...

解説 - 一般財団法人エンジニアリング協会

by user

on
Category: Documents
114

views

Report

Comments

Transcript

解説 - 一般財団法人エンジニアリング協会
石油精製業及び石油化学工業における
保温材下配管外面腐食(CUI)に
関する維持管理ガイドライン
解説
平成24年2月
一般財団法人
エンジニアリング協会
目
次
解 説 1 ガイドラインの考 え方 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 1
1.1 背 景
‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧
1
1.2 ガ イ ド ラ イ ン の 提 案 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧
2
1.3 ガ イ ド ラ イ ン の 考 え 方 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧
2
解 説 2 CUI 発 生 メカニズムと腐 食 評 価 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧
3
2.1 CUI の 概 要 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧
3
2.2 CUI の 発 生 要 因 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧
3
2.3 CUI の 加 速 要 因 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧
5
2.4 CUI の 発 生 メ カ ニ ズ ム ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧
7
2.5 CUI の 腐 食 評 価‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧
9
解 説 3 CUI の発 生 しやすい箇 所 と環 境 例 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 13
3.1 CUI の 発 生 し や す い 箇 所 と 環 境 例 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 13
3.2 具 体 事 例
‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 13
3.3 目 視 点 検 に お け る 異 常 判 定 例 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 13
解 説 4 優 先 順 位 の選 定 とスクリーニング検 査 例 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 25
4.1 優 先 順 位 の 選 定 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 25
4.2 ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 30
4.3 評 価 と 考 察 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧
30
解 説 5 非 破 壊 検 査 技 術 の選 定 と使 用 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 52
5.1 非 破 壊 検 査 技 術 の 基 礎 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 52
5.1.1 ガ イ ド 波 超 音 波 検 査 法 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 52
5.1.2 放 射 線 法 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 61
5.1.3 パ ル ス 渦 流 磁 気 検 査 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 66
5.2 測 定 機 器 の 種 類 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 70
5.3 非 破 壊 検 査 技 術 の 目 的 と 基 本 的 な 考 え 方 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 71
5.4 非 破 壊 検 査 技 術 の 効 果 と 留 意 点 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧
72
5.5 対 象 配 管 の 状 況 に 応 じ た 非 破 壊 検 査 の 選 定 事 例 ‧‧‧‧‧‧ 76
5.5.1 オ フ サ イ ト 配 管 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧ 76
5.5.2 オ ン サ イ ト 配 管 ‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧77
解説1 ガイドラインの考え方
1.1
背景
爆 発 ・漏 洩 に よ る 事 故 は 年 々 増 加 し て お り 、 平 成 2 0 年 の 調 査 * 1 に よ れ ば 平 成 1 2 年 の
報 告 よ り 約 3 倍 に 増 加 し て い る 。こ の う ち 爆 発 ・火 災 事 故 は ほ ぼ 横 ば い で あ り 、増 加 し て い
るものはほぼ全てが漏洩事故である。また、この漏洩事故の7割以上が配管系で発生した
が、配管系の高経年化と外面腐食は目立っており、特にコンビナートにおいては配管外面
腐 食 、 な か で も 保 温 材 被 覆 配 管 の 外 面 腐 食 ( CUI) が 問 題 と な っ て い る 。 そ の た め 、 対 策
として高圧ガス設備や配管の損傷の早期発見に資するデータベースの構築や検査技術の開
発 を 進 め る べ き で あ る と の 課 題 が 提 起 さ れ て い る 。特 に CUI に 対 し て は 保 温 配 管 の 保 温 被
覆材を装着したままの検査技術の必要性が提案された。
わ が 国 の 石 油 コ ン ビ ナ ー ト は ほ と ん ど が 設 備 年 齢 30~ 50 年 に 達 し た 高 経 年 化 プ ラ ン ト
で 、臨 海 部 に 位 置 し て い る た め 大 気 環 境 の 影 響 を 強 く 受 け る CUI が 深 刻 化 す る 原 因 に な っ
て い る 。高 圧 ガ ス 保 安 協 会( KHK)に よ る 高 圧 ガ ス 設 備 事 故 統 計 に お い て も 設 備 の 材 料 劣
化と腐食による事故原因がその主要部分を占めており、その増加傾向が阻止できていない
こ と は そ の 証 左 で あ る 。CUI は 保 温 材 に よ る 遮 蔽 の た め 配 管 の 外 面 目 視 検 査 が 困 難 で あ り
対策は容易ではなく、その対象はプラント内すべての保温配管が該当し、高圧ガス設備に
限 ら ず 対 応 が 求 め ら れ る 。こ の よ う な 背 景 か ら 、わ が 国 独 自 の 実 情 を 踏 ま え た CUI 対 策 の
確立が強く望まれている。
わ が 国 の CUI 対 策 は 、 1988 年 に 高 圧 ガ ス 保 安 協 会 に よ る 外 面 腐 食 に 関 す る 報 告 書 が 出
さ れ た 時 期 に 始 ま る 。 2002 年 に は 石 油 学 会 規 格 配 管 維 持 規 格 ( 8S-1) の 一 部 に 外 面 腐 食
と し て CUI 対 策 が 加 え ら れ て い る が 、管 理 の 基 本 は 各 企 業 に お け る 個 別 の 経 験 や 実 績 に 依
存し、保温材の全面剥離検査以外には目視検査に基づいた外装板上の異常抽出が中心を占
めているのが維持管理対策の現状である。
一 方 、 米 国 お よ び 欧 州 の 現 状 は わ が 国 よ り 10 年 程 度 以 上 先 行 し 、 1980 年 代 か ら CUI
問題が顕在化し、メジャーを中心にそれぞれ独自の管理がなされているが、その管理の基
盤 と な る の は API、NACE、EFC 等 の 機 関 が す で に 策 定 し て い る 参 照 基 準 あ る い は ガ イ ド
ラインが用いられており、且つ定期的に改定され維持管理ができる体制が敷かれている。
NACE、 EFC に 代 表 さ れ る CUI 管 理 方 式 は
① 耐 熱 塗 装 や ア ル ミ 溶 射 に よ る 防 食 対 策 ・保 温 材 改 善 ・ジ ャ ケ ッ ト 改 善 の 3 つ の 対 策 で メ
ン テ ナ ン ス ・イ ン ス ペ ク シ ョ ン フ リ ー を 目 指 し 検 査 に 極 力 依 存 し な い 管 理 方 式 を 志 向
② 綿 密 な RBM と 腐 食 ( 劣 化 ) 予 測 算 定 モ ジ ュ ー ル 、 非 破 壊 検 査 の 活 用
③ 防食対策と検査を、事業者独自の対策チームにより進める総合マネージメント重視型
などであり、これらの方式はわが国にとって必ずしもそのまま適用できるものではなく、
必要に応じて参考すべきものと考えられる。
さ ら に ア ジ ア 地 域 の 韓 国 、 台 湾 、 シ ン ガ ポ ー ル で は 、 CUI が 今 、 大 き な 問 題 と し て 顕 在
化し始めており、そのなかで各社の現状は、独自の被覆配管下腐食にかかわる維持管理方
法 を 模 索 し て い る も の の API 規 格 等 に 基 づ い た 企 業 ご と の 管 理 が 中 心 で あ る 。
以 上 に 示 す よ う に CUI の 維 持 管 理 対 策 は 国 に よ り 状 況 は 異 な る も の の 先 行 し て い る 欧
米でも依然として未解決であり、その対策に苦慮しており、世界的課題であることが判明
している。
-1-
1.2
ガイドラインの提 案
膨大な対象量を有する保温配管に対して対象を絞り込み、保温材を剥離して検査を行な
う 手 順 は 基 本 的 に は 各 企 業 に お い て 基 準 化 さ れ 、逐 次 改 善 さ れ て き て い る が 、CUI 損 傷 部
の十分な検出率が得られているとはいいがたく、事業者、事業所によっても差が生じてお
り、最優先とされていない配管の中から漏洩トラブルが生ずるなどの課題を有していると
整理された。
このため
① 優先順位の選定方法を明確にし、整理すること。
② 優先順位評価の精度向上を図るため「腐食メカニズム」を重視して腐食予測の精度を
向上すること。
③ 保温材を剥がす決断のために、経験則や目視点検のみに頼らない判断ツールを強化す
ること。そのためにスクリーニング検査の考え方を導入し、そのなかで目視検査、非破壊
検査を適切に活用して保温材剥離箇所を特定する判断の精度を高めること。
の3点が最大の改善着眼点であると考えられた。
こ れ ら の 改 善 を 規 制 で は な く 、民 間 の 自 主 的 な 管 理 指 針 と し て 役 立 つ よ う な 参 照 基 準 を ガ
イドラインとしてまとめることとした。
1.3
ガイドラインの考 え方
本ガイドラインは配管維持管理で取り扱う外面腐食の中で、もっとも管理の困難な保温
材 被 覆 配 管 の CUI に つ い て 特 化 し た 管 理 指 針 で あ る 。 本 ガ イ ド ラ イ ン の CUI 管 理 の 最 重
要ポイントは先ず①管理マネージメントとして経営者を含めた組織の分担、役割の明確化
と教育訓練体制を重視する、次に具体策として②保温材剥離箇所の優先順位設定と特定に
至る手順(フロー)の基本的な流れの改善においている。
これらのポイントは基準化や規制に必ずしもなじまぬものが多く含まれ、むしろ詳細な
検 査 方 法 ・判 定 方 法 に つ い て は 各 社 が 長 年 培 っ て き た 経 験 や 知 見 、実 績 が 重 要 で あ る こ と か
ら民間の自主管理指針として必要な改定や維持管理が出来やすいようにガイドラインの形
式とした。
管理マネージメントは海外の管理方法や事故調査等も踏まえており事故を未然に防止す
るために必要な管理マネージメントの重要性を強く認識した考え方が反映されている。
剥 離 箇 所 の 特 定 に 至 る 手 順( フ ロ ー )は 優 先 順 位 の 評 価 を ど の よ う に 行 う か (優 先 順 位 分
け )と 剥 離 す べ き 箇 所 を 効 率 的 に ど う や っ て 見 つ け る か (ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 )で あ り 、非 破
壊検査技術はスクリーニング検査中できちんと位置づけておくことが必要になる。これら
を新しいフローとして整理し維持管理向上に役立てるため、国内外の基準、ガイドライン
を参照しつつ、ガイドラインを作成したものである。
* 1 総 合 資 源 エ ネ ル ギ ー 調 査 会 の 高 圧 ガ ス 部 会 ・ガ ス 安 全 小 委 員 会 ・液 化 石 油 ガ ス 部 会 の 共
同ワーキンググループ平成21年3月の報告書「事故の削減に向けたより実効的な対応策
のあり方」
-2-
解説2 CUIの発生メカニズムと腐食評価
2.1
CUI の概 要
1)
腐食反応と腐食要因
(1)
腐食反応
CUI は 大 気 腐 食 の 一 種 と 考 え ら れ る 。外 部 か ら 浸 入 し た 雨 水 ま た は 保 温 材 内 部 で 凝 縮
した水分が配管表面に形成する水膜を通じて鋼材の表面に腐食電池と呼ばれる電池が形
成し、直流の電流が流れる現象(電気化学反応)である。
カ ソ ー ド で は 還 元 反 応( 主 に 水 に 溶 け 込 ん だ 酸 素 の 還 元 )、ア ノ ー ド で は 酸 化 反 応( 主
に鉄の溶解)が起こる。そしてカソードとアノード反応が対になって進行することが特
徴である。
(2) 腐 食 要 因
屋外大気中の炭素鋼の全面腐食と異なり、腐食侵食を局所化し、腐食速度を大きく、
しかもばらつかせている原因としては、
① 配管表面に形成する水膜の厚み、
② 水膜中に溶解する不純物、
③ 保 温 材 ・外 装 板 の 存 在 、
④ 運 転 温 度 が 常 温 か ら 175℃ と 広 範 囲 で 高 温 に な る こ と 、
⑤ 腐 食 に よ り 形 成 し た 黒 色 の 腐 食 生 成 物 、 主 に マ グ ネ タ イ ト ( Fe 3 O 4 ) に よ る 腐 食 の
加速効果、
の 5 点があげられる。
2)
腐食進展の特徴
(1)
湿潤状態の長さ
大気腐食では、雨、霧、結露による表面の湿潤状態も日が当たる日中には乾燥状態に
戻 る こ と が 多 く 、湿 潤 状 態 が 長 く 継 続 す る こ と は 少 な い 。こ れ に 比 べ て 、CUI で は 保 温
材により鋼表面の湿潤状態がはるかに長く継続する。
(2)
腐食生成物の種類
① 大 気 腐 食 で は 炭 素 鋼 の 腐 食 生 成 物 と し て オ キ シ 水 酸 化 鉄 (-FeOOH, -FeOOH,
-FeOOH な ど )が 主 成 分 と し て 生 成 し 、 マ グ ネ タ イ ト の 生 成 す る 割 合 は 低 く な る
② CUI で は 乾 燥 に よ る 酸 化 が 不 十 分 に な る と と も に 、長 い 湿 潤 状 態 で オ キ シ 水 酸 化
鉄の還元が起こりやすく、生成するマグネタイトの割合が高くなる。
③ 生成したマグネタイトは電気伝導度が金属なみに高く、電極活性が他の腐食生成
物や炭素鋼よりも高く、カソード反応を促進し、炭素鋼のアノード溶解を加速する。
④ さらにマグネタイトを生成するとともに腐食の局所化を推進し、大きな腐食損傷
をもたらすものと考えられる。
2.2 CUI の発 生 要 因
1 ) 水 (水 膜 の 形 成 )
CUI は 配 管 表 面 と 保 温 材 の 界 面 に 形 成 し た 水 膜 を 介 し て 、電 気 化 学 的 に 発 生 し ,進 行 す
る。
-3-
水の供給源としては、
① 降雨や冷却水の飛沫など外部から浸入する雨水
② 温度差による結露
③ 保温材と鋼表面間の微細なすきまでの毛管凝縮による水分の結露
④ 海塩粒子および保温材などからの溶出不純物イオンの化学凝縮(潮解)による水
分の結露
がある。
②~④は大気中の水分の凝縮により配管表面に水膜が形成するプロセスで、大気中の
相対湿度が重要となる。
① 結露は朝昼の温度差や温度が高い主配管表面とそれより温度が低い枝管、ノズル
な ど と の 温 度 差 な ど に よ り 相 対 湿 度 が 100%を 超 え た と き に 起 こ る 水 膜 形 成 プ ロ セ
スである。
② 毛管凝縮は保温材と鋼表面間の微細なすきまに水分が凝縮する水膜形成プロセス
で、
③ 潮解は海塩粒子および保温材などから溶出する不純物により生じる化学凝縮に基
づく水膜形成プロセスである。
④ こ こ で 毛 管 凝 縮 と 潮 解 は 相 対 湿 度 が 100%以 下 で も 起 こ る 。
2)
水膜の厚み
鋼表面に形成した水膜の厚みは電気化学反応を起こし、進行させるための最も重要な
要 因 で あ る 。 図 2.2-1 は 水 膜 厚 み と 腐 食 速 度 の 関 係 を 表 す 模 式 図 で あ る 。
① 領域 I は乾き大気腐食に相当し、乾燥した室温大気中での極めて薄い酸化膜生成
状況に対応する。
② 領 域 Ⅱ は 湿 り 大 気 腐 食 に 相 当 す る 。水 膜 厚 み の 増 加 と と も に 腐 食 速 度 は 上 昇 す る 。
こ こ で 水 膜 は 腐 食 の 電 気 化 学 反 応 を 維 持 す る た め の 媒 体( 酸 素 、鉄 イ オ ン な ど を 溶 解
す る )と し て 作 用 す る が 、電 気 化 学 反 応 を 継 続 し て 腐 食 を 進 展 さ せ る に は ま だ 量 的 に
不十分である。
③ さらに水膜が厚くなる領域Ⅲは湿潤大気腐食条件に相当する。この領域では水膜
は電気化学反応を維持するには十分な量となる。
④ より水膜が厚くなる領域Ⅳでは水中の腐食と同様な状況になる。
⑤ こ こ で 約 0.1 mm 程 度 の 水 膜 厚 み で 、 腐 食 速 度 に ピ ー ク が 生 じ る こ と が 大 気 腐 食
の特徴である。
⑥ 水膜は薄いほど、鋼表面への酸素の供給速度は大きい。しかし領域Ⅱのように水
膜 が 1 m 以 下 と 薄 い と 、電 気 化 学 反 応 を 長 期 的 に 維 持 す る に は 水 膜 量 が 不 十 分 で あ
る。
⑦ 一 方 水 膜 厚 み が 1 mm 以 上 と な る 領 域 Ⅳ で は 、 水 膜 量 は 十 分 で あ る も の の 、 酸 素
の 供 給 速 度 が 小 さ く な る た め 腐 食 速 度 は 約 0.1 mm/y 以 下 に 低 下 す る 。水 中 で の 腐 食
と同等の領域であり、雨水がたまり、常にぬれた状態の腐食に相当する。
⑧ したがって溶存酸素の供給速度と水膜量がバランスよい水膜厚みのところで腐食
速度のピークが生じる。
⑨ ピ ー ク が 現 れ る 水 膜 の 厚 み に つ い て は 、 最 近 の 報 告 で は 炭 素 鋼 に お い て は 10~50
-4-
m で あ る こ と が 示 さ れ て い る 。
図 2.2-1 表 面 湿 潤 状 態 の変 化 と腐 食 速 度 の関 係 模 式 図
出 典 : N. D. Tomashov, Corrosion, 20, 7t (1964).
