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社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE 【フェロー記念講演】回路シミュレーションの立上げと 物理設計 CAD の実用化 秋濃 俊郎† †近畿大学 生物理工学部 電子システム情報工学科 〒649-6493 和歌山県那賀郡打田町西三谷 930 E-mail: †[email protected] あらまし 松下電子工業で,設計現場のニーズに基づいて,主に次の三つの CAD 開発に携わった.第一として, MOSFET 集積回路専用の回路シミュレータを 1973 年に自社開発した.このシミュレータは,設計部門による MOSFET 集積回路全品種の新規回路の検証に必ず使われるという状況までに成長した.第二として,セル・ベース 設計における海外顧客との開発プロジェクトにおいて,顧客が論理シミュレータで検証したネットリストと,設計 部門がカスタム設計したセル間の配線レイアウトとの間で,それらの接続の一致を確認する配線レイアウト設計検 証プログラムを 1980 年に開発した.同時に,ポリシリコンを含む配線レイアウトからその抵抗と容量を計算し,一 つのフリップフロップ(f-f)から次の f-f までの信号伝播パスにおける遅延計算プログラムを開発した.第三として, スタンダードセル自動配置配線プログラムを 1986 年に開発し,実用化した.そのフロアプランとグローバル配線及 びセル配置ではシミュレーテッド・アニーリング法を使った.その後松下電器産業に転勤し,第四として主に携わ った SASIMI ワークショップでは,1989 年の大阪における第 1 回から企画に加わり,1997 年に近畿大学へ移動した 後も,各面で深く係わるチャンスに恵まれた.2003 年の広島における第 11 回ではジェネラル・チェアを務めた. キーワード 回路シミュレータ,物理設計検証,シミュレーテッド・アニーリング法,SASIMI ワークショップ 【Fellow Invited Talk】Establishing Circuit Simulation and Practicing CAD on Physical Design Toshiro AKINO† †Department of Electronic System and Information Engineering, School of Biology-Oriented Science and Technology, Kinki University 930 Nishi-mitani, Uchita-cho, Naga-gun, Wakayama, 649-6493 Japan E-mail: †[email protected] Abstract Being based on designer’s needs, I had been mainly involved by the following three CAD developments at Matsushita Electronics Corporation. Firstly, a circuit simulator special for MOSFET integrated circuits was developed in 1973. This simulator accomplished a final practice to regularly verify the characteristics of new circuits in all MOSFET integrated circuits. Secondly, the verification program of layout design was developed to verify a connectivity correspondence between customer’s net-lists based on logic simulation and interconnect layout data by our designers with a certain oversea customer in 1980. Also, the program of delay calculation along