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ミリ波帯散乱計の開発

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ミリ波帯散乱計の開発
V
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.3
5 No.177
通信総合研究所季報
December 1
9
8
9
PP.535-543
研 究
電波と光リモートセンシング
その II-
一衛星及び地上観測
4
. ミリ波帯散乱計の開発
阿波加純*'井原俊夫*
2
岡本謙一*'
(平成元年 7月初日受理)
RADIOANDOPTICALREMOTESENSING
-SATELLITEANDGROUNDOBSERVATIONSP
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4
. DEVELOPMENTOFMILLIMETERWAVESCATTEROMETERS
By
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0dB) withinthes
o
i
l
.
今後乙の種のセンサの利用を促進するためには,セン
1
. はじめに
サが利用される環境下における各種地物の散乱に起因す
るセンサ聞の干渉・混信の問題を解決しておく必要があ
ミリ波帯電波を用いると,小口径アンテナで鋭いビー
ムが得られ,また広帯域変調が容易であるため広帯域通
る.即ち,散乱ζ
i起因する不要波レベルのき訓面法,その
信や高分解能レーダを実現するととができる.特ζ
l レー
抑圧技術及び技術基準を明らかにする乙とが必要であ
ダへの利用を考えた場合,小型軽量な装置で高空間分解
り,とのためには, ミリ波帯における各種地物の散乱特
能を実現できるため,自動車の衝突防止・スリップ防止
l基づく理解が不可欠である.
性の実測データ ζ
用レーダ,航空機や船舶の着陸・接岸援助用レーダなど
このため,大気圏伝扱研究室では, ミリ波帯における
各種近距離センサへのミリ波電波の利用が期待されてい
各種地物の散乱特性のデータベースの構築を目標に,昭
る
.
和6
1
年度からミリ波帯散乱実験を計画・実施してきてい
制 電 波 部 大 気l
孤伝搬研究室
判 関 東 支 所 鹿偽字H
i通信センター
る
.
まず計画の第一段階として,従来からあった 50GHz
第一宇宙通信研究室
5
3
5
通信総合研究所季報
5
3
6
cw散乱計として改造し,
帯の装置を
昭和6
2
年 5月か
第 1表 50GHz帯散乱実験システム主要諸元
と,本格的な散乱
ら予備実験を実施してきている川.次 l
50G
l
l
z帯散乱計
計として,送・受信の偏波を垂直と水平で切り替え,散
周波数
5
1
.3
5G
H
z (連続波)
乱波の振幅と位相を測定するととにより複素散乱行列の
送信電力
送信アンテナ
角錘ホーンアンテナ
全要素を求めるポラリメータ山聞の整備を計画し,昭和
1
2 dBm
6
3
年度に 60GHz帯の装置を完成した. 60GHzのポラ
利得
リメータを用いた本格実験は,平成元年夏から開始する
電力半値幅
予定でいる.
2
2
.3dB
1
1
.
4
' (E面
)
1
3
.
2
" (H面
〉
さらに, 80GHz帯及び lOOGHz帯のポ
送信アンテナに同じ
ラリメータを今後整備し, 50GHzから lOOGHz にか
受信アンテナ
けての各種地物のミリ波帯散乱特性を蓄積する計画をた
送・受信偏波
H及び Vの任意の組合せ
てている.
最大受信電力
最小受信電力
2
5 dBm
本論文では, 50GHz帯 cw散乱計の概要とそれを用
8
0 dBm以下
いた予備実験結果の一部, 及び新しく整備した 60GHz
散乱計架台
帯ポラリメータの概要について述べる.
2
. 50GHz帯 散 乱 予 備 実 験
2
.1 実験システム
昭和田年 5月から開始した 50GHz帯散乱予備実験の
システム概念図を第 1図ζ
l示す.実験システムは, 5
0
GHz帯
cw散乱計,散乱計架台,資料回転台,資料の
入射角可変範囲
0∼ 9
0
'
高さ可変範囲
0
.8∼ 4m
試料回転台
回転範囲
36
0'
連
続
回転速度
可変.
