「見えない資産」が 企業価値を決める

「見えない資産」が
企業価値を決める
コンサルティング事業本部 主任研究員 石塚真理
「見えない資産（インタンジブ
今
月
の
論
点
１
「インタンジブル経営」
自分の店の暖簾、顧客、従業員
ル・アセット；Intangible As-
ミシガン大学のデイブ・ウル
といった「見えない資産」を大事
sets）
」
「インタンジブル経営」と
リッチ教授が共著『インタンジブ
にすることは、経営のノウハウと
いった概念が注目されている。
ル経営 競争優位をもたらす「見
して伝統的に行われてきた。その
えざる資産」構築法』で「経営上、
当たり前のことが、短期志向にな
人的資源、組織学習能力、ブラン
らざるを得ない経営環境において
米マサチューセッツ工科大学の
ド力といった無形資産を活かし企
見失われていたとも捉えられる。
エリック・ブリニョルフソン教授
業価値に結びつけることが重要で
「見えない資産」を重視すると
が著書『インタンジブル・アセッ
ある」と指摘している。
「見えない資産」
いう主張は、多くの人の実感にフ
ィットする。さらに「見えない資
ト 「 IT 投資と生産性」相関の原
産」の中でも特に人材と組織は重
理』の中で「IT 投資の生産性を上
財務諸表に基づくさまざまな経
げるためには、ハード、ソフトの
営指標が開発され、それらの指標
目に見える投資だけでは不十分。
を重視する経営が増えている一
誰もが取引先や協力会社に対
業務プロセスや従業員など見えな
方、
「企業の実力は財務諸表分析
し、
「この会社はちゃんとしてい
い資産の生産性を高めるための
だけでは測れない」
「財務諸表の
る、していない」という評価を
工夫や投資をすることがハード、
経営指標に表れない企業の見え
持っているが、この評価は各企業
ソフトへの投資と同等に重要であ
ない力が企業を継続的に発展さ
の個人レベルの問題把握・施策
る」と主張したことで注目される
せていくためには必要」といった
立案力と組織レベルの問題解決
ようになった。
声が多く聞かれるようになってき
力の総和と言える。これらの能力
最近では、時価総額と資産価値
た。それらの声と時期を同じくし
を高めることで、事業における付
のギャップの構成要素としても重
て登場したのが、冒頭の 2 つの概
加価値の拡大とイノベーションが
視されている。
念である。
実現される。
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要である。
「ZARA」の
超高速サプライチェーンに学ぶ
ビジネスソリューション事業本部 主席研究員 高寺正人
スペイン発のファッション製造
小売ブランド「ZARA」を展開す
（２）店舗には少量の商品を陳列し、
品切れを厭わない
る INDITEX 社の成長が目覚しい。 （３）店舗とデザイナー、調達、生産
同社のアニュアルレポートによれ
担当はリアルタイムのコミュ
ば、2000 年から 2004 年の間
ニケーションで結ばれている
ザインの多品種少量商品を即座に
販売することで高収益を実現して
いる。
サプライチェーンマネジメント
（SCM）では、スピードの重要性
で店舗数は 1,080 店から 2,244
（４）自前の工場を持ち新製品の企
がうたわれるものの、資産効率や
店に倍増、同期間の年平均売上高
画から生産までを最短１週間
サプライチェーンコストといった
成長率は 22 ∼ 25％にも及ぶ。
で回す
効率性指標に目が行きがちだ。
営業利益率も 10 ∼ 11％と同業
（５）生鮮品のごとく、航空便を使っ
の SPA（Speciality store retai-
て世界中３日以内の納品体制
ler of Private label Apparel：製
を敷く
ZARA のサプライチェーンは、
「今買わなければ」という顧客価
値を徹底的に追及したモデルで
あり、これを実現するために、ス
造小売業）を引き離している。
アパレル業界では、多くの企業
ピードにこだわり、企画・デザイ
アパレル業界のデル、あるいはス
が自社工場や物流施設を持たず
ン・調達・生産のコア・プロセス
ペイン版トヨタ生産方式と称され
に、製造や物流をアウトソーシン
でデザイナーやマーケターといっ
る超高速のサプライチェーンだ。
グしているのに対し、ZARA のサ
た人材資源・組織資源の能力を引
「ファースト・ファッション・シ
プライチェーンでは、生産と流通
き出している。
ステム」と称される ZARA のサ
に積極的な設備投資が行われて
この機会にあなたの会社のサプ
プライチェーンは次のような特徴
いる。自社内に余剰能力を持つこ
ライチェーンを顧客価値（Ｖ）、
を持っている。
とで需要の変動に対応する。ラコ
プロセス（Ｐ）
、資源（Ｒ）の 3 つ
ルニャの本社でのマーケター、デ
の視点から見直してみることをお
ザイナー、調達、生産担当のコ・
勧めしたい。
ZARA の急成長を支えるのが、
（１）週２回のペースで世界中の店
舗に新商品を陳列する
ワークから生みだされる最新デ
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