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卒業論文作成の仕方 - 早稲田大学 経営システム工学科

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卒業論文作成の仕方 - 早稲田大学 経営システム工学科
01.12.10
卒業研究の進め方、卒業論文作成の仕方
1.はじめに
この手引きは、卒業研究を行い、卒業論文を作成するにあたって注意すべき一般的
な事項をまとめたものです。論文作成の詳細については、技術系論文の書き方やテク
ニカル・ライティングに関する書籍を、論文執筆に追われる前に少なくとも1冊は熟
読して下さい。参考になると思われる何冊かの本を最後にまとめておきます。また、
経営システム工学科ガイドブック中の「レポートの書き方」も改めて読み直して下さ
い。
2.卒業研究の進め方
2.1. 研究の狙い
卒業研究は、講義科目、実験および演習科目のいずれとも異なり、次のような多様
な狙いを持った科目で、理工系の卒業生に必要な総合力を身につける貴重な機会です。
・研究対象に選んだ専門分野の知識を修得する。
・研究の方法を体験により修得する。
・研究発表の技術を体験により修得する。
・研究プロセスの計画、管理能力を体験により修得する。
・卒業研究を相互学習の場とし、協同作業遂行能力、コミュニケーション能力、評価・
判断能力を修得する。
2.2. 研究のタイプ
研究のタイプにはいろいろなものがあり、研究室の性格、研究テーマなどによって
異なります。研究はそれぞれのタイプに適した方法で進め、成果を論文にまとめなけ
ればなりません。タイプのいくつかの例を示します。
(a) システム概念の提案と実証に関する研究
ビジネスプロセスおよび情報システムなどのように、従来にない新しい概念のシス
テム、または、ユーザーインターフェイスなどのように新しいシステムの一部を提案
し、プロトタイプを実装して実験を行い、その有効性、実現可能性などを検証します。
(b) 技法、解法、アルゴリズムなどの提案に関する研究
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例えばORの解法や品質測定・評価技法などのように、新しい技法を考案し、その
有効性を理論的に証明し、またシミュレーションなどで検証します。
(c) 基礎的な理論に関する研究
理論に関する基礎的な研究や、将来実用化される萌芽的な基礎研究がこれにあたり
ます。
(d) 新しいシステム制御/運用方式に関する研究
将来標準化される可能性のある新しい方式の提案や、将来の実用化を目指した、新
しい制御/運用方式を提案し、評価する研究です。
(e) 実験中心の研究
例えば人間工学の分野において人間の知覚に関する事実に関する新しい知見を仮説
として呈示し、実験で実証します。または、実験を繰り返して事実を明らかにします。
(f) 既存技術の評価に関する研究
例えば予測技法、測定技法、管理技法などのような既存の技術のための新しい評価
技術を提案して、または既存の技術を応用して実際に評価を行い、既存技術の有効性
を追認したり、否定したりするなどにより、新しい評価結果を明らかにします。
(g) 事例研究
既存の高度の技術を理解して、その技術がそれまでに利用されていないような応用
分野に適用して、その結果その技術に関する新しい知見を得るような研究です。その
事例だけの分析に終始するという意味で単なる演習と見られるような、レベルの低い
ものは卒業研究と見なされないので注意が必要です。研究というからには、その事例
を調べることによって、もっと広い分野での知見が得られるようなものでなければい
けません。
(h) 文献調査を主体とする研究
専ら特定の分野の文献を徹底的に調べ、新しい視点から分類整理して論じるもので、
文系に近いスタイルの論文です。このためには少なくとも数十点の原著論文を参照す
ることが必要になります。分野によっても異なりますが、原著論文の半数以上は英語
で書かれたものになるでしょう。「新しい視点」を見つけるのは容易ではなく、かな
り高いレベルの理解を要するので、学部生にはあまり推奨できません。
2.3. 研究の進め方
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2.3.1. 文献調査
研究の基本はまず文献の調査です。入門書、概説書は学部学生レベルでは研究の初
期に参考になりますが、それらのみを読んでも研究にはなりません。研究テーマに関
