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B2-1 ウィルス学コアカリ対応シケプリ

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B2-1 ウィルス学コアカリ対応シケプリ
コアカリキュラム B2-1 生体と微生物 :ウィルス学
I ウィルスの基本的性状と病原性
1. ウィルス粒子の構造を図示し、各部の機能を説明できる。
感染性のあるウィルス単位をウィルス粒子 virion と
エンベロープ
envelope
いい、その基本構造は、核酸 (DNA or RNA)と、そ
れを取り囲むキャプシド capsid からなる(これらを合
キャプシド
capsid
わせて、ヌクレオキャプシド nucleocapsid と呼ぶ)。
ヌクレオキャプシド
nucleocapsid
コア
core
nucleocapsid の形には、主に左に示す 2 タイプが
核酸
キャプソマー
capsomeres
立方対称形
cubic symmetry
ある。
capsid は、キャプソマー capsomere というタンパ
ク質の sub-unit が一定の規則性にしたがって非共
ラセン対称形
helical symmetry
有結合してできたものである。
capsid の外側に、エンベロープ envelope を持つ virus(enveloped virus)も存在する。envelope は一般に内側
の膜タンパク質 membarane protein と外側のリポタンパク質複合体 lipoprotein complex からできている。
膜タンパクはウィルスの遺伝子によってコードされ、リポタンパク複合体は宿主細胞の細胞膜や核膜由来の成分、そし
てウィルスの遺伝子によってコードされるペプロマーpeplomer より成る。peplomer は、envelope を貫いて突き出
ているタンパク質成分で、スパイク spike として観察される。enveloped virus は、envelope が壊されると、感染性を
失い不活化する。
2. 構造と性状によりウィルスを分類できる。
DNA virus
C
+
envelope ○
核酸
envelope ○
Herpesviridae
・HHV-1~8
Adenoviridae
(Human Herpesvirus)
・Adenovirus
HHV-1・2 = HSV-1・2:単純疱疹ウィルス
正
HHV-3 = VZV:水痘・帯状疱疹ウィルス
Papillomaviridae
十
HHV-4 = EBV:Epstein- Barr Virus
・HPV
面
HHV-5=HCMV:サイトメガロウィルス
(Human papillomavirus)
体
HHV-6、HHV-7、HHV-8
二
2本
Parvoviridae
1本
そ
の
他
2本
・Parvovirus B19
Poxviridae
Hepadnaviridae
・痘瘡ウィルス
・B 型肝炎ウィルス
(Variola virus)
(Hepatitis B Virus)
・Monkeypox virus
注) C: Capsid の形状
viridae ・・・ 科
Hepadnaviridae ・・・ 逆転写酵素を持つ
Hepadnaviridae ・・・ 球形の Capsid を持つ
Poxviridae ・・・ Capsid を持たない
Parvoviridae ・・・ +鎖のものと、−鎖のものは等確率で存在する
1
RNA virus
C
+
envelope ○
核酸
envelope ○
Reoviridae
2本
正
二
十
面
体
Togaviridae
Picornaviridae
Caliciviridae
・Hepatitis C Virus
・風疹ウィルス
・Poliovirus
・Norovirus
・日本脳炎ウィルス
・Coxsackievirus A,B
・Sapovirus
+鎖
・Yellow fever virus
・Echovirus
未分類
・Dengue virus
・Rhinovirus
・Hepatitis E Virus
・West Nile virus
・Hepatitis A virus
Retroviridae
Coronaviridae
・HIV
・Coronavirus
・HTLV-1
・SARS virus
Orthomyxoviridae
Arenaviridae
・influenza virus
・Lassa virus
Paramyxoviridae
Filoviridae
1本
・麻疹ウィルス
・Ebora virus
- 鎖
・Mumps virus
・Marburg virus
・Parainfluenza virus
Bunyaviridae
Rhabdoviridae
・Hantavirus
+ 鎖
ら
せ
形
Flaviviridae
1本
1本
ん
・Rotavirus
・狂犬病ウィルス
Retroviridae ・・・ 逆転写酵素を持つ
風疹 rubella, 麻疹 measles, 狂犬病 rabies, 日本脳炎 Japanese encephalitis
HIV: Human Immunodeficiency Virus, HTLV-1: Himan T-Lymphotrophic Virus Type I,
SARS: Severe Acute Respiratory Syndrome
3. DNA ゲノムと RNA ゲノムの複製・転写を一般化し、説明できる。
[DNA genome]
DNA virus は、宿主細胞内へ侵入
初期転写
early transcription
初期翻訳
early translation
すると、まず、初期遺伝子群を転写・
翻訳し、DNA 複製に関わる酵素群
初期遺伝子
early gene
や T 抗原を産生する。
early
mRNA
初期タンパク質
early protein
核酸複製に関わる酵素群
後期遺伝子
late gene
T抗原(腫瘍抗原)
その後、DNA 複製を繰り返すと同時
に後期遺伝子群の転写・翻訳を開始
し、capsid などの構造タンパク質を
作る。
複製された DNA と構造タンパクがア
センブリされて、virion が多数産生
late mRNA
後期タンパク質
late protein
assembly
構造タンパク質 (capsid)
2
される。
[RNA genome]
