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今年の院内感染対策の トピックス

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今年の院内感染対策の トピックス
今年の院内感染対策の
トピックス
大阪大学
感染制御部
朝野和典
本日の内容
• 今シーズンのインフルエンザはどうなる?
• 新型インフルエンザ等特別措置法の解説と
問題点
• MERSとH7N9の解説
• 抗菌薬何を選ぶ?いつまで使う?
• 肺炎で死ぬことについての考察
今シーズンのインフルエンザは
どうなる?
• 日本では2年続けて、A(H3)が主体の流行であった。
2012-2013年シーズン北半球
2012-2013年シーズン南半球
オーストラリア
南アフリカ
タイ王国
オーストラリア
南アフリカ
タイ王国
ヴェトナム
ドイツ
日本
2012-2013年シーズン南半球
今シーズンのインフルエンザ流行予測
• 今シーズンはA(H3)のみでなく、A(H1N1)
pdm09が混在した流行になるだろう。
• 流行の規模はA(H1N1)pdm09がこの2シーズ
ン少なかったため、やや患者数は多くなるだ
ろう。
• 特に、A(H1N1)pdm09は高齢者や成人で重症
化する可能性があり、注意が必要。
6月
4/16
政府行動計画案 パブリックコメント
4/13
法律の施行
政令・施行日政令の公布
政令案 パブリックコメント
有識者会議 中間とりまとめ
有識者会議の設置
都道府県担当課長会議の開催
5/11
5月 6月 8月
19回にわたり、
会議を開催し、
検討
5/14
ガイドライン案 パブリックコメント
2/7
2月
4月
25年
5月
政府行動計画の策定
24年
新型インフルエンザ等特別対策措置
法
ガイドラインの策定
法律の公布
新型インフルエンザ等特別対策措置法
についての解説と問題点
新型インフルエ
ンザ等対策特別
措置法(政令)
新型インフルエ
• 新型インフルエンザ
ンザ等対策政府
等対策ガイドライン
行動計画
都道府県新型イ • 都道府県新型イン
ンフルエンザ等
フルエンザ等対策
対策行動計画
マニュアル
市町村新型イン
フルエンザ等対
策行動計画
新型インフルエンザ
新型インフルエンザ等対策特別措置法
インフルエンザ等対策特別措置法
(平成二十四年五月十一日法律第三十一号)
平成二十四年五月十一日法律第三十一号)
第一条
この法律は、国民の大部分が現在その免疫を獲得していない
こと等から、新型インフルエンザ等が全国的かつ急速にまん延
し、かつ、これにかかった場合の病状の程度が重篤となるおそ
れがあり、また、国民生活及び国民経済に重大な影響を及ぼす
おそれがあることに鑑み、新型インフルエンザ等対策の実施に
関する計画、新型インフルエンザ等の発生時における措置、新
新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命
型インフルエンザ等緊急事態措置その他新型インフルエンザ等
及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済に及
に関する事項について特別の措置を定めることにより、感染症
ぼす影響が最小となるようにすることを目的とする。
の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十
年法律第百十四号。以下「感染症法」という。)その他新型インフ
ルエンザ等の発生の予防及びまん延の防止に関する法律と相
まって、新型インフルエンザ等に対する対策の強化を図り、もっ
て新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命及び健
康を保護し、並びに国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最
小となるようにすることを目的とする。
「新型インフルエンサ
新型インフルエンザ
インフルエンザ等特別対策措置法」
等特別対策措置法」は
「災害対策基本法」
災害対策基本法」の感染症版である
感染症版である
前国立感染研情報センター
前国立感染研情報センター長
センター長 岡部信彦先生
新型インフルエンザ等対策が自然災害等や他の感染
症対策と異なる点
• 新型インフルエンザ等の流行は全国で同時に発生することが予