連する原著論文を調べる必要があります。
指導教員の図書および論文を精読し研究することは大変重要ですが、それだけでは
視野が狭くなります。ましてや、同じ研究室の先輩の卒業論文、修士論文しか読まな
い、ということでは発展性がありません。必ず同分野の他の、特に学外、海外の研究
者の文献に触れて下さい。
英語の論文を敬遠していては、将来の大成は期待できません。特に大学院進学希望
者には必須の体験であり、1つの立場に捕らわれないという意味から少なくとも4・
5件の論文には目を通して下さい。
2.3.2. インターネットによる調査
インターネットによる情報の収集は、現代人の必要技術です。有効に使えば非常に
大きい効果が得られます。一般的な事項の検索として Yahoo, google などのサーチエ
ンジンと呼ばれる道具を1度は使ったことがあるでしょう。ちょっとコンピュータを
操作しただけで一生かかっても読み切れないほどの資料がたちどころに手に入ります。
しかし、その情報は文字通り玉石混淆、そう簡単に第一級の資料にアクセスすること
はできないかもしれません。手に入ったというだけで安心してしまわないように。
また、探し方によっては見つからないこともありますし、そもそもウェブページに
なっていないかもしれません。インターネットで探したからおしまい、としないで、
図書館や、企業の資料館、広報など、可能な限りの調査を試みてください。
学術的な資料を調べるためには Yahoo などよりは「文献データベース」を調べる方
が有効です。これは早稲田大学図書館のホームページから見つけることが出来ます。
ホームページによってはアンケートに答えさせるような仕掛けが施してあるものを
見かけます。これを真似すれば、座っていてもアンケート調査ができると思うかもし
れません。しかし、そのような集め方では、アンケート調査の基本である無作為抽出
を実現させることはほとんど不可能ですから、回収データを単純に統計パッケージに
かけても偏りのある結果しか得られないでしょう。回収結果が有効に利用できる見通
しがなければ、むやみにネット上でアンケートをとることはやめた方がよいでしょう。
あるいは、メールアドレスを集めて、メールによるアンケートを考える人がいるか
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もしれません。実際そんなメールがときどき送られてきます。この場合もホームペー
ジのアンケートと同じように、リプライを返す人達が母集団全体のミニチュアになっ
ているということはほぼ確実に期待できません。また、この場合は、一時的にせよ、
メールサーバに負荷を掛けることになりますから、慎重にする必要があります。ネチ
ケットといわれるインターネットを利用するマナーとルールを遵守すること、無差別
にメールを送ったり、ねずみ講式にメールの数が増えるメールを送ったりするなどルー
ル違反のないように十分に注意することが重要であり、必ず指導教員に相談してから
利用するべきです。
2.3.3. 研究テーマの選定
研究テーマは自己の能力を伸ばすためには十分に挑戦的で、しかし努力により実現
可能なものが望まれます。十分な調査研究によりテーマは浮かび上がってくるはずで
す。研究テーマは、研究のニーズおよび価値があり、かつ独自性があることが望まれ
ます。テーマの新しさを説明する際に、単に「そのような研究は従来ない」というこ
とを強調する学生もいますが、従来研究がないということは、本当に新しい研究であ
る場合もあるでしょうが、無意味だから誰も振り向かないとか、逆に難しさが分かっ
ているので誰も手を着けたがらない、という場合もあるので、注意、あるいは覚悟が
必要です。
当学科は問題解決能力だけでなく、問題発見能力の育成も目指しているので、研究
テーマの自主的な設定を求めています。研究テーマが決定し、テーマと研究内容につ
いて説明できることは、就職活動にも大学院進学の面接時にも重要なので、4年に進
学するまでには決定していることが望まれます。
2.3.4. 新技法、新システム概念などの創造
学生諸君が最も苦しみ、しかし成功した際には最も達成感を味わうことのできる、
研究の中心部分です。テーマに即した、独創的な良い提案を期待します。
2.3.5. 実験
予備実験、データ収集実験、検証実験など、研究には各種の実験がつきものです。
実験結果の分析には統計の技術が必要です。研究段階で知識の不足が露呈して行き詰
まることのないように、勉強しておきましょう。
3.本論文の構成および書き方の注意事項