RNA Virus の複製は RNA Virus 核酸の鎖の種類により 4 つの様式に分けられる。
1. + RNA の場合 ex. picornavirudae, togaviridae
virus RNA (vRNA)自体に感染性があり、かつ mRNA としての機能を持つ。
viral protein
+RNA
assembly
replicase I
(RNA-dependent RNA polymerase)
cRNA
replicase II
+RNA
assembly
viral protein ・・・ 転写・複製に関わる酵素群、構造遺伝子 など
2. - RNA の場合 ex. paramyxoviridae, orthomyxoviridae, Rhabdoviridae
vRNA 自体には感染性がなく、また mRNA の機能もない。
- RNA RNA polymerase
RNA polymerase
cRNA
- RNA
assembly
viral protein
3. retrovirus の場合 ex. HIV, HTLV-1
vRNA は mRNA としての機能はあるが感染性はない。
+RNA
reverse transcriptase
逆転写酵素
cDNA
DNA polymerase
dsDNA
integrase
host DNAへの取り込み
RNaseH
分解
provirus
mRNA
assembly
assembly
viral protein
vRNA(+)
4. dsRNA の場合 ex. Reoviridae
vRNA は mRNA としての機能も感染性はない。
dsRNA
viral protein
mRNA(+)
assembly
- RNA
dsRNA
3
4. ウィルスの吸着、侵入、複製、成熟と放出の各過程を説明できる。
吸着
adsorption
or
放出 release
侵入
penetration
Nucleus
脱殻
uncoating
転写
transcription
assembly
virus genome
翻訳
translation
HOST CELL
1. 吸着 adsorption
Virus が宿主細胞内へ接着する過程を吸着という。
virion が細胞表面のレセプターと特異的に結合することにより起こる。
2. 侵入 penetration
吸着した virion が細胞内へ侵入する過程。次の 3 つの形式が存在する。
① Viropexis = Endocytosis (pinocytosis / phagocytosis)
Non-enveloped virus の場合、レセプターを介して endocytosis によって取り込まれる。
② membrane fusion 膜融合
enveloped virus の spike には envelope と細胞膜を融合させる能力を持つものがあり、膜融合により侵入する。
③ direct penetrate 直接侵入
Rotavirus などの一部の virus は、直接細胞膜を貫通して脱殻した virus として細胞内へ直接侵入する。
3. 脱殻 uncoating
細胞内に侵入した virus は、virus genome の転写・複製を行うため、capsid などの構造タンパクを壊し、virion 内の
genome や酵素が機能を発揮できる過程に入る。
4. virion の複製
I-3. 転写・複製の項を参照。
5. 成熟 maturation
Assembly によって構造タンパク(capsomere など)と virus genome (Core)が融合し、さらに各 virus に特徴的な
修飾を受けることで、親 virus と同じ娘 virus が大量に産生される。
6. 放出 release
Enveloped virus は、宿主細胞の細胞膜あるいは核膜からできた envelope をかぶり、細胞外へ放出される。
Non-enveloped virus は、宿主細胞を破壊して細胞から放出される。
※ 暗黒期(雲隠れ期/エクリプス期) eclipse phase
脱殻後、virus が粒子形成により細胞内で検出されるまでの期間を暗黒期(雲隠れ期/エクリプス期)と呼ぶ。
この期間は virion の組立期間であり、この間にウィルス検査を行っても検出されない。
4
5. ウィルス感染細胞に起こる変化を説明できる。
Virus が細胞に感染すると、宿主細胞には次のような様々な変化が起こる。
1. 細胞変性効果 cytopathogenic effect (CPE)
細胞の円形化、狭小化、破壊像
最終的に宿主細胞を破壊する場合を細胞変性効果と呼ぶ。
2. 悪性転換 transformation
Oncovirus に感染した細胞は細胞表面に腫瘍特異抗原が出現し、癌化する。
3. 封入体 inclusion body 形成
HHV(Human Herpes Virus)や痘瘡ウィルス、狂犬病ウィルスなどは、細胞内に好酸性あるいは好塩基性の領域(封
入体)を作ることがある。封入体の実体は virus の genome やタンパクの集合体、あるいは virion の集合体である。
4. 細胞膜の変化
Paramyxoviridae や herpesviridae は感染細胞が細胞膜融合 fusion し、巨細胞を作る。
Influenzavirus 感染細胞は細胞表面に血球凝集素 hemagglutinin(HA)が出現する。
⇒ 細胞表面に新しい抗原が出現
5. 染色体異常
ある種の virus では、染色体の欠損・転座・断裂などの異常が見られる。
6. 高分子合成の抑制/促進
細胞障害性の virus に感染した場合、宿主細胞は DNA やタンパクといった高分子合成が抑制される。
逆に Oncovirus に感染した場合、DNA 合成の促進といった現象がみられる。
6. ウィルス感染の種特異性、組織特異性と病原性を説明できる。
種特異性: 多くの virus は感染可能な宿主が決まっている
ex. Poxvirus はヒトやサルなどの霊長類にのみ感染する
組織特異性: virus の感染可能な部位は各 virus によって決まっている
ex. Hepatitis B virus は肝臓にのみ感染する
宿主細胞表面のレセプター有無によって決定される。
Virus が宿主細胞に吸着できないと増殖もできず病原性も示さない。
Receptor Specificity
7. 主な感染様式の具体例を説明できる。