2.3
1)
CUI の加 速 要 因
水 膜 中 の 不 純 物 ( 主 に 海 塩 粒 子 ・塩 化 物 )
水膜中に溶解する不純物は、
① 大 気 中 の 汚 染 物 質 ( 主 に SO 2 ガ ス 、 海 塩 粒 子 、 エ ア ロ ゾ ル 粒 子 な ど )、
② 保 温 材 等 の 配 管 被 覆 材 か ら 溶 出 す る 不 純 物 ( 主 に 塩 化 物 、 硫 酸 塩 な ど )、
である。
これらは水溶性かつ吸湿性で、鋼表面に付着し結露を起こす相対湿度を低下させ、水膜
の形成を促進する。そして電気化学反応の媒体である水膜の電気伝導度を上昇させる。
① 海 塩 粒 子 ・塩 化 物 は 形 成 す る 腐 食 生 成 物 の 組 成 、 構 造 、 形 態 に 強 く 影 響 し ,そ の 後
の腐食進行速度を左右する。
② SO 2 ガ ス は 水 膜 を 酸 性 化 し 、カ ソ ー ド 反 応 と し て 水 素 イ オ ン の 還 元 反 応 を 起 こ し 、
腐食を加速する効果がある。
し か し 最 近 の 日 本 で は 、SO 2 発 生 源 が 近 接 し な い 限 り 、大 気 中 の SO 2 濃 度 は 非 常 に 低 く 、
大気中の腐食としては海塩粒子がもっとも問題とされている。
し た が っ て CUI で の 注 目 す べ き 因 子 と し て は 海 塩 粒 子 ・塩 化 物 の 鋼 表 面 付 着 量 と い う こ
とになる。鋼表面に付着した海塩粒子は潮解による水膜形成を促進するとともに、水膜
中に溶け込み腐食反応を促進する。
海 塩 粒 子 ・塩 化 物 は 水 膜 下 で 腐 食 に よ り 溶 出 し た Fe 2+ の Fe 3+ へ の 酸 化 を 助 長 す る と と も
に Fe 3+ を 加 水 分 解 し 、 pH を 低 下 さ せ H + の 還 元 (カ ソ ー ド 反 応 ) に よ り 腐 食 を 加 速 す る ) 。
さ ら に 後 述 す る 熱 力 学 的 に 不 安 定 で 、 マ グ ネ タ イ ト に 還 元 さ れ や す い ,腐 食 に 対 し て 保 護
性 の 低 い オ キ シ 水 酸 化 鉄 、 -FeOOH の 生 成 を 促 進 す る 。
別途実施した模擬試験体による調査結果では多量の塩化物付着により、腐食が局部侵食
形態になり、大きな腐食速度が得られている。マグネタイトを含む黒色の腐食生成物が
密着した箇所が侵食することから、マグネタイトの腐食促進効果が示唆される。
-5-
2 ) 保 温 材 ・外 装 板
(1)
保 温 材 ・外 装 板 (主 に 保 温 材 )の 特 徴
① 鋼表面との間にすきまを形成し、毛管凝縮を促進し鋼表面に水膜を形成する。
② そ れ 自 身 が 水 分 の 吸 収 ・保 持 を し や す く 、表 面 を 長 い 間 湿 潤 状 態 に 維 持 し 、黒 色 腐
食 生 成 物 (主 に マ グ ネ タ イ ト Fe 3 O 4 )の 生 成 に 適 し た 環 境 を 提 供 す る 。
③ 水膜に溶出し、腐食速度の増大に寄与する不純物イオン(塩化物、硫酸塩など)
を含有する。
④ 飛 来 し た 大 気 中 の 汚 染 物 質( 主 に SO 2 ガ ス 、海 塩 粒 子 、エ ア ロ ゾ ル 粒 子 な ど )を
蓄積する。
⑤ 保温材はさび層への酸素の供給を不十分にして、腐食に対して保護性が優れた安
定 し た 緻 密 な さ び 層 の 形 成 を 妨 げ 、 Fe 3 O 4 に 変 化 し や す い さ び 層 の 形 成 を 助 長 す る 。
⑥ 外装板が保温材を配管に押し付けているため、鋼表面に生成したさび層が体積膨
張や乾燥により容易に剥離することが少なく、腐食の加速は継続しやすい。
(2)
保 温 材 の CUI へ の 寄 与
① 1 日 オ ー ダ ー の 比 較 的 時 間 が 短 い 乾 燥 - 湿 潤 サ イ ク ル が あ る 大 気 腐 食 と CUI の 基
本 的 違 い は 保 温 材 ・板 金 の 存 在 に よ り 湿 潤 状 態 が 非 常 に 長 く な る こ と で あ る 。
② 大 気 腐 食 で は 、こ の 乾 燥 - 湿 潤 サ イ ク ル が ほ ぼ 1 日 ご と に 電 気 化 学 反 応 を リ セ ッ
トすることにより、腐食箇所の固定化を防ぎ、全面的に均一な腐食侵食を生じる。
③ CUI で は 、乾 燥 状 態 と な る 頻 度 が 小 さ く 、湿 潤 状 態 が 長 く 保 持 さ れ 、腐 食 箇 所 が
固定化し、局所的な侵食となりやすい。
3) 運転温度
腐食にとっては運転温度(内部流体の温度)よりも配管表面の温度がより重要である。
① 高い運転温度は腐食反応を加速する。しかし高温になるに伴い水膜の酸素溶解度
が低下するために、その効果は単調な増加とはならない。
② このため大気開放系の水中での腐食速度は室温から温度の上昇とともに増加し
80℃ で 腐 食 速 度 の 極 大 を 示 す 。 そ し て 、 そ れ 以 上 の 温 度 で は 腐 食 速 度 は 減 少 す る 。
③ 水 中 と 水 膜 の 違 い は あ る も の の 、CUI も 酸 素 の 供 給 が 基 本 的 腐 食 プ ロ セ ス で あ る
から、温度に対しては水中と類似した挙動を示す。
④ し か し 高 温 ほ ど 水 膜 の 蒸 発 が 早 く な り 、腐 食 が 進 展 す る 湿 潤 状 態 が 短 く な る の で 、
温度の腐食速度への影響は水中に比べて複雑となる。
⑤ 配 管 表 面 で 100℃ 以 上 の 高 温 が 継 続 す る と 、 配 管 表 面 で は 水 膜 が 維 持 で き ず 上 記
のメカニズムの腐食は起こり得ない。
⑥ し か し 本 管 の 運 転 温 度 が 100℃ 以 上 で も 、 ノ ズ ル 、 バ ル ブ な ど の 付 属 品 、 そ し て
枝 管 の 長 さ ま た は 高 さ 方 向 に は 温 度 分 布 が 生 じ る 。そ し て 配 管 表 面 の 温 度 が 100℃ 以
下の部分では、結露が生じ腐食は起こり得る。
⑦ また運転休止期間に常温となれば、常温配管と同様に水膜による腐食は起こり得
る。
⑧ 高い運転温度はコーティング、シーラントの劣化を早め、保温材中への雨水の浸
入を容易にし、配管表面に湿潤状態をもたらす。
-6-
4) 黒色腐食生成物
(1)
腐食生成物の特徴
長 い 湿 潤 状 態 で 生 成 し た 黒 色 腐 食 生 成 物 ( 主 に マ グ ネ タ イ ト Fe 3 O 4 ) は 、
① 電気伝導度が金属並みに高い。
② 電極活性が他の腐食生成物や炭素鋼よりも高く、電気化学反応を促進し、直下お
よび近傍の炭素鋼の腐食を加速する。
③ そしてさらに黒色腐食生成物を生成するとともに腐食の局所化を推進し、さらに
大きな腐食損傷をもたらす。
(2)
腐 食 生 成 物 の CUI へ の 寄 与
大気腐食が通常さび層の形成により、経年とともに腐食速度が低下するのに対し、
CUI で は 腐 食 速 度 が 低 下 せ ず 、却 っ て 経 年 と と も に 腐 食 速 度 が 増 大 す る ケ ー ス は 黒 色 腐
食生成物が原因であることを示唆する。
そ し て 腐 食 形 態 は 大 気 腐 食 が 全 面 的 な 侵 食 に 至 る の に 対 し 、 CUI で は 黒 色 腐 食 生 成
物 が 下 地 の 炭 素 鋼 と 電 気 的 接 続 を 維 持 し 、腐 食 生 成 物 直 下 ま た は 近 傍 部 で 侵 食 を 継 続 し 、
局所的侵食をもたらす。
2.4
CUIの発 生 メカニズム
1 ) CUI の 基 本 的 プ ロ セ ス
現 時 点 で 想 定 し う る CUI の 発 生 プ ロ セ ス を 腐 食 要 因 並 び に 支 配 的 な カ ソ ー ド 反 応 (図
中 の C1~ C4)と 対 応 さ せ て 図 2.4-1 に 示 す 。
(1)
基本的なカソード反応
こ こ で 最 初 に あ げ る 腐 食 要 因 の 酸 素 、水 膜 は い ず れ も 通 常 の 大 気 腐 食 に お け る 基 本 的
腐 食 要 因 で あ り 、配 管 表 面 で (1)式 に 示 す カ ソ ー ド 反 応 、酸 素 の 還 元 <C1>と (2)式 に 示 す
ア ノ ー ド 反 応 、 Fe の 酸 化 を 起 こ し 、 腐 食 生 成 物 と し て (3)式 に 示 す よ う に 、 水 酸 化 第 一
鉄を形成する。
1/2O 2 + H 2 O + 2e -
Fe → Fe
2+
+ 2e
→ 2OH -
(1)
(2)
-
Fe+ 1/2O 2 + H 2 O
→
Fe(OH)
(3)
2
生 成 し た Fe(OH) 2 は 水 膜 中 の O 2 に よ り 酸 化 し 、 オ キ シ 水 酸 化 鉄 ( FeOOH) を 形 成
する。
Fe(OH) 2 + 1/4O 2
→
FeOOH + 1/2H 2 O
(4)
す な わ ち (5)式 に 示 す よ う に 、配 管 の 炭 素 鋼 か ら 溶 解 し た Fe が 水 膜 を 介 し て 溶 存 酸 素
と反応し、オキシ水酸化鉄をさび層として形成する。
4 Fe(炭 素 鋼 )+ 3O 2 (溶 存 酸 素 ) + 3H 2 O(水 膜 )
(2)
→
4FeOOH(さ び 層 )
(5)
酸性水膜でのカソード反応
塩 化 物 は 多 量 に 存 在 す る 場 合 、(2)式 の 酸 化 を 促 進 す る と と も に 、加 水 分 解 に よ り H +
を 生 成 し 、 水 膜 の pH を 低 下 さ せ 、 ア ノ ー ド で の Fe の 酸 化 を 促 進 す る (6)式 で 示 す 水 素
イ オ ン 還 元 の カ ソ ー ド 反 応 <C2>を 引 き 起 こ す こ と が あ る 。
2H + + 2e - → H 2
(6)
-7-
2) マグネタイトの生成プロセス
(1)
湿潤状態でのカソード反応
オ キ シ 水 酸 化 鉄 の 一 部 は 乾 燥 し て 脱 水 す る と 、Fe 2 O 3 タ イ プ の 酸 化 鉄 を 形 成 し 、ま た
湿 潤 状 態 で は (8)式 に 示 す よ う に Fe 3 O 4 に 還 元 さ れ る 。こ れ が カ ソ ー ド 反 応 <C3>で あ る 。
2FeOOH
→
3FeOOH+ 2e
-
Fe 2 O 3 + H 2 O
(7)
+ H 2+
(8)
→
Fe 3 O 4 + 2H 2 O
(2) オ キ シ 水 酸 化 鉄 の 特 性
生 成 す る オ キ シ 水 酸 化 鉄 に は 非 晶 質 お よ び 3 種 類 の 主 要 な 結 晶 質 多 形( )が 存
在する。
① -FeOOH は 緻 密 な さ び 層 を 形 成 し 、 熱 力 学 的 に 安 定 で 湿 潤 状 態 で も 還 元 さ れ に
く い 。そ し て そ れ 以 後 の 腐 食 に 対 し 非 常 に 保 護 性 の 高 い さ び 層 と な り 、腐 食 の 進 行 を
抑制する。
② -FeOOH は 、-FeOOH ほ ど 緻 密 で な く 熱 力 学 的 に 不 安 定 で 、マ グ ネ タ イ ト に 還
元されやすい。
③ -FeOOH は 海 塩 粒 子 が 多 く 存 在 す る 臨 海 地 域 で 形 成 し 、 多 孔 性 で 非 常 に 還 元 さ
れやすい。
④ こ れ ら さ び 層 の 還 元 は カ ソ ー ド 反 応 <C3>で あ り 、ア ノ ー ド 反 応 で あ る 鉄 の 酸 化 を
促進する。
図 2.4-1 想 定 される CUI の発 生 プロセス
-8-
3) マグネタイトによる腐食加速
(1)
腐食加速メカニズム
CUI の 特 殊 性 は 、 湿 潤 状 態 で 形 成 し た 腐 食 生 成 物 の マ グ ネ タ イ ト Fe 3 O 4 に あ る と 考
え ら れ る 。 す な わ ち 、 Fe 3 O 4 は 電 気 伝 導 性 が 高 い こ と に 加 え 、 カ ソ ー ド 反 応 に 高 い 電 極
活 性 を 示 す 。 (2)式 で 示 し た ア ノ ー ド で の Fe の 溶 解 で 発 生 し た e - は Fe 3 O 4 内 を 迅 速 に 移
動 し カ ソ ー ド (Fe 3 O 4 )上 で の 水 素 発 生 反 応 、 (9)式 ま た は 酸 素 還 元 反 応 、 (10) 式 で 消 費
さ れ 、 腐 食 を 加 速 す る 。 こ れ が カ ソ ー ド 反 応 <C4>で あ る 。
2H + + 2e - (Fe 3 O 4 )→ H 2
(9)
1/2O 2 + H 2 O + 2e - (Fe 3 O 4 ) → 2OH -
(10)
な お Fe 3 O 4 は さ び 層 と し て 形 成 し た オ キ シ 水 酸 化 鉄 が 還 元 さ れ て 生 じ 、 さ び 層 の 還
元 自 体 も カ ソ ー ド 反 応 <C3>と し て 腐 食 進 展 に 寄 与 す る 。
(2)
大気腐食との違い
大 気 腐 食 で は 、 腐 食 生 成 物 Fe 3 O 4 が 腐 食 の さ ら な る 進 展 を も た ら す こ と は 知 ら れ て
い な い が 、 塗 装 鋼 板 の 劣 化 を 促 進 す る こ と が 、 ま た 地 中 で の 腐 食 で は 腐 食 生 成 物 Fe 3 O 4
が腐食を加速する可能性があることが指摘されている。
腐食生成物が腐食を加速する効果を示すことは、極めて問題である。なぜならば腐食
生成物により腐食が加速されると、より多くの腐食生成物が生成し、さらに腐食速度を
増大させるからである。
2.5
CUIの腐 食 評 価
1) 大気腐食の進展
(1)
大気腐食初期速度
CUI は 水 膜 を 介 し て の 大 気 中 の 酸 素 の 鋼 表 面 へ の 供 給 が 基 本 的 に 腐 食 プ ロ セ ス を 支
配するという点で、大気腐食と類似している。しかし日本国内での大気暴露試験結果で
は 、 石 油 精 製 ・石 油 化 学 プ ラ ン ト が 存 在 す る 地 域 で は 暴 露 1 年 目 の 腐 食 速 度 は 0.05
mm/year 以 下 で あ る
(2)
17 )
。
大気腐食の速度式
一般に大気腐食は腐食の進行とともに、表面に形成するさび層が厚くなるため、水膜
を通しての酸素の鋼表面への供給が阻害される、いわゆるさび層の環境遮断能力(保護
性)により腐食速度が低下する。
炭 素 鋼 の 長 期 的 な 腐 食 予 測 に は 、 そ の デ ー タ を (11)式 の よ う な 腐 食 の 速 度 式 に 当 て は
めて検討する必要がある。
r = atn
(11)
こ こ で r は t 年 後 の 腐 食 量 、 a は 暴 露 1 年 目 の 腐 食 速 度 、 t は 時 間 (年 )、 n は 表 面 に 形 成
し た さ び 層 の 保 護 性 に 依 存 す る 定 数 で 、 炭 素 鋼 の 大 気 腐 食 で は 通 常 n =0.523~0.575 が
用いられ、放物線則に近い速度式となる。
2) CUI の 進 展
(1)
CUI 初 期 速 度
CUI で は 使 用 初 期 は 板 金 、 塗 装 な ど の 効 果 に よ り 、 腐 食 は ほ と ん ど 進 ま な い 。 そ し
て経年や間欠運転に伴い水分が凝縮、雨水が浸入し、水膜が鋼表面に形成するようにな
-9-
ると腐食が発生する。
(2)
CUI 速 度 式
前 述 し た メ カ ニ ズ ム か ら 推 測 で き る よ う に 、腐 食 生 成 物 が 腐 食 を 加 速 す る た め 、大 気
腐 食 の よ う に 腐 食 の 進 行 と と も に 腐 食 速 度 が 低 下 し な い ,す な わ ち (11)式 の n が n =1 で 与
えられる、年数に比例して腐食が進行する直線則の速度式、または多量に黒色腐食生成
物 が 生 成 す る と 、 n >1 の 指 数 則 的 な 速 度 式 で 与 え ら れ る 。
図 2.5-1 に 日 本 ウ ェ ザ リ ン グ テ ス タ セ ン タ ー ( JWTC) 銚 子 暴 露 試 験 場 で の 10 年 間
の 大 気 腐 食 デ ー タ に 対 比 さ せ て 、A 社 の CUI デ ー タ を 示 す 。CUI が 直 線 則 で 進 行 す る の
に 比 べ 、 大 気 腐 食 は 放 物 線 則 で 進 行 し 、 長 期 経 過 で は そ の 腐 食 速 度 は CUI の 1/10 以 下
となる。
3)
CUI の腐 食 形 態
大 気 腐 食 が 鋼 板 全 面 で ほ と ん ど 一 様 に 侵 食 す る 全 面 腐 食 で あ る こ と に 比 べ 、 CUI は 数
cm オ ー ダ ー の 大 き さ の 局 所 的 侵 食 に な る こ と が 特 徴 で あ る 。こ の 局 所 化 、腐 食 速 度 の 経
年 的 維 持 、 大 気 腐 食 よ り 大 き い 腐 食 速 度 に 、 保 温 材 ・板 金 の 存 在 と 黒 色 腐 食 生 成 物 マ グ ネ
タイトの形成および運転温度が寄与している。
CUI を 裸 の 配 管 の 大 気 腐 食 と 対 比 し て 、 そ の 特 徴 を 表 2.5-1 に ま と め る 。
図 2.5-1 CUIと大 気 腐 食 の腐 食 挙 動 の比 較
出 典 : 栗 原 朋 之 他 , 材 料 と 環 境 , 59, 291 (2010).
- 10 -
表 2.5-1 CUIの特 徴
4)
CUI
大気腐食
腐食形態
局所侵食
全面侵食
腐 食 速 度 (mm/year)
0.1~1.0
0.05 以 下
腐 食 速 度 のばらつき
大
小
腐食速度則
線 形 または指 数 則
放物線則
腐 食 生 成 物 の効 果
腐食促進
腐食抑制
CUI の腐 食 速 度
図 2.5-2 に NACE SP0198 に お け る CUI の 腐 食 速 度 の 測 定 点 を 温 度 に 対 し て プ ロ ッ ト
し た 結 果 を 示 す 。 SP で は 水 中 で の 鉄 の 腐 食 速 度 に 及 ぼ す 温 度 の 影 響 に 関 連 さ せ て CUI
が水中での鉄の腐食と同様に、水膜中に溶解し、鋼表面に到達する酸素によって支配さ
れているものと説明している。
こ の 図 中 に 国 内 で 公 開 さ れ て い る 塔 と 配 管 等 の CUI の 腐 食 速 度 デ ー タ ( A 社 ) と 日 本
国内の大気腐食速度の気温依存性、そして酸素の供給速度が腐食を支配していると仮定
し、酸素の水中での拡散速度の温度依存性から算出した腐食速度の限界値をプロットし
て 示 す 。ま た 国 内 の CUI 公 開 デ ー タ は 4 つ の 温 度 範 囲 に 分 け て 、腐 食 速 度 を 統 計 処 理 に よ
り算出したものである。
CUI の 腐 食 速 度 は 100℃ 以 下 の 温 度 に 腐 食 速 度 の ピ ー ク が 現 れ る こ と 、 ま た 酸 素 の 供
給速度に依存するものの腐食速度はそれより大きくなることが特徴的である。
図 2.5-2 CUIの腐 食 速 度 の運 転 温 度 依 存 性
出 典 : W. G. Ashbaugh, “ Process Industries Corrosion”
eds. B. J. Moniz, W. I. Pollock, NACE(1986), p. 761.