想されるため、自然災害のように被災していない地域からの応
援を求めることは困難である。
⇒各自治体が自己完結型の対策を行う
• 新型インフルエンザ等の被害は、数週間から数か月の中長期に
渡り発生することが想定される。
⇒各流行の段階に応じた対応を行う
• 医療従事者の感染リスクが最も高いことから医療体制の確保に
影響を及ぼす。
⇒医療の維持が住民の生命予後を改善するが、医療
者の危険は増す
• ワクチンの必要量を確保するためには相当期間を要する。
⇒流行のピークを遅らせ、かつ山を低くする
新型インフルエンザ等
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語
の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
感染症法第六
条第七項に規
定する新型イン
フルエンザ等感染
症
新型インフルエンザ/再興型インフルエンザ
同条第九項に
規定する新感
染症
人から人に伝染すると認められる疾病であって、
既 に知られている感染性の疾病とその病状
又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該
疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であ
り、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命
及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると
認められるものをいう。かつ、全国的かつ急速
なまん延のおそれのあるものに限る。(例:
SARS)
ヒト-ヒト感染
新型インフ
ルエンザ
(例;H5N1、
H9N7など)
新型インフ
ルエンザ等
対策特別
措置法
新感染症
(例;SARS、
MERS)
再興型イン
フルエンザ
(例;スペイ
ンかぜなど)
新型インフルエンザ
新型インフルエンザ等対策特別措置法
インフルエンザ等対策特別措置法が
等対策特別措置法が想定している
想定している一般的経過例
している一般的経過例
新 型 イ ン フ ル エ ン ザ 発 生
第一段階 海外で
海外で発生(
発生(病原性が
病原性が不明な
不明な段階)
段階)
政府対策本部立ち
政府対策本部立ち上げ
行動計画に基づき、基本的対処方針策定等
第二段階 病原性も
病原性も明らかになってくる。
らかになってくる。国内に
国内に侵入
判断基準は
判断基準は?
病原性等が
病原性等が強いおそれがある場合
いおそれがある場合
左 記 以 外
本部のみ継続
緊急事態宣言
外出自粛、施設の使用の制限の要請等
住民への予防接種
臨時の医療施設における医療提供 等
本部の
本部の廃止
緊急事態宣言終了
27
緊急
事態
宣言
医療体制
海外発生期
医療対応
帰国者・接触者外来―感染症指定医療機
関における入院
国内発生早期
疫学的リンクが追える(帰国者・接触者外
来―感染症指定医療機関における入院)
国内感染期
疫学的リンクが追えず、隔離が困難となる
状況(流行期)一般医療機関での診療、重
症者のみ入院
感染症指定医療機関(感染症
法第38条)
• 域内発生早期においては、積極的に患
者等を受入れ、適切に医療の提供を行
う。
指定地方公共機関を含む地
域の中核的医療機関、公的医
療機関(日赤病院、済生会病
院、労災病院等を指す。以下
同じ。)及び協力医療機関
• 帰国者・接触者外来の開設や新型イン
フルエンザ等患者の積極的な受入れ
等適切に医療の提供を行う。
一般の医療機関(内科・小児
科等、通常、感染症の診療を
行う全ての一般の医療機関を
指す。以下同じ。)
• 域内感染期においては、院内感染防止
対策を行い、新型インフルエンザ等患
者を受入れ、適切に医療の提供を行う。
県内発生早期
県内感染期
感染症指定医療
機関
入院の受け入
れ
入院の受け
入れ
指定地方公共機 帰国者・接触者
関を含む地域の 外来
中核的医療機関、
公的医療機関
一般の医療機関 院内感染対策
の実施
帰国者・接触
者外来
入院の受け入
れ
重症患者の
入院
外来診療
感染者受診の
可能性
外来診療
海外・国内発生
期
臨時の医療施設
医療提供
•
•
要請とは、一定の行為について相手方に好意的な処理を期待することであり、当該
要請に応じて医療の提供等を行う医療関係者は、自らの自発的意志によって行うこ
とになる。