急性感染
acute infection
顕性感染 apparent infection
不顕性感染 inapparent infection
潜伏感染 latent infection
持続感染
persistent infection
慢性感染 chronic infection
慢性感染 slow inceftion
1. 急性感染
感染後、特有の臨床症状がみられるが、やがて宿主の免疫反応により virus が駆除される一過性の感染。
麻疹、風疹、influenza、mumps、A 型肝炎など。
感染しても臨床症状が見られない不顕性感染の場合もある。 Polio や日本脳炎など。
2. 持続感染
感染成立後、生体から virus が駆除されることなく数ヶ月から数年にわたって virus が生存する場合。
Virus 側の要因、宿主側の要因、免疫機構に関する要因などが関与する。
5
2-1. 潜伏感染
急性感染を何度も繰り返す持続感染。virion が産生されない状態で virus genome が組織中に潜伏。あるとき再活性
化し virion を産生する場合。 HSV(ヒトヘルペスウィルス)、VZV(水痘・帯状疱疹ウィルス)など。初感染後、神経節に
virus が潜伏し、特定の刺激が誘引となって神経支配領域に帯状疱疹を形成する。
2-2. 慢性感染
初感染の後、Virus の増殖が慢性的に進行する状態。virion が長期間にわたって体内で産生され続け、常に virus が
体外に排出され続ける。Adenovirus、HCMV(サイトメガロウィルス)、EBV、HBV、HCV など。
2-3. 遅発性感染
初感染の後、長い潜伏期間(数ヶ月から 10 年以上)を経て徐々に発病し、亜急性の経過から、進行性に悪化、多くは死に
至る感染症。麻疹ウィルスによる亜急性硬化性脳症(SSPE)、JC ウィルスによる進行性多巣性白質脳炎、Prion による
kuru、Creutzfeldt-Jakob 病(CJD)、ウシ海綿状脳症(BSE、ヒトが感染した場合 variant CJD:vCJD と表記)など。
II ウィルス感染に対する生体反応・予防
1. ウィルスに対する中和反応と細胞性免疫を説明できる。
Virus に対する免疫は、特異免疫機構によって行われ、体液性免疫と細胞性免疫の両方が作用する。
[体液性免疫]
virus 感染により産生される抗体の中で感染防御に働く抗体を中和抗体 neutralizing antibody と呼ぶ。
中和抗体:最も重要なのは IgG: 唯一の胎盤通過性抗体で、母親由来の IgG ⇒ 胎児・乳児の感染防御に役立つ
IgA: 分泌抗体 ⇒ 粘膜感染に対して重要な役割
IgM: 初感染時に血中・髄液中に出てくる
診断に有効
[細胞性免疫]
細胞表面に新たな抗原を形成(5-4.参照) ⇒ T cell が認識 ⇒ CTL による破壊
しかし、新たな抗原を隠す virus もいる。 詳しくは、免疫の講義プリント参照。
[その他]
IFN、NK cell、Mφなども virus 感染に対して有効 (例外あり) 。
2. ワクチンによるウィルス病予防の原理を説明できる。
人体に影響が出ないよう処理された抗原(=vaccine)を投与することで、抗原情報を人工的に Memory B cell に記憶
させ、事前に virus 感染を防ぐ(予防接種)。特に virus 感染では細菌感染に対する抗生物質のような有効な治療薬が
少ないので、予防に重点が置かれる。Memory B cell については、免疫の講義プリント参照。
3. ワクチンの種類と問題点を説明できる。
3-1. ワクチンの種類
「よく覚えときなさいよ。」 by 奥田教授
1. 不活化ワクチン inactivated vaccine
加熱処理、薬剤処理などにより、不活性化した virus を用いたもの
主に血中抗体(IgG)価を高める
日本脳炎ワクチン、狂犬病ワクチンなど。
Component vaccine: 感染防御抗原(免疫を成立させるのに必要な構成成分)のみを精製して作られた vaccine
influenza HA vaccine、Hepatitis B vaccine など。
6
2. 弱毒化 生ワクチン attenuated vaccine
さまざまな方法で得られた病弱変異株の生きた virus を用いる。そのため免疫原性が強い。
不活化ワクチンでは十分な免疫が得られないような感染症に対して使用。
血中抗体(IgG)、および分泌型抗体(IgA)の産生
Polio(Sabin vaccine)、麻疹、風疹、Mumps、水痘、黄熱、(天然痘)などに用いられる。
3. トキソイド toxoid
細菌、真菌、寄生虫、衛星動物などの産生する外毒素をホルマリン処理により不活化させ、抗原性のみ残したもの。
主に血中抗体(IgG)価を高める。
virus は毒素を産生しないので、toxoid はない。
※ 多価ワクチン polyvalent vaccine
influenzavirus のように抗原性が変異しやすい virus に対しては、いくつかの型、亜型、あるいは株を混ぜ合わせて
vaccine を作成する。influenza vaccine、polio vaccine など。
※ 混合ワクチン mixed vaccine
2 種類以上の病原体に対する vaccine を混合して接種するもの。相乗効果がある場合が多い。
細菌感染症では、ジフテリア、百日咳、破傷風の DPT vaccine がある。ウィルスでは、麻疹、ムンプス、風疹の MMR
vaccine が用いられたが、現在では接種中止。
3-2. 各ワクチンの長所と短所
長所
生ワクチン
不活化ワクチン
少量 1 回の投与で長期間の強い免疫能が得られる
他の病原体の迷入がない
IgG 抗体以外に IgA 抗体を誘導可能
強毒株への復帰がない
比較的安定である
短所
強毒株へ復帰する場合がある
大量の抗原が必要
他の病原体が迷入する場合がある
booster(複数回の追加免疫)が必要
他の virus の干渉を受ける
有効期間が短期間
不安定である
IgA を誘導できない
III 各種ウィルスの特徴と病原性
1. 主な DNA ウィルス(CMV, EBV, Adenovirus, Parvovirus B19, HHV, HBV) が引き起こす疾患名を列挙できる。
★ 重要な DNA virus ・・・ Herpes, Adeno, HBV, Parvo (とりあえず前の 3 つは必須!)
