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耐衝撃性の改善と客室の安全性向上を 目指したヘリコプタ実機落下衝撃
耐衝撃性の改善と客室の安全性向上を 目指したヘリコプタ実機落下衝撃試験 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 様 三菱重工業株式会社 様 航空機事故の 7,8 割は離着陸時に起こると言われている。もし したウィンチで吊り上げた後,試験開始時にウィンチとの結合装置を 万一このようなとき事故が発生しても,航空機が衝撃に強くかつ十分 切り離し,レールに沿って供試体を滑走させ,接地直前で自由落下さ 安全に留意した設計がされていれば,衝撃から搭乗者を守るだけでな せるレールガイド方式で行われた。この方式は,ケーブルで吊り上げ く,座席や装備品が避難を妨げることもなく,また,火災の発生や, た供試体を振り子状に運動させ,試験条件に合うように接地させるケ 着水時の客室内への浸水を防ぐことができるので,より多くの人を助 ーブルスウィング方式とは異なり,落下姿勢条件を比較的容易に実現 けることができると考えられている。 でき,落下点を正確に定められるため,映像計測を容易にできるとと 独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)総合技術研究本部航 もに試験の再現性が得られやすい。 空安全技術センター(当時)では,ヘリコプタに関する機体構造の耐 本試験では画像計測とセンサ計測などが行われた。画像計測は,供 衝撃安全性に関わる研究開発を効率的に進めるため,クラッシュ時に 試体に高速度ビデオカメラ 2 台を搭載,地上には高速度ビデオカメラ, 起きる構造の挙動を解析により推定するための適切な数値解析モデル スタンダードビデオカメラ各 5 台を設置して行われた。供試体接地位 の開発をめざしている。実物の機体を使用した試験で得られた実デー 置付近に 1 m × 1 m の格子模様の背景幕を設置し距離計測の目安と タで数値解析モデルを検証することにより衝撃解析手法が確立される した。また,画像解析による位置を計測のために供試体右舷の主要点 とともに,耐衝撃性の改善や客室の安全性を向上させるための研究開 にターゲットマークを貼付した。 発に寄与し,最終的には機体構造の動的要求での耐空性基準策定への センサ計測では,座席 10 脚の内,高速度ビデオカメラを設置する 提言を目指している。 ための場所として 2 脚を取り外し,残り 8 脚にそれぞれに人体ダミー 同センターでは,上記目的のために,三菱重工業(株)により開発 を搭載した。図 2 に主な加速度,ひずみの計測位置を示す。また,表 された三菱 MH2000 型ヘリコプタ試作 2 号機を用い,ヘリコプタの 2 に計測センサの点数,型式名および機上計測(自動記録) ,地上計測 実機落下衝撃試験を三菱重工業(株)との共同研究として,JAXA 航 (有線方式)の別を示す。機上計測のうち特に重要と思われる箇所 32 空宇宙技術研究センター飛行場分室で 2004 年 2 月に行った。その主 点はバックアップのため有線により地上で計測した。 な仕様を表 1 に示す。これは,1985 年実施の川崎式 BK117 型ヘリコ 機上計測では加速度,ひずみ,および荷重データを写真 1 の搭載型 プタのケーブルスウィング方式による実機落下試験に次いで国内 2 例 衝撃試験計測システム(DIS-2000A・128CH,DIS-3000A・32CH 共 目である。 和電業製)に取り込み,地上計測の加速度データはピエゾ加速度セン 試験は,図 1 に示すように滑車を取り付けたトロリーで吊り下げた サ用アンプを通し,ひずみデータは動ひずみ測定器(DPM 型 共和 供試体を,斜めに設置したビーム(レール)の上端部まで地上に設置 電業製)を通してディジタル記録計に取り込んだ。