指示とは、一定の行為について方針、基準、手順等を示してそれを実施させることを
いい、指示を受けた医療関係者は、法的に当該指示に従う義務が生じる。ただし、
本法においては、当該指示に従わなかった場合であっても、罰則規定は置いていな
い。
*医療に関する指定公共機関の例:日本赤十字社、日本医師会
保健所の役割
1. 地域における対策
を推進する。
2. 域内発生早期に
は、積極的疫学調
査の実施とともに、
病原性等の把握
のための情報収
集を行う。
3. 保健所は、速やか
に適切な医療の
提供が行われる
よう所管区域内の
医療機関と緊密な
連携を図り、必要
な支援や調整を
行う。
社会福
祉協議
会等
郡市区
医師会
歯科医
師会
薬剤師
会
警察
保健所管
内関係機
関対策会
議
中核的
医療機
関
消防
協力医
療機関
市町村
薬局
発生前から体制準備のための組織作りが必要
新型インフルエンザ等対策行動計画では、保健所の役割が、大
きくなっており、事前に医療機関、医師会との間で、綿密な打ち合
わせと情報の交換が持続的に必要となっている。
感染症指定医療機関
指定地方公共機関を含
む地域の中核的医療
機関、公的医療機関
都道府県/保
健所設置市
保健所
地域医師会・一般の医
療機関
保健所の役割
保健所管内関係機関対策会議
• 帰国者・接触者外来
を設置する医療機関
や臨時に外来を開設
することができる公
共施設等のリストを
作成する。
• 一般の医療機関に対
して、医療機関の特
性や規模に応じた診
療継続計画の作成を
要請する。
• 院内感染防止に関す
る情報を提供する。
• 軽症患者は診療所、
重症患者は病院とい
う役割分担の調整
未発生期
• 帰国者・接触者外
来の開設について
連絡する
• 抗インフルエンザ
ウイルス薬の予防
投与や有症時の対
応を指導する。
・病診連携・病病連携等への支援
・在宅療養の支援
・臨時の医療施設の設置に関する調整
•
医療機関の収容能力を超えた場合、
軽症の患者を在宅療養に切り替え
たときの訪問診療の確保支援
• 府内未発生期以降、追加、強化される
サーベイランス。保健所はそれらの情
報の一部を毎日、もしくは1日2回情報
センターへ報告する
• ①健康監視(積極的疫学調査・検体搬送等含む) ②
検疫所長との連携・健康監視 ③健康診断 ④就業
制限 ⑤入院勧告 ⑥移送 ⑦消毒 ⑧汚染の疑い
のある物件に係る措置 ⑨死体の移動制限等
海外発生
期
府内感染
早期
府内感染
期
これからは、未発生期として、各保健所管内単
位で体制整備を行うことになる
新型インフ
ルエンザ等
対策特別措
置法(政令)
• 帰国者・接触者外来を設置
する医療機関や臨時に外来
新型インフ
を開設することができる公
ルエンザ等
共施設等のリストを作成す
対策政府行
る。
動計画
• 一般の医療機関に対して、
医療機関の特性や規模に応
じた診療継続計画の作成を
要請する。
• 院内感染防止に関する情報
を提供する。
• 軽症患者は診療所、重症患
者は病院という役割分担の
調整
• 医師会と保健所の連携
• 保健所にはマネジメント
能力が要求される
都道府県新
型インフル
エンザ等対
策行動計画
指定地方公共機
関を含む地域の
中核的医療機関、
公的医療機関
一般の医療機関
市町村新型
インフルエン
ザ等対策行
動計画
課題
• 保健所と管内医師会、医療機関はこれまで
以上に密接に連携し、新型インフルエンザ等
対策に関する<地域医療共同体>を形成し、
備えに当たることが法令で定められた。
• 視点を変えれば、保健所には、これまでの保
健所の役割を大きく超えた役割、すなわち共
同体の管理者としての「組織化」と「マネジメ
ント」能力が要求される。
SARS アウトブレイク 2003:
航空機による
航空機によるウイルス
によるウイルスの
ウイルスの国際的拡散
“感染症は広がり続けるのか…”
2003年SARS流行
週毎のSARS疑い例数 (世界で5,910, 2002年11月〜2003年7月10日)
SARS (2003年12月末まで)
• 8096 疑い例
• 774 死者(致死率:9.6%)
約4ヶ月
• 29 ヶ国
• 95% はWHO西太平洋事務局管
西太平洋事務局管
轄
動物卸業者
のクラスター
広東省
Focsian city
SARSコロナウイルスの進化
広東省の患者さん
キクガシラコウモリ
(horseshoe bat)
SARS様コロナウイルス
ハクビシン
(masked palm civet)
中間宿主