語呂暗記![DNA Virus]
江(EB)藤(痘瘡)さん(サイトメガロ)水(水痘)浴(アデノ)び(HBV )短(単純ヘルペス)パン(パルボウイルス/パピローマ)で(伝染性
軟疣腫)ワクワク(ワクシニア)
必ず覚えるべきこと ・・・ ①特徴と感染様式、②引き起こす疾患名、③(ある場合は)治療法
1. Adenovirus
[1. 特徴] (最低太字はおさえる)
血清型により 49 種類に分類される
飛沫感染 ⇒ 上気道や目の粘膜上皮細胞で増殖
7
抗酸性 ⇒ 胃液で不活化されず、小腸・膀胱で増殖
ウィルス血症 viremia は稀
所属リンパ節で増殖、リンパ節腫脹を引き起こす
不顕性感染が多い
特定の血清型は固有の感染症を引き起こす
核内が増殖の場になる ⇒ envelope は核膜由来
[2. 疾患] (最低、疾患名はすべておさえる 太字もおさえる)
① かぜ症候群
上気道感染により風邪の原因となる
influenza のような大流行は起こさない
冬季に小児に散発
② 咽頭結膜熱 pharyngoconjunctional fever (PCF)
幼児から低学年学童中心
咽頭炎・結膜炎・発熱
夏にプールの水を介して各地で流行したのでプール熱と呼ばれる
近年は下火だが小流行は散発
③ 流行性角結膜炎 epidemic keratoconjunctivitis (EKC)
結膜炎で発症し、約 1 週間後に角膜にも炎症が波及
はやり目と呼ばれる ⇒ 非常に伝播性が強い
予防対策が必要
④ 下痢症
通年性に乳幼児に下痢を引き起こす
消火器にたどり着く前に上気道で増殖 ⇒ 感冒性症状が先行
⑤ 出血性膀胱炎 acute hemorrhagic cystitis
学童期の男児に好発
血尿と膀胱刺激症状(頻尿、排尿時不快感など)
⑥ 肺炎
近年、重症肺炎を引き起こす例が小児にみられる
院内感染の注意が必要
[まとめ] Adenovirus
多彩な症状を引き起こす
感冒、下痢、咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、出血性膀胱炎、肺炎
アデノ: 乾燥に弱い ⇒ 夏風邪 / flu: 湿度に弱い ⇒ 冬場に流行
語呂暗記![AdenoVirus]
by
http://www.st.rim.or.jp/~kim-kim/goro/goro_index.htm
流行(流行性角結膜炎)のいいケツ(咽頭結膜熱)艶(アデノウィルス)やか スケボー(出血性膀胱炎)
2. Herpesviridae
[概説]
α、β、γに分類される
約 90 種類
ヒトに病原性を発揮するもの: Human Herpesvirus(HHV) 8 種類存在
HHV-1,2=HSV-1,2=単純疱疹ウィルス、HHV-3=VZV=水痘・帯状疱疹ウィルス、
HHV-4=EBV=Epstein- Barr ウィルス、HHV-5=HCMV=サイトメガロウィルス、HHV-6,7,8
潜伏感染 latent infection
臓器移植の際に注意
宿主の免疫能が低下すると再活性化
回帰感染 reccurence
一見紳士風
donor 側からの感染(recipient は免疫抑制状態)
[まとめ] Herpesviridae
忍者のように潜んで回帰感染
単純(1,2)、水痘・帯状疱疹(3)、EB(4)、サイトメガロ(5)、HHV-6~8
臓器移植の際に注意
潜伏場所
HHV-1: 三叉神経節
2: 腰仙骨神経節
3: 脊椎後根神経節
4: B cell
5: 唾液腺・腎臓・子宮頚管・リンパ球 6: CD4+ T cell
7: T cell
8: カポジ肉腫細胞
8
潜伏場所は試験に出します。 By 荒井先生
(1) HHV-1,2
Herpes Simplex Virus (HSV) 単純疱疹ウィルス
[1. 特徴]
I 型と II 型に分かれる
I 型 ・・・ 口腔、眼
感染細胞: 封入体を作って変性
II 型 ・・・ 性器
最近は、分布域の区別がなくなる
第一選択薬はアシクロビル acyclovir
:: 初感染
口腔・眼・性器の粘膜表皮細胞に侵入 ⇒ 知覚神経線維末端~ 軸索を逆行 ⇒ 三叉神経節・腰仙骨神経節
宿主の免疫応答 ・・・ 不活化(潜伏感染) 多くの場合不顕性
:: 回帰感染
ストレス、かぜ、外科的侵襲、多疾患の合併 ⇒ 再活性化 ⇒ 軸索を順行
[2. 疾患]
① 口唇ヘルペス herpes simplex labialis
HSV-1
回帰感染
口唇周辺に小さな疱疹
初感染
急性歯肉口内炎
乳幼児
② 角膜ヘルペス herpes simplex keratitis
HSV-1
回帰感染
樹枝状角膜炎 or 地図状角膜炎 (蛍光色素で樹枝状,地図状に染まる)
放置すると 円板状角膜炎
角膜実質の混濁
視力を大きく損なう
③ ヘルペス脳炎 herpes simplex encephalitis
HSV-1
乳幼児は初感染、成人は回帰感染
髄膜刺激症状、精神症状、多彩な神経局所症状
④ 性器ヘルペス herpes simplex genitalis
以前は HSV-2 中心
回帰感染
近年 HSV-1 が激増、HSV-1 のほうが多い
性器とその周りに疱疹
予後は良好だが、再発に悩む
oral sex の増加
性行為感染症 STD
妊婦の初感染で新生児ヘルペスの危険
⑤ 新生児ヘルペス neonatal herpes simplex infection
初感染した妊婦から出産する際、経産道感染(垂直感染)
全身性ヘルペス
発熱、哺乳力の低下、無呼吸発作
新生児はほとんどが顕性感染
疱疹が出現しない場合も多い
⑥ カポジ水痘様発疹 Kaposi varicelliform eruption
アトピー性皮膚炎の乳幼児
所属リンパ節腫脹、発熱
湿疹部位に水痘が多数発生、潰瘍化
HSV-1 が多い
初感染&回帰感染
[まとめ] Herpes Simplex Virus 単純疱疹ウィルス
HSV-1 は口腔粘膜、HSV-2 は性器から入り、知覚神経を逆行、神経節に潜む
回帰して、口唇、角膜、脳、性器に疱疹
アトピーがあるとカポジ様
STD
新生児に経産道感染
第一選択薬は acyclovir
(2) HHV-3 Varicella-Zoster Virus(VZV) 水痘・帯状疱疹ウィルス
[1. 特徴]
飛沫核感染(空気感染) ⇒ 上気道 ⇒ 所属リンパ節 ⇒ ウィルス血症 viremia ⇒ 肝脾
:: 初感染
免疫応答 → 皮膚に発疹 → 水痘 varicella
:: 回帰感染
知覚神経の順行 → 帯状疱疹 herpes zoster
9
[2. 疾患]
① 水痘 varicella (chiken pox)
70~80%が顕性感染
初感染
潜伏期間はほぼ 2 週間
予後は良好
ほとんどが小児
治療は原則、対症療法
弱毒化生ワクチン
丘疹 → 水疱 → 膿疹 → 痂皮化
成人の水痘:免疫応答が激しい → 合併症に注意
② 帯状疱疹 herpes zoster
回帰感染
主に成人に発症
免疫力が低下した小児
知覚神経の支配領域に一致する帯状の疱疹
片側性
知覚神経: 肋間神経、坐骨神経、三叉神経
運動神経: 顔面神経 → 顔面神経麻痺: Ramsay-Hunt 症候群