栗 原 朋 之 他 , 材 料 と 環 境 , 59, 291 (2010).
-11-
参考文献
1) 川 野 浩 二 , 第 53 回 材 料 と 環 境 討 論 会 予 稿 集 , p.151, (社 )腐 食 防 食 協 会 (2006).
2) 久 松 敬 弘 , 防 蝕 技 術 , 20, 207 (1971).
3) 三 沢 俊 平 , 防 食 技 術 , 32, 657 (1983).
4) 兒 島 洋 一 , 藪 内 透 、 辻 川 茂 男 , 材 料 と 環 境 ’98 講 演 集 , p.233, (社 )腐 食 防 食 協 会 (1998).
5) N. D. Tomashov, Corrosion, 20, 7t (1964).
6) 細 矢 雄 司 他 , 材 料 と 環 境 , 54, 391 (2005).
7) 小 玉 俊 明 , 材 料 と 環 境 , 49, 3 (2000).
8) Ph. Refait, J,-M. R. Genin, Corrosion Science, 34, 797 (1993).
9) 上 村 隆 之 他 , 材 料 と 環 境 2008, p.335, (社 )腐 食 防 食 協 会 (2008).
10) C. Remazeilles, Ph. Refait, Corrosion Science, 49, 844 (2007).
11) 平 成 22 年 度 ( 被 覆 配 管 等 の 運 転 中 検 査 技 術 に 関 す る 調 査 研 究 ) 報 告 書 , pp.66~ 128,
( 財 ) エ ン ジ ニ ア リ ン グ 振 興 協 会 ( 平 成 23 年 2 月 ).
12) 平 成 21 年 度 ( 被 覆 配 管 等 の 運 転 中 検 査 技 術 に 関 す る 調 査 研 究 ) 報 告 書 , pp.88~ 123,
( 財 ) エ ン ジ ニ ア リ ン グ 振 興 協 会 ( 平 成 22 年 3 月 ).
13) 平 成 20 年 度( 被 覆 配 管 等 の 運 転 中 検 査 技 術 に 関 す る 調 査 研 究 )報 告 書 , pp.100~ 127,
( 財 ) エ ン ジ ニ ア リ ン グ 振 興 協 会 ( 平 成 21 年 3 月 ).
14) F. N. Speller, “Corrosion, Causes and Prevention”, p.168 , McGraw-Hill, N. Y.
(1951).
15) C. D. Stockbridge, P. B. Sewell, M. Cohen, J. Electrochem. Soc., 108, 928 (1961).
16) 藤 田 栄 、 梶 山 浩 志 、 山 下 正 明 , 材 料 と 環 境 , 50, 124 (2001).
17) (財 )日 本 ウ ェ ザ リ ン グ テ ス ト セ ン タ ー 、「 新 発 電 シ ス テ ム の 関 連 要 素 機 器 の 耐 久 性 及 び
寿 命 予 測 の 標 準 化 に 関 す る 調 査 研 究 」、 平 成 17 年 度 ( 独 ) 新 エ ネ ル ギ ー ・産 業 技 術 総 合 開
発 機 構 委 託 成 果 報 告 書 (2006).
18) S. W. Dean, D. B. Riser, ” Outdoor Atmospheric Corrosion”, ASTM STP 1421, ed. H.
E. Townsend, p.3, ASTM International (2002).
19) ISO 9224, “Corrosion of metals and alloys – Corrosivity of atmospheres – Guiding
values for the corrosivity categories”, International Organization for Standardization
(1992).
20) (財 )日 本 ウ ェ ザ リ ン グ テ ス ト セ ン タ ー 、「 新 発 電 シ ス テ ム の 標 準 化 に 関 す る 調 査 研 究 」、
平 成 15 年 度 経 済 産 業 省 工 業 技 術 委 託 成 果 報 告 書 (2003).
21) 栗 原 朋 之 他 , 材 料 と 環 境 , 59, 291 (2010).
22) NACE SP0198-2010, “Control of Corrosion Under Thermal Insulation and
Fireproofing Materials –A Systems Approach”, NACE International (2010).
-12-
解説3
3.1
CUI の発生しやすい箇所と環境例
CUIの発 生 しやすい箇 所 と環 境
CUIの 検 査 に お い て 剥 離 箇 所 の 特 定 の た め に 行 な う 目 視 点 検 や ス ク リ ー ニ ン グ 検 査
における目視検査や非破壊検査を効率的に行なうためその箇所の選定が重要である。
こ の た め に CUIの 発 生 し や す い 箇 所 と 環 境 に つ い て 参 考 事 例 を 示 す 。CUIの 発 生 し や す
い 箇 所 は こ れ ま で の 多 く の 事 例 に 基 づ い て 国 内 外 の 参 照 基 準 ・ガ イ ド ラ イ ン ( JPI-8S-1
配 管 維 持 規 格 、 EFCガ イ ド ラ イ ン 、 NACE Standard等 ) に 記 述 さ れ て い る 。 発 生 箇 所 は
先ず次のように大別できる。
保 温 材 の不 連 続 部
水 の侵 入 し易 い箇 所
外 装 板 の劣 化 ・損 傷 箇 所
水滞留箇所
CUIの発 生 しやすい箇 所
保 温 材 中 に湿 気 を吸 収 蓄 積 する環 境
発 生 しやすい環 境
水 噴 霧 ・水 蒸 気 ・海 水 飛 沫 に曝 される環 境
図 3.1 CUIの発 生 しやすい箇 所 ・環 境
3.2
具体事例
具 体 的 な 箇 所 は 表 3.1-1 に 示 し 、 代 表 的 な 事 例 の 概 略 図 と 説 明 を 示 す 。
3.3
目 視 点 検 における異 常 判 定 例
目 視 点 検 に お け る 異 常 判 定 は 、 表 3.1-1を 基 に し て 表 3.1-2に 参 考 例 を 示 す 。 具 体 的
には各企業の事例、知見を入れて詳細に策定し、検査実務ならびに教育に活用して
いくことが必要である。
-13-
表 3.1-1 CUI 発 生 しやすい箇 所 ・環 境
分類
小分類
保温材及び外装材の貫通・切欠き部
保温材不連続部
・ベント、ドレン部(事例①)
・ハンガー保持部
・パイプシュー取付部
(事例②)
・トレース管貫通部
・ステージ(フロアー)貫通部(事例③)
・サポート取付部(事例④)
(事例⑤)
・圧力容器ノズル部
・取り出し計装配管(事例⑥)
・フランジ、付属品(事例⑦、⑧)
・鉛直配管末端部
・保温材連結部防食不良箇所(事例⑨)
保温材末端部
外装板の損傷
・外装材の変色(高温やけ)
・外装止めバンドのはずれ
・外装重ね合わせ部の外れ(事例⑩、⑪)
・はぜ掛け弛み部
外装板の劣化損傷箇所
外装板上の腐食等
・外装板のさび・腐食・穴
膨れ
・外装の膨れ部(腐食生成物が予想される)
継ぎ目充填材劣化
・塗材(マスチック)が劣化(亀裂、剥離、
防水性能劣化)
その他
・サポート部のカビやコケ
・不適切な設置による水はけ障害部
・垂直配管の保温材末端部
・立上がり配管のエルボ(事例⑫)
(事例⑬)
・長スパン水平配管ラインの下部
・内部流体温度-4~150℃程度で運転されて
いる配管
・使用中は内部流体温度150℃以上であるが
間欠運転される配管
浸入水が集中して滞留しやすい箇所
水滞留箇所
保温材中に湿気を吸収蓄積す 管理すべき運転温度範囲と運転条件
る環境
運転温度から温度降下がある配管系統部分
噴霧・水蒸気・海水飛沫飛散環 水噴霧やスチーム、海水飛沫に曝される可
境
能性のある配管
その他
具体的な箇所
・本管から分岐され150℃以下となる滞留部
及び部品(事例⑭)
・内部流体温度降下で露点となる枝管(事例⑮)
・火傷防止対策施工配管
・冷却塔付近配管
・スチームストラップ近傍配管
・スチームトレース配管保温材内部継手
・桟橋配管
・水滴の直下配管(事例⑯、⑰)
振動配管
・振動による外装板の損傷が早い箇所
常時結露する配管
・保冷配管
-14-
表 3.1-2 外 観 目 視 点 検 における異 常 判 定 例
分類
保温材不連続部
小分類
保温材及び外装材の貫通・切欠き部
保温材末端部
外装板の損傷
・さび汁がある
・異常な開口がある
・外装板が変形、腐食している
・外装材の変色(高温やけ)
・外装止めバンドのはずれ
・外装重ね合わせ部の外れ
・はぜ掛け弛みあり
・保温材が吸湿している
外装板の劣化損傷箇所
外装板上の腐食等
水滞留箇所
保温材中に湿気を吸収蓄積す
る環境
噴霧・水蒸気・海水飛沫飛散環
境
その他
目視点検異常例
・外装板のさび・腐食・穴あきあり
膨れ
・外装の膨れあり(腐食生成物が予想され
る)
継ぎ目充填材劣化
・塗材(マスチック)が劣化(亀裂、剥離、
防水性能劣化)
その他
・サポート部のカビやコケ
・不適切な部品設置による水はけ障害部
浸入水が集中して滞留しやすい箇所
運転温度から温度降下がある配管系統部分
水噴霧やスチーム、海水飛沫に曝される可
能性のある配管
振動配管
-15-
同時に外装板の劣化損傷がある(上記)場
合は重大
1) 保 温 材 の不 連 続 部
保温材の切欠き構造となる保温材の不連続部は、雨水等の侵入により保温材が吸湿し
湿潤環境を形成して配管外面腐食環境となるためにCUI発生箇所となる。代表的箇所
の事例を以下に提示する。
(1)
保 温 材 貫 通 ・切 欠 き部
事 例 ① ドレン、ベント配 管 の保 温 材 貫 通 部 のCUI
保 温 材 の 貫 通 ・切 欠 き 部 と し て 雨 水 の 侵 入 対 策 が 講 じ ら れ て い な い 個 所 や 、長 期 使 用
により当該個所のシール部が損傷してしまった箇所等では、侵入した雨水により湿潤
環 境 を 形 成 し て C U I 発 生 箇 所 と な る 。 図 3.2-1 は 「 ド レ ン 、 ベ ン ト 配 管 の 保 温 材 貫
通部のCUI」の発生箇所を示す。
図 3.2-1 ドレン、ベント配 管 の保 温 材 貫 通 部 のCUI
事例②
トレース配 管 等 の入 口 ・出 口 の保 温 材 切 欠 き部 のCUI
配管内部流体の加温用スチームトレース配管の入口部や出口部の保温材の切り欠き
部では、雨水侵入個所となって、保温材の湿潤環境を形成して、前記の場合と同様で
C U I 発 生 対 象 箇 所 に な る 。図 3.2-2 は「 ト レ ー ス 配 管 入 口 ・出 口 部 の 保 温 材 養 生 不 良
箇所のCUI」の発生箇所を示す。
-16-
図 3.2-2 トレース配 管 等 の入 口 ・出 口 部 の保 温 材 養 生 不 良 箇 所 のCUI
事 例 ③ フロアー貫 通 部 などの構 造 欠 陥 部 のCUI
フロアー貫通部などで、設置された保温配管で、貫通部の雨養生が不良な場合は、
構 造 欠 陥 部 か ら の 雨 水 な ど の 侵 入 に よ り 、 C U I が 発 生 す る 。 図 3.2-3 に 「 フ ロ ア ー
貫通部の雨養生不良状況によるCUI」の発生箇所を示す。
図 3.2-3 フロアー貫 通 部 の雨 養 生 不 良 状 況 によるCUI
事 例 ④ 保 温 配 管 サポート部 の保 温 材 切 欠 き部 のCUI
保 温 配 管 の サ ポ ー ト 部 外 装 板 と の 隙 間 な ど 、雨 養 生 不 良 部 の 保 温 材 切 欠 き 部 よ り 侵
入 す る 雨 水 に よ り C U I 発 生 箇 所 と な る 。図 3.2-4 は「 保 温 配 管 サ ポ ー ト 部 の 保 温 材
切欠き部のCUI」の発生箇所を示す。
-17-
図 3.2-4 保 温 配 管 サポート部 の保 温 材 切 欠 き部 のCUI
事 例 ⑤ 圧 力 容 器 ノズル部 の保 温 材 切 欠 き部 のCUI
圧力容器の出入り口ノズル配管や、ゲージ等配管の保温材の貫通切欠き部において
は 雨 水 の 侵 入 防 止 対 策 が 不 備 な 箇 所 に お い て 、 C U I 発 生 対 象 個 所 と な る 。 図 3.2-5
は「圧力容器ノズル部の保温材養生不良箇所のCUI」の発生箇所を示す。
( 保 温 材 取 り付 け構 造 A図 )
( 保 温 材 取 り付 け構 造 B図 )
図 3.2-5 圧 力 容 器 ノズル部 の保 温 材 養 生 不 良 箇 所 のCUI
事 例 ⑥ 温 度 計 や圧 力 計 の取 り出 し計 装 配 管 の保 温 材 切 欠 き部 のCUI
温度計や圧力計の取り出し計装配管の保温材貫通部は切欠き部があれば、前記の場
合 と 同 様 で C U I 発 生 対 象 箇 所 に な る 。 図 3.2-6 は「( 圧 力 計 )計 装 配 管 の 取 り 出 し 部
の保温材養生不良箇所のCUI」の発生箇所を示す。
-18-
( 保 温 材 取 り付 け構 造 A図 )
( 保 温 材 取 り付 け構 造 B図 )
図 3.2-6 計 装 配 管 の取 り出 し部 の保 温 材 養 生 不 良 箇 所 のCUI
(2) 保 温 材 末 端 部
事 例 ⑦ 保 温 材 末 端 部 フランジ・付 属 品
図 3.2-7 は 「 保 温 配 管 の 末 端 部 の C U I 」 が 発 生 す る 部 分 を 示 す も の で あ る 。 端 部
の 処 理 と し て キ ャ ッ プ で 保 温 材 を 被 覆 し た も の で 雨 養 生 の シ ー ル 不 良 箇 所 や 、フ ラ ン ジ
締 結 で フ ラ ン ジ 部 を 雨 養 生 し て い な い 場 合 な ど と 、そ の 構 造 も 色 々 と あ る が 、い ず れ も
外装板等の損傷が発生して雨水侵入し易い場所や雨水侵入防止処理していないものは
CUI発生箇所として対象となる。
( 保 温 材 取 り付 け構 造 A図 )
( 保 温 材 取 り付 け構 造 B図 )
図 3.2-7 保 温 配 管 末 端 部 のCUI
-19-
事 例 ⑧ フランジ締 結 部 の保 温 材 養 生 不 良 箇 所 のCUI
図 3.2-8 は 「 フ ラ ン ジ 締 結 部 の 保 温 養 生 不 良 箇 所 の C U I 」 で 、 当 該 個 所 は 配 管 連
結 部 と し て フ ラ ン ジ 接 続 箇 所 に 対 し て の 保 温 材 の 雨 養 生 効 果 が 不 十 分 な 箇 所 や 、雨 養 生
が無い場合では大気中の水分が凝縮する湿潤環境の影響も想定される相乗効果などで
起こるCUI発生箇所を示す。
図 3.2-8 フランジ締 結 部 の保 温 材 養 生 不 良 箇 所 のCUI
事 例 ⑨ 保 温 材 連 結 部 の防 食 不 良 箇 所 のCUI
防食対策で実施した防食テープなどによる雨水侵入防止対策の施工箇所が経年劣
化等でシール効果が無くなり、逆に浸透した水分が抜けきれずに湿潤環境を形成する
よ う に な っ た 箇 所 の 劣 化 に よ る C U I も 見 逃 せ な い 。 図 3.2-9 に 「 保 温 材 の 連 結 部 の
シール不良箇所のCUI」を示すが当該図は、シールのために施した防水対策が、劣
化等で雨水が侵入し、また逆に排水効果が悪いと言う観点から構造欠陥となり、CU
I発生箇所となる例を示す。
図 3.2-9 保 温 材 連 結 部 のシール不 良 箇 所 のCU I
-20-
2)
外 装 板 の劣 化 ・損 傷 箇 所
保 温 材 外 装 板 の 腐 食 ・劣 化 等 の 損 傷 に よ る 雨 水 等 の 侵 入 に よ り 保 温 材 部 分 が 湿 潤 環 境
になってCUI発生箇所となる。代表的な箇所の事例を以下に提示する。
事 例 ⑩ 保 温 配 管 外 装 板 の損 傷 によるCUI
保温材の切欠き構造箇所のCUIとして、最も典型的なCUI発生箇所は、保温材
外 装 板 損 傷( 捲 れ 、ズ レ 、破 損 、落 下 等 )に よ り 、雨 水 侵 入 箇 所 と な り 、保 温 材 が 湿 潤
環 境 に な っ て 配 管 に C U I が 発 生 す る 。 図 3.2-10 は 「 保 温 配 管 の 外 装 板 の 損 傷 に よ る
C U I 」を 示 す も の で 、保 温 材 の 長 期 使 用 に 伴 う 外 装 板 損 傷 に よ る 雨 水 侵 入 個 所 を 示 す 。
図 3.2-10 保 温 配 管 の外 装 板 の損 傷 によるCUI
事 例 ⑪ 配 管 エルボ背 側 の外 装 板 の損 傷 箇 所 部 のCUI
保温配管のエルボ部の背側がエビ構造外装版の場合は、外装板の長期使用によるず
れ や 損 傷 に よ り 、雨 水 侵 入 し 易 い 開 口 箇 所 を 形 成 す る 。当 該 箇 所 か ら 侵 入 し た 雨 水 に よ
り 配 管 の C U I が 発 生 す る 。 図 3.2-11 に 「 保 温 配 管 エ ル ボ 部 の 外 装 板 の 損 傷 に よ る C
UI」の発生箇所を示す。
図 3.2-11 配 管 エルボ背 側 の外 装 板 の損 傷 箇 所 部 のCUI
3) 水 の滞 留 箇 所
-21-
保 温 材 と 配 管 メ タ ル の 間 で 設 計 ・施 工 ・経 年 劣 化 等 の 不 具 合 個 所 か ら 発 生 す る 水 滞 留 箇
所等で湿潤環境を形成するCUI発生箇所である。この場合は保温材の損傷や劣化、ま
たは板金の繋ぎ部が雨水の侵入経路となり、雨水が貯まる箇所がいつまでも乾燥しきら
ずにCUI発生箇所となる場合で、代表個所の特徴を以下に提示する。
事 例 ⑫ 垂 直 保 温 配 管 の直 下 部 (エルボ部 )のCUI