SARSコロナウイルス
ヒトに適応
MERS(
(マーズ)
マーズ)コロナウイルス
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)
2013年
年8月
月20日現在
日現在の
日現在の報告数
渡航又は
渡航又は感染して
感染して帰国
して帰国した
帰国した渡航者
した渡航者
との接触
との接触に
接触に関連した
関連した症例
した症例
4(2)
イギリス
≪イギリス≫
イギリス≫
① カタール/サウジアラビア【2012年9月発症】
② パキスタン/サウジアラビア【2013年1月発症_死亡】
③ ②の家族【2013年2月発症_死亡】
④ ②の家族【2013年2月発症】
2(1)
1(1)
≪ドイツ≫
ドイツ≫
① アラブ首長国連邦【死亡】
ドイツ
フランス
≪フランス≫
フランス≫
① アラブ首長国連邦【2013年4月発症_死亡】
② ①と病室が同室【2013年5月発症】
2(0)
3(0)
イタリア
≪イタリア≫
イタリア≫
① ヨルダン【2013年5月発症】
② ①の姪
③ ①の職場の同僚
チュニジア
≪チュニジア≫
チュニジア≫
疑い例:サウジアラビア/カタール【2013年5月発症_死亡】
① 疑い例の子供
② 疑い例の子供
ヨルダン
2(2)
1(0)
カタール
サウジアラビア
74(39)
39)
アラブ首長国連邦
アラブ首長国連邦
5(0)
サウジアラビア東部Al-Hasaでの
アウトブレイクの疫学曲線
透析室での感染対策
A病院での感染対策
A病院・ICU
B,C or D病院
A病院・透析室
市中感染
A病院・病棟
A病院・病棟
A病院・看護師長
サウジアラビア東部Al-Hasaでの
アウトブレイクにおける感染伝播
息子
ICU看護師長
感染源?
市中発症
D病院
ICU・医療従事者
透析患者
B病院
透析室
病室・家族
A病院
病室
ICU
C病院
MERSコロナウイルス確定例の流行曲線
MERS-CoV確定症例の流行曲線
2012年4月-2013年7月、n=52 (発症日不明を除く)
Saudi Arabia (41)
UK (4)
Jordan (2)
France (2)
症例数
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
発症月
Italy (1)
Qatar (1)
UAE (1)
発症日不明
Saudi Arabia
33
UAE
4
Tunisia
2
Italy
2
Germany
1
計
42
疫学情報(1)
最初の報告:2012年9月
発症:2012年4月~2013年7月25日
検査確定例:94例(46例死亡、CFR 48.9%)
男性が多い(62.4%)、年齢2歳-94歳(中央値 50.5歳)
感染が起こった背景
− 市中:曝露不明の散発例
− 家族:感染した家族との接触
− 医療機関:患者及び医療従事者
感染源不明で国内で感染した症例
− ヨルダン、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦
疫学情報(2)
渡航又は感染して帰国した渡航者との接触に関連した症例
− ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、チュニジア
8つのクラスターが報告(42例)
サウジアラビア Al-Hasa のクラスター
− 2013年4月~ 25症例(15例の死亡)
− 医療機関にリンクした症例(医療従事者、家族との接触)を含む
いくつかのクラスターで限定したヒト-ヒト感染の証拠が提示
クラスターを越えた、持続した市中感染の証拠は報告されていない。
多くの症例で慢性基礎疾患や免疫抑制を伴っていた。
全ての患者に呼吸器症状あり。大半は入院が必要な重症呼吸器疾患。
チュニジアの2例及び英国の1例、アラブ首長国連邦の2例が軽症。
無症候性感染者:
サウジアラビア8例(医療従事者4、患者と接触歴のある小児4)
アラブ首長国連邦2例(医療従事者2)
パンデミックの可能性
(Breban R, et al. Lancet 2013)
• 6 月21日までの64症例から計算された基本
再生産数(R0)は、低めの推計値(集団発生
内に複数の初感染例を仮定)で0.60 (95% CI
0.42–0.80)、高めの推計値(集団発生ごとに
一つの初感染例を仮定)で0.69 (0.50–0.92)と
いずれも1.00を下回った
• 2003年のSARSのR0が0.80 (0.54–1.13)であ