標準は 3 rpm
媒質パラメータ(表面粗度,合水準,誘電率)測定系,
グフィノレタ出力側の導波管回路の E面を垂直あるいは水
及びデータ収集系よりなる.実験システムの主要諸元を
平に接続するととにより,垂直,水平の選択が可能であ
i示す.
第 1表ζ
第 2図は 50GHz帯
る.受信系の偏波についても同様である.対象物からの
cw散乱計のブロック図を示し
散乱波は受信用角錘ホーンアンテナで受信され,クロス
たもので,送信信号は 50GHz帯ガン発振器により得ら
カップリングフィルタを経て, 25GHz帯ガン発振器出
れ,クロスカップリングフィルタ,導波管型可変抵抗減
力の 2逓{音波を局発信号として混合され, 475MHz 帯
衰器を経て,送信用角錘ホーンアンテナより測定対象物
中間周波信号に変換された後,振幅検波,対数圧縮され
へ向かつて放射される.送信偏波は,クロスカップリン
受信電力信号として出力される. 50GHz帯散乱計の最
散乱計
表面粗度,
含水率,及び
誘電率の測定
散乱計架台
第 l図' 5
0GHz帯散乱実験システム
V
o
l
.
3
5N
o
.
1
7
7 December 1
9
8
9
5
3
7
グ
ン
−一‘.リソ
信一ヴ
送一恥タ
ロイ
スル
クフ
角鍾ホーン
アンテナ
受信系
角鍾ホーン
アンテナ
クロスカップリング
フイ I
レ
タ
第 2図 5
0GHz帯
cw散乱計プロック図
散乱体の後方散乱断面積(レーダ断面積)の測定を例に
下であり,ダイナミックレンジは 55dBQ
I
.
上である.
Tは以下の
とって考える.乙の場合の散乱波受信電力 P
50GHz帯散乱計アンテナビームの電力半値幅は送・
1
.
4
度
, H面で1
3
.
2
度である.乙のアン
受信とも E面で1
レーダ方程式で与えられる間.
情
一
一PH
大受信電力は− 25dBm
,最小受信電力は− S
OdBm以
・
・
(1
)
テナを用いて遠方界における散乱係数の測定を行うに
る.とのため,散乱計全体を較せるアンテナ架台は,散
数である
観測しでも,観測対象領域を移動したり,方位角を変え
ることによって不規則に変動する.乙のように不規則に
変動する受信レベルから測定物に関する有意義な情報を
引き出すためには,統計的なデータ処理が必要である.
乙のデータ処理結果を信頼性のおけるものにするために
は,統計的に独立な多数のサンプルを平均する必要があ
る.とのため資料を回転台に較せて回転し,独立サンプ
ル数を稼いでいる(2)(4).
データ収集系はパーソナルコンピュータを中心とした
システムで, 50GHz帯散乱計の受信電力信号,散乱計
入射角,資料回転台の回転角度に関するアナログ電圧信
号を収集し, 1
2ピットで AID変換した後,フロッピー
ディスクに記録している.データの処理,解析はオフラ
インで行っている.
2
.
2 散乱計の絶対較正
散乱計を用いて,各種地物の散乱係数(単位表面積当
りの散乱断面積)を測定するには,送・受信機のみなら
−
T
測定物の表面が土壌などのように不規則な場合,測定
物から散乱された電波の受信レベルは,同ーの入射角で
﹃ゆ&甲、‘
∼4 mの範囲で可変できる構造とした.
GTa
−
3A
0
度の範囲で可変でき,高さも 0
.
8
乱計の入射角が 0∼9
,
,
r
u
π
−
s
f
P
R
乙ζで
, eは一個の散乱体の散乱断面積, Rは散乱体と
散乱計の聞の距離で, Cは次式で与えられるシステム定
−
・
一
一
C
は,対象物とアンテナとの聞の距離を 0.4m以上とる
必要がある.また,測定は入射角を変えて行う必要があ
・
(2
)
ただし, 』は電波の波長, P
tは送信電力, G
t
, GTは
送・受信アンテナの利得である.