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論文の構成はまとめ方によって異なりますが、一般的には、序論、従来研究、研究
内容と結果、考察、結論から構成されます。これらの他に、参考文献および(必要に
応じて)付録が加わります。序論から結論までを5ないし6章程度にまとめると良い
でしょう。
各章の冒頭には、その章の要約(2∼3行程度)を必ず書きます。各章は、必要に
応じて節(例 3.1)および項(例 3.1.1)に分割して記述します。項レベルの分量は1
ページ以上となるようにし、それより少ない場合は「小見出し」とします。各章、節
および項は、図、表を含んでも良いですが、必ずその中身について文章により論述し
ましょう。
目次には章・節・項のレベルまで記載します。図表目次もあった方がよいでしょう。
また、参考文献および付録の掲載ページも目次に載せます。
目次の前に、論文の概要を載せるのは良い習慣です。500字程度で扱っている問
題とアプローチ方法、得られた結論を簡潔にまとめます。
3.1. 序論
卒業論文はあくまで「論文」です。したがって、第1章のラベルは「はじめに」で
はなく「序論」です。序論は、読んで字のごとく、論でなければなりません。序論に
は、研究の背景、動機、研究目的、アプローチ方法などを書きます。序論を読めば研
究全体の概略および論文の意義がわかるように、また、研究の良さおよび重要さがわ
かるように簡潔にまとめます。読者が先を読みたいと思うような魅力的な文章を書い
てください。
研究の背景を論述するに当たって、従来研究との絡みを説明することが必要になる
場合もあるでしょうが、序論では従来研究の説明は最小限に止め、従来研究の体系的
な説明は別の章を起こして詳述します。
研究目的、アプローチ方法の論述とは、設定した問題について、どのような技術的
な課題があり、それをどのようなアプローチで解決しようとしたのか、また、その方
法が良いことをどのように検証しようとしたのか等を書きます。一般に、システムあ
るいはプログラムを開発すること自体は研究ではないので注意しましょう。
序論の最後に、第2章以降の論文の構成をまとめます。2章では...。3章で
は...のように、各章1つの文章くらいで要約します。
3.2. 従来研究
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設定した問題に対して、これまでにどのような研究がなされてきたのかをまとめま
す。従来研究は論文の増量材ではありません。論文の内容に直接関係があることのみ
を、本論との関係から書きます。つまり、何らかの研究が先にあって、それについて
「これまで∼の研究は誰がおこなったが、∼の視点からの研究はまだない」、あるい
は、「誰々が∼のモデル(アルゴリズム)を作ったが、本研究では∼の理由により、
∼の改善を図った」など、様々な関連が考えられます。
参考文献の数がきわめて少ないものや、同一研究室の卒業論文あるいは修士論文の
み引用した論文では、研究を行ったとは言えません。特にひどい場合には、1∼2冊
の参考書を延々と書き写して自分の論文のような振りをしている場合がありますが、
これは明らかに犯罪行為です。数冊の教科書的な参考書だけを読み、原著論文を読む
努力をしていない場合は、卒業研究の狙いを満たすものとは言えません。
文献の参照は、あくまでも自分の文章で記述します。ただし、過去の研究の引用と、
自分の考察および研究内容は、明確に区別した記述をします。文章を原著からそのま
まの引用する場合は、それを補うために必要な場合に限定するべきです。参照した文
献からの引用は、数行、長くても10行以下にとどめ、引用毎にどこからどこまでが
引用かを明示します。
参照する場合、「[森戸99]によると・・・である。」という書き方は望ましくあり
ません。なるべく「森戸らは・・・・と述べている[森戸99]。」としましょう。図や
表を引用する場合も、必ず一つずつ出典を明示します。
文献には必ず番号をつけます。番号は論文内で[1]、[2]、…[n]などと一連番号をつ
ける場合と、[Azuma97]、[平澤98]、…[Yoshimoto01]などのように[姓+発表年]で表わ
す場合が一般的です。後者は、一度データベースを作って自分のコンピュータに入れ
ておけばよく、論文を書いている段階で順序を入れ替えたり、追加、削除を行ったり
しても修正の必要がないので便利です。ただし、学会の予稿集や論文誌の場合にはど
ちらかを指定していることが多いので、慣習に従ってください。