a signal propagation path from one flip-flop (f-f) to other f-f was developed to count the values of resistances and capacitances of the interconnection layout data. Thirdly, the automatic standard-cell layout program of placement and routing was developed in 1986. The method of Simulated Annealing was adopted for floor-planning, global wiring and placement. After transferring to Matsushita Electric Industrial, I was fourthly involved in SASIMI workshop since 1st SASIMI’89 in Osaka as planning. After moving to Kinki University in 1997, I fortunately had a chance to play a part of SASIMI workshop. I was in charge of General Chair for 11th SASIMI2003 in Hiroshima. Keyword Circuit Simulator,Physical Design Verification,Simulated Annealing Method,SASIMI Workshop 1. は じ め に で 来 た 結 果 ,最 小 寸 法 が 90nm で 1 億 2500 万 の MOSFET 「 チ ッ プ に 集 積 さ れ た ト ラ ン ジ ス タ 数 は 18 ヶ 月 で 2 を集積した第 3 世代のペンティアムⅣが開発された. 倍になる」というムーアの法則に沿って微細化が進ん だ が ,そ の 消 費 電 力 が 80W 以 上 と な り ,チ ッ プ 設 計 に おける大きな障害として立ちはだかっている.即ち, ムーアの法則の限界が見え始め,更に高集積化を図る による回路シミュレーションの技術解説を読んで,非 ためには,根本的な方針転換が不可欠となって来たよ 線形連立方程式の解き方を学んだこと. うだ.こういう時期に,今までを振り返って,次の方 ④ MOSFET モ デ ル に 限 定 し た 回 路 シ ミ ュ レ ー タ で あ 向を見極めるのは,意味のあることと思われる. っ た め ,実 用 化 初 期 段 階 で は ,pn 接 合 の 順 方 向 電 流 モ 筆者が松下電器産業とフィリップスの子会社である デルを取り入れる必要性がそれ程緊急な課題ではなか 松 下 電 子 工 業 に 配 属 さ れ た の は 1971 年 で あ る .そ の 1 っ た .そ の た め 当 初 は ,順 方 向 pn 接 合 領 域 や サ ブ ス レ 年 前 に 新 し い MOSFET 集 積 回 路 の 事 業 部 が 作 ら れ ,フ ッショルド領域の電流モデルは扱っていなかったこと. ィリップスの技術指導で開発がスタートしていた.こ MOSTRAN の 最 初 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 回 路 は , p チ の 頃 は ,ま ず 電 卓 ,少 し 遅 れ て CMOS 時 計 な ど の 応 用 ャ ネ ル MOSFET プ ロ セ ス に よ る 電 卓 用 の ク ロ ッ ク・ジ で,ちょうど市場が急激に立ち上がろうとしていた時 ェネレータ内蔵テストチップであった.幾つかの回路 期 に 当 る .当 時 の MOSFET 集 積 回 路 の 設 計 現 場 で ,設 ブロックに分割してチップ全体の過渡解析を行った. 計 者 達 の ニ ー ズ を 基 礎 に し て , 主 に 次 の 三 つ の CAD クロック・ジェネレータ回路には,ブート・ストラッ ソフトウエアの開発に携わることが出来た. プ回路が含まれており,負の電源電圧値より更に負で 1 . MOSFET 集 積 回 路 専 用 で , 大 信 号 の DC 解 析 と 過 低いシミュレーション結果の波形が,試作の測定結果 渡 解 析 を 行 う 回 路 シ ミ ュ レ ー タ MOSTRAN の 開 発 と良く一致し,成功裏に過渡解析を終えた. 