垂直配管で保温板金の繋ぎ部から雨水が侵入して、立下り直下のエルボ部で水が貯
まり、いつまでも湿潤環境になったままでCUIが発生してしまう箇所を示す。図
3.2-12 は 、タ ワ ー な ど の 大 型 機 器 の オ ー バ ー ヘ ッ ド 配 管 を 示 す も の で 、ノ ズ ル 保 温 材 の
貫 通 部 な ど や 、板 金 の つ な ぎ 目 か ら 雨 水 が 侵 入 す る ケ ー ス で 、腐 食 箇 所 の 様 子 を 示 し た
ものである。
図 3.2-12 垂 直 保 温 配 管 直 下 部 のCUI
事 例 ⑬ 水 平 保 温 配 管 の垂 れ下 がり部 位 のCUI
図 3.2-13 は 主 に 施 工 時 の 不 具 合 で 、水 平 配 管 が 撓 ん で し ま っ た な ど の 不 良 施 工 の た
め に 、配 管 が 水 平 な 構 造 と な ら ず に 、保 温 板 金 の 繋 ぎ 部 か ら 雨 水 が 侵 入 し て 垂 れ 下 が り
中央部が湿潤環境になったCUIを示す。
図 3.2-13 水 平 配 管 垂 れ下 がり部 のCUI
-22-
4) 保 温 材 中 に湿 気 を吸 収 蓄 積 する環 境
保温材配管内部流体温度が温度降下等などの理由により、露点環境を形成するような
接続配管(枝管等)箇所では湿潤環境を形成してCUI発生箇所となる。代表的箇所事
例を以下に提示する。
事 例 ⑭ 露 点 以 下 になる分 岐 枝 管 等 のCUI
本配管から分岐して、配管の温度が露点以下になる流れの停留部や停止部、又は不
規 則 な 流 れ に よ る 配 管 、 も し く は 停 止 ・休 止 配 管 に 関 し て は C U I 発 生 の 対 象 箇 所 に な
る 恐 れ が あ る 。こ れ ら の 事 例 箇 所 で は 結 露 に よ り 発 生 し た 水 膜 や ,雨 水 の 侵 入 に よ り 湿
潤 環 境 を 形 成 し て C U I 発 生 箇 所 と な る 。 図 3.2-14 は 「 デ ッ ド 部 ( 使 用 停 止 ) 配 管 &
温度降下のある配管のCUI」の発生箇所を示す。
( 保 温 材 取 り付 け構 造 A図 )
( 保 温 材 取 り付 け構 造 B図 )
図 3.2-14 デッド部 (使 用 停 止 )配 管 &温 度 降 下 のある配 管 のCUI
事 例 ⑮ 枝 管 の取 り出 し部 のCUI
大気の水分が配管内部流体温度の降下する影響で露点環境になり、凝縮して湿潤環
境になる事例に関しては、該当箇所が多数考えられるが、ここでは代表的な2事例に
つ い て 示 す 。 図 3.2-15 は 「( 枝 管 等 の 接 続 配 管 ) 保 温 施 工 目 地 部 の C U I 」 の 発 生 箇
所を示すもので、保温配管に接続している枝管の取り出し部で、保温材の切れ目部に
内部流体温度からの温度勾配により、大気中の水分が凝縮した湿潤環境で発生するC
UIである。
図 3.2-15(枝 管 等 の接 続 配 管 )保 温 施 工 目 地 部 のCUI
-23-
5) 水 噴 霧 ・水 蒸 気 ・海 水 飛 沫 に曝 される環 境
保 温 被 覆 材 と 配 管 メ タ ル の 間 で 湿 潤 環 境 を 形 成 す る 部 位 は 同 様 で あ る が 、こ の 場 合 は
該 当 保 温 配 管 の 上 側 に 水 分 が 滴 り 落 ち る 構 造 に な っ て い て 、滴 り 落 ち た 水 分 が 保 温 材 の
損 傷 や 劣 化 か ら 板 金 の 繋 ぎ 部 な ど を 介 し て 保 温 材 の 中 に 浸 透 す る も の で 、水 分 は 雨 水 の
他に保冷配管の凝縮水や圧力容器の冷却用に用いた散水の漏水などがある。
事 例 ⑯、⑰水 滴 直 下 に位 置 する保 温 配 管
図 3.2-16 並 び に 、 図 3.2-17 は 「 水 滴 直 下 に 位 置 す る 保 温 配 管 の C U I 」 の 発 生 箇
所を示すが、フロアーの雨水抜き穴や、常時外表面が結露して水分が滴り落ちるよう
な結露配管直下に保温配管が位置した時のCUIの発生箇所を示したものである。
図 3.2-16 水 滴 直 下 に位 置 する保 温 配 管 のCUI(その1)
図 3.2-17 水 滴 直 下 に位 置 する保 温 配 管 のCUI(その2)
-24-
解説4 優先順位の選定とスクリーニング検査例
本 ガ イ ド ラ イ ン の 策 定 に 当 た り 、CUI 検 査 の た め の 基 本 手 順 の 実 証 試 験 を 石 油 精 製 プ ラ
ントにおいて行った。その際の配管サンプルをもとに、各事業所の実際の適用にあたって
の参考例として優先順位の選定とスクリーニング検査の実例を紹介する。
4.1 優 先 順 位 の選 定
1) 重 要 度 評 価
配 管 管 理 リ ス ト の 例 と 重 要 度 評 価 結 果 例 を 表 4.1-1 に 示 す 。
2) 腐 食 予 測
(1)
腐 食 要 因 データによる評 価
腐 食 要 因 デ ー タ に よ る 一 次 評 価 と 二 次 評 価 の 結 果 例 を 表 4.1-2 に 示 す 。
(a) 経 年 数 の リ セ ッ ト : 配 管 No.1,2,3 は 検 査 履 歴 と し て 1999 年 に 一 度 検 査 を 行 い 、
大 規 模 な 補 修 塗 装 、 保 温 材 ・外 装 材 の 更 新 を 行 っ て お り 、 十 分 な 補 修 が 施 さ れ て い る
こ と を 考 慮 し 、 経 過 年 数 は リ セ ッ ト し た 。 同 様 に No.15 配 管 に つ い て も リ セ ッ ト し
ている。
(b) 間 欠 運 転 と 表 面 温 度:配 管 No.1,2,3 は 間 欠 運 転 で あ る が ス チ ー ム ト レ ー ス が 常 時
運 転 さ れ 、配 管 表 面 温 度 が ほ ぼ 50℃ 以 上 と 常 に 乾 燥 状 態 で あ っ た こ と が 事 業 所 と し て
確 認 さ れ て い た こ と を 重 視 し 、評 価 を 連 続 運 転 並 み に し た 。こ の よ う な デ ー タ( 情 報 )
はきわめて重要な腐食予測関連データといえる。
(2)
目 視 点 検 による評 価
目 視 点 検 結 果 に よ る 腐 食 予 測 度 ラ ン ク 見 直 し 結 果 例 を 表 4.1-3 に 示 す 。
(3)
肉 厚 管 理 データによる余 裕 代 の評 価 と優 先 順 位 評 価
肉 厚 管 理 デ ー タ に よ る 評 価 見 直 し と 優 先 順 位 評 価 結 果 例 を 表 4.1-4 に 示 す 。
(a)
内 面 腐 食 の 考 慮 : No.4 配 管 は 後 述 す る 調 査 デ ー タ か ら 、 内 面 腐 食 の 可 能 性 か ら
評価を厳しくすべき点が考えられたが、それまでの評価の積み上げですでに評価ラン
クが高であったので、本事例については問題ないが、一般的な評価項目として考慮す
べき要因である。
(b)
本 事 例 の 優 先 順 位 選 定 結 果 で は 最 優 先 配 管 が 1 2 本 、優 先 配 管 が 6 本 、そ の 他 配
管が2本選定され、最優先配管比率が多いように見えるが、これは日常点検等で問題
が抽出されている配管を多く対象配管リストに含めたためと考えられる。
-25-
表 4.1-1 配 管 管 理 リストと重 要 度 評 価 結 果
配管材質
配管径
(B)
配管肉厚
(mm)
重要度
評価
SLOP
SGP
12
6.9
C
1974
C重油
SGP
10
6.6
C
CFO配管(受入)
1974
C重油
SGP
16
7.9
C
FCC
ADIP FEED配管
1972
ADIP(RICH)
STPG38
3
sch40(5.5mm)
B
5
RBZ
P402A/B パーマネントSTM配管
1997
ライトリフォーメート STPT370S
1
sch160(6.4mm)
A
6
RBZ
P404A/B パーマネントSTM配管
1997
ベンゼン
STPT370S
1
sch160(6.4mm)
A
7
薬品設備
原液NaOH受け入れ配管
1972
NaOH
SGP
3
4.2
B
8
薬品設備
純水注入配管
1972
純水
SGP
3
4.2
D
9
TOP/VAC
チャージ配管(P001A SUC')
1972
原油
STPG38
24
sch40(17.5mm)
B
10
TOP/VAC
薬注配管(P016 DEL')
1990
NaOH
STPG370S
1
sch80(4.5mm)
B
11
DDS
DDS-P R/D配管(FS231 DEL')
1980
重油
STPG38
6
sch40(7.1mm)
C
12
DDS
WWT STRIPPER BTM配管
1980
臭水
STPG38
4
sch40(6.0mm)
B
13
DDS
HGO STRIPPER O/H配管
2009
HGO
STPG370S
8
sch40(8.2mm)
A
14
OFF SITE
原油配管(013T SUC')
1972
原油
STPY41
30
7.9mm
B
15
OFF SITE
重油配管(217T SUC')
1972
重油
SGP
18
7.9mm
B
16
OFF SITE
HOT COND'回収配管
1972
温水
SGP
2
3.8mm
D
17
1BL
ボイラー給水配管(P001SUC)
1972
BFW
STPG38
6
sch40(7.1mm)
B
18
TOP/VAC
No.1 S/R
1972
NAPHTHA
STPG38
6
sch40(7.1mm)
A
19
D-HDS
FEED配管(P001 SUC')
1972
灯油
STPG38
6
sch40(7.1mm)
A
20
D-HDS
C002 SUC'配管
1972
OFF GAS
STPG38
6
sch40(7.1mm)
A
配管No.
装置
配管名
設置年 内部流体名
1
OFF SITE
SLOP配管
1972
2
OFF SITE
パージ配管
3
OFF SITE
4
-26-
表 4.1-2 腐 食 要 因 データによる腐 食 予 測 (一 次 評 価 、二 次 評 価 )
腐食要因データ
配管No.
装置
配管名
設置年
内部流体
配管径
配管材質
名
(B)
配管肉厚
(mm)
重要度
評価
検査履歴
①経過年数
(年)
一次
評価
②運転温度
③運転条件 ④防食仕様 (点)
(℃)
1
OFF SITE SLOP配管
1972
SLOP
SGP
12
6.9
C
1998年検査
13
(リセット)
60
2
OFF SITE パージ配管
1974
C重油
SGP
10
6.6
C
1998年検査
13
(リセット)
60
3
OFF SITE CFO配管(受入)
1974
C重油
SGP
16
7.9
C
1998年検査
13
(リセット)
60
間欠
(スチームトレース
常時ON)
間欠
(スチームトレース
常時ON)
間欠
(スチームトレース
常時ON)
腐食要因
データ
⑤大気環境
二次
評価
(点)
一次+
二次
合計評価
(点)
腐食要因
データによる
腐食予測度
ランク
錆止塗装
0
屋外海岸部
20
20
低
錆止塗装
0
屋外海岸部
20
20
低
錆止塗装
0
屋外海岸部
20
20
低
4
FCC
ADIP FEED配管
1972 ADIP(RICH) STPG38
3
sch40(5.5mm)
B
2011年検査(RT抜取)
39
70
連続
錆止塗装
30
屋外一般
10
40
中
5
RBZ
P402A/B パーマネントSTM配管
1997 ライトリフォーメートSTPT370S
1
sch160(6.4mm)
A
2006年検査(RT抜取)
14
40
間欠
錆止塗装
20
水噴霧環境
30
50
中
6
RBZ
P404A/B パーマネントSTM配管
1997
ベンゼン
STPT370S
1
sch160(6.4mm)
A
未検査
14
40
間欠
錆止塗装
20
水噴霧環境
30
50
中
7
薬品設備 原液NaOH受け入れ配管
1972
NaOH
SGP
3
4.2
B
2010年検査(RT抜取)
39
60
間欠
錆止塗装
30
屋外一般
10
40
中
8
薬品設備 純水注入配管
1972
純水
SGP
3
4.2
D
未検査
39
25
間欠
錆止塗装
20
屋外一般
10
30
低
9
TOP/VAC チャージ配管(P001A SUC')
1972
原油
STPG38
24
sch40(17.5mm)
B
2006年検査(抜取)
39
50
連続
錆止塗装
20
屋外一般
10
30
低
10
TOP/VAC 薬注配管(P016 DEL')
1990
NaOH
STPG370S
1
sch80(4.5mm)
B
2003年検査(抜取)
21
25
連続
錆止塗装
10
屋外一般
10
20
低
11
DDS
DDS-P R/D配管(FS231 DEL 1980
重油
STPG38
6
sch40(7.1mm)
C
2009年検査(抜取)
31
50
連続
錆止塗装
20
屋外一般
10
30
低
12
DDS
WWT STRIPPER BTM配管
1980
臭水
STPG38
4
sch40(6.0mm)
B
2005年検査(抜取)
31
70
連続
錆止塗装
30
屋外一般
10
40
中
13
DDS
HGO STRIPPER O/H配管
2009
HGO
STPG370S
8
sch40(8.2mm)
A
2009年更新
3
90
連続
錆止塗装
0
屋外一般
10
10
低
39
60
間欠
錆止塗装
30
屋外一般
10
40
中
12
(リセット)
50
間欠
錆止塗装
20
屋外一般
10
30
低
14
OFF SITE 原油配管(013T SUC')
1972
原油
STPY41
30
7.9mm
B
2005年検査(抜取)
15
OFF SITE 重油配管(217T SUC')
1972
重油
SGP
18
7.9mm
B
1999年検査
16
OFF SITE HOT COND'回収配管
1972
温水
SGP
2
3.8mm
D
未検査(抜取)
39
80
連続
錆止塗装
30
屋外一般
10
40
中
1972
BFW
STPG38
6
sch40(7.1mm)
B
1998年検査(抜取)
39
110
間欠
錆止塗装
30
屋外一般
10
40
中
NAPHTHA STPG38
6
sch40(7.1mm)
A
2008年検査(抜取)
39
110
連続
錆止塗装
30
屋外一般
10
40
中
17
18
1BL
ボイラー給水配管(P001SUC)
TOP/VAC No.1 S/R
1972
19
D-HDS FEED配管(P001 SUC')
1972
灯油
STPG38
6
sch40(7.1mm)
A
2003年検査(抜取)
39
85
連続
錆止塗装
30
屋外一般
10
40
中
20
D-HDS C002 SUC'配管
1972
OFF GAS
STPG38
6
sch40(7.1mm)
A
2003年検査(抜取)
39
80
間欠
錆止塗装
30
屋外一般
10
40
中
-27-
表 4.1-3 目 視 点 検 結 果 による腐 食 予 測 度 ランク見 直 し
設置年
内部流体名
配管材質
配管径
(B)
腐食要因
データによる
腐食予測度
ランク
目視点検結果
目視点検
考慮後の予測度
ランク
SLOP配管
1972
SLOP
SGP
12
低
異常・不具合あり
中
OFF SITE
パージ配管
1974
C重油
SGP
10
低
異常・不具合あり
中
3
OFF SITE
CFO配管(受入)
1974
C重油
SGP
16
低
異常・不具合あり
中
4
FCC
ADIP FEED配管
1972
ADIP(RICH)
STPG38
3
中
異常・不具合あり
高
5
RBZ
P402A/B パーマネントSTM配管
1997
ライトリフォーメート
STPT370S
1
中
問題なし
中
6
RBZ
P404A/B パーマネントSTM配管
1997
ベンゼン
STPT370S
1
中
問題なし
中
7
薬品設備
原液NaOH受け入れ配管
1972
NaOH
SGP
3
中
異常・不具合あり
高
8
薬品設備
純水注入配管
1972
純水
SGP
3
低
問題なし
低
9
TOP/VAC
チャージ配管(P001A SUC')
1972
原油
STPG38
24
低
異常・不具合あり
中
10
TOP/VAC
薬注配管(P016 DEL')
1990
NaOH
STPG370S
1
低
問題なし
低
11
DDS
DDS-P R/D配管(FS231 DEL')
1980
重油
STPG38
6
低
問題なし
低
12
DDS
WWT STRIPPER BTM配管
1980
臭水
STPG38
4
中
異常・不具合あり
高
13
DDS
HGO STRIPPER O/H配管
2009
HGO
STPG370S
8
低
異常・不具合あり
中
14
OFF SITE
原油配管(013T SUC')
1972
原油
STPY41
30
中
異常・不具合あり
高
15
OFF SITE
重油配管(217T SUC')
1972
重油
SGP
18
低
異常・不具合あり
中
16
OFF SITE
HOT COND'回収配管
1972
温水
SGP
2
中
問題なし
中
17
1BL
ボイラー給水配管(P001SUC)
1972
BFW
STPG38
6
中
異常・不具合あり
高
18
TOP/VAC
No.1 S/R
1972
NAPHTHA
STPG38
6
中
異常・不具合あり
高
19
D-HDS
FEED配管(P001 SUC')
1972
灯油
STPG38
6
中
異常・不具合あり
高
20
D-HDS
C002 SUC'配管
1972
OFF GAS
STPG38
6
中
異常・不具合あり
高
配管No.
装置
1
OFF SITE
2
配管名
-28-
表 4.1-4 肉 厚 管 理 データによる評 価 見 直 しと優 先 順 位 評 価 結 果
配管No.
