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傾斜スラブ、傾斜天井を有する建築物に 於ける施工事例
傾斜スラブ、傾斜天井を有する建築物に 於ける施工事例 三浦 佑也(新日本空調㈱中国支店) Yuya MIURA (Shin Nippon Air Technologies Co.,Ltd) 1.はじめに 本件は、傾斜のついた屋根スラブ下の天井内での、空調 ダクト施工事例を紹介する。 一般的には、ダクトの施工方法として床に対して水平に 吊るというのが基本であるが、今回の工事では、屋根スラ ブ及び天井が 45°傾斜であり、天井内で床と水平にダク トを吊ると天井内に納まらないためダクトに 45°の傾斜 を付ける必要があった。また、45°傾斜の屋根スラブのた め特殊な施工方法であり、インサート打設も同様であった。 これらの特殊な条件下でダクト支持方法につき創意工夫 を行い、品質の高い施工ができたので以下に紹介する。 (図 -1 参照) 蓋型枠(外面) デッキ 蓋型枠を固定するための型枠 2.45°傾斜の屋根スラブ施工方法について 写真-1 屋根スラブ施工状況 まず、45°傾斜でのコンクリートの打設では、コンクリ ートが流れ落ちるという最大の問題点があった。その問題 に対処するため、在来型枠ではなく、デッキ構造でさらに、 コンクリートが流れ出ないように、型枠で両面から蓋をす る施工方法が採用された。また、下階から 12m、地盤から は、26m の高さで、さらに 45°傾斜の部分での高所作業と なるため、安全面から地組み作業となった。施工サイクル は、スパンごとに地組みでデッキを反転に並べ溶接、各墨 だし、裏面の型枠、その後反転させインサートを打設、配 筋、蓋型枠、レッカーで吊上げ、取付けを行う。これを繰 り返し屋根スラブを完成させる。最初にデッキを反転させ るのは、配筋を行う前に片面の型枠を設置するためである。 (写真-1 参照) 3.ダクト支持方法における創意工夫 本物件で一番の難点であったダクトの支持方法につい て、創意工夫した点を下記に記載する。前提として、吊り 棒を曲げること、ダクトにネコをつけての支持方法は、品 質上問題があるため不採用とした。 (図-2 参照) 図-2 ダクト支持方法 天井ライン ① インサート打設方法 45°傾斜しているため、屋根の頂点からの屋根に対し ての水平距離を出し、屋根スラブを地組み時に全数打 設した。デッキの下に型枠が受けてあるので、使用し たインサートは、釘で固定できる型枠用とした。 図-1 屋根・天井・ダクトの断面図 1/2 ② 支持ボルト取付け方法 45°傾斜のスラブから垂直に吊りボルトを取り付け るため、市販金物の採用を行った。X方向に自在に首 を振る傾斜スラブ専用の金物とした。(図-3、写真-2 参照) ③ ダクトアングル受け方法 45°傾斜を付けた角ダクトの受けアングルとして、専 用の受けアングルを製作した。アングルをL字に溶接 し、支持ボルト受けの部分を 135°角度をつけて溶接 した物である。 (写真-3,4 参照) ④ フレキシブルダクト採用について 消音効果上、長いフレキダクトの採用を行いたかった が、フレキの自重が下方に集中し垂れるという状況が 懸念されるため、納まり上最低限の長さとした。(写 真-5 参照) ⑤ 固定について 支持ボルトを取り付ける金物が首振りのため、固定 を取る必要があった。角ダクトは、門型の固定を躯 体、ダクト同様に 45°傾けた支持方法を採用した。 (写真-6 参照)また、スパイラルダクトについては、 バンドを掛けているだけでは、ずれてしまう懸念が あったためバンドとダクトをビスで固定し、ずれ防 止とした。 写真-5 フレキダクト施工状況 図-3 支 持ボル ト取付 け金物 写真-6 振れ止め施工状況 4.ダクトのレベル、ルートの確認基準について 写真-2 支持ボルト取付状況 写真-3 受けアングル 本建物は、大空間であるため基準ラインを確認できる 場所が少ない。そのため実際に天井下地を組み終わるま では、ダクトの吊り位置、レベルに問題がないのかは確 実に判断することはできなかった。また、細かく確認し 施工を進めると時間がかかるため、下記の点について留 意し施工を行った。 吊りレベルについては、各梁鉄骨からの距離でダクト レベルを確認した。角ダクトのルートについては、屋根 頂点からの距離とインサート位置が合致しているかを 一点確認し、インサートラインが通っているかを確認し た。枝ダクトについては、インサートのラインが壁吹出 し口の位置と主ダクトの分岐取出し口と合致している かを確認した。 5.おわりに ダクト施工前には、屋根スラブが 45°傾斜しているた めインサート工法は施工が難しいという考えが強かっ たが、施工時には、施工ラインを確認するひとつの基準 としたことで短工期での施工を可能にした。 今回の発表が、類似建物の施工計画において参考とな れば幸いである。 写真-4 ダクト支持状況 2/2