2 .セ ル・ベ ー ス 設 計 の 配 線 接 続 検 証 と ク リ テ ィ カ ル・ カリフォルニア大学バークレイ校では,後に世界の パス遅延計算の設計検証システムの開発 標 準 と な っ た 汎 用 回 路 解 析 シ ミ ュ レ ー タ SPICE2 の 開 3 .ス タ ン ダ ー ド セ ル 自 動 レ イ ア ウ ト STELLA シ ス テ 発 を 1975 年 に 終 え ,そ の 内 容 を 博 士 論 文 に 纏 め た [2]. ムの開発 我 々 の MOSTRAN は ,MOSFET 集 積 回 路 に 限 定 さ れ た 20 年 弱 経 過 し た 現 在 で は ,配 線 の 微 細 化 に よ り 配 線 とは言え,その頃は実用の時期にあり,ほぼ同時期の 間容量と共に配線抵抗が増加し,配線遅延の比率が更 開 発 と 考 え ら れ る .図 2 の よ う に ,1976 年 4 月 末 ま で に増えている.そのタイミング収束と,クロストーク に ,31 品 種 の LSI チ ッ プ 及 び 3 品 種 の テ ス ト チ ッ プ で 誤動作を検出する設計検証が重要課題となっている. 実 績 が あ り , 全 体 で 600 件 以 上 の 回 路 シ ミ ュ レ ー シ ョ 筆 者 は 1988 年 に 松 下 電 器 産 業 に 転 勤 し ,翌 年 に 大 阪 ンを実行していた.この数字は,松下グループ内で で 開 催 さ れ た 第 1 回 の SASIMI ワ ー ク シ ョ ッ プ の 企 画 MOSFET 集 積 回 路 の 設 計 検 証 で 不 可 欠 な ツ ー ル に な っ に 参 加 し た 。以 降 事 務 局 を 担 当 し ,1997 年 に 近 畿 大 学 たという社内的な状況を表している.更にそれを具体 に 移 籍 し た 後 も , SASIMI ワ ー ク シ ョ ッ プ に 深 く 係 わ 的 に 示 す 事 実 と し て ,設 計 部 門 の 責 任 者 が , 「新規回路 っ て 来 た .今 年 の 10 月 18 日( 月 )∼ 19 日( 火 )に 金 は MOSTRAN で 回 路 動 作 を 検 証 し な け れ ば ,そ の 新 規 沢 で 開 催 さ れ る 第 12 回 の SASIMI ワ ー ク シ ョ ッ プ で は , 回路を含んだチップのマスク発注を許可しない」とい 豪華な講演者による 1 件の基調講演と 6 件の招待講演, う 方 針 を 取 っ た .結 果 と し て MOSTRAN は ,回 路 設 計 及びパネル討論などのプログラムが用意されている. の動作を確認する上で大きな貢献をなした.前述した 2. MOSFET 集 積 回 路 専 用 の 過 渡 解 析 シ ミ ュ レ ー プ 内 の 「 ’76 技 術 分 野 に お け る コ ン ピ ュ ー タ 応 用 事 よ う に ,実 用 化 し て か ら 3 年 後 の 1976 年 に ,松 下 グ ル ー タ MOSTRAN の 開 発 松下電子工業では,製造プロセスの実測データに良 例 発 表 会 」 で ,「 MOS/LSI 過 渡 解 析 プ ロ グ ラ ム MOSTRAN」 ( 図 1)と し て そ の 技 術 成 果 を 発 表 し た [1]. く 合 う 精 密 な MOSFET モ デ ル を 確 立 し ,そ れ を 内 蔵 し MOSTRAN で は MOSFET 集 積 回 路 用 に 限 定 し た こ と た DC 解 析 と 過 渡 解 析 の 回 路 シ ミ ュ レ ー タ MOSTRAN に よ り ,ゲ ー ト 端 子 の 入 力 イ ン ピ ー ダ ン ス が 高 い た め , を 開 発 し , 早 く も 1973 年 に 実 用 化 す る こ と が 出 来 た . 