[まとめ] Varicella-Zoster Virus 水痘・単純疱疹ウィルス
水痘と帯状疱疹は同じウィルスによる病気
水痘で初感染 → 知覚神経節に潜伏 → 帯状疱疹となって回帰感染
(3) HHV-4 Epstein-Barr Virus (EBV)
EB ウィルス
[1. 特徴]
3 歳までに日本人の 80%が感染
唾液を介する感染経路
咽頭粘膜上皮(融解感染 lytic infection) ⇒ 所属リンパ節 ⇒ B 細胞に侵入(B cell 不死化) ⇒ 潜伏感染
ヒトに対して複数の抗原を持つ ← 臨床上各論重要 ここでは省略
[2. 疾患]
① 伝染性単核球症 infectious mononucleosis (IM)
キッス病 Kissing disease
成人に達してからの初感染
乳幼児期
不顕性感染
激しい免疫応答 ⇒ 急性炎症
予後は原則良好
② 日和見リンパ腫
B cell の不死化 ⇒ CTL 増殖
細胞性免疫不全の場合、リンパ腫
免疫不全患者のリンパ腫の主な原因
③ Burkitt リンパ腫
B cell の細胞表面に少数の virus 抗原しか出現しないとき
CTL によって排除されない
(珍しいけど病理で重要)
アフリカ ウガンダで好発
④ 上咽頭癌
上咽頭癌(未分化扁平上皮癌)から検出される
機序は不明
[まとめ] EB Virus
唾液を介して感染し、B 細胞に潜伏し、不死化させる
成人の初感染 → 激しい免疫応答に暴露されて伝染性単核球症
免疫不全患者では日和見リンパ腫
Burkitt リンパ腫、上咽頭癌の発生にも関与
(4) HHV-5 Cytomegalovirus(CMV) サイトメガロウィルス
[1. 特徴]
感染細胞が数倍に巨大化
核内にフクロウの眼 owl eye のような封入体
国内では成人の 90%以上が抗体価陽性
新生児のほとんど
一度感染すると終世キャリア状態に
周産期に経産道的、あるいは母乳摂取を介して初感染
10
間欠的に再活性化
不顕性感染
[2. 疾患]
① 先天性巨細胞封入体症 congenial cytomegalic inclusion disease (先天性 CID)
妊婦が胎芽期に初感染(子宮内感染)
回帰感染の場合は問題なし
妊婦の 90%以上はすでに感染 残りの育ちの良いお嬢様(?)が陥る危険性あり
生活環境の改善 ⇒ 未感染者の増加 ⇒ 発症が増加する危険性
顕性感染:せいぜい 10%
肝脾腫、黄疸、小頭症、脳内石灰化、知能傷害、感音性難聴、網脈絡膜炎
② 易感染性宿主における CMV 感染症
易感染性宿主 compromised host の場合 間質性肺炎、胃腸炎、網脈絡膜炎、単核球症(後述)
治療薬: ガンシクロビル ganciclovir
③ CMV 単核球症 CMV mononucleosis
EBV に似た単核球症
成人の初感染
compromised host の場合は回帰感染でも
EBV より軽症にとどまる
[まとめ] Cytomegalovirus
日本人のほとんどが周産期に感染(不顕性)
妊婦の胎芽期の初感染 ⇒ 先天性 CID で脳内石灰化、網脈絡膜炎
Compromised host に肺炎、胃腸炎、網脈絡膜炎
Owl eye のような封入体をもつ巨大化細胞
治療は ganciclevir
成人の初感染では単核球症
(5)
HHV-6
[1. 特徴]
乳児の突発性発疹の起炎ウィルス
唾液を介して感染
免疫抑制性患者
国内の成人の抗体陽性率 100%
潜伏感染
回帰感染によって発症する可能性
[2. 疾患]
突発性発疹
生後 6 ヶ月~1 年
数日間の発熱で発症 ⇒ 解熱ともに全身に発疹(viremia) 予後は良好 ときに熱性痙攣
HHV-7 も乳幼児の突発性発疹の起炎ウィルス。HHV-8 は Kaposi 肉腫との関連性。
3. Hepatitis B Virus (HBV)
[1. 特徴]
Hepadnaviridae ヘパドナウィルス科
不完全な環状 dsDNA
ヒトに感染する DNA Virus の中では最小の核酸
envelope に HBs 抗原、
患者血清中
完全な HBV 球状粒子:Dane 粒子
HBV DNA
core に HBc 抗原、HBe 抗原
Dane 粒子のほか、HBs のみからなる小型球状粒子や管状粒子
遺伝子組換え HBs 抗原: HB ワクチンとして利用
感染様式: 経産道感染(現在はほとんどない)
医療器具を介して
性行為(STD:現在の新規感染者の多く)
不顕性感染の場合と、急性型・劇症型の肝炎を引き起こす場合がある
成人の感染: 急性 B 型肝炎 (一過性)
乳児、小児、免疫不全患者: 持続感染(血清肝炎)
11
[2. 疾患]
① 急性肝炎
1~6 ヶ月の潜伏期
通常一過性感染で 2~4 ヶ月以内に治癒
発熱、嘔吐、倦怠感、やがて黄疸
A 型肝炎とほぼ同様の症状
しかし A 型肝炎より劇症化しやすい
② 無症候性キャリア
HBs 抗原が 6 ヶ月以上にわたって陽性の場合: HBV Carrier
一部は長い年月の後に肝硬変に移行
その後、さらに高頻度に原発性肝癌が発生
[まとめ] Hepatitis B Virus B 型肝炎ウィルス
完全粒子は球形の Dane 粒子
envelope に HBs 抗原
感染様式: 経産道感染・医療器具・性行為
一過性の急性肝炎: 発熱・嘔吐・倦怠感 <黄疸>
劇症化しやすい
無症候性の HBV Carrier: 長い年月の後に肝硬変 ⇒ 原発性肝癌
4. Parvovirus B19
[1. 特徴]
ヒトに感染性があるのは B19 のみ。
飛沫感染 ⇒ 上気道 ⇒ viremia ⇒ 赤芽球に侵入・増殖
不顕性感染の確率も相当高い
[2. 疾患]
① 伝染性紅斑 erythema infectiosum
俗称 りんご病(日本) / ビンタ病 slapped cheek disease(欧米) 学童期に好発
潜伏期間: 約 10 日 感冒様症状(発熱・頭痛・カタル症状など) ⇒ 頬に蝶形紅斑 ⇒ 上下肢にレース状紅斑
予後は良好 数日で軽快
② 関節炎
成人が感染した場合
多くは不顕性感染
こわばり感を伴う関節炎症状
2 週間程度持続
③ 低形成発作 aplastic crisis
赤芽球前駆細胞に感染 ⇒ 赤血球数減少 Hb 約 2g/dl 低下
溶血性貧血患者 ⇒ 赤血球の供給が追いつかない ⇒ 重篤な状態(低形成発作)
速やかに輸血 ⇒ 必要量の Hb 確保
④ 胎児水腫 fetal hydrops
胎児が感染 ⇒ 赤血球の供給が追いつかない ⇒ 心不全
ほとんどの場合流産 or 死産
[まとめ]
皮下組織、胸腔、腹腔内に水分が貯留
Parvovirus B19
赤芽球に感染、赤血球数減少
伝染性紅斑、関節炎、低形成発作、胎児水腫
2. 主な RNA ウィルス(Poliovirus, Coxsakievirus, Echovirus, Rhinovirus, HCV, influenza virus, 麻疹
measles virus, mumps virus) が引き起こす疾患名を列挙できる。
★ 重要な RNA virus ・・・ Picorna、HCV、flu、麻疹、Mumps (前者 3 つは必ず!!)