システム定数 Cがわかれば,距離Rと測定した受信電
γ とから( 1
)式を解いて散乱断面積 σを求める乙とが
力P
)式を用いて個々の要素の測定値
できるわけであるが,(2
を積み上げて求めた Cの値は必ずしも正確なものである
という保証はない.また,受信電力の測定においては,
受信機の利得変動が誤差の要因となり得る.従って,散
乱断面積を測定するには,乙のシステム定数に含まれて
いる誤差や,受信機利得変動の誤差を除去する必要があ
る
.
ζ のため,散乱断面積が既知の散乱体を用いて散乱
計システム全体の絶対較正を行う必要がある.
本予備実験では,比較的簡便な絶対較正法として,金
属球を既知の散乱体として用いる方法について検討し
た.金属球の後方散乱断面積は,球の半径を a,電波の
波長を Aとすると, 2
πa/l》 1の場合近似的に次式で与
えられる附.
σspheTe=11:a2
・
・
(3)
ず,送・受信アンテナ系を含めた全散乱計システムの絶
球は散乱断面積を余り大きく取れないが,アンテナビー
対較正が必要である.今,簡単のために孤立した一個の
ムのポインチングが楽であるという利点を有する.
通信総合研究所季報
5
3
8
第 2表 50GHz帯散乱計較正結果
2
.
4mゆ
ヘ
属球
天窓
距離
受信電力(計算)
受信電力(測定)
山
ょ
50GHz帯散乱計絶対絞正実験配置 !
'
I
!
円υ
u
r
h
h
h
υ
ペ
s
d
r
門川y
仇
第 3図
51.35GHz
1
2
.
2dBm
22.3dB
2
2
.3dB
3
0
.
2dBm2
1
.
1
1m
-52.SdBm
ー5
2∼−53dBm
周波数
送信電力
送信アンテナ利得
受信アンテナ利得
金属球レーダ断面積
散乱計
一
一5
0dBm
−
H
関東ローム
l
V五
−叩
p
周囲からの不要
l
←零点調整
散乱波レベル
守容
一
一 70
l
1J
11
昨アンテナ方向の微調整→
1frt
l1u
t
吉田ZRM脚組以
- -6
0
ど
」
時間
トー
第 4図 50GHz帯散乱計絞正実験の記録
11 m
一一→|
第 5図 土の減衰特性の測定
較正は,第 3図ζ
l示すように,直径 35mmの金属球
を用いて行った.金属球を支持する物体からの影響を極
力少なくするため,天窓から金属球を吊し,また天窓の
角,偏波などのシステムパラメータと,表面粗度,合水
縁からの反射の影響を避けるために,天窓と散乱計との
率,誘電率,地表面下の状態などの土壌パラメータに依
聞の距離をなるだけ短くして測定を行った.測定結果は
存する.
第 4図に示した通りで,方向調整を行った後の散乱電力
面下の深さの範囲をあらかじめ明確にしておく必要があ
2∼ー 53dBmでほぼ一定であった.周囲環境から
は− 5
る.との深さの範囲はおよそ表皮深さの数倍程度と推測
ζ のため,散乱特性 K影響をおよぼし得る地表
の反射の影響を調べるため金属球を取り外して測定した
されるが,との定量的評価は実際の土壌の減衰定数を測
ととろ,その不要散乱波受信電力はピーク値で約一7
0
定することで行える.
dBm, 平均値で約一 75dBm程度であり,較正実験結
第 5図は土壌の減衰定数を求めるための実験方法を示
果への影響は+ 1
.
2∼− 1.3dB程度以下であったと評
したもので,水平に置かれた 1
.
1×1
.
1m のアルミ板の
価できる.実験系の諸元 i
と基づく金属球からの散乱波受
真上 lm の所に S
OGHz帯散乱計を設置し,送・受信
信電力の計算値と測定値の比較を第 2表 K示す.計算値
ビームが鏡面反射の条件を満足するように調整を行っ
と測定値とは約 ldBの範囲で一致しているととがわか
た.アルミ板の上に何ものせない状態での反射レベル
る.ただし,計算では正確な後方散乱を仮定しており,
このとき計算に用いた近似式の精度は ±0.2dB程度以
内であるととがわかっている.なお,実験の散乱角は正
確に 1
8
0度(後方散乱)ではなく 1
7
1度であるととの影
響の評価は行っていない.