装置
配管名
設置年
内部流体名
配管材質
配管肉厚
sch No.(mm)
配管肉厚
の考慮
前回
検査データの考慮
肉厚管理
データによる
余裕代考慮後の
予測度
ランク
肉厚管理データによる評価見直し
配管径
(B)
腐食要因
データによる
腐食予測度
ランク
目視点検結果
目視点検
考慮後の予測度
ランク
優先順位
評価
(重要度・
予測度)
1
OFF SITE
SLOP配管
1972
SLOP
SGP
12
低
異常・不具合あり
中
6.9
なし
なし
中
優先配管(C中)
2
OFF SITE
パージ配管
1974
C重油
SGP
10
低
異常・不具合あり
中
6.6
なし
なし
中
優先配管(C中)
3
OFF SITE
CFO配管(受入)
1974
C重油
SGP
16
低
異常・不具合あり
中
7.9
なし
なし
中
優先配管(C中)
4
FCC
ADIP FEED配管
1972
ADIP(RICH)
STPG38
3
中
異常・不具合あり
高
sch40(5.5mm)
なし
見直し要
(内面腐食あり)
高
最優先配管(B高)
5
RBZ
P402A/B パーマネントSTM配管
1997
ライトリフォーメート
STPT370S
1
中
問題なし
中
sch160(6.4mm)
なし
なし
中
最優先配管(A中)
6
RBZ
P404A/B パーマネントSTM配管
1997
ベンゼン
STPT370S
1
中
問題なし
中
sch160(6.4mm)
なし
なし
中
最優先配管(A中)
7
薬品設備
原液NaOH受け入れ配管
1972
NaOH
SGP
3
中
異常・不具合あり
高
4.2
見直し要
見直し要
高
最優先配管(B高)
8
薬品設備
純水注入配管
1972
純水
SGP
3
低
問題なし
低
4.2
見直し要
見直し要
中
その他配管(D中)
9
TOP/VAC
チャージ配管(P001A SUC')
1972
原油
STPG38
24
低
異常・不具合あり
中
sch40(17.5mm)
なし
なし
中
優先配管(B中)
10
TOP/VAC
薬注配管(P016 DEL')
1990
NaOH
STPG370S
1
低
問題なし
低
sch80(4.5mm)
見直し要
見直し要
中
優先配管(B中)
11
DDS
DDS-P R/D配管(FS231 DEL')
1980
重油
STPG38
6
低
問題なし
低
sch40(7.1mm)
なし
なし
低
その他配管(C低)
12
DDS
WWT STRIPPER BTM配管
1980
臭水
STPG38
4
中
異常・不具合あり
高
sch40(6.0mm)
なし
見直し要
高
最優先配管(B高)
13
DDS
HGO STRIPPER O/H配管
2009
HGO
STPG370S
8
低
異常・不具合あり
中
sch40(8.2mm)
なし
なし
中
最優先配管(A中)
14
OFF SITE
原油配管(013T SUC')
1972
原油
STPY41
30
中
異常・不具合あり
高
7.9mm
なし
見直し要
高
最優先配管(B高)
15
OFF SITE
重油配管(217T SUC')
1972
重油
SGP
18
低
異常・不具合あり
中
7.9mm
なし
見直し要
高
最優先配管(B高)
16
OFF SITE
HOT COND'回収配管
1972
温水
SGP
2
中
問題なし
中
3.8mm
見直し要
見直し要
高
優先配管(D高)
17
1BL
ボイラー給水配管(P001SUC)
1972
BFW
STPG38
6
中
異常・不具合あり
高
sch40(7.1mm)
0
見直し要
高
最優先配管(B高)
18
TOP/VAC
No.1 S/R
1972
NAPHTHA
STPG38
6
中
異常・不具合あり
高
sch40(7.1mm)
0
見直し要
高
最優先配管(A高)
19
D-HDS
FEED配管(P001 SUC')
1972
灯油
STPG38
6
中
異常・不具合あり
高
sch40(7.1mm)
0
見直し要
高
最優先配管(A高)
20
D-HDS
C002 SUC'配管
1972
OFF GAS
STPG38
6
中
異常・不具合あり
高
sch40(7.1mm)
0
見直し要
高
最優先配管(A高)
-29-
4.2
スクリーニング検 査
本 来 の ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 対 象 は 優 先 配 管 の 配 管 No.1,2,3,9,10 お よ び No.16 の 6 本 で
あ る が 、こ こ で は 調 査 の た め に 最 優 先 配 管 を 含 む 配 管 No.1~ 6 の 6 本 を 選 定 し た 。す べ て
を 目 視 検 査 2 方 法( 足 場 な し 遠 望 、足 場 設 置 近 接 )、非 破 壊 検 査 を そ の レ イ ア ウ ト か ら ガ イ
ド波超音波検査法または放射線検査法のいずれかの方法で実施した。
1)
目視検査
目 視 検 査 結 果 を 表 4.2-1 に 示 す 。
2)
非破壊検査
ガ イ ド 波 超 音 波 検 査 法 に よ る 検 査 結 果 を 表 4.2-2 に 放 射 線 検 査 法 に よ る 検 査 結 果 を 表
4.2-3 (検 査 位 置 を 図 4.2-1 )に 示 す 。
3) 剥 離 の判 定
① 剥 離 の 判 断 を 目 視 検 査 の み で 行 っ た 場 合 は 表 4.2-1 に 示 す よ う に な る 。
② 剥 離 の 判 断 を 非 破 壊 検 査 の み で 行 っ た 場 合 は 表 4.2-2 お よ び 表 4.2-3 に 示 す よ う に
なる。
③ 事業所の従来の経験に基づく剥離判断はスクリーニング検査を待つまでもなく配
管 No.5,6 は 大 気 環 境 が エ ア フ ィ ン ク ー ラ ー の 冷 却 能 力 強 化 の た め 水 噴 霧 環 境 に 長 時
間曝されていたことを重視し、全面剥離の判定(最優先配管とみなす)であった。
4)
剥離検査結果
剥 離 検 査 の 結 果 は 非 常 に 貴 重 な デ ー タ で あ る た め そ の 詳 細 を 図 4.2-2 から 4.2-8 に 示 す 。
ま た ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 の 結 果 と の 対 応 を 表 4.2-4 に 示 す 。
4.3 評 価 と考 察
以上の結果から多くの教訓や示唆が得られるが、以下にひとつの考察事例を掲げる。
(1)
優 先 順 位 の選 定
6本の供試配管のうち
① 本ガイドラインの優先順位選定方法では最優先配管とされた3本のうち2本
(No.5,6)が 事 業 所 の 経 験 的 な 選 定 方 法 と 一 致 し て い る 。
② 優 先 配 管 の 選 定 の 妥 当 性 に つ い て : 剥 離 検 査 の 結 果 、( 事 業 所 が ) 問 題 と す べ き 大
きさの腐食を検出してはいない。ただ、目視検査の結果明らかに異常である配管
( No.1,2,3) を 優 先 配 管 に 、 ま た 局 所 的 な が ら 軽 微 な CUI が 広 く 存 在 す る 配 管
( No.4,5,6)を 最 優 先 配 管 に 選 定 し た こ と は 安 全 側 の 評 価 が で き て お り 大 き な 問 題
はないと考えられる。
③ 配 管 No.4 は 内 部 流 体 (ADIP;ジ イ ソ プ ロ パ ノ ー ル ア ミ ン )の 腐 食 性 か ら 内 面 腐 食 が
考 え ら れ る 配 管 で あ り 、検 査 履 歴( 抜 き 取 り で の 放 射 線 検 査 )も あ っ た の で 、そ の
点も腐食予測で記述し、漏洩の危険性に考慮しておくことは重要である。
(2)
スクリーニング検 査
① 目 視 検 査 の み の 判 断 で は 、 本 事 例 の 6 本 の 供 試 配 管 に 関 し て は CUI を 検 出 で き な
か っ た 。 明 ら か に 配 管 No.1,2,3 は 外 装 板 が 穴 あ き あ る い は 隙 間 が 生 じ 水 の 侵 入 が
あ る に も 拘 わ ら ず 、別 の 環 境 要 因( ス チ ー ム ト レ ー ス 常 時 運 転 に よ る 配 管 表 面 の 乾
燥が推測された)により腐食が進行しない特異条件が加わったためと考えられる。
-30-
② 非 破 壊 検 査 に よ る 判 断 で は 、 本 事 例 の 6 本 の 供 試 配 管 に 関 し て は CUI の 有 無 を 明
瞭に判断できた。ガイド波超音波検査法では受発信機設置は各ライン1箇所のみで
あり効率的な検査ができているといえる。放射線検査では配管1本当たり4から5
か 所 の 継 手 部 に つ い て 1 0 か ら 2 0 枚 (撮 影 は 1 箇 所 に つ き ア ン グ ル 2 種 類 ま た は
エ ル ボ 1 箇 所 に つ い て 角 度 を 変 え て 3 枚 撮 影 実 施 し た )の フ ィ ル ム 撮 影 を 要 し 、検 査
能率は低い。
③ 遠 望 目 視 : 本 事 例 の 配 管 No.1,2,3 の 場 合 、 1 5 m 程 度 の 水 路 を 横 断 す る オ フ サ イ
ト配管であるが、足場なしの遠望目視のとらえる外装板の異常判断は足場を設置後
近接目視の判断と変わらず全体評価としては結果的に十分であった。
④ 近 接 目 視 : 配 管 No.1,2,3 の 場 合 、 外 装 板 の 下 部 の 見 え な い 部 分 や 穴 あ き 、 隙 間 な
ど が 詳 細 に わ か る こ と が 本 事 例 で 確 認 さ れ た 。 一 方 で 、 近 接 目 視 で も 配 管 No.5,6
の場合は外部噴霧水の侵入した異常の判断ができなかった。すなわち、噴霧水のよ
うな厳しい条件では目視検査で明らかな異常が見られなくても目視ではわからない
微小な隙間から吸水する場合があることを示唆している。
⑤ 部 分 剥 離 ・触 手 検 査:No.6 で は 触 手 に て 保 温 材 の 著 し い 吸 湿 を 確 認 し た 。こ れ か ら
部分剥離等による保温材の吸湿または水の侵入確認などの有効性、必要性が指摘さ
れる。
⑥ 目視検査と非破壊検査の使い分け:本事例の場合、検査の計画時においてはいず
れが適切かについての判断は難しいが、通常は先ず目視検査で判定することが一般
的と考えられる。ただし、それぞれの検査結果の評価の際に以下の追加判断がきわ
め て 重 要 で あ る こ と を 本 事 例 は 示 し た 。 (こ の こ と は ガ イ ド ラ イ ン 本 文 4.7 2)(2)(b)
に記載)
⑦ 剥 離 範 囲 の 問 題 : 剥 離 の 判 定 に お い て 、 配 管 No.1,2,3 は 目 視 検 査 で は 全 面 剥 離 と
の判断をした場合、水路上の長尺配管で剥離範囲が大きいこともあり足場費用が高
額となることは容易に予測される。そのような場合、足場の不要化が可能なガイド
波 超 音 波 検 査 法 を 適 用 し 、剥 離 範 囲 を 最 小 化 す る こ と は 非 常 に 有 効 で あ る と い え る 。
(こ の こ と は ガ イ ド ラ イ ン 本 文 4.7 3) (1)(a)に 記 載 )
⑧ 目 視 検 査 に よ る 見 逃 し の 危 険 : 剥 離 の 判 定 に お い て 、配 管 No.5.6 は 目 視 検 査 で は
剥 離 不 要 と の 判 断 に な る が 、そ の 際 、CUI の 起 こ り や す い 、環 境 が 厳 し い 個 所( あ
るいは腐食予測ランクが中、高の場合)については目視検査の判定だけでは見逃し
の 危 険 性 が あ る と の 慎 重 な 判 断 が 重 要 で あ る 。 (こ の こ と は ガ イ ド ラ イ ン 本 文 4.7 3)
(1)(b)に 記 載 )本 事 例 で は 非 破 壊 検 査 に よ り 補 完 検 査 を 行 っ た 結 果 、広 範 囲 に 微 小 な
CUI が 検 出 さ れ て お り 、 そ の サ イ ズ は 事 業 所 の 閾 値 を 超 え る も の で は な か っ た が 、
剥 離 検 査 の 結 果( 図 4.2-7,8)か ら も 今 後 腐 食 の 進 行 に 十 分 注 意 す べ き 配 管 で あ る こ
とが確認された点は重要な示唆を与える。
⑨ 非破壊検査または部分剥離の効果:剥離判定の補完として非破壊検査を行うこと
は上記のような疑わしい個所の場合に有効であるといえる。なお非破壊検査として
複雑配管レイアウトのため放射線検査を適用したが、本事例では、必ずしも非破壊
検査ばかりではなく、部分剥離による判定方法も同様の判断を導いたと推定される
ことから判定手法として有効と考えられる。
-31-
表 4.2-1 目 視 検 査 結 果
遠望目視(足場架設なし)
配管
No.
観察結果
判断
近接目視(足場架設あり)
参考写真
観察結果
判断
参考写真
結果による
判断
1
外装板腐食により小規 異常・不具合あ
模な開口箇所あり
り
外装板腐食により大きな開口箇所あ
り。
開口範囲:約100mm径
保温材には損傷認めず。
異常・不具合
あり
剥離必要
2
外装板腐食により小規 異常・不具合あ
模な開口箇所あり
り
外装板腐食により大きな開口箇所あ
り。
開口範囲:約100mm径
保温材も損傷脱落あり、隙間90mm。
異常・不具合
あり
剥離必要
3
外装板腐食はあるが開
口箇所認めず。
異常・不具合あ
外装板継ぎ目部に浮き
り
あり。
外装板継ぎ目に浮きによる隙間あり。
最大隙間:9mm
異常・不具合
あり
剥離必要
4
外装板に腐食による開
異常・不具合あ
口は認めないが、うち
り
傷による開口散在。
立ち上がり配管上部エルボ下側に外装
異常・不具合
板の浮き上がり隙間あり。最大隙間:
あり
20mm
剥離必要
5
外装板良好
問題なし
外装板に損傷なく、継ぎ目も隙間なし。
シールも良好。
問題なし
剥離不要
6
外装板良好
問題なし
外装板に損傷なく、継ぎ目も隙間なし。
シールも良好。
問題なし
剥離不要
-32-
表 4.2-2 非 破 壊 検 査 結 果 (ガイド波 超 音 波 検 査 法 )
配管
No.
ガイド波超音波検査法
検査画像
結果
結果による判断
1
欠陥信号認めず
剥離不要
2
欠陥信号認めず
剥離不要
3
欠陥信号認めず
剥離不要
ガイド波 超 音 波 センサー取 付 け位 置
-33-
表 4.2-3 非 破 壊 検 査 結 果 (放 射 線 検 査 法 )
配管
No.