1. Ricornaviridae Enterovirus
Pico(小さな)rna(RNA) ・・・ 小さな RNA virus
Enterovirus 属 Poliovirus、Coxsackievirus A/B、Echovirus
Rhinovirus 属 Rhinovirus
(Entero・・・腸管内で増殖)
Hepatovirus 属 Hepatitis A Virus
12
(1) Poliovirus
[1. 特徴]
急性灰白髄炎(小児麻痺) の起因ウィルス
3 種類の血清型(1 型、2 型、3 型)
弱毒化経口生ワクチン oral poliomyelitis vaccine (OPV=Sabin vaccine)による予防接種 ⇒ 罹患数激減
不活化ワクチン(Salk vaccine)も開発されている
250 万回に 1 回の確率で弱毒ウィルスの突然変異 強毒株へ復帰して麻痺症状をもたらす
2001 年 日本を含む西太平洋地域で根絶
[2. 疾患]
急性灰白髄炎 poliomyelitis anterior acuta
経口感染
咽頭・腸管の粘膜上皮細胞 ⇒ 増殖 ⇒ 所属リンパ節 ⇒ 血中へ
脊髄前角細胞に達し、破壊
弛緩性の運動麻痺
典型的な麻痺症状 0.1%
夏かぜ様症状 9%
下肢の麻痺中心
残り 90%は不顕性感染
軽度の髄膜炎症状(麻痺なし)1%
[まとめ] Poliovirus
ポリオウィルスはエンテロウィルス
経口感染したウィルスが腸管で増殖、脊髄前角細胞を傷害
不顕性感染が多いが、経口ワクチンで予防しよう
(2) Coxsackievirus A,B
Echovirus、その他の Enterovirus
[1. 特徴]
Poliovirus 以外の Enterovirus は起こす疾患が重複 ⇒ Coxsackie-Echovirus 感染症として扱う
Coxsackie はアメリカ・New York 州の地名、ECHO は Enteric Cytopathogenic Human Orphan の略
夏を中心に流行
[2. 疾患]
小児を中心に発症
(大半が小児科領域なので、たぶん試験には出ません。余力のある人以外は[まとめ]だけ理解しておきましょう。)
① 手足口病 hand-foot-mouth disease
Coxsackievirus A と Enterovirus-71 が起炎
夏季中心
発熱
Coxsackie B、Echo でも起こる
0~4 歳児に好発
手足を中心に丘疹や水疱
口腔粘膜に浅い潰瘍
ときに髄膜炎
基本的には予後良好
② ヘルパンギーナ herpangina
主に Coxsackievirus A が起炎
発熱
口腔粘膜に浅い潰瘍
Coxsackie B、Echo でも起こる
手足口病から手足を引いた疾患
③ 出血性結膜炎 acute hemorrhagic conjunctivitis (AHC)
主に Enterovirus-70 が起炎
結膜下出血を伴う
Coxsackie B、Echo でも起こる
ウィルス性結膜炎
直接接触によって容易に伝染
adenovirus の咽頭結膜熱、流行性核結膜炎と一緒に覚える
感染防止が重要
④ 流行性筋痛症 pleurodynia
主に Coxsackievirus B が起炎
発作性の「息が止まるような」胸痛
発熱、頭痛、嘔吐、下痢などを伴う
⑤ 心膜炎・心筋炎 pericarditis, myocarditis
主に Coxsackievirus B が起炎
年長児と成人: 心内膜炎
乳幼児: 心筋炎
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予後良好
数日で軽快
⑥ 髄膜炎 meningitis
ウィルス性(無菌性)髄膜炎
激しい頭痛、頚部硬直などの髄膜刺激症状
普通予後は良好
⑦ Polio 様麻痺
Poliovirus 以外の Enterovirus による Polio 様の麻痺
頻度は低い
⑧ 下痢症 diarrhea
腸管上皮細胞が傷害され、ときどき下痢を起こす (胃腸かぜ)
[まとめ] Coxsakie, Echovirus infection
コクサッキー・エコーウィルス感染症は夏に流行
⇒ 手足口病、ヘルパンギーナ、出血性結膜炎、心膜炎、心筋炎、髄膜炎など
(3) Rhinovirus
鼻かぜの最も多い起炎ウィルス
(Rhino: ラテン語で鼻) 上気道で増殖
(4) Hepatitis A virus (HAV)
Hepatovirus へパトウィルス属
感染経路: 経口感染(多いのは生カキの摂取) 性行為(MSM*に限る)
2~6 週間の潜伏期
発熱、嘔吐、倦怠感、やがて黄疸
小児 不顕性感染が多い
冬季に多い
通常一過性感染(流行性肝炎)で 1~2 ヶ月以内に治癒
50 歳以上の高齢者 重症化率高い
*MSM ・・・ Men who have sex with Men
2. Hepatitis C Virus
[1. 特徴]
ウィルス性肝炎では最多(60%) 慢性肝炎を引き起こす(血清肝炎)
感染経路: 血液
性感染性は弱い
戦後、覚醒剤と売血により HCV carrier が急増、水平感染 ⇒ 今になって肝炎患者が増加
[2. 疾患]
慢性肝炎
1~3 ヶ月の潜伏期
肝炎を発症するが Type A, Type B に比べて症状は軽い
慢性化率が高い (50~80%)
10~20 年を経て肝硬変へ、そして高率で原発性肝癌が発生
原発性肝癌の多く約 75%(!!)は、HCV によるもの