3.3. 研究内容と結果
何を目的に、何を行ったのか、それはどのように評価検証したのか、そしてどのよ
うな結果が得られたか、という一貫した筋が通っていることが必要です。また、結果
だけでなく、そのプロセスおよび理由などを考察し論述することも必要です。研究は
常に成功するとは限りません。うまくいかなかった場合でもその理由が考察され、今
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後に道を開くものであれば、研究の価値があるといえます。
3.3.1. 提案
提案内容について、それがどのようなものかを書くだけでは不十分です。論文は仕
様書ではありません。どのようなプロセスでその提案を行ったのか、それはなぜ良い
のかなど、定性的・定量的な分析に基づいて、論理的にその提案理由を説明し、有効
性を示す必要があります。提案の特徴および効果も明記して下さい。
提案内容を簡単な図と数行の説明で行っている場合がありますが、これは「論文」
としては不合格です。全ての図表は、本文中で十分な説明を行って下さい。まとまっ
た文章なしに図表が数ページも続くことは避けなければなりません。仮説があれば、
その仮説とその理由も明示して下さい。
3.3.2. 提案の検証
提案は、必ず論理的な証明、実装、実験などにより、その正当性、有効性などを検
証する必要があります。実験を行った場合は、実験条件を明示し、目的に適している
ことを示します。実験数、被験者数が不充分な場合が多いので、それを補う努力をし
て下さい。
3.3.3. 図表の扱い
図番と図名は図の下に、表番と表名は表の上につけます。図表を掲載する際には、
文字・線・点について、色・種類・大きさに注意し、印刷された図表が鮮明なものに
なるよう工夫する必要があります。特にEXCELで作成したグラフをモノクロ印刷する
際には注意が必要です。グラフの領域は「色付け無し」を選択すると良いでしょう。
また、線は実線と破線の区別をつけると良いでしょう。
図番と図、表番と表が別々のページにならないよう仕上がりを注意します。表が複
数ページにまたがる場合は、各ページの表毎に表名を付け、それぞれ(その1)(そ
の2)のように書きます。
本文中に含める図表は、本文の理解にとって必要最小限なものに留め、さらに必要
なものは付録に掲載します。例えば、パラメータを変えていろいろ計算したらこうなっ
た、というような議論をする場合は、計算結果をまとめたグラフ等を本文中に挿入し、
個々の計算結果は、載せるとしても付録に回すべきです。
3.4. 結論
この研究で何を目的に、何を行い、何が達成できたかを最後にまとめて書きます。
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そして、その結論がどのような意味を持っているのかを、その分野全体を見通して評
価できなければいけません。そして、もしこの先を続けるとすればどのような問題が
残されているのか、ということを今後の課題として簡潔にまとめます。
結論自体もまた論文です。数行で終わることなく、自分の研究プロセスと研究成果
を十分に考察しましょう。
3.5. 参考文献
参考文献を一連番号順の場合は出現の順に、また著者+発表年の場合は著者名のア
ルファベット順にまとめます。どちらのスタイルを採用するかは、所属の研究室によ
り主要な学会が異なり、学会によりスタイルも異なるので、研究室の指導に従うと良
いでしょう。
3.6. 付録
作成したプログラム、使用したデータ、資料などは、付録として巻末に収録します。
プログラムなどは、CD-ROMに記録して添付するのも良い方法です。
4.研究発表
卒業研究は、完成した卒業論文の骨子を教員の前で口頭発表し、最終審査を受け、
評価されます。不満足な出来であれば、さらに1ヶ月後に論文を書き直して再発表再
審査を受けなければいけません。いくら論文の出来が良くても口頭発表ができなけれ
ば、価値は半減です。また、口頭発表のために、卒業研究の内容を簡単にまとめた要
旨を作成しなければいけません。論文作成と同様、口頭発表や要旨作成にも基本的な
マナーがあります。以下ではそれらについて説明します。
4.1. 要旨の作成
口頭発表のために、卒業論文の骨子をA4版2枚にまとめた「要旨」を作成する必
要があります。これはその年度に卒業研究を行った全員の分をまとめて冊子体に印刷
し永久保存版としますので、過去の良い例を参考にして、最善のものを作成してくだ
さい。過去の要旨集は各研究室に保管されているはずですから、参考にして下さい。
