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運動前後の筋肉の弾性

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運動前後の筋肉の弾性
運動前後の筋肉の弾性(硬度)の変化について
運動前後の筋肉の弾性(硬度)の変化について
ー生体組織硬度計を使用してー
ー生体組織硬度計を使用してー
福井県
吉田 晋也
共同研究者
笠嶋 弘冶・堂前 泰彦
青木 鉄典・岡倉 稔浩
野村 勝也・吉田 恭介
平山 俊家
「キーワード」生体組織硬度計、筋肉の弾性(硬度)
、表面筋電図計、筋力計今回使用したマッス
ルメーターは生体組織硬度計という形で、(株)井本製作所と明治鍼灸大学の共同開
発により製品化されたものです。
これが、使用した生体組織硬度計です。
まず、機器の説明を簡単にさせて頂きます。この機器
は筋肉の弾性(硬度)を客観的に数値化できる測定器
であり、筋の硬度差により筋肉の疲労度、筋肉の弾性
の変化を測定することを目的として作られています。
測定方法としては、測定部位に副筒管を押し当ててい
き、センサー部分にあらかじめ設定されたスプリング
の荷重と位置変化により、その硬度を測定します。測
定値はポイントとして考えてください。
今まで、筋肉の疲労を客観的に確認する機器として、筋力計と表面筋電図計を併用してきまし
たが、今回はこの筋硬度計をセットにして、運動前後の筋肉の活動を記録してみました。
なお今回の測定に関し、表面筋電図計はポリグラフ 366、NECメディカル筋電図解析システ
ムBIMUTASを、筋力計はOG技研GT−30 を使用しました。
[方法]
成人男性 20 代∼40 代 15名を調査対象とし、10名を運動する介入群、残りの 5 名をコントロ
ール群としました。調査対象の 15名には、普段と同じように生活してもらいました。
<測定のスライド>
両足を肩幅に開いた立位を基本肢位とし、膝蓋骨上縁
より四横指上の大腿直筋上に×印を付け、運動前の筋
硬度を測定しました。
<スクワットのスライド>
測定後、ハーフスクワットを 1 秒間に 1 回のスピード
で 30 回行い、同じ位置の硬度を測定しました。10 分
後、さらに 30 回スクワットを行い再度測定しました。
そして翌日(24 時間後)に、再び同位置の硬度を測定
しました。
<筋力計、筋電図のスライド>
また、運動前・60 回スクワット後・24 時間後の 3 度
にわたり、大腿四頭筋の最大筋力を測定し、同時に表
面筋電図計の電極を大腿直筋の中下 1/3部に当て、最
大筋力を発揮した際の筋電図の最大波形を中心に、0.3
秒間の波形の積分値を求め比較しました。
運動前と60回スクワット後の比較
運動前と60回スクワット後の比較
[結果]
<運動前と 60 回スクワット後の筋電図計・筋力計・
130%
筋硬度計のスライド>
平均値
123.02%
120%
これは介入群の、運動前の値を 100 とした場合の、筋
*
108.09%
110%
電図積分値、最大筋力、筋硬度計の、60 回スクワット
平均値
107.87%
100%
101.99%
95.44%
後のそれぞれの値をグラフ化したものです。中央の赤
95.89%
90%
平均値
いラインが運動前の値です。
84.54%
80%
**
まず左の青いグラフを見て下さい。これは最大筋力発
73.64%
70%
揮時の筋電図波形の積分値を比較したものです。ご覧
60%
のように 60 回スクワット後には、筋電図の積分値は
筋電図積分値
最大筋力
筋硬度
平均で約 23%上昇しました。
次に中央の黄色いグラフを見て下さい。これは大腿四頭筋の最大筋力を比較したものです。ご
覧のように 60 回スクワット後には、平均で約 15.5%下降しました。
以上のことから、より多くの筋線維を動員しながら、発揮できる筋力は低下しており、60 回ス
クワット後には筋肉の能力が低下しているといえます。
ここで右の緑のグラフを見て下さい。これは筋硬度計の値を比較したものです。ご覧のように 60
回スクワット後には平均で約 2%上昇したのみで、有意差は確認出来ず、筋電図や筋力計で見られ
たような変化が見られませんでした。
150%
140%
138.17%
60回スクワット後と24時間後の比較
60回スクワット後と24時間後の比較
150%
140%
<60 回スクワット直後と 24 時間後の筋電図計・筋力
計・筋硬度計のスライド>
111 .24 %
110%
これは介入群の 60 回スクワット後の値を 100 とした
100%
102 .5 %
場合の、24 時間後の筋電図計・筋力計・筋硬度計のそ
90%
8 6.56%
れぞれの値をグラフ化したものです。
80%
平均値
まず左の青いグラフを見て下さい。これは最大筋力