り、MERSのR0はこれより低く、パンデミックは
起こしがたいと推察されている。
R0: 一人の感染者が周囲の免疫を持たない人へ二次感染させる数
鳥インフルエンザA (H7N9)ウイルス
ヒト分離株電子顕微鏡所見
リレーションシップ ID rId3 のイメージ パーツがファイルにありませんでした。
ヘマグルチ
ニン(HA)
3タイプの鳥由来の遺伝子(H7N3の
HA, H7N9由来のNA,H9N2の内部遺
伝子)による再集合体
(Kageyama et al. Eurosurveillance, 18(15), 11 April 2013)
(国立感染症研究所感染病理部)
症例数
8
7
6
5
4
3
2
1
0
広東省
江蘇省
2/17/2013
2/24/2013
3/3/2013
3/10/2013
浙江省
江西省
3/17/2013
3/24/2013
3/31/2013
北京市
湖南省
4/7/2013
4/14/2013
4/21/2013
4/28/2013
福建省
河北省
発症日
5/5/2013
5/12/2013
5/19/2013
5/26/2013
7/7/2013
7/14/2013
7/21/2013
8/4/2013
8/11/2013
8/18/2013
山東省
7/28/2013
上海市
安徽省
6/30/2013
台湾
河南省
6/23/2013
2市、10省、台湾
6/16/2013
N=135
6/9/2013
(発症日不明10例を含む)
6/2/2013
鳥インフルエンザA
確定例 流行曲線 8月
月20日
日現在
インフルエンザA(H7N9)確定例
2/10/2013
症例数 135例 (中国本土134例、台湾1例)
死亡
入院中
退院
44例
4例
87例
8月11日現在
2
1
2
27
4
34
4
安徽省
46
2
6
5
1
1
症例の胸部画像所見(浸潤影)
症例2:発症14日後
症例4:発症27日後
症例4:発症20日後
いずれも生存例
症例4:発症35日後
(Chen Y, et al. Lancet Published on line April 25, 2013)
実験室診断症例の臨床的特徴:H7N9 vs H5N1
潜伏期:H7N9 3.1日、H5N1 3.3 日
(Cowling BJ, et al. Lancet 382:129-37,2013)
疫学的所見(1)
•
•
•
•
•
•
•
•
鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスによるヒト感染例は今回の中国で
の感染事例が世界初の報告である。
76.6%の症例がICUに入室し27.0%が死亡の転帰をとった。
症例の年齢中央値は61歳、42.3%の症例が65歳以上、31.5%が女性で
あった。
61.3%の症例が少なくとも一つの併存症を持っていた。
発熱と咳が最もよく見られた症状であり、97.3%の症例に入院時、肺炎
の所見があり、両側性 のすりガラス状陰影と浸潤影が最もよくみられた
所見であった。
97.3%の症例が抗ウイルス剤の投与を受けており、中央値で発症後7日
目に開始されていた。
Real-time RT PCRで陰性結果が得られるまでの期間の中央値は、発症日
からは11日(四分位範囲9-16日)、抗ウイルス剤開始からは6日(四分
位範囲4-7日)であった。
多変量解析では併存症があることがARDSの独立したリスク因子であっ
た。
2例の家族集積:ヒトーヒト伝播の証明
初発例の娘
潜伏期:6-7日
初発例父
(うずら購入)
2名から分離されたウイルス遺伝子の相同性は99.6-99.9%と極めて高く、
近くの生鳥市場の環境から分離したウイルス遺伝子やや異なる
臨床疫学的、ウイルス学的にヒトーヒト伝播を確認した最初の報告
(Qi X, et al. BMJ 347:f4752, 2013)
疫学的所見(2)
• 5月27日までに確定された130症例中のうち、中国国内31省にお
ける554の定点病院でのインフルエンザ様疾患のサーベイランス
において5例(4%)が検出された。症例に平均値は13歳(2-26歳)
で、すべて軽症から中等症であり、3例は入院を必要としなかっ
た。この結果は相当数の軽症例が存在する可能性を示唆してい
る。(BMJ 2013;346:f3693)
• ヒト-ヒト感染と考えられる事例(父親から娘)が確認された(BMJ
2013; 347:f4752)
