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ニッセン
改革の軌跡 ニッセン ぽっちゃりさんが笑顔で服を買う 初めての実店舗が1年で黒字化 カタログ通販大手のニッセンが、10L までそろう大きいサイズ専門の婦人服店を出店した。 洋服事業で初の実店舗にもかかわらず、2時間以上かけて遠方の顧客が来るほどの人気に。 2009年10月に開いた1号店は初年度から黒字。2店目も含め、年商は約1億円になった模様だ。 顧客に支持される 「人・物・器」を店内に漏れなくそろえたことが功を奏した。 (文中敬称略) プロジェクトの概要 持ち株会社のニッセンホールディングスは 2007年12月期に約 20 億円の経常赤字に転落し た。そんななか、通販事業会社のニッセンで成長を見込めたのが、大きいサイズの婦人服を 販売する「smiLeLand ( スマイルランド) 」 だった。2003 年1月に専門カタログで始めたスマイ ルランドはぽっちゃりな女性の読者モデルを起用するなど、似たような体型の女性から支持を 集め出す。ただし体型に悩む女性客の間では「商品を手に取って選びたい」 という要望がくす ぶっていた。ニッセンは社運を賭けてスマイルランドの充実に走り、2009 年10月に洋服事業 では初の実店舗オープンに踏み切る。店舗運営にノウハウが無いニッセンは外部からプロを 招き、ぽっちゃりさんにとって居心地がいい空間を構築。関西の1号店は初年度で黒字化して 独り立ちし、2009 年12月期の経常増益に貢献した。近い将来、10 ∼ 20 店を出す構想がある。 076 日経情報ストラテジー DECEMBER 2010 スマイルランドの 1号店「COCOEあまがさき店」 。大きいサイズの婦人服を買い求める女性客にとって居心地のいい 売り場を追求する。左にあるのが試着室に置かれた、細身に見える “魔法の鏡”。右の女性が店長の永木尋子 兵庫県のJR尼崎駅に直結する大型商業施設 人気のアパレルメーカーに作ってもらった商品も 「COCOE(ココエ) 」 。ここの3階にぽっちゃりさん 並ぶ。メーカー品はサイズ表示が会社ごとにバラ が笑顔で集まる婦人服店がある。ニッセンが初出 バラなので、ぽっちゃりな店員が一度試着し、スマ 店した大きいサイズ専門のセレクトショップ「スマ イルランドのサイズに合わせてハンガー表示を付 イルランドCOCOEあまがさき店」だ。広々とした け直す。だからサイズ選びは簡単だ。 通路に高い天井。圧迫感の少ない店内は動きやす これまではカタログやネットの通販でしか買え く、ぽっちゃりさんにとって居心地がいい。 なかった大きいサイズの商品を店内で手に取り、 通常の3倍はある広々とした試着室には1台ず 素材やデザインを自分の目で確かめて買える安心 つスポットエアコンが配置され、細身に見える“魔 感は大きい。ぽっちゃりな女性が遠くは三重や和 法の鏡”の前で思う存分、体に衣服を合わせられ 歌山、岡山からもあまがさき店に駆けつける。 る。真夏でも涼しい試着室は汗ばむ心配が無い。 何より、街の婦人服店にはほとんど置かれてい ない10Lまでのかわいらしい服が豊富にそろって 人・物・器がそろう店を女性は好きになる いる。従来の「大きいサイズ=ダサい」というイメ 2009年10月14日のプレオープン初日、店内は身 ージを覆した品ぞろえに、多くのぽっちゃりさん 動きが取れないほどの女性客でごった返し、開店 が目を輝かせる。 の1時間後にはレジを待つ列が店舗の入り口まで 中にはニッセンが実店舗のオープンに合わせて、 続いた。最大で1時間半のレジ待ちになったスマイ 写真撮影:太田 未来子 DECEMBER 2010 日経情報ストラテジー 077 ルランドの集客力は、それほどにぽっちゃりさん 実店舗の仕掛け人であるスタイル・スマイル部 が大きいサイズのかわいらしいシャツやパンツ、ス 店舗開発チームマネージャーの岩瀬三欣は「お客様 カートを待ち望んでいたことの証しだ。 に支持される人(店員)と器(店内空間)が無けれ あまがさき店は開店初日だけで、最初の1カ月 ば、お客様からの支持は得られなかった。単に物 の販売目標の半分を売り上げた。隣には、同じく (大きいサイズの服)を並べればうまくいくという COCOEに出店したユニクロの巨大な店舗がある わけではない」と分析する。実店舗の成功は、ぽっ が、そのユニクロにも負けないスマイルランドの盛 ちゃりさんの共感を呼ぶ人・物・器の3拍子がそろ 況ぶりに関係者は一様に驚いた。評判はアパレル って初めて実現するというわけだ。 業界に広がり、あまがさき店には連日、同業他社 中でも原動力になったのが、ぽっちゃりさんと の偵察や百貨店からの出店依頼が来ている。 同じ体型の店員による店頭での対話だった。店長 同店は2010年10月で1周年を迎えた。ニッセン の永木尋子は「お客様と同じ体型の店員が接客す は早くても開店2年後の黒字化を想定していた るから、体の悩みから恋の相談まで思い切って打 が、初日の盛況後も継続的に顧客が来てくれたの ち明けてもらえる」と言って、顔をほころばせる。 みつよし ひろこ で、いい意味で同社の期待を裏切り、初年度で黒 字化した。 前例が無いことだから挑戦したい 岩瀬がニッセンに入社したのは2008年10月だ。 2003年1月に専門カタログとして産声を上げたス マイルランドは2007年まで順調に拡大し、黒字を 維持してきた。ただし今後は競合の追い上げが予 想されたため、ニッセンは先手を打とうと2008年 春に実店舗展開を決定。岩瀬に声をかけた。 スマイルランドの立ち上げ時から同事業を率い てきたスタイル・スマイル部長の羽渕淳は、ニッセ ンには店舗運営のノウハウが無いことを認めてい た。和服事業では店舗を持った経験があるものの 洋服店は未経験だ。開店準備にかけられる時間は 1年足らずであり、店舗の開発と運営を任せられ る人材を外部に求めた。2008年初夏にはヘッドハ ンティング会社から岩瀬を紹介されている。 岩瀬は羽渕と初めて会った時、ニッセンのこと 社外から招かれた、スタイル・スマイル部店舗開発チームマネージャーの岩 瀬三欣は、スマイルランドの実店舗を1年で軌道に乗せた 写真撮影:太田 未来子 078 日経情報ストラテジー DECEMBER 2010 をよく知らなかった。だが過去に前例が無い大き いサイズ専門店の開発だと聞き、 「ぜひ挑戦してみ