76 .1 9%
70%
*
発揮時の筋電図波形の積分値を比較したものです。ご
6 5.82%
60%
覧のように 24 時間後には、平均で約 23.8%下降しまし
筋電図積分値
最大筋力
筋硬度
た。
次に中央の黄色いグラフを見て下さい。これは大腿四頭筋の最大筋力を比較したものです。ご覧
のように、24 時間後には平均で約 19.7%上昇していました。
以上のことから、前日の 60 回スクワット後に比べ、24 時間後にはより少ない筋線維の動員で大
きな筋力を発揮できていることになり、筋肉の能力は回復傾向にあると考えられます。
ここで右の緑のグラフを見て下さい。これは筋硬度計の値を比較したものです。ご覧のように 24
時間後には平均で約 6.9%上昇しており、筋肉の能力は回復傾向にありながら、筋硬度は上昇して
いることになります。
130%
1 26.76%
平 均値
11 9.6 7%
**
11 2.5 8%
120%
平 均値
1 0 6 .8 7 %
**
筋硬度の標準偏差
筋硬度の標準偏差
120
118
116
114
112
110
108
106
104
102
100
98
96
94
4.69
6.10
5.53
3.55
3.69
2.15
30回後
介入群
60回後
24時間後
コントロール群
筋硬度平均の変化率
筋硬度平均の変化率
<平均の変化率の比較>
次に、介入群とコントロール群の、運動前の筋硬度を
100 とした場合の、60 回スクワット後と 24 時間後の筋硬
度の平均の変化率を見て下さい。コントロール群の方は
60 回スクワット後と同時間も 24 時間後も、ほぼ 0%であ
るのに対し、介入群の方は、60 回スクワット後では約 2%
上昇しただけですが、24 時間後には約 8.8%上昇していま
す。
10.00
9.00
8.81
8.00
7.00
6.00
5.00
4.00
3.00
2.00
1.99
1.00
0.00
-0.31
0.06
-1.00
<標準偏差の比較>
では、介入群とコントロール群の、運動前の筋硬度の値を
100 とした場合の筋硬度の平均値と標準偏差を見て下さ
い。ご覧のように介入群は、コントロール群に比べて筋硬
度の標準偏差が大きくなることがわかります。
60回後
24時間後
介入群
コントロール群
運動前と24時間後の筋硬度増加値
運動前と24時間後の筋硬度増加値
114
112
110
108
13.21
106
4.84
5.08
5.08
1.61
102
%
7.81
3.64
104
13.33
12.50
1.61
100
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
<運動前と 24 時間後の筋硬度の変化>
そこで、運動前と 24 時間後の筋硬度の変化を見てみる
と、全員に明らかな筋硬度の上昇が認められました。有意
確率 1%未満と確認できました。先ほどのコントロール群
との差から、この変化は昨日のスクワット運動の影響であ
ると言えます。
まとめ
① 運動前に比べ60回スクワット後では、筋電図の
積分値は上昇し、最大筋力は減少しているが、
筋硬度計の値は上昇傾向を示さなかった、
② 60回スクワット後に比べ、24時間後では、筋電
図の積分値は減少し、最大筋力は上昇し、
なおかつ筋硬度計の値は上昇傾向を示した
③ 運動をしない人に比べ、運動をした人は、筋硬
度計の値のばらつきが大きくなった。
[まとめ]
① 運動前に比べ 60 回スクワット後では、筋電
図の積分値は上昇し、最大筋力は減少してい
るが、筋硬度計の値は上昇傾向を示さなかっ
た。
② 60 回スクワット後に比べ、24 時間後では、
筋電図の積分値は減少し、最大筋力は上昇
し、なおかつ筋硬度計の値は上昇傾向を示し
た。
③ 運動をしない人に比べ、運動をした人は、筋
硬度計の値のばらつきが大きくなった。
運動直後には、筋硬度計の値は上昇傾向を示さなかったのに対し、24 時間後では筋硬度計の値は
上昇傾向を示した点から、この機器を使用して、運動直後に筋肉の硬度測定することは出来ない事
が分かった。
今回は、調査対象人数が少なく、運動も 1 種類のみで、調査時間においても運動後に測定したの
が 24 時間後のみであったため、今後、別の運動や筋肉、負荷の強弱、12 時間後・36 時間後等の
状態も測定して、硬度の変化をもう少し詳しく調査し、研究の精度を高めていきたいと思います。
また、測定方法も立位での測定であったため、少しばらつきがあった可能性があると考えられます。
今後、測定肢位にも注意していきたいと思います。
最後に、今回の調査にあたりご協力いただきました先生方に深謝いたします。
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