治療は interferon の長期投与(効かない場合も多い)
3. influenza virus
[1. 特徴]
Orthomyxoviridae orthomyxovirus
インフルエンザの起炎ウィルス
A 型、B 型、C 型に分類
envelope に赤血球凝集素 hemagglutinin(HA)抗原、ノイラミニダーゼ Neuraminidase(NA)抗原
感染様式: 飛沫感染、飛沫核感染(空気感染)
Type B,C: HA 抗原、NA 抗原は 1 種類
ヒトのみ感染
Type A: HA 抗原 14 種類、NA 抗原 9 種類
人畜共通感染症(トリ、ブタ)
数十年に一度、世界的な大流行(パンデミー pandemic) ⇒ HA 抗原と NA 抗原の変異
大流行は、抗原シフトによって起こる
たとえば、ヒトの virus とトリの virus がブタに感染し、ブタの体内で融合して相同染色体組換えを起こし新種が出来る
不活化ワクチンはあるが、型が違えばほとんど無効 ・・・ 予防接種は任意 (65 歳以上は定期予防接種)
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大流行
小流行
被害
莫大
中程度
原因ウィルス
hybrid virus
mutant virus
発生機序
A 型ウィルスの抗原シフト (遺伝子組換え)
A,B 型ウィルスの抗原ドリフト (突然変異)
感染対象
すべての人
免疫力の弱い人
免疫力の強弱に無関係
[2. 疾患]
① 流行性感冒
咽頭痛、鼻汁 ⇒ 頭痛、発熱、筋肉痛、関節痛
通常のかぜより全身症状が強い 重篤感あり
合併症が多い
② インフルエンザ肺炎
傷害された機関紙粘膜上皮細胞を足場に、インフルエンザ菌などが増殖、肺炎を併発
③ インフルエンザ脳症
幼児 インフルエンザ、水痘、突発性発疹などの熱性疾患 ⇒ 痙攣、意識障害
急性脳症
とくに... 脳浮腫と細胞の脂肪変性 ・・・ Reye 症候群
aspirin 投与により誘発 インフルエンザ流行時に aspirin の使用は避ける
④ 超過死亡 (疫学)
influenza が直接の死因となるケースはかなり少なくなった
しかし流行は、非流行時に比べ気管支炎・肺炎・心疾患による死亡率が明らかに高い ⇒ 超過死亡
特に 65 歳以上で顕著
4. RNA ウィルスとその代表疾患 <まとめ>
遺伝子
分類
+鎖
Picornaviridae
ポリオ
コクサッキー・エコー
手足口病・ヘルパンギーナ
ライノウィルス
かぜ
ノロウィルス
乳幼児胃腸炎
Togaviridae
風疹ウィルス
風疹
Flaviviridae
日本脳炎ウィルス
日本脳炎
黄熱ウィルス
黄熱
デングウィルス
デング熱
西ナイルウィルス
西ナイルウィルス熱
C 型肝炎ウィルス
C 型肝炎
ヒトコロナウィルス
上気道感染
SARS ウィルス
SARS
HTLV-1
成人 T 細胞白血病
HIV
AIDS
Rhabdoviridae
狂犬病ウィルス
狂犬病
Filoviridae
エボラウィルス
エボラ出血熱
マールブルグウィルス
マールブルグ病
N
A
一本鎖
Coronaviridae
Retroviridae
−鎖
関連疾患
ポリオウィルス
Caliciviridae
R
主なウィルス
15
Orthomyxoviridae
インフルエンザウィルス
インフルエンザ
Paramyxoviridae
パラインフルエンザウィルス
上気道炎・肺炎
ムンプスウィルス
流行性耳下腺炎
麻疹ウィルス
麻疹(はしか)
クリミア・コンゴ出血熱ウィルス
クリミア・コンゴ出血熱
ハンタウィルス
腎症候群出血熱
Arenaviridae
ラッサウィルス
ラッサ熱
Reoviridae
ロタウィルス
乳幼児下痢症
Bunyaviridae
二本鎖
すべて暗記しておくといいことがあるかも。
3. retrovirus (HIV) の特性と一般ゲノム構造を説明し、分類できる。
[1. 特性]
逆転写酵素 reverse transcriptase を持つ RNA virus (DNA virus では HBV も逆転写酵素を持つ)
■ retrovirus の分類
□ 内在性と外在性
内在ウィルス: provirus 化した retorivirus が正常の genome の一部として存在するもの 遺伝性あり
外在ウィルス: もともと内在せず、virion が細胞に感染するもの
遺伝せず
□ 病原性による分類
・ Spumavirus: ヒトに対する病原性は不明
・ Lentivirus: HIV-1(チンパンジー由来)、HIV-2(サル由来) ・・・ 多くは 1 型
・ Oncovirus: HTLV-1(CD4+T に感染)、HTLV-2(CD8+T に感染) ・・・ ほとんどが 1 型
■ retorovirus の生活環
「試験で取れないと-5 点!」 by 忻 先生
① 宿主細胞に吸着し、脱殻して自己の RNA
+RNA
reverse transcriptase
逆転写酵素
cDNA
DNA polymerase
を宿主内に送り込む。
dsDNA
に読み替え、integrase という virus 由来の酵
integrase
host DNAへの取り込み
RNaseH
素を用いて virus の DNA を宿主の DNA にラ
分解
ンダムに組み込む。(provirus 化)
provirus
mRNA
③ 終生にわたって持続感染 persistent inf.