要旨のフォーマットは学科のホームページに載っています。
(a) 何十ページもの論文を3,000字強の要旨にまとめるのですから、そう簡単ではあり
ません。構成は論文と同じですが、特に最初の「序章」部分で研究の全体が明らかに
なるように、明瞭な文章を書いてください。
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(b) 自分の研究論文の要旨ですから、従来研究のような人のやったことはせいぜい3
分の1、自分のやったこと、考えたことを主体に書いてください。論文の抜粋を作ろ
うとすると、どこも削りたくなくなって収拾がつかなくなってしまうことは目に見え
ています。主張したいことを1つ2つに絞り、それを中心に書くようにします。もし
まだスペースに余裕があれば、次に主張したいことを付け加えます。
(c) 数式、図、表はせいぜい全体の3分の1以下に抑えてください。記号の説明を延々
と並べるものも散見されますが、読まされる側にたってみてください。
(d) 「今後の課題」は「要旨」として書く必要はありません。
自分の考えを1ページ、2ページ、4ページなどと限られた字数にまとめるのは、
とても重要なことであり、社会に出てからも常に役に立ちます。ゼミの場でも意図的
に次節以降のOHP・スライド作成と合わせて練習しておいてください。
4.2. OHPシートの作り方
口頭発表するとき、多くの場合補助手段としてOHPが使われます。かなり、いい加
減なシートを見かけますので、ここで注意すべき点をまとめておきます。
(a) 各OHPシートにはそのシートで主張したい事柄を一言でまとめたタイトルと、ペー
ジ番号を付けてください。1枚のシートには1つの話題だけを書くようにしてくださ
い。
(b) 使用する活字は最低でも18ポイントくらいの大きい文字を使ってください。
(c) OHPシートに文章を書いてそれを読み上げるという「発表」をする人が少なくあ
りません。「1。序章。1。1はじめに。この研究の目的は。。。」これは朗読で「口
頭発表」ではありません。
(d) 文章を書く場合は箇条書きにしてください。
(e) 図は軸の名称、記号の説明をきちんと書いてください。1枚のシートに図は2枚
まで、ふつうは1枚のシートに図は1つです。
(f) 数表はよほど簡単なものでない限り、作ってはいけません。なるべく図で表現する
ようにしてください。
(g) OHPシートは透明であることを利用すると、思わぬ効果を作り出すことができま
す。工夫してください。
(h) モノクロ印刷の場合、手書きでも良いから色付けをすると効果的です。
(i) カラー印刷をする場合はあまり、にぎやかにならないように注意してください。
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4.3. プロジェクタの使い方
最近はパワーポイントでスライドを作りプロジェクタで発表をするケースも増えて
います。プロジェクタについてもいくつか守った方がよいと思われる注意事項があり
ますので、まとめておきます。
(a) 「Simple is best.」あまり、凝った作りをしたスライドは短時間で飽きられます。長
時間の鑑賞に耐えられません。基本的にはOHPシートのように、静止画中心が良いで
しょう。内容の薄さをカバーするために飾り立て、アニメ効果を多用するのは論外で
す。無地に黒字(または青字)プラス赤字、せいぜい2色使い、を原則としてくださ
い。
(b) 発表に沿って徐々に内容を見せたい場合は、隠れたものを見せて行くような方法
を使い、スクリーン上を動き回るような「アニメーション」は使わないでください。
(c) OHPの場合よりもさらに強調すべきは、1枚のスライドには1つの主張だけを書
くようにしてください。
(d) 説明の都合上、前に表示したスライドを参照することがあります。この場合は同
じスライドを次に挿入することで、行ったり来たりすることを防げます。
(e) コンピュータにも相性があって、せっかく作ったものが動かなくなる場合が少な
からずあります。決められた時間を守るために、あらかじめ危機管理を考えておいて
ください。
4.4. 口頭発表
最終審査のための口頭発表は7分間(以内)です(2001年現在)。決められた時間
に自分の主張を過不足なく、しかも印象的に話すには、たくさんの練習と、ある程度
の「慣れ」が必要です。発表の仕方にも、論文の書き方同様各種のガイドが出版され
ています。1冊くらいは目を通しておいた方がよいでしょう。原則は、「レポートの