• 現在のところ、臨床現場における迅速診断キットの有効性の情
報はない。
疫学的所見(3)
• 4月26日現在、13,014地点(生鳥市場、食鳥処理
場、家禽農場、野鳥生息地、豚と畜場、養豚場、
環境)で218,897検体が検査され、上海市、安徽
省、江蘇省、浙江省、河南省の1市4省(生鳥市
場14、野生ハト1、伝書鳩養殖農家1)から採取さ
れた46検体が鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス
陽性(0.07%)であった(中国農業部公表)。
• 日本のさまざまな年齢層の500人の血清検査で
は、A/Anhui/1/2013に対する特異抗体を保有し
ていない。
ウイルス学的所見 (1)
• 当該ウイルスは3種類の異なる鳥インフルエンザウイ
ルスの遺伝子交雑体であると考えられる。
• 上海市、江蘇省、浙江省のハト、ニワトリおよび環境
からの分離ウイルス7株の遺伝子系統樹解析の結果
からは、上記ヒト分離ウイルスのうちの上記14株と類
似性が高く、同系統のウイルスと考えられる。しかし、
鳥とヒトのウイルス株の間には明らかに異なる塩基配
列もあり、報告された鳥分離ウイルスが今回報告され
た患者に直接に感染したものであるとは考えにくい。
まとめと今後の対応
•
•
•
•
中国からの確定患者の報告数は現時点では減少傾向となっ
ているが、感染源、感染経路が不明のままであり、引き続き
患者が発生する可能性がある。それに伴い、今後、鳥インフ
ルエンザA(H7N9)ウイルス感染者が中国から国内に入国する
可能性がある。
家族内集積事例におけるヒトーヒト感染が確認されたが、感
染様式の詳細は不明である
ヒト分離の鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのマウス、フェ
レット、アカゲザルにおける高い増殖性、Anhui/1株のフェレッ
トでのある程度の感染伝播性は、本ウイルスが哺乳類への
適応性を高めていることを示しており、パンデミックを起こす
可能性は否定できない。
適時のリスク評価にもとづいて、パンデミックへの対応強化を
行っていくことが必要。
新興感染症の現状と今後
• 鳥インフルエンザA(H7N9)およびMERSコロナウイ
ルスのリスク評価を経時的に行い、パンデミック
への対応強化を進める
• 特措法の制定により「全国的かつ急速にまん延
し、かつ国民の生命及び健康に重大な影響を与
えるおそれのある新型インフルエンザや新感染
症」のリスクを最小限にすることが期待できる
• 今後、新型インフルエンザ等対策政府行動計画
を地方自治体で円滑に運用ができるよう準備す
る
抗菌薬何を選ぶ?
いつまで続ける?
日本化学療法学会/日本感染症学会
MRSAガイドライン2013
抗MRSA薬の特徴
1. 短時間殺菌力を有す抗MRSA薬はABKとDAPであ
る。
2. 本邦における抗MRSA薬は概して幅広い適応症を
有しているが、ABKの適応症は敗血症・肺炎に限定
されており、DAPは肺炎に適応はない。
3. VCM、TEICの治療効果と相関の認められているPKPDパラメータはAUC/MIC、ABKではCpeak/MIC、LZD
とDAPではCpeak/MICおよびAUC/MICと考えられて
いる。
日本化学療法学会/日本感染症学会
MRSAガイドライン2013
短時間殺菌力を有す抗MRSA薬はABKとDAPである
• 6時間程度の短時間で殺菌力を有す抗MRSA薬は、
ABKとDAPの2剤のみである。
• 特にDAPはバイオフィルム形成時の様な増殖の遅
い菌に対しても殺菌する能力を有している。
• VCMとTEICの短時間殺菌力はほとんど期待できな
い。これらの抗MRSA薬の殺菌力は概ね24時間程
度の時間が必要である。
• LZDの殺菌力はほとんどなく静菌的薬剤である。
日本化学療法学会/日本感染症学会
MRSAガイドライン2013
MRSA感染症の治療
治療薬の使い分け
感染症
肺炎
菌血症
感染性心内膜炎
腹腔内感染
髄膜炎
骨髄炎
第一選択治療薬
第二選択治療薬
VCM, LZD, TEIC
ABK
VCM, DAP
ABK, TEIC, LZD
DAP, VCM
TEIC, ABK
VCM
TEIC, LZD, DAP, ABK
VCM, LZD
TEIC
VCM, TEIC, LZD, DAP ±RFP, MINO, CLDM
日本化学療法学会/日本感染症学会
MRSAガイドライン2013
