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3 INSEM 工法における単位体積重量
3 INSEM 工法における単位体積重量 3.1 目的 砂防構造物の全体計画や概略設計の検討を行う際には、その施設の安定計算を行い概略 の基本形状を設定し、他工法などと比較し、砂防ソイルセメントの適用の可否や部位など の選定を判断することになる。 安定計算を実施する際には、構造体の単位体積重量を設定しなければならない。コンク リート構造物の単位体積重量は、骨材の規格が概ね決められており、これまでの実績など から現在では概ね 22.56~23.05kN/m3(2.3~2.35t/m3)に設定されている。ただし、砂防 ソイルセメント、特に INSEM 工法の場合、現地発生土を用いることから現場ごとに異なり、 単位セメント量や発現強度も異なる。そのため、使用する部位や使用する母材の種類によ っても単位体積重量が異なると言える。 そのため、使用する材料を用いて材料試験や配合試験を実施し、単位体積重量を設定す ることが望ましいが、概略設計の段階では試験の実施は難しい場合が多く、現地における 使用材料の目視程度で判断しなければならないケースがある。 本検討では、砂防ソイルセメントの工法の適否を判断する設計段階において安定計算に 使用する単位体積重量の目安を設定することを目的として、これまでの施工事例を分析し た。 3.2 既往の単位体積重量の設定例 (1) 砂防ソイルセメント活用ガイドライン 「砂防ソイルセメント活用ガイドライン P-23」では、単位体積重量は以下のように記さ れている。 ここでは、単位体積重量は、配合試験結果等から設定するものとしており、基本的には 詳細設計レベルでの設定方法について記載されている。従って、一般的な値については、 特に明記されていない。 砂防ソイルセメントの単位体積重量は、現地発生土砂の性状の影響を大きく受けるた め、配合試験結果等により得られた値から設定するものとする。 【解説】 単位体積重量は、安定解析上重要な項目であるが、砂防ソイルセメントの場合、現地発 生土砂の性状の影響を受けるため、締め固め試験や配合試験等により単位体積重量を確認 した上で設定するものとする。 砂防ソイルセメントの単位体積重量は、現地発生土砂のばらつき、締固め機械や方法の 影響もあり多少変動することが予想されるが、配合試験結果で求まる標準供試体の単位体 積重量の 90~95%を採用すれば実用上支障ないものである。 3-1 (2) 現位置擾絆混合固化工法(ISM 工法)設計・施工マニュアル P-12 ISM 工法マニュアルにおいても、圧縮強度試験の供試体により質量を確認することとし、 特に単位体積重量の規定は設けていない。 ISM 混合体は、計画箇所ごとに試験練りによって強度、単位質量を確認しなければならな い。 【解説】 ISM 混合体は使用する材料が現場毎に異なるため、計画箇所毎に試験練りを行い、圧縮強 度と供試体の単位容積質量を確認しなければならない。 材料の単位体積重量については規定を設けず、現地の材料を用いた配合試験後、必要強 度を発現しておればそのまま使用している。このため、各種技術基準に示されているコン クリートの単位容積質量 2.3~2.35t/m3 より 5~10%程度軽くなる場合もあり、圧縮強度試 験前に供試体質量を確認しておく必要がある。 以上のように、既往の技術資料では、単位体積重量については使用する材料を用いて実 際に質量を計測した値を設定することとしており、概略検討時の目安となる単位体積重量 については記載されたものはない。 そこで、以下に、これまでに砂防ソイルセメントで実施された配合試験や砂防ソイルセ メントで施工された構造物から採取したコアをもとに、砂防ソイルセメントの単位体積重 量について検討した。 3.3 単位体積重量の設定 設計に用いる単位体積重量は、実際の構造物の重量とすべきであるため、構造物自体の 重量を計測すればよいこととなり、砂防ソイルセメントによる構造物から採取したコアの 単位体積重量を計測した値により設定することが望ましいと考えられる。 ただし、採取コアは部分的なものとなるため、採取位置によって礫の入り方に偏りが生 じてしまい、強度のバラツキと同様に単位体積重量についてもバラツキが生じてしまう可 能性がある。 そこで、本検討では、以下の方法により単位体積重量を推定した。 砂防ソイルセメントで施工された構造物から採取したコアと配合試験で作成された供試 体の単位体積重量を比較し、コアと供試体の単位体積重量の違いを確認した。また、採取 したコアより単位体積重量の設定を検討した。 全国で実施された既往の圧縮強度試験の供試体から単位体積重量を整理した。 3-2 3.3.1 採取コアと供試体との比較 既往の砂防ソイルセメントの構造物から採取したコアにより圧縮強度試験を実施し、計 測されたコアの単位体積重量と、配合試験時に圧縮強度を計測するために作成した供試体 の単位体積重量を比較した(図 3.3.1)。 採取コアの単位体積重量と配合試験時の供試体の単位体積重量の関係を図 3.3.1 に示す。 なお、配合試験の供試体の数値は、実施工の単位セメント量と同様の試験値を示している。 図 3.3.1 に示すように、採取コアの単位体積重量は供試体の単位体積重量に対して同程 度か、大きな値を示している。 従って、供試体の単位体積重量をもとに砂防ソイルセメントの単位体積重量の設定を行 うことで問題ないと考えられる。 配合試験供試体の単位体積重量(kN/m3) 24.0 23.0 22.0 21.0 20.0 19.0 19.0 20.0 21.0 22.0 23.0 24.0 採取コアの単位体積重量(kN/m3) 図 3.3.1 3.3.2 コア(平均値)と供試体の単位体積重量の関係 目標強度レベルに応じた単位体積重量の設定 一般的には、単位体積重量は強度に比例する傾向にある。従って、既往の検討資料より 収集した圧縮強度試験の供試体の単位体積重量と強度の関係を整理した。 強度と単位体積重量の関係をプロットしたものを図 4.3.2 に示す。 図より、強度と単位体積重量の関係にはバラツキはあるものの、概ね単位体積重量の増 加に伴い強度が増加する傾向がある。 そこで、単位体積重量と強度の関係をプロットしたデータから、各目標強度レベル毎に 3-3 最低の単位体積重量を設定するため、データを包絡する推定線を引き、目標強度レベルご とに最低の単位体積重量を設定した。 目標強度レベルに対する単位体積重量を表 4.3.2 に示す。 なお、コンクリート(設計強度 18N/m2)の単位体積重量は 22.56kN/m3 であり、一方、 レベルⅤに該当する設計強度 18N/m2 の時の単位体積重量は推定線より 22.2kN/m3 となる。 データを包絡す る推定線 図 3.3.2 単位体積重量と強度の関係 表 3.3.2 目標強度レベルに応じた単位体積重量 3-4