2
.
3 土犠の減表特性の測定
土壌による電波の散乱は,電波の波長,入射角,方位
(完全反射に対応)を基準として,アルミ板上 K厚さを
変えながら層状ζ
l土を盛り,
ζ れによる受信電力の低下
(反射係数に対応)を測定し,との測定結果から土の減
衰定数を求める ζ とにした.
第 6図は,土壌として関東ロームを用い,その反射係
数をアルミ板からの土の厚さに対してプロットした結果
(丸印)を示したものである.なお,丸印に付した横榛
V
o
l
.3
5 No.177 December 1
9
8
9
5
3
9
第 3表 土 壊 パ ラ メ ー タ
3
0
nHMnH
J‘ ﹂
︵∞−︾︶
ー+ー反射係数(測定)
重量含水率
4
6
.5%
ー「一反射係数(計算)
密度
0
.7
1 g/cc
−一一往復の減衰(計算)
表面粗度
0
.5mm以下
宇
誌 M叫
d
4蝋開
.
−
,
,
/
5
1
0
1
5
/
。
I
I
-
・'、
土の厚さ( mm)
I
\
2
I
J
,
\ /
、、ーー”
第 6図反射係数と土の厚さの関係( 50GHz帯
)
ー
は,土の厚さの同定に見込まれる不確定度を示す.実験
/
c
c
)
,
に用いた関東ロームの重量含水率(%),密度( g
第 7図 nの取り得る領域
土に目盛りのついた板を立て目視により制面した表面粗
度のおおよその値を第 3表に示す. Rayleighの基準( 5)
によれば,電波がサンプル表面に垂直入射する場合,表
n :土の複素屈折率(= n
,
j
n
2
)
/
8程度(本予備実験では 0
.7
3
面粗度が電波の波長の 1
F :土のみの反射係数(=(1-n)/(l+n))
m m)以下であれば,その表面は電波的には滑らかであ
d :土の厚さ
るとされているので,本予備実験での関東ロームのサン
プル表面の状態はとの意味で滑らかであった
ζ
とにな
前述の様ζ
l,本予備実験ζ
l用いた土の反射係数 C
I
I
'
l
)
る
.
第 6図によれば,反射係数は最初土の厚さの増加と共
に低下しているが(図の縦軸は上に行くほど値が小さく
なっているととに注意),厚さが lmm を越えるあたり
から反射係数の値が振動的に大きく変動している乙とが
わかる.このような振動的振舞は,土の表面からの反射
1
r
1 は土の複素屈折率 nによっ
I
I
'I
が決まると nの取り得る値は以
は 約 一1
3dBである.
て決まり, 逆 I
C
.
下の条件を満足する領域に限定される.
(
n - 1+1I'J~)2 +
1
1
2
2ー
1
亡円
4
I
I
'
l
2
1
一 日 市2 ~・·(5)
1
1
1
>1
, n2>0
J
ζ の領域を満足する nの領域を第 7図の実線で示す.
波と土を透過したアルミ板からの反射波とが強く干渉し
この実線の領域ζ
i対して Tの値を計算し,第 6図ζ
l示し
合っているためである.土の厚さが lOmm程度になる
た反射係数の測定結果を全体としてもっとも良く説明す
と,反射係数は一定値
13dBK収束している.
ζれ
は,土の厚さの増加にともない,土中伝搬による減衰が
るnを求めた.その結果,次の値が得られた
n=l.52-j0.22
……( 6
)
大きくなりアルミ板からの反射波は殆ど消滅し,土の表
n の値が決まったので,波長を.:! (mm
)として,減衰
面からの反射波が支配的になるためである.乙のような
定数 A (dB/mm
)は,
データから土の減衰定数を求めるととを試みる.
