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シンガポール進出に当たって(PDF:487KB)

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シンガポール進出に当たって(PDF:487KB)
JBS
Japan Business Services
シンガポール進出に当たって
前シンガポール駐在員 公認会計士 水谷洋隆
Ⅰ はじめに
シンガポールはマレー半島の南端にあるシン
ガポール島に位置しており、人口約520万人、
面積は東京23区とほぼ同じの小さな国です。公
用語は英語、中国語、マレー語、タミル語で居
住者人口の民族的構成は、中国系74.1 %、マ
レー系13.4%、インド系9.2%(2011年)と
外国人雇用が容易
医療水準の高さ
日本との時差が1時間(日本より1時間遅れ)
【デメリット】
人件費や不動産などの物価高
エネルギー、水、食糧などの対外依存
就労ビザ取得・更新の厳格化
なっており、約2万6,000人の日本人が居住し
部分的なデメリットはありますが、それ以上
ています。10年度および11年度のGDP成長率
のメリットがあるため、製造業を中心とした地
は、それぞれ14.8 %、4.9 %を記録しており、
域統括拠点としての進出や、中小企業を含めた
日本からの直接投資も増加傾向にあります。主
小売業や飲食業の進出も増加しています。
要産業は、製造業 、商業、ビジネスサービス、
※1
運輸・通信業、金融サービス業などです。
シンガポールの日系企業数は約2,000社と言
Ⅲ シンガポール進出時の事業形態
われており、ますます増加傾向にあります。本
外国人が投資によりシンガポールで事業を行
稿では、日系企業がシンガポールに進出する際
うためには、法人・支店・駐在員事務所のいず
の検討事項を、メリットとデメリット、事業形
れかの形態をとる必要があります。各事業形態
態、優遇税制の観点から簡単にご説明します。
の比較は<表1>の通りです。
Ⅱ
シンガポール進出のメリットと
デメリット
Ⅳ 税制優遇制度
シンガポールの法人所得税率は現在17%で、
日系企業がシンガポールに進出する際の、一
法人住民税や法人事業税はありません。シンガ
般的なメリットとデメリットは次の通りです。
ポールは、アジア太平洋諸国の中でも低税率で
【メリット】
法人税などの税務メリット
ビジネス上、英語利用可
安定した政治・社会環境、治安の良さ
ビジネスインフラの整備
世界各国へのアクセスの利便性
労使関係の安定性
高レベルの教育を受けた人材が豊富
すが、これに加えて外国企業の誘致や産業振興
を図る目的で各種の税制優遇制度を用意してい
ます。代表的な優遇税制は次の通りです。
1. パイオニアインセンティブ
パイオニアステータスの認定を受けた企業に
は、最長15年間にわたる法人所得税の免税措
置が適用されます。
※1 エレクトロニクス、化学関連、バイオメディカル、輸送機械、精密機械
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情報センサー Vol.77 December 2012
水谷洋隆(みずたに ひろたか) 当法人にて10年以上にわたり、大手機械メーカーから上場準備会社に至るまで企業の監査業務に従事。
アーンスト・アンド・ヤング シンガポール事務所出向時には、主に監査や税務業務を中心に、幅広く現地日系企業をサポート。帰任後は、
当法人名古屋事務所にて主に監査業務に従事。
•表1
法人
恒久的施設(PE)として現地課税
あり
許認可関係で、内国法人にのみ許可
される業務についても同様の待遇を
享受可能
支店
駐在員事務所
一定のPEを有し、営業活動を行う
所得が生じた場合、PEとして現地
課税あり
自己名義での取引が可能なため、迅
速に直接的な取引が可能
2. インベストメントアローワンス
営業活動はできず、情報収集、広報
活動などに限定
PEに該当しないため、課税なし
通常、投資規模が少額となるため、
撤退が容易
税です。
適格プロジェクトに従事する会社が対象で、
法人所得税法上の通常の減価償却費に加えて、
この他にも多くの優遇税制がありますが、日
適格プロジェクトに係る固定資産投資額の最大
本から見てシンガポールはタックスヘイブン国
100%まで課税所得から控除可能です。
に該当すると考えられるので、留意が必要です。
最近、発表される優遇措置は、金融・情報通
3. 地域統括本部制度(RHQ)
信・海運・その他の高付加価値産業に関するも
地域統括サービスと認定される所得(経営・
のがほとんどで、通常の製造業に対する優遇措
サービス・販売・貿易・ロイヤルティー)の増
置は減少傾向にあります。政府は、同国を金融・
加分に対して、一定の条件の下、最大5年間に
貿易・知的財産・情報インフラの中心とする政
限り、15%の軽減税率が適用されます。
策を採用しています。これらの優遇税制につい
ては、主に規制緩和の方向で頻繁に改正が行わ
4. 国際統括本部制度(IHQ)
れています。
RHQの条件を全て満たす会社は、より上位
また、シンガポールは約70カ国・地域に及
のステータスであるIHQを申請することができ
ぶ広範囲の諸国などと租税条約を締結していま
ます。これにより、地域統括サービスと認定さ
す。租税条約によって国際的な二重課税を回避
れる所得に対して通常5∼10年間、10 %以下
することができますし、必要に応じて相互協議
の軽減税率が適用されます。
条項(MAP)を利用し、移転価格課税などの
リスクを排除することも可能です。
5. グローバル・トレーダー・プログラム(GTP)
GTPステータスを取得した会社は、適格商
品・製品の取引から得られる貿易所得につい
て、5年間を上限とした一定期間において5 %
または10%の軽減税率が適用されます。
Ⅴ おわりに
東南アジア諸国の経済規模が大きくなってい
る中で、シンガポールの果たす役割はさらに重
要なものとなり、同国に進出する企業は今後も
6. 国外投資先からの所得に関する税制
増えていくと考えられます。東南アジアの拠点
シンガポール国外の投資先からの配当金、国
としてシンガポールに進出する場合には、同国
外支店の収益、サービス収益について、国外源
からどのように近隣諸国へ展開を図っていくか
泉所得が国外で課税対象であること、国外の法
の戦略を立てておくことも重要です。
人税率が15%以上であることを条件に免税とな
ります。
<お問い合わせ先>
7. キャピタルゲインに対する税制
資本取引から生じるキャピタルゲインは非課
マーケッツ本部 JBS部
Tel:03 3503 1131
情報センサー Vol.77 December 2012
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