次のゲート端子だけに入力している出力部分で回路を この技術成果を,松下グループ内の「コンピュータ応 分 割 し て も そ れ 程 悪 い 近 似 に な ら な い . MOSTRAN で 用事例発表会」で発表し,その論文の最初の部分を図 は,信号伝播の流れに沿って順次分割回路を解析する 1 に 示 し た . そ こ に 実 用 化 時 期 が 明 記 さ れ て い る [1]. カ ス ケ ー ド 解 析 機 能 を 開 発 し た .特 に DRAM な ど の メ これが可能となった背景として次のことが考えられる. モ リ 回 路 の 過 渡 解 析 で 大 き な 威 力 を 発 揮 し た [3, 4]. ① 非 線 形 素 子 に 対 し て 線 形 折 れ 線 近 似 し た , IBM の 更に,スタンダードセル単位でマスクデータを解析 回 路 シ ミ ュ レ ー タ ECAP の ソ ー ス ・ プ ロ グ ラ ム を 解 読 し て 抽 出 し た 回 路 情 報 を MOSTRAN の 入 力 デ ー タ と し するチャンスを得たこと. てライブラル化し,信号伝播順にそれらセルの回路シ ② 設 計 部 門 か ら 非 線 形 特 性 を 持 っ た 正 確 な MOSFET ミュレーションやタイミング検証を実行する機能を開 モデルによる回路動作計算の強い要望があったこと. 発 し た . 1979 年 6 月 に , そ の 技 術 成 果 を DAC(Design ③ 当 時 の 日 本 電 気 ,現 在 は 早 稲 田 大 学 の 大 附 辰 夫 教 授 Automation Conference)で 発 表 し た [4]. 図 1. 松 下 電 器 の 「 ’76 技 術 分 野 に お け る コ ン ピ ュ ー タ 応 用 事 例 発 表 会 」 の 中 の 該 当 論 文 の 冒 頭 部 分 [1] ウトの設計スケジュールに間に合うようにこれらの CAD ソ フ ト ウ エ ア を 開 発 し ,成 功 裏 に そ れ ら の 効 果 を 発 揮 さ せ た . α に 関 し て , PLA 自 動 フ ォ ル デ ィ ン グ の アカデミックな研究が始まった頃に相当する.β に関 し て は ,ECAD の LVS よ り 少 し 早 い 時 期 の 実 用 化 で あ ったと推察される.γ に関しては,アルミニウムとポ リシリコンの2層配線を使ってチップ設計が行なわれ 図 2. 1976 年 4 月 末 迄 の MOSTRAN 使 用 実 績 [1] たため,ポリシリコン配線の抵抗による遅延が設計上 の大きな課題となっていた.プロジェクトでは,一つ 3. 配 線 接 続 検 証 と ク リ テ ィ カ ル・パ ス 遅 延 計 算 の フ リ ッ プ フ ロ ッ プ ( f-f) か ら 次 の f-f ま で の 信 号 伝 1979 年 に ,海 外 の 顧 客 が 同 期 方 式 で 論 理 設 計 し た カ 播パスに関して,チップ上の全てのそれらパスに対し スタム・チップに対して、松下電子工業がチップの回 路とレイアウトの設計及び製造を行うプロジェクトに 属 し , そ の 中 で CAD ソ フ ト ウ エ ア を 開 発 す る 責 任 者 て , ポ リ シ リ コ ン 配 線 の RC 遅 延 時 間 を 計 算 し , タ イ ミング上問題となるクリティカル・パスを全て見出す CAD ソ フ ト ウ エ ア を 開 発 し た .そ の ク リ テ ィ カ ル・パ ス情報が設計側にフィードバックされ,配線設計が修 と な っ た .PLA セ ル を 含 む セ ル ・ ベ ー ス 設 計 を 支 援 す 正され,これを何度か繰り返すことによりタイミング る た め に , そ の プ ロ ジ ェ ク ト で 開 発 さ れ た CAD ソ フ 問題が解決された. トウエアは次の 3 種類である. 海外大手コンピュータ・メーカーである当顧客は, α. PLA対 話 型 フ ォ ル デ ィ ン グ CADソ フ ト ウ エ ア 当 時 こ の 種 の CAD ソ フ ト ウ エ ア を 持 っ て い な く , こ β. セ ル 間 配 線 接 続 の 設 計 検 証 CADソ フ ト ウ エ ア の時期としては先駆的な開発成果であったと考えられ γ. チ ッ プ 上 の 全 て の パ ス に 対 す る RC配 線 遅 延 に よ る る .ICCAD (International Conference on Computer- Aided ク リ テ ィ カ ル ・ パ ス 設 計 検 証 CADソ フ ト ウ エ ア Design)が ス タ ー ト し た 前 年 に 当 た る 1982 年 に , 我 々 プロジェクトでは,カスタム・チップの回路やレイア は こ の β と γ の 技 術 成 果 を , そ の 年 の 9 月 末 か ら 10 月 の 初 め に か け て ニ ュ ー ヨ ー ク で 開 催 さ れ た ICCC た .