第 5図の配置における反射係数は,無限金属平面上に
A=8.686 ・ 2π I.:!• 1
1
2
=2.ldB/mm
……( 7
)
I平面波が
一定厚で層を成した誘電体(今の場合は土) ζ
と計算される.求められた nの値に対する,土中往復の
垂直入射した場合の総合の反射係数で近似される.乙の
減衰量及び Tの計算結果を第 6図にそれぞれ実線と破線
総合の反射係数 Tは次式で与えられる 17).
で示す.本測定においては,土の厚さの同定に ±0.5
I'-e-j2kond
T= l-I'e-J2kond
ん:自由空間での伝搬定数
……(4
)
m m程度の不確定性があること, Tの計算値と測定値の
聞の細部にわたる一致が必ずしも確認されていないとと
のため,乙れまでの検討結果のみから断定的な結論を下
5
4
0
通信総合研究所季報
す乙とはやや危険があるが,土によるミリ波の減衰のお
およその目安は得られたとして良いであろう .今回の測
定ζ
l用いた土の減衰量は 1
0m mの厚さに対して往復 4
0
dB程度になるので,土のみを対象とした実際の散乱実
験においては ζ の程度の深さまでの土の状態をコン トロ
ーノレしておけば良いものと考えられ る
3
. 60GHz帯 ポ ラリ メ ー タ
3
.l ポラリメータの原理
物体の散乱特性は入射角,散乱角が与えられると次の
複素散乱行列 Sで一意的に記述できる山 .
.
/
石;
−ei19v1
/ 、/言~
S=e
i
P
v
v
l
;
l
,
_J
石 ei191
1v−
φγVI
φVI
}
’
I
.
/
石
−
;
;
;
,
’i191
1
1
1<
v
v
1
)
・・・
・
・
(
8
)
ただし, σりは,入射{扇波が j(=Vo
r H),散乱{南
−
dγ
c
-2
で悶了
−一(
9)
ただし, cは光速, N はステップ数, t
J
fは周波数間隔
で あ る 必要とする周波数帯域 Bは
−
B=NtJf
j
.
.
波乱行列 Sの振陥と
ある .ポラ リメータとは,この複素i
5
0GHz'
f
i
l
'散乱計(ポラリメ ータ)外観
o
l
l
波が i(=1
1o
rH)の散乱断面積, ゆりはその位相で
写真 1
位相の全要素を測定しようとするものである .任意の{南
で与えられ, Ni
l
fを lGHzとす ると t
J
r
=l
5cm とい
波は,直交する直線偏波の線形変換で表現されるので,
う値がえられる
水平 と垂直偏波の組に対する行列 Sが測定により求めら
i対する散乱行列を
れれば,任意の入射 ・散乱{南波の組ζ
観測可能範囲 t
J
R は,N と め・と に依存し
i
l
R= N
i
lr
ー・ ・(
1
1
)
Sの線形変換として導く乙とができ るー従って,ポラリ
の関係 I
Cあ る t
J
Rの範囲外にある物体からの散乱波は
メータは散乱断面積に関する完全な情報を得る乙とがで
i
l
R の観測範囲に折り重なる形で入り込んで くる . ζ の
きるため,散乱体である物体の識別 K大きく役立つと期
折り返しの影響を少なくするには i
l
Rを大きくと れば良
待されている .
いが,ステップ数N として 1
2
8を選ぶと
3
.
2 60GHz帯ポラリメータの距離分解能
t
J
R=l
28×0
.
1
5=1
9
.2m
50GHz帯散乱計は連続放(CW波)を用いているた
…
… 112
)
となり,実用上十分な観測範囲が確保される .
め,距離分解能が得られなかった .乙の欠点を無くすた
3
.
3 60GHz帯ポラリメ ータの概要
め, 60GHz得:のポラ リメータでは lGHzの帯域で周
写真 1は 60GHz,部ポラ リメータの送信部と受信部を
波数をステップ状に変化 させ,計算機でフー リエ変換す
それぞれの f
;
/
J
:源 ・
.