放射線検査法
検査画像
結果による判断
結果
4
最大減肉1.5mm(内面
1mm、外面0.5mm)
剥離不要
5
最大減肉1.1mm
剥離不要
6
最大減肉0.9mm
剥離不要
-34-
配 管 No.4
CUI 検 出 箇 所 ② 、 ③ 、 ④ 、 ⑤
( 最 大 1.5mm*内 外 面 - ② elbow)
*推 定 外 面 0.5mm 程 度
注 ) CUI も あ る が 、 各 箇 所 で 内 面 腐 食 が
多い。
配 管 No.5
CUI 検 出 箇 所 ① 、 ② 、 ③
( 最 大 1.1mm 外 面 - ③ elbow)
配 管 No.6
CUI 検 出 箇 所 ① 、 ② 、 ③
( 最 大 0.9mm 外 面 - ② T-Joint 付 近 )
図 4.2-1 放 射 線 検 査 位 置 と欠 陥 検 出 箇 所
-35-
図 4.2-2(1) 剥 離 検 査 位 置 図 (配 管 No.1)
-36-
図 4.2-2(2)a 剥 離 検 査 結 果 (1)(配 管 No.1)
-37-
図 4.2-2(2)b 剥 離 検 査 結 果 (2)(配 管 No.1)
-38-
図 4.2-3(1) 剥 離 検 査 位 置 図 (配 管 No.2)
-39-
図 4.2-3(2) 剥 離 検 査 結 果 (配 管 No.2)
-40-
図 4.2-4(1) 剥 離 検 査 位 置 図 (配 管 No.3)
-41-
図 4.2-4(2)a 剥 離 検 査 結 果 (1)(配 管 No.3)
-42-
図 4.2-4(2)b 剥 離 検 査 結 果 (2)(配 管 No.3)
-43-
配管 No.4
配管 No.5
配管 No.6
図 4.2-5 剥 離 検 査 における主 要 観 察 部 位 (配 管 No.4,5,6)
-44-
図 4.2-6a 剥 離 検 査 結 果 (2)(配 管 No.4)
-45-
図 4.2-6b 剥 離 検 査 結 果 (2)(配 管 No.4)
-46-
図 4.2-7a 剥 離 検 査 結 果 (1)(配 管 No.5)
-47-
図 4.2-7b 剥 離 検 査 結 果 (2)(配 管 No.5)
-48-
図 4.2-8a 剥 離 検 査 結 果 (1)(配 管 No.6)
-49-
図 4.2-8b 剥 離 検 査 結 果 (2)(配 管 No.6)
-50-
表 4.2-4 スクリーニング検 査 結 果 と剥 離 検 査 との対 応
-51-
解説 5 非破壊検査技術の選定と使用
CUIの ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 に お い て 用 い る 非 破 壊 検 査 技 術 の 適 切 な 選 定 と 適 用 法 の 検 討
のために役立つと考えられる非破壊検査技術の種類や測定原理、各非破壊検査技術の特徴
と使用時における留意事項および対象配管の状況に応じた使い方の例を解説する。
水分測定技術についても種類や測定原理、各非破壊検査技術の特徴と使用時における留
意事項および対象配管の状況に応じた使い方の例を記述する。
非破壊検査技術は日進月歩であり、さまざまな革新的技術進展がありうるので、最新の
情報により適宜補完、見直しが肝要である。
5.1
非 破 壊 検 査 技 術 の基 礎
以下に、代表的な3種類の非破壊検査技術の検出原理および特徴を説明する。
5.1.1
1)
ガイド波 超 音 波 検 査 法
ガイド波 とは
ガ イ ド 波 (Guided wave)は 、 細 長 い 材 料 中 を 長 手 方 向 に 伝 搬 す る 超 音 波 で あ り 、 特 に
配管中を長手方向に伝搬する超音波を称して用いられることが多い。広義にはラム波、
板波、レイリー波等も含まれる。配管の内外表面間にエネルギーが封入されて伝搬する
ため減衰が少なく長距離計測が可能となる。ただし、ガイド波には音速の異なる多数の
モードが存在し、それぞれのモードは周波数によって音速の異なる分散性を持つため、
取り扱いが難しい。保温材を部分的に撤去した箇所にセンサを設置し、長距離伝搬性が
あるガイド波を管軸方向に送受信することによって、一度の計測で長距離の配管検査を
実 現 し て い る (Long Range – Guided Wave UT:LR-UT)。こ の 技 術 の 適 用 イ メ ー ジ を 図
5.1.1-1 に 示 す 。
超音波伝播方向の
切替可能
保温材
センサ
保温材を
除去してセット
図 5.1.1-1 ガイド波 適 用 イメージ
-52-
2)
ガイド波 の伝 播 モード
パ イ プ を 伝 搬 す る ガ イ ド 波 は 図 5.1.1-2 に 示 す よ う に 、 管 軸 に 対 し て 対 称 に 変 位 す る
Longitudinalモ ー ド ( 以 下 Lモ ー ド と 記 す ) 、 円 周 方 向 に 捻 れ て 変 位 す る Torsionalモ ー
ド( 以 下 Tモ ー ド と 記 す )、非 対 称 に 変 位 す る Flexuralモ ー ド( 以 下 Fモ ー ド と 記 す )の
3種類がある。さらに、板厚、円周方向にパラメータを設定した高次モードに分類され
る。
これらのモードは周波数に応じて伝搬速度が変化する分散性を示し、同一周波数で
複数のモードが同時に存在する。このため、受信した信号は複雑であり、その解釈に
は理論に基づいた解析や計測に使用するモードの選択などが必要となる。
図 5.1.1-2 パイプにおけるガイド波 のモード
近 年 の 装 置 で は 、適 用 対 象 に 応 じ て Lモ ー ド と Tモ ー ド の 両 モ ー ド を 選 択 し て 発 信 で
き る よ う に な っ て い る 。 Lモ ー ド を 使 用 す る 場 合 は 高 エ ネ ル ギ ー で の 発 振 が 可 能 で あ
るが、塗装や配管内容物の影響を受け易い傾向がある。一方、Tモードは塗装や配管
内容物の影響は少ない。
ま た 、 ガ イ ド 波 が 軸 対 称 モ ー ド で 発 信 さ れ る と 断 面 変 化 部 (減 肉 損 傷 な ど )や 円 周 溶
接 線 、 架 台 等 に 当 た っ て 伝 播 し て く る 反 射 波 の モ ー ド が 軸 対 称 か 非 対 称 ( Fモ ー ド )
かを受信器のリング分割部分で判定し、データを判定するプログラムが装置に組み込
まれている。軸対称モードでない場合は周方向に局所的に存在する損傷や架台サポー
トシューからの信号と判断できる。軸対称モードの場合は周溶接線やフランジからの
信号であることが多い。高度な新世代型では非対称モード発信やリング分割発信子の
発信を順次一定の時間差をつけて発信するフェーズドアレイ超音波に近い機能も搭
載されている。
3)
送 受 信 装 置 ・トランスジューサまたはセンサ
ガ イ ド 波 を 送 受 信 す る 方 式 は 主 に 2種 類 あ る 。通 常 の 超 音 波 探 傷 装 置 と 同 じ よ う に 圧
電 素 子 を 用 い る 方 式 と 、磁 気 歪 セ ン サ を 用 い る 方 式 が あ る 。圧 電 素 子 方 式 は 複 数 の 圧 電
素 子 ユ ニ ッ ト を リ ン グ 状 に 設 置 す る 構 造 で あ る が 、管 体 と の 接 触 状 態 の 影 響 を 受 け る こ
と 、対 象 管 径 が 大 き く な る に つ れ て 多 数 の 圧 電 素 子 が 必 要 と な り 重 量 や 装 置 コ ス ト が 増
す こ と が 課 題 と な る 。一 方 、磁 気 歪 セ ン サ 方 式 は ニ ッ ケ ル な ど の 薄 板 帯 を 管 体 に 固 着 し 、
その上に配置するコイルに励振磁場を与えることで磁歪効果によりガイド波を送信す
る 。こ の 方 式 は ニ ッ ケ ル な ど の 薄 板 帯 を 固 着 す る た め 安 定 し た カ ッ プ リ ン グ が 得 ら れ る
が 、管 体 へ の 固 着 作 業 が 必 要 と な る 。ま た 、セ ン サ 構 成 が ニ ッ ケ ル な ど の 薄 板 帯 と コ イ
ル だ け で 済 む た め 、隣 接 配 管 と の 間 隔 が 狭 く て よ く 、大 径 管 に 低 コ ス ト で 対 応 で き る な
どの特徴がある。
-53-
4)
ガイド波 の適 用 にあたって
CUIの 検 査 に お け る ガ イ ド 波 の 課 題 は 、配 管 条 件 の 影 響 と 診 断 能 力 に あ る 。配 管 条 件
に関しての基本的な課題は、以下のとおりである。
① 管台サポート等に起因する信号の発生
② エルボ通過による超音波の歪み
③ 塗覆装による減衰等
これらの影響により、計測可能な距離の縮減や診断不可能な箇所が生じる。
診断能力においては、
① 信号高さは断面積変化の大きさを表しており、減肉深さではない
② 孔食のような断面欠損の小さなものは検知しづらい
③ 分解能が低いため円周溶接部のような大きな信号反射源の近傍の欠陥は識別
できない
④ 正しい信号の解釈には超音波の一般的な知識の他に、装置に関するトレーニ
ングを受けたオペレーターが必要である
こ れ ら の 課 題 は 近 年 、ガ イ ド 波 の エ ネ ル ギ ー を 円 周 上 の 狭 い 範 囲 に 集 中 さ せ る フ ォ ー
カス技術が実用化され、円周方向損傷位置と範囲の判別などで改善されてきた。
フォーカス技術はさらに高度化が進むと考えられるので注目しておく必要がある。
以 上 の よ う に 、ガ イ ド 波 を 利 用 し た 検 査 技 術 は 、基 本 的 な 計 測 法 は 確 立 さ れ つ つ あ る
が 、実 用 面 で は 解 決 す べ き 課 題 が 残 っ て い る 。適 用 す る 際 に は 能 力 や 特 性 を 十 分 に 理 解
した上で実施する必要がある。
5)
近 距 離 用 ガイド波 装 置
ガ イ ド 波 技 術 に は 比 較 的 広 範 囲 の 配 管 ス ク リ ー ニ ン グ に 用 い る LR-UTと 、 管 台 サ ポ
ー ト や 構 造 物 貫 通 部 (例 え ば コ ン ク リ ー ト 貫 通 部 )の よ う に ア ク セ ス が 困 難 な 箇 所 の 調
査 を 目 的 と し た 近 距 離 ガ イ ド 波 検 査 技 術 も あ る 。こ の 技 術 は 単 体 の セ ン サ を 検 査 対 象 手
前 に 配 し 、 1~ 2m遠 方 の 腐 食 状 態 を 診 断 す る も の で あ り 、 主 と し て SHガ イ ド 波 が 利 用
さ れ て い る 。 図 5.1.1-3 に SHガ イ ド 波 概 念 図 を 示 す 。
探触子
図 5.1.1-3 SH ガイド波 概 念 図
-54-
6)
代表的装置例
(1)
圧 電 素 子 型 ガイド波 装 置
超音波の送受信に圧電素子を用いる装置であり、これらは複数の圧電素子をリング
状に設置するが、接触媒質を用いずに圧電素子を管体に押し付ける機構を有している。
例 え ば 、 図 5.1.1-4 に 示 す セ ン サ 部 は 、 圧 電 素 子 を 組 み 込 ん だ ユ ニ ッ ト に な っ て お り 、
空気圧を用いて圧電素子を管体に押し付ける。このとき個々の圧電素子の振動方向を
管軸方向に配した場合はLモード、周方向に配した場合はTモードを送受信できる。
圧 電 素 子 を保 持 するユニット
圧電素子が
組 み込 まれた
モジュール
図 5.1.1-4 圧 電 素 子 方 式 センサ構 造 例
センサ
図 5.1.1-5 圧 電 素 子 型 ガイド波 による測 定 例
-55-
空 気 圧 で圧 電 素 子 を
押 し付 けるバッグ部
ガ イ ド 波 の 波 形 説 明 図 を 図 5.1.1-6 に 示 す 。
図 5.1.1-6 ガイド波 の波 形 説 明 図 (Teletest)
円周溶接は軸方向に対称な反射波、配管サポートは非対称(青色の垂直フレキシャ
ル 波 (Fモ ー ド )と 赤 色 の 水 平 フ レ キ シ ャ ル 波 (Fモ ー ド )の 位 置 に ず れ を 生 じ る ) 、 CUI
減肉損傷部も同じく非対称な反射波となるなどの特徴から存在を推定する。
圧電素子方式のガイド波装置の信頼性向上に向けた改善は著しい。主な改善点は、
① マ ル チ モ ー ド 機 能 (Lモ ー ド と Tモ ー ド の 両 方 を 使 用 可 能 )
② 検 査 結 果 の マ ッ ピ ン グ 表 示 機 能 (Cス キ ャ ン ま た は A-mapと 言 う )
③ 検 査 対 象 に 適 し た 周 波 数 の 調 整 機 能 (ス イ ー プ ま た は ス ラ イ ダ ー と 言 う )
④ 特定の部位に音波を集中させるフォーカス機能
図 5.1.1-7に マ ッ ピ ン グ 表 示 例 を 示 す 。 マ ッ ピ ン グ 表 示 は 数 分 割 し た ブ ロ ッ ク 毎 に 受
信した信号を解析し、管軸方向と円周方向の配管展開図として画像表示するもので、
配管の損傷状況などが客観的に把握し易くなる。
-56-
図 5.1.1-7 マッピング表 示 の例 (Wavemaker G3)
フ ォ ー カ ス 機 能 の 概 念 図 を 図 5.1.1-8 に 、 表 示 例 を 図 5.1.1-9 に 示 す 。
フォーカス機能は周方向に並べた圧電素子を多チャンネルに分割、制御受信する、
一種のフェーズドアレイに似た操作のことで音圧の集中、周方向走査を可能としたも
のである。送信波は等軸方式と非等軸方式の二種類である。これにより腐食の周方向
位置やサイズの推定が可能となり、腐食信号の識別性や評価精度が向上する。
また、周波数可変は発振周波数を徐々に変化させたことに伴う受信信号の変化を確
認する手法である。ガイド波は周波数や板厚によって各モードの発生状況が異なるた
め、計測時に周波数を変化させることで、腐食の検出状況や疑似信号の発生状況が変
化する。周波数調整はこの特性を利用することで診断精度の向上を図るものである。
-57-
フォーカス部 位
減 肉 の出 力 例
円 周 溶 接 の出 力 例
図 5.1.1-8 フォーカス機 能 概 念 図
出 典 DOT:DTRS56-05-T-002
Guided Wave Testing for Inspection
of Unpiggable Pipelines
図 5.1.1-9 フォーカス機 能 出 力 例 (Teletes Focus)
-58-
(2)
磁歪型装置
超 音 波 の 送 受 信 に 磁 歪 効 果 を 利 用 す る 装 置 で あ る 。 図 5.1.1-10 に 示 す よ う に 、 ニ ッ
ケル、コバルトなどの強磁性体金属の薄板帯を配管に巻きつけて固着し、その上に配
置されるコイルに励振磁場を与えることで、ニッケルなどの薄板帯に生じる磁歪効果
により配管にねじれ力が伝達し、ガイド波を送信する。受信は上述の逆効果でコイル
に誘起される電圧を検出する。
コイル
ニッケルなど薄 板
図 5.1.1-10 磁 歪 型 センサー設 置 方 法 例
磁歪方式は振動体となる薄板帯を管体に固着させるため、ドライカップリングであ
る圧電素子方式に比して安定したガイド波の送信が可能となるが、一方では、ニッケ
ルなどの薄板帯を接着剤で貼り付ける必要が生じる。また、センサ部を構成する材料
が安価であるため、大口径管を対象としてもセンサが高価にならない。加えて、ニッ
ケルなどの薄板帯を管体に残置することで、経年変化をモニタリングする運用形態も
可 能 と な る 。 検 査 例 を 図 5.1.1-11 に 示 す 。
センサ
図 5.1.1-11 磁 歪 型 センサーによる測 定 例
-59-
(3)
近 距 離 ガイド波 装 置
管台サポート接触部やコンクリート貫通部のようにアクセスが困難な箇所の調査を
目 的 と し て お り 、 計 測 距 離 は 1~ 2m程 度 と な る 。 装 置 は 図 5.1.1-12 に 示 す よ う に 、 リ
ング状にセンサを配さず、単体のセンサを用い、必要に応じて周方向走査を行う。し
たがって、ガイド波の種類としては、パイプではなく、板材におけるガイド波(ラム
波 / SHガ イ ド 波 ) と な る 。
LIMA TESTに 関 し て は 電 磁 超 音 波 法 (EMAT)を 用 い て お り 、接 触 媒 質 が 不 要 で あ る 。
他の技術は圧電素子による斜角探触子を使用する。
反射
周方向
走査
腐食
超音波探触子
検査範囲
図 5.1.1-12 近 距 離 ガイド波 検 査 装 置 の適 用 イメージ
(4)
表 面 波 (レイリー波 )検 査 装 置
板厚全体で音波が伝播するラブ波と異なり、さざ波のように表面を伝播するレイリ
ー波を使用した管台部の検査用装置がある。
こ れ は 図 5.1.1-13 に 示 す よ う に 、 送 受 信 の 探 触 子 を 対 向 し て 配 置 し 、 透 過 し て き た
音波の到達時間差から、探触子間にある腐食の状況を判断するものである。適用管径
は 、レ イ リ ー 波 を 曲 面 に 入 れ る こ と の 困 難 さ か ら 最 小 は 100A程 度 で あ る が 、最 大 径 の
制 限 は 機 器 装 置 の ハ ン ド リ ン グ か ら 800Aと の こ と で あ る 。腐 食 の 深 さ は 到 達 時 間 差 と
減衰から判断するとともに、広がりは探触子を周方向にスキャンして知ることになる。
レ イ リ ー 波 は 、 管 面 へ の 伝 達 特 性 が 良 く な く 最 大 送 受 信 距 離 は 約 500mmで あ る 。
T
R
伝播時間
レイリー波
T
R
図 5.1.1-13 レイリー波 検 査 の原 理 イメージ
-60-
到 達 時 間 差
5.1.2
放射線法
1)
放 射 線 法 の測 定 原 理
放射線法は対象物の両側に線源と受像媒体を対向配置し、透過線量から肉厚を評価
す る 方 法 で あ る 。 図 5.1.2-1に 放 射 線 法 の 線 源 、 対 象 物 (被 覆 配 管 )、 受 像 媒 体 (フ ィ ル ム
等 )配 置 と 得 ら れ る 検 査 結 果 で あ る 濃 度 (透 過 線 量 )と 画 像 イ メ ー ジ の 関 係 を 示 す 。
肉 厚 測 定 方 法 に は 接 線 投 影 法 ( TRT、 Tangential Radiographic Projection
Technique)と ダ ブ ル ウ ォ ー ル 法( DWT、Double wall thickness method)と が あ る 。
TRTは 図 5.1.2-1 に 示 す よ う に 、放 射 線 の 配 管 接 線 近 傍 の 濃 度 境 界 線 間 隔 か ら 算 定 し 、
線 源 ・配 管 ・IP間 の 幾 何 学 位 置 関 係 か ら 補 正 し て 定 量 表 示 す る 。TRTは も っ と も 精 度 の
高い肉厚測定方式である。
DWTは 接 線 近 傍 よ り 内 側 の 肉 厚 濃 淡 像( 上 下 の 配 管 壁 両 方 を 透 過 し た 二 重 画 像 で あ
り、両者の区別はできない)で損傷の有無は検出でき、損傷の形態や分布をイメージ
しやすい。また、精度はやや劣化するが、この部分の濃度差と予め設置しておいた階
調計とから肉厚を解析できる。
TRTと DWTの 何 れ に も 画 像 な ど の デ ジ タ ル 処 理 に よ り 半 自 動 的 に 処 理 さ れ る シ ス
テムもある。
図 5.1.2-1 放 射 線 検 査 の配 置 と画 像 イメージ
放 射 線 法 (RT)は 、 線 源 か ら 照 射 さ れ る X線 ま た は ガ ン マ 線 が 配 管 周 辺 を 透 過 す る 時