そ の 結 果 ,日 経 エ レ ク ト ロ ニ ク ス 400号 記 念 特 集 に (International Conference on Circuits and Computers)で 寄 稿 を 依 頼 さ れ , そ の 成 果 を 発 表 し た [11]. 発 表 し た [5].ま た ,こ の カ ス タ ム・チ ッ プ の 量 産 が 順 調 に 立 ち 上 が り ,当 プ ロ ジ ェ ク ト は , 「特殊コンピュー タ 用 LSI MN7000 シ リ ー ズ 量 産 体 制 確 立 」と し て ,1984 年に松下電器団体社長賞を受賞した. 5. SASIMI ワ ー ク シ ョ ッ プ に 対 す る 貢 献 スタンフォード大学のロバート・ダットン教授 が ,”VLSI/CAD”の 分 野 で 国 際 交 流 を 図 る ワ ー ク シ ョ ッ プの日本開催を提起された.松下電器産業が後援して 4. ス タ ン ダ ー ド セ ル 自 動 レ イ ア ウ ト STELLA システムの開発 第 1 回 が 1989年 5月 に 大 阪 で 開 催 さ れ た .そ の 時 の 論 文 集 の 表 紙 を 図 3に 示 す . 筆 者 は , 1982 年 か ら ASIC ビ ジ ネ ス を サ ポ ー ト す る CADソ フ ト ウ エ ア 開 発 の 責 任 者 と な っ た .ま ず 手 始 め に ,ゲ ー ト ア レ イ 自 動 レ イ ア ウ ト ATLASシ ス テ ム を 開 発した.ここで採用したアルゴリズムは,ミンカット 法による配置と,迷路法による配線であり,それらを シ ス テ ム と し て 纏 め 上 げ た . こ の ATLASシ ス テ ム と , 論理図のスケマテック・キャプチャ及び論理シミュレ ー タ と 統 合 し た CAD シ ス テ ム を 確 立 し , ASIC デ ザ イ ン・センターのサポートを強化した. 引 き 続 い て 1985年 か ら , 松 下 電 子 工 業 は , 新 た に ス タ ン ダ ー ド セ ル 自 動 レ イ ア ウ ト STELLAシ ス テ ム の 開 発をスタートした.開発責任者として、次のような新 し い 特 徴 を 持 た せ た 仕 様 を 提 示 し ,そ の CADソ フ ト ウ エアを短期間に開発するように推進した. ⅰ.シミュレーテッド・アニーリング法を改良して、 その解の質を保って十倍以上に高速化し、フロアプラ ンとグローバル配線及び配置に適用する. ⅱ.チャネル配線法を基本に、迷路法を取り入れて、 二層半(半は短いポリシリコン配線)の高密度配線を 実現する. ⅲ .ASICデ ザ イ ン・セ ン タ ー に お け る 運 用 に 耐 え る 設 図 3. 第 1回 SASIMIの 論 文 集 の 表 紙 計データベースの管理体制を確立する. 筆 者 ら は , こ の 仕 様 通 り に STELLAシ ス テ ム の 開 発 次 に , 図 4に 第 1回 SASIMIの 実 行 委 員 会 の 体 制 を 示 す . を完了し,高密度なレイアウトが得られることを確認 し た . 1986年 1 月 の 国 内 学 会 を 手 始 め に , そ の 成 果 を 順 次 発 表 し た [6, 7, 8].一 方 ,カ リ フ ォ ル ニ ア 大 学 バ ー クレイ校はシミュレーテッド・アニーリング法を配置 問 題 に 適 用 し た TimberWolfを 開 発 し て お り [9],そ の 国 際 会 議 発 表 時 期 は , 筆 者 ら の STELLAの 発 表 時 期 に 先 ん ず る こ と 約 1 年 半 で あ っ た . 同 様 に , IBMは 大 き さ がまちまちなカスタムセルを対象としたフロアプラン にシミュレーテッド・アニーリング法を適用したが, そ の 国 際 会 議 成 果 発 表 [10]に 遅 れ る こ と 約 1 年 強 で あ った.