書き方」でも書いたように、「相手の立場に立って考える」ということです。こうい
う発表を聞かされたら相手はどう思うか、という想像力が働けば、自ずと良い悪いの
品質を見極めることができるはずです。しかし、最初はやはり形から入った方がわか
りやすいでしょう。次のようなステップを踏んでよく練習してください。
(a) 与えられた時間は7分しかありません。何を相手に伝えたいか、的を絞ってくだ
さい。それを理解するのに必要かつ十分な予備知識を2分くらいで話し、残りを自分
の研究内容の紹介に当てる、というくらいの配分がよいでしょう。
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(b) 発言の骨子だけを見ながら時間内にまとめられる人はあまりいないと思います。
自分が話す通りの「せりふ」を書いてみてください(もちろん「です・ます」調で
す)。式や図表を説明する場合も、その説明する言葉を全部書きます。図表の説明は
意外と時間がかかるものです。これを「口述原稿」といいます。「ここで1枚目の
OHPシートを見せる」というような「ト書き」付きがよいでしょう。
(c) 口述原稿を丸暗記し、それが朗読調にならないようになるまで練習します。
(d) OHP、あるいはプロジェクタを用意し、できれば暇な友達を捕まえて発表練習を
します。
(e) 十分に練習を積めば、相手が教員だろうと恐るるにたらず、成功は間違いなしで
す。
口頭発表は、現代社会ではあらゆる場面で必要であり、口頭発表の技術は現代生活
に必要不可欠な基本技術といっても過言ではありません。ゼミはとても良い機会です
から、積極的に利用して練習しましょう。一朝一夕にうまくなるものではないことを
覚えておきましょう。
5.評価
卒論は理工系の学術論文の第1歩ですから、理工系論文に一般的に要求される(1)新
規性、(2)有効性、(3)信頼性、(4)了解性等の基本要件を満たさなければなりません。
しかしながら、研究の世界に初めて足を踏み入れるようとしている学生諸君には、こ
れらの要件が何かを本当の意味で理解することは簡単ではないと思われます。卒論を
通じて、理工系の論文に何が要求されるかを学んでもらいたいと思います。
新規性の探求が重要であることは言うまでもありません。徹底的な情報収集に基づ
いて、何がすでに明らかにされているかを知った上で、研究する意義のある問題がど
こに潜んでいるかを探り、探り当てた問題に対する解決策を示すことは、学問は言う
に及ばず、ビジネスなどあらゆる世界に共通する問題解決の基本プロセスといえます。
ビジネスの世界でも人の後追いばかりでは世の中で通用しません。新規性がどこにあ
るかについては、常に、敏感であってほしいと思います。
しかしながら、きちんとした基礎を持たずに、いたずらに新規性に飛びつくのはリ
スクもあります。まやかしの新規性より、確固たる基礎力の方が将来の役に立つ可能
性が少ないので注意が必要です。能力をわきまえずに無謀な問題に挑戦することは自
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由ですが、基礎をないがしろにして無茶な挑戦を試みると、結局、本当の意味での新
規性が達成されないということが少なくないことを頭に入れておいてください。
なお、最終審査で、出来の悪い学生については不合格、あるいは保留があり得ます。
実際に毎年数名はそうなります。そうならないように、きちんと計画を立てて下さい。
保留の場合は1ヶ月をおいて論文の再提出、再発表により、再評価を行います。
参考文献
[1]
太田恵造「卒業論文作成の手引き」アグネ技術センター(1993)
[2]
木下是雄「理科系の作文技術」中央公論(中公新書)(1981)
[3]
小郡延治「論文・レポートのまとめ方」筑摩書房(1997)
[4]
末武国弘「科学論文をどう書くか」講談社(ブルーバックス)(1981)
[5]
高橋昭男「技術系の文章作法」共立出版 (1995)
[6]
田中潔「科学論文の仕上げ方 (2版)」共立出版(1994)
[7]
二木紘三「論文・レポートの書き方」日本実業出版社(1994)
[8]
三島浩「テクニカル・ライティング」共立出版(1990)
[9]
鷲田小弥太「入門・論文の書き方」PHP研究所(1999)
(文責:東 基衞、逆瀬川 浩孝)
(作成: 2001.3.19)
(修正: 2001.3.25, 2001.11.7)
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