MRSA菌血症
【治療】
1. 非複雑性の成人菌血症患者については、DAP 6mg/kg 1
日1回(A-Ⅰ)又はVCM(A-Ⅱ)を第一選択薬とし、最低2週
間投与する。
2. その他TEIC、ABK、LZDを第二選択薬とする。
3. カテーテルの留置患者では、原則抜去を行う。
4. 人工物の体内埋め込み症例では、専門医と相談の上、除
去もしくは交換などを考慮する。
5. 化膿性病巣のドレナージ、デブリドマンも推奨する。
日本化学療法学会/日本感染症学会
MRSAガイドライン2013
非複雑性のMRSA菌血症患者
治療期間2週間
以下の全てを満たす患者群
1. 感染性心内膜炎がない
2. 埋め込み型の人工物がない
3. 最初の血液培養陽性から治療開始後2-4日以降に施行
された血液培養でMRSAが分離されない
4. 適正な治療開始後72時間以内に解熱
5. 遠隔感染巣がない
日本化学療法学会/日本感染症学会
MRSAガイドライン2013
MRSA菌血症
【治療】
6. 感染源を除去できない菌血症については、4~6週間の治
療を推奨する。
7. これらの症例ではバイオフィルムの関与を考慮した治療を
検討する。
8. 菌血症における培養陰性化を確認することが重要である。
(A-Ⅱ)
9. 感染症状のあるいは培養陽性が持続する症例では、抗菌
薬の変更や追加あるいは併用療法を検討する。
日本化学療法学会/日本感染症学会
MRSAガイドライン2013
MRSA感染症の治療期間
感染症
肺炎
菌血症
感染性心内膜炎
腹腔内感染
骨髄炎
髄膜炎
治療期間
7~21日
空洞などの壊死性肺炎では2週間以上。
院内肺炎では1週間程度
最低2週間
感染源除去ができない場合 4~6週間
4~6週間
人工弁では8週間
適切なドレナージが行われていれば
4~7日間
4~6週間
2週間
日本化学療法学会/日本感染症学会
MRSAガイドライン2013
飛行機は、方向と高度、距離が決まれば、目的地に到着する
方向と距離
高度
投与期間が感染臓器によって決まっているということは
CRPによって到着する空港を決めているわけではなく
はじめから、感染症の治療のエンドポイントは決まっている
CRP 10
CRP 5
CRP 0
CRP 3
原因菌の種類と感染臓器の診断ができていれば、投与期間
ははじめから決まっている。
不十分な、あるいは過剰な抗菌薬投与はどちらも不適切な治
療である
方向
(CRP, WBC, Procarcitonin)
距離
(投与期間)
機種
(抗菌薬の種類)
高度
(投与量;PK/PD)
臓器別MRSA感染症に対する抗菌薬選択
2週間
複雑性では4~6週間
2週間
7~21日間
4~6週間
適切なドレ
ナージが行わ
れていれば4
~7日間
人工弁では
8週間
4~6週間
日本化学療法学会/日本感染症学会
MRSAガイドライン2013
肺炎で死ぬことについての考察
世界の年齢別肺
炎死亡率
2005-2006年
WHO
1200
1000
USA M
800
USA F
JAPAN M
600
JAPAN F
Thailand M
400
Thailand F
Korea M
200
Korea F
0
70
USA M
60
50
30
300
USA M
JAPAN F
200
Thailand M
Thailand F
100
Thailand M
20
10
0
USA F
JAPAN M
40
Korea M
<1y
1-4y
5-14y
400
Korea F
0
USA F
Thailand F
Korea M
Korea F
55-64y
65-74y
>75
胃瘻(
)
胃瘻(PEG)
• 脳血管障害、痴呆などによる自発的な摂食不能・困
難
• 神経筋疾患などによる嚥下不能・困難
• 頭部・顔面外傷による摂食不能・困難
• 咽喉頭、食道、噴門狭窄
• 食道穿孔
• 成分栄養療法を要するクローン病
胃瘻造設後の生存曲線
症例数:931例
観察期間:468日(中央値)
死亡:502例
胃瘻造設患者の死亡原因
不明,
2%
その他,
22%
癌,
3%
心疾患,
14%
肺炎,
59%
PEG造設患者 26万人
新規PEG造設患者数 14万人
脳血管障害(55%)、神経変性疾
患(6%)、パーキンソン病(7%)、認知
症(32%)
1年生存率 66%
50%生存期間753日(2年)
25%生存期間1647日(4年6か
月)
PEGを造設した高齢患者が年間6万人肺炎
で亡くなっている!
PEG(胃瘻)は世界共通か?