カスタムセルを含むセル・ベース設計のフロア プランや配置の問題に対して,シミュレーテッド・ア ニーリング法の(しかも十分の一以下に処理時間を短 縮した)適用は,筆者らが知る限り日本で最初のこと で あ る . こ の STELLAシ ス テ ム は ASICデ ザ イ ン ・ セ ン タ ー で 使 用 さ れ ,ASICビ シ ネ ス の 展 開 に 大 き く 貢 献 し 図 4. 第 1回 SASIMIの 実 行 委 員 会 の 体 制 こ の SASIMI の 意 味 す る と こ ろ は , 当 初 の “Synthesis ワークショップが金沢で開かれる.図 5 にこのアドバ And SImulation Meeting and International Interchange” ンス・プログラムの最初の部分を載せているが,図 3 か ら , 今 は “Synthesis And System Integration of Mixed で示した第 1 回から使っている「大漁」のシンボル・ Information Technologies” に 変 化 し て い る . こ こ で の マ ー ク が 使 わ れ て い る .ま た ,第 12 回 の SASIMI2004 発 表 論 文 は 、 IEICE Trans. Fundamentals の “Special において,図 6 に示したように.豪華な招待講演者に Section on VLSI Design and CAD Algorithms” 特 集 号 へ よる 1 件の基調講演と 6 件の招待講演,及びパネル討 の 投 稿 に 結 び つ く よ う に 強 く 推 進 さ れ て い る .SASIMI 論などのプログラムが用意されている. 発足時から,筆者はその立ち上げに強く関わり,今ま でに以下のような役割を担って来た. ・ 第 1回 [ 1989年 5月 , 大 阪 , 非 公 開 で 招 待 者 の み ]: 松 下 電 器 産 業 か ら の TPC委 員 と し て 企 画 に 参 画 ・ 第 2回[ 1990年 10月 ,京 都 ,以 降 論 文 を 公 募 ]: 事 務 局担当 ・ 第 3回 [ 1992年 4月 , 神 戸 ]: 事 務 局 担 当 ・ 第 4回 [ 1993年 10月 , 奈 良 ]: 事 務 局 担 当 <以上までは松下電器産業が後援> 図 5. SASIMI2004 ア ド バ ン ス ・ プ ロ グ ラ ム の 冒 頭 部 これ以降の運営体制は,松下電器産業より,大阪大 学名誉教授で兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科 長 の 白 川 功 教 授 を 中 心 と し た ,”VLSI/CAD”に 関 係 す る 日本の大学の研究者の手に移った.即ち,実行委員会 は日本の大学の先生方によるボランティア活動で運営 されようになった. <以降は日本の大学研究者によるボランティア活動> ・第 5回[ 1995年 8月 ,奈 良 ]:松 下 電 器 産 業 か ら の TPC 委員 ・ 第 6回 [ 1996年 11月 , 福 岡 ]: 松 下 電 器 産 業 か ら の 一 般参加 ・ 第 7回 [ 1997年 12月 , 大 阪 ]: 近 畿 大 学 へ 移 り , 実 行 委員会委員(会計)と運営委員会委員 ・第 8 回[ 1998年 10月 ,仙 台 ] :実 行 委 員 会 委 員( 会 計 ) と運営委員会委員 ・ 第 9回 [ 2000年 4月 , 京 都 ]: 実 行 委 員 会 委 員 ( 会 計 ) と運営委員会委員 ・第 10回[ 2001年 10月 ,奈 良 ]:TPC委 員 長 と 運 営 委 員 会委員 ・ 第 11回 [ 2003年 4月 , 広 島 ]: ジ ェ ネ ラ ル ・ チ ェ ア と 運営委員会委員 現 在 ま で 11 回 に も 及 ぶ SASIMI ワ ー ク シ ョ ッ プ の 開 催 を 通 じ て 、日 本 の ”VLSI/CAD”の 研 究 者 ,特 に 大 学 の 図 6. 