'
/
l
f
l
とともに示 したものであ る.アンテナ
ることにより 距離分解能を得ている .ステップ周波数レ
は直径が 3イ ンチ(7
.6cm)のスカラ ーホーンレン ズア
i示す通りで,距離分解能 めー
ーダの原理問 叶IOIは付録ζ
ンテナであり ,アンテナ本体のレンズ部の最大直径は
は次式で与えられ る
.
1
2
.7cm で,アンテナ全体は直径 1
2
.7c
m より 少し大
2∼3GHz
6
0 GHz帯送信装置
トワーク
アナライザ
ネy
YI
-P
主
y −
p
=
ロ
守
− 中WA
6
0 GHz'
’
H
'
:
受信装泣
す
一目
w
s図
一昔
一
回
ユ
コ
白 l
I
−
一ル民
i :
4
一 一
幅
劃 一
一
備
一
平
ド
7E ﹄
−y
さ
オ AU 一﹃
言
制
i
8
7
5
3
/
¥
60GHz帯i
波乱実験システム全体椛成図
V
o
l
.3
5 No.177 December 1
9
8
9
第 4表
5
4
1
60GHz得散乱計主要諸元
きめの円筒形カバーで覆われている.
第 8図 I
C60GHz得ポラリメータの全体構成図,第 4
周波数
5
7∼ 5
8G
H
z
送信電力
0dBm
表に装置の主要諸元を示す.ポラリメータでは,第 3
.
1
送信アンテナ
スカラーレンズホーンアンテナ
節に示したように,散乱波の振幅と位相を測定するが,
直径 7cm
利得 3
5
.5dB
そのためには送・受信系ともコヒーレントな回路構成に
なっている必要がある.とのため, 60GHz帯送信装置
電力半値幅 5
"
0
0MHz 帯)を外部に取り出し,
の局発基準信号(1
受信アンテナ
送信アンテナに同じ
れを 60GHz帯受信装置にとり入れて送・受信系の局部
送信偏波
,V を切り替え
手動により H
発振器の位相を同期させ,
受信偏波
H
,V同時受信
号を 5
7
∼58GHzの信号に変換している.中間周波数信
受信雑音指数
1
2 dB
1
0
0 dBm
号としては,ネットワークアナライザの出力をそのまま
最小受信電力
中間周波数
帯域幅
距離分解能
と
2∼ 3GHzの中間周波数信
使用している.
2∼ 3G
H
z
1G
H
z
1
5 cm
送信アンテナの偏波は垂直又は水平のどちらか一方と
なるよう導波管スイッチで切り替え,受信装置では垂
直,水平の両信号成分を同時に受信し,両偏波受信信号
の振幅と位相をネットワークアナライザで検出してい
1
3
.75G
H
z
98.21 MHz
x
’
t
a
lO
U
T
第 9図
60GHz帯散乱計(ポラリメータ)送信部プロック図
第1
0
図
60GHz帯散乱計(ポラリメータ)受信部プロック図
ANT
5
7G
H
z
∼58G
H
z
C
A
LI
N
通信総合研究所季報
5
4
2
る.なお,ネットワークアナライザの折り返しの基準信
と表される. いま, r=roの位置に完全な反射体を置い
号は,位相測定に必要である.
たとすると,乙のときの受信電界 H'n は
また,普段は使用しないが,アンテナ部を介さない 6
0
GHz帯送・受信装置の高周波部を含む折り返し特性の
f.4
πんr
0+j4
n
n
'
1
fr
£
f
Rπ =Gnh'oexp{Jー す 一
ーヮ−
J
測定のため, 5
7∼58GHzの較正用信号端子を用意しで
ある.
第 9図は 60GHz帯ポラリメータ送信部のブロック図
である. 55GHzの局発信号は, 9
8
.