(感染性のある完全なウィルス粒子が産生され
packaging signal
assembly
assembly
viral protein
るので潜伏感染とは呼ばれない)
vRNA(+)
■ retrorvirus の genome 構造
LTR
gag
pol
gag
pol
④ 転写制御因子をもち、プロモーター領域が
刺激されると virion を産生しはじめる。
「試験に出します。」 by 忻 先生
env
LTR
env
retrovirus の genome は、左図の通り。
プロモーターやエンハンサー、PBS(primer binding
splice
mRNA
② 逆転写酵素を用いて自己の RNA を DNA
(A)n
site)を含む LTR(long terminal repeat)と polyA
末端に挟まれて、gag、pol、env 遺伝子を持つ。これ
gag・pol protein
らは、それぞれ構造タンパク(capsid など)、酵素、
envelope protein
envelope をコードする。
modify
gag protein
構造タンパク
pol protein
酵素
provirus として宿主の DNA 中に入り込んだ virus は、
envelope protein
エンベロープ
その LTR を介して、mRNA や genomic RNA が作ら
れる。
16
作られた mRNA は、gag・pol 遺伝子と env 遺伝子との間で splicing を受け、gag・pol タンパクと envelope タンパ
クに翻訳される。その後、gag・pol タンパクは修飾を受け、gag タンパク(構造タンパク)、pol タンパク(酵素)となる。
■ HIV-1 の吸着・侵入過程
「ここも試験に出すかも」 by 忻 先生
HIV-1 は、その envelope の最も外側に
gp120 (glucoprotein 120)が突出し、
それを gp41 がつなぎとめるという形をと
っている。
HIV-1 の細胞への侵入は、まず gp120 と
gp41
HIV-1
CD4 とが結合(吸着)し、さらに gp120 の
gp120
v3
HOST
CELL
CD4
V3 と chemokine receptor が結合する
ことによって起こる。この補助刺激によって、
chemokine
receptor
gp41 は宿主の細胞膜を貫通し、膜融合が
起こり、core と酵素が宿主へ侵入する。
■ 感染経路
性感染、垂直感染(経産道感染、子宮内感染、経母乳感染)、血液感染
HTLV-1 は、経母乳感染が、HIV は経産道感染が多い。
1. HTLV-1
成人 T 細胞白血病 adult T-cell Leukemia の起炎ウィルス
九州などの西南地域で 120 万人の carrier
+
CD4 T に持続感染
腫瘍ウィルス oncovirus
経母乳感染が多い
増殖スピードはきわめて遅い
性感染は男性から女性のみ
ほとんどの carrier は終生無症状
なかには 20 年以上(多くは 40 年以上)を経て T 細胞白血病などを起こす
2.HIV
性感染症として非常に有名だが、そのほかに、経産道感染、子宮内感染、血液感染のルートがある。
男性同士、男性から女性への感染のリスクが高い
CD4+T に持続感染
毎日数十億個の単位で virus を増殖させる ・・・ 毎日数十億個の CD4+T が破壊される
宿主は破壊された分だけの T cell を産生し、対抗
逆転写酵素の精度は低い
数年∼数十年後、消耗し AIDS 発病
1/10000 程度の確率で error
⇒
変異しやすい!!
抗体検査: ゼラチン凝集法
■ viral load と CD4+T 数の推移
「これ重要です。これも出すかも」 by 忻 先生
HIV に感染して数週間たつと、感染者の 10~ 20%
抗env抗体
CD4+T
にウィルス血症 viremia による influenza 様症状
がみらる。(急性レトロウィルス症候群)
この症状は長くて 2~3 週間で消失、その後は、ほ
抗gag(gp24)抗体
とんど症状のない無症候性キャリア asymptomatic carrier(AC)となる。この時期、感染者本人
が知らないところで、HIV と免疫系の壮絶な戦いが繰
り広げられている。
set point
HIV-RNA(viral load)
∼
∼
急性期
1~3ヶ月
AC期
数年~十数年
AC 期の長さは、set point における viral load と高
い相関をなすことが分かっている。Viral load とは、
ARC期
AIDS期
1~3年
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宿主のもつ virus 量を表し、血中の vRNA 量として測
定される。また set point は、急性期が過ぎ AC 期に
いたるとき viral load が一定に落ち着いた点(宿主側の免疫応答と virus の反応との平衡点)を表し、この時点での
viral load が大きいと virus 優位のため AIDS の発症は早まり、逆に少ないと遅くなる。
AC 期の終わりには発熱・下痢・体重減少・全身倦怠感などの症状が現れ、これを AIDS 関連症候群 AIDS related
complex (ARC)と呼ぶ。その後、数ヶ月前後で AIDS 期へと進行し、日和見感染や、悪性腫瘍を併発する。
■ 抗レトロウィルス治療 Antiretroviral therapy
ART
数年前まで治療薬は Zidovudine(AZT)しかなかった
「これも重要です。」 by 忻 先生 重要ばっかじゃん><
しかし、最近次々と治療薬が増える
⇒ 多剤併用療法(highly active antiretroviral therapy:HAART)
抗 HIV 薬: 主に 2 つの作用点
⇒ ① 逆転写酵素阻害剤
①: AZT, ddI, ddC, 3TC, d4T, Nevirapine
② プロテアーゼ阻害剤(virus の組立を block!)
②: Saquinavir, Indinavir, Ritonavir, Nerfinavir
※ 抗 HIV 薬は飲み続けなければならない ← genome 中の provirus は排除しにくい
Infected Memory T cell は生き続ける ・・・ 70 年近くは排除できない
以上、コアカリ到達目標に関してはほぼ網羅。
授業で取り扱った Prion、肝炎ウィルス総論からも出題があると思います。
大急ぎで作ったので間違い等あると思うので、教えてください。
以上、文責 杉原でした。
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