第 12 回 SASIMI2004 の 招 待 講 演 と パ ネ ル 討 論 若 手 研 究 者 が ,国 際 的 に 大 き く 育 つ 舞 台 作 り を 行 っ て 、 彼らの国際技術交流を促進することに寄与したと考え 6. 今 後 の 開 発 方 向 る . こ の 活 動 は 継 続 さ れ て , 来 月 の 2004 年 10 月 18 米 国 を 凌 い で 1988 年 に ピ ー ク を 迎 え た 日 本 半 導 体 日 ( 月 ) と 19 日 ( 火 ) に は , 第 12 回 の SASIMI2004 産 業 は ,1992 年 に は 再 度 米 国 に 逆 転 さ れ ,ま た ,韓 国・ 台湾・中国など東南アジア勢に追い上げられ,徐々に シェアを下げる状況にあった.しかし最近では,ディ ジ タ ル 家 電 向 け の シ ス テ ム LSI の 開 発 と 生 産 で , 日 本 の半導体メーカーは米国や東南アジア勢を上回り,有 利な情勢で反撃しつつある.そうは言っても,各種ロ ードマップで言われているように,ムーアの法則に基 づいた延長上で集積度向上が期待出来るのであろうか. 筆者の考えは否定的で,このままでは集積度向上が減 速すると見ている.従って,半導体産業の成長も頭打 ちになると思われる. では,どのようにしてその成長の鈍化を回避し,新 しい成長を促進するように図るか.一つの方向として, MEMS 技 術 を 使 っ た 各 種 セ ン サ と ア ク チ ュ エ ー タ を シ リコン上に集積し,ネットワークで結んだシステムを 構築する道である.即ち,それらセンサからアナログ 信号を入力してディジタル信号に変換し,高速に信号 の演算処理を行い,ネットワークを介した通信でどこ かのアクチュエータに出力することを可能にして,総 合システムとしての付加価値を高める応用展開である. こ の よ う な 「 セ ン サ + IT+ ア ク チ ュ エ ー タ 」 に よ る シ ステムを社会基盤へ応用するものとして,既に幾つか の 先 駆 的 な 研 究 例 が 推 進 さ れ つ つ あ る [12, 13, 14]. こ の よ う な 社 会 ニ ー ズ に 沿 っ た 総 合 IT シ ス テ ム 構 築 に あ た っ て ,次 の よ う な 新 し い 回 路 と 物 理 設 計 CAD の技術を確立する必要があると考えている. ① BiCMOS と 同 等 な 高 速 デ バ イ ス で , CMOS と 同 等 な低エネルギーの回路で,アクチュエータのよう な高負荷を高速に駆動する新回路方式の開発 ② MEMS に 対 す る プ ロ セ ス / デ バ イ ス ・ シ ミ ュ レ ー タの開発 ③ MEMS を 含 む シ ス テ ム 全 体 の シ ス テ ム ・ シ ミ ュ レ ータの開発 以 上 の よ う に , 半 導 体 集 積 回 路 以 外 の 物 理 設 計 CAD も,まだまだ研究すべきことが多く,若い研究者の活 躍に期待したい. 謝 辞 長年に渡ってご指導頂いた,大阪大学名誉教授で兵 庫県立大学大学院応用情報科学研究科長の白川功教授 と , 九 州 大 学 シ ス テ ム LSI 研 究 セ ン タ ー 長 の 安 浦 寛 人 教授に深く感謝申し上げます.松下電子工業と松下電 器産業でお世話になった,秋山健二,水野博之,根岸 敏夫,堀内司朗,河崎達夫,野依正晴の諸先輩に厚く 御礼申し上げます. 文 献 [1] 秋 濃 俊 郎 , 秋 山 健 二 , “MOS/LSI 過 渡 解 析 プ ロ グ ラ ム MOSTRAN,” ’76 技 術 分 野 に お け る コ ン ピ ュ ータ応用事例発表会論文集,松下電器産業, pp.21-24, 1976. [2] L. W. Nagel, “SPICE2: A Computer Program to Simulate Semiconductor Circuits,” ERL Memo ERL-M520, University of California, Berkeley, May 1975. [3] 秋 濃 俊 郎 , 根 岸 敏 夫 , 倉 茂 幸 永 , 下 出 正 文 , “LSI マ ス ク 設 計・解 析 シ ス テ ム ,” ‘79 技 術 分 野 に お け る コ ン ピ ュ ー タ 応 用 事 例 発 表 会 論 文 集 、松 下 電 器 産 業 、 pp.57-60, 