2
1MHz の基準信
…・( A2)
で与えられる.この H'nをもとに H
η を規格化すると
H"η芸品/li'n~~(長)位P
3
.75GHzの信
号を用いた位相同期発振器で作られる 1
{j 生主主Mr+j~並立ど}
号を 4逓倍して得ている.乙の 55GHzの局発信号は,
ネットワークアナライザからとり出された 2∼3GHz
の中間周波信号と混合され, 5
7
∼58GHzの送信信号と
して出力される.送信の偏波は,導波管スイッチによる
c
c
-(A3)
となる.さらに,
r.
4
π kf
o
'
1¥
'
’
o
) 叫l12
h"k=(
h
k
!
h
苧叫
…
・
・
( A4)
切り替えで垂直偏波か水平偏波の一方を選べるようにな
とおき,
っている.
第1
0
図は 60GHz帯ポラリメータ受信部のブロック図
である.受信アンテナの直交端子から取り出された垂直
偏波と水平偏波の信号は,それぞれ別の受信系で 2∼3
GHzの中間周波数に変換され, ネットワークアナライ
ザへと出力される.送・受信系全体のコヒーレンシィを
1r=一
c
一
一
一
一
2
N
'
1f
となるようにすると,
N-1
f. 2
πnkl
H"n = ~0h九 expjj~ }
保つため, 55GHzの局発信号は二系統の受信系に共通
が得られる.
であり,またそれは送信機で発生した 9
8
.
2
1MHzの基
り,逆変換を施せば
3
.75GHzの発振信号
準信号に位相同期して得られる 1
を 4逓倍して作られている.
・
・
…
( A6)
ζ れは,離散フーリエ変換の式となってお
N-I
f • 2nknl
h"k=τ
7I
:H"nexp{-J−−−−−..「}……( A7)
,,n=o
'
iv
'
となる. 乙こで H"nは
, (A1) からわかるように,
4
. 結 百
ミリ波帯散乱実験計画 i
と関連して, 50GHz帯 cw散
乱計,及び 60GHz帯ポラリメータの紹介をハードウェ
アを中心に行った.また 50GHz帯
…( A 5)
cw散乱計に関し
ては,較正実験を合む予備実験の一部について述べた.
本実験である,表面の粗さや含水率のパラメータを変化
させて行う土壌からの散乱特性測定実験は開始したばか
りであり,その結果については別の機会に報告したい.
f=foから f=fo+(N-1)'1fまでの各周波数での反
射波のベクトル和である.つまり,ステップ状に周波数
を変えてそれぞれの周波数での受信電界の振幅と位相を
I
'
’
n を求め,それを逆フーリエ変換すること
計測して 1
により, 各距離からの相対受信電源 h九を得る ζ とが
できる.このとき距離分解能は( A5)式で求まり,それ
は全周波数幣域の逆数に比例している.
なお,今後は本実験の継続とデータ解析を行い,さらに
参考文献
新しく 80GHz帯及び lOOGHz帯のポラリメータを整
(
1)井原俊夫,篠塚隆,北村勝巳,岡本謙一,“ミリ
備するととを計画している.
周波数を f=fo+n'1fとする. アンテナからの距離
波帯散乱実験計画ヘ第 3
1
6回電波研連 F小委員会資
料
, 1
9
8
7
年
, 7月
.
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2
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h
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, M. W. andF
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.Ulaby,“ M
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fa
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l
r=η +k
'
1
rから反射してくる電波の電界を h
kとすると
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.G
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.Re-
r=roから r=ro+(N 1
)
'
1
rまでの距離からの受信合
, G
η をシステムの利得,位相特性とする
成電界 Hnは
(
3
)G
i
u
l
i
,D
.,“P
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l
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z
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nr
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付録
ステップ周波数レーダの原理問叶 10)
とき
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P
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.IEEE,7
4
, No.2
,p
p
.2
4
5
2
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、
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4
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. and H.Hirosawa,
“ Measure-
…
・
( A 1)
,
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.H. Wu,H.
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.Appl.Phys.,5
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McGraw-Hill,1
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.
. A.; Electromagnetic Theory.
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l 峯野仁志,岡本謙一,浦塚清峰,猪股英行,西尾文
New-York: McGraw-Hill, 1
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ダの開発ヘ電波季, 1
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