 、2008 年 か ら 実 行 さ れ る 予 定 の 次 の ス テ ッ プ は 、市 町 村 に も 及 ぶ 改 革 で あ る 。州 政 府 は 2003 年 、州 に お け る 行 政 制 度 の 実 態 と 将 来 の 改 革 の 可 能 性 に つ い て の 調 査 を 発 注 し 、そ の 結 果 は 2004 年 に 発 表 さ れ た 。報 告 書 は 、実 態 調 査 の 結 果 を ベースに改革について助言した。提案は現在の制度の中で協力体制を強めるなどの最 低限の措置から、立法を必要とする大型規模な構造改革まで及んだ。 州政府は州直属機関の改革を終えた後、市町村に影響する改革については報告書の 一部に特に注目した。それは、郡が現在担当している機能の一部を州直行政に吸収さ せ る「 Hochzonung」で あ っ た 。そ の 目 的 は 、能 率 性 の 向 上 と 規 模 の 経 済 に よ る 費 用 節 減である。したがって、現在郡が地域別に行っている機能やサービスは州の省庁や新 たに設立する局の責任となる。対象は、現存する5つの郡と特別市のようなステータ スを持つ州首都のザールブルュッケン市である。州政府が改革の範囲内に挙げている 機 能 は 、市 町 村 に 対 す る 法 的 監 視 、外 国 人 に 対 す る サ ー ビ ス 、水 資 源 管 理 、土 壌 管 理 、 環境保護と食品衛生管理である。一方で、このような機能やサービスを郡レベルで行 うことの利点は、その地域の特徴に配慮できることであり、環境保護と都市計画や建 設監視などのさまざまな分野ですでに緊密な協力が行われている。前述のように、機 能を州に集中化すれば、このような地域に根ざしたサービスを実行することが難しく なり、協調のネットワークが失われ、サービスが市民と地域から遠くなる可能性があ る。また、職員にとっては、職場が遠くなり、または管理すべき場所や組織も遠くな るという欠点がある。 このほか、州が目指している改革には、市町村が能力や財政不足のため自ら行えな い場合に当該市町村に代わって郡が業務やサービスを執行する権限の縮小が見込まれ ている。将来的には、公共交通や市民参加などの分野においては、市町村の要求と財 政的負担がある場合のみにサービスの代行が可能になると州政府は提案している。し かし、この提案は、郡から見れば矛盾するととらえられている。郡が市町村に代わっ 16 て業務を行う背景には、市町村にはそれを行うための人的資源や財源がないという事 情があるからである。 ザールランド州政府の改革は、いくつかの業務の中止と、郡にとっては、自治と独 立性の減少の他に職員と財源の減少とつながる懸念があるため、ドイツ郡会議が州政 府の計画に反対を表明していることは不思議ではない。郡会議の会長を務めるハンス ヨ ル ク・ヅ プ レ 氏 は 次 の よ う に 述 べ て い る 。「 郡 の 特 徴 は 、市 民 か ら ほ ど 遠 い 州 行 政 と 市民の身近にある市町村行政の橋渡し役ができるところにある。同時に、市町村が独 自で業務の執行ができない時に市町村を支持する役割も大事だ。そのため、地方自治 体としていくつかの機能を果たしており、そのうちの一部を取り除くことはできな い 。」つ ま り 郡 は 、市 町 村 の 連 合 体 と し て 、市 町 村 が 独 自 に で き な い 業 務 を 代 わ り に 執 行し、または自治体として広域にわたる自治事務を行い、そして州の下位行政機関と して機能している。この三つの機能を一つの組織で行う自治体として行政学の上から も 成 功 例 と し て 評 価 さ れ て い る 。 州 政 府 は 、 改 革 に よ る 効 率 向 上 の 結 果 、 20% の 費 用 削減を達成できるが、これは予測であって、実際に実現できるかは不透明である。そ の上、財減節約の成功が、地域レベルでのサービス・ネットワークの損失を補填する かどうかの判断は難しいであろう。 また、ドイツ郡会議は、先月にメクレンブルク・フォアポンメルン州の憲法裁判所 の、郡は地方自治体としての自治権を有するため、州政府によってそれを侵害する改 革を行うことができないとの判決に言及し、これがザールランド州にとっても参考に なるのではないかと述べている。 (参照) Deutscher Landkreistag im Internet, Pressemitteilung 31.8.2007; “Verwaltungsreform im Saarland: Landkreistag lehnt Schwächung der Lankreise kategorisch ab“ http://www.kreise.de/landkreistag/ (Verwaltungsreform Saarland 31.8.07) Ministerium für Inneres und Sport des Saarlandes im Internet, „Funktionalreform“ http://www.saarland.de/3834.htm Sozialdemokratische Gemeinschaft für Kommunalpolitik im Saarland e.V. im Internet; „Staatsmodell der CDU ein falscher Fuffziger“ http://www.sgk-online.net/servlet/PB/menu/1704450/index.html 17