• アメリカ老年医学会(AGS)
– 人工的な栄養投与はほとんどの症例において患者のためになら
ない。
– 適切な口腔ケアを行い、小さな氷のかけらを与えてから水分補
給する程度が望ましい。氷に味をつけるのもよい。
– 死を間近にした患者は空腹やのどの渇きを覚えない。
• 米国アルツハイマー協会
– アルツハイマー末期で嚥下困難になった患者に対する最も適切
なアプローチは、死へのプロセスを苦痛のないものにすること。
– 経管栄養法がこの患者群に利益をもたらすという医学的証拠は
ない。輸液も実施しないほうが最後の段階の苦痛が少なくてす
む。もしANH(artificial nutrition and hydration =人工栄養と水
分補給)を行うとしても、やがてその中止を決断しなければならな
いときがくる。
仲口路子 Core Ethics Vol. 8(2012) PEG(
(胃ろう)
ろう)問題ー
問題ー認知症高齢者へのPEG の適応について―
PEG(胃瘻)は世界共通か?
• ヨーロッパ臨床栄養代謝学会
ESPEN Guidelines on Enteral Nutrition:
Geriatrics
– 胃瘻栄養法は誤嚥性肺炎や褥瘡の発生を減少させ、患
者のQOL を改善するという医学的根拠はない。
– PEG を実施するか否かという決定は個別症例によるが、
実施する場合でも、批判的かつ制限的なアプローチが必
要である。
仲口路子 Core Ethics Vol. 8(2012) PEG(
(胃ろう)
ろう)問題ー
問題ー認知症高齢者へのPEG の適応について―
看取り
リビング・ウイル
老衰
自然死
死は医療のものではない、特
殊なものではない、
自然なもののはずです。
石飛幸三著「平穏死のすすめ」
自然な死とはどのような死に方か?
全死亡
35000
30000
25000
20000
15000
10000
5000
0
交通事故
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
交通事故は自然の摂理に反した不条理な死である。
どの死亡原因が最も自然な死か?
肺炎
悪性腫瘍
6000
3000
5000
2000
4000
1000
3000
0
2000
1000
0
心疾患
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
脳血管障害
4000
3000
2000
1000
0
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
0-4歳
10-14歳
20-24歳
30-34歳
40-44歳
50-54歳
60-64歳
70-74歳
80-84歳
90-94歳
100歳~
交通事故
肺炎
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
0-4歳
5-9歳
10-14歳
15-19歳
20-24歳
25-29歳
30-34歳
35-39歳
40-44歳
45-49歳
50-54歳
55-59歳
60-64歳
3000
4000
2000
3000
4000
5000
6000
1000
2000
3000
4000
5000
6000
6000
2000
1000
0
5000
1000
0
0
0-4歳
10-14歳
20-24歳
30-34歳
肺炎
悪性腫瘍
40-44歳
50-54歳
60-64歳
70-74歳
80-84歳
90-94歳
100歳~
7000
0-4歳
10-14歳
20-24歳
30-34歳
肺炎
心疾患
40-44歳
50-54歳
60-64歳
70-74歳
80-84歳
90-94歳
100歳~
0-4歳
10-14歳
20-24歳
30-34歳
50-54歳
60-64歳
70-74歳
80-84歳
90-94歳
100歳~
肺炎
脳血管障害
40-44歳
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
0-4歳
10-14歳
20-24歳
肺炎
30-34歳
40-44歳
悪性腫瘍
50-54歳
60-64歳
70-74歳
80-84歳
90-94歳
100…
350
300
250
200
150
100
50
0
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
肺炎
0-4歳
10-14歳
20-24歳
30-34歳
40-44歳
50-54歳
60-64歳
70-74歳
80-84歳
90-94歳
100歳~
心疾患
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
5000
200
250
6000
4000
3000
2000
1000
0
肺炎
0-4歳
10-14歳
20-24歳
30-34歳
40-44歳
50-54歳
60-64歳
70-74歳
80-84歳
90-94歳
100歳~
脳血管障害
350
300
150
100
50
0
「歳をとったら死ぬ」。これは、自然の摂理
肺炎がもっとも自然に近い死のあり方ではないだろうか?
肺炎は老人の友
肺炎は人生を生き抜いて
きた人に神様が与えた
最後のごほうびでは?
セフェム
この患者さんにとってよい
日々だったと言える人生と
は、なんだろう?
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