1979 [4] T. Akino, M. Shimode, Y. Kurashige, T. Negishi, “Circuit Simulation and Timing Verification Based on MOS/LSI Mask Information,” Proceedings of 16 t h Design Automation Conference, San Diego, pp.88-94, June 1979. [5] T. Akino, T. Kajita, A. Tanaka, H. Miyamoto, Y. Mitsuyasu, “Electronic Rule Checking for Structured VLSI Physical Design,” Proceedings of IEEE International Conference on Circuits and Computers, New York, pp.447-450, September 28 to October 1, 1982 [6] 豊 永 昌 彦 , 光 安 裕 子 , 渡 守 武 和 記 , 梶 田 隆 則 , 秋 濃 俊 郎 ,“ス タ ン ダ ー ド セ ル CAD シ ス テ ム : チ ッ プ フ ロ ア プ ラ ン ,”電 子 通 信 学 会 ,CAS85-143,1986 年 1 月. [7] 豊 永 昌 彦 , 光 安 裕 子 , 渡 守 武 和 記 , 梶 田 隆 則 , 秋 濃 俊 郎 ,“ス タ ン ダ ー ド セ ル CAD シ ス テ ム : 高 速 アニーリングシミュレーション法を用いた自動 配 置 ,” 電 子 通 信 学 会 ,CAS85-142,1986 年 1 月 . [8] 光 安 裕 子 , 渡 守 武 和 記 , 豊 永 昌 彦 , 田 口 浩 文 , 梶 田 隆 則 , 秋 濃 俊 郎 , “ス タ ン ダ ー ド セ ル 自 動 レ イ ア ウ ト シ ス テ ム:STELLA 自 動 配 線 シ ス テ ム ,” 電 子 通 信 学 会 , CAS86-80, 1986 年 9 月 . [9] C. Sechen, A. Sangiovanni-Vincentelli, “The TimberWolf Placement and Routing Package,” Proc. Custom Integrated Circuits Conference, May 1984. [10] R. Otten, L. van Ginneken, “Floorplan Design using Simulated Annealing,” Proc. Int. Conference on Computer-Aided Design, pp.96-98, Nov. 1984. [11] 秋 濃 俊 郎 , 梶 田 隆 則 , 豊 永 昌 彦 , 光 安 裕 子 , 渡 守 武 和 記 , “ス タ ン ダ ー ド セ ル LSI の レ イ ア ウ ト を 全 自 動 化 し た CAD シ ス テ ム ,”日 経 エ レ ク ト ロ ニ ク ス , 1986.7.28 (no.400). [12] 安 浦 寛 人 , “シ ス テ ム LSI の 社 会 情 報 基 盤 へ の 利 用 ‐ Digital Naming 社 会 を 目 指 し て ‐ , ”第 16 回 回 路 と シ ス テ ム( 軽 井 沢 )ワ ー ク シ ョ ッ プ 論 文 集 , pp.447-452, 2003 年 4 月 . [13] A. P. Pisano, “The CITRIS Project: Merging Information Technology and BSAC MEMS Microsensors for Societal Grand Challenge,” STARC シ ン ポ ジ ウ ム 2003 講 演 予 稿 集 ( 別 冊 ), 2003 年 9 月 . [14] B. Gyselinckx, “Human Technologies will Improve Quality of Life,” Human++ Program, IMEC, from http://www.elecdesign.com/Articles/AticleID/7872/7 872.html