サンプリングレイ トは,機上,地上とも 10 kHz で,同時スタートのトリガで 10 秒間の ���� ������ ��� メインフレーム 加速度センサー ひずみゲージ トロリー ������� STA4735 ��� MGBダミー エンジンダミー ��������� TGBダミー STA5445 ��� ���� ���������� ������ 図 2 センサ配置図 ����������� 図 1 レールガイド方式模式図 表 1 供試体の主な仕様 供試体重量 座席数 10(座席には搭乗者を模擬した衝撃試験用 標準ダミー(Hybrid ⅡおよびⅢ型)を搭載 した。なお、座席2席分を計測用空間に置き 換えた。) 装備品 エンジン、メインローター、テールローター、 搭載機器類の一部等は取り外した。それらは 機体構造の重量分布や重心等を合わせるた めダミー重量で置き換えた。 搭載燃料 4114 約4500kg(最大全備重量) 相当する重量の水で代用した。 表 2 計測センサの内訳 測定項目 計測チャンネル 使用センサ 機上計測(自動記録) 地上計測(有線方式) (共和電業製) 加速度 機体構造 座席 人体ダミー ひずみ 機体構造 座席 120 20 47 12 51 4 22 4 33 12 25 9 8 3 荷重 6 0 シートベルト 6 0 計 150 32 機上計測 ひずみ型 (AS型) 機上、地上計測 ひずみゲージ (KFG型) 機上計測 ひずみ型(LBT型) (6) DIS-2000A 0 ms(接地) DIS-3000A 写真 1 搭載型衝撃試験計測システム 280 ms 写真 4 衝撃試験の高速度カメラ画像による時間変化図 副操縦士 左スキッドの接地時間を0 200 175 加速度(G) ③人体ダミー腰 ③ ②z 125 写真 2 試験開始前状況 ②座席底部 ①z 150 ①スキッド上部近傍 100 ② ① ③z 75 + z軸加速度 例:副操縦士席 方向 50 25 0 -25 -50 0 0.05 0.1 時間(s) 0.15 0.2 図 3 加速度計測データの 1 例 1000 500 写真 3 吊り上げられた供試体 データを取得した。なお, 高速度ビデオカメラ計測も同時トリガである。 St r ain (μ ) 0 -500 -1000 内側 -1500 試験での機体は,写真 2,3 に示すように建物の外側から滑走し, -2000 建物の内部で左側スキッド(機体下部の離着陸用ソリ)後端部から接 -2500 外側 0 50 100 150 地し,ほぼ同時にスキッドは反り上がり胴体下面が接地し,バウンド した後再接地した。その後,機体がスキッドに乗るような形で滑走し, 鉄骨製バリケードに衝突して機体前面を破損して停止した。高速度ビ 200 250 Tim e (m s ) 300 図 4 STA4735 メインフレーム左コーナ部のひずみデータの 1 例 デオカメラ画像による接地時(0 ms)と 280 ms 後の画像を写真 4 に 現在は試験データを検証データとして,衝撃解析シミュレーション 示す。 を行い,耐衝撃性能を向上した床下構造の設計に使用できる解析モデ 加速度計測データの 1 例を図 3 に示す。スキッド上部近傍では加速 ルの完成を目指し,研究に取り組んでいる。 度も大きく,到達時間も早いが座席取り付け部,人体ダミー腰の順で (財)日本自動車研究所,(独)交通安全環境研究所をは 本試験は, 加速度は小さくなっており,これは床下部構造,座席がそれぞれ衝撃 じめ民間企業数社の支援のもとに実施されたが, (株)共和電業は計測 を吸収したためである。また,ピーク到達時間は遅くなっている。 の一部を担当した。 図 4 は,図 2 に示した STA4735 メインフレーム左コーナ部内側お よび外側ひずみの時刻歴線図の 1 例である。初期ひずみのずれは,切 本文中の敬称は省略させて頂きました。 り離し時の揺れによるものであり,80 ms 近くでは接地による衝撃に 掲載写真,図は独立行政法人宇宙航空研究開発機構 航空プログラムグ より圧縮のひずみが発生しいている。 ループ 運航・安全技術チーム様より提供して頂きました。 (7) 4115