吸 収 が 起 き 、 そ の 透 過 線 量 を 濃 度 変 化 と し て と ら え る 。 撮 像 ・濃 度 ( 透 過 線 量 ) の 記
-61-
録方法によって以下の3つに分類できる。
① 従来のフィルム撮像方式、
② デジタル放射線方式
③ リ ア ル タ イ ム (線 量 計 、フ ラ ッ ト パ ネ ル デ ィ テ ク タ (FPD)、X線 カ メ ラ 、半 導 体 検 出
器 )放 射 線 方 式
放 射 線 法 で は 電 離 放 射 線 障 害 防 止 規 則 に 基 づ い て 5mの 放 射 線 管 理 区 域( 図 5.1.2-2 )
を設定するとともに所定の資格を有する者が取り扱う必要がある。
ま た 、 従 来 の 線 源 に 加 え 、 (独 法 )産 業 技 術 総 合 研 究 所 が 乾 電 池 で 駆 動 可 能 な 線 形 加
速器型、東京大学の坂上教授らが小型ライナック型などの新たな線源の開発が進めら
れている。
図 5.1.2-2 放 射 線 管 理 区 域 のイメージ
2)
(例 IAEA テキスト)
フィルム撮 像 方 式
フ ィ ル ム 方 式 は も っ と も 歴 史 が 古 く 、基 本 的 な 方 法 で あ る が 、照 射 線 量 は デ ジ タ ル 式
の 3~ 5倍 必 要 で あ る 。 撮 影 時 間 が 長 く 、 現 像 時 間 も 長 時 間 で あ り 、 肉 厚 測 定 な ど が 手
作 業 、デ ー タ の 保 存 性 、記 録 性 な ど に 弱 点 が あ る が 、特 別 な 装 置 を 必 要 と し な い た め 一
般に広く普及している。
3)
デジタル放 射 線 方 式
デ ジ タ ル 放 射 線 方 式 は 、光 輝 尽 性( き じ ん せ い )蛍 光 体 を フ ィ ル ム 上 に 塗 布 し た も の
で 、専 用 レ ー ザ ス キ ャ ナ で 読 み 取 る こ と で デ ジ タ ル 画 像 と し て コ ン ピ ュ ー タ に 取 り 込 ま
れ 、 繰 返 し 記 録 ・消 去 で き る 。 濃 度 差 の 識 別 範 囲 (ダ イ ナ ミ ッ ク レ ン ジ )が 広 く 、 フ ィ ル
ム よ り 精 度 良 く 識 別 で き る 。画 像 は 専 用 ソ フ ト で 肉 厚 測 定 解 析 が 行 え 、さ ら に デ ー タ フ
ァイル保存や遠隔地への送信が一連のシステムとして処理をできる。デジタル放射線
(コ ン ピ ュ ー テ ッ ド ラ ジ オ グ ラ フ ィ:CRも し く は FCR)と 呼 ば れ る こ と も あ る 。図 5.1.2-3
に デ ジ タ ル 放 射 線 の TRT撮 影 画 像 例 を 示 す 。
IPは 全 て の 放 射 線 源 に 対 応 で き る が 、厚 肉 ま で 対 応 で き る ガ ン マ 線 源 を 使 用 す る こ
とが多い。
-62-
図 5.1.2-3
4)
IP による肉 厚 測 定 例
リアルタイム放 射 線 方 式
リ ア ル タ イ ム 放 射 線 方 式 は 、 放 射 線 源 と 線 量 計 、 FPDや 半 導 体 検 出 器 な ど を 組 合 わ
せ た 装 置 と し て 開 発 さ れ て お り 、現 地 で 照 射 中 に 対 象 物 の 画 像 を 視 認 し な が ら 作 業 を 進
めることができ、その場で一定の減肉判断が可能である。
リアルタイム放射線方式の代表的な装置を以下に紹介する。
(1)
自 走 レール走 行 型
線 源 に は 管 球 式 X線 源 も 使 用 さ れ る が 、 小 型 軽 量 を 重 ん じ る 場 合 は 放 射 性 同 位 元 素
イリジウムを用いる。アレイセンサーは配管を挟んで対向するようにセットされ、線
源と一緒に走行するようになっている。
鋼管の透過画像による肉厚変化はダブルウォール法による測定方式であり、線源側
か ら 透 写 し た 配 管 外 壁 の 2重 画 像 で あ る 。 画 像 は や や 解 像 度 が 低 い が 、 配 管 の 展 開 図
と し て 薄 肉 部 の 範 囲 が 面 と し て 把 握 で き る 利 点 が あ る 。図 5.1.2-4 に 自 走 レ ー ル 走 行 型
の 配 管 へ の セ ッ ト 例 を 図 5.1.2-5 に 測 定 例 を 示 す 。
図 5.1.2-4 自 走 レール走 行 型 のセット例 (Thru-VU)
-63-
図 5.1.2-5 自 走 レール型 の測 定 例 (Thru-VU)
(2) 小 型 線 量 計 プロファイル型
リアルタイム放射線方式の中でもっとも小型軽量であり、出力は他の装置と異なり
画像ではなく透過放射線量プロットとして出力される。文字通りリアルタイムに配管
の 肉 厚 変 化 な ど を 推 定 す る こ と が 可 能 で あ る 。 図 5.1.2-6 に 装 置 例 、 図 5.1.2-7に 出 力
例を夫々示す。
図 5.1.2-6 小 型 線 量 計 プロファイル型 の測 定 状 況 (Lixi Profiler)
図 5.1.2-7 小 型 線 量 計 プロファイル型 の出 力 例 (Lixi Profiler)
-64-
小 径 配 管 用 で あ る が 、適 用 限 界 配 管 径 は 5B程 度 で あ る 。線 源 に は イ リ ジ ウ ム よ り も
エネルギーの低いガドリニウムを使用している。また、非常に簡易な構造のアームに
線源が位置しており、放射線の被曝防止措置については注意が必要と考えられる。
(3) 可 搬 式 パルスX線 源 とフラットパネルディテクタ(FPD)の組 合 せ型
X線 管 球 方 式 は も っ と も 一 般 的 な X線 源 で あ る が 、パ ル ス 式 を 用 い た こ と に よ り は る
か に 小 型 軽 量 化 を 実 現 し て い る 。ま た 、FPDに よ る リ ア ル タ イ ム 画 像 表 示 方 式 が 進 ん
で い る 。基 本 的 に は 外 径 の シ ャ ド ー 撮 影 に よ る 検 査 で あ る 。 図 5.1.2-8 に 装 置 と 撮 影 状
況 例 、 図 5.1.2-9 に 撮 影 画 像 例 を 夫 々 示 す 。
図 5.1.2-8 可 搬 式 パルス X 線 源 の装 置 と撮 影 状 況 例 (foX Razor)
減肉
図 5.1.2-9 可 搬 式 パルス X 線 源 の撮 影 画 像 例 (foX Razor)
-65-
5.1.3
パルス渦 流 磁 気 検 査 法
渦流磁気検査は、コイルを用いて導体に時間的に変化する磁場を与え、導体に生じた渦
電 流 の 変 化 か ら 損 傷 等 を 検 出 す る 検 査 方 法 で あ る 。図 5.1.3-1 に 渦 流 磁 気 検 査 法 の 基 本 原 理
を示す。渦流磁気検査試験は励磁コイルに交流電流を供給したときに発生する磁界により
検査対象物に渦電流が発生し、この渦電流により生じる磁界を検出コイルで信号として取
り 出 す 方 法 で 、検 査 対 象 物 に 発 生 す る 渦 電 流 の 分 布 が 健 全 な 場 合 と き ず 、減 肉 等 の 損 傷 が
ある場合とで変化することから、検出信号の変化により損傷の有無や評価を行うものであ
る。
渦 流 磁 気 検 査 の 一 種 で CUI損 傷 に 適 し た 方 法 と し て パ ル ス 渦 流 磁 気 検 査 法 が あ る 。
図 5.1.3-1 渦 流 磁 気 検 査 法 の基 本 原 理
1)
パルス渦 流 磁 気 検 査 法 の測 定 原 理
図 5.1.3-2 に パ ル ス 渦 流 磁 気 検 査 法 の 基 本 原 理 を 示 す 。
図 5.1.3-2 パルス渦 流 磁 気 検 査 法 の測 定 原 理
パ ル ス 渦 流 磁 気 検 査 法 は 、 図 5.1.3-2 に 示 す よ う に 、パ ル ス 電 流 を 励 磁 コ イ ル に 供 給
し検査対象物に発生するパルス状の渦電流の減衰特性が試験体の厚さと相関がある
ことを利用して減肉の有無や評価を行う方法である。パルス電流は、通常の渦流磁気
検査で用いる交流電流に比べ大きな電流、すなわち大きな磁場を発生させることがで
き 、 そ の た め 、 セ ン サ と 検 査 対 象 物 間 の 距 離 (リ フ ト オ フ と い う )が 大 き く て も 検 査 が
-66-
可能で、発生する渦電流の強度も大きくできる。
励磁コイルにパルス電流を供給するとパルス状の渦電流が検査対象物表面に発生す
る 。 パ ル ス 渦 電 流 の 持 続 時 間 τ は τ =μ σ d 2 (μ : 検 査 対 象 物 の 透 磁 率 、 σ : 検 査 対 象
物 の 誘 電 率 、 d: 検 査 対 象 物 の 厚 さ )で 表 さ れ る た め 、 腐 食 に よ る 減 肉 等 に よ り 厚 さ が
小さくなった場合には、持続時間が短くなる。このように、パルス渦流法では、渦電
流の持続時間を測定し、損傷による厚さの減少を測定する検査手法である。
発生する渦電流の範囲をフットプリントという。渦流法で検出可能な最小断面欠損
率 は こ の フ ッ ト プ リ ン ト 面 積 に 対 す る 割 合 で 決 ま り 、ほ ぼ そ の 30 %程 度 以 上 と さ れ て
いる。フットプリントサイズは検出精度上きわめて重要な因子であり、検査者はこれ
をあらかじめ認識してからスクリーニングを始めなければならない。使用するセンサ
ごとにフットプリント径はリフトオフに比例した一定の関係を示す。通常、フットプ
リ ン ト 径 は 保 温 材 厚 さ す な わ ち リ フ ト オ フ の ほ ぼ 2倍 を と る 。例 え ば 50mm厚 さ の 保 温
材 で あ れ ば フ ッ ト プ リ ン ト 径 は ほ ぼ 100mmと な る 。こ の と き 、例 え ば 30mm径 の 3mm
減 肉 の CUI損 傷 断 面 積 部 は パ ル ス 渦 流 で は 100mm径 の 円 盤 全 体 の 減 肉 に 換 算 さ れ 評
価 さ れ て し ま う の で 、そ の 損 傷 を セ ン サ は わ ず か 0.3mmの 減 肉 と 認 識 す る 。フ ッ ト プ
リントサイズは保温材被覆カバー材質によっても大きく変化する。カバー材質が強磁
性体つまり、亜鉛鉄板製であると非磁性のアルミ製やステンレス製に比べてフットプ
リ ン ト 径 は 約 50%増 加 し 、 精 度 低 下 の 大 き な 要 因 に な る 。 先 に 示 し た 例 で は 0.3mmが
0.15mmと さ ら に 半 減 す る こ と に な る 。
小径配管では、フットプリントと対象配管の曲率について特に注意が必要である。
2) パルス渦 流 磁 気 検 査 法 の検 査 例
適 用 状 況 例 を 図 5.1.3-3に 示 す 。図 の よ う に セ ン サ を 保 温 材 カ バ ー に 押 付 け て 一 定 時 間
保 持 さ せ る た め に 高 所 の オ ン サ イ ト 配 管 で は 足 場 が ほ ぼ 必 須 と な る 。海 外 で は 非 磁 性 の
ア ル ミ 製 や ス テ ン レ ス 製 カ バ ー が 主 流 で あ る が 、わ が 国 で は カ バ ー に 亜 鉛 鉄 板 が 使 用 さ
れ る こ と が 多 く 、こ の 対 策 が 適 用 上 の 課 題 で あ る 。ま た 、 図 5.1.3-4 に 計 測 結 果 例 を 示
す。
図 5.1.3-3 パルス渦 流 磁 気 検 査 の適 用 例 (INCOTEST)
-67-
4" pipe - location "f"
Nominal Thickness
Sheeting Type
Axial Grid
Circ. Grid
Data File name
Ref. Point
Used Probe
Probe Setting
Operator
Date of examination
: 4,5 mm
: Galvanized
: 5 cm
: 5 cm
: Incotest.dat
: D4
: V1.0
: V10W4G10NF
: D.Bellistrí, J.Berk
: 19/11/2008
Points of interest
Circular direction Axial direction
D
4
G
8
G
9
Value
100%
89%
89%
Axial measuring direction
Result in %
AWT 1
2
A
93
96
B
94 101
C
96
97
D
95
98
E
98
99
F
94
98
G
98
97
H
95
94
I
98
95
J
93
93
K 100 97
L
96 100
100R
3
4
5
6
95
94
94
96
100 97
98
95
101 100 96
93
95 100R 95 100
98 100 94
98
99
97 100 93
96
93
93
94
99
92
97
94
98
95 100 98
100 98
99
96
97
95
94
94
94
96
97
96
7
98
95
95
95
94
95
95
95
96
96
93
94
8
95
96
96
96
94
92
89
97
95
98
98
97
9
97
95
95
96
97
95
89
91
97
94
101
95
55-59
60-64
65-69
10
97
96
95
98
98
98
95
91
94
96
95
97
11
94
94
97
98
98
98
94
97
99
99
96
96
12
98
95
98
95
95
96
97
91
98
93
98
96
13
98
96
100
97
96
98
96
98
97
98
98
93
14
99
97
95
98
94
93
95
95
98
95
97
96
15
93
94
95
99
93
92
94
95
95
96
97
98
16
95
97
97
99
92
93
94
96
96
97
97
94
17
98
94
95
95
96
95
98
94
94
98
97
99
18
19
93
98
94
97
95
98
94
94
97
96
97
92
94
99
96
95
96
96
93
98
100 100
98
99
20
94
98
98
94
96
92
94
94
92
93
95
95
Circumferential
measuring
direction
reference point
Colors legend in %
45-49
50-54
70-74
75-79
80-84
85-89
90-94
95-99 100-104 >104
図 5.1.3-4 パルス渦 流 磁 気 検 査 の計 測 結 果 例 (INCOTEST)
5.1.4
1)
水 分 測 定 の基 礎 原 理 と解 説
中性子水分計
中性子線源から放射された高速中性子が水分中の水素に衝突するとエネルギーを失
っ て 低 速 な 熱 中 性 子 に 変 化 す る 。中 性 子 水 分 計 は 、こ の 変 化 量 が 水 分 量 に 比 例 す る こ と
を 利 用 し て 熱 中 性 子 量 か ら 水 分 量 を 測 定 す る 。水 分 量 は 中 性 子 を 照 射 し た 部 分 の 保 温 材
全 体 か ら の 平 均 的 な 情 報 を 与 え る の で 配 管 外 表 面 だ け の 情 報 は 得 ら れ な い 。雨 天 、保 温
材そのものの材料中の水素含有量、保温材厚さに影響される。
図 5.1.4-1 中 性 子 水 分 計 の測 定 例 (CPN 社 )
-68-
2) 赤 外 線 サーモグラフィ
保温材カバー表面から発する赤外線放射量をスキャンすることによって、温度差を
定量的に識別し、カメラまたはビデオ画像として可視化、記録化できる。保温材表面
の温度分布の高温部(ホットスポット)から保温材の劣化や水分の存在を予測するも
の で あ る 。 た だ し CUIの 検 出 と は 直 接 に は 結 び つ か な い 。 CUIが 発 生 し て い る 箇 所 で
は 30℃ 以 上 の 温 度 差 が あ っ た と の 経 験 事 例 も 紹 介 さ れ て い る が 、実 際 に は プ ラ ン ト ご
と に 知 見 の 積 み 重 ね や デ ー タ 蓄 積 の 必 要 が あ る 。 図 5.1.4-2 で は 赤 い 部 分 が 表 面 温 度
の高い部分である。
図 5.1.4-2 赤 外 線 サーモグラフィ撮 像 例 (Flir 社 )
-69-
5.2
測 定 機 器 の種 類
ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 用 の 検 査 機 器 の 一 覧 を 表 5.2-1 に 、 水 分 測 定 技 術 等 に つ い て は 表
5.2-2 に 示 す 。
表 5.2-1 スクリーニング検 査 用 機 器 一 覧
NDT技 術
ガイド波
超音波検査法
分類
圧電式
旧世代
圧電式
新世代
磁歪式
商 品 名 (例 )
メーカー
Teletest
Plant Integrity Ltd.
Wave Maker
SE16
Teletest Focus
Wave
MakerG3/G4
MsS
Guided Ultrasonic Ltd.
Plant Integrity Ltd.
Guided Ultrasonic Ltd.
EMAT/SH
波
圧電素子
/SH波
圧電素子
/SH波
圧電素子
/レイリー
波
パルス渦 流 磁 気
検査法
デジタル放 射 線
リアルタイム
放射線検査法
イメージン
グプレート
記録
レール
移動型
小型パル
スX線
線量計式
TTS㈱
JFEエンジニアリング㈱
非破壊検査㈱
東亜非破壊検査㈱
TTS㈱
非破壊検査㈱
CXR㈱
新日本非破壊検査㈱
LIMA TEST
Southwest Research
Institute
日 立 エンジニアリング&
サービス㈱
新 日 本 非 破 壊 検 査 ㈱-
九州電力㈱
IZAP
Isonic 2001
SonotronNDT
東亜非破壊検査㈱
Corrosion
JFEエンジニアリング㈱
Scope
レイリースキャン
非破壊検査㈱
非破壊検査㈱
Applus RTD
東亜非破壊検査㈱
国産機器
近 距 離 ガイド波
超音波検査法
導入企業例
INCOTEST
MKⅡ/MKⅢ(強 磁
性体外装板対応)
(PEC)
FCR AC-7
CR50XP
Thru-VU
foX-Rayzor
Lixi-Profiler
Lixi-Gadoscope
Xバンド小 型 線 形 加 速 器 式 X 商品化予定
線源
Shell Global Solution
富 士 フィルム㈱
GE Inspection
Technologies
Omega International
Technology Inc.
Vidisco
Lixi Inc
(独 法 )産 業 技 術 総 合 研
究所
-70-
石川島検査計測㈱
多数
多数
CXR㈱
非破壊検査㈱
全 国 検 査 サービス㈱
表 5.2-2 水 分 測 定 等 技 術 一 覧
測定対象
保温材中
水分量
保温材外表
面温度
水分量
塩化物濃度
分類
中性子
水分計
サーモグラ
フィー
ACMセンサ
タイプ
線 源 2 5 2 Cf+
マルチスリッ
トコリメータ
241
Am/Be
メーカ(開 発 者 )
日 立 エンジニアリン
グ&サービス㈱
(茨 城 県 /日 立 製 作
所 ほか)
CPN
252
Cf
Force Technology
赤 外 線 カメ
ラ
ぬれ時 間 、
塩化物濃度
Flir systems Inc.
*)
コスモデザイン/
北斗電工
(東 京 大 学 )
商 品 名 (例 )
水処伝
MCM-2
Hydrotector
Moisture
Probe
Flir Therma CAM
P65
ACM
導入会社例
日 立 エンジニアリ
ング&サービス
㈱
フリアシステムス
ジャパン㈱
*)このほかに多 数 あり
5.3
非 破 壊 検 査 技 術 の目 的 と基 本 的 な考 え方
CUIの 非 破 壊 検 査 は ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 が 主 目 的 で あ る 。 ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 と は 、 膨
大な保温配管の中から保温材を除去せずに、最優先に剥離すべき対象配管の選択、または
対象配管内の剥離すべき損傷位置を特定する作業をいう。
1)
スクリーニング検 査 における検 出 精 度
一 般 的 に 非 破 壊 検 査 は 損 傷 評 価 に 用 い 、検 出 損 傷 の 大 き さ や 深 さ が 想 定 さ れ る 許 容 範
囲 に あ る か ど う か が 重 要 な 評 価 に な る の で 、検 出 精 度 が 重 要 で あ る 。し か し 、本 ガ イ ド
ラ イ ン に お け る 非 破 壊 検 査 は 損 傷 の 有 無 と そ の 位 置 の 評 価 が 重 要 で 、前 者 に お け る 意 味
合 い で の 検 出 精 度 は 必 要 と さ れ な い 。し か し な が ら 、ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 に お い て は ス
ク リ ー ニ ン グ で き る 損 傷 の 範 囲 の 認 識 は 本 質 的 に 重 要 で あ る 。損 傷 が な い の に あ る と 評
価 し て し ま う 誤 り と 損 傷 が あ る の に な い と 評 価 し て し ま う 誤 り (見 逃 し )が あ る が 、特 に
見 逃 し の 可 能 性 は 0に は な ら な い こ と を 認 識 し て お く こ と が 大 切 で あ る 。見 逃 し の な い
技 術 は 存 在 し な い 。 予 め そ の NDT機 器 の 特 性 、 検 出 し う る 最 小 損 傷 サ イ ズ や 検 出 し に
くい損傷形状などの限界を認識しておくことは極めて重要である。
2)
適 用 方 法 の考 え方
こ れ ま で の ス ク リ ー ニ ン グ は 、保 温 材 カ バ ー 上 か ら の 目 視 検 査 で 行 わ れ る こ と が 多 い
が 、抽 出 さ れ た 異 常 箇 所 の 剥 離 検 査 で 実 際 に CUIに よ る 損 傷 が 検 出 さ れ る 割 合 は き わ め
て 低 い 。逆 に 予 想 外 の 箇 所 か ら の 漏 洩 事 故 を 撲 滅 で き て い な い 。そ の た め 目 視 検 査 に 必
要最小限の非破壊検査を加えることで検出率を確実に改善することが求められている。
しかし、万能な非破壊検査技術はなく、それぞれの技術に固有の特徴や限界がある。
ま た 、検 査 コ ス ト も 無 視 で き な い 。し た が っ て 対 象 と な る 膨 大 な 配 管 す べ て を 一 様 に ス
ク リ ー ニ ン グ す る こ と は 無 駄 で あ り 、優 先 度 を 決 め 、も っ と も 疑 わ し い 箇 所 に 集 中 し て
適 用 す べ き で あ る 。非 破 壊 検 査 は 各 非 破 壊 検 査 技 術 の 特 徴 を 十 分 認 識 し た 上 で 、単 独 あ
-71-
る い は 複 数 を 組 み 合 わ せ 、効 率 的 に ス ク リ ー ニ ン グ 効 果 を あ げ る よ う な 適 用 あ る い は 運
用方法がポイントであり、また最大の課題といえる。
3)
水 分 測 定 技 術 の目 的
CUIに よ る 損 傷 を 直 接 探 す の で は な く 、CUIの 発 生 の 起 因 に な り う る 腐 食 環 境 を 先 ず
絞 り 込 も う と す る た め (一 種 の ス ク リ ー ニ ン グ 方 法 と し て )に 使 用 や 、劣 化 予 測 の た め に
基 礎 デ ー タ を 採 取 す る た め に 用 い ら れ る 水 分 測 定 方 法 を い う 。第 2章 の 腐 食 発 生 メ カ ニ
ズ ム に 記 載 の よ う に 、CUIの 発 生 要 因 と し て は 水 分 の 存 在 が も っ と も 重 要 で あ る 。中 性
子水分計と赤外線サーモグラフィによる測定はこの水分の存在を直接的にあるいは間
接 的 に 測 定 す る 。逆 に 水 分 が 存 在 し て い た か ら と い っ て 必 ず し も CUIが 発 生 し て い る と
は限らないことも注意することが必要である。
今後メカニズムの解明によって詳細な加速条件等が明らかになれば水分測定を用い
た剥離箇所の特定精度が向上することが期待される。
5.4
非 破 壊 検 査 技 術 の効 果 と留 意 点
非 破 壊 検 査 技 術 (水 分 測 定 技 術 を 含 む )の 効 果 (特 徴 、 使 用 推 奨 す る ケ ー ス ・場 所 )と 使 用 上
の 留 意 点 を 要 約 し た も の を 表 5.4-1(1)(2)に 、 水 分 測 定 技 術 等 を 表 5.4-2に そ れ ぞ れ 示 す 。
1)
対 象 配 管 に応 じた技 術 の選 定
各非破壊検査技術にはそれぞれ固有の特徴と効果を発揮しやすい配管線形と配管の
設 置 環 境 が あ る 。 し た が っ て 、 対 象 配 管 の レ イ ア ウ ト ・位 置 、 形 状 、 ス ク リ ー ニ ン グ 目
的に応じ、最適な技術を選定することが肝要である。
2)
スクリーニング範 囲 の計 画
各 検 査 技 術 に は 固 有 の 検 査 可 能 範 囲 が あ る の で 、事 前 に ス ク リ ー ニ ン グ 対 象 範 囲 を 絞
り込み、得ようとする情報のレベルを明確化しておく必要がある。
-72-
表 5.4-1(1) ガイド波 超 音 波 検 査 技 術 の特 徴 と留 意 事 項
NDT
ガ イド 波 超 音
波検査法
技術分類
圧電素子
(旧 世 代 )
圧電素子
(新 世 代 )
特徴
使 用 を推 奨 するケース・場 所
・ 数 10m( 条 件 が よ け れ ば 片 側 80m) の 配 ・ 高 所 の 配 管 を 足 場 架 設 なし に 、 地 上
から検 査 したい。
管 長 を一 度 に検 査 でき、長 さ方 向 の位
・長 距 離 配 管 を能 率 よくスクリーニング
置 を予 測 可 能 。
したい。
・足 場 不 要 にできる場 合 がある。
・埋 設 部 をそのまま検 査 したい。
・検 査 時 間 が短 い。
(距 離 は短 くなる)
・検 査 できる配 管 径 の範 囲 が広 い
(4から48B)。
・同 上
・旧 世 代 よりも長 距 離 が検 査 可 能
・円 周 方 向 の欠 陥 位 置 が推 定 可 能
・最 小 欠 陥 検 出 能 が向 上 し見 落 としが減
少
(断 面 欠 損 率 で3%程 度 )
・配 管 展 開 図 表 示 機 能 の追 加 、客 観 評
価 が容 易
磁歪式
・圧 電 素 子 (旧 世 代 )と同 様
・隣 接 配 管 との間 隔 が狭 くても良 い
近 距 離 ガ イ ド EMAT(直 流 ・目 視 で検 査 不 能 な欠 陥 を検 出 可 能
波超音波法
磁 化 )+SH ・センサは接 触 媒 質 不 要
波
圧電素子
・目 視 で検 査 不 能 な欠 陥 を検 出 可 能
+SH波
圧電素子
・基 本 的 に同 上
+レイリー波
・基 本 的 に同 上
使 用 上 の留 意 点
・構 造 変 化 部 の先 の検 査 は困 難 。
(エルボ1個 までは可 能 )
・ セ ン サ セ ッ ト に 約 300mm 保 温 材 を
外 す。
・隣 接 配 管 間 隔 75mmが必 要 。
・欠 陥 断 面 積 が小 さいものは検 出
できない。
(断 面 欠 損 率 で10%程 度 まで)
・あばた状 全 面 腐 食 や 割 れの検 出
には適 さない
・基 本 的 に同 上
・圧 電 素 子 (旧 世 代 )と同 様
・圧 電 素 子 (旧 世 代 )と同 様
・センサを残 置 し経 時 変 化 を求 める
(配 管 間 隔 は狭 くても可 )
・狭 隘 で目 視 検 査 困 難 な架 台 等 との接 ・センサを接 触 させるため保 温 材 剥
触 部 を詳 細 に検 査 したい場 合
離 が必 要
・検 査 範 囲 は1-2m程 度
・基 本 的 に同 上
・基 本 的 に同 上
・基 本 的 に同 上
-73-
・基 本 的 に同 上
・塗 装 や表 面 凹 凸 の影 響 受 ける
・検 査 範 囲 は400mm程 度
表 5.4-1(2) パルス渦 流 磁 気 検 査 法 および放 射 線 検 査 法 の特 徴 と留 意 事 項
NDT
パルス渦 流
磁気検査法
デジタル放 射
線法
リアルタイム
放射線
技術分類
従来型
特徴
・保 温 材 カバー外 面 からの非 接 触 検
査可能
・欠 陥 サイズを層 別 評 価 (メッシュ表
示)
・放 射 線 のような管 理 が不 要
亜 鉛 鉄 板 対 ・基 本 的 に同 上
応型
・亜 鉛 鉄 板 外 面 から検 出 能 力 が向 上
イメージング ・保 温 材 剥 離 せずに肉 厚 測 定 可 能
プ レ ー ト 記 ・剥 離 検 査 に近 い検 査 精 度 (0.1mm程
度)
録
・内 外 面 の両 方 の減 肉 評 価 が可 能
・フィルム方 式 に対 して記 録 、解 析 処
理 が向 上
自 立 または
レール移 動
型
・マッピング表 示 可 能
・配 管 全 体 の欠 陥 をスキャンできる
使 用 を推 奨 するケース・場 所
・ある程 度 絞 込 まれた箇 所 周 辺 の
粗 い損 傷 評 価 を行 い、更 に範 囲
を絞 込 む場 合
・保 温 材 が比 較 的 薄 く、配 管 径 が
大 きい、大 面 積 損 傷 に適 す
・基 本 的 に同 上
・ 対 象 部 位 の保 温 材 を 剥 離 せずに
損 傷 評 価 をしたい場 合
・複 雑 な分 岐 がある配 管 の詳 細 な
検 査 の場 合
・スクリーニング検 査 で直 管 の欠 陥
分 布 図 を得 たい場 合
小 型 パルス ・ 小 型 軽 量 / 電 池 駆 動 で ス ポ ッ ト 的 な ・ 複 雑 小 径 配 管 の バル ブ、ノズル 、
X線
検 査 に適 する
ゲージ等 のスポット的 検 査 用
・ 小 型 軽 量 で 管 軸 / 円 周 方 向 に 手 動 ・簡 易 に小 径 管 の内 外 面 の損 傷 評
価 をしたい場 合
走 査 が可 能
・ 透 過 線 量 計 測 法 の た め 、 定 量 的 に ・小 範 囲 を連 続 的 にスクリーニング
したい場 合
肉 厚 変 化 を捉 えられる
X バ ン ド 小 型 線 形 加 速 器 式 ・超 小 型 化 の可 能 性 あり
・小 径 ノズル配 管 、ゲージ配 管 等 の
X線 源
スポット検 査 用 (将 来 )
線 量 計 プロ
フィール型
-74-
使 用 上 の留 意 点
・スチームトレースや配 管 サポート、配 管
間 隔 小 などは制 約 となる
・能 率 が悪 い
・亜 鉛 鉄 板 カバーには不 適
・10B以 下 の中 小 径 管 には適 さない
・基 本 的 に同 上
(亜 鉛 鉄 板 カバーには対 応 )
・2本 並 列 配 管 では4重 壁 となり精 度 が
低 下 する
・放 射 線 の届 出 、管 理 区 域 等 の管 理 が
必要
・局 所 的 な情 報 しか与 えない
・照 射 方 向 によっては見 逃 しの可 能 性
あり
・中 小 径 管 に限 られる
・デジタル放 射 線 より精 度 低 い
・放 射 線 の届 出 、管 理 区 域 等 の管 理 が
必要
・レールの設 置 が必 要
・機 器 走 行 に支 障 ない直 管 に限 られる
・放 射 線 の届 出 、管 理 区 域 等 の管 理 が
必要
・接 線 陰 影 法 のため角 度 により見 逃 の
可 能 性 あり
・欧 米 で使 用 実 績 多 いが、日 本 で実 績
ほとんどない
・放 射 線 の届 出 、管 理 区 域 等 の管 理 が
必要
・開 発 中
表 5.4-2 水 分 測 定 技 術 等 の特 徴 と留 意 事 項
測定対象
測定原理
方 式 (例 )
保温材中水分量
中性子後方散乱に
よる熱 中 性 子 量 測
定 から水 分 量 予 測
従来型中性子
水 分 計 (CPN)
従来型中性子
水 分 計 (Force
Technology)
保温材外表面温
度分布
保 温 材 中 の水 分 の
存 在 を外 表 面 温 度
差 として把 握
赤 外 線 サーモ
グラフィ
保 温 材 下 ぬれ
塩化物濃度
腐 食 電 流 の変 化 に
より、ぬれ時 間 、塩
化 物 濃 度 を計 測
ACMセンサ
特徴
使 用 を推 奨 する
場 所 使 用 上 の留 意 点
ケース・場 所
・水 分 の侵 入 がめ予 想 ・ 水 分 量 を 測 定 す る 、 CUI 発 生 と は
・保 温 材 剥 離 不 要
直 接 には結 びつかない
される箇 所 を運 転 中
・測定時間は1箇所数
に ス ポ ッ ト 的 な 状 態 ・雨 天 、保 温 材 の水 素 含 有 量 、保 温
秒 、現 場 で水 分 滞 留 の
材 厚 さに影 響 される
監 視 方 法 として有 効
判断可能
・使 用 温 度 60℃以 下
・従 来 型 より軽 量
・測 定 範 囲 は10×10cm程 度 で広 範
囲 の測 定 には時 間 がかかる
・放 射 線 管 理 手 続 き、管 理 要
・ ア ー ム 付 き で 5m 以 下 の 高 所 配 管
は足 場 無 しで測 定 可 能 、それ以
上 は足 場 を要 する
・専 門 技 能 員 が必 要
・剥 離 せずに保 温 材 の断 ・ 水 分 の 浸 入 が 予 想 さ ・ 水 分 存 在 の 予 測 で 、 CUI 発 生 と は
直 接 には結 びつかない
れる箇所 を運転中
熱 性 能 劣 化 や水 分 の
の ス ポ ッ ト 的 な 状 態 ・表 面 のぬれや、太 陽 光 の反 射 に影
存 在 を検 知
響 される
監 視 方 法 として有 効
・放 射 線 管 理 がいらない
・適 切 な精 度 を得 るには適 切 な視 野
が重 要
・大 気 腐 食 環 境 として、特 ・ CUI 発 生 原 因 の う ち 、 ・CUI発 生 原 因 のスポット位 置 を測
ぬ れ の 影 響 を 究 明 定 す る た め 、 CUI 特 有 の 局 部 的 な
定 位 置 におけるぬれ時
する基 礎 収 集 および 発 生 原 因 の 究 明 に は 直 接 結 び つ
間 の定 量 的 な観 測 が
研 究 的 手 法 として有 かない
可能
用
-75-
5.5
対象配管の状況に応じた非破壊検査の選定事例
5.4ま で に 述 べ た 非 破 壊 検 査 お よ び 水 分 測 定 技 術 の 基 礎 的 理 解 に 基 づ き 、効 率 的 な ス ク リ
ー ニ ン グ を す る た め に は 、① 配 管 の 設 置 環 境 、② レ イ ア ウ ト ・位 置 、③ 形 状 、④ ス ク リ ー ニ
ングにより得たい情報レベル等の対象配管の状況、条件に相応した最適な機器の選定を行
う必要がある。また、必要に応じ、複数の機器を組み合わせて用いる場合もある。
こ れ ら の 選 定 、運 用 の 仕 方 を 誤 る と 、能 率 の 低 下 や 検 査 コ ス ト の 高 騰 を ま ね く ば か り か 、
必要とする確度のスクリーニング効果が得られず、せっかくの作業が徒労に帰することに
なる。以下に代表事例を解説する。
5.5.1
オフサイト配 管 1)
地上長距離配管
図 5.5.1-1 に 示 す よ う な バ ー ス 、 タ ン ク 間 輸 送 配 管 、 桟 橋 配 管 等 の オ フ サ イ ト 配 管 は 長 距
離ではあるが直線区間が長く、地上または地上ピット内ラック上に設置されている。この
場合はガイド波が有効である。ガイド波は、長い直線配管を高能率でスクリーニングでき
る 。 中 間 に 伸 縮 対 策 と し て の Uベ ン ド 部 が あ る 場 合 も エ ル ボ 1 個 を 挟 ん で の 検 査 範 囲 を 設
定すれば検査は可能である。
能率は、事前にセンサの取り付け位置を決定しその部分の保温材を取り外しておけば1
回 20~ 30分 で 20m~ 80mの 延 長 距 離 の 配 管 が ス ク リ ー ニ ン グ で き 、 1日 10箇 所 の 計 画 で は
200m~ 800mの 延 長 距 離 の 配 管 が ス ク リ ー ニ ン グ で き る 。
放射線はリアルタイムであっても能率が低いので適用は難しい。ただし、スクリーニン
グ検査では物足りず、損傷評価も加味した詳細な情報を求める場合は、損傷の展開図分布
を把握できる、自走式またはレール移動型リアルタイム放射線を検討することも必要であ
る 。 こ の 場 合 は 1.5m/min程 度 の 能 率 で 一 日 60m程 度 の 距 離 が 検 査 可 能 で あ る 。
旧 世 代 型 ガ イ ド 波 に よ り 重 油 基 地 か ら 重 油 タ ン ク ま で の 約 1.5kmの 全 面 ス ク リ ー ニ ン グ
を 5日 間 で 完 了 し た 例 が あ る 。こ の 場 合 の セ ン サ 設 置 ピ ッ チ は 直 線 部 で 約 60mで あ っ た と 報
告されている
図 5.5.1-1 オフサイト配 管 の例
2)
架空長距離配管
通 常 は 足 場 な し に ア ク セ ス で き な い 架 空 ラ ッ ク 上 配 管 は 図 5.5.1-2の よ う に ガ イ ド 波
-76-
に よ り 1エ ル ボ を 介 し て 垂 直 配 管 最 下 部 ( 地 上 部 ) に 設 置 し た セ ン サ か ら 足 場 設 置 な し
に ス ク リ ー ニ ン グ 検 査 で き る 。ラ ッ ク 上 は 多 数 の 配 管 が 複 数 並 列 し て 配 置 さ れ て い る こ
と が 多 い 。そ の 配 管 相 互 の 間 隔 が 75mm以 上 あ る か な い か で セ ン サ の 選 定 、ガ イ ド 波 装
置の選定を変えなければならない。
CUI
Pipe
Pipe racksRacks
15m
5m
Wavemaker G3
受 発 信受発信リング
リング
3B pipe
垂直配管の立ち上がり部からパイプラック上配管をスクリーニングする。
図 5.5.1-2 架 空 長 距 離 配 管 のガイド波 適 用 例
5.5.2 オンサイト配 管
1)
タワー類 付 属 の垂 直 立 上 り配 管
塔サプライ配管など塔に添って垂直
に伸
び る 配 管 は 地 上 数 10mの 高 所 と
なり、地上から何層にも亘る大掛かり
な足場が必要となる。この場合はガイ
ド波が有効であり、地上配管垂直部か
ら足場なしにスクリーニングできる。
あ る 製 油 所 で 18の 蒸 留 塔 で 56ラ イ
ン の タ ワ ー 配 管 が あ り 、ガ イ ド 波 に よ
り 19箇 所 の 異 常 部 が 検 出 さ れ た 。こ の
例 で は 、剥 離 検 査 も し く は 補 修 の た め
の足場架設箇所を絞り込むことによ
り後工程のコストを削減することが
図 5.5.2-1 オンサイト複 雑 配 管 の例
可能となった。
2)
複 雑 プロセス配 管
図 5.5.2-1の よ う な 分 岐 、 曲 管 、 バ ル ブ や フ ラ ン ジ を 含 む 複 雑 な 配 管 は オ ン サ イ ト 配
管 の 特 徴 で あ る 。 こ の よ う な 複 雑 な 配 管 の 構 造 変 化 部 は CUI発 生 の 可 能 性 の 高 い 箇 所
といえ、パージや計測器取り出しのための小径管についても注意が必要である。
こ の よ う な 直 線 区 間 が 短 く 、複 雑 に 屈 曲 し 、バ ル ブ ・フ ラ ン ジ 継 手 、エ ル ボ の 多 い 配
管 に は 対 し て は 、ガ イ ド 波 、パ ル ス 渦 流 や 自 走 式 リ ア ル タ イ ム 放 射 線 は 不 向 き で あ る 。
複雑な配管に対しては、
-77-
① 通常のフィルム撮像放射線
② デジタル放射線
③ 小 型 パ ル ス X線
④ 線量計プロフィール型
が選定対象装置として考えられる。
しかし、放射線検査方法は検査範囲が狭い、多くの検査時間を必要とするなど制約
を受ける他にオンサイト配管では検査のための足場架設も大掛りになることが多い。
このような条件の下でスクリーニング検査を実施する場合は、検査箇所を絞り込むこ
とが肝要である。絞り込みは、雨水や海塩等の設置環境や類似配管を含む過去の検査
実績などを勘案して総合的に検討する。また、検討データとして水分測定結果を参照
することも有意義であると考えられる。
なお、スクリーニング検査に大規模な足場が必要な場合には、スクリーニング検査
で は な く 剥 離 (部 分 剥 離 を 含 む )検 査 へ の 移 行 も 考 慮 の 余 地 が あ る と 考 え ら れ る 。
-78-
Fly UP